【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、総務省、超高速近距離無線伝送技術等の研究開発の委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
小原辰徳、武田一樹、安達文幸,シングルキャリア伝送におけるOverlap FDEとブロック間干渉キャンセラの特性比較,電子情報通信学会技術研究報告,社団法人電子情報通信学会,2011年 2月23日,Vol.110、No.433,pp.25-29
【文献】
久万善広、梅比良正弘,オーバーラップFDEにおける短縮化CHU系列を用いたチャネル推定法の検討,電子情報通信学会技術研究報告,社団法人電子情報通信学会,2008年 8月20日,Vol.108、No.188,pp.7-12
【文献】
小原辰徳、武田一樹、安達文幸,受信タイミングオフセットが存在する場合の周波数領域等化シングルキャリア伝送における時間多重パイロットチャネル推定の影響,電子情報通信学会技術研究報告,社団法人電子情報通信学会,2010年 1月14日,Vol.109、No.368,pp.217-222
【文献】
P.P.Vaidyanathan, Bojan Vrcelj,Theory of fractionally spaced cyclic-prefix equalizers,Acoustics, Speech, and Signal Processing (ICASSP), 2002 IEEE International Conference on ,2002年 5月,Vol.2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、高精細な動画像又は音声を用いた種々の大容量コンテンツを含むデータを、無線通信を介してエンドユーザに提供するサービスが検討されている。
【0003】
特に、数G(ギガ)ビットに及ぶ大容量のデータを高速に伝送するために、60GHz帯を含むミリ波帯を用いて、数Gbpsの高速伝送を行う無線通信システムが検討されている。IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)において、無線PANとしてIEEE802.15.3c、又は無線LANとしてIEEE802.11adなどの規格標準化作業が行われている。
【0004】
例えば、IEEE802.11adにおいて検討されているミリ波帯を用いたシングルキャリア伝送方式では、1.76Gシンボル/秒においてPSK又はQAM変調された信号を伝送する。なお、1シンボル時間は約0.57nsecと短くなる。なお、PSK変調とは、BPSK、QSPK、8−PSK、16−PSKを含み、QAM変調とは、16QAM、64QAM、256QAMを含む。
【0005】
一方、ミリ波帯において無線通信する受信装置においては、60GHz帯の伝搬路でも無線通信に特有のマルチパスフェージングによる通信品質の劣化が生じる。屋内環境における近距離(数十cm〜数m)の通信においても、壁、天井、家具、什器、又は周囲の人体における反射によって数nsecから数十nsecの遅延波が生じる。伝送するシンボル時間よりも数倍から数十倍長い遅延波によって、シンボル間干渉が起こり、復調誤りを生じさせる。
【0006】
長遅延への対策として、周波数領域等化(Frequency Domain Equalization)方式が注目されている。シンボル時間よりも長い遅延波が存在するような劣悪な環境では、従来の一般的な時間領域等化器における演算量よりも、周波数領域等化器の演算量が少なくなることが知られている。
【0007】
シングルキャリア伝送方式に周波数領域等化を用いる無線通信システムの1つとして、SC−FDE(Single Carrier with Frequency Domain Equalization)方式が知られている(特許文献1、2)。
【0008】
特許文献1では、シンボルの時系列に対して等化の対象とする1ブロックより長い時系列部分を選択し、フーリエ変換(DFT又はFFT、以下、「FFT」と称する)による周波数領域に変換してチャネル補償処理を行う。更に、周波数領域に変換された部分を逆フーリエ変換(IDFT又はIFFT、以下、「IFFT」と称する)して時間軸信号に変換した後、元の1ブロックの時系列部分を選択して出力する。
【0009】
特許文献2では、シンボルの時系列に対してオーバーサンプリングされた信号を入力し、フィルタリング処理用のFFT及びIFFTには小さいオーバーサンプリングレートにダウンサンプリングされた信号を入力して周波数領域等化(FDE)する。一方、伝送路推定用のFFT及びIFFTには時間分解能を上げるために、大きいオーバーサンプリングレートにアップサンプリングした信号を入力してFDEする。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態における受信装置について図面を用いて説明する。本実施形態の受信装置はミリ波帯の無線信号を受信する受信装置に適用される。
