(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転盤を備える粉末圧縮成型機の運転を制御する制御装置に備えられかつ製造される成型品の成型圧力が圧力制御基準値に保持されるように前記回転盤に取付けられた臼への粉末の充填深さを規定する下杵の高さ位置を制御する圧力制御部を有する回転式粉末圧縮成型装置の運転方法であって、以下の各工程を備えることを特徴とする。
質量制御をしたときの第1算定圧力変動値を求める第1算定圧力変動値演算工程。
前記質量制御をしたときの厚み変動値と運転中に求めた複数の成型品の厚み平均値とから成型品の算定厚みを求める算定厚み演算工程。
厚み制御をしたときの杵先間隔変動値と杵先間隔設定値とから杵先間隔算定値を求める杵先間隔算定値演算工程。
前記厚み制御をしたときの第2算定圧力変動値を求める第2算定圧力変動値演算工程。
運転中に求めた複数の成型品の成型圧力平均値と前記第1算定圧力変動値と前記第2算定圧力変動値とから圧力制御基準算定値を求める圧力制御基準算定値演算工程。
前記杵先間隔算定値で前記杵先間隔設定値を更新して、杵先間隔を制御する杵先間隔制御工程。
前記成型圧力が更新される前記圧力制御基準値となるように、前記圧力制御基準算定値で、前記臼への粉末の充填深さを規定する前記下杵の高さ位置を制御するための前記圧力制御部の前記圧力制御基準値を更新する制御圧力値更新工程。
回転盤を備える粉末圧縮成型機の運転を制御する制御装置に備えられかつ製造される成型品の成型圧力が圧力制御基準値に保持されるように前記回転盤に取付けられた臼への粉末の充填深さを規定する下杵の高さ位置を制御する圧力制御部を有する回転式粉末圧縮成型装置であって、前記制御装置が以下の各手段を備えることを特徴とする。
質量制御をしたときの第1算定圧力変動値を求める第1算定圧力変動値演算手段。
前記質量制御をしたときの厚み変動値と運転中に求めた複数の成型品の厚み平均値とから成型品の算定厚みを求める算定厚み演算手段。
厚み制御をしたときの杵先間隔変動値と杵先間隔設定値とから杵先間隔算定値を求める杵先間隔算定値演算手段。
前記厚み制御をしたときの第2算定圧力変動値を求める第2算定圧力変動値演算手段。
運転中に求めた複数の成型品の成型圧力平均値と前記第1算定圧力変動値と前記第2算定圧力変動値とから圧力制御基準算定値を求める圧力制御基準算定値演算手段。
前記杵先間隔算定値で前記杵先間隔設定値を更新して、杵先間隔を制御する杵先間隔制御手段。
前記成型圧力が更新される前記圧力制御基準値となるように、前記圧力制御基準算定値で、前記臼への粉末の充填深さを規定する前記下杵の高さ位置を制御するための前記圧力制御部の前記圧力制御基準値を更新する制御圧力値更新手段。
回転盤を備える粉末圧縮成型機の運転を制御する制御装置に備えられかつ製造される成型品の成型圧力が圧力制御基準値に保持されるように前記回転盤に取付けられた臼への粉末の充填深さを規定する下杵の高さ位置を制御する圧力制御部を有する回転式粉末圧縮成型装置の運転方法であって、以下の各工程を備えることを特徴とする。
成型品の質量基準値で質量制御基準算定値を、成型品の厚み基準値で厚み制御基準算定値を、成型品の硬度基準値で硬度制御基準算定値を夫々置換する制御基準算定値更新工程。
前記質量制御基準算定値を用いて質量制御をしたときの硬度変動値と、前記厚み制御基準算定値を用いて厚み制御をしたときの硬度変動値とを夫々求め、これら硬度変動値と運転中に求めた複数の成型品の硬度平均値とから成型品の算定硬度を求める第1算定硬度演算工程。
前記算定硬度が、質量・厚み・硬度の各制御基準算定値が補正されたとしたときの硬度制御可能範囲内であるか否かを判断する算定硬度第1判断工程。
前記算定硬度第1判断工程の判断が前記硬度制御可能範囲内の場合、質量、厚み、及び硬度の各制御基準算定値の少なくとも一つを、この少なくとも一つに対応する制御基準値補正範囲の範囲内で更新する硬度制御工程。
前記硬度制御工程を経由して与えられる前記質量制御基準算定値を用いて質量制御をしたときの第1算定圧力変動値を求める第1算定圧力変動値演算工程。
前記硬度制御工程を経由して与えられる前記質量制御基準算定値を用いて質量制御をしたときの厚み変動値と運転中に求めた複数の成型品の厚み平均値とから成型品の算定厚みを求める算定厚み演算工程。
前記硬度制御工程を経由して与えられる前記厚み制御基準算定値を用いて厚み制御をしたときの杵先間隔変動値と杵先間隔設定値とから杵先間隔算定値を求める杵先間隔算定値演算工程。
前記硬度制御工程を経由して与えられる前記厚み制御基準算定値を用いて厚み制御をしたときの第2算定圧力変動値を求める第2算定圧力変動値演算工程。
運転中に求めた複数の成型品の成型圧力平均値と前記第1算定圧力変動値と前記第2算定圧力変動値とから圧力制御基準算定値を求める圧力制御基準算定値演算工程。
前記杵先間隔算定値で前記杵先間隔設定値を更新して、杵先間隔を制御する杵先間隔制御工程。
前記成型圧力が更新される前記圧力制御基準値となるように、前記圧力制御基準算定値で、前記臼への粉末の充填深さを規定する前記下杵の高さ位置を制御するための前記圧力制御部の前記圧力制御基準値を更新する制御圧力値更新工程。
回転盤を備える粉末圧縮成型機の運転を制御する制御装置に備えられかつ製造される成型品の成型圧力が圧力制御基準値に保持されるように前記回転盤に取付けられた臼への粉末の充填深さを規定する下杵の高さ位置を制御する圧力制御部を有する回転式粉末圧縮成型装置であって、前記制御装置が以下の各手段を備えることを特徴とする。
成型品の質量基準値で質量制御基準算定値を、成型品の厚み基準値で厚み制御基準算定値を、成型品の硬度基準値で硬度制御基準算定値を夫々置換する制御基準算定値更新手段。
前記質量制御基準算定値を用いて質量制御をしたときの硬度変動値と、前記厚み制御基準算定値を用いて厚み制御をしたときの硬度変動値とを夫々求め、これら硬度変動値と運転中に求めた複数の成型品の硬度平均値とから成型品の算定硬度を求める第1算定硬度演算手段。
前記算定硬度が、質量・厚み・硬度の各制御基準算定値が補正されたとしたときの硬度制御可能範囲内であるか否かを判断する算定硬度第1判断手段。
前記算定硬度第1判断手段の判断が前記硬度制御可能範囲内の場合、質量、厚み、及び硬度の各制御基準算定値の少なくとも一つを、この少なくとも一つに対応する制御基準値補正範囲の範囲内で更新する硬度制御手段。
前記硬度制御手段を経由して与えられる前記質量制御基準算定値を用いて質量制御をしたときの第1算定圧力変動値を求める第1算定圧力変動値演算手段。
前記硬度制御手段を経由して与えられる前記質量制御基準算定値を用いて前記質量制御をしたときの厚み変動値と運転中に求めた複数の成型品の厚み平均値とから成型品の算定厚みを求める算定厚み演算手段。
前記硬度制御手段を経由して与えられる厚み制御基準算定値を用いて厚み制御をしたときの杵先間隔変動値と杵先間隔設定値とから杵先間隔算定値を求める杵先間隔算定値演算手段。
前記硬度制御手段を経由して与えられる前記厚み制御基準算定値を用いて前記厚み制御をしたときの第2算定圧力変動値を求める第2算定圧力変動値演算手段。
運転中に求めた複数の成型品の成型圧力平均値と前記第1算定圧力変動値と前記第2算定圧力変動値とから圧力制御基準算定値を求める圧力制御基準算定値演算手段。
前記杵先間隔算定値で前記杵先間隔設定値を更新して、杵先間隔を制御する杵先間隔制御手段。
前記成型圧力が更新される前記圧力制御基準値となるように、前記圧力制御基準算定値で、前記臼への粉末の充填深さを規定する前記下杵の高さ位置を制御するための前記圧力制御部の前記圧力制御基準値を更新する制御圧力値更新手段。
回転盤を備える粉末圧縮成型機の運転を制御する制御装置に備えられかつ製造される成型品の成型圧力が圧力制御基準値に保持されるように前記回転盤に取付けられた臼への粉末の充填深さを規定する下杵の高さ位置を制御する圧力制御部を有する回転式粉末圧縮成型装置の運転方法であって、
成型品を制御する複数の制御パターンの中から、前記制御装置の制御パターン判別部によって選択される制御パターンが、成型品の質量と厚みと硬度の夫々を制御する「制御パターン1」であるのか、成型品の質量と厚みの夫々を制御する「制御パターン2」であるのかを判別し選択する制御パターン判別工程を備え、
前記制御パターン判別工程により選択された前記「制御パターン1」が以下の各工程を備え、
前記制御パターン判別工程により選択された前記「制御パターン2」が以下の各工程を備えることを特徴とする。
前記「制御パターン1」の各工程。
成型品の質量基準値で質量制御基準算定値を、成型品の厚み基準値で厚み制御基準算定値を、成型品の硬度基準値で硬度制御基準算定値を夫々置換する制御基準算定値更新工程。
前記質量制御基準算定値を用いて質量制御をしたときの硬度変動値と、前記厚み制御基準算定値を用いて厚み制御をしたときの硬度変動値とを夫々求め、これら硬度変動値と運転中に求めた複数の成型品の硬度平均値とから成型品の算定硬度を求める第1算定硬度演算工程。
前記算定硬度が、質量・厚み・硬度の各制御基準算定値が補正されたとしたときの硬度制御可能範囲内であるか否かを判断する算定硬度第1判断工程。
前記算定硬度第1判断工程の判断が前記硬度制御可能範囲内の場合、質量、厚み、及び硬度の各制御基準算定値の少なくとも一つを、この少なくとも一つに対応する制御基準値補正範囲の範囲内で更新する硬度制御工程。
前記硬度制御工程を経由して与えられる前記質量制御基準算定値を用いて質量制御をしたときの第1算定圧力変動値を求める第1算定圧力変動値演算工程。
前記硬度制御工程を経由して与えられる前記質量制御基準算定値を用いて質量制御をしたときの厚み変動値と運転中に求めた複数の成型品の厚み平均値とから成型品の算定厚みを求める算定厚み演算工程。
前記硬度制御工程を経由して与えられる前記厚み制御基準算定値を用いて厚み制御をしたときの杵先間隔変動値と杵先間隔設定値とから杵先間隔算定値を求める杵先間隔算定値演算工程。
前記硬度制御工程を経由して与えられる前記厚み制御基準算定値を用いて厚み制御をしたときの第2算定圧力変動値を求める第2算定圧力変動値演算工程。
運転中に求めた複数の成型品の成型圧力平均値と前記第1算定圧力変動値と前記第2算定圧力変動値とから圧力制御基準算定値を求める圧力制御基準算定値演算工程。
前記杵先間隔算定値で前記杵先間隔設定値を更新して、杵先間隔を制御する杵先間隔制御工程。
前記成型圧力が更新される前記圧力制御基準値となるように、前記圧力制御基準算定値で、前記臼への粉末の充填深さを規定する前記下杵の高さ位置を制御するための前記圧力制御部の前記圧力制御基準値を更新する制御圧力値更新工程。
前記「制御パターン2」の各工程。
質量制御をしたときの第1算定圧力変動値を求める第1算定圧力変動値演算工程。
前記質量制御をしたときの厚み変動値と運転中に求めた複数の成型品の厚み平均値とから成型品の算定厚みを求める算定厚み演算工程。
厚み制御をしたときの杵先間隔変動値と前記杵先間隔設定値とから杵先間隔算定値を求める杵先間隔算定値演算工程。
前記厚み制御をしたときの第2算定圧力変動値を求める第2算定圧力変動値演算工程。
運転中に求めた複数の成型品の成型圧力平均値と前記第1算定圧力変動値と前記第2算定圧力変動値とから圧力制御基準算定値を求める圧力制御基準算定値演算工程。
前記杵先間隔算定値で前記杵先間隔設定値を更新して、杵先間隔を制御する杵先間隔制御工程。
前記成型圧力が更新される前記圧力制御基準値となるように、前記圧力制御基準算定値で、前記臼への粉末の充填深さを規定する前記下杵の高さ位置を制御するための前記圧力制御部の前記圧力制御基準値を更新する制御圧力値更新工程。
回転盤を備える粉末圧縮成型機の運転を制御する制御装置に備えられかつ製造される成型品の成型圧力が圧力制御基準値に保持されるように前記回転盤に取付けられた臼への粉末の充填深さを規定する下杵の高さ位置を制御する圧力制御部を有する回転式粉末圧縮成型装置であって、
成型品を制御する複数の制御パターンの中から、前記制御装置の制御パターン判別部によって選択される制御パターンが、成型品の質量と厚みと硬度の夫々を制御する「制御パターン1」であるのか、成型品の質量と厚みの夫々を制御する「制御パターン2」であるのかを判別し選択する制御パターン判別手段を備え
前記制御パターン判別手段により選択された前記「制御パターン1」が以下の各手段を備え、
前記制御パターン判別手段により選択された前記「制御パターン2」が以下の各手段を備えることを特徴とする。
前記「制御パターン1」の各手段。
成型品の質量基準値で質量制御基準算定値を、成型品の厚み基準値で厚み制御基準算定値を、成型品の硬度基準値で硬度制御基準算定値を夫々置換する制御基準算定値更新手段。
前記質量制御基準算定値を用いて質量制御をしたときの硬度変動値と、前記厚み制御基準算定値を用いて厚み制御をしたときの硬度変動値とを夫々求め、これら硬度変動値と運転中に求めた複数の成型品の硬度平均値とから成型品の算定硬度を求める第1算定硬度演算手段。
前記算定硬度が、質量・厚み・硬度の各制御基準算定値が補正されたとしたときの硬度制御可能範囲内であるか否かを判断する算定硬度第1判断手段。
前記算定硬度第1判断手段の判断が前記硬度制御可能範囲内の場合、質量、厚み、及び硬度の各制御基準算定値の少なくとも一つを、この少なくとも一つに対応する制御基準値補正範囲の範囲内で更新する硬度制御手段。
前記硬度制御手段を経由して与えられる前記質量制御基準算定値を用いて質量制御をしたときの第1算定圧力変動値を求める第1算定圧力変動値演算手段。
前記硬度制御手段を経由して与えられる前記質量制御基準算定値を用いて質量制御をしたときの厚み変動値と運転中に求めた複数の成型品の厚み平均値とから成型品の算定厚みを求める算定厚み演算手段。
前記硬度制御手段を経由して与えられる前記厚み制御基準算定値を用いて厚み制御をしたときの杵先間隔変動値と杵先間隔設定値とから杵先間隔算定値を求める杵先間隔算定値演算手段。
前記硬度制御手段を経由して与えられる前記厚み制御基準算定値を用いて厚み制御をしたときの第2算定圧力変動値を求める第2算定圧力変動値演算手段。
運転中に求めた複数の成型品の成型圧力平均値と前記第1算定圧力変動値と前記第2算定圧力変動値とから圧力制御基準算定値を求める圧力制御基準算定値演算手段。
前記杵先間隔算定値で前記杵先間隔設定値を更新して、杵先間隔を制御する杵先間隔制御手段。
前記成型圧力が更新される前記圧力制御基準値となるように、前記圧力制御基準算定値で、前記臼への粉末の充填深さを規定する前記下杵の高さ位置を制御するための前記圧力制御部の前記圧力制御基準値を更新する制御圧力値更新手段。
前記「制御パターン2」の各手段。
質量制御をしたときの第1算定圧力変動値を求める第1算定圧力変動値演算手段。
前記質量制御をしたときの厚み変動値と運転中に求めた複数の成型品の厚み平均値とから成型品の算定厚みを求める算定厚み演算手段。
