(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態の監視カメラについて説明する。
図1に示すように、監視カメラ1は、円筒状の支持部10と、被写体を撮影するカメラ部20と、カメラ部20の構成要素である撮像装置21を回転させる回転機構30(
図2参照)とを備えている。
【0017】
支持部10の一方の端面には、監視カメラ1を部屋の天井または側壁等に取り付けるための取り付け部が設けられている。支持部10の他方の端面には、カメラ部20が回転可能に設けられている。
【0018】
支持部10の側面には水平度スイッチ11が設けられている。水平度スイッチ11は、撮像画像の水平度を算出する処理(以下、「水平度算出処理」)を実行するためのスイッチである。水平度スイッチ11が「ON」にされたときは、水平度算出処理を実行し、「OFF」にされたときは水平度算出処理を実行しない。
【0019】
回転機構30(
図2参照)は、独立した3つの回転軸を有する。第1回転軸C1は、支持部10の中心軸と同軸上にある。第2回転軸C2は、第1回転軸C1に垂直な軸である。第3回転軸C3は、第1回転軸C1に垂直であり、かつ第2回転軸C2に垂直な軸である。
【0020】
撮像装置21は、第1回転軸C1を中心軸として360度回転し、第2回転軸C2を中心軸として180度回転し、第3回転軸C3を中心軸として360度回転する。
撮像装置21の向きは、同撮像装置21を、第1回転軸C1を中心軸として回転するとともに第2回転軸C2を中心軸として回転することにより設定される。撮像画像の水平度の調整は、第3回転軸C3を中心軸として撮像装置21を回転することにより行われる。
【0021】
図2を参照して、カメラ部20について説明する。
カメラ部20は、被写体を撮影する撮像装置21と、撮像装置21から出力するアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換するアナログ信号処理回路22と、デジタル画像信号に基づいて画像処理する画像処理回路23(画像処理装置)と、撮像装置21および画像処理回路23を制御する制御回路24とを備えている。
【0022】
撮像装置21は、第1〜第3回転軸C3を備える回転機構30に取付けられている。一方、カメラ部20の構成要素のうち撮像装置21以外の構成要素、すなわちアナログ信号処理回路22、画像処理回路23、および制御回路24は、回転機構30が装着される基板に取付けられている。
【0023】
撮像装置21は、複数のレンズ25と、レンズ25による結像を電子情報に変換する撮像素子26と、絞り機構27と、焦点調整機構28とを備えている。撮像素子26は、CCD(Charge Coupled Device)、CMOSイメージセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor Image Sensor)等のイメージセンサにより構成されている。撮像素子26は、光学像を電子情報に変換してアナログ画像信号を形成する。
【0024】
アナログ信号処理回路22は、撮像装置21から出力されるアナログ画像信号をRGBの各色の信号に分離し、ゲイン調整し、さらに、ゲイン調整された信号をデジタル画像信号に変換する。なお、撮像素子26としてCMOSを採用する場合は、CMOSイメージセンサとアナログ信号処理回路とを1チップもしくは1個のモジュールとして構成してもよい。
【0025】
画像処理回路23は、アナログ信号処理回路22から出力されたデジタル画像信号を輝度信号および色差信号に変換し、撮像画像を形成する。以降では、この変換を「通常画像処理」という。また、撮像画像の水平度を算出する「水平度算出処理」を実行する。「水平度算出処理」は、「平滑化処理」と「縦方向エッジ処理」と「水平度処理」とを含む。
【0026】
