(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
制御信号に基づいてスイッチング素子(Q1〜Q6)を駆動するスイッチ回路(11,11A〜11E)と、前記スイッチ回路から出力される出力値(Vout)と指令値(Vref)とに基づいてフィードバック制御を行うフィードバック手段(17)と、前記フィードバック制御の目標値(Iref)に基づいて前記制御信号を出力する信号出力手段(14,15)とを備える電力変換装置(10)において、
前記目標値から所定値(α,β,γ,δ)ずつ減算して減算値(Isub)とする減算部(17f)と、
前記目標値または前記減算値のいずれか一方を選択して選択値(Isel)とする選択部(17b)と、
前記スイッチ回路に入力される入力値(Id)と、前記選択値との差分を演算して差分値(ΔI)とする差分演算部(16)と、
前記差分値に基づいて、前記選択部によって選択される前記選択値を変更する選択変更部(17e)とを有し、
前記フィードバック手段は、前記選択値を前記フィードバック制御の前記目標値とすることを特徴とする電力変換装置。
前記減算部は、パルス周期(Cp)を経過するごとに、前記目標値から前記所定値に含まれる第1所定値(α)ずつ減算することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電力変換装置。
前記減算部は、N(Nは1以上の整数)回の前記パルス周期を経過する前に前記差分値の正負符号が反転しなければ、さらに前記第1所定値よりも大きな値であって前記所定値に含まれる第2所定値(β)ずつ減算することを特徴とする請求項4に記載の電力変換装置。
前記減算部は、前記スイッチ回路に含まれる全てのスイッチング素子がオン/オフするのに必要なスイッチング周期(Csw)を経過する前に所定条件を満たすと、前記所定値に含まれる第3所定値(γ)ずつ減算することを特徴とする請求項4または5のいずれか一項に記載の電力変換装置。
前記減算部は、前記パルス周期を経過する前に前記差分値の正負符号が反転しなければ、前記入力値に基づく第4所定値(δ)を減算することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電力変換装置。
前記減算部は、複数の前記入力値にかかるピーク値(Ipk)の平均値(Iave)に基づいて、前記所定値を決定することを特徴とする請求項4から7のいずれか一項に記載の電力変換装置。
前記減算部は、前記目標値を前記所定値ずつ減少させても、所定期間を経過する前に前記差分値の正負符号が反転しなければ、前記所定値を決定することを特徴とする請求項8または9のいずれか一項に記載の電力変換装置。
前記減算部は、前記入力値にかかる単位時間当たりの変化量が閾値を超えると、前記目標値から前記所定値ずつ減算することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、特に明示しない限り、「接続する」という場合には電気的に接続することを意味する。各図は、本発明を説明するために必要な要素を図示し、実際の全要素を図示しているとは限らない。上下左右等の方向を言う場合には、図面の記載を基準とする。英数字の連続符号は記号「〜」を用いて略記する。例えば、「スイッチング素子Q1〜Q4」は「スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4」を意味する。「スイッチング周期」は、スイッチ回路に含まれる全てのスイッチング素子がオン/オフするのに必要な期間を意味する。
【0017】
〔実施の形態1〕
実施の形態1は
図1〜
図3を参照しながら説明する。
図1に示す電力変換装置10は、スイッチング電源装置(DC/DCコンバータ)の一例である。当該電力変換装置10は、入力電圧Vin(例えば288[V])を所要の出力電圧Vout(例えば14[V])に変換して出力する機能を担う。電力変換装置10の入力端子INには電力源Ebが接続され、出力端子OUTには負荷Zが接続される。電力源Ebは、例えばバッテリ(二次電池等)や燃料電池などが該当する。負荷Zは、例えば電力源Ebとは電源容量が異なるバッテリ、回転電機(電動発電機、発電機,電動機等)、ヘッドランプなどが該当する。出力電圧Voutは任意の値で設定してよい。電力変換装置10内に設定してもよく、外部処理装置(例えばECUやコンピュータ等)から受ける信号やデータ等に基づいて設定してもよい。
【0018】
図示する電力変換装置10は、コンデンサC10、スイッチ回路11A、トランスTr、整流平滑回路12、第1検出部13a、ドライブ回路14、パルス生成部15、差分演算部16、フィードバック手段17、第2検出部18などを有する。以下では、電力変換装置10の各構成要素について簡単に説明する。なお、電力変換装置10内では検出電流値Idや検出電圧値Vd等のような各種信号は、特に明示しない限り、各構成要素で処理可能な形態(例えば電圧値やデータ等)で取り扱われる。
【0019】
コンデンサC10は、入力端子INの両端間に接続され、電力源Ebから入力される入力電圧Vinを平滑化する。
【0020】
スイッチ回路11Aは、スイッチング素子Q1〜Q4、ダイオードD1〜D4、トランスTr1などを有する。スイッチング素子Q1〜Q4は、フルブリッジ回路で構成され、ドライブ回路14から入力端子(例えばゲート端子等)に入力されるパルス幅変調信号PWM(制御信号に相当する)に基づいてオン/オフが駆動される。ダイオードD1〜D4は、それぞれ対応するスイッチング素子Q1〜Q4の入力端子(例えばドレイン端子等)と出力端子(例えばソース端子等)との間に並列接続される。これらのダイオードは、フリーホイールダイオードとして機能する。スイッチング素子Q1の出力端子とスイッチング素子Q3の入力端子との接続点は、トランスTr1の一次コイルL1の一方側端子に接続される。同様にスイッチング素子Q2の出力端子とスイッチング素子Q4の入力端子との接続点は、トランスTr1の一次コイルL1の他方側端子に接続される。
【0021】
「誘導性要素」に相当するトランスTr1は、一次コイルL1と、中間タップを備える二次コイルL2とを有する。一次コイルL1の接続は上述した通りである。二次コイルL2の両端は、ダイオードD12a,D12bおよびコイルL12を介して、出力端子OUTの一端側(プラス側)に接続される。二次コイルL2の中間タップは、出力端子OUTの他端側(マイナス側)に接続される。
【0022】
整流平滑回路12は、全波整流を行う整流部や、出力電圧Voutを平滑化する平滑部などを有する。
図1の構成例では、整流部はダイオードD12a,D12bを有し、二次コイルL2から出力される交流電圧を直流電圧に整流する。平滑部はコイルL12とコンデンサC12とを備えるLCフィルタである。ダイオードD12aとコイルL12は直列接続され、出力端子OUTの一端側に接続される。コンデンサC12は、出力端子OUTの両端に接続される。出力端子OUTの一端側(特にコンデンサC12の一端側)には、後述する第2検出部18が接続され、出力電圧Voutが検出される。
【0023】
第1検出部13aは、スイッチ回路11Aに入力される検出電流値Id(入力値に相当する)を検出する。検出電流値Idは「第1検出値」に相当し、スイッチング素子Q1〜Q4がオン時に検出される一以上の検出値である。複数の検出値の場合は、演算値(例えば平均値等)であってもよい。
【0024】
第2検出部18は、スイッチ回路11Aから出力される出力電圧Voutを検出電圧値Vd(出力値に相当する)として検出する。本形態の検出電圧値Vdは「第2検出値」に相当する。一般的に、検出電流値Idは波形信号のように変化し、検出電圧値Vdは負荷Z等の状態に応じて変化する。
【0025】
ドライブ回路14およびパルス生成部15は「信号出力手段」に相当する。パルス生成部15は、後述する差分演算部16から伝達される差分電流値ΔIに基づいて、パルス波(本形態ではパルス幅変調信号PWM)を生成して出力する。ドライブ回路14は、対応するスイッチング素子Q1〜Q4が駆動するように、パルス生成部15から伝達されるパルス幅変調信号PWMを増幅して出力する。
【0026】
