(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5707368
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】錠前防護装置
(51)【国際特許分類】
E05B 67/38 20060101AFI20150409BHJP
E05B 17/00 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
E05B67/38
E05B17/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-169198(P2012-169198)
(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公開番号】特開2014-29061(P2014-29061A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2013年7月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】514210119
【氏名又は名称】佐藤 永周
(74)【代理人】
【識別番号】100092163
【弁理士】
【氏名又は名称】穴見 健策
(74)【代理人】
【識別番号】100136928
【弁理士】
【氏名又は名称】高宮 章
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 延生
【審査官】
家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−184779(JP,A)
【文献】
特開2003−239595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
南京錠を内部に収容して配置され両端を開口した筒状周壁と、
筒状周壁の軸方向の中間位置に穿孔され、筒状周壁の内部に掛け金の環状部を挿入させる挿入孔と、を備え、
筒状周壁には、軸方向の中間位置で挿入孔とは異なる位置に、操作者の指を内部空間に入れて施錠操作を行える指入れ用孔が穿孔されたことを特徴とする錠前防護装置。
【請求項2】
指入れ用孔と挿入孔とは、筒状周壁の直径方向に対向して配置されたことを特徴とする請求項1記載の錠前防護装置。
【請求項3】
筒状周壁の外面から外側に向けて突設し、掛け金の環状部を挿入させる挿入孔近傍の筒状周壁と施錠対象物との隙間を狭く又は閉鎖する障壁手段が設けられたことを特徴とする請求項1又は2記載の錠前防護装置。
【請求項4】
南京錠を内部に収容して配置され両端を開口した筒状周壁と、
筒状周壁の軸方向の中間位置に穿孔され、筒状周壁の内部に掛け金の環状部を挿入させる挿入孔と、を備え、
筒状周壁の外面から外側に向けて突設し、掛け金の環状部を挿入させる挿入孔近傍の筒状周壁と施錠対象物との隙間を狭く又は閉鎖する障壁手段が設けられたことを特徴とする記載の錠前防護装置。
【請求項5】
障壁手段は、筒状周壁の中心軸と平行に形成され、挿入孔を間に挟んで対向配置されて筒状周壁の外面に固定された2つの直状部材を含むことを特徴とする請求項3又は4記載の錠前防護装置。
【請求項6】
障壁手段は、筒状周壁の挿入孔の孔縁から外側に向けて突設した突出首部を含むことを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載の錠前防護装置。
【請求項7】
筒状周壁は円筒形状に設けられたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の錠前防護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の戸や箱等の施錠対象物に取り付けられる錠前の破壊を防止できる錠前防護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家屋や倉庫、金庫等の戸または箱等には、他人が勝手に開いて中のものを盗んだり破壊したり悪戯したりするのを防止するために南京錠を取り付けて施錠する場合がある。南京錠は金属素材で製造されているが、金切り鋏やニッパー等の切断工具で細いつる部分を切断して南京錠が破壊され、不正に開錠されてしまって被害を受ける事件がしばしば問題となっている。従来、切断工具による南京錠の破壊を防止するために南京錠を覆って保護する技術が提案されている。