特許第5707285号(P5707285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5707285
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】ヘッドホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20150409BHJP
【FI】
   H04R1/10 101Z
   H04R1/10 103
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-196714(P2011-196714)
(22)【出願日】2011年9月9日
(65)【公開番号】特開2013-58955(P2013-58955A)
(43)【公開日】2013年3月28日
【審査請求日】2014年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100083404
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100166752
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 典子
(72)【発明者】
【氏名】安藤 幸三
【審査官】 大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−199579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面の一部に所定幅の円筒部を含むヘッドホンハウジングを有し、上記ヘッドホンハウジング内にドライバユニットを備える左右一対のヘッドホン本体と、側頭部間に沿って架け渡されるヘッドバンドと、上記ヘッドホン本体を上記ヘッドバンドの両端部に支持するハンガー部材とを含み、
上記ヘッドホンハウジングの円筒部には、所定間隔を置いて2つの軸受孔が穿設されているとともに、上記ハンガー部材には、上記2つの軸受孔に挿通される連結ピンが設けられ、上記ヘッドホンハウジングが上記軸受孔と上記連結ピンとによる回転機構を介して上記ハンガー部材に回転自在に支持されているヘッドホンにおいて、
上記ヘッドホンハウジングが金属板製で、上記ハンガー部材が上記連結ピンを含めて合成樹脂材からなり、
上記円筒部の内周面側には、少なくとも上記軸受孔間の半周面にかけて、合成樹脂材からなる円弧状に形成されたインナーフレームが添設されており、上記インナーフレームには、上記連結ピンに対するベアリング要素としての軸受ボスが一体に形成されており、上記軸受ボスが上記軸受孔内に嵌合されていることを特徴とするヘッドホン。
【請求項2】
上記インナーフレームは弾性変形可能であり、その復元力にて上記円筒部の内周面側に押し付けられ、これにより軸受ボスが上記軸受孔内に保持されていることを特徴とする請求項1に記載のヘッドホン。
【請求項3】
上記軸受ボスの端面は、上記円筒部の外周面と同一面もしくはそれよりも内側に引き込まれた上記軸受孔内に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のヘッドホン。
【請求項4】
上記インナーフレームは、上記円筒部の内周面の全周に沿って配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のヘッドホン。
【請求項5】
上記インナーフレームが、ポリオキシメチレン(POM)樹脂よりなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のヘッドホン。
【請求項6】
上記インナーフレームの上記円筒部と対向する外面側には、上記ヘッドホンハウジング内の不要振動を抑制する制振材が添設されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のヘッドホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドホンに関し、さらに詳しく言えば、ハンガー部材に対してヘッドホンハウジングを回転自在に支持するにあたって、ヘッドホンハウジングを金属板製とし、ハンガー部材をそれとは異種の合成樹脂製としても、その軸受部分になんら支障が生じないようにした連結機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヘッドホンには、装着方式別によって、インナーイヤー式、耳掛け式、ヘッドバンド式等があるが、ヘッドバンド式では、例えば特許文献1に記載されているように、左右一対のヘッドホン本体を、人体の頭部に沿ってアーチ状に架け渡されるヘッドバンドの両端に回転機構を有するハンガー部材を介して支持し、各ヘッドホン本体を適正な角度で耳にあてがわれるようにしている。その一例として、図5に従来のヘッドホンを示し、その構成を具体的に説明する。