差分演算部16(コンパレータ)は、第1検出部13aから伝達される検出電流値Idと、後述するフィードバック手段17(具体的にはDAC17a)から伝達される目標電流値Idirとの差分値である差分電流値ΔIを演算して出力する。差分値を演算するにあたって、検出電流値Idを基準としてもよく、差分電流値ΔIを基準としてもよい。
【0027】
フィードバック手段17は、DAC17a(デジタル・アナログ・コンバータ)、選択部17b、フィードバック演算部17c、指令値設定部17d、選択変更部17e、減算部17fなどを有する。フィードバック手段17の各構成要素について、処理の流れに沿って簡単に説明する。フィードバック手段17の一部または全部は、ハードウェアで構成してもよく、CPUがプログラムを実行するソフトウェアで構成してもよい。
【0028】
指令値設定部17dは、負荷Zに応じて設定される指令値Vrefを出力する。指令値Vrefは、記録媒体に記録してもよく、電圧値で設定してもよく、外部装置(例えばECUやコンピュータ等)から伝達されて設定してもよい。
【0029】
フィードバック演算部17cは、指令値設定部17dから伝達される指令値Vrefと、第2検出部18から伝達される検出電圧値Vdとに基づいてフィードバック制御の演算を行い、目標値Iref(制御量)を出力する。本形態では、比例制御(P制御)および積分制御(I制御)の演算を行う。さらに、必要に応じて微分制御(D制御)の演算を加えて行ってもよい。
【0030】
減算部17fは、フィードバック演算部17cから伝達される目標値Irefを第1所定値αずつ減算し、減算値Isubとして出力する。第1所定値αは「所定値」に相当する。本形態では、パルス周期Cp(1回のオンタイムと1回のオフタイム)を経過するごとに第1所定値αずつ減算する。
【0031】
選択変更部17eは、差分演算部16から伝達される差分値ΔIに基づいて、選択部17bによって選択される選択値Iselを変更する。本形態では、パルス周期Cpを経過する前に差分値ΔIの正負符号が反転しなければ、選択部17bによる選択を減算値Isubに変更する。一方、パルス周期Cpを経過する前に差分値ΔIの正負符号が反転すれば、選択部17bによる選択を目標値Irefに変更する。
【0032】
選択部17bは、選択変更部17eの選択に基づいて、選択値Iselを目標値Irefに変更するか、あるいは選択値Iselを減算値Isubに変更する。DAC17aは、選択部17bで選択されて伝達される選択値Isel(データ)を、アナログ信号である目標電流値Idirに変換して出力する。
【0033】
上述した構成例の電力変換装置10で行われる選択制御について、
図2を参照しながら説明する。なお、初期化時(例えば電源投入時やリセット時等)には、前回の減算値Isubが無いので、目標値Irefを設定する(Isub=Iref)。当該設定は、後述する実施の形態2以降における選択制御処理でも同様である。また、
図2に示すステップS10,S12,S14は選択部17bに相当し、ステップS11は減算部17fに相当し、ステップS13はDAC17aに相当する。
【0034】
図2に示す選択制御処理において、まず1パルス周期内(パルス周期Cpを経過するまで)に差分値ΔIの正負符号が反転するか否かを判別する〔ステップS10〕。もし差分値ΔIの正負符号が反転すれば(YES)、目標電流値Idirが低いことを意味する。そこで、選択値Iselに目標値Irefを選択し〔ステップS14〕、選択値Isel(すなわち目標値Iref)を目標電流値Idirに変換して出力する〔ステップS13〕。
【0035】
一方、差分値ΔIの正負符号が反転しなければ(ステップS10でNO)、目標電流値Idirがまだ高いことを意味する。そこで、前回の減算値Isubから第1所定値αを減算して新たな減算値Isubを出力する〔Isub=Isub−α;ステップS11〕。減算値Isubの演算は、ステップS10の条件を満たさない場合に行ってもよく、当該条件とは無関係に目標値Irefの演算と並行して行ってもよい。そして、選択値Iselに減算値Isubを選択し〔ステップS12〕、選択値Isel(すなわち減算値Isub)を目標電流値Idirに変換して出力する〔ステップS13〕。
【0036】
図2の選択制御処理を実行した場合における変化例(制御例でもある。以下同じ。)について、
図3を参照しながら説明する。
図3では、目標電流値Idir,検出電流値Idおよび選択値Iselについて、それぞれの変化例を示す。当該変化例や変化例は一例に過ぎず、検出電流値Id,出力電圧Vout,負荷Z等の変動に応じて様々に変わる。なお変化例については、実施の形態2以降も同様である。
【0037】
時刻t10から時刻t11までのパルス周期Cpは、目標値Irefが選択値Iselとして選択されるものとする。パルス周期Cpを経過する時刻t11まで差分値ΔIの正負符号が反転しない(Idir>Id)ので、時刻t11から時刻t12までのパルス周期Cpは目標値Irefから第1所定値αが減算された減算値Isubが選択値Iselとして選択される(
図2のステップS11,S12)。時刻t12を経過しても、時刻t13を経過しても、各パルス周期Cpを経過する前に差分値ΔIの正負符号が反転しないので、減算値Isubが選択値Iselとして選択され、順次に第1所定値αずつ減算される(
図2のステップS11,S12)。
【0038】
時刻t13から時刻t16までのパルス周期Cpでは、時刻t14に差分値ΔIの正負符号が反転する(Idir<Id)。フィードバック手段17の応答遅れに伴って、時刻t14より後の時刻t15に検出電流値Idがゼロになるようにパルス幅変調信号PWMの出力を停止する。理論的には時刻t14と時刻t15とが同一時刻になるのが望ましい。理論的な時刻については、実施の形態2以降でも同様である。時刻t16から時刻t17までのパルス周期Cpでは、目標値Irefが選択値Iselとして選択される(
図2のステップS14)。このときの目標値Irefは、時刻t13から時刻t16までのパルス周期Cp内における出力電圧Vout(検出電圧値Vd)と指令値Vrefとに基づいて演算されるので、時刻t10から時刻t11までの目標値Irefとは異なる値になることが多い。
【0039】
時刻t16から時刻t17までのパルス周期Cpでは、差分値ΔIの正負符号が反転しない(Idir>Id)。そのため、時刻t17から時刻t1aまでのパルス周期Cpは目標値Irefから第1所定値αが減算された減算値Isubが選択値Iselとして選択される(
図2のステップS11,S12)。時刻t1b以降、パルス周期Cpを経過する前に差分値ΔIの正負符号が反転しない場合も同様である。
【0040】
時刻t17から時刻t1aまでのパルス周期Cpでは、差分値ΔIの正負符号が時刻t17に反転する(Idir<Id)。そのため、時刻t1aから時刻t1bまでのパルス周期Cpは目標値Irefが選択値Iselとして選択される(
図2のステップS14)。このときの目標値Irefは、時刻t17から時刻t1aまでのパルス周期Cp内における出力電圧Vout(検出電圧値Vd)と指令値Vrefとに基づいて演算される。時刻t1b以降、パルス周期Cpを経過する前に差分値ΔIの正負符号が反転する場合も同様である。
【0041】
上述した実施の形態1によれば、以下に示す各効果を得ることができる。
【0042】
(1)電力変換装置10において、目標値Irefから所定値ずつ減算して減算値Isubとする減算部17fと、目標値Irefまたは減算値Isubのいずれか一方を選択して選択値Iselとする選択部17bと、スイッチ回路11Aに入力される検出電流値Id(入力値)と、選択値Iselとの差分を演算して差分値ΔIとする差分演算部16と、差分値ΔIに基づいて選択部17bによって選択される選択値Iselを変更する選択変更部17eとを有
し、フィードバック手段17は、選択値Iselをフィードバック制御の目標値Irefとする構成とした(
