特許第5707453号(P5707453)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5707453主磁極とシールドを備えた垂直磁気記録用磁気ヘッド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5707453
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】主磁極とシールドを備えた垂直磁気記録用磁気ヘッド
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/31 20060101AFI20150409BHJP
【FI】
   G11B5/31 D
   G11B5/31 Q
   G11B5/31 C
【請求項の数】9
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2013-150289(P2013-150289)
(22)【出願日】2013年7月19日
(65)【公開番号】特開2014-35785(P2014-35785A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2013年7月19日
(31)【優先権主張番号】13/569,682
(32)【優先日】2012年8月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500475649
【氏名又は名称】ヘッドウェイテクノロジーズ インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】500393893
【氏名又は名称】新科實業有限公司
【氏名又は名称原語表記】SAE Magnetics(H.K.)Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100107559
【弁理士】
【氏名又は名称】星宮 勝美
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 芳高
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一樹
(72)【発明者】
【氏名】荒木 宏典
(72)【発明者】
【氏名】種村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 達也
【審査官】 斎藤 眞
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−157298(JP,A)
【文献】 特開2012−123886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対向する媒体対向面と、
前記記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生するコイルと、
前記媒体対向面に配置された端面を有し、前記コイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって前記情報を前記記録媒体に記録するための記録磁界を発生する主磁極と、
磁性材料よりなり、前記媒体対向面に配置された端面を有する記録シールドと、
非磁性材料よりなり、前記主磁極と前記記録シールドとの間に設けられたギャップ部とを備えた垂直磁気記録用磁気ヘッドであって、
前記記録シールドの端面は、前記主磁極の前記端面に対して前記記録媒体の進行方向の前側に配置された第1の端面部分を含み、
前記主磁極は、前記記録媒体の進行方向の前側の端に位置する面である上面と、前記上面とは反対側の下端部とを有し、
前記主磁極の上面と下端部の少なくとも一方は、傾斜部を含み、
前記傾斜部は、前記媒体対向面に配置された前端部と、その反対側の後端部とを有し、
前記主磁極の端面の前記記録媒体の進行方向の前側に配置された端部を通り、前記媒体対向面および前記記録媒体の進行方向に垂直な第1の仮想の平面と、前記主磁極の端面の前記記録媒体の進行方向の後側に配置された端部を通り、前記媒体対向面および前記記録媒体の進行方向に垂直な第2の仮想の平面とを想定したとき、
前記傾斜部は、前記後端部が前記前端部よりも前記第1および第2の仮想の平面からより遠い位置に配置されるように、前記第1および第2の仮想の平面および前記媒体対向面に対して傾斜し、
前記記録シールドは、前記ギャップ部を介して前記傾斜部に対向する第1の傾斜面と、前記第1の傾斜面よりも前記媒体対向面からより遠い位置にある第2の傾斜面とを有し、
前記第1の傾斜面は、前記媒体対向面に配置された第1の端部と、その反対側の第2の端部とを有し、前記第2の端部が前記第1の端部よりも前記第1および第2の仮想の平面からより遠い位置に配置されるように、前記第1の傾斜面の全体が前記第1および第2の仮想の平面および前記媒体対向面に対して傾斜し、
前記第2の傾斜面は、前記第2の端部に接続された第3の端部と、その反対側の第4の端部とを有し、前記第4の端部が前記第3の端部よりも前記第1および第2の仮想の平面からより遠い位置に配置されるように、前記第2の傾斜面の全体が前記第1および第2の仮想の平面および前記媒体対向面に対して傾斜し、
前記第2の傾斜面が前記媒体対向面に垂直な方向に対してなす角度は、前記第1の傾斜面が前記媒体対向面に垂直な方向に対してなす角度よりも大きく、
前記第2の傾斜面上の任意の位置と前記主磁極との間の距離は、前記第3の端部を起点として、前記任意の位置が前記第4の端部に近づくに従って大きくなっていることを特徴とする垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項2】
前記第1の傾斜面が前記媒体対向面に垂直な方向に対してなす角度は、30°〜45°の範囲内であり、前記第2の傾斜面が前記媒体対向面に垂直な方向に対してなす角度は、50°〜65°の範囲内であることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項3】
前記主磁極の下端部が前記傾斜部を含み、
前記記録シールドの端面は、更に、前記主磁極の前記端面に対して前記記録媒体の進行方向の後側に配置された第2の端面部分を含むことを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項4】
更に、磁性材料よりなる帰磁路部を備え、
前記帰磁路部は、前記主磁極に対して前記記録媒体の進行方向の後側に配置されて、前記主磁極、ギャップ部、記録シールドおよび帰磁路部によって囲まれた空間が形成されるように、前記主磁極のうちの前記媒体対向面から離れた部分と前記記録シールドとを接続し、
前記コイルは、前記空間を通過する部分を含むことを特徴とする請求項3記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項5】
前記主磁極の上面が前記傾斜部を含むことを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項6】
更に、磁性材料よりなる帰磁路部を備え、
前記帰磁路部は、前記主磁極に対して前記記録媒体の進行方向の前側に配置されて、前記主磁極、ギャップ部、記録シールドおよび帰磁路部によって囲まれた空間が形成されるように、前記主磁極のうちの前記媒体対向面から離れた部分と前記記録シールドとを接続し、
前記コイルは、前記空間を通過する部分を含むことを特徴とする請求項5記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項7】
前記主磁極の下端部と上面が、それぞれ前記傾斜部を含み、
前記記録シールドの端面は、更に、前記主磁極の前記端面に対して前記記録媒体の進行方向の後側に配置された第2の端面部分を含むことを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項8】
更に、磁性材料よりなる第1および第2の帰磁路部を備え、
前記第1の帰磁路部は、前記主磁極に対して前記記録媒体の進行方向の後側に配置されて、前記主磁極、ギャップ部、記録シールドおよび第1の帰磁路部によって囲まれた第1の空間が形成されるように、前記主磁極のうちの前記媒体対向面から離れた部分と前記記録シールドとを接続し、
前記第2の帰磁路部は、前記主磁極に対して前記記録媒体の進行方向の前側に配置されて、前記主磁極、ギャップ部、記録シールドおよび第2の帰磁路部によって囲まれた第2の空間が形成されるように、前記主磁極のうちの前記媒体対向面から離れた部分と前記記録シールドとを接続し、
前記コイルは、前記第1の空間を通過する第1の部分と、前記第2の空間を通過する第2の部分とを含むことを特徴とする請求項7記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項9】
前記記録シールドの端面は、更に、第2、第3および第4の端面部分を含み、
前記第2の端面部分は、前記主磁極の前記端面に対して前記記録媒体の進行方向の後側に配置され、
前記第3および第4の端面部分は、前記主磁極の前記端面に対してトラック幅方向の両側に配置されていることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直磁気記録方式によって記録媒体に情報を記録するために用いられる垂直磁気記録用磁気ヘッドに関し、特に、主磁極とシールドを備えた垂直磁気記録用磁気ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録再生装置における記録方式には、信号磁化の向きを記録媒体の面内方向(長手方向)とする長手磁気記録方式と、信号磁化の向きを記録媒体の面に対して垂直な方向とする垂直磁気記録方式とがある。垂直磁気記録方式は、長手磁気記録方式に比べて、記録媒体の熱揺らぎの影響を受けにくく、高い線記録密度を実現することが可能であると言われている。
【0003】
一般的に、垂直磁気記録用の磁気ヘッドとしては、長手磁気記録用の磁気ヘッドと同様に、読み出し用の磁気抵抗効果素子(以下、MR(Magnetoresistive)素子とも記す。)を有する再生ヘッド部と、書き込み用の誘導型電磁変換素子を有する記録ヘッド部とを、基板の上面上に積層した構造のものが用いられる。記録ヘッド部は、記録媒体の面に対して垂直な方向の記録磁界を発生する主磁極を備えている。主磁極は、例えば、一端部が記録媒体に対向する媒体対向面に配置されたトラック幅規定部と、このトラック幅規定部の他端部に連結され、トラック幅規定部よりも大きな幅を有する幅広部とを有している。トラック幅規定部は、ほぼ一定の幅を有している。垂直磁気記録方式の記録ヘッド部には、高記録密度化のために、トラック幅の縮小と、記録特性、例えば重ね書きの性能を表わすオーバーライト特性の向上が求められる。
【0004】
ところで、ハードディスク装置等の磁気ディスク装置に用いられる磁気ヘッドは、一般的に、スライダに設けられる。スライダは、上記媒体対向面を有している。この媒体対向面は、空気流入端(リーディング端)と空気流出端(トレーリング端)とを有している。そして、空気流入端から媒体対向面と記録媒体との間に流入する空気流によって、スライダは記録媒体の表面からわずかに浮上するようになっている。
【0005】
ここで、基準の位置に対して、よりリーディング端に近い位置をリーディング側と定義し、基準の位置に対して、よりトレーリング端に近い位置をトレーリング側と定義する。リーディング側は、スライダに対する記録媒体の進行方向の後側である。トレーリング側は、スライダに対する記録媒体の進行方向の前側である。
【0006】
スライダにおいて、一般的に、磁気ヘッドは媒体対向面におけるトレーリング端近傍に配置される。磁気ディスク装置において、磁気ヘッドの位置決めは、例えばロータリーアクチュエータによって行なわれる。この場合、磁気ヘッドは、ロータリーアクチュエータの回転中心を中心とした円軌道に沿って記録媒体上を移動する。このような磁気ディスク装置では、磁気ヘッドのトラック横断方向の位置に応じて、スキューと呼ばれる、円形のトラックの接線に対する磁気ヘッドの傾きが生じる。
【0007】
特に、長手磁気記録方式に比べて記録媒体への書き込み能力が高い垂直磁気記録方式の磁気ディスク装置では、上述のスキューが生じると、あるトラックへの信号の記録時に、記録対象のトラックに隣接する1以上のトラックに記録された信号が消去されたり減衰したりする現象(以下、隣接トラック消去と言う。)が生じる場合がある。高記録密度化のためには、隣接トラック消去の発生を抑制する必要がある。