【0003】
ヘッドバンド式のヘッドホン1は、基本的な構成として、図示しないドライバユニット(スピーカ)が内蔵された左右一対のヘッドホン本体2と、ハンガー部材3を介して各ヘッドホン本体2を両端で支持し、人体の頭部に沿ってアーチ状に架け渡されるヘッドバンド4とを備えている。
【0004】
なお、この従来例においては、ヘッドホン本体2のアジャスト機構として、ヘッドバンド4と人体の頭部との間に、頭部の一部に当接して各ヘッドホン本体2と頭部との相対的な位置を調整する一対のヘッドパッド5が設けられている。
【0005】
各ヘッドパッド5は、人体の頭部に接触するパッド部5aを備え、その一端が支持アーム6を介して、ヘッドバンド4とハンガー部材3との付け根部分のジョイント部7に連結されている。図示しないが、ジョイント部7には、支持アーム6の回転支軸と、ヘッドパッド5を頭部方向に向けて付勢するバネ手段とが設けられており、これにより、ヘッドホン本体2が耳の部分にフィットし得るようにしている。
【0006】
図6を併せて参照して、各ヘッドホン本体2は、図示しないドライバユニットを内蔵するカップ状に形成されたヘッドホンハウジング20を有し、ヘッドホンハウジング20の放音面201側には、弾性材からなるイヤーパッド21が設けられている。
【0007】
イヤーパッド21が設けられるヘッドホンハウジング20の放音面201側の一部分には所定幅の円筒部22が形成されており、この円筒部22には、例えば、180゜対向する位置に2つの軸受孔23が穿設されている。
【0008】
すなわち、この例では、軸受孔23は、円筒部22の直径線上の位置の2箇所に形成されるが、図6はヘッドホンハウジング20の側面図であるため、そのうちの一方の軸受孔23のみが示されている。
【0009】
なお、軸受孔23の一部分には、後述するハンガー部材3側に設けられている連結ピン33と協働してヘッドホンハウジング20(ヘッドホン本体2)の回転角度を規制するための扇状をなす係合溝231が連設されている。
【0010】
各ハンガー部材3は、図7(a),(b)に示すように、ヘッドバンド4の端部のジョイント部7に連結される取付基部31から二股状に分岐され、その各々がヘッドホンハウジング20の円筒部22に沿って円弧状に形成されたアーム32,32を備えている。
【0011】
各アーム32は、それぞれ軸受孔23の部分にまで延びており、それらの各端部の内側には、軸受孔23に対する連結ピン33が同軸的に設けられている。また、各連結ピン33には、上記係合溝231内に挿入される回転角度規制用の係合ピン331が連結ピン33の軸線と直交するように立設されている。
【0012】
したがって、図8に示すように、連結ピン33を軸受孔23内に挿入するとともに、係合ピン331を係合溝231内に挿入することにより、ハンガー部材3に対して各ヘッドホンハウジング20(ヘッドホン本体2)が連結ピン33,33の回転軸線L(図7参照)を中心として所定の角度範囲内で回動可能に支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3154135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、ヘッドホンハウジング20は、意匠的な質感を持たせるとともに、その不要振動を低減させるうえで、その素材には、剛性があり軽量な金属、例えばアルミニウムやチタンが適している。特に、大型のヘッドホンではドライバユニットも大径化し、その振動も大きくなるため、金属製が適している。
【0015】
一方、ハンガー部材3の形状には曲線が多用されることから、その素材には、加工性が良く曲線を活かした意匠的特徴が出しやすい非金属、特に合成樹脂が適している。
【0016】
しかしながら、ヘッドホンハウジング20を金属材とし、ハンガー部材3を合成樹脂製とする場合には、次の点が問題となる。
【0017】
すなわち、ヘッドホンハウジング20を金属材とする場合には、コスト的にも有利なプレス加工が一般的に用いられるが、通常のプレス機械で加工できる金属板の板厚は、約0.5〜0.8mmである。
【0018】