図1を参照)。この構成によれば、目標値Irefを第1所定値α(所定値)ずつ減少させることで、指令値Vref通りにフィードバックできない領域においても、検出電流値Idと選択値Isel(ひいては目標値Iref)との乖離を小さくすることができる。このことは、検出電流値Idの急激な変化(特に増加)や、出力電圧Vout(出力値)の急激な変化(特に減少)等の外乱が発生しても、負荷Zや半導体素子等の耐圧を上げる必要が無いことを意味する。よって、電力変換装置10の製造コストを低く抑えられる。ピーク値Ipk(ピークレベル)のバランスが維持されるので、スイッチ回路11Aに含まれる誘導性要素のトランスTr1に偏磁が発生するのを抑制することができる。
【0043】
(2)選択変更部17eは、差分値ΔIの正負符号が反転しなければ、選択部17bによる選択を減算値Isubに変更する構成とした(
図1〜
図3を参照)。この構成によれば、差分値ΔIの正負符号が反転しないのは、検出電流値Idと選択値Iselとの差分に余裕があるためである。そこで、目標値Irefから減算する減算値Isubに変更すると、検出電流値Idと選択値Iselとの乖離を小さくすることができる。よって、検出電流値Idの急激な変化(特に増加)や、出力電圧Voutの急激な変化(特に減少)等の外乱が発生しても、フィードバック制御の応答遅れに伴う反動を抑制することができる。
【0044】
(3)選択変更部17eは、差分値ΔIの正負符号が反転すれば、選択部17bによる選択を目標値Irefに変更する構成とした(
図1〜
図3を参照)。この構成によれば、差分値ΔIの正負符号が反転するのは、検出電流値Idと選択値Iselとの差分に余裕が無くなるためである。そこで、通常通りに目標値Irefでフィードバック制御を行うことで、検出電流値Idと選択値Iselとの乖離を小さくすることができる。
【0045】
(4)減算部17fは、パルス周期Cpを経過するごとに、目標値Irefから所定値に含まれる第1所定値αずつ減算する構成とした(
図2のステップS10,S11および
図3を参照)。この構成によれば、パルス周期Cpを経過するごとに、検出電流値Idと選択値Isel(ひいては目標値Iref)との乖離を小さくして微調整することができる。
【0046】
(13)スイッチ回路11Aは、複数のスイッチング素子Q1〜Q4をフルブリッジ方式で接続し、検出電流値Idはスイッチング素子Q1〜Q4がオン時に検出される一以上の検出値である構成とした(
図1を参照)。この構成によれば、第1所定値αを適切に設定することにより、オン時に検出されるいずれの検出電流値Idと選択値Iselとの乖離を小さくして微調整することができる。
【0047】
(14)スイッチ回路11Aは、一次コイルL1と二次コイルL2とを有するトランスTr1を含み、フィードバック手段17は、一次コイルL1側の検出値を検出電流値Id(すなわち検出電流値Id)とし、二次コイルL2側の検出値を出力電圧Vout(すなわち出力電圧Vout)とする構成とした(
図1を参照)。この構成によれば、トランスTrの偏磁をより確実に防止し、スイッチング素子Q1〜Q4の損傷もより確実に防止できる。
【0048】
〔実施の形態2〕
実施の形態2は
図4,
図5を参照しながら説明する。なお、電力変換装置10の構成等は実施の形態1と同様であり、図示および説明を簡単にするために実施の形態2では実施の形態1と異なる点について説明する。よって実施の形態1で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0049】
実施の形態2が実施の形態1と異なるのは選択制御処理の内容であり、
図4を参照しながら説明する。
図4に示す選択制御処理は、
図2に示す選択制御処理と比べて、ステップS20,S21をさらに含む点が相違する。なお
図4に示すステップS20は選択部17bに相当し、ステップS21は減算部17fに相当する。
【0050】
ステップS20は、ステップS10においてパルス周期Cpを経過する前に差分値ΔIの正負符号が反転しない場合(NO)に実行される。処理内容は、N回のパルス周期Cpを経過する前に差分値ΔIの正負符号が反転するか否かを判別する。Nは1以上の整数であって、任意の値を設定してよい。
【0051】
もしN回のパルス周期Cpを経過する前に差分値ΔIの正負符号が反転すれば(YES)、ステップS11を実行して減算値Isubを演算する。一方、N回のパルス周期Cpを経過する前に差分値ΔIの正負符号が反転しなければ(NO)、ステップS21を実行する。すなわち、前回の減算値Isubから第2所定値βを減算して新たな減算値Isubを出力する(Isub=Isub−β)。第2所定値βは「所定値」に相当する。
【0052】
図4の選択制御処理を実行した場合における変化例について、
図5を参照しながら説明する。
図5には、
図3と同様に、目標電流値Idir,検出電流値Idおよび選択値Iselについて、それぞれの変化例を示す。本形態では、N=3とする。
【0053】
時刻t20から時刻t21までは目標値Irefが選択値Iselとして選択されるものとする。パルス周期Cpを経過する時刻t21まで差分値ΔIの正負符号が反転しない(Idir>Id)ので、時刻t21から時刻t22までのパルス周期Cpは目標値Irefから第1所定値αが減算された減算値Isubが選択値Iselとして選択される(
図4のステップS11,S12)。3回のパルス周期Cp(時刻t22から時刻t24まで)を経過しても、差分値ΔIの正負符号が反転しない。そのため、時刻t24以降のパルス周期Cpでは、減算値Isubが選択値Iselとして選択されるとともに、第2所定値βずつ減算される(Isub=Isub−β;
図4のステップS20,S21)。時刻t29以降、3回のパルス周期Cpを経過する前に差分値ΔIの正負符号が反転しない場合も同様である。
【0054】
時刻t25から時刻t28までのパルス周期Cpでは、時刻t26に差分値ΔIの正負符号が反転する(Idir<Id)。フィードバック手段17の応答遅れに伴って、時刻t26より後の時刻t27に検出電流値Idがゼロになるようにパルス幅変調信号PWMの出力を停止する。時刻t28から時刻t29までのパルス周期Cpでは、目標値Irefが選択値Iselとして選択される(
図4のステップS14)。このときの目標値Irefは、時刻t25から時刻t28までのパルス周期Cp内における出力電圧Vout(検出電圧値Vd)と指令値Vrefとに基づいて演算されるので、時刻t20から時刻t21までの目標値Irefとは異なる値になることが多い。時刻t2a以降、パルス周期Cpを経過する前に差分値ΔIの正負符号が反転する場合も同様である。
【0055】
時刻t28から時刻t29までのパルス周期Cpでは、差分値ΔIの正負符号が反転しない(Idir>Id)。そのため、時刻t29以降のパルス周期Cpは目標値Irefから第1所定値αが減算された減算値Isubが選択値Iselとして選択される(
図4のステップS11,S12)。時刻t2a以降、パルス周期Cpを経過する前に差分値ΔIの正負符号が反転しない場合も同様である。
【0056】
上述した実施の形態2によれば、以下に示す各効果を得ることができる。なお、電力変換装置10の構成については実施の形態1と同様であるので(
図1を参照)、実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0057】
(5)減算部17fは、3(N)回のパルス周期Cpを経過する前に差分値ΔIの正負符号が反転しなければ、さらに第2所定値β(β>α;所定値)ずつ減算する構成とした(
図4のステップS20,S21および
図6を参照)。この構成によれば、第1所定値αずつ減少させた後、さらに第2所定値βずつ減少させる。指令値Vref通りにフィードバックできない領域においても、検出電流値Idと選択値Isel(ひいては目標値Iref)との乖離をより迅速に小さくすることができる。よって、負荷Zや半導体素子等の耐圧を上げる必要が無くなり、電力変換装置10の製造コストをより低く抑えられる。また、ピーク値Ipk(ピークレベル)のバランスが維持されるので、スイッチ回路11Aに含まれる誘導性要素のトランスTr1に偏磁が発生するのをより確実に抑制することができる。本形態ではN=3を適用したが、3以外の数値であって任意の整数(N>0)を適用する場合でも同様の作用効果を得ることができる。
【0058】
〔実施の形態3〕
実施の形態3は
