(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5707336
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04C 29/02 20060101AFI20150409BHJP
F04C 29/00 20060101ALI20150409BHJP
F04C 18/344 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
F04C29/02 351D
F04C29/00 B
F04C29/00 C
F04C18/344 351M
F04C18/344 351Q
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-547254(P2011-547254)
(86)(22)【出願日】2010年11月12日
(86)【国際出願番号】JP2010006671
(87)【国際公開番号】WO2011080865
(87)【国際公開日】20110707
【審査請求日】2012年10月15日
(31)【優先権主張番号】特願2009-299090(P2009-299090)
(32)【優先日】2009年12月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】特許業務法人大貫小竹国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 知靖
(72)【発明者】
【氏名】大沢 仁
【審査官】
加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−132487(JP,A)
【文献】
特開2006−249992(JP,A)
【文献】
特開2001−295767(JP,A)
【文献】
特開2009−167834(JP,A)
【文献】
特開2003−336588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/00−29/02
F04C 18/344
F04B 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトの回動に伴い可動する可動部材と、前記可動部材と共に圧縮室を構成する固定部材とを備え、前記可動部材の動きに伴い前記圧縮室に流入される作動流体を圧縮する圧縮機において、
前記固定部材に、前記圧縮室で圧縮された作動流体を導入して含有オイルを分離させるオイル分離器を一体に形成し、
前記可動部材と前記固定部材の一部又は全部は、ハウジングを構成するシェル部材に収容され、前記オイル分離器は圧縮室で圧縮された作動流体を導入するオイル分離室を備え、このオイル分離室の下側開口端は、前記シェル部材により覆われており、
前記オイル分離器は、前記オイル分離室と、このオイル分離室に導入された作動流体を旋回させるために前記オイル分離室に収容される分離筒とを備えて構成され、前記オイル分離室と前記分離筒は、前記固定部材に一体に形成されている
ことを特徴とする圧縮機。
【請求項2】
前記固定部材は、前記可動部材を収容するシリンダ部と、このシリンダ部に一体化されたサイドブロック部とを有して構成され、前記オイル分離器は、前記サイドブロック部に一体に形成されていること特徴とする請求項1記載の圧縮機。
【請求項3】
前記オイル分離室は、その下端部がオイル排出路を介してオイル貯留室に連通していることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記オイル排出路は、前記固定部材と前記シェル部材との間に形成される隙間であることを特徴とする請求項3記載の圧縮機。
【請求項5】
前記オイル排出路は、前記固定部材に形成された溝又は孔であることを特徴とする請求項3記載の圧縮機。
【請求項6】
前記オイル分離室は、前記シャフトの軸方向に対して略直交する方向に延設されると共にその軸線が鉛直線に対して斜めに傾斜されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の圧縮機。
【請求項7】
前記オイル分離室は、前記下側開口端に向かうにつれて径が徐々に大きく形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心分離式のオイル分離器を備えた圧縮機に関し、特に、遠心分離器を設けたことに伴う部品点数の増加を抑えることが可能な圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遠心分離器が設けられている圧縮機として、例えば、特許文献1や特許文献2に示される構成が知られている。