【0017】
図3は、受信装置が受信する送信信号のフレームフォーマットの一例を表す説明図である。送信信号のフレームフォーマットは、プリアンブル301、伝送路推定用フィールド302、ガードインターバル(GI)303、及びデータ304を含む構成である。
【0018】
プリアンブル301は、既知の信号波形を複数回繰り返した信号波形を含む。例えば、プリアンブル301には、相関特性に優れる128ビットのGolay系列をBPSK変調した信号波形を一単位として、一単位とした信号波形を複数回繰り返した波形が用いられる。受信装置は、受信した既知の信号波形の繰り返しを相関検出により求め、たとえば、フレームの検出、ゲイン制御、キャリア周波数同期の少なくとも1つ以上に用いる。
【0019】
伝送路推定用フィールド302は、同様に複数個の既知の信号波形を含み、本発明に係る受信装置において伝送路の歪み推定に用いられる。例えば、伝送路推定用フィールド302には、128bitのGolay系列と128bitのGolay系列の相補系列をBPSK変調した信号波形が用いられる。
【0020】
ガードインターバル303は、データ304の区切りとして挿入されている。ガードインターバル303にも、同様に既知の信号波形、例えば64bitのGolay系列をBPSK変調した信号が用いられる。
【0021】
データ304は、ブロック単位によって誤り訂正符号化されたデータビット列をPSK又はQAM変調したシンボル列を含む構成である。
【0022】
上述したフレームフォーマット(信号フォーマット)を用いてデジタル変調された送信信号のシンボル列は、送信帯域制限フィルタとしてルートレイズドコサインフィルタに掛けられ、DAコンバータによりアナログベースバンド信号に変換される。ベースバンド信号は、RF部においてシングルキャリア高周波信号に変換され、アンテナから送信される。
【0023】
図2は、本発明に係る受信装置10の全体構成を表すブロック図である。受信装置10は、アンテナ201、RF部202、ADC(ADコンバータ)101、同期部204、等化部102及び復調部103を含む構成である。
【0024】
RF部202は、アンテナ201により受信されたシングルキャリア高周波信号をダウンコンバートし、ベースバンド信号に変換する。ADコンバータ101は、ベースバンド信号をサンプリングし、デジタル信号に変換する。
【0025】
同期部204は、デジタル信号に変換された受信信号のプリアンブル301を用いて、フレームの検出、RF部202のゲイン調整、キャリア周波数同期のうち少なくとも1つ以上の同期処理を行う。
【0026】
等化部102は、同期部204において検出されたフレームタイミングに従い、伝送路推定用フィールド302を用いて伝送路の歪みを推定する。更に、等化部102は、
図3に表す伝送路推定用フィールド302以降のデータ304における伝送路歪特性及びサンプリング位相誤差特性を補正し、シンボル列を出力する。
【0027】
復調部103は、等化部102により出力されたシンボル列を入力し、信号点を判定してデータ復調し、送信データを再生する。
【0028】
図1は、等化部102の内部構成を表すブロック図である。等化部102は、シリアル/パラレル(直並列)変換部104、PNポイントフーリエ変換部(FFT部)105、歪推定部106、補正係数算出部107及び補正係数乗算部(補正部)108、Nポイント逆フーリエ変換部(IFFT部)109及びパラレル/シリアル(並直列)変換部110を含む構成である。
【0029】
ADコンバータ101は、シンボル速度に対してP倍(P>1)の速度によって受信信号をオーバーサンプリングし、AD変換する。
【0030】
シリアル/パラレル変換部104は、P倍オーバーサンプリングされたサンプル列から、補正の対象とするNシンボルに相当するP×N個のサンプルポイントを選択し、パラレル信号に変換する。
【0031】
PNポイントFFT部105は、パラレル信号に変換されたP×N個のサンプルポイントの信号をフーリエ変換し、周波数領域(受信信号帯域)毎のP×Nポイントの信号(周波数bin毎の複素ベクトル)に変換する。このうち、信号帯域に相当するNポイントの周波数領域信号が出力される。
【0032】
歪推定部106は、伝送路推定用フィールド302が入力されている場合に、伝送路の歪みを推定する。具体的には、歪推定部106は、FFT部105から出力された伝送路推定用フィールド302のNポイントの周波数領域信号と、予め保持しておいた伝送路推定用フィールド302の送信波形をNポイントフーリエ変換した周波数領域信号(第1リファレンス信号)との差分ベクトルを周波数bin毎に求める。なお、差分ベクトルは、伝送路歪み特性に相当する。
