特許第5707387号(P5707387)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5707387-自動車用冷却装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5707387
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】自動車用冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F01P 7/16 20060101AFI20150409BHJP
【FI】
   F01P7/16 505B
   F01P7/16 504Z
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-504062(P2012-504062)
(86)(22)【出願日】2010年4月9日
(65)【公表番号】特表2012-523520(P2012-523520A)
(43)【公表日】2012年10月4日
(86)【国際出願番号】FR2010050689
(87)【国際公開番号】WO2010116106
(87)【国際公開日】20101014
【審査請求日】2013年3月19日
(31)【優先権主張番号】0952363
(32)【優先日】2009年4月9日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】クレギュー, サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】オベルティ, クレール
(72)【発明者】
【氏名】マルシリア, マルコ
【審査官】 寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−238345(JP,A)
【文献】 特開2008−019733(JP,A)
【文献】 特開2008−232004(JP,A)
【文献】 特開2008−008264(JP,A)
【文献】 特開2008−290636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気式自動車両のための冷却装置(1)であって、当該冷却装置(1)は、電源が入れられ又は電源が切られることが可能であり、クーラントを用いて電気駆動システム(12)を含むエンジン組立体(5)を冷却することのできる冷却回路を含み、当該冷却回路は、車両が目的を達成し、クーラントの温度が閾値温度を超える時に、冷却装置(1)を電源が入った状態に維持することができる制御システム(9)より制御され、
前記電気式自動車両がバッテリー充電組立体(4)を含み、前記冷却回路が前記充電組立体(4)および前記エンジン組立体(5)を冷却することができ
車両の目的が達成されてから経過した時間が所定の時間間隔を超過した場合に、制御システム(9)が、電源が入った状態で維持されている装置(1)を停止させることができ、
前記所定の時間間隔が車両の外部温度に基づいて決定される、
冷却装置。
【請求項2】
エンジン組立体(5)にクーラントを選択的に供給することのできる第1ポンプ(2)、および前記充電立体(4)にクーラントを選択的に供給することのできる第2ポンプ(3)を含む、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記充電組立体(4)中のクーラントの流れを防止することのできる第1バルブ(7)、および前記エンジン組立体(5)中のクーラントの流れを防止することのできる第2バルブ(8)を含む、請求項2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記エンジン組立体(5)中のクーラントの最小流速の維持を可能にするための液圧制限(10)を含むことを特徴とする、請求項3に記載の装置(1)。
【請求項5】
制御システム(9)が、クーラントの温度と設定温度に従って、閉ループ制御システムの各ポンプ(2、3)の流速をサーボ制御することができることを特徴とする、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
バッテリー電圧が設定値よりも低い場合に、制御システム(9)が電源が入った状態で維持されている装置(1)を停止させることができることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、電気式自動車用の冷却装置であって、クーラントを用いてエンジン組立体を冷却することのできる冷却回路を含む。本発明は電気自動車に有利に適用される。
【背景技術】
【0002】
内燃機関において、繰り返される燃焼は、例えば、ピストン、シリンダー、およびバルブなどの接触する部品を過熱し、エンジンの全ての機構部品に伝導される。したがって、それを冷却する必要があり、さもなければ破壊の危険性がある。したがって、正しい運転のために、爆発エンジンは均一の適切な温度を必要とする。
【0003】
電気的推進力を備える車両の場合、駆動システムのさまざまな要素を冷却することも必要である。
【0004】
エンジン、および液体を冷却するのに用いられる熱交換機であるラジエータを通してクーラントを循環するために1つ以上のポンプを含む冷却システムを使用することは既知の慣例である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両がその目的を達成した時に、運転者が車両を停止させてロックした後で、バッテリーから不必要に電気エネルギーを消費しないように、冷却装置は従来スタンバイ、つまり電源を切った状態に落とされる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