そのため、ヘッドホンハウジング20の軸受孔23の部分の板厚も約0.5〜0.8mmとなり、このような板厚の薄い金属材の軸受孔23内で、合成樹脂材からなるハンガー部材3の連結ピン33を繰り返し回転させると、連結ピン33が削られガタツキが発生するばかりでなく、最悪の場合には破損することがあり得る。
【0019】
これを防止するには、軸受孔23周りの板厚を他の部分よりも厚くすればよいのであるが、通常の金属材のプレス加工で、一部分のみを厚くすることはきわめて困難である。
【0020】
また、ダイカスト等の鋳造法や切削による削りだし法によれば、軸受孔周りの一部分のみを厚くすることができるが、製造コストが高くなるばかりでなく、ヘッドホンハウジング20の重量が重くなるため、ヘッドホンの装着時における使用者に対する負担が大きくなるので好ましくない。
【0021】
したがって、本発明の課題は、ヘッドホンハウジングを板厚が薄い金属製とし、これに対して、ハンガー部材を連結ピンを含めて合成樹脂製とするにあたって、金属製のヘッドホンハウジングと、合成樹脂製のハンガー部材との回転連結部分に削りや破損を生ずることなく、ヘッドホンハウジングをハンガー部材に対して、確実に、かつ、長期にわたって安定的に支持することができるようにしたヘッドホンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するため、本発明は、外周面の一部に所定幅の円筒部を含むヘッドホンハウジングを有し、上記ヘッドホンハウジング内にドライバユニットを備える左右一対のヘッドホン本体と、側頭部間に沿って架け渡されるヘッドバンドと、上記ヘッドホン本体を上記ヘッドバンドの両端部に支持するハンガー部材とを含み、上記ヘッドホンハウジングの円筒部には、所定間隔を置いて2つの軸受孔が穿設されているとともに、上記ハンガー部材には、上記軸受孔に挿通される連結ピンが設けられ、上記ヘッドホンハウジングが上記軸受孔と上記連結ピンとによる回転機構を介して上記ハンガー部材に回転自在に支持されているヘッドホンにおいて、上記ヘッドホンハウジングが金属板製で、上記ハンガー部材が上記連結ピンを含めて合成樹脂材からなり、上記円筒部の内周面側には、少なくとも上記軸受孔間の周面にかけて、合成樹脂材からなる円弧状に形成されたインナーフレームが添設されており、上記インナーフレームには、上記連結ピンに対するベアリング要素としての軸受ボスが一体に形成されており、上記軸受ボスが上記軸受孔内に嵌合されていることを特徴としている。
【0023】
本発明の好ましい態様によれば、上記インナーフレームは弾性変形可能であり、その復元力にて上記円筒部の内周面側に押し付けられ、これにより軸受ボスが上記軸受孔内に保持される。
【0024】
また、本発明には、その好ましい態様として、上記軸受ボスの端面は上記円筒部の外周面と同一面もしくはそれよりも内側に引き込まれた上記軸受孔内に配置される態様と、上記インナーフレームは上記円筒部の内周面の全周に沿って配置される態様と、上記インナーフレームがポリオキシメチレン(POM)樹脂よりなる態様とが含まれる。
【0025】
さらに、本発明の特徴の一つとして、上記インナーフレームの上記円筒部と対向する外面側に、上記ヘッドホンハウジング内の不要振動を抑制する制振材を添設することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、金属製のヘッドホンハウジング側に穿設されている軸受孔内に、合成樹脂材よりなるインナーフレームに一体として形成されている軸受ボスを嵌合し、ハンガー部材の連結ピンを合成樹脂製の軸受ボスで軸受けするようにしたことにより、その回転連結部分に削りや破損がほとんど生じないため、ヘッドホンハウジングをアルミニウムやチタン等の金属製とすることができ、意匠的な質感がよく、かつ、不要振動を低減させる機能を備えるヘッドホンが提供される。
【0027】
また、インナーフレームをPOM等の耐摩耗性のよい弾性変形可能な合成樹脂材とすることにより、その弾性復元力にて軸受ボスが軸受孔内に確実に保持されるとともに、長期にわたって安定した軸受構造とすることができる。
【0028】
また、軸受ボスは合成樹脂製であるが、その端面は円筒部の外周面と同一面もしくはそれよりも内側に引き込まれた軸受孔内に配置され、ほとんど外観に表れないため、ヘッドホンハウジングのデザイン性が損なわれることもない。
【0029】
また、インナーフレームに制振材を添設することにより、ヘッドホンハウジングの不要振動をより効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明のヘッドホンに含まれているヘッドホンハウジングとインナーフレームとを分離して示す斜視図。