【0008】
上述のようなスキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制する技術としては、例えば、特許文献1,2に記載されているように、媒体対向面における主磁極の端面の幅を、基板の上面に近づくに従って小さくする技術が知られている。また、特許文献1,2には、媒体対向面の近傍における主磁極の厚みを、媒体対向面に近づくに従って小さくする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−133610号公報
【特許文献2】特開2009−64539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、スキューに起因した問題の発生を防止するためには、媒体対向面における主磁極の厚みを小さくすることも効果的である。しかしながら、主磁極全体を薄くすると、磁束の流れる方向に対して垂直な主磁極の断面積が小さくなる。その結果、主磁極は、多くの磁束を媒体対向面まで導くことができなくなり、オーバーライト特性等の記録特性が低下してしまう。
【0011】
特許文献1,2に記載されているように、媒体対向面の近傍における主磁極の厚みを、媒体対向面に近づくに従って小さくすることにより、媒体対向面における主磁極の厚みを小さくすることができ、且つ主磁極のうちの媒体対向面から離れた部分の厚みを大きくして、主磁極によって多くの磁束を媒体対向面まで導くことが可能になる。
【0012】
また、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制すると共に記録密度を向上させるためには、特許文献2に記載されているように、媒体対向面において主磁極の端面に対して記録媒体の進行方向の前側に配置された端面を有する記録シールドを設けることが有効である。
【0013】
以上のことから、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制すると共に記録密度を向上させるための磁気ヘッドの構造としては、媒体対向面の近傍における主磁極の上面の一部と媒体対向面の近傍における主磁極の下端部の一部の少なくとも一方を、媒体対向面に垂直な方向に対して傾いた傾斜部にすると共に、この傾斜部に対向する傾斜面を有する記録シールドを設けた構造が考えられる。
【0014】
しかし、上記の構造では、主磁極の傾斜部と記録シールドの傾斜面とが広い領域において小さな間隔で対向していると、主磁極から記録シールドへの磁束の漏れが多くなり、オーバーライト特性等の記録特性が低下してしまうという問題が発生する。
【0015】
これを防止するために、媒体対向面に垂直な方向についての傾斜面の長さを小さくすることが考えられる。しかし、そうすると、記録シールドの体積が小さくなって、記録シールドの機能が損なわれてしまう。すなわち、記録シールドの体積が小さくなると、記録シールドにおいて磁束の飽和が生じやすくなる。すると、記録シールドから媒体対向面に向けて磁束が漏れて、この漏れた磁束によって、記録媒体に記録された情報が誤って消去されるという問題が発生する。
【0016】
このように、従来は、記録シールドを備えた磁気ヘッドにおいて、記録シールドの機能を損なうことなく、スキューに起因した問題の発生を防止し、且つ記録特性を向上させることが難しかった。
【0017】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、記録シールドの機能を損なうことなく、スキューに起因した問題の発生を防止し、且つ記録特性を向上させることができるようにした垂直磁気記録用磁気ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面と、コイルと、主磁極と、磁性材料よりなる記録シールドと、非磁性材料よりなるギャップ部とを備えている。コイルは、記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生する。主磁極は、媒体対向面に配置された端面を有し、コイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する。記録シールドは、媒体対向面に配置された端面を有している。ギャップ部は、主磁極と記録シールドとの間に設けられている。
【0019】
記録シールドの端面は、主磁極の端面に対して記録媒体の進行方向の前側に配置された第1の端面部分を含んでいる。主磁極は、記録媒体の進行方向の前側の端に位置する面である上面と、上面とは反対側の下端部とを有している。主磁極の上面と下端部の少なくとも一方は、傾斜部を含んでいる。傾斜部は、媒体対向面に配置された前端部と、その反対側の後端部とを有している。
【0020】
本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドでは、主磁極の端面の記録媒体の進行方向の前側に配置された端部を通り、媒体対向面および記録媒体の進行方向に垂直な第1の仮想の平面と、主磁極の端面の記録媒体の進行方向の後側に配置された端部を通り、媒体対向面および記録媒体の進行方向に垂直な第2の仮想の平面とを想定する。傾斜部は、後端部が前端部よりも第1および第2の仮想の平面からより遠い位置に配置されるように、第1および第2の仮想の平面および媒体対向面に対して傾斜している。
【0021】
記録シールドは、ギャップ部を介して傾斜部に対向する第1の傾斜面と、第1の傾斜面よりも媒体対向面からより遠い位置にある第2の傾斜面とを有している。第1の傾斜面は、媒体対向面に配置された第1の端部と、その反対側の第2の端部とを有し、第2の端部が第1の端部よりも第1および第2の仮想の平面からより遠い位置に配置されるように、第1および第2の仮想の平面および媒体対向面に対して傾斜している。第2の傾斜面は、第2の端部に接続された第3の端部と、その反対側の第4の端部とを有し、第4の端部が第3の端部よりも第1および第2の仮想の平面からより遠い位置に配置されるように、第1および第2の仮想の平面および媒体対向面に対して傾斜している。第2の傾斜面が媒体対向面に垂直な方向に対してなす角度は、第1の傾斜面が媒体対向面に垂直な方向に対してなす角度よりも大きい。第2の傾斜面上の任意の位置と主磁極との間の距離は、任意の位置が第4の端部に近づくに従って大きくなっている。
【0022】
本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドにおいて、第1の傾斜面が媒体対向面に垂直な方向に対してなす角度は、30°〜45°の範囲内であってもよいし、第2の傾斜面が媒体対向面に垂直な方向に対してなす角度は、50°〜65°の範囲内であってもよい。
【0023】
また、本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドにおいて、主磁極の下端部が傾斜部を含み、記録シールドの端面は、更に、主磁極の端面に対して記録媒体の進行方向の後側に配置された第2の端面部分を含んでいてもよい。この場合、磁気ヘッドは、更に、磁性材料よりなる帰磁路部を備えていてもよい。この帰磁路部は、主磁極に対して記録媒体の進行方向の後側に配置されて、主磁極、ギャップ部、記録シールドおよび帰磁路部によって囲まれた空間が形成されるように、主磁極のうちの媒体対向面から離れた部分と記録シールドとを接続している。コイルは、上記空間を通過する部分を含んでいてもよい。
【0024】
また、本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドにおいて、主磁極の上面が傾斜部を含んでいてもよい。この場合、磁気ヘッドは、更に、磁性材料よりなる帰磁路部を備えていてもよい。この帰磁路部は、主磁極に対して記録媒体の進行方向の前側に配置されて、主磁極、ギャップ部、記録シールドおよび帰磁路部によって囲まれた空間が形成されるように、主磁極のうちの媒体対向面から離れた部分と記録シールドとを接続している。コイルは、上記空間を通過する部分を含んでいてもよい。
【0025】
また、本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドにおいて、主磁極の下端部と上面が、それぞれ傾斜部を含み、記録シールドの端面は、更に、主磁極の端面に対して記録媒体の進行方向の後側に配置された第2の端面部分を含んでいてもよい。この場合、磁気ヘッドは、更に、磁性材料よりなる第1および第2の帰磁路部を備えていてもよい。第1の帰磁路部は、主磁極に対して記録媒体の進行方向の後側に配置されて、主磁極、ギャップ部、記録シールドおよび第1の帰磁路部によって囲まれた第1の空間が形成されるように、主磁極のうちの媒体対向面から離れた部分と記録シールドとを接続している。第2の帰磁路部は、主磁極に対して記録媒体の進行方向の前側に配置されて、主磁極、ギャップ部、記録シールドおよび第2の帰磁路部によって囲まれた第2の空間が形成されるように、主磁極のうちの媒体対向面から離れた部分と記録シールドとを接続している。コイルは、第1の空間を通過する第1の部分と、第2の空間を通過する第2の部分とを含んでいてもよい。
【0026】
また、本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドにおいて、記録シールドの端面は、更に、第2、第3および第4の端面部分を含んでいてもよい。第2の端面部分は、主磁極の端面に対して記録媒体の進行方向の後側に配置されている。第3および第4の端面部分は、主磁極の端面に対してトラック幅方向の両側に配置されている。
【発明の効果】
【0027】
本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドでは、第2の傾斜面が媒体対向面に垂直な方向に対してなす角度は、第1の傾斜面が媒体対向面に垂直な方向に対してなす角度よりも大きい。また、第2の傾斜面上の任意の位置と主磁極との間の距離は、任意の位置が第4の端部に近づくに従って大きくなっている。これらのことから、本発明によれば、記録シールドにおいて磁束の飽和が生じることを抑制しながら、主磁極から記録シールドへの磁束の漏れを抑制することができる。従って、本発明によれば、記録シールドの機能を損なうことなく、スキューに起因した問題の発生を防止し、且つ記録特性を向上させることが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドにおける主磁極の媒体対向面の近傍の部分と記録シールドを示す断面図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。
図3】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。
図4】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第1の部分を示す平面図である。
図5】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第2の部分の第1層を示す平面図である。
図6】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第2の部分の第2層を示す平面図である。
図7】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法における一工程を示す断面図である。