このうち、特許文献1に示される圧縮機は、スクロール圧縮機に関するもので、作動流体を吸入圧縮する圧縮機構が、フロントハウジングに固定された固定スクロール(固定部)、及び固定スクロールに対して可動(旋回)する可動スクロール(可動部)により構成され、可動スクロールを、フロントハウジングに回転可能に配設されたシャフトにより旋回駆動し、可動スクロールの旋回とともに、両スクロールによって形成される作動室の体積を拡大縮小することにより冷媒を吸入圧縮するようにしている。そして、フロントハウジングに固定スクロールを介して固定されたリアハウジングには、圧縮機構の吐出ポートから吐出される冷媒から潤滑油を分離する遠心分離型のオイル分離器が設けられている。
【0003】
このオイル分離器は、リアハウジング内に駆動軸と直交する方向に円柱状の空間に形成された分離室と、分離室内に圧入されて同軸状に配設された略円筒状の分離管(セパレータパイプ)とを有して構成され、分離室の円周内壁面には圧縮機構から吐出される冷媒を分離室内に導く導入孔が形成され、また、底面には分離された潤滑油を貯油室に排出する排出孔が形成されている。
また、同公報には、オイル分離器の分離室を固定スクロール(固定部)に一体として形成し、冷媒を、リアハウジング側に開いた導入孔から分離室に導入し、分離された潤滑油を同じくリアハウジング側に開いた排出孔から貯油室へ排出し、また、吐出配管を固定スクロールに接続するようにした構成も開示されている。
【0004】
さらに、特許文献2に示される圧縮機は、ベーン型圧縮機に関するもので、カムリング(シリンダ)と、このカムリング内に回転可能に収納されると共にシャフトに固定されたロータと、このロータに設けられた複数のベーン溝に挿入されるベーンと、カムリングのリア側端面に固定されるリアサイドブロックと、カムリングのフロント側端面及び外周面を包囲するシェル状に形成されると共にリアサイドブロックに嵌合するフロントサイドブロックとを有して構成され、リアサイドブロックには、シリンダのフランジ部に形成された通孔よりも下流側に、吐出ガスに混在する潤滑オイルを分離するための前記と同様の構成を有する遠心分離式のオイル分離器が駆動軸と直交する方向に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−295767号公報
【特許文献2】特開2009−156231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前者の構成においては、圧縮機構を構成する固定部材やこの固定部材に固定されたリアハウジングにオイル分離器が設けられるが、分離室が駆動軸に直交する方向に形成されるため、分離室の径方向外側端が開口することとなる。このため、分離管を別部品として開口端側より分離室内に圧入して取り付けねばならず、オイル分離器を設けたことに伴い部品点数が多くなる不都合がある。また、分離管が別部材で構成されているため、分離管と分離室のそれぞれの寸法管理や、分離管の圧入位置の管理なども必要となるものであった。
【0007】
また、後者の構成においては、カムリングのリア側端面に固定されるリアサイドブロックは、カムリングに当接するサイドブロック部と、これに組み付けられるヘッド部とを有して構成され、このリアサイドブロックに設けられるオイル分離器はヘッド部に設けられ、分離管は別体をなしている。この構成においても、オイル分離室が駆動軸に直交する方向に形成されるため、オイル分離室の径方向外側端が開口することとなる。この例においては、円柱状の空間に形成されたオイル分離室の下開口端はプラグ(蓋部材)により閉塞される構成となっているため、オイル分離器を設けたことに伴い、部品点数は多くなるものであった。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、遠心分離式のオイル分離器を備えた圧縮機において、オイル分離器を設けたことに伴う部品点数の増加を回避することが可能な圧縮機を提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、本発明者らは、遠心分離式のオイル分離器を設けるに当たり、別部材を設ける必要がない構成について鋭意検討を重ねた結果、圧縮室を構成する基本部材に遠心分離機を設ければ、部品点数を削減できることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明に係る圧縮機は、シャフトの回動に伴い可動する可動部材と、前記可動部材と共に圧縮室を構成する固定部材とを備え、前記可動部材の動きに伴い前記圧縮室に流入される作動流体を圧縮する構成において、前記固定部材に、前記圧縮室で圧縮された作動流体を導入して含有オイルを分離させるオイル分離器を一体に形成し、前記可動部材と前記固定部材の一部又は全部は、ハウジングを構成するシェル部材に収容され、前記オイル分離器は圧縮室で圧縮された作動流体を導入するオイル分離室を備え、このオイル分離室の下側開口端は、前記シェル部材により覆われ