図2】インナーフレームの要部拡大斜視図。
図3】インナーフレームの軸受ボスをヘッドホンハウジングの軸受孔内に嵌合した状態を示す拡大断面図。
図4】本発明において、(a)上記ヘッドホンハウジングにハンガー部材を連結した状態を示す斜視図,(b)その連結部分の拡大斜視図。
図5】従来のヘッドホンを示す正面図。
図6】上記従来のヘッドホンが備えるヘッドホンハウジングの側面図。
図7】上記従来のヘッドホンが備えるハンガー部材の(a)正面図,(b)その一部拡大図を含む斜視図。
図8図6のヘッドホンハウジングの軸受孔に図7のハンガー部材の連結ピンを連結する状態を示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、図1ないし図3により、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0032】
なお、ヘッドホンとしての基本的な構成、すなわち、ヘッドバンドの両端にハンガー部材を介して左右一対のヘッドホン本体を支持する点については、先に説明した従来例と同じであってよいため、その説明は省略し、ここでは、本発明の要部であるヘッドホン本体のヘッドホンハウジングとハンガー部材との回転連結機構について説明する。
【0033】
この実施形態においても、左右一対として用いられる各ヘッドホン本体は、図1に示すように、内部に図示しないドライバユニット(電気音響変換器としてのスピーカ)が収納されるカップ状に形成されたヘッドホンハウジング20を備える。
【0034】
ヘッドホンハウジング20は、先の図6で説明したのと同じく、イヤーパッド21(図4参照)が装着される放音面201側の一部分に形成された所定幅の円筒部22を有している。
【0035】
円筒部22には、所定間隔をおいて2つの軸受孔23が穿設されているが、この例では、上記従来例と同様に、180゜対向する位置に2つの軸受け孔23が穿設されている。なお、180゜は厳密に解釈されるべきではなく、ヘッドホンハウジングが回転し得ることを条件として、2つの軸受孔23は180゜から多少ずれていてもよい。
【0036】
この実施形態においても、軸受孔23の一部分には、後述するハンガー部材3側に設けられている連結ピン33と協働してヘッドホンハウジング20の回転角度を規制するための扇状をなす係合溝231が連設されている。なお、参照符号24は、ドライバユニットのケーブル挿通孔である。
【0037】
このヘッドホンハウジング20は、図4に示すように、ハンガー部材3により回転可能に支持されるが、本発明において、ヘッドホンハウジング20は、意匠的な質感を良好とし、不要振動を低減させるうえで、アルミニウムやチタン等の、例えばプレス加工による金属板製として形成され、これに対して、ハンガー部材3は合成樹脂製である。
【0038】
この実施形態においても、ハンガー部材3は、先の図7で説明したのと同じく、ヘッドバンド4の端部のジョイント部7(図4参照)に連結される取付基部31から二股状に分岐され、その各々がヘッドホンハウジング20の円筒部22に沿って円弧状に形成されたアーム32,32を備えている。
【0039】
各アーム32は、それぞれ軸受孔23の部分にまで延びており、それらの各端部の内側には、軸受孔23に対する連結ピン33が同軸的に設けられている。また、各連結ピン33には、上記係合溝231内に挿入される回転角度規制用の係合ピン331が連結ピン33の軸線と直交するように立設されている。
【0040】
先にも説明したように、軸受孔23が例えば約0.5〜0.8mm厚の金属板に穿設された孔で、連結ピン33が合成樹脂製であると、繰り返しの回転により、連結ピン33が軸受孔23の縁により削られガタツキが発生するばかりでなく、最悪の場合には折損することがある。
【0041】
そこで、本発明では、ヘッドホンハウジング20を金属板製とするにあたって、ヘッドホンハウジング20の円筒部22の内周面22bに装着される合成樹脂材よりなるインナーフレーム10を備える。
【0042】
この実施形態において、インナーフレーム10は、円筒部22の内周面22bに沿うように環状に形成された合成樹脂の帯板材からなり、軸受孔23と対向する部分には、図2に示すように、連結ピン33に対するベアリング要素としての軸受ボス11が軸受孔23内に嵌合し得るように一体に形成されている。
【0043】