図8図7に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図9図8に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図10図9に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図11図10に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図12図11に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図13図12に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図14図13に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図15図14に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図16図15に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図17図16に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図18図17に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図19図18に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図20図19に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図21図20に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図22A図21に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図22B図21に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図23】本発明の第2の実施の形態に係る磁気ヘッドにおける主磁極の媒体対向面の近傍の部分と記録シールドを示す断面図である。
図24】本発明の第2の実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。
図25】本発明の第2の実施の形態に係る磁気ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。
図26】本発明の第2の実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法における一工程を示す断面図である。
図27図26に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図28図27に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図29図28に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図30図29に示した工程に続く工程を示す断面図である。
図31】本発明の第3の実施の形態に係る磁気ヘッドにおける主磁極の媒体対向面の近傍の部分と記録シールドを示す断面図である。
図32】本発明の第3の実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1ないし図6を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドの構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおける主磁極の媒体対向面の近傍の部分と記録シールドを示す断面図である。図2は、本実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。図1および図2において記号Tで示す矢印は、記録媒体の進行方向を表している。図3は、本実施の形態に係る磁気ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。図4は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第1の部分を示す平面図である。図5は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第2の部分の第1層を示す平面図である。図6は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第2の部分の第2層を示す平面図である。図3ないし図6において記号TWで示す矢印は、トラック幅方向を表している。
【0030】
図2および図3に示したように、本実施の形態に係る垂直磁気記録用磁気ヘッド(以下、単に磁気ヘッドと記す。)は、アルミニウムオキサイド・チタニウムカーバイド(Al23・TiC)等のセラミック材料よりなり、上面1aを有する基板1と、この基板1の上面1a上に配置されたアルミナ(Al23)等の絶縁材料よりなる絶縁層2と、この絶縁層2の上に配置された磁性材料よりなる第1の再生シールド層3と、第1の再生シールド層3を覆うように配置された絶縁膜である第1の再生シールドギャップ膜4と、この第1の再生シールドギャップ膜4の上に配置された再生素子としてのMR(磁気抵抗効果)素子5と、このMR素子5の上に配置された絶縁膜である第2の再生シールドギャップ膜6と、この第2の再生シールドギャップ膜6の上に配置された磁性材料よりなる第2の再生シールド層7とを備えている。
【0031】
MR素子5の一端部は、記録媒体に対向する媒体対向面80に配置されている。MR素子5には、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子あるいはTMR(トンネル磁気抵抗効果)素子等の磁気抵抗効果を示す感磁膜を用いた素子を用いることができる。GMR素子としては、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ平行な方向に流すCIP(Current In Plane)タイプでもよいし、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ垂直な方向に流すCPP(Current Perpendicular to Plane)タイプでもよい。
【0032】
第1の再生シールド層3から第2の再生シールド層7までの部分は、再生ヘッド部8を構成する。磁気ヘッドは、更に、第2の再生シールド層7の上に配置された非磁性材料よりなる非磁性層71と、非磁性層71の上に配置された磁性材料よりなる中間シールド層72と、中間シールド層72の上に配置された非磁性材料よりなる非磁性層73と、非磁性層73の上に配置された記録ヘッド部9とを備えている。中間シールド層72は、記録ヘッド部9で発生する磁界からMR素子5をシールドする機能を有している。非磁性層71,73は、例えばアルミナによって形成されている。記録ヘッド部9は、コイルと、主磁極15と、記録シールド16と、ギャップ部17とを有している。
【0033】
コイルは、記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生する。コイルは、第1の部分10と第2の部分20とを含んでいる。第1の部分10と第2の部分20は、いずれも、銅等の導電材料によって形成されている。第1の部分10と第2の部分20は、直列または並列に接続されている。主磁極15は、媒体対向面80に配置された端面を有し、コイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する。図1および図2は、媒体対向面80に配置された主磁極15の端面と交差し、媒体対向面80および基板1の上面1aに垂直な断面(以下、主断面と言う。)を示している。
【0034】
記録シールド16は、媒体対向面80に配置された端面を有している。記録シールド16の端面は、第1ないし第4の端面部分16Aa,16Ba,16Ca,16Daを含んでいる。第1の端面部分16Aaは、主磁極15の端面に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置されている。第2の端面部分16Baは、主磁極15の端面に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されている。第3および第4の端面部分16Ca,16Daは、主磁極15の端面に対してトラック幅方向TWの両側に配置されている。媒体対向面80において、第1ないし第4の端面部分16Aa,16Ba,16Ca,16Daは、主磁極15の端面の周りを囲むように配置されている。
【0035】
記録シールド16は、磁性材料によって形成されている。記録シールド16の材料としては、例えばCoFeN、CoNiFe、NiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。
【0036】
記録ヘッド部9は、更に、第1の帰磁路部30および第2の帰磁路部40を有している。第1および第2の帰磁路部30,40は、いずれも磁性材料によって形成されている。第1および第2の帰磁路部30,40の材料としては、例えばCoFeN、CoNiFe、NiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。第1の帰磁路部30と第2の帰磁路部40は、主磁極15を挟むように基板1の上面1aに垂直な方向に沿って並んでいる。第1の帰磁路部30は、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されて、主磁極15のうちの媒体対向面80から離れた部分と記録シールド16とを接続し、これにより、主磁極15と記録シールド16とを磁気的に連結している。第2の帰磁路部40は、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置されて、主磁極15のうちの媒体対向面80から離れた部分と記録シールド16とを接続し、これにより、主磁極15と記録シールド16とを磁気的に連結している。
【0037】
第1の帰磁路部30は、磁性層31,32,33,34,35,36を有している。磁性層31は、非磁性層73の上に配置されている。磁性層32,33は、いずれも磁性層31の上に配置されている。磁性層32は、媒体対向面80の近傍に配置されている。磁性層33は、磁性層32に対して、媒体対向面80からより遠い位置に配置されている。磁性層31,32は、それぞれ、媒体対向面80に向いた端面を有し、これらの端面は、媒体対向面80から離れた位置に配置されている。図4に示したように、コイルの第1の部分10は、磁性層33の周りに約3回巻かれている。
【0038】
磁気ヘッドは、更に、磁性層31の周囲において非磁性層73の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層51と、磁性層31〜33と第1の部分10との間に介在する絶縁材料よりなる絶縁膜52と、第1の部分10の巻線間に配置された絶縁材料よりなる絶縁層53と、第1の部分10および磁性層32の周囲に配置された絶縁材料よりなる絶縁層54とを備えている。第1の部分10、磁性層32,33、絶縁膜52および絶縁層53,54の上面は平坦化されている。絶縁層51,54および絶縁膜52は、例えばアルミナによって形成されている。絶縁層53は、例えばフォトレジストによって形成されている。
【0039】
磁性層34は、磁性層32および絶縁層54の上に配置されている。磁性層34は、媒体対向面80に配置された前端面と、その反対側の後端面と、上面と、上面と後端面とを接続する接続面とを有している。磁性層34の接続面における任意の位置の媒体対向面80からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aから離れるに従って小さくなっている。
【0040】
磁性層35は、磁性層33の上に配置されている。磁気ヘッドは、更に、第1の部分10、絶縁膜52および絶縁層53,54の上面の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層55と、磁性層34,35の周囲において絶縁層55の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層56とを備えている。磁性層34,35および絶縁層56の上面は、平坦化されている。絶縁層55,56は、例えばアルミナによって形成されている。
【0041】
図3に示したように、記録シールド16は、第1のシールド16Aと、第2のシールド16Bと、2つのサイドシールド16C,16Dとを有している。2つのサイドシールド16C,16Dは、主磁極15のトラック幅方向TWの両側に配置されている。第1のシールド16Aは、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置されている。第2のシールド16Bは、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されている。サイドシールド16C,16Dは、第1のシールド16Aと第2のシールド16Bを磁気的に連結している。
【0042】