【0033】
補正係数算出部107は、歪推定部106により推定された伝送路歪み特性を基に、歪特性の逆特性となる様な補正ベクトルを求める。更に、補正係数算出部107は、受信帯域制限フィルタとしてルートレイズドコサインフィルタの周波数領域特性(受信フィルタ特性)を予め求めておき、周波数bin毎に、補正ベクトルに重み付けをしても良い。
【0034】
歪推定部106は、ガードインターバル(GI)303が入力されている場合に、FFT部105から出力されたGI303のNポイントの周波数領域信号と、予め保持しておいたGI303の送信波形をNポイントフーリエ変換した周波数領域信号(第2リファレンス信号)との差分ベクトルを周波数bin毎に求める。なお、差分ベクトルがサンプリング位相ずれ特性(位相誤差特性)に相当する。
【0035】
なお、差分ベクトル、即ち位相誤差特性を求める場合、伝送路推定用フィールド302において推定した伝送路歪み特性を補正しても良い。或いは、歪推定部106は、サンプリング位相ずれに相当する周波数bin毎の位相誤差を求め、補正係数算出部107は、位相誤差の逆特性となる様な位相補正を、前述した補正ベクトルに乗算しても良い。
【0036】
補正係数乗算部108は、データ304が入力されている場合に、FFT部105から出力されたNポイントの周波数領域信号に対し、周波数bin毎に補正係数算出部107により出力された補正ベクトルを乗算し、歪み補正する。
【0037】
Nポイント逆フーリエ変換(IFFT)部109は、補正係数乗算部108により歪み補正したNポイントの周波数領域信号を逆フーリエ変換し、N個のサンプルポイントの時間領域信号に変換する。歪み補正したNポイントの周波数領域信号は、シンボル速度と同じサンプリング速度の時間領域信号に変換される。
【0038】
パラレル/シリアル変換部110は、N個のサンプルポイント(=Nシンボル)の時間領域信号をシリアル信号に変換する。パラレル/シリアル変換部110は、N個のサンプルポイントのうち、FFT及びIFFTの波形打ち切りの影響をうける先頭及び最後の数サンプルを除去した中央の部分サンプル列、例えば中央のN/2個のサンプルポイントのサンプル列を出力する。
【0039】
等化部102に入力されたサンプル列から補正の対象とするNシンボル(N個のサンプルポイント)を、N/2シンボルずつオーバーラップさせながら、等化部102に入力するため、等化部102から出力されるサンプル列の連続性が保たれる。
【0040】
図4は、補正の対象とする信号の処理単位の一例を表す説明図である。
図4では、シンボル速度に対してP=2倍の速度においてオーバーサンプリングしたサンプル列401が入力されている。また、補正対象の処理単位をN=64シンボルとする。
【0041】
シリアル/パラレル変換部104は、サンプル列401から64シンボル分に相当する128個のサンプルポイントのサンプル列402−1を選択する。シリアル/パラレル変換部104は、N/2=32シンボル(N=64)ずつオーバーラップさせたサンプル列402(402−1,402−2,402−2)を処理単位として選択する。
【0042】
等化部102は、選択されたサンプル列402−1を、128ポイントフーリエ変換及び歪み補正し、64ポイント逆フーリエ変換により64シンボル(64個のサンプルポイント)の時間領域信号403に変換する。
【0043】
時間領域信号403から、中央部分の32シンボル(32個のサンプルポイント)分のサンプル列404−1が選択されて出力される。サンプル列402−2、402−3も同様に処理され、サンプル列404−2,404−3(部分時系列)に変換される。
【0044】
これらのサンプル列402−1,402−2,402−2が連結されると、シンボル速度とサンプル速度が等しい等倍サンプリングのサンプル(シンボル)列405は、連続性が保たれたまま出力される。
【0045】
次に、等化部102における歪み補正について説明する。
【0046】
図5は、等化部102の内部の信号をスペクトルによって表現したグラフである。
図5(A)〜
図5(E)において、横軸は周波数若しくは周波数binを表し、縦軸は信号の強さを表す。
【0047】
図5(A)は、ADコンバータ101に入力されたアナログベースバンド信号のスペクトル501を表す。ここで、ベースバンド信号は複素信号であり、シンボル速度をfs(Hz)とする。入力信号であるアナログベースバンド信号のスペクトル501は、DC成分(0Hz)を中心に帯域幅fs(Hz)のスペクトルとなる。
【0048】
図5(B)は、入力信号をADコンバータ101においてP=2倍のオーバーサンプリングした後の信号のスペクトルを表す。サンプリング速度が2fs(Hz)であるので、fs(Hz)を中心に折り返し(エイリアシング)が生じる。
【0049】
