【実施例1】
【0037】
本実施例の多機能情報端末清潔隔離デバイス100は、本体10と端末導入部材20から成る。本体10は、
図1の平面図に示すように、本体開口部11を有するプラスチックフィルム製の袋12に、本体開口部側の端部から距離L
1だけ袋の奥側の位置にファスナ(密閉手段)13が設けられたものである。本実施例では、袋12の内部の底からファスナ13までの距離は、使用されるタブレット型PC(多機能情報端末)の長辺よりもやや長くし、袋12の内部の幅はタブレット型PCの短辺よりもやや長くしている。また、これらの長さは、タブレット型PCの長辺や短辺の長さと比較して、あまり余裕を設けないように(余裕はせいぜい数cmと)している。これにより、タブレット型PCの収納(挿入)方向(縦方向)が使用者に明確に分かるようにし、且つ、収納後は袋12の中でタブレット型PCがあまり動かないようにする。
【0038】
袋12は、長方形の角を丸めた形状を有する表側フィルム14と裏側フィルム15の2枚のフィルムを、該長方形の4辺のうちの3辺を貼り代12
aとして熱接着させることにより形成されている。ここで、「表側」とは、本体10にタブレット型PCが収納された際に、タブレット型PCの画面が向く側をいう。
【0039】
表側フィルム14は、外側層14aと内側層14bを接着層14cで接着した多層構造を有する(
図2(a))。ここで、「外」及び「内」はそれぞれ、袋12の外及び内を指す。本実施例では、外側層14aの材料にはポリエチレンテレフタラートを、内側層14bの材料にはポリエチレンを、接着層14cにはエステル系の接着剤を、それぞれ用いた。外側層14aの外側表面には光拡散加工(アンチグレア加工)14a1が施され、内側層14bの内側表面には防曇加工14b1が施されている。これら各層はいずれも透明であり、表側フィルム14を向いているタブレット型PCの画面を外から視認することができる。
【0040】
なお、接着層14cには、エーテル系の接着剤等、他の接着剤を用いることもできる。また、内側層14bの材料に、ポリエチレンの代わりにポリプロピレン等を用いても、上記と同様の防曇加工を施すことができる。内側層14bの材料がポリプロピレンの場合には、接着層14cの材料にポリエチレンを用いることもできる。この場合、ポリエチレンは外側層14aのポリエチレンテレフタラート及び内側層14bのポリプロピレンよりも融点が低いため、外側層14aと内側層14bの間にポリエチレンのシートを挟み、該ポリエチレンシートのみを熱融解させることにより、外側層14aと内側層14bを接着させることができる。
【0041】
一方、裏側フィルム15は、本実施例では基本的に表側フィルム14と同様に、ポリエチレンテレフタラートから成る外側層15aとポリエチレンから成る内側層15bを有し、外側層15aと内側層15bが接着層15cで接着され、内側層15bの内側表面に防曇加工15b1が施されたものを用いた。但し、表側フィルム14でなされている光拡散加工は、タブレット型PCの画面を向けない裏側フィルム15では不要であるため、省略されている。このように光拡散加工が不要であるため、外側層15aにはポリエチレンテレフタラートの代わりにポリプロピレン等を用いることもできる。
【0042】
なお、表側フィルム14は上記のように光拡散加工が施されているため、裏側フィルム15よりもやや曇っているように見える。そのため、使用者が表側フィルム14と裏側フィルム15を区別すること、すなわち、タブレット型PCの画面を向けるべきフィルムを識別することは比較的容易であるが、表側フィルム14と裏側フィルム15を一目で区別できるように、裏側フィルム15に着色を施したり印を付けてもよい。
【0043】
ファスナ13には、表側フィルム14の内面と裏側フィルム15の内面のいずれか一方にオスが、他方に該オスと対向するようにメスが設けられ、オスとメスを重ねて本体10の外面から押すだけで封止されるものが用いられている。本実施例では、本体10の密閉性をより確実にするため、ファスナ13は2列設けられている。
【0044】
端末導入部材20は、本体10内に収納可能であって且つタブレット型PCが通過可能な幅を有し、長手方向の一方の端に外部開口21aが、他方の端に内部開口21bが設けられた平坦な筒状の部材である(
図3)。端末導入部材20の材料は滅菌紙である。外部開口21aと内部開口21bの距離(筒長)は、上記距離L
1よりも長いL
2である。また、外部開口21a及び内部開口21bはいずれも、長方形のタブレット型PCの短辺が通過可能な大きさを有する。
【0045】