撮像画像は、縦方向および横方向に配列された画素により構成されている。撮像画像において縦方向に並ぶ画素の組を画素列とする。所定の画素は、行列により特定される。例えば、撮像画像の上端からi行目、横端からj列目の画素は、(i,j)により特定される。以降の説明では(i,j)により特定される画素を画素X(i,j)とする。そして、画素X(i,j)の輝度を「Y
i,j」とする。
【0027】
平滑化処理では、撮像画像の縦方向において輝度を平均化する。すなわち、撮像画像の縦方向画素のうち、輝度の変化が大きいところを少なくする。これにより縦方向においてノイズが小さくなる。撮像画像の横方向に隣接する画素列の輝度差は、維持される。なお、画素列の輝度とは、画素列に含まれる画素の輝度の総和を示す。
【0028】
縦方向エッジ処理では、撮像画像の縦エッジを抽出する。
縦エッジは、横方向に隣り合う画素に輝度差があるところ(縦コントラスト)を示し、縦方向に輝度差のあるところとは区別される要素である。縦エッジの方向とは、縦コントラストが連続して存在するところの画素の並びをいう。縦コントラストが連続するところの画素の並びは、撮像画像の縦方向の輪郭線に対応する。
【0029】
水平度処理では、縦エッジの方向と撮像画像の縦方向とのが一致する度合いを示す水平度パラメータを算出する。水平度パラメータは、縦エッジ処理により抽出した縦エッジに基づいて算出される。
【0030】
制御回路24は、画像処理回路23で演算される光量情報に基づいて絞りを調整する。また、所定周期毎に画像処理回路23の動作を制御する。さらに、水平度スイッチ11のON操作に基づいて、画像処理回路23に対し通常画像処理に加えて「水平度算出処理」を実行させる。水平度スイッチ11のOFF操作に基づいて、画像処理回路23に対し通常画像処理のみを実行させる。
【0031】
図3を参照して、制御装置が実行する「水平度算出処理」の手順を説明する。
この処理は、水平度スイッチ11のON操作に基づいて実行される。また、一つの撮像画像に相当する画像データが画像処理回路23で処理される都度、水平度算出処理が実行される。
【0032】
ステップS100では、撮像画像において画素範囲(設定画素範囲)を設定する。画素範囲は、ステップS110以降の処理を行なう範囲を示す。この画像範囲は、初期値として撮像画像の全範囲に設定されている。
【0033】
ステップS110において、「平滑化処理」を実行する。すなわち、撮像画像が縦方向において輝度の平均化処理を行う。これにより、縦方向において画素の輝度のノイズが小さくなる。
【0034】
ステップS120において、「縦方向エッジ処理」を実行する。これにより、撮像画像の縦エッジが抽出される。
ステップS130において、縦方向エッジ処理された処理画像に対して「水平度処理」が実行される。これにより、撮像画像の水平度パラメータが算出される。
【0035】
ステップS140において、「表示処理」を実行する。撮像画像に、水平度パラメータを示すインジケータ画像情報を重畳し、表示用の撮像画像を形成する。
[平滑化処理]
平滑化処理の一例について説明する。
【0036】
平滑化処理では、(1)式で示される処理が行われる。
【0038】
この処理によれば、演算に係る画素X(i,j)と、この画素X(i,j)の上に隣接する画素X(i−1,j)と、画素X(i,j)の下に隣接する画素X(i+1,j)との平均値を算出する。そしてこの平均値を、演算に係る画素X(i,j)の補正輝度Y´
i,jとする。
【0039】
このような処理により、縦方向に輝度が平滑化されるのに対して、横方向には輝度が平滑化しない。このため、撮像画像において、高輝度画素が縦方向に連続している部分は、平滑化処理により、その縦方向の画素列に含まれる画素全体の総輝度は維持される。一方、高輝度画素が横方向に連続している部分は、縦方向上下の画素と平滑化されることで輝度が小さくなる。すなわち、縦方向の平滑化処理によれば、高輝度画素が縦方向に連続する部分が強調される。
【0040】
[縦方向エッジ処理]
次に、縦方向エッジ処理について説明する。
縦方向エッジ処理では、平滑化処理後の画像(平滑化処理画像)について、各画素の補正輝度を参照し、演算に係る画素の補正輝度と、この画素に横方向に隣接する画素の補正輝度とを読み込み、これらの差の絶対値(以下、「縦成分コントラスト」)を算出する。具体的には、(2)式に示される処理を行う。