厚み制御をしたときの杵先間隔変動値と前記杵先間隔設定値とから杵先間隔算定値を求める杵先間隔算定値演算手段。
前記厚み制御をしたときの第2算定圧力変動値を求める第2算定圧力変動値演算手段。
運転中に求めた複数の成型品の成型圧力平均値と前記第1算定圧力変動値と前記第2算定圧力変動値とから圧力制御基準算定値を求める圧力制御基準算定値演算手段。
前記杵先間隔算定値で前記杵先間隔設定値を更新して、杵先間隔を制御する杵先間隔制御手段。
前記成型圧力が更新される前記圧力制御基準値となるように、前記圧力制御基準算定値で、前記臼への粉末の充填深さを規定する前記下杵の高さ位置を制御するための前記圧力制御部の前記圧力制御基準値を更新する制御圧力値更新手段。
前記算定硬度第3判断工程及び前記第2硬度制御基準算定値更新工程で用いる前記硬度補正係数と、前記算定硬度第4判断工程及び前記第2厚み制御基準算定値更新工程で用いる前記厚み補正係数と、前記算定硬度第5判断工程及び前記第2質量制御基準算定値更新工程で用いる前記質量補正係数のうちの少なくとも一つの補正係数による補正が、1.00未満の補正係数の値で行われることを特徴とする請求項6に記載の回転式粉末圧縮成型装置の運転方法。
前記算定硬度第3判断手段及び前記第2硬度制御基準算定値更新手段で用いる前記硬度補正係数と、前記算定硬度第4判断手段及び前記第2厚み制御基準算定値更新手段で用いる前記厚み補正係数と、前記算定硬度第5判断手段及び前記第2質量制御基準算定値更新手段で用いる前記質量補正係数のうちの少なくとも一つの補正係数を、1.00未満の値とすることを特徴とする請求項8に記載の回転式粉末圧縮成型装置。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の第1実施形態について、
図1〜
図11を参照して詳細に説明する。
【0029】
まず、以下の説明において使用する用語の定義を説明する。
【0030】
「質量制御」とは、本発明に基づく制御を行う場合、この制御を担う手段での演算処理において、運転中に求めた複数の成型品の質量平均値Wxを後述の質量制御基準値WM(または後述の質量制御基準算定値WMa)に制御することを、指している。
【0031】
ただし、粉末圧縮成型機で製造される成型品の質量Wを目標とする質量にすることを目的とした制御については、「成型品の質量の制御…」や「成型品の質量を制御…」という表現とし、前記「質量制御」の用語と区別する。
【0032】
なお、後述の成型品の質量を制御しない制御パターンにおいて、後述の圧力制御によって求められる算定質量Waの値で前記質量制御基準算定値WMaの値を置換して演算処理する場合についても、前記「質量制御」の用語を用いる。
【0033】
「圧力制御」とは、本発明に基づく制御を行う場合、この制御を担う手段での演算処理において、運転中に求めた複数の成型品の成型圧力平均値Pxを後述の圧力制御基準値PMに制御することを、指している。
【0034】
また、成型品の成型圧力値が、粉末圧縮成型機の運転を制御する制御装置に備えられた圧力制御部に設定された
圧力制御基準値になるように、回転盤に取付けられた臼への粉末の充填深さを規定する下杵の高さ位置を変更する制御は、フィードバック制御(FBC)と称する。従来はこのような制御を「重量(質量)制御」と称していたが、本発明においては、このような制御も同様に「圧力制御」と言う。
【0035】
以上のことから、前記「質量制御」と前記「圧力制御」とは同等の制御ではなく、本発明においては「質量制御」と「圧力制御」の用語の定義を区別して用いる。
【0036】
なお、後述する実施形態で採用したフローチャートによる演算処理では、質量平均値Wxを後述の質量制御基準値WM(または後述の質量制御基準算定値WMa)にしたときの「質量制御」に基づく圧力変動値PWaや、算定厚みTa、算定硬度Haを求めるようにしている。このため、本発明に含まれる後述する制御パターンの中で、成型品の質量を制御しない制御パターン(制御パターン5および制御パターン6)における前記演算処理において、「質量制御」に基づく圧力変動値PWaや、算定厚みTaや、算定硬度Haを求める、とする記載は整合性がないように見える。しかし、この場合に用いる質量制御基準算定値WMaは、後述する式(11)で求める算定質量Waの値で置換して取り扱うことを前提としており、式(11)は以下に示すように〔(WMa−Wx)=(PM−Px)/a〕に置き換えることができる。したがって、質量平均値Wxを質量制御基準算定値WMaにしたとき、つまり、(WMa−Wx)で表される「質量制御」をしたときの値は、〔(PM−Px)/a〕の値である、と言い換えることができる。
【0037】
Wa=Wx+(PM−Px)/a……式(11)
この式(11)は、(Wa−Wx)=(PM−Px)/aと展開でき、更に、算定質量Waの値で質量制御基準算定値WMaを置換した場合、(WMa−Wx)=(PM−Px)/aとすることができる。
【0038】
このことから、成型品の質量を制御しないことを前提とした制御パターンでの演算処理において、「質量制御をしたとき」と称して求める前記各演算値(PWa、Ta、Ha)は、実際には、何れも圧力平均値Pxを圧力制御基準値PMにしたときの演算値として求められる。つまり、「圧力制御」をしたときの演算値として求められることになる。このため、成型品の質量を制御しない制御パターン(制御パターン5および制御パターン6)における前記演算処理で、「質量制御」に基づく圧力変動値PWaや、算定厚みTaや、算定硬度Haを求める、とする記載は、整合性を損なうものではない。
【0039】
「厚み制御」とは、本発明に基づく制御を行う場合、この制御を担う手段での演算処理において、質量制御をした時の厚み変動値と成型品の厚み平均値Txとから求められる後述の算定厚みTaを、後述の厚み制御基準値TM(または後述の厚み制御基準算定値TMa)に制御することを、指している。
【0040】
ただし、粉末圧縮成型機で製造される成型品の厚みTを目標とする厚みにすることを目的とした制御については、「成型品の厚みの制御」や「成型品の厚みを制御」という表現とし、前記「厚み制御」の用語と区別する。
【0041】
「杵先間隔制御」とは、前記厚み制御に基づいて後述の杵先間隔算定値(lMa,LMa)を求め、粉末圧縮成型機の運転を制御する制御装置によって、後述の予圧位置及び本圧位置での夫々の杵先間隔設定値(現在値…lM,LM)を前記杵先間隔算定値(lMa,LMa)の値で更新し、夫々の杵先間隔を変更する制御を指している。なお、本発明での杵先間隔制御は、後述する予圧ロールと本圧ロールを有する粉末圧縮成型機においては、杵先間隔算定値(lMa,LMa)に基づいて夫々の杵先間隔を制御することを指している。しかし、本発明は、予圧ロールを有しない粉末圧縮成型機を備える回転式
粉末圧縮成型装置として実施する場合を含めて、本圧位置のみで杵先間隔制御を行うことも含んでいる。
【0042】
以上のことから、前記「厚み制御」と前記「杵先間隔制御」とは同等の制御ではなく、本発明においては「厚み制御」と「杵先間隔制御」の用語の定義を区別して用いる。
【0043】
「硬度制御」とは、本発明に基づく制御を行う場合、この制御を担う手段での演算処理において、後述の算定硬度Ha(または後述の硬度制御基準暫定値HMb)の値で後述の硬度制御基準算定値HMaを更新(補正)することで、及び算定硬度Haを硬度制御基準算定値HMaにするために後述の厚み制御基準暫定値TMbと、後述の質量制御基準暫定値WMbで夫々に対応する後述の厚み、質量の各制御基準算定値(TMa、WMa)を更新(補正)することで、前記算定硬度Haの値と前記硬度制御基準算定値HMaの値が同一値となるように制御することを指している。
【0044】
ただし、粉末圧縮成型機で製造される成型品の硬度Hを目標とする硬度にすることを目的とした制御については、「成型品の硬度の制御…」や「成型品の硬度を制御…」という表現とし、前記「硬度制御」の用語と区別する。
【0045】
次に、回転式粉末圧縮成型装置について説明する。
図1に示すように回転式粉末圧縮成型装置例えば成型品として錠剤を製造する回転式の打錠装置1は、回転式の粉末圧縮成型機例えば回転式の打錠機2と、測定器3と、制御盤4等を備えている。
【0046】
打錠機2は臼取付け部を有した回転盤11を備えている。複数の臼12が臼取付け部の周部に回転盤11の周方向に一定間隔で取付けられている。これら臼12の上面は臼取付け部の上面と同じ高さである。尚、臼はダイとも称されているとともに、このダイが、臼孔、つまり、成型孔を複数有している場合もある。
【0047】
打錠機2はその粉末供給位置に配置された粉末供給器14を備えている。粉末供給器14の下面開口は回転盤11の臼取付け部上面に接するように設けられている。回転盤11の回転により臼12が粉末供給器14の下面開口に臨んで通過することにより、粉末供給器14内の粉末が臼12の臼孔に供給(充填)される。粉末供給器14には、臼12に供給される粉末の密度を均一にするために回転される攪拌部材(図示しない)を有した構成の粉末供給器を用いることもできる。
【0048】
打錠機2は、各臼12の夫々に個別に対応して配設された上杵15と下杵16を備えている。尚、上杵15は上パンチとも称されており、下杵16は下パンチとも称されている。これら上杵15と下杵16は上下動可能に回転盤11に支持されている。上杵15の先端部(下端部)は臼12の臼孔に対してその上方から挿脱される。下杵16の先端部(上端部)は、臼12の臼孔に対して下方から上向きに挿入された状態を保持していて、臼孔の底をなしている。これら上杵15と下杵16は、回転盤11の回転に伴って打錠機2が備える図示しない(次に説明する質量調節軌道を除く)各種の案内軌道等を摺動し、それにより、圧縮成型時等に軸線方向に必要量動かされる。
【0049】
粉末供給位置において下杵16の下端が摺動する質量調節軌道(重量調節軌道ともいう。)17は、回転盤11の臼取付け部の下方に配設されている。質量調節軌道17は、軌道昇降機構19により昇降可能に支持されている。この軌道昇降機構19は、軌道昇降用モータ19aと、昇降軸19bと、歯車19cと、駆動歯車19dを有している。
【0050】
軌道昇降用モータ19aには、例えばサーボモータを好適に使用できるが、汎用モータを使用することもできる。この軌道昇降用モータ19aにロータリー式のエンコーダ19eが取付けられている。このエンコーダ19eによる回転量の検出を基に質量調節軌道17の高さ位置を知ることが可能である。昇降軸19bは、図示しないガイドに沿って昇降され、その上端部に質量調節軌道17が連結されている。歯車19cは内周歯車部及び外周歯車部を有していて、その内周歯車部は昇降軸19bの下部に形成された雄ねじ部に噛み合わされている。駆動歯車19dは歯車19cの外周歯車部に噛み合わされていて、軌道昇降用モータ19aにより回転される。したがって、軌道昇降機構19の軌道昇降用モータ19aの正逆回転に従い、昇降軸19bとともに質量調節軌道17が昇降される。
【0051】
前記図示しない各種の案内軌道の中には、粉末供給器14の下方で、かつ、質量調節軌道17の直前に配置された低下軌道が含まれている。この低下軌道に従って下杵16が下降される時に、粉末供給器14内の粉末が臼孔内に吸込まれて供給(充填)される。この直後に下杵16が低下軌道から質量調節軌道17の傾斜面を摺動して上がることに伴い、余剰粉末が粉末供給器14内に吐き出される。次いで、下杵16が質量調節軌道17の傾斜面の上端に連続した水平面を摺動することに伴い、粉末供給器14の下流側壁14aの下端で臼12の上面が摺り切られる。それによって、臼12への供給粉末量、言い換えれば、製造しようとする錠剤の質量(重量)が秤量される。したがって、質量調節軌道17の高さ位置が変更されることにより、製造しようとする錠剤の質量が変更(補正)される。
【0052】
打錠機2はその予備圧縮成型位置(以下予圧位置と略称する。)に配設された上下の予備圧縮成型ロール(以下予圧ロールと略称する。)21,22を備えている。予圧位置は、粉末供給位置を基準に回転盤11の回転方向下流側に設定されている。上側の予圧ロール21は回転盤11の臼取付け部の上方に配置され、下側の予圧ロール22は回転盤11の臼取付け部の下方に配置されている。予圧ロール21,22は、これらの間を上杵15と下杵16が通過する際に、これら上杵15と下杵16を互に近付くように移動させて、臼12内の粉末を予備的に圧縮成型するために設けられている。
【0053】
上側の予圧ロール21は上下方向に移動することがないように保持されている。下側の予圧ロール22は、予圧用のロール支持体23に回転自在に支持されていて、予備的な成型圧力(以下予圧力と称する。)を調整するために予圧用間隔調整機構24によりロール支持体23とともに昇降可能である。一般的に予圧力は後述する本圧力より低く設定される。
【0054】
予圧用間隔調整機構24は、予圧ロール21,22間を通過しようとする上杵15と下杵16との間の杵先間隔を変更するために設けられている。この予圧用間隔調整機構24は、軌道昇降機構19と同様な構成であって、ロール昇降用モータ24aと、昇降軸24bと、歯車24cと、駆動歯車24dを有している。
【0055】
ロール昇降用モータ24aには例えばサーボモータを好適に使用できるが、汎用モータを使用することもできる。このロール昇降用モータ24aにロータリー式のエンコーダ24eが取付けられている。このエンコーダ24eによるロール昇降用モータ24aの回転量の検出を基に、下側の予圧ロール22の高さ位置、したがって、予圧位置での下杵16の高さ位置、ひいてはこの下杵16と上杵15との間の杵先間隔lを知ることが可能である。このロール昇降用モータ24aが有したロータリー式のエンコーダ24eと、これからの出力を処理する後述の制御装置4aが有する図示しない演算部とは、予圧ロール21,22間を通過しようとする上杵15と下杵16との間の杵先間隔lを検出する間隔検出手段をなしている。
【0056】
昇降軸24bは、図示しないガイドに沿って昇降され、その上端部で予圧用のロール支持体23を下方から支持している。歯車24cは内周歯車部及び外周歯車部を有していて、その内周歯車部は昇降軸24bの下部に形成された雄ねじ部に噛み合わされている。駆動歯車24dは歯車24cの外周歯車部に噛み合わされていて、ロール昇降用モータ24aにより回転される。したがって、予圧用間隔調整機構24のロール昇降用モータ24aの正逆回転に従い、昇降軸24bとともに下側の予圧ロール22が昇降されるので、これに伴って下杵16の高さ位置が変更される結果、予圧位置での杵先間隔lが変更(制御)される。
【0057】
打錠機2は、その本圧縮成型位置(最終圧縮成型位置と称することもできるが、以下本圧位置と称する。)に配設された上下の本圧縮成型ロール(以下本圧ロールと略称する。)25,26を備えている。本圧位置は、予圧位置を基準に回転盤11の回転方向下流側に設定されている。上側の本圧ロール25は回転盤11の臼取付け部の上方に配置され、下側の本圧ロール26は回転盤11の臼取付け部の下方に配置されている。本圧ロール25,26は、これらの間を上杵15と下杵16が通過しようとする際に、これら上杵15と下杵16を互に近付くように移動させて、臼12内の粉末を最終的に圧縮成型するために設けられている。
