特許第5707369号(P5707369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝ソリューション株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5707369-充電管理システム 図000003
  • 特許5707369-充電管理システム 図000004
  • 特許5707369-充電管理システム 図000005
  • 特許5707369-充電管理システム 図000006
  • 特許5707369-充電管理システム 図000007
  • 特許5707369-充電管理システム 図000008
  • 特許5707369-充電管理システム 図000009
  • 特許5707369-充電管理システム 図000010
  • 特許5707369-充電管理システム 図000011
  • 特許5707369-充電管理システム 図000012
  • 特許5707369-充電管理システム 図000013
  • 特許5707369-充電管理システム 図000014
  • 特許5707369-充電管理システム 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5707369
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】充電管理システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20150409BHJP
   H02J 7/02 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
   H02J7/00 P
   H02J7/02 F
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-180865(P2012-180865)
(22)【出願日】2012年8月17日
(65)【公開番号】特開2014-39409(P2014-39409A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2014年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】301063496
【氏名又は名称】東芝ソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕之
(72)【発明者】
【氏名】島田 毅
(72)【発明者】
【氏名】保坂 範和
(72)【発明者】
【氏名】山口 直樹
(72)【発明者】
【氏名】竹内 資浩
(72)【発明者】
【氏名】小島 健司
【審査官】 坂本 聡生
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−136109(JP,A)
【文献】 特開2012−5341(JP,A)
【文献】 特開2010−231258(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/118193(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/118187(WO,A1)
【文献】 特開2012−50222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00−7/12
7/34−7/36
G06Q 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貸出のための電気自動車への充電を行なう第1の充電装置と、
前記第1の充電装置と比較して短い所要時間により前記電気自動車への充電を行なう第2の充電装置と、
前記電気自動車の貸出予約済みの時間帯である貸出時間帯、および、前記第2の充電装置を使用可能な時間帯で、かつ、前記貸出時間帯における前記電気自動車の貸出を可能とするための前記第2の充電装置による前記電気自動車への充電時間帯、および、前記第2の充電装置を使用可能でない時間帯で、かつ、前記貸出時間帯における前記電気自動車の貸出を可能とするための前記第1の充電装置による前記電気自動車への充電時間帯、および前記電気自動車の貸出および前記電気自動車に対する充電による、前記電気自動車の蓄電電力量の推移を示す情報を管理する管理手段と、
前記第2の充電装置を使用可能な時間帯では前記第2の充電装置による前記電気自動車への充電を行なうと仮定した際の充電時間帯、前記第2の充電装置を使用可能でない時間帯における前記第1の充電装置による前記電気自動車への充電時間帯、および、前記管理手段により管理される前記貸出時間帯に基づいて、前記電気自動車の新たな貸出希望時間帯として設定可能な時間帯を表示装置に表示させる表示制御手段と、
前記表示制御手段により表示された時間帯における、前記電気自動車の貸出希望時間帯の入力を受け付ける入力手段と、
前記入力手段により入力された貸出希望時間帯について前記電気自動車を貸出すための必要電力量を計算する第1の計算手段と、
前記第1の計算手段により計算した必要電力量に基づいて、前記入力された貸出希望時間帯において前記電気自動車の貸出を可能とするための前記第1および第2の充電装置による充電が必要な時間帯を計算する第2の計算手段と、
前記管理手段により管理される情報に基づき、前記入力された貸出希望時間帯、および前記貸出予約済みの借用時間帯において前記電気自動車の貸出を可能とするための充電が前記第2の計算手段により計算した時間帯において可能であれば、前記入力された貸出希望時間帯を貸出可能な時間帯として設定するスケジューリング手段と
を備えたことを特徴とする充電管理システム。
【請求項2】
前記スケジューリング手段は、
前記入力手段により入力された貸出希望時間帯の開始までに、前記電気自動車に対する前記第1の充電装置による充電を終了できる際は、前記貸出希望時間帯を貸出可能な時間帯として設定した上で、前記貸出希望時間帯の開始までの時間を、前記電気自動車に対する前記第1の充電装置による充電時間として設定し、
前記貸出希望時間帯の開始までに、前記電気自動車に対する前記第2の充電装置による充電を終了できるが、前記貸出希望時間帯の開始までに、前記電気自動車に対する前記第1の充電装置による充電を終了できない際は、前記貸出希望時間帯を貸出可能な時間帯として設定した上で、前記貸出希望時間帯の開始までの時間を、前記電気自動車に対する前記第2の充電装置による充電時間として設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の充電管理システム。
【請求項3】
前記電気自動車の使用目的を含む貸出申請情報の入力を受け付ける第2の入力手段をさらに備え、
前記第1の計算手段は、