ており、前記オイル分離器は、前記オイル分離室と、このオイル分離室に導入された作動流体を旋回させるために前記オイル分離室に収容される分離筒とを備えて構成され、前記オイル分離室と前記分離筒は、前記固定部材に一体に形成されていることを特徴としている。
【0011】
したがって、可動部材と共に圧縮室を構成する固定部材にオイル分離器が一体に形成されているので、オイル分離器を設けるために部品点数の増大を抑えることが可能となる。また、圧縮室からオイル分離器までの距離も短くできるため、圧縮機の軸方向寸法を従来に比べて短くすることが可能となる。
また、固定部材に一体に形成されたオイル分離器のオイル分離室は、下側開口端がハウジングを構成するシェル部材によって覆われるので、ハウジングを構成するシェル部材がオイル分離室の開口端を覆う蓋部材として代用されることになり、オイル分離器を設けたことに伴い、部品点数が増加することがなくなる。
【0012】
ここで、固定部材を、可動部材を収容するシリンダ部と、このシリンダ部に一体化されたサイドブロック部とを有して構成する場合には、オイル分離器をサイドブロック部に一体に形成するとよい。
【0013】
また、本発明によれば、オイル分離室および分離筒を固定部材に一体に形成したので、オイル分離器を設けたことに伴い、部品点数が増加することがなくなる。
【0014】
尚、前記オイル分離室は、その下端部をオイル排出路を介してオイル貯留室に連通させるようにするとよい。
【0015】
ここで、オイル排出路としては、前記固定部材と前記シェル部材との間に形成される隙間で構成するようにしても、固定部材に形成された溝又は孔で構成するようにしてもよい。
【0016】
したがって、このような構成によれば、オイル分離室の下端部とオイル貯留室との連通状態を固定部材とシェル部材との間に形成される隙間の大きさや固定部材に形成される溝又は孔の形状を調節することで調節可能となるので、オイル貯留室に貯留されたオイルの乱れを抑えてオイル供給の安定化を図ることが可能となる。
【0017】
また、オイル分離室は、シャフトの軸方向に対して略直交する方向に延設されると共にその軸線が鉛直線に対して斜めに傾斜させるようにしてもよい。
このような構成によれば、オイル分離室の軸線が鉛直線に対して斜めに形成されているため、オイル排出路の位置がオイル液面に対して相対的に高い位置となり、オイル排出孔が液面に浸ってオイルが排出できなくなる事象を回避することが可能となる。
【0018】
さらに、オイル分離室を、下方の開口端に向かうにつれて径が大きくなるように形成するとよい。このような構成においては、オイル分離室やオイル分離管を鋳造により一体に形成するようにした場合でも、鋳型を容易に外すことが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
以上述べたように、本発明によれば、シャフトの回動に伴い可動する可動部材と、この可動部材と共に圧縮室を構成する固定部材とを備え、この固定部材にオイル分離器を一体に設けたので、より具体的には、固定部材を可動部材を収容するシリンダ部とこのシリンダ部に一体化されたサイドブロック部とを有して構成される場合において、サイドブロック部にオイル分離器を一体に設けたので、部品点数を低減させることが可能となる。
【0020】
また、可動部材と固定部材の一部又は全部をハウジングを構成するシェル部材に収容し、オイル分離器を、圧縮室で圧縮された作動流体を導入するオイル分離室と、導入された作動流体を旋回させるためにオイル分離室に収容される分離筒とを備えて構成する場合は、
オイル分離室の下側開口端を、シェル部材により覆う構成とすれば、また、オイル分離室と分離筒を固定部材に一体に形成すれば、オイル分離器を設けた場合でも新たな部材が不要となる。
【0021】
そして、オイル分離器のオイル分離室を、シャフトの軸方向に対して略直交する方向に延設されると共にその軸線が鉛直線に対して斜めに傾斜するように形成すれば、オイル分離室の下端部に形成されるオイル排出路をオイル液面より高い位置に配置することが可能になり、オイル分離室からのオイルの排出が良好となる。