例えば、特許文献1に開示されている南京錠カバーは、被係合物の係合孔につる部分が挿通された状態で施錠される南京錠の少なくともつる部分を収容するための内部空間を形成する壁を有し、前記壁は、内部空間を囲繞する四角筒状の周壁と、この周壁で構成される開口のうちの一方を塞ぐ底壁とを有しており、周壁の一部には被係合部を挿通する挿通孔が設けられたものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−184779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の南京錠カバーでは、南京錠をカバーするために周壁の一端側は底壁で塞がれ、他端側のみしか開口されていないとともに、しかも南京錠より僅かに大きな四角筒状に設けられているので、周壁の内部空間に指を入れる隙間が無く内部の南京錠を操作しにくいとともに、内部の南京錠や被係合物の係合孔を目で確認できにくいので、施錠操作や解除操作に手間取って時間がかかるおそれがあった。また、特許文献1の南京錠カバーを、例えば、建物の扉を施錠する南京錠に利用した場合には、南京錠カバーと扉に取り付けられた掛け金との隙間の部分から切断工具を差し込まれて、掛け金を受ける環状部を切断される場合もあり、より防犯性の高い技術の開発が望まれていた。
【0005】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、錠前を切断工具による破壊行為から確実に防護できるとともに、錠前の施錠操作及び正常な解錠操作を簡単、スムーズに行える錠前防護装置を提供することにある。さらに、他の目的は、防犯機能を向上できる錠前防護装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、南京錠50を内部に収容して配置され両端を開口18した筒状周壁12と、筒状周壁12の軸方向の中間位置に穿孔され、筒状周壁12の内部に掛け金の環状部62を挿入させる挿入孔14と、を備え
、筒状周壁12には、軸方向の中間位置で挿入孔14とは異なる位置に、操作者の指Fを内部空間16に入れて施錠操作を行える指入れ用孔20が穿孔された錠前防護装置10から構成される。
【0007】
また、
指入れ用孔20と挿入孔14とは、筒状周壁12の直径方向に対向して配置されたこととしてもよい。
【0008】
また、筒状周壁12の外面から外側に向けて突設し、掛け金の環状部62を挿入させる挿入孔近傍の筒状周壁12と施錠対象物との隙間を狭く又は閉鎖する障壁手段24が設けられたこととしてもよい。
【0009】
また本発明は、南京錠50を内部に収容して配置され両端を開口18した筒状周壁12と、筒状周壁12の軸方向の中間位置に穿孔され、筒状周壁12の内部に掛け金の環状部62を挿入させる挿入孔14と、を備え筒状周壁12の外面から外側に向けて突設し、掛け金の環状部62を挿入させる挿入孔近傍の筒状周壁12と施錠対象物との隙間を狭く又は閉鎖する障壁手段24が設けられた錠前防護装置10から構成される。
【0010】
また、障壁手段24は、筒状周壁12の中心軸Zと平行に形成され、挿入孔14を間に挟んで対向配置されて筒状周壁12の外面に固定された2つの直状部材24を含むこととしてもよい。
【0011】
また、障壁手段24は、筒状周壁12の挿入孔24の孔縁から外側に向けて突設した突出首部26を含むこととしてもよい。
【0012】
また、筒状周壁12は円筒形状に設けられたこととしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の錠前防護装置によれば、南京錠を内部に収容して配置され両端を開口した筒状周壁と、筒状周壁の軸方向の中間位置に穿孔され、筒状周壁の内部に掛け金の環状部を挿入させる挿入孔と、を備えたことから、筒状周壁により南京錠を囲んで切断・破壊行為から確実に防護できるとともに、両端開口を介して内部の南京錠に対する施錠操作や正常の開錠操作を、確実かつスムーズに行うことができる。
【0014】
また、筒状周壁には、軸方向の中間位置で挿入孔とは異なる位置に、操作者の指を内部空間に入れて施錠操作を行える指入れ用孔が穿孔される構成とすることにより、筒状周壁の両端の開口から内部へのアクセスに加えて、指入れ用孔を介して手の指を筒状周壁の軸方向の中間位置から内部空間内に入れて、南京錠等を操作することができ、操作性を向上できる。
【0015】
また、指入れ用孔と挿入孔とは、筒状周壁の直径方向に対向して配置された構成とすることにより、挿入孔から挿入された環状部に係合する南京錠に対してアクセスしやすく、簡単かつスムーズに施錠操作や開錠操作を行える。
【0016】
また、筒状周壁の外面から外側に向けて突設し、掛け金の環状部を挿入させる挿入孔近傍の筒状周壁と施錠対象物との隙間を狭く又は閉鎖する障壁手段が設けられた構成とすることにより、筒状周壁と施錠対象物との隙間から切断工具の刃が差し込まれて掛け金が切断・破壊されるのを良好に防止できる。