前記第2の入力手段により入力した情報に基づいて、前記貸出希望時間帯のうち前記電気自動車の実際の使用時間を推定し、この推定した時間を考慮して、前記必要電力量を計算する
ことを特徴とする請求項1に記載の充電管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電気自動車の充電を管理する充電管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車(Electric Vehicle:以下、「EV」と記すが、本願では必ずしも四輪車には限られず、二輪車・三輪車等も含まれ、外部からの充電が可能なプラグインハイブリッド車(Plug-in Hybrid Vehicle)も該当する)の様に、自身に内蔵された蓄電池に蓄電された電力をエネルギー源として動く移動装置(以降では、EVを代表的な機器として説明する)は、蓄電池への充電に要する時間がガソリン車に対する給油に要する時間と比較して長い。また、EVの走行可能距離はガソリン車の走行可能距離と比較して短いため、EVに対しては長時間の充電を頻繁に行なう必要があった。また、EVへのフル充電の為には、6〜8時間の充電が必要であるため、EVをカーシェアリングやカーレンタルのために利用する場合、EVについての一回の利用の合間には、EVへの充電のために数時間以上の間隔が必要となり、カーシェアリングやカーレンタルとしての稼働率が低く、採算性が低かった。
【0003】
また、他の背景技術としては、主に納品向けの自社配送車両を、納品計画と充電状態を用いて制御するバッテリ充電システム、車両管理サーバ、カーシェアリングサーバが存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−231258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
EVへの充電時間を短縮する方法として、急速充電器の活用が考えられる。急速充電を行なうと、EVへの充電時間を30分程度にまで短縮することができるが、急速充電器は供給電力設備も含め高価であり、急速充電器の集中運用を行うと電力系統に影響を及ぼす可能性が指摘されている。そのため、急速充電器をどのEVに対しても用意することは困難である。よって、急速充電器と、多くの数を揃えられる普通充電器とを組み合わせて、コストに留意しつつ充電器全体としての稼働率を高める必要がある。
【0006】
EVへの充電には普通充電用の充電器と急速充電用の充電器とでなる2通りの充電器を使用する事ができるが、ここでは、汎用的に、あるリソースに対する複数の充電パターンによる充電に対しても利用が可能な機能について説明する。
【0007】
急速充電器による充電と普通充電器による充電とをうまくスケジューリングして、EVの稼働率を向上させるためには、性能の違う機械を並列稼働させる工場のライン生産効率向上アルゴリズムなど、各種適用可能なロジックがある。しかし、カーシェア等の運用では、借用申請が不定期に発生し、計画的・効率的に申請者へのサービス提供時間は大きく変更できないため、最適化借用計画を立案するのは困難であり、基本は「先約制」を取る形になる。借用者が、このような「事前に充電器の種類の指定と、借用前の充電スケジュールを制御する」ことは難しいため、借用スケジュールが前のスケジュールと近く、普通充電を行なっていたのでは利用できないEVを借りる必要がある人が、高度な判断を行うこと無く、結果的に急速充電の利用を借用前の充電に対してスケジューリングさせ、借用を可能とさせるような仕組みが必要である。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、普通充電と急速充電とを組み合わせることによるリソースの稼働率を向上させることが可能になる充電管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態によれば、充電管理システムは、貸出のための電気自動車への充電を行なう第1の充電装置と、前記第1の充電装置と比較して短い所要時間により前記電気自動車への充電を行なう第2の充電装置と、前記電気自動車の貸出予約済みの時間帯である貸出時間帯、および、前記第2の充電装置を使用可能な時間帯で、かつ、前記貸出時間帯における前記電気自動車の貸出を可能とするための前記第2の充電装置による前記電気自動車への充電時間帯、および、前記第2の充電装置を使用可能でない時間帯で、かつ、前記貸出時間帯における前記電気自動車の貸出を可能とするための前記第1の充電装置による前記電気自動車への充電時間帯、および前記電気自動車の貸出および前記電気自動車に対する充電による、前記電気自動車の蓄電電力量の推移を示す情報を管理する管理手段と、前記第2の充電装置を使用可能な時間帯では前記第2の充電装置による前記電気自動車への充電を行なうと仮定した際の充電時間帯、前記第2の充電装置を使用可能でない時間帯における前記第1の充電装置による前記電気自動車への充電時間帯、および、前記管理手段により管理される前記貸出時間帯に基づいて、前記電気自動車の新たな貸出希望時間帯として設定可能な時間帯を表示装置に表示させる表示制御手段と、前記表示制御手段により表示された時間帯における、前記電気自動車の貸出希望時間帯の入力を受け付ける入力手段と、前記入力手段により入力された貸出希望時間帯について前記電気自動車を貸出すための必要電力量を計算する第1の計算手段と、前記第1の計算手段により計算した必要電力量に基づいて、前記入力された貸出希望時間帯において前記電気自動車の貸出を可能とするための前記第1および第2の充電装置による充電が必要な時間帯を計算する第2の計算手段と、前記管理手段により管理される情報に基づき、前記入力された貸出希望時間帯、および前記貸出予約済みの借用時間帯において前記電気自動車の貸出を可能とするための充電が前記第2の計算手段により計算した時間帯において可能であれば、前記入力された貸出希望時間帯を貸出可能な時間帯として設定するスケジューリング手段とをもつ。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態における充電管理システムの機能構成例を示す図。
図2】借用予約のためのスケジュール画面表示のための手順の一例を示すフローチャート。
図3】ユーザ利用申請画面の一例を示す図。
図4】詳細情報入力画面の一例を示す図。
図5】再計算されたスケジュールを示す画面の一例を示す図。
図6】リソーススケジュールの一例を表形式で示す図。
図7】急速充電可能な場合の初期表示画面の一例を示す図。
図8】普通充電しか行えない場合の初期表示画面の一例を示す図。
図9】充電スケジューリングが可能か否かを表すためのチェックポイントの一例を示す図。
図10】必要電力量の確認のための情報を表形式で示す図。
図11】借用時間の表示画面の一例を示す図。
図12】スケジューリング可能時間の表示画面の一例を示す図。