図5(C)は、サンプル列を128ポイントFFTにおいて周波数領域信号に変換した信号のスペクトルを表す。横軸は、2fs(Hz)を128ポイントに離散化した周波数bin(k=0から127)となる。信号帯域は、k=0〜31の周波数binと、96〜127の周波数binに存在する。
【0050】
図5(D)は、128ポイントFFTにより周波数領域信号に変換した信号のスペクトルから信号帯域に相当する64ポイント分の周波数binを取り出した信号のスペクトルを表す。前述した様に、信号の周波数特性501aと、リファレンス信号の周波数特性502(点線)との差分が歪推定部106において求められ、差分を補正する補正係数503が補正係数算出部107により求められる。
【0051】
補正係数503を信号の各周波数binに乗算した結果、
図5(E)に表す様に、歪みが補正されたスペクトル504が得られる。スペクトル504を64ポイントIFFTにおいて時間軸信号に変換され、等化後の信号として出力される。
【0052】
ここで、数式を用いて歪み補正について説明する。
【0053】
送信信号をx(t)、受信信号をr(t)、送信装置と受信装置との間の伝送路特性をh(t)とする。x(t)、r(t)、h(t)をフーリエ変換した値をそれぞれX(f)、R(f)、H(f)とすると、数式(1)が得られる。
【0055】
伝送路推定シンボルをx_ref(t)、伝送路推定シンボルをフーリエ変換した値をX_ref(f)、受信した伝送路推定シンボルをr_ref(t)、受信した伝送路推定シンボルをフーリエ変換した値をR_ref(f)とすると、伝送路特性H(f)は数式(2)によって求まる。なお、伝送路推定シンボルのフーリエ変換した値R_ref(f)は、リファレンス信号の周波数特性502(
図5(D)参照)に相当する。
【0057】
送信したデータシンボルをx_data(t)、送信したデータシンボルをフーリエ変換した値をX_data(f)、受信したデータシンボルをr_data(t)、受信したデータシンボルをフーリエ変換した値をR_data(f)とすると、数式(3)が得られる。
【0059】
ここで、伝送路推定シンボルによって推定された伝送路特性H(f)と、データシンボル受信時点の伝送路特性H’(f)とが等しいとすれば、数式(4)に従って、受信装置10は、送信データシンボルを再生できる。即ち、再生した送信データシンボルX’_data(f)は、受信したデータシンボルをフーリエ変換した値R_data(f)に、補正係数1/H(f)を乗算することにより得られる。なお、補正係数1/H(f)は補正係数503(
図5(D)参照)に相当する。
【0061】
次に、等化部102におけるサンプリングタイミングずれ補正について説明する。
【0062】
図6は、等化部102の内部の信号を表すグラフである。
図6(A)〜(E)のうち
図6(D)を除き、横軸は時間軸を表し、縦軸は信号の強さを表す。
図6(D)においては、横軸は周波数を表し、縦軸は位相差を表す。
【0063】
図6には、送信の信号点601、及び等化部102によって再生された信号点602が表されている。また、送信の信号点601は、シンボル速度fs(Hz)、即ちシンボル間隔1/fs(sec)によってBPSK変調されている。
【0064】
送信時に帯域制限フィルタ(例えば、ルートレイズドコサインフィルタ)により帯域が制限され、送信信号は、
図6(A)の実線に示すアナログベースバンド信号波形として送信される。
【0065】
図6(B)は、入力信号(点線)をADコンバータ101がP=2倍のオーバーサンプリングタイミングによって(つまり、1/2fsごとに)サンプリングしたサンプル列(黒点)を表す。
図6(B)では、送信信号点のタイミング(シンボルタイミング)とサンプリングタイミングが一致している場合が示される。
【0066】
一方、
図6(C)には、サンプリングタイミングの位相がシンボルタイミングとずれている場合が示されている。
【0067】
図6(B)及び
図6(C)において、サンプリングされた信号を周波数領域に変換し、周波数bin毎の位相差を検出すると、
図6(D)に表す様に、サンプリング位相差は、周波数に比例した位相回転として検出できる。
【0068】
例えば、補正係数算出部107は、レファレンス信号(
図5(B)参照)の周波数bin毎の複素ベクトルの位相を基準とし、既知信号であるガードインターバル303の信号を歪み補正した場合の周波数bin毎の残留位相誤差を直線近似する(
図6(D)参照)。
【0069】
補正係数算出部107は、残留位相誤差を打ち消すために、逆回転を掛ける様に補正することにより、時間領域信号に変換した場合のサンプリングタイミングをシンボルタイミングに合わせることができる(
図6(E)参照)。
【0070】
図6(E)では、
図6(C)に示す入力信号に対し、周波数領域において