【0042】
・Z
i,jは、縦成分コントラスト。
・Y´
i,jは、平滑化処理後の画素X(i,j)の補正輝度を示す。
・Y´
i,j−1は、平滑化処理後の画素X(i,j−1)の補正輝度を示す。
【0043】
この処理によれば、演算に係る画素X(i,j)とこの画素に横方向に隣接する画素X(i,j−1)について、両画素の補正輝度が同じであるときは、演算に係る画素X(i,j)に縦成分コントラストとして「0」が与えられる。
【0044】
これに対して、演算に係る画素X(i,j)とこの画素に横方向に隣接する画素X(i,j−1)について、両画素の補正輝度が異なるときは、演算に係る画素X(i,j)に縦成分コントラストとして「α(両画素の補正輝度の差の絶対値)」が与えられる。
【0045】
すなわち、縦方向エッジ処理によれば、横方向に並ぶ2つの画素について補正輝度に変化のない画素には、縦成分コントラストとして「0」が与えられる。一方、横方向に並ぶ2つの画素について補正輝度に変化のある画素には、縦成分コントラストとして補正輝度の差に応じた値が与えられる。横方向に補正輝度の差がある画素は、縦エッジを構成するため、このような処理により、撮像画像から縦エッジが抽出される。
【0046】
図4〜
図6を参照して、縦方向エッジ処理を説明する。
図4は、被写体を監視カメラ1により撮像したときの撮像画像である。監視カメラ1の水平度が正確に調整されていないため、撮像画像内の被写体画像の鉛直方向と、撮像画像の縦方向とが一致していない。
【0047】
図5は、撮像画像を、平滑化処理および縦方向エッジ処理をした後の処理画像を示す。この図からは、撮像画像の横方向にのびるエッジの殆どが消去され、縦エッジが抽出されていることが分かる。
【0048】
図6は、
図5の一部を拡大した図である。
図5では抽出された縦エッジは斜め方向に向いているように見えるが、
図5を拡大すると、抽出された縦エッジは、縦方向に並ぶ高輝度画素の要素により構成されていることが分かる(
図6参照)。
【0049】
[水平度処理]
図7を参照して、水平度処理の一例を示す。
水平度処理とは、上記したように、縦エッジの方向と撮像画像の縦方向とのが一致する度合いを示す水平度パラメータを算出する処理である。水平度パラメータ(PHL)は、縦成分コントラスト(Z)の総和として与えられる。
【0051】
縦成分コントラストの総和が、水平度パラメータとして用いることができる理由を、以下に説明する。
図7は、縦方向エッジ処理した後の撮像画像を図案化したものである。
【0052】
なお、図中においては、縦成分コントラストが「0」よりも大きい画素を「×」印として示す。また、破線の円は、縦エッジの長さを直径とする。以降、縦成分コントラストが「0」よりも大きい画素を「コントラスト画素」という。
【0053】
図7(a)は被写体の水平度がとれている場合を示す。この
図7(a)には、処理画像の縦方向に、所定長さの縦エッジが示されている。この場合、コントラスト画素の個数は、縦エッジの長さに応じた数となり、コントラスト画素の数は8個となる。
【0054】
図7(b)は被写体の水平度がとれていない場合を示す。
この場合、
図7(b)には、処理画像の縦方向に対し斜め方向に、所定長さの縦エッジが示されている。この場合、コントラスト画素の個数は、水平度がとれている場合のコントラスト画素の個数よりも少ない。すなわち、
図7(b)では、コントラスト画素は6個となる。これは、撮像画像が、縦方向および横方向に配列された画素の集合により構成されていること、各画素の辺の長さは対角線の長さよりも短いことによる。
【0055】
すなわち、コントラスト画素の個数は、縦エッジの方向と撮像画像の縦方向との一致度合いを示す。撮像画像における縦成分コントラストの総和は、コントラスト画素の個数と相関関係にあるため、縦成分コントラストの総和も縦エッジの方向と撮像画像の縦方向との一致度合いを示す。このため、縦成分コントラストの総和を水平度パラメータとして用いることができる。
