(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5707246
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 33/02 20060101AFI20150402BHJP
G01R 27/22 20060101ALI20150402BHJP
G01N 27/06 20060101ALI20150402BHJP
【FI】
D06F33/02 P
G01R27/22
G01N27/06 Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-137950(P2011-137950)
(22)【出願日】2011年6月22日
(65)【公開番号】特開2013-530(P2013-530A)
(43)【公開日】2013年1月7日
【審査請求日】2014年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立アプライアンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】文野 高之
(72)【発明者】
【氏名】小森 啓礼
(72)【発明者】
【氏名】相馬 倫弘
(72)【発明者】
【氏名】董 宇
【審査官】
伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−019556(JP,A)
【文献】
特開2010−213889(JP,A)
【文献】
特開2010−185702(JP,A)
【文献】
特開2001−038089(JP,A)
【文献】
特開2008−113978(JP,A)
【文献】
特開平04−300591(JP,A)
【文献】
特開2009−195737(JP,A)
【文献】
特開2010−256023(JP,A)
【文献】
特開昭58−204373(JP,A)
【文献】
特開2003−260290(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0022317(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 1/00−51/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体内に防振支持され、内部に洗濯水を貯留する外槽と、前記外槽内に回転可能に支持され、洗濯物が収容される洗濯兼脱水槽と、前記洗濯兼脱水槽を回転駆動させる駆動装置と、前記外槽内に給水する給水手段と、前記駆動装置および前記給水手段を制御して少なくとも洗い運転を実行可能な制御部と、互いに向かい合う電極を有する電導度検出手段を備え、前記電極間のインピーダンスの変化を発振回路で周波数に変換することにより電導度を算出し、算出した電導度に応じて前記制御部で洗い運転の制御を行う洗濯機において、
前記電極を絶縁するトランスの二次側には、
前記トランスを介して接続され、更なる絶縁を行う第1のコンデンサと第2のコンデンサと、
発振周波数を決める第3のコンデンサと、が設けられ、
前記第1のコンデンサと前記第2のコンデンサの少なくとも1つに対して、前記第1または前記第2のコンデンサに溜まった電荷を放電させる抵抗又はコイルを並列に設けたことを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
請求項1において、前記第1のコンデンサ又は第2のコンデンサの代わりに、抵抗又はコイルを設けたことを特徴とする洗濯機。
【請求項3】
請求項1において、前記第1のコンデンサ及び第2のコンデンサの代わりに、抵抗又はコイルを設けたことを特徴とする洗濯機。
【請求項4】
請求項1において、発振周波数を決める前記第3のコンデンサ及び抵抗を、検出する電導度の程度に応じて選択する切換部を設けたことを特徴とする洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に洗濯に使用する水硬度を計測する機能を有する洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯機は、水道水で洗剤を溶解した洗濯水で衣類の洗い運転を行うものである。洗濯機に給水される水道水は、カルシウムやマグネシウムなどの硬度成分を含んでいる。硬度成分は、洗剤の主成分である界面活性剤と結合して石鹸かすとなるため、洗濯水中の界面活性剤量を減少させ、洗浄力を低下させる原因となっている。また、水道水の硬度は、各地域で異なり、また季節ごとにも変動する。このため、洗濯に使用する水の硬度から洗剤量を算出し、適切な運転を行う洗濯機が求められている。
【0003】