図6〜
図9を参照しながら説明する。なお、電力変換装置10の構成等は実施の形態1と同様であり、図示および説明を簡単にするために実施の形態3では実施の形態1と異なる点について説明する。よって実施の形態1で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】
本形態では、スイッチング素子Q1〜Q4のオン時に流れる電流が許容範囲外に変化する場合の変化例(第1態様と第2態様)である。第1態様は、パルス周期Cpを経過する前に差分値ΔIの正負符号が反転する回数に応じて処理を分ける変化例であって、
図6と
図7を参照しながら説明する。第2態様は、スイッチング素子Q1〜Q4のオン時に流れる電流に応じて処理を分ける変化例であって、
図8と
図9を参照しながら説明する。許容範囲を設けるのは、何らかの要因(例えばノイズ等)で検出電流値Idが多少変化しても、フィードバック制御に影響が無い(あるいは少ない)ような場合を排除するためである。許容範囲の境界値は「閾値」に相当する。
【0060】
(第1態様)
第1態様が実施の形態1と異なるのは選択制御処理の内容である。
図6に示す選択制御処理は、
図2に示す選択制御処理と比べて、ステップS10に代えて、ステップS30,S31,S32を実行する点が相違する。なお
図6に示すステップS30,S31は選択部17bに相当し、ステップS32は減算部17fに相当する。ステップS31で判別する条件は「所定条件」に相当する。
【0061】
ステップS30は、スイッチング周期Cswを経過する前に差分値ΔIの正負符号が少なくとも2回反転するか否かを判別する。スイッチング周期Cswは、スイッチング素子Q1〜Q4が全てオン/オフするのに必要な期間である。もしスイッチング周期Cswを経過する前に差分値ΔIの正負符号が少なくとも2回反転すれば(YES)、ステップS14を実行して選択値Iselに目標値Irefを選択する。
【0062】
一方、ステップS30においてスイッチング周期Cswを経過する前に差分値ΔIの正負符号が少なくとも2回反転しなければ(NO)、ステップS31を実行する。ステップS31は、スイッチング周期Cswを経過する前に差分値ΔIの正負符号が1回反転するか否かを判別する。もしスイッチング周期Cswを経過する前に差分値ΔIの正負符号が1回反転すれば(YES)、前回の減算値Isubから第3所定値γを減算して新たな減算値Isubを出力する〔Isub=Isub−γ;ステップS32〕。第3所定値γは「所定値」に相当し、第1所定値αよりも小さい値を設定する(γ<α)。スイッチング周期Cswを経過する前に差分値ΔIの正負符号が1回も反転しなければ(NO)、ステップS11を実行して前回の減算値Isubから第1所定値αを減算する。
【0063】
図6の選択制御処理を実行した場合における変化例について、
図7を参照しながら説明する。
図7には、
図3と同様に、目標電流値Idir,検出電流値Idおよび選択値Iselについて、それぞれの変化例を示す。
図7では、スイッチング素子Q1,Q4が同時にオンとなるときに流れる電流を単に「Q1側」と表記し、スイッチング素子Q2,Q3が同時にオンとなるときに流れる電流を単に「Q2側」と表記する(後述する
図9,
図15でも同様である)。
【0064】
時刻t30から時刻t31までのスイッチング周期Cswは、目標値Irefが選択値Iselとして選択されるものとする。スイッチング周期Cswを経過する時刻t31まで差分値ΔIの正負符号が反転しない(Idir>Id)。そのため、時刻t31から時刻t32までのスイッチング周期Cswは、目標値Irefから第1所定値αが減算された減算値Isubが選択値Iselとして選択される(
図6のステップS31,S11)。
【0065】
時刻t31から時刻t34までのスイッチング周期Cswでは、時刻t32に差分値ΔIの正負符号が1回反転する(Idir<Id)。フィードバック手段17の応答遅れに伴って、時刻t32より後の時刻t33に検出電流値Idがゼロになるようにパルス幅変調信号PWMの出力を停止する。時刻t34から時刻t39までのスイッチング周期Cswは、目標値Irefから第3所定値γが減算された減算値Isubが選択値Iselとして選択される(
図6のステップS31,S32)。時刻t34以降、スイッチング周期Cswを経過する前に差分値ΔIの正負符号が1回反転する場合も同様である。
【0066】
時刻t34から時刻t39までのスイッチング周期Cswでは、時刻t35と時刻t37に差分値ΔIの正負符号が2回反転する(Idir<Id)。フィードバック手段17の応答遅れに伴って、時刻t35,t37より後の時刻t36,t38に検出電流値Idがゼロになるようにパルス幅変調信号PWMの出力を停止する。時刻t39から時刻t3aまでのスイッチング周期Cswは、目標値Irefが選択値Iselとして選択される(
図6のステップS30,S14)。このときの目標値Irefは、時刻t34から時刻t39までのスイッチング周期Csw内における出力電圧Vout(検出電圧値Vd)と指令値Vrefとに基づいて演算されるので、時刻t30から時刻t31までの目標値Irefとは異なる値になることが多い。時刻t3a以降、スイッチング周期Cswを経過する前に差分値ΔIの正負符号が少なくとも2回反転する場合も同様である。
【0067】
時刻t39から時刻t3aまでのスイッチング周期Cswでは、差分値ΔIの正負符号が反転しない(Idir>Id)。そのため、時刻t3a以降のスイッチング周期Cswは目標値Irefから第1所定値αが減算された減算値Isubが選択値Iselとして選択される(
図6のステップS31,S11)。時刻t34以降、スイッチング周期Cswを経過する前に差分値ΔIの正負符号が反転しない場合も同様である。
【0068】
(第2態様)
第2態様が実施の形態1と異なるのは選択制御処理の内容である。
図8に示す選択制御処理は、
図2に示す選択制御処理と比べて、ステップS10に代えて、ステップS30,S40,S32を実行する点が相違する。なお
図8に示すステップS30,S40は選択部17bに相当し、ステップS32は減算部17fに相当する。ステップS30,S32については第1態様と同様であるので、ステップS40について説明する。ステップS40で判別する条件は「所定条件」に相当する。
【0069】
ステップS40は、ステップS30においてスイッチング周期Cswを経過する前に差分値ΔIの正負符号が少なくとも2回反転しないときに実行される。具体的には、スイッチング周期Cswを経過する前に検出電流値Idにかかる単位時間当たりの変化量(以下では単に「単位変化量」と呼ぶ。)が許容範囲外か否かを判別する。もし検出電流値Idの単位変化量が許容範囲外ならば(YES)、ステップS32を実行して前回の減算値Isubから第3所定値γを減算する。一方、単位変化量が許容範囲内ならば(NO)、ステップS11を実行して前回の減算値Isubから第1所定値αを減算する。単位変化量に基づいて、設定や演算等を行うことによって第3所定値γを決定してもよい。
【0070】
図8の選択制御処理を実行した場合における変化例について、
図9を参照しながら説明する。
図9には、
図3と同様に、目標電流値Idir,検出電流値Idおよび選択値Iselについて、それぞれの変化例を示す。単位時間を「Δt」とする。
【0071】
時刻t40から時刻t41までのスイッチング周期Cswは、目標値Irefが選択値Iselとして選択されるものとする。スイッチング周期Cswを経過する時刻t41まで差分値ΔIの正負符号が反転せず(Idir>Id)、かつ、単位変化量が許容範囲内である。そのため、時刻t41から時刻t44までのスイッチング周期Cswは、目標値Irefから第1所定値αが減算された減算値Isubが選択値Iselとして選択される(
図8のステップS40,S11)。
【0072】