図1および図3に示したように、第1のシールド16Aは、第1の端面部分16Aaと、下面である第1の傾斜面16Abと、上面16Acと、第1の端面部分16Aaと上面16Acとを接続する接続面16Adとを有している。接続面16Adにおける任意の位置の媒体対向面80からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aから離れるに従って大きくなっている。第2のシールド16Bは、第2の端面部分16Baと、第1の傾斜面16Bbと、第2の傾斜面16Bcとを有している。第1および第2の傾斜面16Bb,16Bcは、主磁極15に向いている。第2の傾斜面16Bcは、第1の傾斜面16Bbよりも媒体対向面80からより遠い位置にあり且つ第1の傾斜面16Bbに連続している。傾斜面16Ab,16Bb,16Bcの形状および配置については、後で詳しく説明する。図3に示したように、サイドシールド16Cは、第3の端面部分16Caを有している。サイドシールド16Dは、第4の端面部分16Daを有している。
【0043】
第2のシールド16Bは、磁性層34の上に配置されている。磁性層36は、磁性層35の上に配置されている。磁気ヘッドは、更に、非磁性材料よりなる非磁性層57を備えている。非磁性層57は、第2のシールド16Bおよび磁性層36の周囲において、磁性層34の上面の一部の上および絶縁層56の上面の上に配置されている。図1に示したように、非磁性層57の上面は、第2のシールド16Bの第1の傾斜面16Bbに連続する平坦部と、この平坦部に連続し平坦部よりも媒体対向面80からより遠い位置に配置された傾斜面と、この傾斜面に連続し傾斜面よりも媒体対向面80からより遠い位置に配置された底部とを含んでいる。非磁性層57は、例えばアルミナによって形成されている。
【0044】
主磁極15は、記録媒体の進行方向Tの前側の端に位置する面である上面15T(図1参照)と、上面15Tとは反対側の下端部15L(図1参照)と、トラック幅方向TWの両側に配置された第1および第2の側部(図3参照)とを有している。サイドシールド16Cは、主磁極15の第1の側部に対向する第1の側壁を有している。サイドシールド16Dは、主磁極15の第2の側部に対向する第2の側壁を有している。
【0045】
ギャップ部17は、主磁極15と記録シールド16との間に設けられている。磁気ヘッドは、更に、非磁性材料よりなり、その一部がギャップ部17の一部を構成する第1のギャップ層19と、非磁性材料よりなり、その一部がギャップ部17の他の一部を構成する第2のギャップ層18とを備えている。第1のギャップ層19のうち、ギャップ部17の一部を構成する部分は、主磁極15と第1のシールド16Aとの間に配置されている。第2のギャップ層18のうち、ギャップ部17の他の一部を構成する部分は、主磁極15と第2のシールド16Bおよびサイドシールド16C,16Dとの間に配置されている。
【0046】
サイドシールド16C,16Dは、第2のシールド16Bの上に配置され、第2のシールド16Bの第1の傾斜面16Bbに接している。第2のギャップ層18は、サイドシールド16C,16Dの側壁、第2のシールド16Bの第1の傾斜面16Bbおよび非磁性層57の上面に沿って配置されている。第2のギャップ層18を構成する非磁性材料は、絶縁材料でもよいし、非磁性金属材料でもよい。第2のギャップ層18を構成する絶縁材料としては、例えばアルミナが用いられる。第2のギャップ層18を構成する非磁性金属材料としては、例えばRuが用いられる。
【0047】
主磁極15は、第2のシールド16Bの第1の傾斜面16Bbおよび非磁性層57の上面と主磁極15との間に第2のギャップ層18が介在するように、第2のシールド16Bおよび非磁性層57の上に配置されている。また、図3に示したように、主磁極15とサイドシールド16C,16Dとの間にも、第2のギャップ層18が介在している。
【0048】
媒体対向面80から離れた位置において、主磁極15の下端部15Lは、磁性層36の上面に接している。主磁極15は、金属磁性材料によって形成されている。主磁極15の材料としては、例えば、NiFe、CoNiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。主磁極15の形状については、後で詳しく説明する。
【0049】
磁気ヘッドは、更に、主磁極15およびサイドシールド16C,16Dの周囲に配置された非磁性材料よりなる図示しない第1の非磁性層を備えている。本実施の形態では、特に、第1の非磁性層は、アルミナ等の非磁性絶縁材料よりなる。
【0050】
磁気ヘッドは、更に、媒体対向面80から離れた位置において、主磁極15の上面15Tの一部の上に配置された非磁性金属材料よりなる非磁性金属層58と、この非磁性金属層58の上面の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層59とを備えている。非磁性金属層58は、例えばRu、NiCrまたはNiCuによって形成されている。絶縁層59は、例えばアルミナによって形成されている。
【0051】
第1のギャップ層19は、主磁極15、非磁性金属層58および絶縁層59を覆うように配置されている。第1のギャップ層19の材料は、アルミナ等の非磁性絶縁材料でもよいし、Ru、NiCu、Ta、W、NiB、NiP等の非磁性導電材料でもよい。
【0052】
第1のシールド16Aは、サイドシールド16C,16Dおよび第1のギャップ層19の上に配置され、サイドシールド16C,16Dおよび第1のギャップ層19の上面に接している。媒体対向面80において、第1のシールド16Aの第1の端面部分16Aaの一部は、主磁極15の端面に対して、第1のギャップ層19の厚みによる所定の間隔を開けて配置されている。第1のギャップ層19の厚みは、5〜60nmの範囲内であることが好ましく、例えば30〜60nmの範囲内である。主磁極15の端面は、第1のギャップ層19に隣接する辺を有し、この辺はトラック幅を規定している。
【0053】
第2の帰磁路部40は、磁性層41,42,43,44を有している。磁性層41は、媒体対向面80から離れた位置において主磁極15の上に配置されている。
【0054】
コイルの第2の部分20は、第1層21および第2層22を含んでいる。図5に示したように、第1層21は、磁性層41の周りに1回巻かれている。磁気ヘッドは、更に、第1のシールド16A、第1のギャップ層19および磁性層41と第1層21との間に介在する絶縁材料よりなる絶縁膜61と、第1層21および第1のシールド16Aの周囲に配置された非磁性材料よりなる図示しない第2の非磁性層とを備えている。絶縁膜61は、例えばアルミナによって形成されている。第2の非磁性層は、例えば無機絶縁材料によって形成されている。この無機絶縁材料としては、例えばアルミナまたはシリコン酸化物が用いられる。第1のシールド16A、第1層21、磁性層41、絶縁膜61および第2の非磁性層の上面は平坦化されている。
【0055】
磁気ヘッドは、更に、第1層21および絶縁膜61の上面ならびに磁性層41の上面の一部の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層62を備えている。絶縁層62は、例えばアルミナによって形成されている。
【0056】
磁性層42は、第1のシールド16Aの上に配置されている。また、磁性層42は、媒体対向面80に向いた端面を有し、この端面は、媒体対向面80から離れた位置に配置されている。磁性層42の端面における任意の位置の媒体対向面80からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aから離れるに従って大きくなっている。
【0057】
磁性層43は、磁性層41の上に配置されている。図6に示したように、第2層22は、磁性層43の周りに約2回巻かれている。磁気ヘッドは、更に、磁性層42,43および絶縁層62と第2層22との間に介在する絶縁材料よりなる絶縁膜63と、第2層22の巻線間に配置された絶縁材料よりなる絶縁層64と、第2層22および磁性層42の周囲に配置された絶縁材料よりなる絶縁層65とを備えている。第2層22、磁性層42,43、絶縁膜63および絶縁層64,65の上面は平坦化されている。磁気ヘッドは、更に、第2層22、絶縁膜63および絶縁層64の上面の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層66を備えている。絶縁膜63および絶縁層65,66は、例えばアルミナによって形成されている。絶縁層64は、例えばフォトレジストによって形成されている。
【0058】
磁性層44は、磁性層42,43および絶縁層66の上に配置され、磁性層42と磁性層43とを接続している。磁性層44は、媒体対向面80に向いた端面を有し、この端面は、媒体対向面80から離れた位置に配置されている。磁性層44の端面における任意の位置の媒体対向面80からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aから離れるに従って大きくなっている。
【0059】
磁気ヘッドは、更に、磁性層44の周囲に配置された絶縁材料よりなる絶縁層67と、非磁性材料よりなり、記録ヘッド部9を覆うように配置された保護層70とを備えている。絶縁層67は、例えばアルミナによって形成されている。保護層70は、例えば、アルミナ等の無機絶縁材料によって形成されている。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態に係る磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面80と再生ヘッド部8と記録ヘッド部9とを備えている。再生ヘッド部8と記録ヘッド部9は、基板1の上に積層されている。再生ヘッド部8は、記録ヘッド部9に対して、記録媒体の進行方向Tの後側(リーディング側)に配置されている。
【0061】
記録ヘッド部9は、第1および第2の部分10,20を含むコイルと、主磁極15と、記録シールド16と、ギャップ部17と、第1および第2の帰磁路部30,40とを有している。記録シールド16は、第1のシールド16Aと、第2のシールド16Bと、2つのサイドシールド16C,16Dとを有している。ギャップ部17は、第1のギャップ層19の一部および第2のギャップ層18の一部によって構成されている。第1の帰磁路部30と第2の帰磁路部40は、主磁極15を挟むように基板1の上面1aに垂直な方向に沿って並んでいる。
【0062】
第1の帰磁路部30は、磁性層31〜36を有し主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されている。図2に示したように、第1の帰磁路部30は、主磁極15、ギャップ部17(ギャップ層18)、記録シールド16および第1の帰磁路部30(磁性層31〜36)によって囲まれた第1の空間S1が形成されるように、主磁極15のうちの媒体対向面80から離れた部分と記録シールド16とを接続している。コイルの第1の部分10は、第1の空間S1を通過する。
【0063】
磁性層31は、第1の空間S1よりも基板1の上面1aにより近い位置にある。磁性層32は、媒体対向面80に向くと共に媒体対向面80から離れた位置に配置された端面を有している。磁性層32の上記端面と媒体対向面80との間には絶縁層54の一部が介在している。磁性層32は、媒体対向面80に露出することなく、第1の空間S1と媒体対向面80との間に位置して、磁性層31に接続されている。磁性層34は、記録シールド16の第2のシールド16Bと磁性層32とを磁気的に連結している。前記主断面において、磁性層34は、媒体対向面80に垂直な方向について第2のシールド16Bよりも大きな長さを有している。磁性層33,35,36は、第1の空間S1よりも媒体対向面80からより遠い位置にあって、主磁極15と磁性層31とを磁気的に連結している。
【0064】
第2の帰磁路部40は、磁性層41〜44を有し、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置されている。第2の帰磁路部40は、主磁極15、ギャップ部17(ギャップ層19)、記録シールド16および第2の帰磁路部40(磁性層41〜44)によって囲まれた第2の空間S2が形成されるように、主磁極15のうちの媒体対向面80から離れた部分と記録シールド16とを接続している。コイルの第2の部分20は、第2の空間S2を通過する。
【0065】
以下、図4ないし図6を参照して、コイルの第1および第2の部分10,20について詳しく説明する。図4は、第1の部分10を示す平面図である。第1の部分10は、第1の帰磁路部30の一部である磁性層33の周りに約3回巻かれている。第1の部分10は、第1の空間S1内のうち特に磁性層32と磁性層33との間を通過するように延びる部分を含んでいる。また、第1の部分10は、第2の部分20に電気的に接続されたコイル接続部10Eを有している。