【0056】
[水平度処理の変形例]
図8を参照して、水平度処理の他の例について説明する。
この水平度処理では、平滑化処理および縦方向エッジ処理が実行された処理画像において、各画素について、演算に係る画素とこれに横方向に隣接する画素との縦成分コントラスト(Z)の差(Z
i,j−Z
i,j−1)を中間演算値として算出する。そして、各画素列について、中間演算値の総和を列コントラスト(W)として算出する。そして、撮像画像の全体において、列コントラストの総和を算出し、この総和を水平度パラメータ(PHL)とする。具体的には、(4)式および(5)式の演算を行う。
【0057】
【数4】
(4)式は、列コントラスト(W)を示す。
【0059】
(5)式は、水平度パラメータ(PHL)を示す。
図8(a)および
図8(b)を参照して、これら演算内容について説明する。
図8(a)は、縦方向エッジ処理した後の撮像画像の図案化した図であり、縦エッジが撮像画像の縦方向に沿っていることを示す。ここでは、各画素は以下の値が与えられているとする。
・画素列(ja−2)に含まれる各画素は、縦成分コントラストが「0」である。
・画素列(ja−1)に含まれる各画素は、縦成分コントラストが「0」である。
・画素列(ja)に含まれる各画素は、縦成分コントラストが「1」である。
・画素列(ja+1)に含まれる各画素は、縦成分コントラストが「0」である。
・画素列(ja+2)に含まれる各画素は、縦成分コントラストが「0」である。
【0060】
このような画像について、(4)式および(5)式の処理を行うと、水平度パラメータの値は「16」となる。
図8(b)は、縦方向エッジ処理した後の撮像画像を図案化した図であり、縦エッジが撮像画像の縦方向に斜めであることを示す。ここでは各画素は以下の値が与えられているとする。なお、比較のため、全部の画素の縦成分コントラストの総和は、
図8(a)の撮像画像の縦成分コントラストの総和と同じにしている。
・画素列(ja−2)に含まれる各画素は、縦成分コントラストが「0」である。
・画素列(ja−1)に含まれる2個の画素は、縦成分コントラストが「1」である。
・画素列(ja)に含まれる4個の画素は、縦成分コントラストが「1」である。
・画素列(ja+1)に含まれる2個の画素は、縦成分コントラストが「1」である。
・画素列(ja+2)に含まれる各画素は、縦成分コントラストが「0」である。
【0061】
このような画像について、(4)式および(5)式の処理を行うと、水平度パラメータは「8」となる。
図8(a)の撮像画像と
図8(b)の撮像画像とは縦成分コントラストの総和が等しいが、(4)式および(5)式の処理によれば、水平度パラメータは異なる値をとる。これは、(4)式の効果である。
【0062】
(4)式では、所定の2つの画素列において、横並びに隣接する2つの画素について縦成分コントラストの差を算出し、各行にわたってこの差の総和の絶対値を算出する。縦成分コントラストのある画素が2つの画素列にわたって分散している場合は互いに打ち消しあう項が存在するため、縦成分コントラストのある画素が縦方向に一列に整列している場合に比べて、各行にわたる総和の絶対値が小さくなる。具体的には、列(ja−1)についての(4)式の演算式は「(0−0)+(0−0)+(0−1)+(0−1)+(0−1)+(0−1)+(1−0)+(1−0)」となり、4つの項で互いに打ち消しあう。すなわち、(4)式の処理は、撮像画像の縦方向と縦成分コントラストの並び方向(縦エッジ)との一致する度合いを算出する。
【0063】
以上のように、(4)式および(5)式によれば、撮像画像の縦方向に対して縦エッジが傾くほど、水平度パラメータが小さい値となる。すなわち、これらの式により、撮像画像を処理することにより、撮像画像が斜めになっているか否かの程度を評価することが可能となる。
【0064】
図9を参照して、画像処理回路23が実行する表示処理について説明する。