【0017】
また、障壁手段は、筒状周壁の中心軸と平行に形成され、挿入孔を間に挟んで対向配置されて筒状周壁の外面に固定された2つの直状部材を含む構成とすることにより、障壁手段を簡単な構成で具体的に実現でき、低コストで製造できる。
【0018】
また、障壁手段は、筒状周壁の挿入孔の孔縁から外側に向けて突設した突出首部を含む構成とすることにより、障壁手段を簡単な構成で具体的に実現でき、低コストで製造できる。
【0019】
また、筒状周壁は円筒形状に設けられた構成とすることにより、筒状周壁のスペース効率がよく、切断工具が刃を開いた状態での侵入を阻止できる構造でありながら、内部の南京錠を操作するための空間の確保を簡単な構造で両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る錠前防護装置の斜視図である。
【
図2】
図1の錠前防護装置の背面側を見せた斜視図である。
【
図6】
図3の錠前防護装置のA−A線の要部断面図及び作用説明図である。
【
図7】
図3の錠前防護装置のB−B線の要部断面図である。
【
図8】
図3の錠前防護装置のC−C線の要部断面図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係る錠前防護装置の背面側から見た斜視図である。
【
図11】
図10の錠前防護装置の正面側からみた斜視図である。
【
図12】
図10の錠前防護装置を錠前に取り付けた状態の横断面図である。
【
図13】本発明の第3の実施形態に係る錠前防護装置の背面側から見た斜視図である。
【
図14】
図13の錠前防護装置の正面側からみた斜視図である。
【
図15】
図13の錠前防護装置を錠前に取り付けた状態の横断面図である。
【
図16】本発明の第4の実施形態に係る錠前防護装置の斜視図である。
【
図18】施錠対象物ある賽銭箱に南京錠を取り付けた一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下添付図面を参照しつつ本発明の錠前防護装置の実施形態について説明する。本発明に係る錠前防護装置は、例えば、建物の戸や箱の蓋等に取り付けて開かないように締める錠前が、切断工具等で切断・破壊されて戸や蓋等が不正に開かれるのを防止するために、錠前部分に設置される防犯用の錠前破壊防止装置である。
【0022】
本実施形態では、例えば、
図18に示すように、施錠対象物BXとして賽銭箱を施錠する南京錠50に適用した例で説明する。なお、施錠対象物は賽銭箱に限らず、倉庫や蔵等の建物や室内の引き戸や開き戸、金庫の扉、箱の蓋その他任意のものでもよい。南京錠50は、例えば、従来周知の南京錠であり、本体52と逆U字状のツル部54とを有し、ツル部54を被係合物の環状部62に引っ掛けた状態で該ツル部54と本体52内部の錠前機構と係合して施錠される。南京錠50は、図示しない鍵で開錠されると、ツル部54の一端が本体52から離脱して回転するようになっている。
図18では、南京錠50は、例えば、施錠対象物BXに固定された掛け金60の可動アーム部61を受ける環状部62に係合される。掛け金60は、例えば、賽銭箱の引き出し状の開き部分に取り付けられており、開き部分の一方側(例えば、引出し側)に取り付けられた可動アーム部61を、開き部分の他方側(例えば、箱本体側)に受け金部として取り付けられ可動アーム部61に係脱自在に係合する環状部62に、係合させて開き部分が締め固められる。可動アーム部61は、賽銭箱に固定される固定板63に対して枢軸64を介して縦軸回りに回動自在に組み付けられており、先端側に長孔65が貫通されている。環状部62は、賽銭箱に固定される固定板66に対して回動軸67を介して水平軸周りに回転自在に組み付けられている。可動アーム部61の長孔65内に環状部62を挿通させた状態で、該環状部62を回転軸周りに90度回転するとロック状態とアンロック状態とに切り換わる。なお、南京錠の構造やその他掛け金や環状部の構造は、上述した例に限定されず、その他任意の構成でもよい。南京錠は、鍵で開錠する構造に限らず、鍵を使用しないダイヤル式や番号式の錠でもよい。
【0023】
本実施形態において、
図1、
図2に示すように、錠前防護装置10は、南京錠50を収容する両端開口の筒状周壁12と、筒状周壁12に設けられた挿入孔14と、を備えている。
【0024】
図1、
図2、