図13】新しい借用スケジュールの一例を表形式で示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態では、EVのカーシェア・カーレンタルなどのリソース共有システムに対して、稼働率を向上させるために、リソース空き時間、及びリソース充電時間の表示を工夫するスケジューラを有する充電管理システムを提供する。
【0012】
本実施形態では、EVの稼働率向上のために、第1に、EVについての急速充電時間の活用をした場合のEVの借用申請者に対する借用表示時間(借用申請者に対する貸出表示時間)の拡大機能を有し、第2に、必要な電力量のみをEVに充電することで充電時間を少なくする機能を有することを特徴としている。
【0013】
まず、急速充電時間の活用をした場合の借用表示時間の拡大機能について説明する。この機能は、急速充電器が使用可能な時間帯におけるEVの借用申請に対しては、実際の充電スケジュールは普通充電で長時間に充電を行なうとしても、借用申請者に対して表示するスケジュールは急速充電を行なう場合の空き時間を表示するためのスケジュールである。この機能を用いると、借用申請者は使用する充電器の種別を意識する必要は無く、借用申請後において実際に使用する充電器は充電管理システム側で決定することができる。つまり急速充電器を活用することによるEVの稼働率の向上が見込める。
【0014】
次に、必要な電力量のみをEVに充電する機能について説明する。EVの利用形式によるが、EVを実際に借用した際の消費電力は、共有リソースであるEVの借用時間の全てにわたって、このEVを運用させ続けているケースに比べて少ない場合が多い。例えば、ショッピングや映画への移動の足としてEVを利用する場合、借用時間が3時間と申請されていても、借用者がEVに実際に乗っている時間は1時間程度である、などのケースが考えられる。
【0015】
したがって、EVの借用時間だけに基づいてEVに対する必要充電量を判断すると、EVの電池残量としては、このEVが3時間運転可能な電池残量が必要だと推定することとなるが、EVの借用条件を明確化する、例えば目的がショッピングであって目的地がショッピングモールであることを明確にすれば、EVの電池残量としては、EVの借用申請者が行きたいショッピングモールへの往復に必要な電池残量があれば十分と判断できる。
【0016】
もし、リソースを運用するために真に必要な充電量が推定でき、この推定した充電量の値が、従来の方式、例えば、種々の用途に用いられても問題がないように必ず一定時間以上充電する方式による充電量より少なくなれば、EVに対する充電時間を減らすことになり、また、他のユーザに対してEVを貸出可能な時間を増やすことができるため、EVの稼働率を向上させることが可能となる。
【0017】
また、上記の必要な充電量が推定出来れば、「EVの借用のために必要な充電時間」と、「その借用が終わった後の借用に必要な充電量」とを区別し、EVの借用予定の無い空き時間のうち、EVの借用のために必要な充電時間が確保可能な時間から先の時間を、EVを借用可能な時間区域として表示する機能を実装することができる。
【0018】
本実施形態では、これらの2種類の機能を実装することにより、既存のシステムのようにEVの借用時間を必ずしも長時間とする必要がなく、既に確保されている借用予約に影響を与えない範囲での柔軟な予約が可能になる。
【0019】
図1は、本実施形態における充電管理システムの機能構成例を示す図である。
図1に示すように、本実施形態における充電管理システムは、ユーザインタフェース(I/F)1、充電スケジューラ2、リソース管理部3を有する。
ユーザI/F1は、借用条件入力部11、急速充電スケジュール表示部12、スケジュール可能範囲表示部13を有する。
【0020】
借用条件入力部11は、共有リソースであるEVを利用するユーザによる、借用予約の際の借用条件の新規入力や変更のための操作を受け付けて、申請情報DB(データベース)(D−1)51に格納する。操作を受け付ける装置は、ここでは図示していないキーボードやマウスが挙げられる。
【0021】
急速充電スケジュール表示部12は、それぞれのEVについて、急速充電を行なうと仮定した際の充電スケジュールを、液晶ディスプレイなどのここでは図示していない表示装置に表示する。
スケジュール可能範囲表示部13は、EVの借用希望時間帯として設定が可能な時間帯をEVの借用スケジュール可能範囲として表示装置に表示する。
【0022】
充電スケジューラ2は、必要充電量推定部21、必要充電時間推定部22、充電スケジューリング部23を有する。
必要充電量推定部21は、リソース借用の際に必要となる電力である必要充電量を推定する。
必要充電時間推定部22は、必要充電量推定部21により推定した必要充電量を充電するのに必要となる時間である必要充電時間を推定する。
充電スケジューリング部23は、共有リソースの借用・充電スケジュールを管理し、借用予約申請に応じて、借用可能なEVの候補を予約申請者に提示したり、リソースの借用・充電スケジュールを予約申請者からの閲覧要求にしたがって表示したりする。
【0023】
リソース管理部3は、EV属性取得・管理部31、充電器属性取得・管理部32、スケジュール管理部33を有する。
EV属性取得・管理部31は、外部からの車両管理情報に基づいて、EVの属性情報を取得して管理する。
充電器属性取得・管理部32は、外部からの充電スタンド(充電器)管理情報に基づいて充電スタンドの属性情報を取得して管理する。
スケジュール管理部33は、EVの借用・充電スケジュールやEVを借用するユーザの情報を管理する。
【0024】
次に、各種のデータベース(DB)について説明する。
ユーザI/F1は、申請情報DB(D−1)51を有する。
充電スケジューラ2の必要充電量推定部21は、リソースごと全体必要充電量DB(D−3)53を有する。また、充電スケジューラ2の必要充電時間推定部22は、リソース必要充電時間DB(D−4)54、急速充電向けリソース必要充電時間DB(D−5)55を有する。また、充電スケジューラ2の充電スケジューリング部23は、リソース事前必要充電時間DB(D−7)57、リソース全体必要充電時間DB(D−8)58を有する。
【0025】
本実施形態における充電管理システムは、ユーザインタフェース(I/F)、充電スケジューラ2、リソース管理部3とは別に、リソース借用スケジュールDB(D−2)52、リソース充電スケジュールDB(D−6)56、急速充電器スケジュールDB(D−9)59を備える。
【0026】
申請情報DB(D−1)51は、ユーザがリソース借用を申請する際に入力する情報である申請情報を格納する。申請情報としては、借用時間帯とユーザID等の借用者を特定する情報は必須であり、その他に、必須でない情報として、目的地、目的、利用人数など、借用開始後のリソース電力消費量を推定するための情報を含む。
【0027】
リソース借用スケジュールDB(D−2)52は、リソースを何時、誰が借用する予定かを記録する情報であるリソース借用スケジュールを格納する。