表示処理では、水平度パラメータの値をインジケータ40としての画像に形成し、この画像を撮像画像に重畳する処理を行う。また、所定期間(水平度パラメータの算出開始時期から新たに前記撮像画像を処理する時期までの期間)にわたる水平度パラメータの値のうち最も大きい値をピーク値として記憶する。そして、ピーク値に基づいてピークマークPMとしての画像を形成し、この画像を撮像画像に重畳する。
【0065】
すなわち、水平度算出処理の実行中、撮像画像には、インジケータ40とピークマークPMが含まれる。そして、撮像画像が更新される都度、インジケータ40とピークマークPMが更新される。
【0066】
以下、表示装置(画像再生装置)に示される撮像画像について説明する。
図9に示されるように、水平度処理により得られた水平度パラメータは、表示装置の表示画面上において、基準位置PAを基点として横にのびるインジケータ40の長さとして表示される。水平度パラメータが大きいときは、インジケータ40が伸張し、水平度パラメータが小さいときは、インジケータ40が短縮する。インジケータ40は、撮像画像の処理毎に更新される。
【0067】
水平度処理の実行開始時期以降の期間において、水平度パラメータの最大値が更新されたときは、インジケータ40の先端部分の位置に、ピークマークPMが移動する。ピークマークPMは、その後水平度パラメータの最大値が更新されたとき、さらに移動する。すなわち、ピークマークPMは水平度パラメータの最大値を示す。
【0068】
図9を参照して、監視カメラ1の設置方法について説明する。
作業者は、監視カメラ1を天井にとりつけるとき、表示装置(モニタ)を同監視カメラ1に接続する。表示装置には、監視カメラ1により撮像された撮像画像が表示される。作業者は、この撮像画像を見ながら、撮像装置21を第1回転軸C1および第2回転軸C2を中心軸として回転し、撮像装置21を所定方向に固定する。
【0069】
そして、作業者は、水平度スイッチ11を「ON」に設定して、第3回転軸C3を中心軸として撮像装置21を回転することにより撮像画像の水平度を調節する。水平度スイッチ11を「ON」にすると、水平度算出処理が実行されるため、表示装置の表示画面には、インジケータ40が表示される。
【0070】
ピークマークPMが最大となる位置が、撮像画像の縦エッジの方向と撮像画像の縦方向とが最も一致するところであるため、まず、ピークマークPMが最大値となる領域を探すことが好ましい。
【0071】
具体的には、作業者は、このインジケータ40を見ながら、第3回転軸C3を中心軸として撮像装置21を回転する。撮像装置21の回転にともなって、撮像画像の縦エッジの方向と、撮像画像の縦方向との一致度合いが変わるため、インジケータ40が変化する。インジケータ40の横長さが大きくなる度に、ピークマークPMの位置が移動する。
【0072】
図9(a)は、撮像画像の縦エッジの方向と、撮像画像の縦方向とがずれている状態を示す。このとき、インジケータ40の横長さは、基準位置PAからピークマークPMまでの距離よりも短い。
【0073】
図9(b)は、撮像画像の縦エッジの方向と、撮像画像の縦方向とが一致している状態を示す。このとき、インジケータ40の横長さが最大となり、インジケータ40の先端がピークマークPMの位置に重なる。このとき、撮像装置21の水平度が高い状態にある。
【0074】
作業者は、このようなインジケータ40を確認しながら監視カメラ1を設置することができるため、監視カメラ1の設置作業を短時間で済ますことができる。また、インジケータ40は水平度算出処理に基づいて算出されているため、撮像画像の水平度は高い。
【0075】
(実施形態の効果)
本実施形態によれば以下の効果が得られる。
(1)本実施形態では、撮像画像の縦エッジを抽出する縦方向エッジ処理、および縦エッジの方向と縦方向とが一致する度合いを水平度パラメータとして算出する水平度処理を実行する。
【0076】