ここで、オイル排出路を固定部材とシェル部材との間に形成された隙間、又は、固定部材に形成された溝もしくは孔で構成すれば、隙間の大きさや溝又は孔の形状を調節することで、オイル分離室の下端部とオイル貯留室との連通状態を調節でき、オイル貯留室内のオイルの乱れを抑えてオイル供給の安定化を図ることが可能となる。
【0022】
さらに、オイル分離室を下側開口端に向かうにつれて径を徐々に大きくすれば、オイル分離器を鋳造にて一体成型する場合に鋳型が外しやすくなり、鋳造成型が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明に係る圧縮機の構成例を示す図であり、(a)は吐出経路やオイル分離器が現れるように切断された側断面を示す図であり、(b)は吸入経路やオイル貯留室が現れるように切断された側断面を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す圧縮機の各所の断面を示す図であり、(a)は
図1のA−A線で切断した断面図を示し、(b)は
図1のB−B線で切断した断面図を示し、(c)は
図1のC−C線で切断した断面図を示す。
【
図3】
図3は、本発明に係る圧縮機の一部切り欠きの斜視図であり、(a)はリア側から見たシェル部材を一部切り欠いた状態を示す図であり、(b)はリア側から見たシェル部材の一部、及び、固定部材とこれに形成されたオイル分離器の一部を切り欠いた状態を示す図であり、(c)はオイル分離器の部分で切断した固定部材を示す 図である。
【
図4】
図4(a)は、
図1に示す圧縮機のC−C線で切断した他の構成例を示す断面図であり、
図4(b)は、圧縮機のリア側から見たシェル部材の一部、及び、固定部材とこれに形成されたオイル分離器の一部を切り欠いた他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1乃至
図3において、冷媒を作動流体とする冷凍サイクルに適したベーン型圧縮機が示されている。このベーン型圧縮機は、シャフト1の回動に伴い可動する可動部材2と、前記可動部材2と共に圧縮室3を構成する固定部材4と、可動部材2及び固定部材4を収容するハウジングを構成するシェル部材5とを備えている。
【0026】
固定部材4は、可動部材2を収容するシリンダ部4aと、このシリンダ部4aのリア側に続いて一体に形成されたリアサイドブロック部4bとを有して構成されている。
【0027】
可動部材2は、固定部材4のシリンダ部4aに回転可能に収容され、シャフト1に固定されたロータ2aと、このロータ2aに設けられたベーン溝6に挿入されるベーン2bとを有して構成されている。
【0028】
シェル部材5は、シリンダ部4aのフロント側端面に当接するフロントサイドブロック部5aと、シリンダ部4a及びリアサイドブロック部4bの外周面を包囲するように形成された筒部5bとを有して構成されている。
【0029】
シャフト1は、シェル部材5のフロントサイドブロック部5aと固定部材4のリアサイドブロック部4bにプレーンベアリングを介して回転可能に支持されている。シェル部材5には、作動流体(冷媒ガス)の吸入口7および吐出口8と、吸入口7に連通し、固定部材4のシリンダ部4aに形成された凹部9と共に構成される吸入空間(低圧空間)10が形成されている。また、固定部材4のシリンダ部4aとシェル部材5の筒部5bとにより後述する吐出空間(高圧空間)11が画成され、この吐出空間11は、固定部材4のリアサイドブロック部4bに形成されたオイル分離器14を介して吐出口8に連通している。
【0030】
シリンダ部4aにより囲まれた空間とロータ2aとの断面は真円状に形成され、シリンダ部4aの軸中心とロータ2aの軸中心とは、ロータ2aの外周面とシリンダ部4aの内周面とが周方向の一箇所で当接するようにずらして設けられ(シリンダ部の内径とロータ2aの外径との差の1/2だけずらして設けられ)、シリンダ部4aの内周面とロータ2aの外周面との間には圧縮空間13が画成されている。この圧縮空間13はベーン2bによって仕切られて複数の圧縮室3が形成され、各圧縮室3の容積はロータ2aの回転によって変化するようになっている。
【0031】
シェル部材5は、フロントサイドブロック部5aに一体化されたボス部5cに、シャフト1に回転動力を伝達するためのプーリ15が回転自在に外装され、このプーリ15から電磁クラッチ16を介して回転動力がシャフト1に伝達されるようになっている。
【0032】