リソースごと全体必要充電量DB(D−3)53は、リソースのある借用の際に必要な電力量である、必要充電推定量を格納する。
【0028】
リソース必要充電時間DB(D−4)54は、リソースごと全体必要充電量DB(D−3)53で示された必要充電量を普通充電で充電するのに必要な時間の情報を格納する。この格納された情報は、最終的にはリソース充電スケジュールDB(D−6)56に格納される。
【0029】
急速充電向けリソース必要充電時間DB(D−5)55は、リソースごと全体必要充電量DB(D−3)53で示された必要充電量を急速充電で充電するのに必要な時間を格納する。この格納された情報は、最終的には急速充電器スケジュールDB(D−9)59に格納される。
【0030】
リソース充電スケジュールDB(D−6)56は、リソース借用一つ一つに対応した、リソース必要充電時間DB(D−4)54に格納された、普通充電を行なう際に必要である充電時間をリソースにスケジューリングした情報を格納する。
【0031】
リソース事前必要充電時間DB(D−7)57は、リソース借用前に、スケジュールの破綻、つまり対象とする借用の後、いずれかの時点で電欠(電池の充電量が減ってEVを動作させられない状況)が発生しないために、必要であると考えられる充電時間の算出結果を格納する。
【0032】
リソース全体必要充電時間DB(D−8)58は、リソース借用後か否かを問わない、充電のためのスケジューリングが必要な充電時間の算出結果を格納する。
【0033】
急速充電器スケジュールDB(D−9)59は、急速充電向けリソース必要充電時間DB(D−5)55に格納された、急速充電を行う際に必要である充電時間をリソースにスケジューリングした情報を格納する。
【0034】
以下に、ユーザによるリソース借用予約実施時の処理手順を説明する。
図2は、リソースの借用予約のためのスケジュール画面表示のための手順の一例を示すフローチャートである。
図3は、ユーザ利用申請画面の一例を示す図である。
ユーザインタフェース1の借用条件入力部11は、図3に示したユーザ利用申請画面に対する、リソースの借用の申請条件の入力を受け付ける(ステップS1)。
このユーザ利用申請画面は、ユーザがリソース借用を行う際に、先ず表示される初期画面の例である。
【0035】
ユーザ利用申請画面の(項目1.)は、借用するEVの利用予定を示す。この項目は、EVが空いている時間をユーザに視認させて、このユーザにEVの借用計画を作成してもらうための項目である。
ユーザ利用申請画面の(項目2.)は、(項目1.)で示す利用予定の表示スケールを設定するための項目である。
ユーザ利用申請画面の(項目3.)は、リソースの借用希望時間帯である利用希望時間の開始日時および終了日時を入力するための項目である。
【0036】
図4は、詳細情報入力画面の一例を示す図である。
ユーザ利用申請画面の(項目4.)は、図4に示した詳細情報入力画面を表示させるためにユーザに選択させるためのアイコンである。
この詳細情報入力画面は、図3に示したユーザ利用申請画面で入力した情報より詳細な申請条件を入力するための画面である。入力された申請条件は、申請情報DB(D−1)51に格納される。
【0037】
初期画面としてのユーザ利用申請画面の表示時点では、EVの必要充電量が明確ではないため、取得可能な充電スケジュールが正確に表示できるわけではない。この時に充電スケジュールを表示する際には、旧来のカーシェアシステムと同じ程度の安全マージンを確保した充電スケジュールを表示する。すなわち、通常の借用で必要十分とされる充電量の電力を充電するのに必要な充電時間を示す。
【0038】
ここで、急速充電スケジュール表示部12は、EVへの急速充電が行える時間帯では、充電時間を、急速充電を行なった場合の時間とし、見かけ上は充電時間が普通充電を行なった場合の時間と比較して短縮されているように表示する。急速充電が行える時間帯とは、例えば急速充電器が空いている時間帯、あるいは直近の急速充電が終わったEVが、この急速充電を行なうためのスペースから既に去っている時間帯を指す。
【0039】
ここで、急速充電スケジュール表示部12は、急速充電が行えない時間帯については、ユーザ及び借用条件に基づき、普通充電器で、必要な充電量(推定された必要充電量に対し、統計的に必要と考えられるマージンを付加した充電量)を供給するのに必要な時間を必須充電時間として表示し、この必要な充電量を超える電力を充電するのに必要な時間を予約可能充電時間として表示する。急速充電が行えない時間帯とは、例えば、急速充電を行なっている時間帯だけではなく、急速充電を行なう為のスペースが別のEVにまだ占有されていない時間帯を指す。
【0040】
ユーザは、借用可能な時間帯を増やしたければ、借用に関する詳細情報を出来る限り入力する。借用に関する情報が明確になる程、必要充電量の推定確度があがり、充電のためのマージンを少なくすることができる。
【0041】
ユーザが申請のための情報入力を行った後、必要充電量推定部21は、申請情報DB(D−1)51に格納された申請情報の内容に基づいて、EVごとについて、借用に必要な電力量である必要充電量の推定を行なう(ステップS2)。入力された情報によって、必要充電量の推定のための推定モデルや必要充電量の推定精度は異なる。
必要充電量推定部21は、上述のように推定した必要充電量の情報を、リソースごと全体必要充電量DB(D−3)53に格納する。
【0042】
そして、必要充電時間推定部22は、必要充電量推定部21により推定されてリソースごと全体必要充電量DB(D−3)53に格納された、必要充電量の推定値に基づいて、その充電量を満たすのに必要な充電器との接続時間である、必要充電時間を推定する(ステップS3)。
【0043】
ここで、充電時間は、普通充電器を使用する際と急速充電器を使用する際とで異なるため、必要充電時間推定部22は、普通充電器を使用する際の必要充電時間と、急速充電器を使用する際の必要充電時間とをそれぞれ推定する。また、急速充電器より高速の充電が可能な充電器を導入した際には、必要充電時間推定部22は、この充電器を使用した際の必要充電時間を別に推定する。
【0044】
必要充電時間推定部22は、普通充電器を使用する際の必要充電時間の推定結果をリソース必要充電時間DB(D−4)54に格納する。また、必要充電時間推定部22は、急速充電器を使用する際の必要充電時間の推定結果を、急速充電向けリソース必要充電時間DB(D−5)55に格納する。
【0045】
次に、充電スケジューリング部23は、リソース必要充電時間DB(D−4)54、急速充電向けリソース必要充電時間DB(D−5)55、リソースごと全体必要充電量DB(D−3)53に格納された情報、およびリソース借用スケジュールDB(D−2)52、リソース充電スケジュールDB(D−6)56、急速充電器スケジュールDB(D−9)59に格納された各種スケジュール情報を読み出し(ステップS4)、これら読み出した情報に基づいて、S1で入力された借用条件で示される、リソースの借用時間が既に確定済みの借用時間と重複していないか否かを判断する。