地面に設置される建物、屋内に設置される家具等の多くの人工物は、鉛直方向に沿った構成部品を有する。これら人工物の撮像画像には鉛直方向の輪郭線が含まれる。例えば、建物の柱の稜線は、撮像画像上で鉛直方向に延びる。ドアは鉛直方向に延びる。棚の側面も鉛直方向に延びる。このように人工物の撮像画像には鉛直方向の輪郭線が多いため、このような線を用いることにより、撮像画像の水平度を計ることが可能である。そこで、本実施形態では、撮像画像の縦エッジを抽出する。そして、縦エッジの方向と縦方向とが一致する度合いを水平度パラメータとして算出する。これにより、撮像画像の水平度を定量的に計ることができる。すなわち、姿勢センサを用いることなく、被写体の撮像画像の水平度を把握することができる。
【0077】
(2)本実施形態では、水平度パラメータを画像情報として撮像画像に重畳する。この構成によれば、撮像画像を表示装置で再生すると、撮像画像とともに水平度パラメータが表示画面に表示される。このため、撮像者は、表示装置の表示画面を見て、撮像画像の水平度を確認することができる。
【0078】
(3)本実施形態では、撮像画像が処理される都度水平度パラメータを算出し、新たに算出された水平度パラメータを撮像画像に重畳し、かつ、所定期間において算出される水平度パラメータのうち最も大きい値を水平度パラメータのピーク値とし、このピーク値を画像情報として撮像画像に重畳する。
【0079】
この構成では、所定期間(水平度パラメータの算出開始時期から新たに撮像画像を処理する時期までの期間)において算出される水平度パラメータのうち最も大きい値を水平度パラメータのピーク値として撮像画像に重畳する。このため、撮像者は、監視カメラ1を操作しながら、撮像画像が最も水平度がとれている状態にあるか否かを容易に判断することができる。
【0080】
(4)本実施形態では、縦方向エッジ処理では、各画素について、演算に係る画素とこの画素に横に隣接する画素との輝度差の絶対値を算出する。この処理によれば、撮像画像において横方向に濃淡がないところは「0」に近い値とされ、横方向で輝度差があるところは「0」よりも大きい値とされる。このようにして、縦エッジが抽出される。
【0081】
(5)本実施形態では、(3)式に基づいて水平度パラメータを算出する。
撮像画像の水平度が高いとき、撮像画像中で縦成分コントラストが増大する。このことを鑑みて、(3)式に示されるように縦成分コントラストの総和を水平度パラメータとする。これにより、撮像画像の水平度を把握することができる。
【0082】
(6)本実施形態の変形例では、(4)式および(5)式に基づいて水平度パラメータを算出する。
撮像画像の水平度が高いとき、撮像画像中で列コントラストの値が増大する。そこで、このような特性を鑑みて、(4)式および(5)式に示すように、列コントラストの総和を水平度パラメータとする。これにより撮像画像の水平度を把握することができる。
【0083】
(7)本実施形態では、縦方向エッジ処理前に、各画素列について縦方向で平滑化処理をする。
縦方向エッジ処理前の撮像画像において縦方向に輝度ばらつき(ノイズ)があるとき、撮像画像の実際の輪郭線に対応しない縦成分コントラストが形成されることに起因して、水平度パラメータが、撮像画像から認識される水平度から乖離した値をとることがある。この点、上記構成では、平滑化処理により、撮像画素の縦方向において輝度のばらつきを小さくする。これにより、水平度パラメータが実際の水平度から乖離した値を示すことを抑制することができる。
【0084】
(8)本実施形態では、(1)式により平滑化処理を行う。
この構成では、演算に係る画素を含む列の前後の画素を用いて平均値を算出する。すなわち、列方向の全部の画素を用いて平均化する処理ではないため、元の各画素の輝度がある程度維持される。このため、縦方向の全部の画素について輝度を平均する場合と比べて、水平度パラメータが実際の水平度から乖離した値を示すことが抑制される。
【0085】
(9)本実施形態の監視カメラ1は、上記構成の画像処理回路23を備える。
この監視カメラ1によれば、水平度パラメータにより撮像画像の水平度を把握することができる。また、姿勢センサにより水平度を検出する監視カメラに比べて、小型にすることができる。