図6に示すように、筒状周壁12は、中空の内部空間16を形成しており、南京錠50を内部空間16に収容した状態で施錠対象物BXの錠前部分に配置される。筒状周壁12は、両端に開口18を有しており、それらの開口18を介して両端側では内部空間16と外部とが連通している。したがって、錠前防護装置10は、両端開口の筒状体から構成され、筒状周壁が南京錠50の周りを囲んでカバーする第1の防護手段又はカバー手段となっている。これにより、南京錠50を防護できる構造でありながら、両端側のいずれの開口18からも内部にアクセスすることができるので、内部に収容した南京錠の円滑な操作を実現できる。
【0025】
図1、
図2、
図5に示すように、本実施形態では、筒状周壁12は、例えば、ステンレス等の硬質金属素材からなり、円筒形状に形成されている。
図6にも示すように、筒状周壁12の軸方向の長さは、例えば、南京錠50の本体52とツル部54を含む縦サイズよりある程度長く設定され、ツル部54が筒状周壁12の両端の開口18からある程度離隔した中間位置で収容できるように構成されている。基本的には、筒状周壁12の軸方向の長さは、南京錠を収容できる程度であれば任意でよい。本実施形態では、筒状周壁12は両端開口の構成であるため、該筒状周壁12の軸方向の長さは、端部の開口18と内部に収容した南京錠のツル部54が近接するような比較的短い長さよりも、両端部の開口18と内部に収容した南京錠50のツル部54とが離隔するように比較的長い長さとすることで、切断工具Nの刃NEが端部の開口からツル部までとどきにくく、防護の面で有利である。なお、筒状周壁12は、南京錠の本体52の下端部側が筒外部に若干突出するような収容する大きさでもよい。
図6、
図7に示すように、円筒形状の筒状周壁12の内径は、例えば、南京錠50の横サイズよりもやや大きい程度に設定されていると同時に、金切り鋏等の切断工具Nが開閉刃を開いた状態では挿入できないような大きさとなっている。筒状周壁12は、中心軸Zに垂直な断面が円形状なので、スペース効率が良く、内部に南京錠50を収容した状態で指を入れる空間を確保できると同時に、切断工具Nの挿入を妨げることができる。例えば、筒状周壁12は、四角筒等の多角形等のその他任意の形状でもよい。しかし、四角筒などの形状の場合には、例えば、周壁内部空間をある程度広く確保しようとすると、対角線方向や長軸方向の幅が広くなっているので、切断工具が刃を開いた状態で入ってしまうおそれが高くなる。したがって、筒状周壁内部の南京錠を操作するための空間が円筒形状の場合と比較して比較的狭く製作せざるを得なくなるため、防護機能と操作性を両立させる面では、筒状周壁は両端開口の円筒形状とする方が有利である。
【0026】
図2、
図4、
図6、
図7に示すように、挿入孔14は、施錠時に南京錠のツル部54が引掛けられる環状部62を筒状周壁12の内部16に挿入させるために筒状周壁12に穿孔された孔である。挿入孔14は、筒状周壁12の軸方向の中間位置に穿孔されている。本実施形態では、挿入孔14は、筒状周壁12の軸方向の長さの略中央位置すなわち略1/2程度の位置に配置されている。挿入孔14は、例えば、環状部62の外径よりも若干大きな径の略円形状に形成されている。挿入孔14の位置は、筒状周壁12の端部側の開口18に近接した位置に設ける構成よりも、両端開口18よりある程度離隔した位置に設ける構成の方が、環状部62に係合した南京錠50のツル部54に対して、切断工具の開閉刃がとどきにくく、防護機能の面で有利となる。よって、挿入孔14は、筒状周壁の両端開口18よりもある程度離隔するように軸方向長さの中間位置に設定される。すなわち、上述したような筒状周壁12の軸方向長さと挿入孔14の位置との設定により、南京錠のツル部54が筒状周壁の軸方向の中間位置に配置され、筒状周壁12が両端を開口した構成であっても良好に南京錠を防護できるような構造を実現し得る。
【0027】
図1、
図3、
図6に示すように、筒状周壁12の軸方向の中間位置には、指入れ用孔20が穿孔されている。指入れ用孔20は、操作者の手指を筒状周壁12の軸方向の中間位置から内部空間16内に入れて、該内部空間16にアクセスするために挿入孔14とは異なる位置に設けられた操作用補助孔である。これにより、指入れ用孔20を介して筒状周壁12の内部の両端開口18からある程度離隔した軸方向中間位置にツル部54が配置される南京錠50の施錠操作や開錠操作を良好に行なうことができ、施錠操作や開錠操作を含む操作性を向上できる。本実施形態では、指入れ用孔20は、例えば、円形状に形成されており、手の指を一本(例えば、親指)挿入できる程度の大きさで形成されている。指入れ用孔20は、挿入孔14に対して円筒形状の周状筒壁12の直径方向に対向した位置に設定されている。すなわち、指入れ用孔20と挿入孔14とは、筒状周壁12の軸方向の中間位置で、互いに筒状周壁12の中心軸Z回りに180度ずれた位置関係、または該中心軸Zに対して直交する方向に対向した位置関係に設定されている。よって、