【0066】
図5は、第2の部分20の第1層21を示す平面図である。第1層21は、第2の帰磁路部40の一部である磁性層41の周りに1回巻かれている。第1層21は、第2の空間S2内のうち特に第1のシールド16Aと磁性層41との間を通過するように延びる部分を含んでいる。また、第1層21は、第1の部分10のコイル接続部10Eに電気的に接続されたコイル接続部21Sと、第2層22に電気的に接続されたコイル接続部21Eとを有している。コイル接続部21Sは、第1層21と第1の部分10との間の複数の層を貫通する図示しない柱状の第1ないし第3の接続層を介してコイル接続部10Eに電気的に接続されている。第1ないし第3の接続層は、コイル接続部10Eの上に順に積層されている。コイル接続部21Sは、第3の接続層の上に配置されている。第1ないし第3の接続層は、銅等の導電材料によって形成されている。
【0067】
図6は、第2の部分20の第2層22を示す平面図である。第2層22は、第2の帰磁路部40の一部である磁性層43の周りに約2回巻かれている。第2層22は、第2の空間S2内のうち特に磁性層42と磁性層43との間を通過するように延びる部分を含んでいる。また、第2層22は、絶縁層62および絶縁膜63を貫通して第1層21のコイル接続部21Eに電気的に接続されたコイル接続部22Sを有している。図4ないし図6に示した例では、第1の部分10と第2の部分20は、直列に接続されている。
【0068】
次に、図1図3ないし図6を参照して、主磁極15の形状について詳しく説明する。図4ないし図6に示したように、主磁極15は、媒体対向面80に配置された端面とその反対側の端部とを有するトラック幅規定部15Aと、トラック幅規定部15Aの端部に接続された幅広部15Bとを含んでいる。また、図1および図3に示したように、主磁極15は、記録媒体の進行方向Tの前側の端に位置する面である上面15Tと、上面15Tとは反対側の下端部15Lと、第1の側部と、第2の側部とを有している。幅広部15Bにおける上面15Tのトラック幅方向TWの幅は、トラック幅規定部15Aにおける上面15Tのトラック幅方向TWの幅よりも大きい。
【0069】
トラック幅規定部15Aにおける上面15Tのトラック幅方向TWの幅は、媒体対向面80からの距離によらずにほぼ一定である。幅広部15Bにおける上面15Tのトラック幅方向TWの幅は、例えば、トラック幅規定部15Aとの境界位置ではトラック幅規定部15Aにおける上面15Tのトラック幅方向TWの幅と等しく、媒体対向面80から離れるに従って、徐々に大きくなった後、一定の大きさになっている。ここで、媒体対向面80に垂直な方向についてのトラック幅規定部15Aの長さをネックハイトと呼ぶ。ネックハイトは、例えば0〜0.3μmの範囲内である。ネックハイトが0の場合は、トラック幅規定部15Aがなく、幅広部15Bの端面が媒体対向面80に配置される。
【0070】
主磁極15の上面15Tと下端部15Lの少なくとも一方は、傾斜部を含んでいる。この傾斜部は、媒体対向面80に配置された前端部と、その反対側の後端部とを有している。本実施の形態では特に、上面15Tと下端部15Lの両方が、上記の傾斜部に対応する第1の傾斜部を含んでいる。本実施の形態では、上面15Tと下端部15Lは、それぞれ、媒体対向面80に近い順に、第1の傾斜部に連続するように配置された第1の平坦部、第2の傾斜部および第2の平坦部を含んでいる。以下、上面15Tにおける第1の傾斜部、第1の平坦部、第2の傾斜部および第2の平坦部を、それぞれ記号15T1,15T2,15T3,15T4で表し、下端部15Lにおける第1の傾斜部、第1の平坦部、第2の傾斜部および第2の平坦部を、それぞれ記号15L1,15L2,15L3,15L4で表す。
【0071】
上面15Tの第1の平坦部15T2は、第1の傾斜部15T1の後端部に接続されている。第2の傾斜部15T3は、第1の平坦部15T2に接続された前端部と、この前端部よりも媒体対向面80からより遠い位置に配置された後端部とを有している。第2の平坦部15T4は、第2の傾斜部15T3の後端部に接続されている。
【0072】
下端部15Lの第1の平坦部15L2は、第1の傾斜部15L1の後端部に接続されている。第2の傾斜部15L3は、第1の平坦部15L2に接続された前端部と、この前端部よりも媒体対向面80からより遠い位置に配置された後端部とを有している。第1の傾斜部15L1、第1の平坦部15L2および第2の傾斜部15L3は、2つの面が交わってできるエッジでもよいし、2つの面を連結する面でもよい。第2の平坦部15L4は、第2の傾斜部15L3の後端部に接続された面である。
【0073】
主磁極15の端面は、記録媒体の進行方向Tの前側に配置された端部と記録媒体の進行方向Tの後側に配置された端部とを有している。主磁極15の端面の記録媒体の進行方向Tの前側に配置された端部は、上面15Tの第1の傾斜部15T1の前端部でもある。主磁極15の端面の記録媒体の進行方向Tの後側に配置された端部は、下端部15Lの第1の傾斜部15L1の前端部でもある。ここで、図1に示したように、主磁極15の端面の記録媒体の進行方向Tの前側に配置された端部(第1の傾斜部15T1の前端部)を通り、媒体対向面80および記録媒体の進行方向Tに垂直な第1の仮想の平面P1と、主磁極15の端面の記録媒体の進行方向Tの後側に配置された端部(第1の傾斜部15L1の前端部)を通り、媒体対向面80および記録媒体の進行方向Tに垂直な第2の仮想の平面P2とを想定する。
【0074】
上面15Tの第1および第2の傾斜部15T1,15T3は、それぞれ、その後端部がその前端部よりも第1および第2の仮想の平面P1,P2からより遠い位置に配置されるように、第1および第2の仮想の平面P1,P2および媒体対向面80に対して傾斜している。すなわち、第1および第2の傾斜部15T1,15T3は、それぞれ、その後端部がその前端部に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置されるように傾斜している。第1および第2の平坦部15T2,15T4は、実質的に第1および第2の仮想の平面P1,P2に平行である。
【0075】
下端部15Lの第1および第2の傾斜部15L1,15L3は、それぞれ、その後端部がその前端部よりも第1および第2の仮想の平面P1,P2からより遠い位置に配置されるように、第1および第2の仮想の平面P1,P2および媒体対向面80に対して傾斜している。すなわち、第1および第2の傾斜部15L1,15L3は、その後端部がその前端部に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されるように傾斜している。第1および第2の平坦部15L2,15L4は、実質的に第1および第2の仮想の平面P1,P2に平行である。
【0076】
媒体対向面80に配置された主磁極15の端面は、第1のギャップ層19に隣接する第1の辺と、第1の辺の一端部に接続された第2の辺と、第1の辺の他端部に接続された第3の辺とを有している。第1の辺は、主磁極15の端面の記録媒体の進行方向Tの前側に配置された端部でもあり、上面15Tの第1の傾斜部15T1の前端部でもある。第1の辺はトラック幅を規定する。記録媒体に記録される記録ビットの端部の位置は、第1の辺の位置によって決まる。媒体対向面80に配置された主磁極15の端面のトラック幅方向TWの幅は、第1の辺から離れるに従って、すなわち第1の仮想の平面P1から離れるに従って小さくなっている。第2の辺と第3の辺がそれぞれ第1の仮想の平面P1に垂直な方向に対してなす角度は、例えば7°〜17°の範囲内であり、10°〜15°の範囲内であることが好ましい。第1の辺の長さは、例えば0.05〜0.20μmの範囲内である。
【0077】
次に、図1を参照して、第1の傾斜面16Ab、第1の傾斜面16Bbおよび第2の傾斜面16Bcの形状および配置について詳しく説明する。第1の傾斜面16Abは、ギャップ部17(第1のギャップ層19)を介して上面15Tの第1の傾斜部15T1に対向している。また、第1の傾斜面16Abは、媒体対向面80に配置された第1の端部EA1と、その反対側の第2の端部EA2とを有している。第1の傾斜面16Abは、第2の端部EA2が第1の端部EA1よりも第1および第2の仮想の平面P1,P2からより遠い位置に配置されるように、第1および第2の仮想の平面P1,P2および媒体対向面80に対して傾斜している。すなわち、第1の傾斜面16Abは、第2の端部EA2が第1の端部EA1に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置されるように傾斜している。
【0078】
また、第1の傾斜面16Bbは、ギャップ部17(第2のギャップ層18)を介して下端部15Lの第1の傾斜部15L1に対向している。また、第1の傾斜面16Bbは、媒体対向面80に配置された第1の端部EB1と、その反対側の第2の端部EB2とを有している。第1の傾斜面16Bbは、第2の端部EB2が第1の端部EB1よりも第1および第2の仮想の平面P1,P2からより遠い位置に配置されるように、第1および第2の仮想の平面P1,P2および媒体対向面80に対して傾斜している。すなわち、第1の傾斜面16Bbは、第2の端部EB2が第1の端部EB1に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されるように傾斜している。
【0079】
第2の傾斜面16Bcは、第2の端部EB2に接続された第3の端部EB3と、その反対側の第4の端部EB4とを有している。第2の傾斜面16Bcは、第4の端部EB4が第3の端部EB3よりも第1および第2の仮想の平面P1,P2からより遠い位置に配置されるように、第1および第2の仮想の平面P1,P2および媒体対向面80に対して傾斜している。すなわち、第2の傾斜面16Bcは、第4の端部EB4が第3の端部EB3に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されるように傾斜している。
【0080】
ここで、図1に示したように、第1の傾斜面16Bbが媒体対向面80に垂直な方向に対してなす角度を記号θ1で表し、第2の傾斜面16Bcが媒体対向面80に垂直な方向に対してなす角度を記号θ2で表す。角度θ2は、角度θ1よりも大きい。角度θ1は、30°〜45°の範囲内であることが好ましい。角度θ2は、50°〜65°の範囲内であることが好ましい。第2の傾斜面16Bc上の任意の位置と主磁極15との間の距離は、任意の位置が第4の端部EB4に近づくに従って大きくなっている。
【0081】
次に、本実施の形態に係る磁気ヘッドの作用および効果について説明する。この磁気ヘッドでは、記録ヘッド部9によって記録媒体に情報を記録し、再生ヘッド部8によって、記録媒体に記録されている情報を再生する。記録ヘッド部9において、第1および第2の部分10,20を含むコイルは、記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生する。第1の部分10によって発生された磁界に対応する磁束は、第1の帰磁路部30と主磁極15を通過する。第2の部分20によって発生された磁界に対応する磁束は、第2の帰磁路部40と主磁極15を通過する。従って、主磁極15は、第1の部分10によって発生された磁界に対応する磁束と第2の部分20によって発生された磁界に対応する磁束とを通過させる。
【0082】
なお、第1および第2の部分10,20は、直列に接続されていてもよいし、並列に接続されていてもよい。いずれにしても、主磁極15において、第1の部分10によって発生された磁界に対応する磁束と第2の部分20によって発生された磁界に対応する磁束が同じ方向に流れるように、第1および第2の部分10,20は接続される。
【0083】
主磁極15は、上述のようにコイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させて、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する。
【0084】
記録シールド16は、磁気ヘッドの外部から磁気ヘッドに印加された外乱磁界を取り込む。これにより、外乱磁界が主磁極15に集中して取り込まれることによって記録媒体に対して誤った記録が行なわれることを防止することができる。また、記録シールド16は、主磁極15の端面より発生されて記録媒体の面に垂直な方向以外の方向に広がる磁束を取り込んで、この磁束が記録媒体に達することを阻止する機能を有している。