【0046】
充電スケジューリング部23は、申請された借用時間が、他の借用時間と重複していなければ、EVの借用前の電池残量と、ステップS2で推定された必要充電量との差から、普通充電器を使用して、どのぐらいの時間について充電を行なえば借用に必要な必要充電量を充電できるかを算出し(リソース全体必要充電時間(D−8))、また申請されている借用を行うことによって、その後の借用時に電欠にならないための充電にどのぐらい時間がかかるかを算出し(リソース事前必要充電時間(D−7))、そのために必要な時間が、EVの前の借用終了時と、S1で入力された借用条件で示される借用時間の開始時との間隔の間でまかなえるか否かを申請された借用時間と事前の借用時間との間の空き時間が、この機能で算出したD−8及びD−7より大きいか否かを判断する事により、申請内容での借用の可不可を判断する。
【0047】
充電スケジューリング部23は、申請内容での借用が行えないと判断した際で、申請された借用時間において急速充電器が利用可能であれば(ステップS5のYES)、EVの借用前の電池残量と、ステップS2で推定された必要充電量との差から、急速充電器を使用して、どのぐらいの時間について充電を行なえば借用に必要な必要充電量を充電でき、そのために必要な時間が、EVの前の借用終了時とS1で入力された借用条件で示される借用時間の開始時との間隔の間でまかなえるか否かを判断する事により、申請内容での借用の可不可を判断する。申請内容での借用が可能であれば、充電スケジューリング部23は、急速充電を行なったと仮定した際の充電時間を計算して、この充電時間を急速充電スケジュール表示部12により表示する(ステップS6)。
【0048】
充電スケジューリング部23は、申請内容での借用が行えないと判断した際で、申請された借用時間において急速充電器が利用不可能である、例えば、申請された借用時間において急速充電器が他のEVの充電に用いられる事が決定している、もしくは急速充電を行える駐車場に前回急速充電したEVが止まっている等となっている際は(ステップS5のNO)、リソースごと全体必要充電量DB(D−3)53、及びリソース必要充電時間DB(D−4)54に格納された情報に基づいて、充電のスケジューリング可能な時間帯を計算し、この計算した時間帯の情報をスケジュール可能範囲表示部13により改めてユーザに表示することで、申請内容の変更をユーザに試行してもらうようにする(ステップS7)。
【0049】
図5は、再計算されたスケジュールを示す画面の一例を示す図である。
図5に示した画面は、S6,S7での計算結果が反映されている。この画面の(項目11.)では、急速充電器が利用可能である際の充電スケジュールが示される。ここでは、決定済みの借用を行なう為に急速充電器によるEVへの充電が必要か否かに関わらず、個々のリソースに対して急速充電器を用いた場合の最短充電時間を「充電期間(必須)」として示して、予約可能な充電スケジュールを最大限に空けるようにする。
【0050】
図5に示した画面の(項目12.)では、普通充電による充電時間を、「充電期間(必須)」と「充電期間(予約可)」とに分け、「充電期間(予約可)」に該当する時間帯については、借用の予約が可能な時間帯となっている。
【0051】
スケジュール管理部33は、ユーザが提示された借用スケジュールを承認した際、承認した際のリソース借用スケジュールをリソース借用スケジュールDB(D−2)52に記録して更新し、また、充電スケジュールをリソース充電スケジュールDB(D−6)56に記録して更新し、また、最短充電スケジュールを急速充電器スケジュールDB(D−9)59に記録して更新する。
また、借用可能スケジュールがユーザの希望借用時間と合わずに、このユーザがEVの借用を諦めた場合、スケジュール管理部33は、各種DBを更新せず、動作を終了する(ステップS8)。
【0052】
以下に、実際のスケジュールに応じた動作について説明する。
ここでは、一台のEVを用いたカーレンタルシステムを想定し、記述の簡便化を図るため、リソース対象のEVは1台(Rsc1)であるとする。
【0053】
図6は、リソーススケジュールの一例を表形式で示す図である。
ここでは、リソース借用スケジュールDB(D−2)52、リソース充電スケジュールDB(D−6)56、及び急速充電器スケジュールDB(D−9)59をマージした、リソース利用スケジュール表示ビューを用いて処理を記述する。
【0054】
まず事前条件を説明する。EVのリソース借用予約がすでに2件入っており、借用時間は、それぞれ8:00〜10:00、17:00〜20:00であるとする。また、両者の借用時間の間隔が開いているため、EVの実際の充電には普通充電を用いているものとする。
【0055】
次に、借用条件の入力について説明する。ここでは、申請者が借用条件の入力を行う際、まず現状の借用状態を、申請者に提示することを考える。
通常のカーレンタシステムなどでは、申請者にリソースの実際の借用状態を見せない場合が多い。これは、申請後のキャンセルや変更に基づいたリソース運用最適化を行わせるためである。今回はリソース借用状態を申請者に提示する形を考える。この借用状態の表示にあたり、ここでは図示していないログイン画面にて借用者が「ユーザID」を入力してログインを行なっているとする。
【0056】
この場合、ユーザI/F1がリソースの状態としてユーザに見せるものは「(ア)他の申請者が借用している、またはメンテナンスにより利用できない時間帯」と、「(イ)充電している時間帯」、「(ウ)充電も借用もしていない時間帯」である。
【0057】
借用条件の入力前は申請内容が不明であるため、ユーザI/F1は、他の借用後において十分な充電を行なう場合の充電時間を「(イ)充電している時間帯」として表示してユーザに見せる。また、他の借用後において急速充電器が使える場合は、この急速充電器を使った場合の充電時間を「(イ)充電している時間帯」として表示してユーザに見せる。
【0058】
図7は、急速充電可能な場合の初期表示画面の一例を示す図である。
この初期表示画面では、貸出時間として、図6に示したスケジュール中のNO.1の「8:00〜10:00」とNO.4の「17:00〜20:00」が表示される。そして、ここでは、決定済みの他の借用時間同士の間隔が開いており、次の貸出のためのフル充電を行なうための十分な充電時間をとることができるため、初期表示画面には、前述した貸出時間による貸出を電欠を起こすことなく可能とするための急速充電時間として、図6に示したスケジュール中のNO.3の「10:00〜15:00」とNO.6の「20:00〜20:30」がさらに表示される。
【0059】