【0058】
上側の本圧ロール25は上下方向に移動することがないように保持されている。下側の本圧ロール26は、本圧用のロール支持体27に回転自在に支持されていて、最終的な成型圧力を調整するためにロール支持体27とともに本圧用間隔調整機構28により昇降可能である。
【0059】
本圧用間隔調整機構28は、本圧ロール25,26間を通過しようとする上杵15と下杵16との間の杵先間隔を変更するために設けられている。この本圧用間隔調整機構28は、軌道昇降機構19と同様な構成であって、ロール昇降用モータ28aと、昇降軸28bと、歯車28cと、駆動歯車28dを有している。
【0060】
ロール昇降用モータ28aには、例えばサーボモータを好適に使用できるが、汎用モータを使用することもできる。このロール昇降用モータ28aにはロータリー式のエンコーダ28eが取付けられている。このエンコーダ28eによるロール昇降用モータ28aの回転量の検出を基に下側の本圧ロール26の高さ位置、したがって、本圧位置での下杵16の高さ位置、ひいてはこの下杵16と上杵15との間の杵先間隔Lを知ることが可能である。このロール昇降用モータ28aが有したロータリー式のエンコーダ28eと、これからの出力を処理する図示しない演算部とは、本圧位置の本圧ロール25,26間を通過しようとする上杵15と下杵16との間の杵先間隔Lを検出する間隔検出手段をなしている。
【0061】
昇降軸28bは、その上端部に配設された圧力センサ29を介して本圧用のロール支持体27を下方から支持していて、図示しないガイドに沿って昇降される。歯車28cは内周歯車部及び外周歯車部を有していて、その内周歯車部は昇降軸28bの下部に形成された雄ねじ部に噛み合わされている。駆動歯車28dは歯車28cの外周歯車部に噛み合わされていて、ロール昇降用モータ28aにより回転される。したがって、本圧用間隔調整機構28のロール昇降用モータ28aの正逆回転に従い、昇降軸28bとともに下側の本圧ロール26が昇降されるので、これに伴って下杵16の高さ位置が変更される結果、本圧位置での杵先間隔Lが変更(制御)される。
【0062】
以上説明したように予圧位置及び本圧位置における杵先間隔の変更(制御)が行われるが、これに本発明は
制約されない。例えば、杵先間隔制御機構は、予圧位置と本圧位置のいずれか、または双方の位置における下側の圧縮成型ロールを上下方向に移動しないように保持
しておいて、前記説明とは逆に上側の圧縮成型ロールの高さ位置を変更させて、杵先間隔を制御する構成とすることができ、更には、上側と下側の双方の圧縮成型ロールの高さ位置を変更させて、杵先間隔を制御する構成とすることができる。
【0063】
圧力センサ29は本圧縮(最終圧縮)成型時の成型圧力(以下本圧力と称する。)を検出するために設けられていて、例えば本圧用のロール支持体27と昇降軸28bとで上下から挟まれて配設されている。この圧力センサ29には、それに加わる成型圧力を電気量に変換するロードセル等を好適に使用できる。圧力センサ29は既述のように昇降軸28bの上端に固定されていて、その受圧端29aは本圧用のロール支持体27の下面を受けている。
【0064】
打錠機2は、その排出位置に、不良品排出手段31と良品排出手段37を備えている。排出位置は本圧位置を基準に回転盤11の回転方向下流側に設定されている。更に、この排出位置を基準に回転盤11の回転方向下流側に前記粉末供給位置が設定されている。
【0065】
不良品排出手段31は良品排出手段37を基準に回転盤11の回転方向上流側に配置されている。この不良品排出手段31は、以下の構成に限定されるものではないが、例えばチャンバ32と、シュート33と、噴気ノズル34と、通気管35を有している。
【0066】
チャンバ32はその開放された下端を回転盤11の臼取付け部上面に接しないように近接して設けられている。チャンバ32は臼12の回転軌跡と交差している。このチャンバ32にシュート33が接続されている。シュート33は回転盤11の外側でかつ斜め下方に向けて延びている。噴気ノズル34は、臼12の回転軌跡で囲まれる領域外に配設されたシュート33に向けて、圧縮空気を前記領域内から噴出するようにチャンバ32に支持されている。
【0067】
通気管35の一端は噴気ノズル34に接続され、通気管35の他端は図示しない圧縮空気源に接続されている。通気管35の中間部に開閉用の電磁弁36が設けられている。電磁弁36は、常時は閉じた状態を維持し、後述の圧力制御部51での圧力異常の検出に基づいて入力される開弁信号に従い所定の短時間だけ開かれる。
【0068】
チャンバ32は、臼12の回転軌跡上に位置される入口側通過口(図示しない)と出口側通過口32aを有している。これらの通過口は、チャンバ32の側壁を下端から切り欠くように設けられていて、回転盤11の臼取付け部の上面に下杵16により押出された錠剤が通過可能である。そのため、成型圧力に基づいて規格範囲内であると判断された錠剤(通常は良品)は、図示しない入口側通過口と出口側通過口32aを通ってチャンバ32を通り抜けることができる。この通過時に噴気ノズル34から圧縮空気が噴出されることはない。
【0069】
しかし、成型圧力に基づいて規格範囲外であると判断された錠剤(通常は不良品)がチャンバ32に搬入されてきた場合は、それにタイミングを合わせて電磁弁36が開かれ噴気ノズル34から圧縮空気が噴出されて、この圧縮空気が下杵16上の不良品に噴き付けられる。そのため、規格範囲から外れていると判断された錠剤は、下杵16から剥離されると同時にシュート33に向けて吹き飛ばされ、回転盤11外に排出される。
【0070】
良品排出手段37は、例えば不良品排出手段31のチャンバ32に連結して移動不能に設けられて、臼12の回転軌跡と交差するスクレーパ38と、これに連なる排出シュート39からなる。チャンバ32を通過し、かつ、規格範囲内にあると判断された錠剤(良品)は、良品排出手段37のスクレーパ38により下杵16上から外されて、排出シュート39を通って回転盤11の臼取付け部上から回転盤11の外部に取出される。
【0071】
良品排出手段37には、これにより排出されるとともに適正な成型圧力で成型された錠剤の中から複数の錠剤を適時サンプリングするサンプリング手段41が取付けられている。サンプリング手段41は、サンプリングシュート42と、サンプリングシャッタ43と、サンプリング駆動器44等を備えている。
【0072】
サンプリングシュート42は斜めの排出シュート39から下向きに分岐されている。サンプリングシャッタ43は、サンプリングシュート42の入口を開閉するもので、通常は
図1中実線で示すように入口を閉じる閉じ位置に配置されている。それにより、規格範囲内の錠剤を排出シュート39の開放された下端がなした出口に向けて排出することができる。
【0073】
又、
図1中二点鎖線で示すようにサンプリングシャッタ43がサンプリングシュート42の入口を開く開き位置に配置されることにより、排出シュート39を通った錠剤がサンプリングシュート42を通って取出される。サンプリング駆動器44は、例えばロータリーソレノイド等のアクチュエータからなり、サンプリングシャッタ43を通常は閉じ位置に保持し、サンプリング信号の入力によって所定時間の間、サンプリングシャッタ43を開き位置に移動させる。
【0074】
なお、運転中の複数の錠剤(成型品)のサンプリングは前記方法に制約されない。つまり、良品のみをサンプリングするのではなく、不良品を含む全錠剤を対象としたサンプリングであっても良い。この場合は、例えば、不良品シュート33側にもサンプリング手段(図示しない)を設けて、良品用の排出シュート39から排出される錠剤と合流した(良品、不良品が混合された)錠剤を測定器3に供給するようにすれば良い。
【0075】
測定器3は、適正数の錠剤がサンプリングされる度に、サンプリングシュート42から排出される複数の錠剤を受取るように、サンプリング手段41の下方に配置されている。この測定器3には自動式のものを用いることが好ましい。自動式の測定器3は、受取った錠剤(サンプリング錠)の中から所定数(複数)の錠剤の質量(重量)を測定するとともに、この測定結果を基に測定された錠剤の質量平均値を算出し、かつ、その算出結果を、個々のサンプリング錠の質量の測定値とともに外部に出力する機能を有している。
【0076】
これとともに、自動式の測定器3は、サンプリングの度に受取った錠剤の中から前記所定数の錠剤について厚みを測定するとともに、この測定結果を基に測定された錠剤の厚み平均値を算出し、かつ、その算出結果を、個々のサンプリング錠の厚み測定値とともに外部に出力する機能を有している。
【0077】
更に、自動式の測定器3は、サンプリングの度に受取った錠剤の中から前記所定数の錠剤について硬度を測定するとともに、この測定結果を基に測定された錠剤の硬度平均値を算出し、かつ、その算出結果を、個々のサンプリング錠の硬度測定値とともに外部に出力する機能を有している。
【0078】
前記打錠機2の運転全般の制御を担う制御盤4は、図示しない制御盤筐体の表面等に露出して設けられたタッチパネル式等の入力装置(図示しない)、及びマイクロコンピュータ等を備えて制御盤筐体に内蔵された制御装置4aなどを備えている。制御装置4aは、各種の入力データ(試打データ及びサンプリングデータ等)を外部の記録装置に出力する機能等を有している。
【0079】
制御装置4aは、打錠機2の連続運転に伴う打錠機2各部の温度変化による上杵15及び下杵16等の膨張・収縮や圧縮される粉末の物性の変化を原因とする錠剤の質量変動、厚み変動、及び硬度変動を抑制して、製造される錠剤の質量と厚みと硬度を制御基準値に保持する制御等を担うように構成されている。
【0080】
この制御装置4aは、製造される錠剤の質量を規格範囲内に保持するためだけでなく、錠剤の厚み及び硬度を規格範囲内に保持するために、成型圧力を圧力制御基準値に保持する圧力制御部51を備えている。この圧力制御部51は、「成型圧力を圧力制御基準値に保持する制御を行うこと」を目的として用いられているため、質量を規格範囲内に保持する必要がない制御パターンの場合でも、成型圧力を圧力制御基準値にする制御を行うように機能する。したがって、後述する厚みと硬度の制御(TH制御)、および厚みのみの制御(T単独制御)が行われる場合、錠剤の質量Wを目標とする質量にするための制御はしないが、算定質量Waに基づく質量制御、及び厚み制御をした時の夫々の圧力変動値を求めて更新される圧力制御基準値にするためのフィードバック制御は行なう。
【0081】
圧力制御部51は、これに設定された圧力制御基準値(現在値)PMが後述のように更新されることで、更新された圧力制御基準値PMのレベルに応じた信号出力を前記軌道昇降機構19の軌道昇降用モータ19aに供給して、下杵16の高さ位置を変えて質量補正を行わせるように構成されている。このように圧力制御基準値PMに基づいて下杵16の高さ位置を質量調節軌道17により変更して錠剤(成型品)の質量を補正することによって、成型圧力を制御することを、ここではフィードバック制御(FBC)と称している。
【0082】
更に、制御装置4aは、打錠機2の試し打ち運転により取得される各種の試打データを基に以下の相関係数a〜a5を演算により求める基礎データ取得部を有している。相関係数a〜a5は以下の通りである。
【0083】
相関係数aは、錠剤の最終圧縮成型時(本圧成型時とも称する。)の成型圧力変動値ΔP(単位KN)と質量変動値ΔW(単位mg)との間で成立する相関係数である。この相関係数aをP−W相関係数(単位KN/mg)と称する。
【0084】
相関係数a1は、錠剤の厚み変動値ΔT(単位mm)と質量変動値ΔW(単位mg)との間で成立する相関係数である。この相関係数a1をT−W相関係数(単位mm/mg)と称する。
【0085】
相関係数a2は、錠剤の成型圧力変動値ΔP(単位KN)と厚み変動値ΔT(単位mm)との間で成立する相関係数である。この相関係数a2をP−T相関係数(単位KN/mm)と称する。
【0086】
相関係数a3は、錠剤の本圧成型時の杵先間隔変動値ΔL(単位mm)と厚み変動値ΔT(単位mm)との間で成立する相関係数である。この相関係数a3をL−T相関係数(単位mm/mm)と称する。
【0087】
相関係数a4は、錠剤の厚み変動値ΔT(単位mm)と硬度変動値ΔH(単位N)との間で成立する相関係数である。この相関係数a4をT−H相関係数(単位mm/N)と称する。
【0088】
相関係数a5は、錠剤の質量変動値ΔW(単位mg)と硬度変動値ΔH(単位N)との間で成立する相関係数である。この相関係数a5をW−H相関係数(単位mg/N)と称する。
【0089】
なお、成型品の成型圧力P、質量W、厚みT、硬度H、および杵先間隔L(またはl)の間には夫々相関関係があって、夫々に相関係数が成立する。このため、後述の演算処理で使用する前記各相関係数(a〜a5)は、aをP−W相関係数、a1をT−W相関係数、a2をP−T相関係数、a3をL−T相関係数、a4をT−H相関係数、a5をW−H相関係数とすることに限定されるものではない。
【0090】
例えば成型品の厚みTに係わる相関係数に関しては、厚みTと杵先間隔L(またはl)との間に成立するL−T相関係数を用いることによって、前記相関係数のうちでT−W相関係数をL−W相関係数に、P−T相関係数をP−L相関係数に、T−H相関係数をL−H相関係数に夫々置き換えて演算処理することも可能である。
【0091】
このことを前提として、第1実施形態および第2実施形態では、aをP−W相関係数、a1をT−W相関係数、a2をP−T相関係数、a3をL−T相関係数、a4をT−H相関係数、a5をW−H相関係数として、以下の説明を行う。
【0092】
制御装置4aは後述する6通りの制御パターンのいずれかにより打錠機2の運転を制御する。
【0093】
制御パターン1により、成型品の質量Wと厚みTと硬度Hの夫々が、製品の規格範囲内、取分けこの範囲内で目標とする制御基準値となるように制御されて所望の成型品が製造される。制御パターン2により、成型品の質量Wと厚みTの夫々が、製品の規格範囲内、取分けこの範囲内で目標とする制御基準値となるように制御されて所望の成型品が製造される。制御パターン3により、成型品の質量Wと硬度Hの夫々が、製品の規格範囲内、取分けこの範囲内で目標とする制御基準値となるように制御されて所望の成型品が製造される。制御パターン4により、成型品の質量Wが、単独に製品の規格範囲内、取分けこの範囲内で目標とする制御基準値となるように制御されて所望の成型品が製造される。制御パターン5により、成型品の厚みTと硬度Hの夫々が、製品の規格範囲内、取分けこの範囲内で目標とする制御基準値となるように制御されて所望の成型品が製造される。制御パターン6により、成型品の厚みTが、単独に製品の規格範囲内、取分けこの範囲内で目標とする制御基準値となるように制御されて所望の成型品が製造される。