また、固定部材4のシリンダ部4aは、その両端部に径方向に突出するフランジ部4c.4dが形成されている。フロント側のフランジ部4cは、シェル部材5の内周形状に合わせた形状に形成されており、シェル部材5の内側に嵌入されてフロントサイドブロック部5aの端面に当接され、また、リア側のフランジ部4dも、シェル部材5の内周形状に合わせた形状に形成されており、シェル部材5の内側に嵌入されてオーリング等のシール部材によりシェル部材との間が気密よくシールされている。
【0033】
シリンダ部4aの周面には、圧縮空間13に対応して吸入空間10に連通する吸入ポート17と、吐出空間11と連通する吐出ポート18が設けられている。したがってシリンダ部4aをシェル部材5に嵌入させると、吸入空間10は、吸入ポート17を介して圧縮室3に連通し、シリンダ部4aの外周面と筒部5bの内周面との間には、両側端がフランジ部4c.4dによって画成された吐出空間11が形成され、この吐出空間11が吐出ポート18を介して圧縮室3に連通可能となっている。そして、吐出ポート18は、吐出空間11に収容される吐出弁19により開閉されるようになっている。
【0034】
この吐出空間11は、シリンダ部4aの吐出ポート18の近傍に突設された隔壁20を境にして吐出弁19が設けられている部位からシリンダ部4aのほぼ全周に亘って設けられ、隔壁20に対して吐出ポート18が設けられている側とは反対側において、フランジ部4dに形成された通孔21を介して以下述べるオイル分離器14に連通している。
【0035】
オイル分離器14は、固定部材4のリアサイドブロック部4bに一体に形成されているもので、フランジ部4dに形成された通孔21に連通する円柱状の空間に形成されたオイル分離室22を備え、このオイル分離室22に固定部材4(リアサイドブロック部4b)と一体に形成された略円筒状の分離筒(セパレータパイプ)23を同軸上の配設して構成されている。
【0036】
オイル分離室22は、前記シャフト1の軸方向に対して略直交する方向に延設されると共にその軸線が鉛直線に対して斜めに傾斜するように形成されており、上端部は、分離筒23を介して前記シェル部材5の吐出口8に連通し、下端部は、リアサイドブロック部4bの側面に開口されている。そして、このオイル分離室22の下端部の開口部は、シェル部材5の筒部5bにより覆われている。この例において、筒部5bは、リアサイドブロック部4bの全体が収容される程度に軸方向に延設されており、オイル分離室22は、圧縮機の軸方向の前後においてリアサイドブロック部4bの周方向の設けられたオーリング等のシール部材によりシェル部材5の筒部5bとの間が気密よくシールされている。
【0037】
また、オイル分離室22の下側開口端(オイル分離室22を画成する円筒壁の下端)は、シェル部材5の筒部5bで覆われている。固定部材4とシェル部材5(より具体的には、固定部材4のリアサイドブロック部4bとシェル部材5の筒部5b)の間には、所定の間隔(0.1〜0.2mm)に設定された隙間24が形成されており(
図2(c)においては、誇張して記載されている)、この隙間24により、オイル分離室22の下端部とオイル貯留室25とを連通するオイル排出路が構成されている。
【0038】
したがって、オイル分離室22に流入した作動流体は、このオイル分離室22に収容された分離筒23の周りを旋回し、その過程で混在しているオイルが分離され、オイルが分離された吐出ガスを、分離筒23を介して吐出口8に送出するようにしている。また、分離されたオイルは、オイル分離室22の下端部に連通するように固定部材4とシェル部材5との間に形成された隙間24を介して固定部材4の底部に形成されたオイル貯留室25に溜められ、その後、オイル供給通路30を介して、オイル貯留室25と各潤滑部分との圧力差により、各潤滑部分へ供給されるようになっている。
【0039】
以上の構成において、図示しない動力源からの回転動力がプーリ15及び電磁クラッチ16を介してシャフト1に伝達され、ロータ2aが回転すると、吸入口7から吸入空間10に流入した作動流体が吸入ポート17を介して圧縮空間13に吸入される。圧縮空間内のベーン2bによって仕切られた圧縮室3の容積はロータ2aの回転に伴って変化するので、ベーン2b間に閉じ込められた作動流体は圧縮され、吐出ポート18から吐出弁19を介して吐出空間11に吐出される。吐出空間11に突出された作動流体は、シリンダ部4aの外周面に沿って(シェル部材5の筒部5bの内周面に沿って)周方向に移動し、シリンダ部4aの周囲をほぼ一周してフランジ部4dに形成された通孔21を介してリアサイドブロック部4bに一体形成されたオイル分離器14のオイル分離室22に導入される。その後、作動流体は、オイル分離室内を旋回する過程でオイルが分離され、分離筒23を通って吐出口8から外部回路へ吐出され、分離されたオイルは、オイル分離室22の下端に形成された隙間24を介してオイル貯留室25に導かれる。