【0085】
また、記録シールド16と第1および第2の帰磁路部30,40は、主磁極15の端面より発生されて、記録媒体を磁化した磁束を還流させる機能を有している。具体的に説明すると、主磁極15の端面より発生されて、記録媒体を磁化した磁束の一部は、記録シールド16と第1の帰磁路部30を通過して主磁極15に還流する。また、主磁極15の端面より発生されて、記録媒体を磁化した磁束の他の一部は、記録シールド16と第2の帰磁路部40を通過して主磁極15に還流する。
【0086】
記録シールド16は、第1のシールド16Aと、第2のシールド16Bと、2つのサイドシールド16C,16Dとを有している。これにより、本実施の形態によれば、主磁極15の端面に対して記録媒体の進行方向Tの前側および後側ならびにトラック幅方向TWの両側において、主磁極15の端面より発生されて記録媒体の面に垂直な方向以外の方向に広がる磁束を取り込んで、この磁束が記録媒体に達することを抑制することができる。その結果、本実施の形態によれば、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制することができる。第1および第2のシールド16A,16Bは、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制することに寄与する他に、記録磁界の勾配を大きくすることに寄与する。サイドシールド16C,16Dは、特に隣接トラック消去を抑制することへの寄与が大きい。このような記録シールド16の機能により、本実施の形態によれば、記録密度を高めることができる。
【0087】
また、本実施の形態では、図3に示したように、媒体対向面80において、トラック幅方向TWにおける主磁極15の第1および第2の側部の間隔すなわち主磁極15の端面の幅は、第1の仮想の平面P1から離れるに従って小さくなっている。本実施の形態によれば、この特徴によっても、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制することができる。
【0088】
また、本実施の形態では、媒体対向面80において、トラック幅方向TWにおけるサイドシールド16C,16Dにおける第1および第2の側壁の間隔は、主磁極15の第1および第2の側部の間隔と同様に、第1の仮想の平面P1から離れるに従って小さくなっている。従って、本実施の形態によれば、媒体対向面80において、第1の側部と第1の側壁との間隔、ならびに第2の側部と第2の側壁との間隔を、小さく、且つ均一にすることが可能になる。これにより、サイドシールド16C,16Dによって、主磁極15の端面より発生されてトラック幅方向TWの両側に広がる磁束を、効果的に取り込むことができる。その結果、本実施の形態によれば、特にサイドシールド16C,16Dの機能を高めることが可能になり、スキューに起因した隣接トラック消去の発生をより効果的に抑制することが可能になる。
【0089】
ところで、記録シールド16で取り込んだ磁束を吸収できるような、体積が大きい磁性層が記録シールド16に磁気的に接続されていないと、記録シールド16によって多くの磁束を取り込むことはできない。本実施の形態では、記録シールド16の第2のシールド16Bと主磁極15とを磁気的に連結する第1の帰磁路部30(磁性層31〜36)と、記録シールド16の第1のシールド16Aと主磁極15とを磁気的に連結する第2の帰磁路部40(磁性層41〜44)を備えている。このような構成により、記録シールド16で取り込んだ磁束は、第1および第2の帰磁路部30,40を経由して主磁極15に流れ込む。本実施の形態では、記録シールド16に対して、体積が大きい磁性層である第1および第2の帰磁路部30,40と主磁極15が磁気的に接続されている。従って、本実施の形態によれば、記録シールド16によって多くの磁束を取り込むことが可能になり、その結果、前述の記録シールド16の効果を効果的に発揮させることができる。
【0090】
また、もし、第1の帰磁路部が、媒体対向面80において広い面積にわたって露出した端面を有していると、記録シールド16の端面から記録シールド16内へ取り込まれて第1の帰磁路部に到達した磁束の一部が、第1の帰磁路部の端面から記録媒体に向けて漏れ出すおそれがある。そして、これにより、隣接トラック消去が生じるおそれがある。また、コイルの第1の部分10が発生する熱によって、第1の帰磁路部の一部が膨張し、その結果、媒体対向面80の一部である第1の帰磁路部の端面が記録媒体に向けて突出するおそれがある。そして、これにより、主磁極15の端面や再生ヘッド部8における媒体対向面80に位置する端部が記録媒体から遠ざかってしまい、記録特性や再生特性が劣化するおそれがある。
【0091】
これに対し、本実施の形態では、第1の帰磁路部30は、媒体対向面80において広い面積にわたって露出した端面を有していない。すなわち、本実施の形態では、第1の帰磁路部30の一部である磁性層32は、媒体対向面80に露出することなく、第1の空間S1と媒体対向面80との間に位置して、磁性層31に接続されている。磁性層34は、記録シールド16の第2のシールド16Bと磁性層32とを磁気的に連結している。特に、本実施の形態では、前記主断面において、磁性層34は、媒体対向面80に垂直な方向について第2のシールド16Bよりも大きな長さを有している。これにより、第1の帰磁路部30の媒体対向面80に露出した端面の面積を小さくしながら、第1の帰磁路部30を記録シールド16に接続することができる。その結果、本実施の形態によれば、第1の帰磁路部の端面が媒体対向面80において広い面積にわたって露出することによる上述の問題を回避することができる。すなわち、本実施の形態によれば、第1の帰磁路部30から記録媒体に向けて磁束が漏れ出すことと、磁性層32の近傍における媒体対向面80の一部が突出することを抑制することができる。
【0092】
本実施の形態では特に、磁性層32と媒体対向面80との間に、磁性層32よりも硬い絶縁層54が存在している。この絶縁層54は、磁性層32よりも広い領域に存在している。そのため、絶縁層54は、第1の部分10が発生する熱による磁性層32の位置の変化を抑制する機能を有する。よって、本実施の形態によれば、磁性層32の近傍における媒体対向面80の一部が突出することを、より効果的に抑制することができる。
【0093】
また、本実施の形態では、主磁極15の上面15Tは、第1および第2の仮想の平面P1,P2および媒体対向面80に対して傾斜した第1および第2の傾斜部15T1,15T3を含み、主磁極15の下端部15Lは、第1および第2の仮想の平面P1,P2および媒体対向面80に対して傾斜した第1および第2の傾斜部15L1,15L3を含んでいる。これにより、本実施の形態によれば、媒体対向面80における主磁極15の厚みを小さくすることができることから、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制することができる。また、媒体対向面80から離れた位置では主磁極15の厚みを大きくすることができることから、主磁極15によって多くの磁束を媒体対向面80まで導くことができ、その結果、オーバーライト特性等の記録特性を向上させることができる。
【0094】
また、本実施の形態では、記録シールド16の第2のシールド16Bは、第1および第2の仮想の平面P1,P2および媒体対向面80に対して傾斜した第1および第2の傾斜面16Bb,16Bcを有している。第2の傾斜面16Bcが媒体対向面80に垂直な方向に対してなす角度θ2は、第1の傾斜面16Bbが媒体対向面80に垂直な方向に対してなす角度θ1よりも大きい。もし、角度θ2が角度θ1と等しい場合には、広い領域において、第1および第2の傾斜部15L1,15L3と第1および第2の傾斜面16Bb,16Bcとが小さな間隔で対向し、その結果、主磁極15から第2のシールド16Bへの磁束の漏れが多くなり、オーバーライト特性等の記録特性が低下してしまうという問題が発生する。これを防止するために、角度θ2を90°にすると、第2のシールド16Bの体積が小さくなって、記録シールド16の機能が損なわれてしまう。すなわち、第2のシールド16Bの体積が小さくなると、第2のシールド16Bで磁束の飽和が生じやすくなる。すると、第2のシールド16Bから媒体対向面80に向けて磁束が漏れて、この漏れた磁束によって、記録媒体に記録された情報が誤って消去されるという問題が発生する。
【0095】
本実施の形態では、第2の傾斜面16Bcを第1および第2の仮想の平面P1,P2および媒体対向面80に対して傾斜させることにより、角度θ2が90°の場合に比べて、第2のシールド16Bの体積を大きくすることができ、その結果、記録シールド16において磁束の飽和が生じることを抑制することができる。また、本実施の形態では、角度θ2が角度θ1よりも大きく、且つ、第2の傾斜面16Bc上の任意の位置と主磁極15との間の距離は、任意の位置が第4の端部EB4に近づくに従って大きくなっている。これにより、上述のように記録シールド16において磁束の飽和が生じることを抑制しながら、主磁極15から第2のシールド16Bへの磁束の漏れを抑制することが可能になる。従って、本実施の形態によれば、記録シールド16(第2のシールド16B)の機能を損なうことなく、スキューに起因した問題の発生を防止し、且つ記録特性を向上させることが可能になる。
【0096】
次に、図7ないし図21図22Aおよび図22Bを参照して、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法について説明する。図7ないし図21図22Aおよび図22Bは、磁気ヘッドの製造過程における積層体を示している。なお、図16ないし図21では、非磁性層73よりも下の部分を省略している。図7ないし図21の(a)および図22Aは、それぞれ、前記主断面を表している。図7ないし図21の(b)および図22Bは、それぞれ、媒体対向面80が形成される予定の位置の断面を示している。図7ないし図21の(a)および図22Aにおいて、記号“ABS”は、媒体対向面80が形成される予定の位置を表している。
【0097】
本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法では、まず、図7に示したように、基板1の上に、絶縁層2、第1の再生シールド層3、第1の再生シールドギャップ膜4を順に形成する。次に、第1の再生シールドギャップ膜4の上にMR素子5と、このMR素子5に接続される図示しないリードとを形成する。次に、MR素子5およびリードを、第2の再生シールドギャップ膜6で覆う。次に、第2の再生シールドギャップ膜6の上に第2の再生シールド層7、非磁性層71、中間シールド層72を順に形成する。
【0098】
図8は、次の工程を示す。この工程では、まず、中間シールド層72の上に非磁性層73を形成する。次に、例えばフレームめっき法によって、非磁性層73の上に磁性層31を形成する。次に、積層体の上面全体の上に絶縁層51を形成する。次に、例えば化学機械研磨(以下、CMPと記す。)によって、磁性層31が露出するまで、絶縁層51を研磨して、磁性層31および絶縁層51の上面を平坦化する。次に、例えばフレームめっき法によって、磁性層31の上に磁性層32,33を形成する。次に、積層体の上面全体の上に、絶縁膜52を形成する。絶縁膜52の材料としてアルミナを用いる場合には、例えば原子層堆積法によって、絶縁膜52を形成する。
【0099】
図9は、次の工程を示す。この工程では、まず、例えばフレームめっき法によって、コイルの第1の部分10を形成する。次に、第1の部分10の巻線間に絶縁層53を形成する。第1の部分10および絶縁層53は、その上面が絶縁膜52のうち磁性層32,33の上に配置された部分よりも上方に配置されるように形成される。次に、積層体の上面全体の上に絶縁層54を形成する。次に、例えばCMPによって、磁性層32,33が露出するまで、第1の部分10、絶縁膜52および絶縁層53,54を研磨して、第1の部分10、磁性層32,33、絶縁膜52および絶縁層53,54の上面を平坦化する。
【0100】
次に、積層体の上面全体の上に、絶縁層55を形成する。次に、例えばイオンビームエッチング(以下、IBEと記す。)によって、磁性層32,33の上面、絶縁層54の上面の一部および第1の部分10のコイル接続部10E(図4参照)が露出するように、絶縁層55を選択的にエッチングする。
【0101】