【0094】
各制御パターンと相関係数との関係を以下に説明する。
【0095】
制御装置4aが制御パターン1(これを、「WTH制御」と称する。)で打錠機2を制御する場合に行われる演算では、全ての相関係数a〜a5(但し、a5は、a5βを用いる。)が使用され、使用しない相関係数は存在しない。
【0096】
制御装置4aが制御パターン2(これを、「WT制御」と称する。)で打錠機2を制御する場合に行われる演算では、相関係数a〜a3が使用され、相関係数a4,a5は使用されない。
【0097】
制御装置4aが制御パターン3(これを、「WH制御」と称する。)で打錠機2を制御する場合に行われる演算では、相関係数a,a5(但し、a5は、a5αを用いる。)が使用され、相関係数a1〜a4は使用されない。
【0098】
制御装置4aが制御パターン4(これを、「W単独制御」と称する。)で打錠機2を制御する場合に行われる演算では、相関係数aが使用され、相関係数a1〜a5は使用されない。
【0099】
制御装置4aが制御パターン5(これを、「TH制御」と称する。)で打錠機2を制御する場合に行われる演算では、相関係数a〜a5(但し、a5は、a5βを用いる。)が使用され、使用しない相関係数は存在しない。
【0100】
制御装置4aが制御パターン6(これを、「T単独制御」と称する。)で打錠機2を制御する場合に行われる演算では、相関係数a〜a3が使用され、相関係数a4,a5は使用されない。
【0101】
制御装置4aによる制御を説明する上で使用する各記号等の一覧を、質量Wの制御関連記号、厚みTの制御関連記号、硬度Hの制御関連記号、圧力Pの制御関連記号、本圧用の杵先間隔Lの関連記号、及び予圧用の杵先間隔lの関連記号に分けて、下記に記載する。
【0102】
(質量Wの制御関連記号)
WO(単位mg) :錠剤の質量基準値(成型品規格基準値)
WOL(単位mg) :錠剤の質量制御基準値補正範囲の下限値
WOH(単位mg) :錠剤の質量制御基準値補正範囲の上限値
WM(単位mg) :錠剤の質量制御基準値(現在値)
WMa(単位mg) :演算処理に用いる錠剤の質量制御基準算定値
WMb(単位mg) :錠剤の質量制御基準算定値の更新値を求めるための演算処理に
用いる質量制御基準暫定値
Wx(単位mg) :サンプリングされた錠剤の質量平均値
Wa(単位mg) :サンプリングされた錠剤の成型圧力平均値Pxを
圧力制御基準値PMにしたときに相当する質量変動値と、
サンプリングされた錠剤の質量平均値Wxとから
求められ、演算処理に用いる錠剤の算定質量
kw :質量制御基準算定値を補正するときの質量補正係数。
【0103】
(厚みTの制御関連記号)
TO(単位mm) :錠剤の厚み基準値(成型品規格基準値)
TOL(単位mm) :錠剤の厚み制御基準値補正範囲の下限値
TOH(単位mm) :錠剤の厚み制御基準値補正範囲の上限値
TM(単位mm) :錠剤の厚み制御基準値(現在値)
TMa(単位mm) :演算処理に用いる錠剤の厚み制御基準算定値
TMb(単位mm) :錠剤の厚み制御基準算定値の更新値を求めるための演算処理に
用いる厚み制御基準暫定値
Tx(単位mm) :サンプリングされた錠剤の厚み平均値
Ta(単位mm) :サンプリングされた錠剤の質量平均値Wxを質量制御基準
算定値WMaにしたときの厚み変動値と、厚み平均値Tx
とから求められ、演算処理に用いる錠剤の算定厚み
kt :厚み制御基準算定値を補正するときの厚み補正係数。
【0104】
(硬度Hの制御関連記号)
HO(単位N) :錠剤の硬度基準値(成型品規格基準値)
HOL(単位N) :錠剤の硬度制御基準値補正範囲の下限値
HOH(単位N) :錠剤の硬度制御基準値補正範囲の上限値
HM(単位N) :錠剤の硬度制御基準値(現在値)
HMa(単位N) :演算処理に用いる錠剤の硬度制御基準算定値
HMb(単位N) :錠剤の硬度制御基準算定値の更新値を求めるための演算処理に
用いる硬度制御基準暫定値
Hx(単位N) :サンプリングされた錠剤の硬度平均値
Ha(単位N) :サンプリングされた錠剤の質量平均値Wxを質量制御基準
算定値WMaにしたときの硬度変動値、及び錠剤の算定厚み
Taを厚み制御基準算定値TMaにしたときの硬度変動値と、
硬度平均値Hxとから求められ、
演算処理に用いる錠剤の算定硬度
kh :硬度制御基準算定値を補正するときの硬度補正係数。
【0105】
(圧力Pの制御関連記号)
PM(単位KN) :圧力制御部の圧力制御基準値(現在値)
PMa(単位KN) :演算処理に用いる圧力制御部の圧力制御基準算定値
PTa(単位KN) :演算処理に用いる厚み制御による算定圧力変動値
PWa(単位KN) :演算処理に用いる質量制御による算定圧力変動値
Px(単位KN) :サンプリングされた錠剤の成型圧力平均値。
【0106】
(本圧用の杵先間隔Lの関連記号)
LM(単位mm) :本圧位置での杵先間隔設定値(現在値)
LMa(単位mm) :演算処理に用いる本圧位置での杵先間隔算定値。
【0107】
(予圧用の杵先間隔lの関連記号)
lM(単位mm) :予圧位置での杵先間隔設定値(現在値)
lMa(単位mm) :演算処理に用いる予圧位置での杵先間隔算定値。
又、圧力制御部51には以下の記号で示される値が設定されている。
【0108】
(圧力制御部の各制御圧力値関連記号)
LLP(単位KN) :圧力制御部の異常圧力下限値
LEP(単位KN) :圧力制御部の不良排出圧力下限値
LCL(単位KN) :圧力制御部の質量制御圧力下限値
MEAN(単位KN) :圧力制御部の圧力基準値(圧力制御基準値PMに相当)
HCL(単位KN) :圧力制御部の質量制御圧力上限値
HEP(単位KN) :圧力制御部の不良排出圧力上限値
HLP(単位KN) :圧力制御部の異常圧力上限値。
【0109】
次に、制御装置4aによる錠剤の質量・厚み・硬度の各制御についての基礎データの取得、制御パターンの判別、及び制御の手順を、
図2〜
図11を参照して説明する。まず、回転式の打錠装置1を連続運転する前に行われる基礎データの取得手順を
図2により説明する。
【0110】
始めに、オペレータは製造しようとする錠剤の基礎データを取得するために、質量・厚み・硬度を、夫々調整するための操作を行う。
【0111】
この調整操作の後に、オペレータは、打錠機2で一回目の試し打ち運転(試打運転)をし、この運転中にサンプリング手段41を動作させ所定数の錠剤をサンプリングして運転を停止させる。
【0112】
この一回目の試打運転において、圧力データP1、質量データW1、厚みデータT1、硬度データH1,予圧杵先間隔データl1、本圧杵先間隔データL1が、試打データ1として取得される(ステップS01)。
【0113】
つまり、製造される各錠剤の個々についての成型圧力が圧力センサ29により検出される。これに伴い、制御装置4aは、検出された成型圧力を平均化処理する。この処理により算出された成型圧力平均値が圧力データP1である。
【0114】
これとともに、一回目の試打運転において、予圧用間隔調整機構24のロータリー式のエンコーダ24eの出力を基に予圧位置での杵先間隔設定値が予圧杵先間隔データl1として、本圧用間隔調整機構28のロータリー式のエンコーダ28eの出力を基に本圧位置での杵先間隔設定値が本圧杵先間隔データL1として、夫々検出される。
【0115】
更に、一回目の試打運転中にサンプリングされた複数の錠剤の夫々についての質量Wと厚みTと硬度Hが測定器3により測定される。これに伴って、この測定値を測定器3で演算して、質量平均値と厚み平均値と硬度平均値が求められる。求められた質量平均値が質量データW1であり、厚み平均値が厚みデータT1であり、硬度平均値が硬度データH1である。
【0116】
次に、オペレータは、予圧位置及び本圧位置での杵先間隔設定値を変えずに、錠剤質量のみを変動させて、二回目の試打運転をする。この場合、後述の連続運転での温度上昇により狭まる杵先間隔の影響で成型圧力が上昇し、それによって圧力制御が働いて質量を減らすことを想定して、質量調節軌道17を望ましくは錠剤の質量が減る方向に移動させて成型圧力が低下するようにし、ニ回目の試打運転をする。この運転中に所定数の錠剤をサンプリングして運転を停止させる。
【0117】
この二回目の試打運転において、圧力データP2、質量データW2、厚みデータT2、硬度データH2、予圧杵先間隔データl2、本圧杵先間隔データL2が、試打データ2として取得される(ステップS02)。
【0118】
つまり、製造される各錠剤の個々についての成型圧力が圧力センサ29により検出される。これに伴い、制御装置4aは、検出された成型圧力を平均化処理する。この処理により算出された成型圧力平均値が圧力データP2である。これとともに、予圧用間隔調整機構24のロータリー式のエンコーダ24eの出力を基に予圧位置での杵先間隔設定値が予圧杵先間隔データl2として、本圧用間隔調整機構28のロータリー式のエンコーダ28eの出力を基に本圧位置での杵先間隔設定値が本圧杵先間隔データL2として、夫々検出される。更に、サンプリングされた複数の錠剤の夫々についての質量Wと厚みTと硬度Hが測定器3により測定されるとともに、この測定値を測定器3で演算して、質量平均値と厚み平均値と硬度平均値が、試打データ2として求められる。求められた質量平均値が質量データW2であり、厚み平均値が厚みデータT2であり、硬度平均値が硬度データH2である。
【0119】
この後、オペレータは、質量調節軌道17を、試打データ1を得たときの高さ位置と略同じとなるように戻すとともに、後述の連続運転での温度上昇により狭まる杵先間隔を想定して、予圧位置及び本圧位置での杵先間隔を同量、好ましくは狭めた上で三回目の試打運転をする。この運転中に所定数の錠剤をサンプリングして運転を停止させる。
【0120】
この三回目の試打運転において、圧力データP3、質量データW3、厚みデータT3、硬度データH3、予圧杵先間隔データl3、本圧杵先間隔データL3が、試打データ3として取得される(ステップS03)。
【0121】
つまり、製造される各錠剤の個々についての成型圧力が圧力センサ29により検出される。これに伴い、制御装置4aは、検出された成型圧力を平均化処理する。この処理により算出された成型圧力平均値が圧力データP3である。これとともに、予圧用間隔調整機構24のロータリー式のエンコーダ24eの出力を基に予圧位置での杵先間隔設定値が予圧杵先間隔データl3として、本圧用間隔調整機構28のロータリー式のエンコーダ28eの出力を基に本圧位置での杵先間隔設定値が本圧杵先間隔データL3として、夫々検出される。更に、サンプリングされた複数の錠剤の夫々についての質量Wと厚みTと硬度Hが測定器3により測定されるとともに、この測定値を測定器3で演算して、質量平均値と厚み平均値と硬度平均値が、試打データ3として求められる。求められた質量平均値が質量データW3であり、厚み平均値が厚みデータT3であり、硬度平均値が硬度データH3である。
【0122】
この後、制御装置4aは、ステップS04を実行する。このステップS04では、前記各試打データ1〜3を用いてP−W相関係数a、T−W相関係数a1、P−T相関係数a2、L−T相関係数a3、T−H相関係数a4、及びW−H相関係数a5(後述するa5α及びa5β)の夫々を演算により求めて、これらの相関係数a〜a5の夫々の値を制御装置4aが有する図示しない記憶部に登録(記憶)する。
【0123】
相関係数a〜a5は以下の演算により求める。
【0124】
ステップS04で求められるP−W相関係数aは、錠剤の質量Wと成型圧力Pとの間に成立する係数であって、一回目の試打運転により得た試打データ1と、一回目と杵先間隔が同じ条件下で質量を減らして行った二回目の試打運転により得た試打データ2とのうちで、成型圧力Pと質量Wに関する試打データ(P1,P2,W1,W2)を用いて算出される。P−W相関係数aは、ここでは錠剤の質量変化に応じて錠剤の厚みTが変化することを前提とする。このP−W相関係数aは、質量Wが変化したときに成型圧力Pが何KN変化するのかを求める場合に用いられる係数であって、成型圧力の変動値ΔPを質量の変動値ΔWで割る次式により求める。
a=ΔP/ΔW=(P1−P2)/(W1−W2)……式(1)。
【0125】
ステップS04で求められるT−W相関係数a1は、錠剤の厚みTと質量Wとの間に成立する係数であって、一回目の試打運転により得た試打データ1と、一回目と杵先間隔が同じ条件下で質量Wを減らして行った二回目の試打運転により得た試打データ2とのうちで、厚みTと質量Wに関する試打データ(T1,T2,W1,W2)を用いて算出される。このT−W相関係数a1は、質量Wが変化したときに錠剤の厚みTが何mm変化するのかを求める場合に用いられる係数であって、厚みの変動値ΔTを質量の変動値ΔWで割る次式により求める。
a1=ΔT/ΔW=(T1−T2)/(W1−W2)……式(2)。
【0126】
ステップS04で求められるP−T相関係数a2は、錠剤の厚みTと錠剤の成型圧力Pとの間に成立する係数であって、錠剤の厚みTが変化したときに成型圧力Pが何KN変化するのかを求める場合に用いられる係数である。ステップS04で求められるL−T相関係数a3は、錠剤の厚みTと杵先間隔L(又はl)との間に成立する係数であって、杵先間隔L(又はl)が変化したときに錠剤の厚みTが何mm変化するのかを求める場合に用いられる係数である。
【0127】
これらの相関係数a2,a3は、一回目の試打運転により得た試打データ1と、二回目の試打運転後に錠剤質量を一回目の試打運転時の錠剤質量付近に戻すとともに一回目と杵先間隔を異ならせた条件下で行った三回目の試打運転により得た試打データ3とのうちで、成型圧力Pと厚みTと質量W等に関する試打データ(W1,W3,P1,P3,T1,T3)を用いて算出される。
【0128】
しかし、三回目の試打運転での錠剤の質量データW3を一回目の試打運転での質量データW1と同じ質量に戻るようにオペレータが調整しても、質量データW3が一回目の試打運転での質量データW1と同じ質量に完全に一致することは期待できないので、これに応じて成型圧力も変動する可能性がある。よって、圧力データP3をそのまま用いてP−T相関係数a2を求めることは正確性に欠ける。
【0129】
この対策として、質量データW3を質量データW1にする制御をしたときに成型圧力Pがどのような圧力(これを算定圧力P3aと称する。)になるのかを求める。
【0130】
即ち、ステップS04では、P−T相関係数a2を求めるための算定圧力P3aを次式により求める。
P3a=P3+a(W1−W3)……式(3)。
【0131】
この算定圧力P3aにより、P−T相関係数a2を求める上での質量データの基準を揃えることができて、質量データW1と質量データW3との差によって生じる成型圧力の誤差を排除することが可能となる。