図9に示すように、指入れ用孔20から入れた手指Fが、挿入孔に挿入された環状部62及び該環状部62に係合する南京錠50にアクセスしやすく、良好な操作性を実現している。なお、指入れ用孔20の位置は、筒状周壁12の軸方向の中間位置であれば任意でもよく、例えば、挿入孔14に対して中心軸Z回りに90度や120度ずれた位置でもよく、筒状周壁の軸方向にずれた位置でもよい。また、指入れ用孔20の個数も1個に限らず複数個設けてもよい。
【0028】
図2、
図4、
図7に示すように、筒状周壁12には、掛け金の環状部62を挿入させる挿入孔14近傍の筒状周壁12の外面と、施錠対象物BXの壁面と、の間Hを狭くするための障壁手段22が設けられている。障壁手段22は、筒状周壁12の外面から外側の施錠対象物BX側に向けて突出された突設部から構成されている。障壁手段22により該隙間を狭くすることで、該隙間から切断工具Nの刃が差し入れられて施錠対象物BXに取り付けられた掛け金や環状部62が切断、破壊されるのを良好に防止することができる。また、隙間が狭くなるので円筒形状の筒状周壁12ががたつきにくく錠前に配置した状態で安定性を向上する。よって、筒状周壁12により内部の南京錠50を防護できると同時に、筒状周壁12の外部側で掛け金60又は環状部62を防護することができ、防護機能を向上できる。すなわち、障壁手段22は、筒状周壁の外部において、施錠対象物に取り付けられた掛け金60又は南京錠と係合する環状部62の一部を外部側で覆う第2の防護手段又はカバー手段ともいえる。
【0029】
本実施形態では、障壁手段22は、例えば、筒状周壁12の中心軸Zと平行に直線状に形成されるとともに、挿入孔14を間に挟むように所定の間隔で対向配置された1対の直状部材24を含む。直状部材24は、例えば、ステンレス等の金属製で一方向に長い略四角形の板状部材からなる。直状部材24は、筒状周壁12の挿入孔14が形成されている位置から周方向に離隔した位置で短辺方向を施錠対象物の壁面に略垂直に向けた状態で、一方の長辺部分を筒状周壁12の外面に溶接により固定され、筒状周壁12から突設されている。直状部材24の長さは、少なくとも挿入孔14の直径よりも長く設けられる。本実施形態では、筒状周壁は、円筒形状で外面が曲面で形成されているので、挿入孔の位置から曲面に沿って次第に施錠対象物の壁面から離隔して次第に隙間が形成されるが、筒状周壁外面から突設された直状部材24により隙間を狭くする(又は隙間を塞ぐ)ことができる。本実施形態では、
図7、
図8に示すように、直状部材24の筒状周壁12の外周曲面からの突出幅は、例えば、側面視で筒状周壁12の施錠対象物に最も近接する部分と略揃う程度に設けられている。なお、直状部材24の突出幅は、切断工具Nの切断刃NEが入り込まないように隙間を狭く又は隙間を閉鎖する突出幅であればよく、例えば、筒状周壁12の施錠対象物に最も近接する部分よりもさらに突出して設けられていても良い。なお、障壁手段22は、該筒状周壁12の外面と施錠対象物の外面との隙間を完全に閉鎖するような突設幅で筒状周壁12から突出して構成されていてもよい。また、障壁手段22は、挿入孔の周囲を囲むように筒状周壁から外側に突出した四周壁や円周壁でもよく、あるいはブロック部材等で構成してもよい。
【0030】
図9に示すように、錠前防護装置10を南京錠50に取り付ける際には、例えば、掛け金の可動アーム部61を環状部62に係合した状態で、施錠対象物に取り付けられた環状部62を錠前防護装置10の筒状周壁12の挿入孔14から内部に挿入して筒状周壁12を施錠対象物に近接させて配置させる。筒状周壁12の一端側の開口18から南京錠50を内部に入れて、環状部62に南京錠50のツル部54を引っ掛けた後、ツル部54を本体52に施錠する。この施錠操作の際には、
図9に示すように、筒状周壁12は両端を開口18しているとともに、軸方向の中間位置に指入れ用孔20が設けられているので、両端開口18及び指入れ用孔から内部に指を入れてアクセスしやすく、スムーズに施錠操作を行える。錠前防護装置10を取り付けた状態では、
図4に示すように、切断工具Nの開閉刃NEを開いた状態では、実線で示すように、筒状周壁12の内部16に挿入できないようになっている。また、切断工具Nの開閉刃を閉じた状態では、