また、図7に示したスケジュールでは、各行のうち、記録種別が「充電(普通充電)」または「急速充電」である行の開始時刻から終了時刻までの充電計画が、実スケジュールに適用する充電計画であるか否かを示す情報が設定される。この例では、NO.2の行の普通充電による充電時間である10:00〜12:00、および、NO.5の行の普通充電による充電時間である20:00〜22:30が実スケジュールに適用する充電計画となる。
【0060】
また、急速充電が可能でなければ、ユーザI/F1は、普通充電で行える充電スケジュールを表示する。
図8は、普通充電しか行えない場合の初期表示画面の一例を示す図である。
この画面では、貸出時間として、図6に示したスケジュール中のNO.1の「8:00〜10:00」とNO.4の「17:00〜20:00」が表示されるとともに、前述した貸出時間による貸出において、電欠を起こすことなく可能とするための普通充電時間として、図6に示したスケジュール中のNO.2の「10:00〜12:00」とNO.5の「20:00〜22:30」が表示される。
【0061】
初期表示画面上では、申請者は、借用条件を入力することができる。必須な項目としては借用開始時刻と借用終了時刻でなる利用希望時間が挙げられるが、それ以外に「目的地」、「走行予定距離」、「利用目的」、「同乗者人数」、「荷重」などを入力していくことも推奨される。借用条件の情報が明確になれば明確になるほど、申請者によるEVの借用に必要な充電量の推定精度は上がり、充電量を少なくさせられる可能性が大きくなる。ここでは、申請者は14:00−16:00の時間帯での借用を申請するものとする。
【0062】
また、ユーザI/F1によりリソース借用状態を申請者に見せず、取得可能なスケジュールのみを表示させる場合でも、今回のようなロジックを動かし、他の借用時間と充電時間とを除いた時間である、借用可能な時間をリソースとの紐付抜きで表示することも考えられる。
【0063】
次に、必要充電量の推定について説明する。
充電スケジューラ2の必要充電量推定部21は、申請者により入力された申請条件の内容に基づいて、この申請条件に従ったEVの借用に必要な充電量を推定する。充電量の推定のためには複数の必要充電量評価モデルを作成し、入力された情報、ユーザの利用履歴に基づいて、どの必要充電量評価モデルを用い、どれぐらいの確度で必要電力量を推定するかを判断する。
【0064】
次に、必要充電量の推定についての各種ロジックについて説明する。
(ロジック1−a)申請者がカーレンタルをあまり利用しておらず、かつ、申請内容が借用希望時間帯だけである際は、必要充電量推定部21は、申請されている時間帯をフルに走行した場合の充電量を推定する。
【0065】
(ロジック1−b)申請者はカーレンタルを頻繁に利用しており、借用時間と電力量とがいつも一定である際は、必要充電量推定部21は、申請者が通常利用している電力量を必要充電量と推定する。
【0066】
(ロジック1−c)申請者によるカーレンタルの利用形態は借用ごとに一定してはいないが、目的がショッピングであり、目的地がショッピングモールである際は、必要充電量推定部21は、ショッピングモールまでの経路をEVが走行するのに必要な電力量を必要充電量として推定する。
【0067】
また、必要充電量推定部21は、同じ申請内容で複数の必要充電量評価モデルが適用可能である場合、それぞれの必要充電量評価モデルでの推定確度を元に、最も確度が高いと考えられるモデルを必要充電量の推定に利用する。この場合はロジック1−aと1−bが重なる、またはロジック1−aと1−cが重なる可能性があるが、ロジック1−aの確度はロジック1−bやロジック1−cの確度より低いため、必要充電量推定部21は、ロジック1−bあるいはロジック1−cにより必要充電量の推定を行ない、この推定した必要充電量の情報をリソースごと全体必要充電量DB(D−3)53に格納する。
【0068】
次に、必要充電時間の推定について説明する。
充電スケジューラ2の必要充電時間推定部22は、必要充電量推定部21により推定されて、リソースごと全体必要充電量DB(D−3)53に格納された情報をもとに、EVの必要充電量を充電するために必要な時間である必要充電時間を推定する。
【0069】
CHAdeMO(登録商標)やCombined Charging Systemなどの充電器接続プロトコルを用いた場合、充電要件はEVの車両から発行されるため、必要充電時間は車種、電池残量、必要充電量、気温などをパラメータとする非線形な関数となる。必要充電時間を求める方法として、通常は車種ごと、温度帯ごとの電池残量・必要充電量に対応する必要充電時間が記載されるテーブルなどを予め作成し、このテーブルから必要充電時間を検索するなどの方法が考えられる。
【0070】
必要充電時間推定部22は、第1の機能として、普通充電による必要充電時間を推定し、この必要充電時間の情報をリソース必要充電時間DB(D−4)54に格納する。また、必要充電時間推定部22は、第2の機能として、急速充電による必要充電時間を推定し、この必要充電時間の情報を急速充電向けリソース必要充電時間DB(D−5)55に格納する。ここでは、必要充電時間推定部22は、普通充電による必要充電時間が2時間であり、急速充電による必要充電時間が0.5時間であるとして算出したものとする。
【0071】
次に、充電スケジューリングについて説明する。
充電スケジューラ2の充電スケジューリング部23は、リソース必要充電時間DB(D−4)54及び急速充電向けリソース必要充電時間DB(D−5)55に格納された必要充電時間を元に、申請内容による充電スケジューリングが可能か否かを推定する。
【0072】
スケジューリングが可能かどうかに関する観点は、以下の2つが挙げられる。
第一の観点として、新規借用を行なう際は、この借用の途中で電欠、つまりバッテリ切れが発生しないことが挙げられる。また、第二の観点として、新規借用を行なうことで、その後の借用期間中に電欠が発生しないことが挙げられる。
図9は、充電スケジューリングが可能か否かを表すためのチェックポイントの一例を示す図である。
以下に、充電スケジューリングが可能か否かを判定するロジック例を示す。
まず、充電スケジューリング部23は、申請した借用時間が、決定済みの他の借用時間と重なっていないことを確認する。
充電スケジューリング部23は、借用時間が重なっていなければ、借用の申請内容に基づく必要充電量を満たすためのリソース全体必要充電時間D−8を算出し、その借用申請内容を承認した場合の空き時間でEVの充電が可能かどうかを確認する。
【0073】
充電スケジューリング部23は、申請された借用の前後の借用を含めた、全体の充電スケジュールを見回し、申請を受け入れたと仮定した際の空き時間における通常または急速充電で、それぞれの借用時に電力量が足りなくならならないための充電量を満たすためのリソース事前必要充電時間D−7を算出し、そのリソースが申請された借用以降の借用で電欠にならないかを確認する。
【0074】
充電スケジューリング部23は、電力量が足りなくならないことを確認できれば、EVの申請を受け入れて、EVをこの申請での借用に供すること可能だと判断し、借用申請がなされたEVの充電時間を設定する。