【0132】
既述のように三回目の試打運転での錠剤の質量を一回目の試打運転での質量データW1と同じ質量に戻るようにオペレータが調整しても、質量データW3が一回目の試打運転での質量データW1と同じ質量に完全に一致することは期待できないので、これに応じて錠剤の厚みも変動する可能性がある。よって、厚みデータT3をそのまま用いてP−T相関係数a2を求めることは正確性に欠ける。そのため、質量データW3を質量データW1にする制御をしたときに錠剤がどのような厚み(これを算定厚みT3aと称する。)になるのかを求める。
【0133】
即ち、ステップS04では、P−T相関係数a2を求めるための算定厚みT3aを次式により求める。
T3a=T3+a1(W1−W3)……式(4)。
【0134】
この算定厚みT3aにより、P−T相関係数a2を求める上での質量データの基準を揃えることができて、質量データW1と質量データW3との差によって生じる錠剤の厚みの誤差を排除することが可能となる。
【0135】
P−T相関係数a2は、以上のように算定圧力P3aと算定厚みT3aを求めた上で、これら算定値によって補正された錠剤の成型圧力の変動値ΔPを厚みの変動値ΔTで割る次式により求める。
a2=ΔP/ΔT=(P1−P3a)/(T1−T3a)……式(5)。
【0136】
ステップS04で求められるL−T相関係数a3は、算定厚みT3aによって補正された厚みの変動値ΔTで杵先間隔の変動値ΔL(またはΔl)を割る次式により求められる。
a3=ΔL/ΔT=(L1−L3)/(T1−T3a)……式(6)。
【0137】
ステップS04で求められるT−H相関係数a4は、錠剤の厚みTと錠剤の硬度Hとの間に成立する係数であって、錠剤の硬度Hが変化したときに錠剤の厚みTが何mm変化するのかを求める場合に用いられる係数である。
【0138】
この相関係数a4は、一回目の試打運転により得た試打データ1と、二回目の試打運転後に錠剤質量を一回目の試打運転時の錠剤質量付近に戻すとともに一回目と杵先間隔を異ならせた条件下で行った三回目の試打運転により得た試打データ3とのうちで、硬度Hと厚みTと質量Wに関する試打データ(T1,T3、H1,H3、W1,W3)を用いて算出する。
【0139】
しかし、既述のように三回目の試打運転での錠剤の質量を一回目の試打運転での質量データW1と同じ質量に戻るようにオペレータが調整しても、質量データW3が一回目の試打運転での質量データW1と同じ質量に完全に一致することは期待できないので、これに応じて錠剤の硬度も変動する可能性がある。よって、硬度データH3をそのまま用いてT−H相関係数a4を求めることは正確性に欠ける。そのため、質量データW3を質量データW1にする制御をしたときに錠剤がどのような硬度(これを算定硬度H3aと称する。)になるのかを、後述するW−H相関係数a5αを用いて求める。
【0140】
即ち、T−H相関係数a4を求めるための算定硬度H3aを次式により求める。
H3a=H3+(W1−W3)/a5α……式(8)。
【0141】
この算定硬度H3aにより、T−H相関係数a4を求める上での質量データの基準を揃えることができて、質量データW1と質量データW3との差によって生じる錠剤の硬度の誤差を排除することが可能となる。
【0142】
ステップS04で求められるT−H相関係数a4は、以上のように算定硬度H3aと算定厚みT3aを求めた上で、これら算定値によって補正された錠剤の厚みの変動値ΔTを錠剤の硬度の変動値ΔHで割る次式により求める。
a4=ΔT/ΔH=(T1−T3a)/(H1−H3a)……式(9)。
【0143】
ステップS04で求められるW−H相関係数a5α及びa5βは錠剤の質量Wと錠剤の硬度Hとの間に成立する係数であって、錠剤の硬度Hが変化したときに質量Wが何mg変化するのかを求める場合に用いられる係数である。
【0144】
錠剤の厚みの制御を含まない制御パターン3(WH制御)で用いる相関係数a5αは、錠剤の質量変化に応じて錠剤の厚みTが変化することを前提として、錠剤の硬度Hが変化したときに錠剤の質量Wが何mg変化するのかを求める場合に用いられる係数である。W−H相関係数a5αは、一回目の試打運転により得た試打データ1と、一回目と杵先間隔が同じ条件下で質量を減らして行った二回目の試打運転により得た試打データ2とのうちで、質量Wと硬度Hとに関する試打データ(W1,W2,H1,H2)を用いて算出する。つまり、W−H相関係数a5αは、質量の変動値ΔWを硬度の変動値ΔHで割る次式により求める。
a5α=ΔW/ΔH=(W1−W2)/(H1−H2)……式(7)。
【0145】
更に、ステップS04で求められるW−H相関係数a5βは、錠剤の厚みの制御を含む制御パターン1(WTH制御)および制御パターン5(TH制御)で用いる相関係数であり、W−H相関係数a5αと同様に、錠剤の質量Wと錠剤の硬度Hとの間に成立する係数である。
【0146】
この相関係数a5βは、既述の厚み制御を含まない制御パターン3(WH制御)で用いる相関係数a5αとは異なる前提条件で用いられる。即ち、相関係数a5αは、錠剤の質量変化に応じて錠剤の厚みTも変化することを前提として、錠剤の硬度Hが変化したときに錠剤の質量Wが何mg変化するのかを求める場合に用いられる。これに対して、相関係数a5βは、錠剤の質量変化に応じて変化した錠剤の厚みTを補正することを前提として、錠剤の硬度Hが変化したときに錠剤の質量Wが何mg変化するのかを求める場合に用いられる。
【0147】
この相関係数a5βは、一回目の試打運転により得た試打データ1と、一回目と杵先間隔が同じ条件下で質量を減らして行った二回目の試打運転により得た試打データ2とのうちで、質量Wと硬度Hとに関する試打データ(W1,W2,H1,H2)を用いて算出する。
【0148】
しかし、一回目と杵先間隔が同じ条件下で質量を減らして行った二回目の試打運転での錠剤の硬度データH2は、質量データW1と質量データW2の差に応じて厚みデータT1と厚みデータT2にも差が生じるので、硬度データH2をそのまま用いてW−H相関係数a5βを求めることは正確性に欠ける。
【0149】
そのため、厚みデータT2を厚みデータT1にする制御をしたときに錠剤の硬度がどのような硬度(これを算定硬度H2aと称する。)になるのかを求める。
【0150】
即ち、W−H相関係数a5βを求めるための算定硬度H2aを次式により求める。
H2a=H2+(T1−T2)/a4……式(8a)。
【0151】
この算定硬度H2aにより、W−H相関係数a5βを求める上での厚みデータの基準を揃えることができて、厚みデータT1と厚みデータT2との差によって生じる錠剤の硬度の誤差を排除することが可能となる。
【0152】
ステップS04では、以上のように求めた算定硬度H2aを用いて、錠剤の質量変化に応じて変化した錠剤の厚みTを補正することを前提としたW−H相関係数a5βを、錠剤の質量の変動値ΔWを硬度の変動値ΔHで割る次式により求める。
a5β=ΔW/ΔH=(W1−W2)/(H1−H2a)……式(7a)。
【0153】
以上のように試打データ1〜3を基に制御装置4aで算出された各相関係数a〜a5は、連続運転時の自動制御の基礎データとして、制御装置4aの記憶部に自動的に登録(記憶)される。
【0154】
以上説明したステップS01〜S04は基礎データ取得工程を実行する基礎データ取得部をなしている。そのうちのステップS01〜S03が試打データ取得工程を実行する試打データ取得手段である。ステップS04は、各種相関係数を求めて、それらを基礎データとして試打データとともに登録(記憶)するデータ登録工程を実行するデータ登録手段である。
【0155】
各種基礎データが以上のように取得された後に、オペレータは、制御盤4の入力装置を操作して、制御パターン1〜制御パターン6のうちから一つを指定するとともに、指定された制御パターンにおいて質量、厚み、硬度の補正順位(詳しくは各制御基準算定値の補正順位であり、以下、「各制御基準算定値の補正順位」と称する。)が必要な場合は、それを指定する。それにより、制御装置4aは、指定された制御パターンを判別し選択する。以下、この制御パターン判別の手順を
図3のフローチャートに従って説明する。
【0156】
まず、ステップS1により、錠剤の質量を制御するか否かを判断する。ステップS1の判断がYES(質量を制御する)の場合、ステップS2により錠剤の厚みを制御するか否かを判断する。このステップS2の判断がYES(厚みを制御する)の場合、ステップS3により錠剤の硬度を制御するか否かを判断する。
【0157】
ステップS3の判断がYES(硬度を制御する)の場合、ステップS4に進む。ステップS4では、錠剤の硬度を制御するための質量、厚み、及び硬度の各制御基準算定値の補正順位の登録(指定)と、各基準値(規格基準値とも称する。)及び各制御基準値の補正範囲が登録される。このステップS4で登録される各基準値(規格基準値)は、質量基準値WOと、厚み基準値TOと、硬度基準値HOである。又、各制御基準算定値の補正順位とは、質量、厚み、及び硬度のそれぞれの制御基準算定値の補正(更新)を行う順番であり、予め定められた順序に従って自動的に登録しても良いし、或いは、人為的に行われる登録作業によって任意の順序で登録しても差し支えない。なお、制御パターン2,4,6については錠剤の硬度の制御を行わないので、各制御基準算定値の補正順位の登録作業は要しないが、制御パターン1,3,5については、後述のように各制御基準算定値の補正順位のパターンが複数通りあるので、そのうちの一つを選択して登録すればよい。
【0158】
質量基準値WOとは、製造される錠剤の質量の規格基準値である。質量制御基準値補正範囲は、製造される錠剤の質量制御基準値WMを変更しても良い範囲として登録され、その上限値WOHと下限値WOLで質量制御基準値補正範囲が規定される。厚み基準値TOとは、製造される錠剤の厚みの規格基準値である。厚み制御基準値補正範囲は、製造される錠剤の厚み制御基準値TMを変更しても良い範囲として登録され、その上限値TOHと下限値TOLで厚み制御基準値補正範囲が規定される。硬度基準値HOとは、製造される錠剤の硬度の規格基準値である。硬度制御基準値補正範囲は、製造される錠剤の硬度制御基準値HMを変更しても良い範囲として登録され、その上限値HOHと下限値HOLで硬度制御基準値補正範囲が規定される。
【0159】
ステップS4が実行された場合、制御装置4aはステップS17を経由して制御パターン1(後述のWTH制御)を選択する。このステップS17は、後述のWTH制御の演算処理で使用するW−H相関係数a5について、W−H相関係数a5βの値の値でa5を置換する処理を行う。この制御パターン1では、既に取得された相関係数a〜a4、a5(a5β)の全てが使用される。
【0160】
ステップS3の判断がNO(硬度を制御しない)であった場合、ステップS5により、錠剤の質量及び厚みを制御するための各制御基準値が登録される。このステップS5で登録される各制御基準値は、質量制御基準値WMと厚み制御基準値TMである。
【0161】
ステップS5が実行された場合、制御装置4aはステップS6の処理を経由して制御パターン2(後述のWT制御)を選択する。ステップS6は、制御パターン2において使用しない相関係数の演算上の扱いを定める。具体的には、既に取得された相関係数a〜a5のうちで、後述のWT制御において不使用の相関係数a4、a5が演算式に含まれている場合、以降の演算式で不使用の相関係数a4、a5を含む単項式は、「0」として演算する、との取扱い事項が自動的に設定される。
【0162】
前記ステップS2の判断がNO(厚みを制御しない)であった場合、ステップS7に進む。ステップS7は錠剤の硬度を制御するか否かを判断する。
【0163】
ステップS7の判断がYES(硬度を制御する)の場合、ステップS8に進む。ステップS8では、錠剤の硬度を制御するための質量及び硬度の各制御基準算定値の補正順位の登録と、質量及び硬度の各基準値(規格基準値)および各制御基準値の補正範囲が登録される。ここで、各制御基準算定値の補正順位とは、質量と硬度の夫々の制御基準算定値の補正(更新)を行う順番であり、予め定められた順序に従って自動的に登録しても良いし、或いは、人為的に行われる登録作業によって登録しても差し支えない。このステップS8で登録される各制御基準値の補正範囲は、ステップS4で説明した通りである。
【0164】
ステップS8が実行された場合、制御装置4aはステップS9の処理を経由して制御パターン3(後述のWH制御)を選択する。ステップS9は、制御パターン3において使用しない相関係数の演算上の扱いを定める。具体的には、既に取得された相関係数a〜a5のうちで、後述のWH制御において不使用の相関係数a1〜a4が演算式に含まれている場合、以降の演算式で不使用の相関係数a1〜a4を含む単項式は、「0」として演算する、との取扱い事項が自動的に設定される。これと共に、このステップS9は、後述のWH制御の演算処理で使用するW−H相関係数a5について、W−H相関係数a5αの値でa5を置換する処理を行う。
【0165】
ステップS7の判断がNO(硬度を制御しない)であった場合、ステップS10により、錠剤の質量のみを制御するための質量制御基準値WMが登録される。ここでの登録は、自動的に登録しても良いし、或いは、人為的に登録しても差し支えない。
【0166】
ステップS10が実行された場合、制御装置4aはステップS11の処理を経由して制御パターン4を選択する。ステップS11は、制御パターン4において使用しない相関係数の演算上の扱いを定める。具体的には、既に取得された相関係数a〜a5のうちで、質量Wに対する後述の単独制御において不使用の相関係数a1〜a5が演算式に含まれている場合、以降の演算式で不使用の相関係数a1〜a5を含む単項式は、「0」として演算する、との取扱い事項が自動的に設定される。
【0167】
前記ステップS1の判断がNO(質量を制御しない)であった場合、ステップS12に進む。ステップS12は、錠剤の厚みを制御するか否かを判断し、この判断がNO(厚みを制御しない)の場合、ステップS1に戻る。なお、ステップS1に戻ることに代えて、プログラムを終了してもよい。ステップS12の判断がYES(厚みを制御する)の場合、ステップS13により錠剤の硬度を制御するか否かを判断する。
【0168】
ステップS13の判断がYES(硬度を制御する)の場合、ステップS14に進む。ステップS14は、錠剤の硬度を制御するための厚み及び硬度の各制御基準算定値の補正順位の登録と、厚み及び硬度の各基準値(規格基準値)、及び各制御基準値の補正範囲を登録する。ここで、各制御基準算定値の補正順位とは、厚みと硬度の夫々の制御基準算定値の補正(変更)を行う順番であり、予め定められた順序に従って自動的に登録しても良いし、或いは、人為的に行われる登録作業によって登録しても差し支えない。このステップS14で登録される厚みと硬度についての各制御基準値の補正範囲は、ステップS4で説明した通りである。
【0169】