時刻t41から時刻t44までのスイッチング周期Cswでは、Q2側における時刻t42の前後で単位変化量が異なる。この例では、時刻t41から時刻t42までの単位変化量は「Δi1/Δt」であり、上部円内に一点鎖線で示す許容範囲内に収まる。これに対して、時刻t42以降の単位変化量は「Δi2/Δt」であり、許容範囲外になる。フィードバック手段17の応答遅れに伴って、時刻t42より後の時刻t43に検出電流値Idがゼロになるようにパルス幅変調信号PWMの出力を停止する。時刻t44から時刻t49までのスイッチング周期Cswは、目標値Irefから第3所定値γが減算された減算値Isubが選択値Iselとして選択される(
図8のステップS40,S32)。
【0073】
時刻t44から時刻t49までのスイッチング周期Cswでは、時刻t45と時刻t47で差分値ΔIの正負符号が2回反転する(Idir<Id)。フィードバック手段17の応答遅れに伴って、時刻t45,t47より後の時刻t46,t48に検出電流値Idがゼロになるようにパルス幅変調信号PWMの出力を停止する。時刻t49から時刻t4aまでのスイッチング周期Cswは、目標値Irefが選択値Iselとして選択される(
図8のステップS30,S14)。このときの目標値Irefは、時刻t44から時刻t49までのスイッチング周期Csw内における出力電圧Vout(検出電圧値Vd)と指令値Vrefとに基づいて演算されるので、時刻t40から時刻t41までの目標値Irefとは異なる値になることが多い。時刻t4a以降、スイッチング周期Cswを経過する前に差分値ΔIの正負符号が少なくとも2回反転する場合も同様である。
【0074】
時刻t49から時刻t4aまでのスイッチング周期Cswでは、差分値ΔIの正負符号が反転しない(Idir>Id)。そのため、時刻t4a以降のスイッチング周期Cswは目標値Irefから第1所定値αが減算された減算値Isubが選択値Iselとして選択される(
図8のステップS40,S11)。
【0075】
上述した実施の形態3によれば、以下に示す各効果を得ることができる。なお、電力変換装置10の構成については実施の形態1と同様であるので、実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0076】
(6)減算部17fは、スイッチ回路11Aに含まれる全てのスイッチング素子Q1〜Q4がオン/オフするのに必要なスイッチング周期Cswを経過する前に所定条件(ステップS31,S40)を満たすと、目標値Irefから第3所定値γ(γ<α;所定値)ずつ減算する構成とした(
図6〜
図9を参照)。この構成によれば、検出電流値Idと選択値Isel(ひいては目標値Iref)との乖離が小さい場合に、アンダーシュートの発生を抑制することができる。
【0077】
(11)減算部17fは、検出電流値Idにかかる単位変化量(Δi1/ΔtやΔi2/Δt等)が許容範囲外(閾値)を超えると、目標値Irefから第3所定値γ(所定値)ずつ減算する構成とした(
図8のステップS40,S32,
図9を参照)。この構成によれば、検出電流値Idと選択値Isel(ひいては目標値Iref)との乖離が小さい場合に、アンダーシュートの発生を抑制することができる。なお、第3所定値γ以外の所定値(例えば第1所定値αや第2所定値β等)を適用しても同様の作用効果が得られる。
【0078】
(12)減算部17fは、単位変化量に基づいて、第3所定値γ(所定値)を決定する構成とした(
図8のステップS32,
図9を参照)。この構成によれば、適正な第3所定値γが決定されるので、検出電流値Idと選択値Isel(ひいては目標値Iref)との乖離が小さい場合に、アンダーシュートの発生を抑制することができる。
【0079】
〔実施の形態4〕
実施の形態4は
図10〜
図12を参照しながら説明する。なお、電力変換装置10の構成等は実施の形態1と同様であり、図示および説明を簡単にするために実施の形態4では実施の形態1と異なる点について説明する。よって実施の形態1で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0080】
図10に示す電力変換装置10の構成例は、
図1に示す構成例に代わる。第1検出部13aで検出される検出電流値Idの伝達経路と、減算部17fの機能とが相違する。検出電流値Idは差分演算部16に伝達されるとともに、減算部17fにも伝達される。減算部17fは、パルス周期Cpを経過する前に伝達される1または複数の検出電流値Idに基づいて、前回の目標値Irefとの差分値を減算して減算値Isubを出力する。
【0081】
上述した構成例の電力変換装置10で行われる選択制御について、
図11を参照しながら説明する。
図11に示す選択制御処理は、
図2に示す選択制御処理と比べて、ステップS11に代えて、選択部17bに相当するステップS50を実行する点が相違する。
【0082】
ステップS50は、ステップS10においてパルス周期Cpを経過する前に差分値ΔIの正負符号が反転しない場合(NO)に実行される。処理内容は、スイッチング素子Q1〜Q4がオン時における任意の時点で検出される一以上の検出電流値Id(入力値)に基づいて目標値Irefから第4所定値δを減算し、減算値Isub(Isub=Iref−δ)として出力する。第4所定値δは、目標値Irefと検出電流値Idとの差分値である。一の検出電流値Idに基づく場合は、最小値,最大値(ピーク値),中間値(最小値と最大値との平均値),パルス周期開始から任意時間経過時の値等を含む。複数の検出電流値Idに基づいて決定する場合は、平均値や、関数式等で演算された演算値等を含む。
【0083】
図11の選択制御処理を実行した場合における変化例について、
図12を参照しながら説明する。
図12には、
図3と同様に、目標電流値Idir,検出電流値Idおよび選択値Iselについて、それぞれの変化例を示す。本形態の第4所定値δは、目標値Irefと、検出電流値Idの最大値(ピーク値)との差分値を適用する。
【0084】
時刻t50から時刻t51までは、目標値Irefが選択値Iselとして選択されるものとする。パルス周期Cpを経過する時刻t51まで差分値ΔIの正負符号が反転しない(Idir>Id)。そのため、時刻t51から時刻t52までのパルス周期Cpは目標値Irefから第4所定値δ1(δの一つ)が減算され、減算値Isubが選択値Iselとして選択される(
図11のステップS10,S50)。
【0085】
時刻t51から時刻t53までの2パルス周期Cpは、目標値Irefと検出電流値Idの最大値と同一であるので(Idir=Id)、第4所定値δはゼロになる。よって、時刻t52から時刻t55までの2パルス周期Cpもまた、目標値Irefから第4所定値δが減算される(Isub=Iref−0=Iref)。
【0086】
時刻t53から時刻t56までのパルス周期Cpでは、時刻t54に差分値ΔIの正負符号が反転する(Idir<Id)。フィードバック手段17の応答遅れに伴って、時刻t54より後の時刻t55に検出電流値Idがゼロになるようにパルス幅変調信号PWMの出力を停止する。時刻t56から時刻t57までのパルス周期Cpでは、目標値Irefが選択値Iselとして選択される(
図11のステップS14)。このときの目標値Irefは、時刻t53から時刻t56までのパルス周期Cp内における出力電圧Vout(検出電圧値Vd)と指令値Vrefとに基づいて演算されるので、時刻t50から時刻t51までの目標値Irefとは異なる値になることが多い。時刻t59以降、パルス周期Cpを経過する前に差分値ΔIの正負符号が反転する場合も同様である。
【0087】
時刻t56から時刻t57までのパルス周期Cpを経過するまで差分値ΔIの正負符号が反転しない(Idir>Id)。そのため、時刻t57から時刻t58までのパルス周期Cpは目標値Irefから第4所定値δ2(δの一つ)が減算され、減算値Isubが選択値Iselとして選択される(
図11のステップS10,S50)。第4所定値δ2は、第4所定値δ1と同値となる場合もあり、異なる値となる場合もある。
【0088】
時刻t58以降の各パルス周期Cpは、目標値Irefと検出電流値Idの最大値と同一であるので(Idir=Id)、第4所定値δはゼロになる。よって、時刻t58から時刻t59までのパルス周期Cpもまた、目標値Irefから第4所定値δが減算される(Isub=Iref−0=Iref)。時刻t59以降の各パルス周期Cpを経過する前に差分値ΔIの正負符号が反転しない場合も同様である。