しかしながら、ある場合には、車両が停止した後でエンジン組立体を冷却することが望ましい場合があり、これは従来の冷却装置が提供できないことである。
【0007】
本発明はこれらの不利点を改善することを目的とする。
【0008】
したがって、本発明の主題は電気式自動車冷却装置であって、冷却装置は、電源を入れる又は切ることが可能であり、クーラントを用いて電気駆動システムを含むエンジン組立体を冷却することのできる冷却回路を含み、冷却回路は、車両がその目的を達成し、クーラントの温度が閾値温度を超える時に、装置の電源を入れたまま維持することができる制御システムによって制御され
【0009】
本発明による装置において、電気式車両は、バッテリー充電器組立体を含み、冷却回路は、当該充電器組立体とエンジン組立体とを冷却することができる。
【0010】
したがって、本発明によれば、車両が目的を達成したところにおいてエンジンの冷却が不十分な時に、冷却装置の電源が落ちるのを防止することができる。
【0011】
「目的を達成した車両」という表現は、本明細書の意味の範囲において、車両が停止しロックされていることを意味すると解釈すべきである。次いで自動車のコンピュータの電源が落とされる。
【0012】
装置はエンジン組立体にクーラントを選択的に供給することのできる第1ポンプと、充電器組立体にクーラントを選択的に供給することのできる第2ポンプを含むことができる。
【0013】
この目的のために、装置は充電器組立体中のクーラントの流れを防止することのできる第1バルブと、エンジン組立体中のクーラントの流れを防止することのできる第2バルブを含むことができる。
【0014】
また、装置はエンジン組立体中のクーラントの最小流速を維持することを可能にする液圧制限を含むことができる。
【0015】
制御システムは、クーラントの温度と設定温度によって閉ループ制御システムで各ポンプの流速をサーボ制御することが有利に可能である。したがって、閉ループモードにおける各ポンプの流速のサーボ制御により、その摩耗とエネルギーの消費を制限することが可能である。
【0016】
制御システムは、バッテリーの電圧が設定値よりも低い場合に、電源を入れたまま維持されている装置を有利に停止させることができる、つまり、制御システムは装置の電源を切ることができ、バッテリーの過剰な使用を回避することができる。
【0017】
制御システムは、自動車が停止してから、特に車両の目的達成から経過した時間が所定の時間間隔を超えた場合に、電源を入れたまま維持されている装置を有利に停止させることができる、つまり、制御システムは装置の電源を切ることができ、クーラントの温度が高すぎる場合であっても、冷却をいつまでも継続しないようにすることができる。
【0018】
所定の時間間隔は、車両の外部温度に基づいて決定することができる。
【0019】
本発明の他の特徴および利点は、付属の図面に照らしながら、例示的に非制限的な例として与えられる以下の説明を読み取ることによってより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】電気自動車に組み込まれた本発明による冷却装置をブロック図の形で示す図である。
図2】装置のための制御計画を示すブロック図である。
図3図2のブロックの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示すように、冷却装置1は、第1電気ポンプ2、第2電気ポンプ3、バッテリー充電器4、エンジン組立体5、ラジエータ6、ならびに第1ソレノイドバルブ7および優先的に第2ソレノイドバルブ8を含む。第1電気ポンプ2、第2電気ポンプ3、第1ソレノイドバルブ7、第2ソレノイドバルブ8は制御装置9に連結される。
【0022】
第1電気ポンプ2は車両の走行中に用いることが意図され、他方、第2電気ポンプ3はバッテリーを再充電するときに用いることが意図される。第1電気ポンプ2の流速および第2電気ポンプ3の流速は制御信号を用いて設定することができる。
【0023】
充電器4は、車両が停止しているとき、図示されていない家庭用電気本線供給源から電気牽引バッテリーを再充電するために用いられる。
【0024】
第1ソレノイドバルブ7は、車両の走行中に第2ポンプ3と充電器4を回路短絡するために用いられ、他方、第2ソレノイドバルブ8は、バッテリーの再充電中にエンジン組立体5の冷却が必要ではないと判断されるとき、エンジン組立体5を回路短絡するために用いられる。第2ソレノイドバルブ8は、ヘッド損失を生成することを可能にする液圧制限10に連結することができ、これにより第2ソレノイドバルブ8が通過モードのときでも、エンジン組立体5中のクーラントの流速が保持される。
【0025】
エンジン組立体5は、エンジン11および特にバッテリーからのDC電圧をAC電圧に変換することが意図される電気駆動システム12を含む。
【0026】
ラジエータ6は、内燃機関の冷却装置と同じようにクーラントを冷却するために用いられる。それには図示されないが電気ファンが備えられる。
【0027】
エンジン組立体5は、車両が停止しているときの充電器4のように、車両が走行するときに冷却されなければならない。冷却計画は制御装置9によって管理される。制御装置9は、冷却回路のセンサー、詳細にはクーラント温度センサーに連結されたコンピュータである。コンピュータ9はまた、ポンプ2、3、ソレノイドバルブ7、8、およびラジエータ6の電気ファンセットも駆動する。また、コンピュータ9は、冷却計画に必要な他の測定値を得るために、例えば、CAN(コントローラ・エリア・ネットワーク)のバス型ネットワークを経由して車両の他のコンピュータに有利に連結される。