ステップS14が実行された場合、制御装置4aはステップS18を経由して制御パターン5(後述のTH制御)を選択する。これと共に、このステップS18は、制御パターン5の演算処理で使用するW−H相関係数a5について、W−H相関係数a5βの値でa5を置換する処理を行う。
【0170】
ステップS13の判断がNO(硬度を制御しない)であった場合、ステップS15により、錠剤の厚みのみを制御するための厚み制御基準値TMが登録される。ここでの登録は、自動的に登録しても良いし、或いは、人為的に登録しても差し支えない。
【0171】
ステップS15が実行された場合、制御装置4aはステップS16の処理を経由して制御パターン6(後述のT単独制御)を選択する。ステップS16は、制御パターン6において使用しない相関係数の演算上の扱いを定める。具体的には、既に取得された相関係数a〜a5のうちで、厚みTに対する後述のT単独制御において不使用の相関係数a4,a5が演算式に含まれている場合、以降の演算式で不使用の相関係数a4,a5を含む単項式は、「0」として演算する、との取扱い事項が自動的に設定される。
【0172】
図3を参照して説明したステップS1〜S18はパターン判別部をなしている。このパターン判別部において、ステップS1〜S3,S7,S12,S13は、指定された制御パターンが、制御パターン1〜制御パターン6のどれであるのかを選択する制御パターン選択手段である。ステップS4,S8,S14は、各基準値(規格基準値)と、各制御基準値の補正範囲、及び制御基準算定値の補正順位を登録する補正内容登録手段であり、ステップS5,S10,S15は、各制御基準値を登録する基準値登録手段である。又、ステップS6,S9,S11,S16〜S18は、不使用の相関係数の演算上の取扱い、及び使用するW−H相関係数a5の値をa5αにするかa5βにするかの取扱いを設定する相関係数設定手段である。なお、ステップS17はステップS4の前に実行してもよく、ステップS6はステップS5の前に実行してもよい。ステップS9はステップS8の前に実行してもよく、ステップS11はステップS10の前に実行してもよく、ステップS16はステップS15の前に実行してもよく、ステップS18はステップS14の前に実行してもよい。
【0173】
第1実施形態の制御パターン4(W単独制御)について以下説明する。
【0174】
以上説明したパターン判別部で、例えば錠剤の質量のみを制御する制御パターン4(W単独制御)が選択された場合の制御手順を、
図4〜
図6を参照して説明する。
【0175】
パターン判別部において、ステップS2で錠剤の厚みを制御しないことが選択されるとともに、ステップS7で硬度を制御しないことが選択されると、制御装置4aは、制御パターン4を選択し、打錠機2の連続運転で製造される錠剤に対する質量のみを制御する。
【0176】
即ち、回転式の打錠装置1の連続運転が開始されると、まず、制御装置4aに格納されたプログラムに従い
図4に示すステップS101が実行されて、「サンプリング指令」が出力される。なお、これに代えて、人為的にサンプリング指令を出力させる「強制サンプリング指令」の有無を判断することも可能である。
【0177】
この指令後に、ステップS102が実行されサンプリング手段41のサンプリング駆動器44が駆動される。それにより、サンプリングシャッタ43がサンプリングシュート42の入口を開く開き位置に移動されるとともに、このサンプリングシャッタ43で排出シュート39の出口側が閉じられる。
【0178】
したがって、製造される錠剤が複数個サンプリングされ、サンプリングシュート42を通って測定器3に供給される。こうした錠剤のサンプリングは、制御装置4aによるサンプリング手段41の制御で、打錠機2の連続運転中、所定時間毎、例えば30分毎に実行される。
【0179】
前記サンプリングの開始に基づいて制御装置4aによりステップS103が実行されて、サンプリングデータが取得される。ここで取得されるサンプリングデータは、予圧位置での杵先間隔設定値(現在値)lM、本圧位置での杵先間隔設定値(現在値)LM、及び測定器3によって測定されかつ算出された質量平均値Wxと厚み平均値Txと硬度平均値Hxである。なお、各杵先間隔設定値(現在値)の記載は、以下、(現在値)の記載を省略して「杵先間隔設定値」と略称する。成型圧力平均値Px以外のいずれのデータも通信処理により制御装置4aに読み込まれる。これと共に、ステップS103において制御装置4aは、圧力センサ29により検出される圧力データを基に、サンプリングされた複数の錠剤についての成型圧力平均値Pxを算出する。なお、サンプリングデータの取得とその制御装置4aへの入力(供給)は、自動ではなく、手動で行うことも可能である。
【0180】
この後、制御装置4aにより算定質量演算手段(算定質量演算工程)をなすステップS104が実行される。ステップS104によって錠剤の算定質量Waが求められる。具体的には、圧力制御をしたときの質量変動値(つまり、成型圧力平均値Pxを圧力制御基準値PMにしたときの質量変動値)を求め、これと質量平均値Wxとから錠剤の算定質量Waを求める。その演算式は以下の通りであリ、この式でaはP−W相関係数である。
Wa=Wx+(PM−Px)/a……式(11)。
【0181】
ステップS104が必要な理由は次の通りである。
【0182】
打錠装置1は、臼孔への粉体の充填深さを変えることで、成型圧力が圧力制御部51に設定された圧力制御基準値PMとなるように圧力制御(フィードバック制御)することによって、錠剤(成型品)の生産を行う。言い換えれば、打錠装置1は、フィードバック制御により、設定された圧力制御基準値PMに相当する質量(これを算定質量Waと称する。)の錠剤を生産する。このフィードバック制御により、生産開始直後は圧力制御基準値PMに制御された算定質量Waと質量制御基準値WMとが同じであっても、粉末の物性等に継時変化が生じると、圧力制御基準値PMと算定質量Waのバランスが崩れて、算定質量Waと質量制御基準値WMとが異なる値になる場合があり、それが錠剤の厚みや硬度にも影響を及ぼすようになる。
【0183】
そのため、錠剤の質量を制御する制御パターン1〜制御パターン4の場合は、圧力制御基準値PMを質量制御基準値WMに相当する
値に更新することで、算定質量Waを質量制御基準値WMに制御することができる。
【0184】
これとは逆に、錠剤の質量を制御しない制御パターン5又は制御パターン6の場合は、粉末の物性等に継時変化が生じ、圧力制御をするための圧力制御基準値PMと算定質量Waのバランスが崩れることによって、サンプリングの度に求められる算定質量Waが変動したとしても、求められた算定質量Waをその都度、質量制御基準算定値WMaとして取り扱う(演算処理する)ことで、質量の制御がされずに、錠剤の厚みの制御に応じた圧力制御のみが行われて生産が継続される。
【0185】
次に、制御装置4aにより制御パターン第1選択手段(制御パターン第1選択工程)をなすステップS105による判断が実行される。ステップS105により、パターン判別部で選択された制御パターンが、錠剤の硬度の制御を含むのか否かが判断される。具体的には、制御パターン1,3,5のいずれかが選択されているか否かが、ステップS105により判断される。この場合、パターン判別部において錠剤の質量のみを制御する制御パターン4が選択されているので、ステップS105の判断はNOとなる。それにより、錠剤の硬度の制御を含まない制御パターン2,4,6による運転制御系統が選択される。
【0186】
これにしたがい制御装置4aにより、第1制御基準算定値更新手段(第1制御基準算定値更新工程)をなすステップS106が実行される。このステップS106は、以降の演算処理の整合性を確保するために設けられている。ステップS106は各制御基準値の夫々の値で対応する制御基準算定値を置換する処理を行う。つまり、錠剤の質量制御基準値WMの値で錠剤の質量制御基準算定値WMaを、錠剤の厚み制御基準値TMの値で錠剤の厚み制御基準算定値TMaを夫々置き換える。
【0187】
この後、制御装置4aは以下の運転制御系統によって打錠機2の運転を制御する。
【0188】
即ち、まず、選択された制御パターンが、錠剤の質量の制御を含むのか否かを判断する。具体的には、制御パターン2,4のいずれかが選択されているか否かが、制御パターン第2選択手段(制御パターン第2選択工程)をなすステップS107により判断される。この場合、パターン判別部において制御パターン4が選択されているので、ステップS107の判断はYESである。次に、制御装置4aにより、第1算定圧力変動値演算手段(第1算定圧力変動値演算工程)をなすステップS109が実行される。
【0189】
なお、錠剤の質量の制御を含まない制御パターン6が選択されている場合、ステップS107の判断はNOとなる。これに伴って、制御装置4aにより次のステップS108が実行され、この後、ステップS109が実行される。第2制御基準算定値更新手段(第2制御基準算定値更新工程)をなすステップS108は、以降の演算処理の整合性を確保するために、錠剤の算定質量Waの値で錠剤の質量制御基準算定値WMaを置換する。
【0190】
ステップS109の実行によって質量制御をしたときの算定圧力変動値(質量の変動による圧力の変動値)PWaが求められる。つまり、ステップS109は、質量平均値Wxを質量制御基準算定値WMaにする制御をしたときの算定圧力変動値PWaを次式により求める。なお、この場合の質量制御基準算定値WMaは既述のように質量制御基準値WMと同一値である。
PWa=a(WMa−Wx)……式(12)。
【0191】
この式(12)において、aはP−W相関係数、a(WMa−Wx)の演算で求められる算出値が、質量制御をしたときの算定圧力変動値(これを第1算定圧力変動値と称する。)PWaである。
【0192】
ステップS109が終了すると、制御装置4aにより、算定厚み演算手段(算定厚み演算工程)をなすステップS110が実行される。なお、ステップS109を実行する順番はステップS115の処理までに行えば良く、又、ステップS109はステップS110と並行処理で同時に実行することも可能である。
【0193】
ステップS110は、質量制御をしたとき(質量平均値Wxを質量制御基準算定値WMaにしたとき)の厚み変動値と厚み平均値Txとから錠剤の算定厚みTaを、次式により求める。この場合の質量制御基準算定値WMaも既述のように質量制御基準値WMと同一値である。
Ta=Tx+a1(WMa−Wx)……式(13)。
【0194】
この式(13)において、a1はT−W相関係数、a1(WMa−Wx)の演算で求められる算出値が、質量制御をしたときの厚み変動値である。これにより、質量平均値Wxを質量制御基準算定値WMaにする制御をしたときの算定厚みTaが、厚み変動値とサンプリング錠の厚み平均値Txとから求められる。ここで、パターン判別部での制御パターン4の選択に従って、制御パターン4において相関係数a1を含む単項式の値は「0」として取扱われるので、質量の変動による厚みの変動を求める式(13)の演算で算出される算定厚みTaは、厚み平均値Txに等しい。
【0195】
次に、制御装置4aにより、杵先間隔算定値演算手段(杵先間隔算定値演算工程)をなすステップS111が実行される。ステップS111により、厚み制御をしたとき(算定厚みTaを厚み制御基準算定値TMaにしたとき)の、予圧位置での杵先間隔算定値lMaと、本圧位置での杵先間隔算定値LMaが、夫々次式により求められる。この場合の厚み制御基準算定値TMaは既述のように厚み制御基準値TMと同一値である。
LMa=LM+a3(TMa−Ta)……式(15)
lMa=lM+a3(TMa−Ta)……式(16)。
【0196】
同様に、式(15)において、LMは本圧位置での杵先間隔設定値、a3はL−T相関係数、TaはステップS110で求めた算定厚みである。ここで、パターン判別部での制御パターン4の選択に従い、制御パターン4において相関係数a3を含む単項式の値は「0」として取扱われるので、a3(TMa−Ta)の値は「0」である。したがって、式(15)で算出される本圧位置での杵先間隔算定値LMaは本圧位置での杵先間隔設定値LMに等しい。
【0197】
式(16)において、lMは予圧位置での杵先間隔設定値、a3はL−T相関係数、TaはステップS110で求めた算定厚みである。ここで、パターン判別部での選択に従い制御パターン4において相関係数a3を含む単項式の値は「0」として取扱われるので、a3(TMa−Ta)の値は「0」である。したがって、式(16)で算出される予圧位置での杵先間隔算定値lMaは予圧の杵先間隔設定値lMに等しい。
【0198】
ステップS111の実行後に、制御装置4aにより、第2算定圧力変更値演算手段 (第2算定圧力変更値演算工程)をなすステップS112が実行される。なお、ステップS111とステップS112を実行する順番は、以上の説明とは逆にしても良く、又、これらステップS111とステップS112は並行処理で同時に実行することも可能である。
【0199】
ステップS112は、厚み制御をしたとき(算定厚みTaを厚み制御基準算定値TMaにしたとき)の算定圧力変動値(これを第2算定圧力変動値と称する。)PTaを次式により求める。この場合の厚み制御基準算定値TMaは厚み制御基準値TMと同一値である。
PTa=a2(TMa−Ta)……式(14)。
【0200】
この式(14)において、a2はP−T相関係数、a2(TMa−Ta)の演算で求められる算出値が算定圧力変動値(第2算定圧力変動値)である。ここで、パターン判別部での選択に従い、制御パターン4において相関係数a2を含む単項式の値は「0」として取扱われるので、厚み変動による圧力の変動を求める式(14)の演算で算出される算定圧力変動値PTaは「0」である。
【0201】
ステップS112が終了すると、制御装置4aにより、圧力制御基準算定値演算手段(圧力制御基準算定値演算工程)をなすステップS115が実行される。ステップS115は、圧力制御基準算定値PMaを次式により求める。
PMa=Px+PWa+PTa……式(17)。
【0202】
この式(17)において、Pxはサンプリング錠の成型圧力平均値、PWaはステップS109で求めた算定圧力変動値(第1算定圧力変動値)、PTaはステップS112で求めた算定圧力変動値(第2算定圧力変動値)である。これにより、ステップS115の式(17)で算出される圧力制御基準算定値PMaは、成型圧力平均値Pxと、質量制御による算定圧力変動値PWaと、厚み制御による算定圧力変動値PTaとの合計値に等しい。なお、ここで、既述のように算定圧力変動値PTaの値は「0」である。
【0203】
ステップS115の処理が終わると、制御装置4aにより、ステップS116a〜ステップS124(
図5参照)を有する杵先間隔制御部(杵先間隔制御手段)KKが実行される。杵先間隔制御工程を実施する杵先間隔制御部KKは、杵先間隔を小刻みにかつ段階的に変更させる制御をする。
【0204】