【0089】
図12に示す変化例では、第4所定値δに目標値Irefと検出電流値Idの最大値(ピーク値)との差分値を適用したが、二点鎖線で示す第4所定値δ(差分値)を適用してもよい。すなわち、検出電流値Idが最小値,中間値,平均値,パルス周期開始から任意時間経過時の値,関数式等で演算された演算値等になる場合である。この場合でも、
図11と同様の制御を行うことができる。
【0090】
上述した実施の形態4によれば、以下に示す各効果を得ることができる。なお、検出電流値Idの伝達経路および減算部17fの機能を除いて、電力変換装置10の構成については実施の形態1と同様である(
図1と
図10を参照)。よって(3)の作用効果を除いて、実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0091】
(7)減算部17fは、パルス周期Cpを経過する前に差分値ΔIの正負符号が反転しなければ、検出電流値Id(入力値)に基づく第4所定値δを減算する構成とした(
図10〜
図12を参照)。この構成によれば、目標値Irefから第4所定値δ(目標値Irefと検出電流値Idとの差分値)を減算することで、検出電流値Idと選択値Iselとの乖離を早期に小さくして微調整することができる。
【0092】
(8)減算部17fは、複数の検出電流値Idに基づいて、第4所定値δを決定する構成とした(
図10〜
図12を参照)。この構成によれば、第4所定値δは平均値や関数式等で演算された演算値等になるので、検出電流値Idと選択値Iselとの乖離を早期に小さくして微調整することができる。
【0093】
〔実施の形態5〕
実施の形態5は
図13〜
図15を参照しながら説明する。なお、電力変換装置10の構成等は実施の形態1と同様であり、図示および説明を簡単にするために実施の形態5では実施の形態1と異なる点について説明する。よって実施の形態1で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0094】
図13に示す電力変換装置10の構成例は、
図1に示す構成例に代わる。第1検出部13aで検出される検出電流値Idの伝達経路と、伝達経路の途中に備えるピーク検出部17gと、減算部17fの機能とが相違する。検出電流値Idは差分演算部16に伝達されるとともに、ピーク検出部17gによって検出される検出電流値Idのピーク値Ipkが減算部17fにも伝達される。減算部17fは、スイッチング周期Cswを経過する前に伝達されるピーク値Ipkに基づいて、前回の目標値Irefとの差分値を減算して減算値Isubを出力する。
【0095】
上述した構成例の電力変換装置10で行われる選択制御について、
図14を参照しながら説明する。
図14に示す選択制御処理は、
図2に示す選択制御処理と比べて、ステップS10,S11に代えて、ステップS60,S61を実行する点が相違する。ステップS60は選択部17bに相当し、ステップS61は減算部17fに相当する。
【0096】
ステップS60は、スイッチング周期Cswを経過する前に差分値ΔIの正負符号が反転するか否かを判別する。もしスイッチング周期Cswを経過する前に差分値ΔIの正負符号が反転すれば(YES)、ステップS14を実行して選択値Iselに目標値Irefを選択する。一方、スイッチング周期Cswを経過する前に差分値ΔIの正負符号が反転しなければ(NO)、スイッチング周期Cswを経過する前にピーク検出部17gで検出される一以上のピーク値Ipkに基づいて平均値Iaveを演算し、減算値Isubとして出力する〔ステップS61〕。ピーク値Ipkが一つである場合には、ピーク値Ipkが平均値Iaveになる(Iave=Ipk)。
【0097】
図14の選択制御処理を実行した場合における変化例について、
図15を参照しながら説明する。
図15には、
図3と同様に、目標電流値Idir,検出電流値Idおよび選択値Iselについて、それぞれの変化例を示す。なお、後述する平均値Iave1,Iave2,Iave3は、平均値Iaveの一例に過ぎない。
【0098】
時刻t60から時刻t61までのスイッチング周期Cswは、目標値Irefが選択値Iselとして選択されるものとする。スイッチング周期Cswを経過する時刻t61まで差分値ΔIの正負符号が反転しない(Idir>Id)。そのため、時刻t61から時刻t62までのスイッチング周期Cswに検出されるQ1側とQ2側の各ピーク値Ipkに基づく平均値Iave1(一点鎖線で図示する)が演算され、減算値Isubとして出力される(Isub=Iave1;
図14のステップS60,S61)。言い換えれば、目標値Irefと平均値Iave1との差分値は「所定値」に相当し、減算値Isubは目標値Irefから差分値を減算して決定する値とみなせる。後述する平均値Iave2,Iave3についても同様である。
【0099】
時刻t61から時刻t62までのスイッチング周期Cswについても同様に処理される。すなわち、Q1側とQ2側の各ピーク値Ipkに基づく平均値Iave2(一点鎖線で図示する)が演算され、減算値Isubとして出力される(Isub=Iave2;
図14のステップS60,S61)。
【0100】
時刻t62から時刻t67までのスイッチング周期Cswでは、時刻t63と時刻t65で差分値ΔIの正負符号が反転する(Idir<Id)。フィードバック手段17の応答遅れに伴って、時刻t63,t65より後の時刻t64,t66に検出電流値Idがゼロになるようにパルス幅変調信号PWMの出力を停止する。時刻t67から時刻t68までのスイッチング周期Cswでは、目標値Irefが選択値Iselとして選択される(
図14のステップS60,S14)。このときの目標値Irefは、時刻t62から時刻t67までのスイッチング周期Csw内における出力電圧Vout(検出電圧値Vd)と指令値Vrefとに基づいて演算されるので、時刻t60から時刻t61までの目標値Irefとは異なる値になることが多い。時刻t68以降、スイッチング周期Cswを経過する前に差分値ΔIの正負符号が反転する場合も同様である。
【0101】
時刻t67から時刻t68までのスイッチング周期Cswでは、スイッチング周期Cswを経過する時刻t68まで差分値ΔIの正負符号が反転しない(Idir>Id)。そのため、Q1側とQ2側の各ピーク値Ipkに基づく平均値Iave3(一点鎖線で図示する)が演算され、減算値Isubとして出力される(Isub=Iave3;
図14のステップS60,S61)。時刻t68以降、スイッチング周期Cswを経過する前に差分値ΔIの正負符号が反転しない場合も同様である。
【0102】
上述した実施の形態5によれば、以下に示す各効果を得ることができる。なお、検出電流値Idの伝達経路、減算部17fの機能およびピーク検出部17gを除いて、電力変換装置10の構成については実施の形態1と同様である(
図1と
図10を参照)。よって(3)の作用効果を除いて、実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0103】
(9)減算部17fは、複数の検出電流値Idにかかるピーク値Ipkの平均値Iaveに基づいて、目標値Irefと平均値Iaveとの差分値(所定値)を決定する構成とした(
図13〜
図15を参照)。この構成によれば、次のスイッチング周期Cswでは平均値Iaveが減算値Isubとして選択され、選択値Iselになる。よって、検出電流値Idと選択値Iselとの乖離を早期に小さくして微調整することができる。
【0104】
〔実施の形態6〕
実施の形態6は
図16,
図17を参照しながら説明する。なお、電力変換装置10の構成等は実施の形態5と同様であり、図示および説明を簡単にするために実施の形態6では実施の形態5と異なる点について説明する。よって実施の形態5で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0105】
実施の形態6は、実施の形態1を基本として、実施の形態3,5を組み合わせた変形例である。
図16に示すように、実施の形態1(
図2を参照)のステップS10に代えて、実施の形態3(
図6を参照)のステップS30と、ステップS70と、実施の形態5(