【0075】
図10は、必要電力量の確認のための情報を表形式で示す図である。
図10は、上述したロジック4−cにおける必要電力量の確認を示したものである。以下に詳細を例示する。
(1)全体として、図10に示した表の列にスケジュールとして借用−空きのステータスが入り、ステータスが入った列の各行のうち必要な個所には計算すべき数値が入る。ステータスが入る最初の列であるC−1列のR−7行には、初期値としてEVの当初の保持電力が入り、最終の列であるC−9列のR−7行には、最終状態として、最終的に必要な電力が記載されている。
【0076】
この構成は、カーレンタル施設が24時間稼働しているなどして休止期間がない場合、何らかの時間の区切り、例えばメンテナンスあるいは借用の区切りでスケジュールを区分することを考慮した構成である。
【0077】
(2)図10に示した表のR−1行はEVの使用開始時刻、2R−2行は使用終了時刻であり、リソース借用スケジュールDB(D−2)52に格納される。
(3)図10に示した表のR−3行は借用時間である。この借用時間はR−2行に記載される使用終了時刻とR−1行に記載される使用開始時刻との差分で与えられる。
【0078】
(4)図10に示した表のR−4行は借用時電力量である。この借用時電力量は、C−1列のR−7行に記載される保持電力量に対し、C−2列のR−9行に記載される、EVの借用に至るまでの空き時間における充電量(空き時間可能充電量)を加算し、R−5行に記載される、この借用までにおける電力消費量を減算したものである。
【0079】
(5)図10に示した表のR−5行に記載される推定電力消費量は、対象とする借用時間中にEVが消費する電力量を示したものであり、別途推定される。
(6)図10に示した表のR−6行に記載される借用終了時電池残量は、ある列のR−4行に記載される借用時電力量から同じ列のR−5行に記載される推定電力消費量を減じたものであり、ある借用が終了した時のEVの電池残量を示す。
【0080】
(7)図10に示した表のR−7行に記載される保持電力は、(1)でも説明したように、初期電池残量、及び終了時に残っている必要のある電池残量を示したものである。
(8)図10に示した表のR−8行に記載される空き時間は、EVについてのある借用と次の借用との間の空き時間であり、次の借用に関する借用開始時間(R−1行)から前の借用の借用終了時間(R−2行)を減じたものである。
【0081】
(9)図10に示した表のR−9行に記載される空き時間可能充電量は、同じ列のR−8行で計算されている空き時間の間に充電できる電力量を示したものである。この充電量の計算に関して、方式は色々考えられるが、特定される充電器や特定される電池によって変わる。また、現充電量と充電時間と温度とのパラメータで充電量が算出されるテーブルを用いることも考えられる。
【0082】
(10)図10に示した表のR−10行に記載される借用開始時必要電池残量は、ある借用から最終状態に至るまでに電欠が発生しないような電池残量の計算結果であり、それぞれの借用の借用開始時について計算される。
【0083】
この必要電池残量は、以下の式で計算される。
【数1】
【0084】
ここで、式(1)のWは、最終状態で満たすべき必要充電量を示す。式(1)のnは蓄電池の充電量の計算対象となる借用に紐付く番号を示す。式(1)のLは最終状態にいたる最後の借用に紐付く番号を示す。式(1)のDは個別の借用iにおける推定電力消費量(R−5行)を示す。式(1)の累積記号の中に入るCは、借用iの前の空き時間可能充電量(R−9行)が対応する。
【0085】
本実施形態では、C−5列にある「予約B」に関する必要充電量を確認したいため、式(1)のWは、R−7列,C−9行の値である0となり、式(1)のnはC−5列に対応する列の番号であり、式(1)のLはC−7列に対応する列の番号となる。また、式(1)の累積記号の中に入るのはC−7の列のみである。
【0086】
C−7の列の推定電力消費量(C−7列,R−5行)は35であるが、その前に充電できる、空き時間可能充電量(C−6列,R−9行)は6.666667(≒6.67)しか無く、C−5列にある「予約B」に関する借用終了時に必要な充電量であるmax(35−6.67,0)の値は28.33である。よって、C−5列の「予約B」における借用終了時に電池残量が「28.33」必要であり、そこにC−5列にある「予約B」に関する借用に必要な電力量である推定電力消費量(C−5列,R−5行)である「20」を加算した値である「48.33」が、C−5列の「予約B」における借用開始時に必要な電力量となる。
【0087】
本実施形態では、ある借用開始時の電池残量が、この借用のための必要充電量より少なければ電欠が発生するため、その前の空き時間で充電しきれないのならば、その差分に該当する電力を更に前から充電していく必要がある、という論理から式(1)を導出している。
【0088】
(11)図10に示した表の11行目であるR−11行に記載される必要充電量は、直前の借用終了時の電池残量である借用終了時電池残量(R−6行)と、今回の借り出しの前に必要な電力量である借用開始時必要電池残量(R−10行)の差をとったものである。もし借用終了時電池残量(R−6行)より借用開始時必要電池残量(R−10行)が大きければ、少なくともその差分についての充電を行う必要がある。
【0089】
(12)図10に示した表の12行目であるR−12行に記載されるリソース事前必要充電時間(D−7)は、R−11行で算出されている必要充電量を充電するために必要な時間である。必要充電時間の算出方式は、上述の(9)で説明したテーブルの利用により行われることが考えられる。ここでリソース事前必要充電時間(R−12行)は空き時間(R−8行)を超えないものとする。
【0090】
(13)図10に示した表の13行目であるR−13行に記載される急速充電向け必要充電時間は、必要充電量(R−11行)を急速充電器で充電するのに必要な時間を示す。この算出も上述の(9)で説明したテーブルの利用により行われることが考えられる。
【0091】
(14)図10に示した表の14行目であるR−14行に記載される可能最大充電量は、空き時間可能充電量(R−9行)で示される電力量の充電を行なった際に蓄電池に蓄積される、予約借用開始時の充電量を示す。必要充電量(R−10行)と可能最大充電量(R−14)の差が大きければ大きいほど、余裕のある充電スケジュールといえる。
【0092】
(15)図10に示した表の15行目であるR−15行に記載される充電余裕は、可能最大充電量(R−14行)と借用開始時必要電池残量(R−10)の差を示す。この充電余裕は、どこまで充電時間を変更できるかを示す指標となる。また、この充電余裕がマイナスとなる際は、借用中に電力切れとなるか充電が必要となり、推奨される充電スケジュールとはいえない。
【0093】
次に、借用時間の表示について説明する。