即ち、フラグON手段をなすステップS116aは、杵先間隔の制御を開始させるために杵先間隔制御フラグをONする。次のステップS117により杵先間隔制御をするのか否かが判断される。つまり、杵先間隔制御判断手段(杵先間隔制御判断工程)をなすステップS117は、本圧位置での杵先間隔設定値LMが、本圧位置での杵先間隔算定値LMaと等しいか否かを判断する。又は、これに代えて、予圧位置での杵先間隔設定値lMが、予圧位置での杵先間隔算定値lMaと等しいか否かを判断してもよい。
【0205】
ステップS117の判断がYESの場合(つまり、杵先間隔の変更が不要であると判断された場合)、制御装置4aにより、フラグOFF手段をなすステップS116bが実行される。このステップS116bは、後述するステップS126の判断がYESとなって、引き続き杵先間隔が変更されないようにするために杵先間隔制御フラグをOFFする。
【0206】
ステップS117の判断がNOである場合(つまり、杵先間隔の変更が必要であると判断された場合)、制御装置4aにより、第1杵先間隔判断手段(第1杵先間隔判断工程)をなすステップS119の判断が行なわれる。このステップS119は、本圧位置での杵先間隔算定値LMaが本圧位置での杵先間隔設定値LMより小さいか否かを判断する。又は、これに代えて、予圧位置での杵先間隔算定値lMaが予圧位置での杵先間隔設定値lMより小さいか否かを判断してもよい。
【0207】
ステップS119の判断がYESである場合(LM>LMa又はlM>lMaの場合)、制御装置4aにより、第2杵先間隔判断手段(第2杵先間隔判断工程)をなす次のステップS120aでの判断が行なわれる。このステップS120aは、本圧位置での杵先間隔設定値LMから本圧位置での杵先間隔算定値LMaを引いた値(又は、これに代えて、予圧位置での杵先間隔設定値lMから予圧位置での杵先間隔算定値lMaを引いた値でもよい。なお、いずれも絶対値)が、規定寸法値より小さいか否かを判断する。この場合、規定寸法値は、パターン判別部において、1.00mm以下で例えば0.01mmに設定されている。この規定寸法値は、0.01mm〜0.50mmであることが好ましく、更に、0.01mm〜0.25mmであることがより好ましい。
【0208】
ステップS120aの判断がYESの場合(杵先間隔設定値と杵先間隔算定値の差が規定寸法値より小さい場合)、制御装置4aにより第2杵先間隔制御手段(第2杵先間隔制御工程)をなすステップS121bが実行される。このステップS121bで、本圧位置の杵先間隔Lについては、杵先間隔算定値LMaの値で杵先間隔設定値LMを更新することにより、この杵先間隔設定値LMとなるように杵先間隔Lが変更される。同様に、ステップS121bで、予圧位置の杵先間隔lについては、杵先間隔算定値lMaの値で杵先間隔設定値lMを更新することにより、この杵先間隔設定値lMとなるように杵先間隔lが変更される。こうした更新処理によって、本圧位置及び予圧位置の杵先間隔設定値と、演算によって求められる夫々の杵先間隔算定値を正確に一致させることができ、演算処理プログラムが無限ループに陥ることを回避することができる。
【0209】
ステップS120aの判断がNOである場合(杵先間隔設定値と杵先間隔算定値の差が規定寸法値より大きい場合)、制御装置4aにより、第1杵先間隔制御手段(第1杵先間隔制御工程)をなす次のステップS121aが実行される。ステップS121aにより杵先杆間隔が狭くなるように制御される。つまり、本圧位置の杵先間隔Lについては、(杵先間隔設定値LM−規定寸法値)の値で杵先間隔設定値LMを更新することにより、この杵先間隔設定値LMとなるように杵先間隔Lが狭められる。同様に、予圧位置の杵先間隔lについては、(杵先間隔設定値lM−規定寸法値)の値で杵先間隔設定値lMを更新することにより、この更新された杵先間隔設定値lMとなるように杵先間隔lが狭められる。
【0210】
この場合、規定寸法値は既述の通りであり、この規定寸法値が既述のように例えば0.01に設定されていると、本圧位置での杵先間隔Lについては、杵先間隔設定値LMから0.01mm差し引いた値に杵先間隔設定値LMが更新され、この更新された杵先間隔設定値LMとなるように杵先間隔Lが狭められる。同様に、予圧位置での杵先間隔lについては、杵先間隔設定値lMから0.01mm差し引いた値に杵先間隔設定値lMが更新され、この更新された杵先間隔設定値lMとなるように杵先間隔lが狭められる。
【0211】
ステップS119の判断がNOである場合(LM<LMa又はlM<lMaの場合)、第3杵先間隔判断手段(第3杵先間隔判断工程)をなす次のステップS120bでの判断が行なわれる。このステップS120bは、本圧位置での杵先間隔設定値LMから本圧位置での杵先間隔算定値LMaを引いた値(又は予圧位置での杵先間隔設定値lMから予圧位置での杵先間隔算定値lMaを引いた値でもよい。なお、いずれも絶対値)が、規定寸法値より小さいか否かを判断する。この場合の規定寸法値はステップS120aと同じである。
【0212】
ステップS120bの判断がYESである場合(杵先間隔設定値と杵先間隔算定値の差が規定寸法値より小さい場合)、制御装置4aによりステップS121bの処理が既述の通り実行される。
【0213】
ステップS120bの判断がNOである場合(杵先間隔設定値と杵先間隔算定値の差が規定寸法値より大きい場合)、制御装置4aにより、第3杵先間隔制御手段(第3杵先間隔制御工程)をなすステップS121cが実行される。このステップS121cは、ステップS121aによる制御とは反対に杵先間隔を広げるように制御する。
【0214】
つまり、本圧位置での杵先間隔Lについては、(杵先間隔設定値LM+規定寸法値)の値で杵先間隔設定値LMを更新することにより、更新された杵先間隔設定値LMとなるように杵先間隔Lが広げられる。同様に、予圧位置での杵先間隔lについては、(杵先間隔設定値lM+規定寸法値)の値で杵先間隔設定値lMを更新することにより、更新された杵先間隔設定値lMとなるように杵先間隔lが広げられる。
【0215】
この場合、規定寸法値は既述の通りであり、この規定寸法値が既述のように例えば0.01mmに設定されていると、本圧位置での杵先間隔Lについては、杵先間隔設定値LMに0.01mm加えた値に杵先間隔設定値LMが更新され、この更新された杵先間隔設定値LMとなるように杵先間隔Lが変更(制御)される。同様に、予圧位置での杵先間隔lについては、杵先間隔設定値lMに0.01mm加えた値に杵先間隔設定値lMが更新され、この更新された杵先間隔設定値lMとなるように杵先間隔lが変更(制御)される。
【0216】
ステップS121a、又はステップS121b、若しくはステップS121cの処理が終わると、制御装置4aにより、第1計測開始手段(第1計測開始工程)をなすステップS122が実行される。このステップS122により、回転盤11の回転を計測する動作が開始される。この後、制御装置4aにより、第1回転数判断手段(第1回転数判断工程)をなすステップS123の判断が行なわれる。ステップS123は、計測された回転盤11の回転(n回転)が設定された回転数(これをPVと称する)に達したか否かを判断する。この判断はYESとなるまで繰り返される。
【0217】
ステップS123の判断がYESになると、制御装置4aにより、第1計測終了手段(第1計測終了工程)をなすステップS124が実行される。このステップS124により、回転盤11の回転を計測する動作が終了される。
【0218】
ステップS116b又はステップS124が終了した後、制御装置4aにより、
図6に示すステップS125が行なわれて、圧力制御基準値PMを更新するか否かが判断される。つまり、圧力制御基準値更新判断手段(圧力制御基準値更新判断工程)をなすステップS125は、圧力制御部51の圧力制御基準値(現在値)PMが、圧力制御基準算定値PMaと等しいか否かを判断する。
【0219】
このステップS125の判断がYESの場合(PM=PMaの場合、つまり、圧力制御基準値PMの更新が不要であると判断された場合)、制御装置4aにより、フラグON判断手段(フラグON判断工程)をなすステップS126が行なわれて、杵先間隔制御フラグがONであるか否かの判断をする。ここで、ステップS116bを経由した信号(フラグOFF信号)をステップS126が判断した場合、このステップS126の判断はNOとなる。一方、ステップS116bを経由せずにステップS124を経由した信号(フラグON信号)をステップS126が判断した場合、このステップS126の判断はYESとなる。
【0220】
ステップS126の判断がYESとなった場合、制御装置4aのプログラムはステップS117に戻る。そして、このステップS117の判断がNOとなった場合、杵先間隔制御部KKにより杵先間隔(L及びl)を変更させる制御が再開される。したがって、ステップS117の判断がNOである限り、杵先間隔制御フラグがOFFとならずに杵先間隔(L及びl)の制御が繰り返される。
【0221】
このような制御が杵先間隔制御部KKで繰り返えされることにより、杵先間隔設定値(LM及びlM)を更新するときの規定寸法値にしたがって杵先間隔(L及びl)が、小刻み(1.00mm以下例えば0.01mm)にかつ段階的に変更(制御)される。それにより、成型圧力Pの急激な変動が抑制される。そのため、圧力制御部51での異常検出が回避されて、異常検出により打錠機2の運転が停止される虞を回避することができる。
【0222】
ステップS126の判断がNOとなった場合、制御装置4aはスタートに戻って制御を継続する。
【0223】
一方、ステップS125の判断がNOとなった場合(PM=PMaでない場合、つまり、圧力制御基準値の更新が必要であると判断された場合)、制御装置4aは、
図6に示すステップS127〜ステップS135を有する制御圧力値更新部(制御圧力値更新手段)PKを実行する。制御圧力値更新工程を実行する制御圧力値更新部PKによって、圧力制御基準値PMが小刻みかつ段階的に変えられ、それに伴う圧力制御部51での錠剤質量のフィードバック制御の実行によって成型圧力が小刻みかつ段階的に変更される。
【0224】
即ち、第1圧力制御基準値判断手段(第1圧力制御基準値判断工程)をなすステップS127の判断が行われる。このステップS127は、圧力制御部51の圧力制御基準値(現在値)PMが、圧力制御基準算定値PMaより大きいか否かを判断する。
【0225】
ステップS127の判断がYESの場合(PM>PMaの場合)、制御装置4aにより、第2圧力制御基準値判断手段(第2圧力制御基準値判断工程)をなすステップS128が行なわれる。このステップS128は、(PM−PMa)の単項式の値(絶対値)が規定圧力値より小さいか否かを判断する。つまり、ステップS128は、圧力制御部51の圧力制御基準値(現在値)PMから圧力制御基準算定値PMaを引き算した値(絶対値)が、規定圧力値より小さいか否かを判断する。
【0226】
この場合、規定圧力値はパターン判別部において10.00kN以下で例えば0.30kNに設定されるのが好ましいが、これには制約されない。この規定圧力値は、既述の杵先間隔の小刻みかつ段階的な規定寸法値での変更に基づく圧力変動値〔(規定寸法値×a2/a3)で求められる値〕であることが更に好ましい。この(規定寸法値×a2/a3)で求められる圧力変動値は、例えばパターン判別部において設定された規定寸法値が0.01mmであった場合、杵先間隔を0.01mm変更することによって生じる圧力変動値である。
【0227】
ステップS128の判断がYESの場合(つまり、圧力制御基準値PMと圧力制御基準算定値PMaとの差が、規定圧力値より小さい場合)、制御装置4aにより、第2制御圧力値更新手段(第2制御圧力値更新工程)をなすステップS131が実行される。このステップS131により、圧力制御基準算定値PMaで圧力制御基準値(現在値)PMが更新され、この更新された圧力制御基準値PMを基準に圧力制御部51の各制御圧力値が更新される。
【0228】
こうした更新処理によって、圧力制御基準値PMと、演算により求められる圧力制御基準算定値PMaを正確に一致させることができ、演算処理プログラムが無限ループに陥ることを回避することができる。
【0229】
ステップS128の判断がNOの場合(つまり、圧力制御基準値PMと圧力制御基準算定値PMaとの差が、規定圧力値より大きい場合)、制御装置4aにより、第1制御圧力値更新手段(第1制御圧力値更新工程)をなすステップS129が実行される。ステップS129により(圧力制御基準値PM−規定圧力値)の演算値で圧力制御基準値(現在値)PMが更新され、この圧力制御基準値PMを基準に圧力制御部51の各制御圧力値が減るように更新される。
【0230】
ステップS127の判断がNOの場合(PM<PMaの場合)、制御装置4aにより、第3圧力制御基準値判断手段(第3圧力制御基準値判断工程)をなすステップS130が実行されて、ステップS128と同様な判断をする。このステップS130は、PM−PMaの単項式の値(絶対値)が規定圧力値より小さいか否かを判断する。つまり、圧力制御基準値PMと圧力制御基準算定値PMaとの差が、規定圧力値より小さいか否かが、ステップS130で判断される。
【0231】
このステップS130の判断がYESの場合、制御装置4aにより、前記ステップS131が実行される。ステップS130の判断がNOの場合(つまり、圧力制御基準値PMと圧力制御基準算定値PMaとの差が、規定圧力値より大きい場合)、制御装置4aにより、第3制御圧力値更新手段(第3制御圧力値更新工程)をなすステップS132が実行される。
【0232】
このステップS132は前記ステップS129による制御とは反対に圧力制御基準値PMを増やすように制御する。つまり、ステップS132により、(圧力制御基準値PM+規定圧力値)の演算値で圧力制御基準値PMが更新され、この圧力制御基準値PMを基準に圧力制御部51の各制御圧力値が増えるように更新される。
【0233】
前記ステップS129又はステップS131或いはステップS132が終わると、制御装置4aにより、第2計測開始判断手段(第2計測開始判断工程)をなすステップS133が実行される。このステップS133により、回転盤11の回転を計測する動作が開始される。この後、制御装置4aにより、第2回転数判断手段(第2回転数判断工程)をなすステップS134の判断が行なわれる。ステップS134は、計測された回転盤11の回転(n回転)が設定された回転数(PV)に達したか否かを判断する。この判断はYESとなるまで繰り返される。
【0234】