下記特許文献1には、洗濯水が溜まる外槽に洗濯水の電導度を測定するための一対の電極を備え、測定した洗濯水の電導度から、洗濯水の硬度を換算し、洗濯水の硬度に応じて洗濯工程を行う洗濯機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−195737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で開示された洗濯機は、外槽に設けられた空気チャンバの底面から外槽内に突出するように一対の電極が設けられている。このような構造を設けた洗濯機においては、電導度が変化していないにも関わらず、時間の経過と共に電導度が変化する問題がある。また、広範囲に電導度を計測する場合、精度が落ちる問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、その目的は、電導度を精度良く測定して、その電導度に応じた制御を行うことのできる洗濯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
筐体と、前記筐体内に防振支持され、内部に洗濯水を貯留する外槽と、前記外槽内に回転可能に支持され、洗濯物が収容される洗濯兼脱水槽と、前記洗濯兼脱水槽を回転駆動させる駆動装置と、前記外槽内に給水する給水手段と、
前記駆動装置および前記給水手段を制御して少なくとも洗い運転を実行可能な制御部と、互いに向かい合う電極を有する電導度検出手段を備え、前記電極間のインピーダンスの変化を発振回路で周波数に変換することにより電導度を算出し、算出した電導度に応じて前記制御部で洗い運転の制御を行う洗濯機において、前記電極を絶縁するトランスの二次側には、前記トランスを介して接続され、更なる絶縁を行う第1のコンデンサと第2のコンデンサと、発振周波数を決める第3のコンデンサと、が設けられ、前記第1のコンデンサと前記第2のコンデンサの少なくとも1つに対して、前記第1または前記第2のコンデンサに溜まった電荷を放電させる抵抗又はコイルを並列に設けた。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、洗濯に用いられる水の硬度(電気伝導度)を高精度に測定し、能率よく洗濯が行える洗濯機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る洗濯機の外観斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る洗濯機の内部構造を示すために筐体の一部および外槽を切断して示した右側断面図である。
【
図4】
図2の電導度検出手段11の線断面図である。
【
図5】制御装置16の詳細をブロック図で示したものである。
【
図7】電導度の測定精度を向上させた電導度回路2。
【
図8】電導度の測定精度を向上させた電導度回路3。
【
図9】電導度の測定精度を向上させた電導度回路4。
【
図10】電導度の測定精度を向上させた電導度回路5。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本説明において、同一の構成要素には同一の番号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る洗濯機(洗濯乾燥機)の外観斜視図である。
【0012】
洗濯機1は、洗濯兼脱水槽7(
図2参照)の回転軸が略鉛直方向の縦型式洗濯機である。まず、洗濯機1の筐体の上部は外蓋2が設けられている。また、外蓋2は、山型に折れ曲がりながら後ろ側に開くことにより開口し、洗濯兼脱水槽7(
図2参照)に衣類(洗濯物)が出し入れ可能になっている。そして、洗濯機1上面には、水道栓からの給水口3,電源スイッチ5が設けられ、外蓋2の正面側には、操作スイッチおよび表示器からなる操作表示パネル6が設けられている。洗濯機1下部には排水口4が設けられている。
【0013】
図2は、本実施形態に係る洗濯機1の内部構造を示すために筐体の一部および外槽8を切断して示した右側断面図である。衣類を収容する洗濯兼脱水槽7は、略有底円筒状であって、外槽8内に回転可能に支持されている。
【0014】
外槽8は、筐体内に防振支持され、洗濯兼脱水槽7を同軸上に内包している。この外槽8は、円盤状の底壁部と円筒状の周壁部から形成され、上側が開口する構造となっており、内部に洗濯水を貯留する。また、外槽8には、洗濯に使用される水の電導度を検出するための電導度検出手段11として、互いに平行な2枚の電極P1,P2が設けられており、この電導度検出手段11は制御装置16に接続されている。
【0015】
洗濯兼脱水槽7の内側底面には、回転翼10が設けられ、外槽8の底面の外側中央には、モータ9が設けられている。また、モータ9は、外槽8を貫通し、洗濯兼脱水槽7および回転翼10と結合し、洗濯兼脱水槽7等を回転駆動させる。更に、モータ9は、その回転を検出するホール素子あるいはフォトインタラプタなどで構成される回転検出装置12を備えている。
【0016】
給水口3から供給された水は、給水手段を介して外槽8と洗濯兼脱水槽7の間から外槽9内に注水される。外槽8の底面は、排水するための穴が開いており、排水バルブ13を介して排水口4に接続されている。また、循環ポンプ15は、下部連通管14を介して、洗濯兼脱水槽7の上部から洗濯兼脱水槽7内に散水し、水を循環させている。
【0017】