【0040】
したがって、吐出ポート18から吐出された作動流体は、固定部材4のシリンダ部4aとシェル部材5の筒部5bとの間に形成された吐出空間11を、吐出ポート18が臨む部位から通孔21が臨む部位にかけて移動する過程で吐出ガスの圧力脈動が低減され、さらに、フランジ部4dの通孔21を介してのみオイル分離器14のオイル分離室22へ導かれるので、この通孔21を通過する過程で吐出ガスの圧力脈動が低減され、さらに、オイル分離器14を通過する過程においても圧力脈動が低減され、オイルが分離された脈動の少ない状態で吐出口8から送出される。
【0041】
また、上述の圧縮機においては、シャフト1の回動に伴い可動する可動部材2(ロータ2a、ベーン2b)を収容するシリンダ部4aとリアサイドブロック部4bとが一体に形成されて可動部材2と共に圧縮室3を構成する固定部材4が構成され、この固定部材4をフロントサイドブロック部5aと筒部5bが一体に形成されたシェル部材5に収容するようにしているので、圧縮機の部品点数を削減することが可能となる。しかも、オイル分離器14を固定部材4のリアサイドブロック部4bに一体に形成し、オイル分離室22の下端開口部をシェル部材5の筒部5bをリアサイドブロック部4bのリア側端部まで覆うように延長させることで覆うようにしたので、オイル分離室22を覆う閉塞部材が不要となり、オイル分離器14を設けたことによる部品点数の増加もなくなる。
【0042】
このため、オイル分離器14をリアサイドブロック部4bに一体に設けて部品点数を削減できるので、製造コストを低減することが可能になると共に、圧縮室の軸方向の寸法を従来のオイル分離器を備えたベーン型圧縮機に比べて短くすることが可能となる。
【0043】
また、オイル分離室22は、鉛直方向に対して斜めに形成され、下端部に形成された隙間24を介して、分離されたオイルがオイル貯留室25へ導かれるので、オイル分離室22からのオイルの排出がオイル貯留室25に溜まるオイルによって妨げられることがなくなり、また、隙間24の間隔を適切に調節することでオイル貯留室25に貯留されるオイルの乱れを抑え、オイル供給の安定化を図ることが可能となる。
さらに、オイル分離室22は、下方に向かうほど(開口端に向かうほど)径が大きく形成されているので、固定部材4をオイル分離器14と共に鋳造にて一体に成型する場合において、鋳型を容易に外すことが可能となり、鋳造成型が容易となる。
【0044】
尚、上述の構成においては、オイル分離室22の下端部とオイル貯留室25とを連通するオイル排出路を、固定部材4とシェル部材5との間に形成される隙間24によって構成する例を示したが、オイル分離室22の下端部に形成されるオイル排出路を、
図4に示されるように、固定部材4に形成された溝24’又は、図示しない孔によって構成するようにしてもよい。このような構成によっても、溝24’や孔の形状を調節することによって、オイル貯留室25に貯留されたオイルの乱れを抑えてオイル供給の安定化を図ることが可能となる。
【0045】
また、ベーン型圧縮機に適用した例を示したが、ハウジングに固定された固定スクロール(固定部材)と、固定スクロールに対して可動(旋回)する可動スクロール(可動部材)とを有し、可動スクロールを、ハウジングに回転可能に配設されたシャフトにより旋回駆動し、可動スクロールの旋回とともに、両スクロールによって形成される圧縮室の体積を拡大縮小することにより冷媒を吸入圧縮するスクロール型圧縮機に対して、固定部材に遠心分離型のオイル分離器を設ける場合に上述した構成を採用してもよい。また、上述の構成においては、シリンダ部4aと一体をなすリアサイドブロック部4bにオイル分離器14を設け、これをシェル部材5に収容する構成例について説明したが、シリンダ部と一体をなすフロントサイドブロック部にオイル分離器を設け、これをシェル部材に収容する構成において、上述と同様の構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 シャフト
2 可動部材
3 圧縮室
4 固定部材
5 シェル部材
14 オイル分離器
4a シリンダ部
4b リアサイドブロック部
5a フロントサイドブロック部
5b 筒部
22 オイル分離室
23 分離筒
24 隙間
24’ オイル排出孔
30 オイル供給通路