端末導入部材20の外部開口21aの表裏両縁には衿部22が設けられている。衿部22は端末導入部材の筒の外部開口21a側の端において外側に折り返されている。本実施例では、衿部22は外部開口21aから3cm幅で設けられており、外部開口21aの反対側において該開口よりも両端が2cmずつ短くなるように斜めに切り落とされている。
【0046】
端末導入部材20の内部開口21b側の両端には、端末導入部材20を斜めに切り落とした切欠23が設けられている。
【0047】
端末導入部材20を展開した
図4に示すように、端末導入部材20は、表側部材20cと、その一方の側部に延設された裏側部材20dと、他方の側部に延設された折り返し部材25と、表側部材20c及び裏側部材20dに設けられた前述の衿部22から成る。表側部材20cの内面に裏側部材20dの内面を重ねるように折り、次に裏側部材20dの外面に折り返し部材25を重ねるように折ることにより端末導入部材20が使用状態に形成される。端末導入部材20の両側部のうちの一方は表側部材20cと裏側部材20dの境界により封じられ、他方は表側部材20cと折り返し部材25の境界により封じられる。
【0048】
端末導入部材20の表側部材20c及び裏側部材20dにはそれぞれ、外部開口21a側の端から内部開口21b側の端まで延びる山折り線24が形成されている。
【0049】
本実施例の多機能情報端末清潔隔離デバイス100では、その製造工場において、予め本体10及び端末導入部材20を消毒液や紫外線等を用いて滅菌したうえで、滅菌済みの外袋(図示せず)に梱包した状態で出荷する。その際、衿部22及び外部開口21aが外になるようにして端末導入部材20の内部開口21bを本体10の、ファスナ13よりも中に挿入した状態(
図5(a))で梱包しておく。そのため、多機能情報端末清潔隔離デバイス100を使用する際には、本体10及び端末導入部材20を滅菌したり、端末導入部材20を本体10に挿入する作業をする必要はない。なお、滅菌処理や上記挿入の作業は使用者(病院等)が行ってもよい。
【0050】
端末導入部材20には、本体10に挿入した状態において表側フィルム14を向く方の面に、模様を付したり、「タブレット型PCの画面をこの面に向けること」等の説明を記載することが望ましい。これにより、後述のように使用者がタブレット型PCを端末導入部材20及び本体10内に挿入する際に、タブレット型PCの画面を向けるべき方向を容易に知ることができる。
【0051】
図5を用いて、本実施例の多機能情報端末清潔隔離デバイス100の使用方法を説明する。まず、手術用手袋を着用すること等により手を清潔にした人が、上記のように梱包された多機能情報端末清潔隔離デバイス100を外袋から出す(
図5(a)の正面図)。次に、その人が両手で両衿部22をそれぞれ掴み、両側に引っ張って外部開口21aを開く。これにより、本体開口部11が開かれる。その際、表側部材20c及び裏側部材20dに山折り線24が形成されていること、及び端末導入部材20の材料に比較的剛性の高い紙を用いていることから、外部開口21aは
図5(b)の上面図に示すように、ほぼ菱形となる。
【0052】
この状態で、他の人(手を清潔にする必要がない人)がタブレット型PC30を持ち、画面31を表側フィルム14の方に向けた状態で、外部開口21aから端末導入部材20を通して本体10内に該タブレット型PC30を挿入する(
図5(c))。その際、タブレット型PC30が切欠23から端末導入部材20の外に出ていることを視認することにより、タブレット型PC30が十分奥まで挿入されていることを確認する。この操作において、端末導入部材20の外部開口21aが本体10の外に出ているため、本体10の本体開口部11はその内側が端末導入部材20で覆われている。これにより、本体開口部11は、タブレット型PC30の挿入時にそれに触れることがなく、タブレット型PC30に付着した菌が手術室内を汚染することが無い。
【0053】
続いて、手を清潔にした上記の人が端末導入部材20を本体10から抜き取る。その際にも、本体開口部11に触れるのは清潔な手、及び滅菌済みの端末導入部材20の外面だけであり、この外面はタブレット型PC30には触れないため、タブレット型PC30に付着した菌が本体開口部11に移ることはない。なお、抜き取った端末導入部材20には菌が付着しているため、手術室の外に搬出するか、あるいは滅菌処理をする等の処置を行う。最後に、手を清潔にした上記の人がファスナ13を閉じる(
図6)。これにより、タブレット型PC30に付着した菌が本体10から手術室内に侵入することが防止される。
【0054】
本実施例の多機能情報端末清潔隔離デバイス100では、タブレット型PC30を収納した時の画面の位置に相当する表側フィルム14の外面に光拡散加工が施されているため、手術室の照明が表側フィルム14の外面で反射して画面31が見難くなることを防ぐことができる。