図10は、次の工程を示す。この工程では、まず、例えばフレームめっき法によって、磁性層32および絶縁層54の上に磁性層34を形成し、磁性層33の上に磁性層35を形成し、第1の部分10のコイル接続部10Eの上に図示しない第1の接続層を形成する。次に、例えばIBEによって、磁性層34に前述の接続面が形成されるように、磁性層34の一部をテーパーエッチングする。次に、積層体の上面全体の上に絶縁層56を形成する。次に、例えばCMPによって、磁性層34,35および第1の接続層が露出するまで、絶縁層56を研磨して、磁性層32,33、第1の接続層および絶縁層56の上面を平坦化する。
【0102】
図11は、次の工程を示す。この工程では、例えばフレームめっき法によって、磁性層34の上に、後に第2のシールド16Bとなる磁性層16BPを形成し、磁性層35の上に磁性層36を形成し、第1の接続層の上に図示しない第2の接続層を形成する。
【0103】
図12は、次の工程を示す。この工程では、まず、磁性層16BPに、後に第2の傾斜面16Bcとなる部分を含む傾斜面16BPaが形成されるように、例えばIBEを用いて、磁性層16BPの一部をテーパーエッチングする。次に、積層体の上面全体の上に非磁性層57を形成する。次に、例えばCMPによって、磁性層16BP,36および第2の接続層が露出するまで非磁性層57を研磨して、磁性層16BP,36、第2の接続層および非磁性層57の上面を平坦化する。
【0104】
図13は、次の工程を示す。この工程では、磁性層16BPの傾斜面16BPaのうち、後に第1の傾斜面16Bbが形成される領域が露出するように、例えば反応性イオンエッチング(以下、RIEと記す。)を用いて、非磁性層57の一部をエッチングする。
【0105】
図14は、次の工程を示す。この工程では、まず、磁性層16BPに第1の傾斜面16Bbが形成されるように、例えばIBEを用いて、磁性層16BPの傾斜面16BPaの一部をテーパーエッチングする。傾斜面16BPaのうち、エッチング後に残った部分は、第2の傾斜面16Bcとなる。これにより、磁性層16BPは第2のシールド16Bとなる。次に、磁性層36の上面の縁に位置する角が面取りされるように、例えばRIEを用いて、磁性層36の一部をエッチングする。
【0106】
図15は、次の工程を示す。この工程では、まず、第2のシールド16Bおよび第2の接続層と、第2のシールド16Bの第1の傾斜面16Bbに連続する非磁性層57の上面の一部を覆うように、図示しないフォトレジストマスクを形成する。このフォトレジストマスクは、フォトレジスト層をパターニングして形成される。なお、これ以降の工程で形成されるフォトレジストマスクも、このフォトレジストマスクと同様の方法で形成される。次に、このフォトレジストマスクをエッチングマスクとして用いて、例えばRIEによって、非磁性層57に前述の傾斜面および底部が形成されるように、非磁性層57の一部をテーパーエッチングする。第1の傾斜面16Bbに連続する非磁性層57の上面のうち、フォトレジストマスクによって覆われた部分は、前述の平坦部となる。これにより、主磁極15の下端部15Lの形状が決定される。次に、フォトレジストマスクを除去する。
【0107】
図16は、次の工程を示す。この工程では、まず、例えばフレームめっき法によって、第2のシールド16Bの上に、サイドシールド16C,16Dを形成する。次に、第2のシールド16Bおよびサイドシールド16C,16Dを覆うように、第2のギャップ層18を形成する。第2のギャップ層18の材料としてアルミナを用いる場合には、例えば原子層堆積法によって、第2のギャップ層18を形成する。第2のギャップ層18の材料としてRuを用いる場合には、例えば化学的気相成長法によって、第2のギャップ層18を形成する。
【0108】
次に、第2のギャップ層18を選択的にエッチングして、第2のギャップ層18に、磁性層36の上面を露出させる開口部と、図示しない第2の接続層の上面を露出させる開口部とを形成する。次に、例えばフレームめっき法によって、後に主磁極15となる磁性層15Pと図示しない第3の接続層を形成する。磁性層15Pおよび第3の接続層は、その上面が第2のギャップ層18のうちサイドシールド16C,16Dの上に配置された部分よりも上方に配置されるように形成される。
【0109】
図17は、次の工程を示す。この工程では、まず、積層体の上面全体の上に、図示しない第1の非磁性層を形成する。次に、例えばCMPによって、第2のギャップ層18が露出するまで、磁性層15P、第3の接続層および第1の非磁性層を研磨する。
【0110】
図18は、次の工程を示す。この工程では、まず、磁性層15Pの上にフォトレジストマスク81を形成する。フォトレジストマスク81は、磁性層15Pの上面のうち、後に第2の平坦部15T4となる部分を覆っているが、媒体対向面80が形成される予定の位置ABSの近傍の一部は覆っていない。
【0111】
次に、フォトレジストマスク81をエッチングマスクとして用いて、媒体対向面80が形成される予定の位置ABSの近傍において、磁性層15Pおよび第2のギャップ層18のそれぞれの一部をエッチングする。このエッチングは、図17(a)に示したように、磁性層15Pに、第2の傾斜部15T3が形成されるように行う。具体的には、例えば、IBEを用いて、イオンビームの進行方向を基板1の上面1aに垂直な方向に対して傾けて磁性層15Pをエッチングする。このようなIBEを行うことにより、第2の傾斜部15T3が、後に形成される媒体対向面80に垂直な方向に対して傾いた面となる。次に、フォトレジストマスク81を除去する。
【0112】
図19は、次の工程を示す。この工程では、まず、磁性層15Pの上に、非磁性金属層58および絶縁層59を形成する。次に、絶縁層59の上に、フォトレジストマスク82を形成する。フォトレジストマスク82は、媒体対向面80が形成される予定の位置ABSには存在せず、絶縁層59の一部を覆う。次に、フォトレジストマスク82をエッチングマスクとして用いて、例えばIBEによって、磁性層15P、サイドシールド16C,16D、第2のギャップ層18、非磁性金属層58および絶縁層59のそれぞれの一部をエッチングする。これにより、磁性層15Pは主磁極15となる。次に、フォトレジストマスク82を除去する。
【0113】
IBEによって磁性層15P、サイドシールド16C,16D、第2のギャップ層18、非磁性金属層58および絶縁層59のそれぞれの一部をエッチングする場合には、イオンビームの進行方向が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度が40°〜75°の範囲内となり、且つ基板1の上面1aに垂直な方向に見たときにイオンビームの進行方向が回転するようにする。このようなIBEを行うことにより、磁性層15Pの上面には、第1の傾斜部15T1および第1の平坦部15T2が形成される。
【0114】
図20は、次の工程を示す。この工程では、まず、積層体の上面全体の上に、例えばスパッタ法または化学的気相成長法によって、第1のギャップ層19を形成する。次に、例えばIBEによって、主磁極15の上面15Tの一部、サイドシールド16C,16Dの上面の一部および第3の接続層の上面が露出するように、第1のギャップ層19、非磁性金属層58および絶縁層59を選択的にエッチングする。
【0115】
図21は、次の工程を示す。この工程では、まず、例えばフレームめっき法によって、サイドシールド16C,16Dおよび第1のギャップ層19の上に第1のシールド16Aを形成し、主磁極15の上に磁性層41を形成する。次に、積層体の上面全体の上に絶縁膜61を形成する。絶縁膜61の材料としてアルミナを用いる場合には、例えば原子層堆積法によって、絶縁膜61を形成する。次に、例えばIBEによって、第3の接続層の上面が露出するように、絶縁膜61を選択的にエッチングする。次に、例えばフレームめっき法によって、コイルの第2の部分20の第1層21を形成する。第1層21は、その上面が絶縁膜61のうち第1のシールド16Aおよび磁性層41の上に配置された部分よりも上方に配置されるように形成される。次に、積層体の上面全体の上に、図示しない第2の非磁性層を形成する。次に、例えばCMPによって、第1のシールド16Aおよび磁性層41が露出するまで、第1層21、絶縁膜61および第2の非磁性層を研磨して、第1のシールド16A、第1層21、磁性層41、絶縁膜61および第2の非磁性層の上面を平坦化する。
【0116】
図22Aおよび図22Bは、次の工程を示す。この工程では、まず、積層体の上面全体の上に絶縁層62を形成する。次に、例えばIBEによって、第1のシールド16Aの上面および磁性層41の上面の一部が露出するように、絶縁層62を選択的にエッチングする。次に、例えばフレームめっき法によって、第1のシールド16Aの上に磁性層42を形成し、磁性層41の上に磁性層43を形成する。次に、積層体の上面全体の上に絶縁膜63を形成する。絶縁膜63の材料としてアルミナを用いる場合には、例えば原子層堆積法によって、絶縁膜63を形成する。次に、例えばIBEによって、第1層21のコイル接続部21E(図5参照)が露出するように、絶縁層62および絶縁膜63を選択的にエッチングする。
【0117】
次に、コイルの第2の部分20の第2層22と絶縁層64を形成する。第2層22と絶縁層64の形成方法は、コイルの第1の部分10と絶縁層53の形成方法と同様である。次に、積層体の上面全体の上に、絶縁層65を形成する。次に、例えばCMPによって、磁性層42,43が露出するまで、第2層22、絶縁膜63および絶縁層64,65を研磨して、磁性層42,43、第2層22、絶縁膜63および絶縁層64,65の上面を平坦化する。
【0118】
次に、第2層22、絶縁膜63および絶縁層64の上面の上に、絶縁層66を形成する。次に、例えばフレームめっき法によって、磁性層42,43および絶縁層66の上に、磁性層44を形成する。次に、積層体の上面全体の上に絶縁層67を形成する。次に、例えばCMPによって、磁性層44が露出するまで、絶縁層67を研磨して、磁性層44および絶縁層67の上面を平坦化する。
【0119】
次に、積層体の上面の上に図示しないフォトレジストマスクを形成する。このフォトレジストマスクは、媒体対向面80が形成される予定の位置ABSには存在せず、積層体のうち磁気ヘッドとして残る部分(図22Aにおける位置ABSよりも右側の部分)の上に存在して磁性層44の一部を覆う。次に、このフォトレジストマスクをエッチングマスクとして用いて、例えばIBEによって、第1のシールド16Aおよび磁性層42,44のそれぞれの一部をエッチングする。次に、フォトレジストマスクを除去する。
【0120】
次に、積層体の上面全体を覆うように保護層70を形成する。次に、保護層70の上に配線や端子等を形成し、媒体対向面80が形成される予定の位置の近傍で基板1を切断し、この切断によって形成された面を研磨して媒体対向面80を形成し、更に浮上用レールの作製等を行って、磁気ヘッドが完成する。
【0121】
[第2の実施の形態]
次に、図23ないし図25を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る磁気ヘッドについて説明する。図23は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおける主磁極の媒体対向面の近傍の部分と記録シールドを示す断面図である。図24は、本実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。なお、図23および図24は、前記主断面を示している。図25は、本実施の形態に係る磁気ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。
【0122】
本実施の形態に係る磁気ヘッドは、以下の点で第1の実施の形態と異なっている。本実施の形態に係る磁気ヘッドでは、磁性層34,35、絶縁層56および第1の接続層が設けられていない。第2のシールド16Bは、磁性層32および絶縁層54の上に配置されている。磁性層36は、磁性層33の上に配置されている。非磁性層57は、絶縁層55の上に配置されている。第2の接続層は、コイルの第1の部分10のコイル接続部10E(図4参照)の上に配置されている。
【0123】
また、本実施の形態では、第2のシールド16Bは、ベース部16B1と、ベース部16B1から主磁極15に向けて突出する突出部16B2とを含んでいる。図23では、ベース部16B1と突出部16B2の境界を点線で示している。ベース部16B1は、磁性層32の上面に接し、磁性層32に磁気的に接続されている。前記主断面において、ベース部16B1は、媒体対向面80に垂直な方向について突出部16B2よりも大きな長さを有している。
【0124】