図6(D)に表す様な位相回転を補正してから時間領域信号に変換することにより、シンボルタイミング(1/fs間隔)に送信信号点が再生されている(再生した信号点602参照)。再生した信号を復調部103において判定することによって、
図6(E)の実線によって示す受信ビット列が得られる。
【0071】
ここで、数式を用いてサンプリングタイミングすれ補正について説明する。
【0072】
送受信間のサンプリングクロック周波数ずれがあると、受信装置10においてフーリエ変換の対象とする切り出しブロック期間が送信信号に対して徐々にずれていく。
図7は、送受信間のサンプリング周波数ずれによる切り出しブロックのタイミングずれを表すタイミングチャートである。
【0073】
図7(A)はサンプリング周波数ずれが無い場合を示し、
図7(B)はサンプリング周波数ずれがある場合を示す。サンプリング周波数のずれとして、切り出しブロックのタイミングずれΔtが生じている。
【0074】
図6(B)、(C)に表す様に、ブロック内においてサンプル位相がずれることにより、周波数領域に変換された信号には、
図6(D)に示す様に、周波数binに比例する位相回転が生じる。
【0075】
位相回転が生じた受信信号をフーリエ変換した値R’(f)は、数式(5)によって表される。ここで、パラメータNは、FFTポイント数(ブロックのサンプル数)を表す。パラメータfは、周波数binを表す。パラメータΔtは、切り出しブロックのタイミングずれを表す。
【0077】
伝送路推定シンボルの切り出しとデータシンボルの切り出しとにおいて、送信信号に対して切り出しブロックのタイミングずれΔtが生じることにより、次の様な事象が起こる。
【0078】
具体的には、前述したデータシンボルの受信信号をフーリエ変換した値R’_data(f)を、伝送路推定シンボルによって推定された伝送路特性H(f)によって除算して周波数領域等化しても、数式(6)に表す様に、切り出しブロックのタイミングずれΔtに起因する各周波数における位相回転の項が残る。
【0080】
ここで、データ部分に既知系列として挿入されているガードインターバル303をx_gi(t)とし、ガードインターバル303をフーリエ変換した値をX_gi(f)とする。ガードインターバル303については、伝送路特性H(f)及びXgi(f)によって除算することにより、数式(7)に表す様に、切り出しブロックのタイミングずれΔtに起因する位相回転θ(f)を推定できる。
【0082】
よって、補正係数算出部107は、位相回転θ(f)をキャンセルするような逆特性1/θ(f)を数式(8)に表す様に求めることができる。
【0084】
これにより、伝送路特性H(f)を補正すると、タイミングずれΔtが補正された伝送路特性H’’(f)は、数式(9)により表される。
【0086】
これ以降のデータシンボルは、補正された伝送路特性H’’(f)によって等化されるため、等化器102は、送信データシンボルを再生できる。再生したデータシンボルは、数式(10)により表される。
【0088】
本実施形態の受信装置によれば、Nシンボルに相当するブロック単位において周波数領域に変換し、伝送路の歪み特性及びサンプリング位相誤差を補正するので、回路規模を増大せずに、シンボルタイミングずれ及び歪み補正できる。
【0089】
従って、サンプル毎の高速演算が求められる時間領域におけるシンボル同期を用いなくても、つまり、シンボル速度が高速であるため、時間領域処理によるシンボル同期が困難な場合でも、シンボルタイミングずれを補償できる。
【0090】
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属すると了解される。
【0091】
なお、実施の形態にかかる各構成は、集積回路であるLSIとして実現されてもよい。この場合、1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIと称したが、集積度の違いによっては、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと称呼されることもある。
【0092】
また、集積回路化の手法は、LSIに限られず、専用回路または汎用プロセッサにより集積回路化してもよい。また、LSI製造後にプログラムできるFPGA(Field-Programmable Gate Array)又は、LSI内部の回路セルの接続、設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを用いてもよい。
【0093】
また、これらの機能ブロックの演算は、例えばDSP、CPUを用いて演算できる。さらに、これらの処理ステップはプログラムとして記録媒体に記録して実行できる。
【0094】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その別技術を用いて機能ブロックを集積化してもよい。