【0028】
冷却回路の制御計画は図2に示したように、3つのモジュールA、B、Cの形で実施することができる。モジュールAはクーラントの温度の制御に関する。モジュールBは電気ポンプ2、3の選択に関する。モジュールCは装置1の電源切断の防止に関する。
【0029】
モジュールAは車両の状態(走行中または停止したときのバッテリーの再充電)によってクーラントの流速制御を発生する役割を有する。モジュールAの入力は、
−クーラントの温度T(これは1つ以上の温度センサーを用いて得ることができる)、
−車両の外部の温度Text
−車両の速度V、である。
【0030】
モジュールBの入力は、
−モジュールAからの流速制御Dcom
−車両の状態E(これは自動車の中央コンピュータから発せられる信号であり、車両がバッテリー再充電モードの場合値1を有し、車両が走行モードの場合値0を有する)、である。
【0031】
モジュールBの出力は、
−走行モードに用いられた第1ポンプのための流速制御Dcom1(これは0と100の間の信号であり、ポンプによって生成することのできる最大流速のパーセントを表す)、
−再充電モードに用いられる第2ポンプの流速制御Dcom2(これは0と100の間の信号でありポンプによって生成することのできる最大流速のパーセントを表す)、である。
【0032】
単純にするために、車両状態信号が値1を有する場合に第2ポンプのみを使用し、車両状態信号が値0を有する場合に第1ポンプのみ使用するように選択することができる。
【0033】
モジュールBの目的は、クーラントの温度によって最小流速値Dminと最大流速値Dmaxの間で自動的に流速制御を変化させることである。クーラントの温度が設定温度以下である限り、流速制御は最小値Dminを維持する。クーラントの温度が設定温度を超えるとすぐに、閉ループ制御によって流速制御が得られ、関係する設定は設定温度であり、関係するフィードバックループはクーラントの測定された温度である。
【0034】
モジュールCの入力は:
−車両の冷却要求Dref:これは走行中の、又はバッテリー再充電モードにある車両の中央コンピュータから発信される論理信号であり、車両の電気工学部材を冷却する必要があるかを表示する。信号の値が1である場合、冷却が必要であり、そうでなければ値は0となる。
−クーラントの温度T(これは1つ以上の温度センサーを用いて得ることができる)
−車両の外部温度Text、及び
−バッテリー電圧Ubat
である。
【0035】
モジュールCは、冷却装置を停止することができる、つまりポンプを遮断し電源を落とすことができる場合に、値1を有する冷却信号Srefを出力として生成し、電源切断が許されていず、車両の電気工学部材を冷却しつづけなければならない場合に、値0を有する冷却信号Srefを出力として生成する。
【0036】
モジュールCの一つの可能な実施形態を図3に示す。この実施形態では、クーラントの温度が閾値を超える場合、冷却システムがスタンバイに入るのを防止することが目的であり、これは2つの条件において実施される。一方では、バッテリー電圧が閾値より低い場合は冷却を継続しない。実際、バッテリー電圧が低すぎる場合は車両が故障し動かなくなる危険性がある。他方では、冷却温度が閾値温度を超えて維持される場合、冷却をいつまでも継続させることをしない。車両が停止した後、特に車両の目的が達成された後の冷却時間はしたがって、最長持続時間に制限される。この持続時間は、車両が停止した時、又はその目的を達成した時点でのクーラントの温度に依存する。この温度が高いほど、最長持続時間は長くなる。
【0037】
モジュールCは、3つの条件ブロックC1、C2及びC3、2つの論理ゲートブロックC4及びC5、及び出力ブロックC6を含む。
【0038】
装置がスタンバイ状態に入らないようにする信号Sintは、ブロックC4からの信号がTRUEである時、つまり3つの条件C1〜C3が満たされる時に取得される。
【0039】
条件C1は、バッテリーの電圧Ubatが閾値電圧Uthresh、例えば14Vバッテリーに対して10.7Vを超える場合に満たされる。
【0040】
条件C2は、クーラントの温度Tが閾値温度Tthreshを超える場合に満たされる。この閾値温度Tthreshは、車両の外部温度Textによる温度閾値のマップC21にしたがって予め定めることができる。実際には、車両の部材はより迅速に冷却されるため、外部温度Textが低いほど、高温の時にスタンバイ状態に置くことを許可することがより可能になる。
【0041】
条件C3は、Drefの値が0であり、前の値が1であった時に、冷却要求Drefを停止した後に起こる時間の遅延が実行されている場合に満たされる。時間の遅延は、車両の外部温度Textによる時間遅延値のマップによって生成され得る。クーラントの温度が高いほど、時間の遅延が長くなる。スタンバイ状態が検出されるとすぐに、信号が1に変わった時に、時間の遅延はダウンカウンターブロックへ送られる。
【0042】
出力ブロックC6は、論理又はゲートである、論理ゲートブロックC5から取得される。冷却はしたがって、(走行モード又は再充電モードにおいて)自動車の冷却が要求されるとすぐに可能になる、あるいはスタンバイ禁止信号がTRUEである。
【0043】
上述の装置は2つのポンプを含むが、本発明は1つのまたは2つよりも多いポンプを含む装置にも関係する。本発明はまた、電気ウォーターポンプを備えたガソリンエンジンにも適用できる。
図1
図2
図3