また、ベース部16B1は、第2のシールド16Bの第2の端面部分16Baの一部を構成する前端面16Ba1と、主磁極15に向いた上面16Bdとを有している。突出部16B2は、第2のシールド16Bの第2の端面部分16Baの他の一部を構成する前端面16Ba2と、第1の実施の形態で説明した第1および第2の傾斜面16Bb,16Bcとを有している。ベース部16B1の上面16Bdは、突出部16B2の第2の傾斜面16Bcよりも媒体対向面80からより遠い位置にあり且つ第2の傾斜面16Bcに連続している。ベース部16B1の上面16Bdは、第1および第2の仮想の平面P1,P2および媒体対向面80に対して傾斜していてもよいし、実質的に第1および第2の仮想の平面P1,P2に平行であってもよい。上面16Bdが第1および第2の仮想の平面P1,P2および媒体対向面80に対して傾斜する場合には、上面16Bdにおける任意の位置の基板1の上面1aからの距離が、任意の位置が媒体対向面80から離れるに従って小さくなるように傾斜することが好ましい。
【0125】
ここで、ベース部16B1の上面16Bdが媒体対向面80に垂直な方向に対してなす角度を記号θ3で表す。第2の傾斜面16Bcが媒体対向面80に垂直な方向に対してなす角度θ2は、角度θ3よりも大きい。角度θ3は、0°〜20°の範囲内であることが好ましい。
【0126】
次に、本実施の形態による効果について説明する。本実施の形態では、第1の帰磁路部30は、媒体対向面80に露出した端面を有していない。すなわち、本実施の形態では、磁性層34が設けられておらず、第1の帰磁路部30の一部である磁性層32は、媒体対向面80に露出することなく、第1の空間S1と媒体対向面80との間に位置して、第2のシールド16Bと磁性層31とを磁気的に連結している。特に、本実施の形態では、第2のシールド16Bは、ベース部16B1と突出部16B2とを含み、前記主断面において、ベース部16B1は、媒体対向面80に垂直な方向について突出部16B2よりも大きな長さを有している。これにより、磁性層32は、媒体対向面80に露出することなく、第2のシールド16Bのベース部16B1と磁性層31とを磁気的に連結することができる。その結果、本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、第1の帰磁路部の端面が媒体対向面80において広い面積にわたって露出することによる問題を回避することができる。
【0127】
また、本実施の形態では、第2のシールド16Bがベース部16B1と突出部16B2とを含むことにより、第2のシールド16Bと磁性層32を磁気的に連結する磁性層34が不要になり、第1の実施の形態に比べて磁気ヘッドを少ない工程数で製造することができる。また、磁性層34が存在すると、第2のシールド16Bの第2の端面部分16Baと磁性層34との間に、第2のシールド16Bをめっき法によって形成するためのシード層の端部が存在し、第2のシールド16Bおよび磁性層34の内部から外部へ磁界が漏れやすくなる。その結果、隣接トラック消去が発生するおそれがある。本実施の形態によれば、磁性層34が不要になることから、シード層に起因する隣接トラック消去の発生を防止することができる。
【0128】
以下、図26ないし図30を参照して、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法について説明する。図26ないし図30は、磁気ヘッドの製造過程における積層体を示している。図26ないし図30は、それぞれ、前記主断面を表している。図26ないし図30において、記号“ABS”は、媒体対向面80が形成される予定の位置を表している。なお、図26ないし図30では、非磁性層73よりも下の部分を省略している。
【0129】
本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法は、絶縁層55を形成する工程までは、第1の実施の形態と同様である。図26に示したように、本実施の形態では、次に、例えばフレームめっき法によって、磁性層34の上に、後に第2のシールド16Bとなる磁性層16BPを形成し、磁性層33の上に磁性層36を形成し、第1の部分10のコイル接続部10E(図4参照)の上に図示しない第2の接続層を形成する。
【0130】
図27は、次の工程を示す。この工程では、磁性層16BPに、後に第2の傾斜面16Bcとなる部分を含む傾斜面16BPaと、ベース部16B1の上面16Bdが形成されるように、例えばIBEを用いて、磁性層16BPの一部をテーパーエッチングする。
【0131】
図28は、次の工程を示す。この工程では、まず、積層体の上面全体の上に非磁性層57を形成する。次に、例えばCMPによって、磁性層16BP,36および第2の接続層が露出するまで非磁性層57を研磨して、磁性層16BP,36、第2の接続層および非磁性層57の上面を平坦化する。
【0132】
図29は、次の工程を示す。この工程では、磁性層16BPの傾斜面16BPaのうち、後に第1の傾斜面16Bbが形成される領域が露出するように、例えばRIEを用いて、非磁性層57の一部をエッチングする。
【0133】
図30は、次の工程を示す。この工程では、まず、磁性層16BPに第1の傾斜面16Bbが形成されるように、例えばIBEを用いて、磁性層16BPの傾斜面16BPaの一部をテーパーエッチングする。傾斜面16BPaのうち、エッチング後に残った部分は、第2の傾斜面16Bcとなる。これにより、磁性層16BPは第2のシールド16Bとなる。次に、磁性層36の上面の縁に位置する角が面取りされるように、例えばRIEを用いて、磁性層36の一部をエッチングする。その後の工程は、第1の実施の形態と同様である。
【0134】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0135】
[第3の実施の形態]
次に、図31および図32を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る磁気ヘッドについて説明する。図31は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおける主磁極の媒体対向面の近傍の部分と記録シールドを示す断面図である。図32は、本実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。なお、図31および図32は、前記主断面を示している。
【0136】
本実施の形態に係る磁気ヘッドは、以下の点で第2の実施の形態と異なっている。本実施の形態に係る磁気ヘッドは、媒体対向面80から離れた位置において第1のギャップ層19の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層60を備えている。絶縁層60は、第1のギャップ層19と第1のシールド16Aおよび絶縁膜61との間に介在している。また、絶縁層60は、媒体対向面80に向いた端面を有し、この端面は、媒体対向面80から離れた位置に配置されている。絶縁層60の端面における任意の位置の媒体対向面80からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aから離れるに従って大きくなっている。絶縁層60は、例えばアルミナによって形成されている。
【0137】
また、図31に示したように、本実施の形態では、第1のシールド16Aは、第1の端面部分16Aa、第1の傾斜面16Ab、上面16Acおよび接続面16Adに加えて、第2の傾斜面16Aeを有している。第2の傾斜面16Aeは、第1の傾斜面16Abよりも媒体対向面80からより遠い位置にあり且つ第1の傾斜面16Abに連続している。第2の傾斜面16Aeと第1のギャップ層19との間には、絶縁層60が介在している。
【0138】
また、第2の傾斜面16Aeは、第1の傾斜面16Abの第2の端部EA2に接続された第3の端部EA3と、その反対側の第4の端部EA4とを有している。第2の傾斜面16Aeは、第4の端部EA4が第3の端部EA3よりも第1および第2の仮想の平面P1,P2からより遠い位置に配置されるように、第1および第2の仮想の平面P1,P2および媒体対向面80に対して傾斜している。すなわち、第2の傾斜面16Aeは、第4の端部EA4が第3の端部EA3に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置されるように傾斜している。
【0139】
ここで、図31に示したように、第1の傾斜面16Abが媒体対向面80に垂直な方向に対してなす角度を記号θ4で表し、第2の傾斜面16Aeが媒体対向面80に垂直な方向に対してなす角度を記号θ5で表す。角度θ5は、角度θ4よりも大きい。角度θ4は、例えば30°〜45°の範囲内であることが好ましい。角度θ5は、例えば50°〜65°の範囲内であることが好ましい。第2の傾斜面16Ae上の任意の位置と主磁極15との間の距離は、任意の位置が第4の端部EA4に近づくに従って大きくなっている。
【0140】
次に、本実施の形態における絶縁層60と第1のシールド16Aの形成方法の一例について簡単に説明する。絶縁層60を形成する工程は、第1の実施の形態で説明した、積層体の上面全体の上に第1のギャップ層19を形成する工程の後に行われる。絶縁層60を形成する工程では、まず、第1のギャップ層19の上にフォトレジストマスクを形成する。このフォトレジストマスクは、少なくとも媒体対向面80が形成される予定の位置の近傍を覆っている。次に、積層体の上面全体の上に絶縁層60を形成する。次に、フォトレジストマスクをリフトオフする。次に、例えばIBEによって、絶縁層60に前述の端面が形成されるように、絶縁層60の一部をテーパーエッチングする。次に、例えばIBEによって、主磁極15の上面15Tの一部、サイドシールド16C,16Dの上面の一部および第3の接続層の上面が露出するように、第1のギャップ層19、非磁性金属層58および絶縁層59,60を選択的にエッチングする。
【0141】
次に、第1のシールド16Aを形成する工程が行われる。具体的には、例えばフレームめっき法によって、サイドシールド16C,16D、第1のギャップ層19および絶縁層60の上に第1のシールド16Aを形成する。これにより、第1のシールド16Aに、前述の第1および第2の傾斜面16Ab,16Aeが形成される。
【0142】
本実施の形態では、記録シールド16の第1のシールド16Aは、第1および第2の仮想の平面P1,P2および媒体対向面80に対して傾斜した第1および第2の傾斜面16Ab,16Aeを有している。第2の傾斜面16Aeが媒体対向面80に垂直な方向に対してなす角度θ5は、第1の傾斜面16Abが媒体対向面80に垂直な方向に対してなす角度θ4よりも大きく、且つ、第2の傾斜面16Ae上の任意の位置と主磁極15との間の距離は、任意の位置が第4の端部EA4に近づくに従って大きくなっている。これにより、主磁極15から第1のシールド16Aへの磁束の漏れを抑制することが可能になる。また、第2の傾斜面16Aeを第1および第2の仮想の平面P1,P2および媒体対向面80に対して傾斜させることにより、角度θ5が90°の場合に比べて、第1のシールド16Aの体積を大きくすることができ、その結果、記録シールド16において磁束の飽和が生じることを抑制することができる。従って、本実施の形態によれば、記録シールド16(第1のシールド16A)の機能を損なうことなく、スキューに起因した問題の発生を防止し、且つ記録特性を向上させることが可能になる。
【0143】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第2の実施の形態と同様である。
【0144】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、磁気ヘッドは、第1および第2の帰磁路部30,40のうち、いずれか一方のみを備えていてもよい。また、主磁極15の上面15Tおよび下端部15Lのうち、いずれか一方のみが傾斜部(第1の傾斜部)を有していてもよい。
【符号の説明】
【0145】
15…主磁極、16…記録シールド、16A…第1のシールド、16B…第2のシールド、16Bb…第1の傾斜面、16Bc…第2の傾斜面、16C,16D…サイドシール、80…媒体対向面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図22A
図22B
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図26
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図32