更に、制御装置16は、この電導度検出手段11で検出された電導度又はこの電導度から得られた硬度を記憶する電導度・硬度記憶部と、この電導度・硬度記憶部に記憶された前回運転時の電導度又は硬度を用いて洗剤量,洗い時間,すすぎ時間及び脱水時間を判定する制御部を有し、この判定後に、前記電導度検出手段11で検出される電導度に応じて洗い時間,すすぎ時間,脱水時間の少なくとも1つを変更する。また、この制御部16は、モータ9や給水手段等を制御して、洗い工程等を運転するための指令も行っている。
【0018】
電導度検出手段11は、外槽8下部に取り付けられている。そして、電導度検出手段11を構成する電極単品Pは
図3に示した形状をしており、
図4に示すように一対の電極P1,P2は、絶縁体17で固定され、一定の間隔を設けた状態で設置されている。
【0019】
制御装置16は、
図5に記載したように、操作SW18,水温センサ19,水位センサ20及び電導度の値を基に、マイコン22で最適な洗濯条件を算出し、モータ9の動作時間と、給水バルブ23,排水弁24を制御して洗濯を行うようになっている。また、電導度検出手段11は、
図6に示すような抵抗R1〜R6,コンデンサC1〜C3,オペアンプOP1,2,トランスT1,電極P1,P2からなる発振回路において、負帰還を構成している電極P1,P2のインピーダンスが変化することで、検出することができるようになっている。
【0020】
次に、電導度を計測する機能の詳細について説明する。
図6に示すように、互いに向かい合う電極P1,P2は外槽8に設けられ、トランスT1を介して二次側にある第1のコンデンサC1及び第2のコンデンサC2に接続されている。そして、電極P1,P2間のインピーダンスの変化を発振回路で周波数に変換することにより、電導度が算出される。尚、トランスT1は電極P1,P2を絶縁するために設けたものであり、第1のコンデンサC1及び第2のコンデンサC2は更に絶縁して二重に保護するために設けたものである。
【0021】
ここで、第1のコンデンサC1及び第2のコンデンサC2に電荷が溜まると、発振周波数がずれ、正確な電導度が計測できないことがある。このため、トランスの一次側と二次側とを数メガオームの抵抗で接続する方法も考えられるが、その場合には、絶縁が十分に確保できない。そこで、本実施形態では、
図7に示すように、第1のコンデンサC1に対し、この第1のコンデンサC1に溜まった電荷を放電させる素子として、抵抗R7を並列に接続する。このため、電荷を開放でき、電極P1,P2間のインピーダンスが正確に計測できるようになり、電導度を精度良く測定することが可能となる。尚、追加したこの抵抗R7は、第2のコンデンサC2に並列して挿入しても同様の効果が得られる。
【0022】
また、
図8に示したように、第1のコンデンサC1の代わりに抵抗R7に置き換えることでも同様の効果が得られる。即ち、コンデンサC1,C2の少なくとも一方を、抵抗又はコイル等の直流電流を流すことができる素子に変更することで、電導度の変化をなくすことができる。
【0023】
更には、
図9では、上記
図7,
図8と同様に、互いに向かい合う電極P1,P2とトランスT1を有する負帰還回路で電導度検出手段11が構成されているが、上記
図7,
図8と異なり、負帰還回路には第1コンデンサC1及び第2のコンデンサC2を設けず、これらのコンデンサの代わりに、抵抗R7とR8を設けている。このような構成によっても、
図7,
図8と同様に、電導度を精度良く検出することが可能となる。
【0024】
上記回路6では、水,洗剤,汚れ等含んだ多種多様な電導度を計測することができ、純水に近い水は電導度が低く、泥で汚れた水などは電解質が混じっているため、電導度が高い。広範囲な電導度を測定しようとした場合、電導度に対する出力(発振)周波数は、三次曲線のような曲線を描き、近似式を用いても誤差が大きくなる。そのため、計測する電導度の範囲を明確し、三次曲線の中でも二次近似できる範囲になるように、発振周波数を決める抵抗R2や第3のコンデンサC3を調整することで、より精度の良い電導度が求められる。
【0025】
また、洗濯機1は、洗濯,脱水,すすぎ、のように複数の工程からなっている。そこで、
図10のように、発振周波数を決める抵抗R2やコンデンサC3を、工程毎に切換部SW1,SW2で適宜切換えることで、各工程に適した回路により電導度を精度良く計測することが可能となる。また、この切換部SW1,SW2は、マイコン22等の指令に基づき、汚れ度合い等に応じて抵抗やコンデンサに切換え、計測する電導度の程度にあわせた回路定数に変更することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 洗濯機
2 外蓋
3 給水口
4 排水口
5 電源スイッチ
6 操作表示パネル
7 洗濯兼脱水槽
8 外槽
9 モータ
10 回転翼
11 電導度検出手段
12 回転検出装置
13 排水バルブ
14 下部連絡管
15 循環ポンプ
16 制御装置
17 絶縁体
18 操作SW
19 水温センサ
20 水位センサ
21 電導度回路
22 マイコン
23 給水バルブ