【0055】
また、表側フィルム14の内面に防曇加工が施されているため、本体10内の湿気によって該内面が曇って画面31が見難くなることを防ぐことができると共に、タブレット型PC30の故障の原因となる水滴の発生を防ぐことができる。裏側フィルム15の内面の防曇加工は、画面31の見やすさには直接関係しないが、水滴の発生を防ぐことができるという点において意義がある。
【0056】
本発明は上記実施例には限定されない。例えば、表側フィルム14及び裏側フィルム15の外面には抗菌加工が施されていてもよい。このような抗菌加工は、外来患者や入院患者等、多数の患者が居る病棟においてタブレット型PCを使用する際に、タブレット型PCを介して患者間で菌への感染が生じることを防ぐことができる、という利点を有する。
【実施例3】
【0058】
本発明の第3実施例である多機能情報端末清潔隔離デバイス200を
図8〜
図10により説明する。
【0059】
本実施例の多機能情報端末清潔隔離デバイス200の基本構造は第1及び第2実施例のそれらと同じであり、本体210と端末導入部材220から成る。本体210は第1実施例の本体10と同じである。端末導入部材220は第1実施例のものとその基本構造は同じであり、本体210内に装入される平坦な筒状の部材221と、その外部開口221aの両側端にそれぞれ延設され、外側に折り返された衿部223から成るが、衿部223は第1実施例のそれよりも長い。すなわち、平坦筒状部材221を、その内部開口221bが本体10の底に当接するまで本体
210内に挿入したとき、衿部223の先端が本体
210の底側の縁からはみ出す程度の長さとなっている。
【0060】
衿部223の、外部開口221aの縁の近くには、該縁に平行に山折り線(容易に山折りされるように押圧された線)223aが形成されている。また、双方の衿部223の同じ側の縁の上部(本体開口
部211に近い方)には、弧状の切り込み223bが設けられている。そして、衿部223の先端縁の両側の隅には切欠223cが設けられている。
【0061】
平坦筒状部材221では、その両側縁にマチ221cが設けられている。双方のマチ221cの縦方向中央には折り線が設けられており、本多機能情報端末清潔隔離デバイス200を使用しないときにはこの折り線で折ることにより、本多機能情報端末清潔隔離デバイス200が嵩張らないようになっている。2本のマチ221cの折り込み方向は左右で異なっており、衿部223に弧状の切り込み223bが設けられた側のマチ221c1では内側に折り込まれ、他方のマチ221c2では外側に折り出されている(
図8参照)。本実施例の平坦筒状部材221でも、第1実施例の場合と同様、その内部開口221bの両隅には切欠221dが設けられている。
【0062】
図9(a)の展開図に示されるように、平坦筒状部材221の一方の
溝形成面221eには、外部開口221aから内部開口221bに延びる、幅が約1mmの溝221fが3本設けられている。この溝221fは内面側でエンボス加工により形成されたものであり、内面側で溝、外面側で山となっている。この溝221fは、タブレット型PC30を本体210内に挿入する際に、この平坦筒状部材221の内面との間の滑りを良くするためのものである。溝221fの断面を
図9(b)に示す。第1実施例の場合と同様、前記一方の面221eには折り返し部材221gが延設されている。
【0063】
本実施例の多機能情報端末清潔隔離デバイス200の使用方法を
図10により説明する。まず、手を清潔にした人が片手で両側の衿部223を先端から押し上げ、本体210の底まで持ち上げる。これにより、両側の衿部223が山折り線223aで山折れして開く(a)。次に、切り込み223bが設けられた側の開いた箇所から他方の手を入れ、端末導入部材220の外部開口221aを広げる(b)。この状態で、他の人(手を清潔にする必要がない人)がタブレット型PC30を持ち、外部開口221aから本体210内に挿入する(c)。タブレット型PC30が本体210内に完全に収納されたことは、平坦筒状部材221及び衿部223の下端両側の切欠221d及び223cから覗くタブレット型PC30を見ればわかる(d)。タブレット型PC30が本体210内に完全に収納されたことを確認した後、手の清潔な人が両衿部223を持ち上げ(e)、平坦筒状部材221を本体210内から引き出す(f)。その後、本体210の上部のファスナ213を閉じる。
【0064】
なお、本実施例の端末導入部材220の衿部223の先端部には、
図8(a)、(b)に示すように、指の形を表す形状223d、223eが印刷されており、これにより本多機能情報端末清潔隔離デバイス200の使用方法を分かりやすくしているが、これは本発明においては任意である。