図4の二点差線で示すように、開閉刃NEを筒状周壁12の内部16に挿入できた場合でも、該筒状周壁12内部16では開閉刃NEを開けないようになっている。これにより、筒状周壁12により南京錠50を保護して南京錠50が破壊されるのを良好に防止できる。同時に、筒状周壁12の外部側では、障壁手段22により、施錠対象物との隙間に切断工具の開閉刃が挿入されるのを防ぎ、掛け金60や環状部62を良好に防止できる。その結果、防護機能が向上し、より確実に錠前を破壊行為から防護することができ、セキュリティ性が高く、高い安心感を得られる。また、錠前を正常に開錠する際には、両端開口18及び指入れ用孔から内部に指を入れてアクセスしやすく、スムーズに開錠操作を行える。なお、錠前防護装置は、筒状周壁内部での操作性が良いので、南京錠は鍵式に限らず、例えば、番号式やダイヤル式等の南京錠でも操作することができ、南京錠の種類が限定されにくく、使い勝手がよい。
【0031】
次に、
図10ないし
図12を参照しつつ、本発明の第2実施形態の錠前防護装置10−2について説明する。上記した第1実施形態と同一構成、同一部材には、同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図10、
図11、
図12に示すように本実施形態に係る錠前防護装置10−2では、第1実施形態と略同じ構成であるが、筒状周壁12には指入れ用孔20が設けられていない。また、
図10、
図12に示すように、障壁手段24を構成している直状部材24は、例えば、断面円形状の丸鋼から構成されており、溶接等により筒状周壁12の曲面状の外面に固定されている。直状部材24の突出幅は、筒状周壁12の外面が施錠対象物の壁面に最も近接する位置よりも更に外側に向けて突出しており、筒状周壁と施錠対象物との間Hを側方側からは略閉鎖状に塞ぐように設定されている。なお、本実施形態でも、指入れ用孔20を設けても良い。本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、南京錠及び掛け金を良好に防護できると同時に高い操作性を得ることができる等の作用効果を奏しうる。
【0032】
次に、
図13ないし
図15を参照しつつ、本発明の第
3実施形態の錠前防護装置10−3について説明する。上記した第1実施形態と同一構成、同一部材には、同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図13、
図14、
図15に示すように、本実施形態に係る錠前防護装置10−3は、第1の実施形態と略同じ構成であるが、挿入孔14の孔縁から外側に向けて突出した突出首部26が設けられている。突出首部26は、例えば、軸方向の長さが比較的短い略円筒形状に形成されており、挿入孔14の孔縁に筒状周壁に溶接で固定されている。突出首部26により、挿入孔14の周囲を突出させることで、施錠対象物の壁面との間を狭く又は閉鎖して、施錠対象物との隙間に切断工具の開閉刃が挿入されるのを防ぎ、掛け金60を良好に防止できる。すなわち、本実施形態では、障壁手段24は、直状部材24と、突出首部26と、を含む構成となっている。直状部材24の突出幅は、例えば、筒状周壁12の施錠対象物の壁面に最も近接する位置よりも更に外側に向けて突出しており、直状部材24の突出端が突出首部26の突出端と略揃うように設定されている。本実施形態においても、第1実施形態と同様に、南京錠及び掛け金を良好に防護できると同時に高い操作性を得ることができる等の作用効果を奏しうる。
【0033】
次に、
図16、
図17を参照しつつ、本発明の第
4実施形態の錠前防護装置10−4について説明する。上記した第1実施形態と同一構成、同一部材には、同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図16、
図17に示すように、本実施形態に係る錠前防護装置10−4は、第1の実施形態と略同じ構成であるが、筒状周壁の外周に障壁手段22すなわち直状部材24が設けられていない。したがって、錠前防護装置は、両端に開口18を有する中空円筒体のみからなり、筒状周壁12の軸方向の中間位置に挿入孔14と指入れ用孔20が互いに対向して設けられている。本実施形態においても、南京錠を良好に防護できると同時に高い操作性を得ることができる等の作用効果を奏しうる。さらに、上記実施形態と比べて構造がシンプルで簡単であり、低コストで製造できる。
【0034】
以上説明した本発明の錠前防護装置は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の錠前防護装置は、倉庫や蔵等の建物や室内の引き戸や開き戸、金庫の扉、箱の蓋、賽銭箱等その他錠前で施錠される箇所に取り付けて、それらを防護することができる。
【符号の説明】
【0036】
10 錠前防護装置
12 筒状周壁
14 挿入孔
18 開口
20 指入れ用孔
22 障壁手段
24 直状部材
26 突出首部
50 南京錠
62 環状部