初期画面に対する入力前では充電時間が不明であるため、この画面に表示される充電時間は多めとされていたので、借用可能な時間が短い時間となっていた。この時点において充電スケジュールの確保が可能であるのなら、明確になった必要充電量(R−11行)に応じたリソース事前必要充電時間(R−12行)を反映させ、更に急速充電が可能であるのなら、急速充電向け必要充電時間(R−13行)を用い充電時間を短く表示させ、予約の希望時間帯の微調整を可能とさせる。
【0094】
図11は、借用時間の表示画面の一例を示す図である。
図11に示した表示画面では、ユーザI/F1の急速充電スケジュール表示部12により、図7に示した初期表示画面と比較して、14:00〜16:00が借用希望時間帯として、16:00〜16:30が急速充電による充電時間として新たに表示される。また、図11に示した表示画面では、図7に示した10:00〜10:30および20:00〜20:30で表示されていた、急速充電による充電時間の表示に替えて、急速充電スケジュール表示部12により、10:00〜12:00、および20:00〜22:30が借用可能充電時間として表示される。よって、充電時間として表示されていた10:00〜10:30、および20:00〜20:30も借用時間として指定する事ができることとなるので、借用希望時間帯の14:00〜16:00を、これらの借用可能充電時間に一部または全部が重複するように微調整することができる。
【0095】
次に、スケジューリング可能時間の表示について説明する。
図12は、スケジューリング可能時間の表示画面の一例を示す図である。
借用希望時間帯による充電スケジュール確保が難しい場合、ユーザI/F1のスケジュール可能範囲表示部13により、借用可能時間を再度表示させる。この表示にあたり、充電スケジュールの確保が可能である場合と同じく申請内容を把握できているので、初期画面に対する入力前と比較して必要充電量を減少させることができる。よって、図13に示した画面では、ユーザI/F1のスケジュール可能範囲表示部13により、図7に示した初期表示画面と比較して、図7に示した10:00〜10:30および20:00〜20:30で表示されていた、急速充電による充電時間の表示に替えて、急速充電スケジュール表示部12により、10:00〜12:00、および20:00〜22:30が借用可能充電時間として表示される。よって、図7に示した初期表示画面では充電時間として表示されていた10:00〜10:30、および20:00〜20:30も借用時間として指定する事ができることとなるので、借用時間として指定できる時間帯が拡大し、事前の借用申請を行える可能性が高くなる。
【0096】
次に、スケジュールの確定について説明する。
ユーザがリソースの借用予約を確定したら、リソース管理部3のスケジュール管理部33は、リソース借用スケジュールDB(D−2)52、リソース充電スケジュールDB(D−6)56、急速充電器スケジュールDB(D−9)59を更新する。
【0097】
図13は、新しい借用スケジュールの一例を表形式で示す図である。
この画面は、図11に示した画面に従って、この画面に表示された借用時間の変更が無く、リソースの借用予約が確定した際の借用スケジュールの画面である。この借用スケジュールでは、図6に示したスケジュール中のNO.4からNO.6の情報がNO.7からNO.9に変更となり、確定した借用時間が新たなNO.4に、この借用後の普通充電時間が新たなNO.5に、NO.4の借用後の急速充電時間が新たなNO.6として設定される。
【0098】
また、図13に示したスケジュールでは、図7に示したスケジュールと同様に、各列について、実スケジュールに適用する充電計画であるか否かを示す情報が設定される。この例では、NO.2の列の普通充電による充電時間である10:00〜12:00、NO.5の列の普通充電による充電時間である16:00〜17:00、および、NO.8の列の普通充電による充電時間である20:00〜22:30が実スケジュールに適用する充電計画となる。また、図11に示した、借用時間の表示画面では、16:00〜16:30は急速充電時間として表示されているが、16:00から普通充電を開始しても、図13に示した表のNO.5に示すように17:00に充電が終了し、図13に示した表のNO.7に示す次の貸出時間と重複しないので、前述したように、16:00〜17:00までの普通充電が実スケジュールに適用される充電計画となる。
【0099】
また、複数のEVが同一拠点にある場合は、個々のEVについて、充電スケジュールをそれぞれ計算し、最も有効な車輌、あるいはユーザが希望している車輌を割り当てる等の対応をとる。
【0100】
また、スケジュールを表示するGUI(Graphical User Interface)としても、個々の車の借用時間の表示、あるいは、どれか1台について借用できる時間の表示、などのバリエーションも考えられる。
【0101】
本実施形態では、蓄電池で稼働することに起因して、充電の時間がかかり、かつ、その時間が利用の仕方により変動するリソースを共有する際に、メンテナンスの時間を短縮し、リソース稼働率を向上させることができる。
【0102】
具体的には、本実施形態では、まず、急速充電時間の活用をした場合の借用可能充電時間を表示させることで、借用可能な時間を拡大することができるので、急速充電のような充電時間短縮に有効な、利用に制約があるツールを利用するか否かをシステム側で規定することができるので、ユーザは自分の希望するリソースの指定をして、借用希望時間帯を設定するにあたり、充電の種別を意識する必要がなくなる。
【0103】
また、急速充電を用いる事が出来る場合は、必要に応じて急速充電による充電スケジュールを行なうことで、リソースの充電時間が減り、稼働率が向上する。
また、本実施形態では、ユーザが借用条件の詳細情報、例えば目的地を入力することにより、借用に必要な電力量を推定することができる。この推定を行なうことにより、借用の事前事後の必要充電量および充電時間を減らすことができる。よって、急速充電が行えず普通充電しか行えない場合でも柔軟に借用時間帯を指定でき、借用可能な利用者の対象を広げ、稼働率を上げることが可能となる。
【0104】
これらの各実施形態によれば、普通充電と急速充電とを組み合わせることによるリソースの稼働率を向上させることが可能になる充電管理システムを提供することができる。
発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0105】
1…ユーザインタフェース(I/F)、2…充電スケジューラ、3…リソース管理部、
11…借用条件入力部、12…急速充電スケジュール表示部、13…スケジュール可能範囲表示部、21…必要充電量推定部、22…必要充電時間推定部、23…充電スケジューリング部、31…EV属性取得・管理部、32…充電器属性取得・管理部、33…スケジュール管理部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13