図14を参照)のステップS61とを実行する。
【0106】
ステップS30において、スイッチング周期Cswを経過する前に差分値ΔIの正負符号が少なくとも2回反転すれば(YES)、ステップS14を実行して選択値Iselに目標値Irefを選択する。一方、スイッチング周期Cswを経過する前に差分値ΔIの正負符号が少なくとも2回反転しなければ(NO)、ステップS70を実行する。
【0107】
ステップS70では、N回のスイッチング周期Cswを経過する前に差分値ΔIの正負符号が1回反転するか否かを判別する。もしN回のスイッチング周期Cswを経過する前に差分値ΔIの正負符号が1回反転すれば(YES)、ステップS11を実行して前回の減算値Isubから第1所定値αを減算して新たな減算値Isubを出力する。一方、N回のスイッチング周期Cswを経過する前に差分値ΔIの正負符号が1回反転しなければ(NO)、ステップS61を実行してスイッチング周期Csw中にピーク検出部17gで検出されるピーク値Ipkに基づいて平均値Iaveを演算し、減算値Isubとして出力する。
【0108】
図16の選択制御処理を実行した場合における変化例について、
図17を参照しながら説明する。
図17には、
図3と同様に、目標電流値Idir,検出電流値Idおよび選択値Iselについて、それぞれの変化例を示す。なお、N回のスイッチング周期Cswは「所定期間」に相当し、本形態ではN=3とする。
【0109】
時刻t70から時刻t71までのスイッチング周期Cswは、目標値Irefが選択値Iselとして選択されるものとする。スイッチング周期Cswを経過する時刻t71まで差分値ΔIの正負符号が反転しない(Idir>Id)。そのため、前回の減算値Isubから第1所定値αを減算して新たな減算値Isubを出力する(Isub=Isub−α;ステップS70,S11)。この処理は、時刻t71から時刻t72までのスイッチング周期Cswと、時刻t72から時刻t73までのスイッチング周期Cswとでも同様に行われる。
【0110】
時刻t70から時刻t73までの3回(N回)のスイッチング周期Cswにおいて、差分値ΔIの正負符号が反転しない。そのため、時刻t72から時刻t73までのスイッチング周期Cswに検出されるQ1側とQ2側の各ピーク値Ipkに基づく平均値Iave4(一点鎖線で図示する)が演算され、減算値Isubとして出力される(Isub=Iave4;
図16のステップS70,S61)。平均値Iave4は、平均値Iaveの一例に過ぎず、他の平均値を適用してもよい。例えば、時刻t70から時刻t73までに検出される全てのQ1側のピーク値IpkとQ2側のピーク値Ipkにかかる平均値や、直前のM回(M<N)のスイッチング周期Cswに検出される全てのQ1側とQ2側の各ピーク値Ipkに基づく平均値等が該当する。時刻t77以降、3回(N回)のスイッチング周期Cswを経過する前に差分値ΔIの正負符号が反転しない場合も同様である。
【0111】
時刻t73から時刻t78までのスイッチング周期Cswでは、時刻t74と時刻t76とで差分値ΔIの正負符号が2回反転する(Idir<Id)。フィードバック手段17の応答遅れに伴って、時刻t74,t76より後の時刻t75,t77に検出電流値Idがゼロになるようにパルス幅変調信号PWMの出力を停止する。時刻t78から時刻t79までのスイッチング周期Cswでは、目標値Irefが選択値Iselとして選択される(
図16のステップS30,S14)。このときの目標値Irefは、時刻t73から時刻t78までのスイッチング周期Csw内における出力電圧Vout(検出電圧値Vd)と指令値Vrefとに基づいて演算されるので、時刻t70から時刻t71までの目標値Irefとは異なる値になることが多い。時刻t79以降、スイッチング周期Cswを経過する前に差分値ΔIの正負符号が反転する場合も同様である。
【0112】
時刻t78から時刻t79までのスイッチング周期Cswでは、スイッチング周期Cswを経過する時刻t79まで差分値ΔIの正負符号が反転しない(Idir>Id)。そのため、前回の減算値Isubから第1所定値αを減算して新たな減算値Isubを出力する(Isub=Isub−α;ステップS70,S11)。時刻t79以降、1回のスイッチング周期Cswを経過する前に差分値ΔIの正負符号が反転する場合も同様である。
【0113】
上述した実施の形態6によれば、以下に示す各効果を得ることができる。なお、電力変換装置10の構成については実施の形態5と同様であるので(
図13を参照)、実施の形態5と同様の作用効果を得ることができる。
【0114】
(10)減算部17fは、1回のスイッチング周期Cswを経過するごとに目標値Irefを第1所定値α(所定値)ずつ減少させても、N(3回)のスイッチング周期Csw(所定期間)を経過する前に差分値ΔIの正負符号が反転しなければ、平均値Iave4になるように差分値(所定値;Iref−Iave4)を決定する構成とした(
図16のステップS61および
図17を参照)。この構成によれば、ピーク値Ipkに基づく平均値となるように減算値Isubが設定されるので、検出電流値Idと選択値Iselとの乖離を早期に小さくして微調整することができる。
【0115】
〔実施の形態7〕
実施の形態7は
図18を参照しながら説明する。なお、電力変換装置10の構成等は実施の形態1と同様であり、図示および説明を簡単にするために実施の形態7では実施の形態1と異なる点について説明する。よって実施の形態1で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0116】
実施の形態7が実施の形態1と異なるのは、スイッチ回路11と負荷Zである。スイッチ回路11は、定電圧を出力する実施の形態1とは異なり、出力電圧Voutにかかる電圧値や周波数を経時的に変化させる。負荷Zには、誘導性要素の回転電機20(「MG」と図示する)を適用する。よって実施の形態2に示す電力変換装置10は、インバータの一例である。
【0117】
図18に示すスイッチ回路11Bは、
図1に示すスイッチ回路11Aに代えて構成される。当該スイッチ回路11Bは、スイッチング素子Q1〜Q6やダイオードD1〜D6などを有する。スイッチング素子Q1〜Q6は、ドライブ回路14から入力端子(例えばゲート端子等)に入力されるパルス幅変調信号PWMに基づいてオン/オフが駆動される。当該スイッチ回路11Bは、スイッチング素子Q1,Q2,Q3を上アームとし、スイッチング素子Q4,Q5,Q6を下アームとするハーフブリッジ回路で構成される。ダイオードD1〜D6は、それぞれ対応するスイッチング素子Q1〜Q6の入力端子(例えばドレイン端子等)と出力端子(例えばソース端子等)との間に並列接続される。これらのダイオードは、フリーホイールダイオードとして機能する。
【0118】
スイッチング素子Q1の出力端子とスイッチング素子Q4の入力端子との接続点は、第1相(例えばU相)の出力端子OUTに接続される。スイッチング素子Q2の出力端子とスイッチング素子Q5の入力端子との接続点は、第2相(例えばV相)の出力端子OUTに接続される。スイッチング素子Q3の出力端子とスイッチング素子Q6の入力端子との接続点は、第3相(例えばW相)の出力端子OUTに接続される。
【0119】
出力電圧Voutは三相交流であるので、第2検出部18は交流電圧の電圧値(例えば瞬間値,絶対値,ピーク値,実効値等)を検出電圧値Vdとして検出する。電力変換装置10における他の要素については、実施の形態1と同様に機能する。そのため、実施の形態1における
図2〜
図5に示す制御例や、実施の形態2における
図8,
図9に示す制御例をそれぞれ実現できる。これにより、低入力電圧状態から入力電圧が急激に上昇するような状態が発生しても、回転電機20(具体的には磁性体コア等)の偏磁を防止し、スイッチング素子Q1〜Q6の損傷も防止できる。
【0120】
上述した実施の形態7によれば、スイッチ回路11Bを除いて実施の形態1と同様であるので、実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。図示しないが、実施の形態4(
図10を参照)に示す検出電流値Idの伝達経路や、実施の形態5(