【0086】
(その他の実施形態)
本発明の実施態様は上記各実施形態に例示した態様に限られるものではなく、例えば以下のように変更することもできる。また以下の各変形例は、上記実施形態についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施してもよい。
【0087】
・上記実施形態では、水平度算出処理の対象の範囲(設定画素範囲)を撮像画像の全範囲に設定しているが、この範囲を変更可能な構成としてもよい。例えば、撮像画像を複数の選択領域に区分し、これら領域のいずれかを選択できる構成とする。このような構成によれば、撮像画像において縦エッジが中央部に偏って存在する場合に、撮像画像の中央部分の選択領域を選択することが可能となる。これにより、撮像画像の水平度パラメータが実際の水平度から乖離することが抑制される。
【0088】
・上記実施形態では、平滑化処理を(1)式により行っているが、輝度を縦方向に平滑化するものであれば、どのような式を用いてもよい。例えば、(1)式では、3つの画素の輝度を平均化する処理を行なっているが、これに代えて、5つの画素の輝度を平均化する処理を行ってもよい。また、平滑化する画素について、その画素と上下の画素の輝度の平均値を算出するとき、その画素から離れた位置にある画素ほど平均化における寄与を小さくしてもよい。例えば、(1)式に代えて(6)式を用いることができる。
【0090】
・上記実施形態では、水平度算出処理の実行の際、撮像画像に対して平滑化処理を行っているが、これを省略することもできる。このように省略を行っても、上記(1)の効果が得られる。
【0091】
・上記実施形態では、縦方向エッジ処理を(2)式により行っているが、ここでの処理は、撮像画像の縦エッジを抽出する処理であればよく、(2)式を用いる方法に限定されない。例えば、(2)式では、互いに隣接する2つの画素の輝度差を算出する処理をするが、これに代えて、互いに隣接する2つの画素の輝度比を算出する処理を行ってもよい。あるいは、輝度差と輝度比を項とする一次式を用いて各画素について演算処理をしてもよい。
【0092】
・上記実施形態では、水平度処理を、(3)式、または(4)式および(5)式に基づいて行っているが、ここでの処理は、縦エッジの方向と縦方向とが一致する度合いを示すパラメータを算出する処理であればよく、これらの式を用いる方法に限定されない。
【0093】
例えば、撮像画像について、補正輝度が所定値以上である画素が縦方向に連続して整列する要素(以下、「縦成分」)を取り出し、縦成分の長さの平均値を水平度パラメータとすることもできる。すなわち、縦エッジが、撮像画像の縦方向に対して斜めになっているときは、縦成分の長さは短くなる。これに対して、縦エッジが、撮像画像の縦方向に沿って延びているときは、縦成分の長さが長くなる。この点を利用して、水平度パラメータを算出することができる。
【0094】
・上記実施形態では、撮像画像を表示する表示画面上で、インジケータ40を、基準位置PAを基点として横方向に伸縮する態様で表示しているが、インジケータ40はこの態様に限定されない。例えば、縦方向に伸縮する態様で表示してもよい。また、インジケータ40を、基準位置PAを基点として回転する針として示すこともできる。
【0095】
・上記実施形態では、監視カメラ1に接続される表示装置にインジケータ40を示す構成としているが、インジケータ40を監視カメラ1本体に設けてもよい。この場合は、例えば、インジケータ40を複数個のLEDにより構成する。そして、水平度パラメータの値に応じて、が高いときは点灯するLEDの個数を変化させる。
【0096】
・実施形態では、水平度算出処理を実行する画像処理回路23を監視カメラ1内に設ける構成としているが、監視カメラ1に限らず、撮像画像を処理する機能を有する電子機器であれば、どのような電子機器にも、当該画像処理回路23を設けることができる。例えば画素処理機能を備えたコンピュータ、電子カメラ、表示装置等に設けることができる。