この実施形態において、軸受ボス11は、軸受孔23に連設されている回転角度規制用の係合溝231内にも嵌合するように鍵孔状に形成されているが、場合によっては、軸受ボス11を軸受孔23の部分のみに嵌合し、係合溝231と対向する部分を開口としたC字状としてもよい。
【0044】
このように、本発明では、軸受孔23内に連結ピン33に対する軸受ボス11が嵌合されることから、軸受ボス11の内部111が実質的な軸受孔となる。
【0045】
したがって、例えば連結ピン33を従来と同径のままとするならば、軸受孔23は、軸受ボス11の嵌合代分だけ従来の軸受孔23よりも大きく形成し、これに対して、軸受孔23を従来と同径とするならば、連結ピン33側を軸受ボス11の内径に合わせて小径とすればよい。
【0046】
図2に示すように、軸受ボス11はインナーフレーム10の外周面10aから突出するように形成されているが、その突出厚みtは、ヘッドホンハウジング20を構成する金属板の板厚とほぼ同等とすることが好ましい。
【0047】
これによれば、図3に示すように、軸受ボス11の端面11aが、円筒部22の外周面22aとほぼ同一面となり、ヘッドホンハウジング20の外観にほとんど表れないため、ヘッドホンハウジング20のデザイン性が損なわれることもない。なお、軸受ボス11が軸受孔23から外れない範囲で軸受ボス11の突出厚みtをヘッドホンハウジング20を構成する金属板の板厚よりも薄くしてもよい。
【0048】
また、軸受ボス11を軸受孔23内に確実に保持するうえで、インナーフレーム10を、その外径が円筒部22の内径とほぼ同径となるように弾性変形可能な合成樹脂材により形成し、軸受ボス11の部分を内側に凹ませるように変形して、インナーフレーム10を円筒部22内に強制的に嵌合することが好ましい。
【0049】
これにより、インナーフレーム10の外周面10aの多くの面が円筒部22の内周面22bにガタツキなく密着するとともに、インナーフレーム10の弾性復元力にて軸受ボス11が軸受孔23内に確実に保持されることになる。
【0050】
インナーフレーム10は、軸受ボス11内での連結ピン33の回転を円滑にし、かつ、長期にわたっての信頼性を得るうえで、耐摩耗性のよい合成樹脂である例えばポリオキシメチレン(POM)樹脂から形成されることが好ましい。
【0051】
また、ヘッドホンハウジング20の不要振動を抑制するうえで、インナーフレーム10の外周面10aに制振材12を設けて、制振材12を円筒部22の内周面22bに接触させるとよい。なお、この種の制振材12としては、例えば内外ゴム社製の商品名「ハネナイト」がある。
【0052】
この実施形態では、インナーフレーム10の外周面10aの所定部分に帯状の凹み部13を形成し、その中に制振材12を配置するようにしているが、凹み部13を形成することなく、制振材12をインナーフレーム10の外周面10aに接着材等により貼着するようにしてもよい。
【0053】
これとは別に、インナーフレーム10自体を制振性を有する素材にて形成するようにしてもよく、このような態様も本発明に含まれる。
【0054】
図4に示すように、ヘッドホンハウジング20にハンガー部材3を連結するには、ハンガー部材3のアーム32,32の間隔を広げて、その内端に形成されている連結ピン33,33を軸受ボス11,11内に嵌合させればよい。この嵌合状態は、アーム32,32の弾性復元力により保持されるが、嵌合後に連結ピン33,33の先端側に図示しない抜け止め用のストッパリング等を設けてもよい。
【0055】
なお、上記実施形態では、インナーフレーム10を環状に形成し、円筒部22の内周面22bの全周にわたって配設するようにしているが、インナーフレーム10は、少なくとも軸受孔23,23間の周面にかけて円弧状に形成され、その両端側に軸受ボス11,11を一体に備える態様であってもよい。
【0056】
このようにしても、軸受ボス11,11がインナーフレーム10の弾性復元力にて軸受孔23,23内に確実に保持される。また、軸受孔23は、回転角度規制用の係合溝231を有する鍵孔状に形成されているが、単なる丸孔状であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
2 ヘッドホン本体
10 インナーフレーム
10a 外周面
11 軸受ボス
11a 端面
12 制振材
20 ヘッドホンハウジング
21 イヤーパッド
22 円筒部
22a 外周面
22b 内周面
23 軸受孔
231 係合溝
3 ハンガー部材
31 取付基部
32 アーム
33 連結ピン
331 係合ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8