図13を参照)に示すピーク検出部17gを、それぞれ
図18に示す構成に付加してもよい。これらの場合には、実施の形態4,5と同様の作用効果を得ることができる。
【0121】
〔他の実施の形態〕
以上では本発明を実施するための形態について実施の形態1〜7に従って説明したが、本発明は当該形態に何ら限定されるものではない。言い換えれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することもできる。例えば、次に示す各形態を実現してもよい。
【0122】
上述した実施の形態1〜7では、個別に構成した(
図1〜
図18を参照)。この形態に代えて、実施の形態1〜7について、複数(2以上)の実施の形態を任意に組み合わせて構成してもよい。負荷Zに応じて適切に組み合わせるとよい。単に組み合わせに過ぎないので、各実施の形態における作用効果を得ることができる。
【0123】
上述した実施の形態1〜6ではスイッチング素子Q1〜Q4を含むスイッチ回路11Aを構成し、実施の形態7ではスイッチング素子Q1〜Q6を含むスイッチ回路11Bを構成した(
図1,
図10,
図13,
図18を参照)。この形態に代えて、
図19に示す非絶縁型コンバータ(降圧型)のように、トランスを含まず、スイッチング素子Q1のみを含むスイッチ回路11Cを構成してもよい。
図20に示すフォワード型コンバータのように、リセット部11aとスイッチング素子Q1とを含むスイッチ回路11Dを構成してもよい。具体的には、入力端子INの両端にリセット部11aとスイッチング素子Q1とを直列接続するとともに、トランスTr2の一次コイルL1の両端をリセット部11aに並列接続する。
図21に示すプッシュプル型コンバータのように、プッシュプル接続するスイッチング素子Q1,Q2を含むスイッチ回路11Eを構成してもよい。具体的には、入力端子INの一端側(プラス側)を一次コイルL1の中間タップに接続し、他端側(マイナス側)をスイッチング素子Q1,Q2の出力端子に接続する。スイッチング素子Q1の入力端子は一次コイルL1の一端側に接続し、スイッチング素子Q2の入力端子は一次コイルL1の他端側に接続する。スイッチ回路11C,11D,11Eのように構成しても、スイッチ回路11A,11Bと同様に入力端子INから入力される電力を変換して出力することができる。よって、実施の形態1〜7と同様の作用効果が得られる。
【0124】
上述した実施の形態1〜6では、二次コイルL2にのみ中間タップを有するトランスTr1をスイッチ回路11に含む構成とした(
図1,
図10,
図13を参照)。この形態に代えて、
図20に示すように、一次コイルL1および二次コイルL2の双方とも中間タップを有しないトランスTr2をスイッチ回路11に含む構成としてもよい。
図21に示すように、一次コイルL1および二次コイルL2の双方とも中間タップを有するトランスTr3をスイッチ回路11に含む構成としてもよい。図示しないが、一次コイルL1にのみ中間タップを有するトランスTrをスイッチ回路11に含む構成としてもよい。いずれのトランスTrを有していても一次コイルL1と二次コイルL2との巻数比に応じた変圧を行うので、実施の形態1〜6と同様の作用効果が得られる。
【0125】
上述した実施の形態1〜6では、トランスTr1の二次コイルL2が中間タップを有するので、二次コイルL2の両端にダイオードD12a,D12bを接続して全波整流する構成とした(
図1,
図10,
図13を参照)。この形態に代えて、
図20に示すように、二次コイルL2が中間タップを有しないトランスTr2の場合には、二次コイルL2の両端にダイオードD12a,D12bを接続して全波整流する構成としてもよい。図示しないが、4つのダイオードD12を用いてダイオードブリッジを形成して全波整流する構成としてもよい。全波整流する構成に限らず、半波整流する構成でもよい。整流方式の相違に過ぎないので、実施の形態1〜6と同様の作用効果が得られる。
【0126】
上述した実施の形態1〜7では、第1検出値として、スイッチ回路11(11A,11B)に入力される電流(電流値)の検出電流値Idを適用する構成とした(
図1,
図10,
図13,
図18を参照)。この形態に代えて、スイッチ回路11(11A,11B)から出力される電流(電流値)を適用する構成としてもよい。具体的には、実施の形態1〜7で用いる第1検出部13aの代わりに、例えば
図22に示す第1検出部13bを用いればよい。第1検出部13bは、コイルL12や負荷Zを流れる出力電流値Ioutを検出し、検出電流値Idとして出力する。この場合の差分演算部16は、第1検出部13bから伝達される検出電流値Idと、DAC17aから伝達される目標電流値Idirとの差分値である差分電流値ΔIを演算して出力する。図示しないが、第1検出部13a,13bの双方を用いてもよい。この場合には、第1検出部13a,13bでそれぞれ検出される検出電流値Idについて選択または演算する。選択は、大きな検出値または小さな検出値のいずれか一方を選択したり、スイッチング素子のオン時において最大値となるピーク値(すなわちピーク電流値)を選択したりする。その他、
図6に示すようにスイッチング素子のオン時おける電流値を選択してもよい。演算は、第1検出部13a,13bでそれぞれ検出される検出電流値Idを用いて平均値等を演算する。入力値をスイッチ回路11の入力側とするか出力側とするかの相違に過ぎないので、実施の形態1〜7と同様の作用効果を得ることができる。
【0127】
上述した実施の形態1〜7では、第2検出値として、スイッチ回路11(11A,11B)から出力される出力電圧Vout(出力値)の検出電圧値Vdを適用する構成とした(
図1,
図10,
図13,
図18を参照)。この形態に代えて、スイッチ回路11(11A,11B)から出力される電流値(出力値)を適用する構成としてもよい。この構成では、第2検出部18に代えて、
図22に示す第1検出部13bを「第2検出部」として備えればよい。出力される電流が急激に変化(特に上昇)するような状態が発生しても、トランスTrや回転電機20等のような誘導性要素の偏磁を防止し、スイッチ回路11に含まれるスイッチング素子の損傷も防止することができる。
【0128】
上述した実施の形態5に示す減算部17fは、スイッチング周期Cswを経過する前にピーク検出部17gで検出される一以上のピーク値Ipkに基づいて平均値Iaveを演算し、減算値Isubとして出力する構成とした(
図14を参照)。この形態に代えて、平均値Iave以外の値を減算値Isubとして出力する構成としてもよい。例えば、ピーク検出部17gで検出される一以上のピーク値Ipkのうち、最も大きな値のピーク値Ipkや、最も小さな値のピーク値Ipk、所定の演算式(関数式等)にピーク値Ipkを代入して演算される値などが該当する。より適切な減算値Isub(すなわち選択値Isel)になるように、電力変換装置10の定格や用途、負荷Zの種類等に応じて設定するとよい。適切な減算値Isubが出力される点では変わらないので、実施の形態5と同様の作用効果を得ることができる。
【0129】
上述した実施の形態1〜7では、電力変換装置10はDC/DCコンバータ(実施の形態1〜6)と、インバータ(実施の形態7)とに適用する構成とした(
図1,
図10,
図13,
図18を参照)。この形態に代えて、複数のスイッチング素子を備え、かつ、トランスTrや回転電機20等のような誘導性要素で偏磁が生じるような用途を有する他の電力変換装置に適用する構成としてもよい。他の電力変換装置で低入力電圧状態から入力電圧が急激に上昇するような状態が発生しても、誘導性要素の偏磁を防止し、スイッチ回路11に含まれるスイッチング素子の損傷も防止することができる。
【0130】
誘導性要素として、実施の形態1〜6ではトランスTr1を適用する構成とし(
図1,
図10,
図13を参照)、実施の形態7では回転電機20を適用する構成とした(
図18を参照)。この形態に代えて、コイルを適用する構成としてもよい。この構成でも、低入力電圧状態から入力電圧が急激に上昇するような状態が発生しても、コイルの偏磁を防止し、スイッチ回路11に含まれるスイッチング素子の損傷も防止することができる。