ステップS134の判断がYESになると、制御装置4aにより、第2計測終了手段(第2計測終了工程)をなすステップS135が実行される。このステップS135により、回転盤11の回転を計測する動作が終了する。ステップS135が終わると、制御装置4aのプログラムは、杵先間隔制御部KKのステップS117に戻る。このため、ステップS117の判断がNOである場合、杵先間隔制御部KKによって杵先間隔を変更させる制御が再開される。こうしてステップS126の判断がYESであればステップS117に戻り、このステップS117の判断がNOである限り、杵先間隔の制御が繰り返され、ステップS125の判断がNOである限り、圧力制御部51の圧力制御基準値PMの更新が繰り返されるので、杵先間隔と成型圧力の小刻みな変更が段階的に行なわれる。
【0235】
この場合、既述のように杵先間隔制御部KKは、杵先間隔設定値lM及びLMの更新値にしたがって杵先間隔L及びlを小刻み(1.00mm以下例えば0.01mm)かつ段階的に変更(制御)する。それにより、成型圧力Pの急激な変動が抑制される。したがって、圧力制御部51での異常検出が回避されて、異常検出による打錠機2の運転が停止される虞を回避することができる。
【0236】
これとともに、圧力制御基準値PMも小刻みにかつ段階的に変更される。即ち、ステップS127〜ステップS132によって、圧力制御基準値PMと圧力制御基準算定値PMaとの差が規定圧力値より小さい場合、既に演算された圧力制御基準算定値PMaの値で圧力制御基準値PMを更新する制御が行われる。又、圧力制御基準値PMと圧力制御基準算定値PMaとの差が規定圧力値より大きい場合、規定圧力値に従って演算される圧力制御基準算定値PMaの値で、圧力制御基準値PMを更新する制御が行われる。
【0237】
それにより、圧力制御基準値PMの更新に伴う小刻みかつ段階的な制御によって、成型圧力Pの急激な変動が抑制される。したがって、圧力制御部51での異常検出が回避されて、異常検出による打錠機2の運転が停止される虞を回避することができる。
【0238】
以上説明した制御パターン4(W単独制御)では、後述の錠剤の硬度の制御を含んでいないとともに、錠剤の厚みの制御も含んでいないため、各杵先間隔算定値lMa,LMaが夫々杵先間隔設定値lM,LMと同じであり、よって、杵先間隔は変更されない。
【0239】
したがって、制御パターン4では、質量平均値Wxを質量制御基準算定値WMaにする制御をしたときの算定圧力変動値PWaと、成型圧力平均値Pxとから求めた圧力制御基準算定値PMaは、錠剤の質量を質量制御基準値WMに制御する質量制御のみに見合った成型圧力値となり、この圧力制御基準算定値PMaの値で更新された圧力制御部51の圧力制御基準値PMに基づくフィードバック制御(FBC)が行われる。ここで、FBCとは、圧力制御部51に設定された圧力制御基準値(現在値)PMに応じた信号出力が軌道昇降機構19の軌道昇降用モータ19aに供給されるに伴い、下杵16の高さ位置を変えて、錠剤(成型品)の質量を補正する制御を指している。
【0240】
第1実施形態の制御パターン6(T単独制御)について以下説明する。
【0241】
パターン判別部において、ステップS1で錠剤の質量を制御しないことが選択されるとともに、ステップS13で錠剤の硬度を制御しないことが選択されると、制御装置4aは、制御パターン6(T単独制御)を選択し、打錠機2の連続運転で製造される錠剤に対する厚みのみの制御を実行する。
【0242】
この制御パターン6による制御手順は、制御パターン4による制御と同様であるが、既述のように制御パターン6では、パターン判別部での制御パターンの選択に従い相関係数a4,a5は使用されず、相関係数a〜a3のみが演算処理において使用される。
【0243】
このため、ステップS109で演算される算定圧力変動値PWaは、ステップS108の第2制御基準値更新手段において、ステップS104の算定質量演算手段により求めた算定質量Waの値で置換された質量制御基準算定値WMaを用いて質量制御したときの圧力変動値である。
【0244】
言い換えれば、ステップS108では、ステップS104の演算で用いる式(11)Wa=Wx+(PM−Px)/aにより求められる算定質量Waの値で、質量制御基準算定値WMaが置き換えられるため、式(11)はWMa=Wx+(PM−Px)/aに置き換えることができる。この質量制御基準算定値WMaをステップS109の演算で用いる式(12)PWa=a(WMa−Wx)に代入すると、PWa=a〔Wx+(PM−Px)/a−Wx〕となり、PWa=PM−Pxと整理することができる。同様に、この第1算定圧力変動値PWaをステップS115の演算で用いる式(17)PMa=Px+PWa+PTaに代入すると、PMa=Px+PM−Px+PTaとなり、PMa=PM+PTaと整理することができる。
【0245】
このため、ステップS104と、ステップS108及びステップS109を経由して求められる第1算定圧力変動値PWaは、単に圧力制御基準値PMと成型圧力平均値Pxの差として求めることができる。したがって、サンプリングの度に求められる質量平均値Wx及びステップS104で求める算定質量Waの値に関係なく、第1算定圧力変動値PWaを求めることができる。
【0246】
つまり、制御パターン6における第1算定圧力変動値PWaは質量を制御しないときの圧力変動値である。このようにステップS108を経由してステップS109で求められる第1算定圧力変動値PWaにより、ステップS115で求められる圧力制御基準値PMaは、圧力制御基準値PM(現在値)と厚み制御をした時の第2算定圧力変動値PTaとから求めた値と等しくなり、錠剤の厚みのみが制御される。
【0247】
なお、本発明では「圧力制御部51でのFBCによる圧力制御すること」を前提としているので、錠剤の質量を制御しない制御パターン6の場合も、圧力制御部51でのFBC制御は機能する。しかし、この場合、錠剤質量を質量制御基準値WM(または規格基準値WO)に保持することを目的としたFBC制御ではなく、錠剤の厚みを制御するために求められ更新される圧力制御基準値PMに基づくFBC制御(圧力制御)として実行される。このことは、厚みと硬度を制御する場合(質量の制御を含まない、後述の制御パターン5のTH制御の場合)も同様である。
【0248】
一方、制御パターン6では相関係数a3を使用するので、ステップS111の演算で、a3(TMa−Ta)で求めた値と本圧位置での杵先間隔設定値LMとの合計値が、算定厚みTaを厚み制御基準算定値TMaにしたとき(厚み制御をしたとき)の本圧位置での杵先間隔算定値LMaとして求められる。同様に、ステップS111の演算では、a3(TMa−Ta)で求めた値と予圧位置での杵先間隔設定値lMとの合計値が、算定厚みTaを厚み制御基準算定値TMaにしたとき(厚み制御をしたとき)の予圧位置での杵先間隔算定値lMaとして求められる。
【0249】
そして、杵先間隔制御部KKにより杵先間隔設定値lM,LMが夫々小刻みかつ段階的に更新される。こうして更新された杵先間隔設定値lMとなるように予圧用間隔調整機構24が制御されて、予圧位置での杵先間隔が変えられるとともに、更新された杵先間隔設定値LMとなるように本圧用間隔調整機構28が制御されて、本圧位置での杵先間隔が変えられる。
【0250】
したがって、制御パターン6においては、既述のように圧力制御部51の圧力制御基準値PMに相当する質量(算定質量Wa)の成型品が生産される。この場合、既述の第1算定圧力変動値PWaと、第2算定圧力変動値PTaと、成型品の成型圧力平均値Pxとから圧力制御基準算定値PMaを求めることで、サンプリングの度に求められる算定質量Waを保持すると共に、杵先間隔設定値の更新に見合った圧力制御基準値PMの更新に従って、錠剤の厚みのみが制御される。
【0251】
この制御では、既述のように圧力制御部51の圧力制御基準値PMに相当する質量(算定質量Wa)の錠剤(成型品)が生産される。この場合、ステップS104で圧力制御基準値PMに相当する算定質量Waを求め、ステップS108でこの算定質量Waの値で質量制御基準算定値WMaを置き換え、更にステップS109の第1算定圧力変動値演算手段で、質量平均値Wxをこの質量制御基準算定値WMa(算定質量Waと同一値)に制御したときの算定圧力変動値PWa(第1算定圧力変動値)を求めておいて、ステップS115の圧力制御基準算定値演算手段で、第1算定圧力変動値PWaと、ステップS112で求めた既述の第2算定圧力変動値PTaと、サンプリング錠の成型圧力平均値Pxとから圧力制御基準算定値PMaを求める。それにより、サンプリングの度に求められる算定質量Waを保持しながら、杵先間隔設定値の更新に見合った圧力制御基準値PMの更新に従って、錠剤の厚みのみが制御される。
【0252】
以上のように制御パターン6は、パターン判別部のステップS1で錠剤の質量を制御しないことが選択された条件で、かつ、ステップS13で錠剤の硬度を制御しないことが選択された条件で実行される。このため、ステップS111で算出された杵先間隔算定値lMa,LMaに基づく杵先間隔の変更(正確には、杵先間隔制御部KKでの補正を加味した杵先間隔の変更)、及びステップS115で算出された圧力制御基準算定値PMaに基づく制御圧力値の変更(正確には、制御圧力値更新部PKでの更新を加味した制御圧力値の変更)による錠剤の厚みの制御が行われる。これにより、製造される錠剤に対する厚みのみの制御が行われる。
【0253】
第1実施形態の制御パターン2(WT制御)について以下説明する。パターン判別部で、ステップS3で錠剤の硬度を制御しないことが選択された条件下で、制御パターン2(WT制御)が選択されると、制御装置4aは、打錠機2の連続運転で製造される錠剤に対する質量と厚みの制御を実行する。
【0254】
この制御パターン2では、相関係数a4,a5は使用されず、相関係数a〜a3が演算処理において使用される。
【0255】
したがって、杵先間隔制御部KKでのステップS121a〜121cにより、予圧位置での杵先間隔が制御されるとともに本圧位置での杵先間隔が制御される。これとともに、制御圧力値更新部PKでのステップS129又はステップS131或いはステップS132によって、圧力制御部51の圧力制御基準値PMが更新されるとともに各制御圧力値が更新される。これにより、軌道昇降機構19を介して下杵16の高さ位置が変えられて、錠剤(成型品)の質量を補正するフィードバック制御(FBC)が行われ、錠剤の厚みと質量の制御が行われる。
【0256】
繰り返し簡単に説明すれば、錠剤の硬度の制御を含まない前記ステップS109〜ステップS126により実行される運転制御系統により、既述のように杵先間隔設定値lM,LMの変更により成型圧力が変動して錠剤の質量が変わらないように制御できる。
【0257】
そのために、まず、質量制御をしたとき(サンプリングされた錠剤の質量平均値Wxを質量制御基準算定値WMaにしたとき)の第1算定圧力変動値PWaを、成型圧力Pと質量Wとの間に成立するP−W相関係数aを用いて求めるとともに、前記質量制御をしたときの厚み変動値を、厚みTと質量Wとの間に成立するT−W相関係数a1を用いて求め、この厚み変動値と厚み平均値Txとから錠剤の算定厚みTaを求める。次に、厚み制御をしたとき(算定厚みTaを厚み制御基準算定値TMaにしたとき)の第2算定圧力変動値PTaを、成型圧力Pと厚みTとの間に成立するP−T相関係数a2を用いて求めるとともに、前記厚み制御をしたときの杵先間隔変動値を、杵先間隔と厚みとの間に成立するL−T相関係数a3を用いて求め、この杵先間隔変動値と杵先間隔設定値LM、lMとから杵先間隔算定値LMa、lMaを夫々求める。この後、成型圧力平均値Pxと、質量制御による第1算定圧力変動値PWaと、厚み制御による第2算定圧力変動値PTaとから圧力制御基準算定値PMaを求める。更に、杵先間隔算定値LMa、lMaで杵先間隔設定値LM、lMを夫々更新して、杵先間隔を制御するとともに、圧力制御基準算定値PMaの値で圧力制御基準値PMを更新して各制御圧力値を更新し、更新された各制御圧力値で成型圧力Pを制御する。
【0258】
こうした制御によれば、打錠機2の連続運転中に、錠剤の厚み減少などの変動を補正する厚み制御に見合って、杵先間隔L、lが制御され、更新された圧力制御基準値PMを基準とするフィードバック制御が行われて、臼12への粉末の充填深さを規定する下杵16の高さ位置が調節される。
【0259】
パターン判別部のステップS3において錠剤の硬度を制御しないことが選択された制御パターン2は、ステップS115で算出される質量制御と厚み制御とに見合った圧力制御基準算定値PMaに基づくフィードバック制御と、ステップS111で算出される杵先間隔算定値LMa、lMaに基づく杵先間隔の制御による錠剤の質量と厚みの制御とに従って、錠剤を製造する。
【0260】
第1実施形態での制御パターン1(WTH制御)について以下説明する。
【0261】
次に、
図4に示した前記ステップS105の判断がYESとなった場合、つまり、パターン判別部で選択された制御パターンが錠剤の硬度の制御を含んでいると判断した場合の制御手順を、まず、パターン判別部で制御パターン1(WTH制御)が選択された場合について
図7〜
図11を参照して説明する。制御パターン1では、演算処理において相関係数a〜a5の全てが以下説明するように使用される。
【0262】
ステップS105の判断がYESになると、制御装置4aにより、第3制御基準算定値更新手段(第3制御基準算定値更新工程)をなすステップS137が実行される。
図7に示したステップS137は、前記ステップS106と同じく、以降の演算処理の整合性を確保するために設けられている。
【0263】
このステップS137は各基準値(各規格基準値)の夫々の値で、対応する制御基準算定値を置換する処理を行う。つまり、錠剤の質量基準値WOの値で錠剤の質量制御基準算定値WMaを、錠剤の厚み基準値TOの値で錠剤の厚み制御基準算定値TMaを、錠剤の硬度基準値HOの値で錠剤の硬度制御基準算定値HMaを、夫々置き換える。このとき、質量基準値WOと質量制御基準算定値WMaは同一値、厚み基準値TOと厚み制御基準算定値TMaとは同一値、硬度基準値HOと硬度制御基準算定値HMaは同一値である。
【0264】
次に、制御装置4aにより、制御パターン第3選択手段(制御パターン第3選択工程)をなすステップS138の判断が行なわれる。このステップS138は、制御パターン1,3のいずれかが選択されているか否かを判断する。
【0265】
パターン判別部で制御パターン1,3のいずれかが選択されている場合、ステップS138の判断はYESになる。これを受けて、制御装置4aは、ステップS140、ステップS141の各工程を有して錠剤の算定硬度Haを求める第1算定硬度判断部(第1算定硬度判断手段)WK1を実行する。
【0266】
即ち、まず、第1算定硬度演算手段(第1算定硬度演算工程)をなすステップS140が実行される。ステップS140は、質量制御をしたとき(質量平均値Wxを質量制御基準算定値WMaにしたとき)の硬度変動値(これを第1硬度変動値という。)と、厚み制御をしたとき(厚み平均値Txを厚み制御基準算定値TMaにしたとき)の硬度変動値(これを第2硬度変動値という。)と、硬度平均値Hxとから、錠剤の算定硬度Haを次式により求める。
Ha=Hx+〔(WMa−Wx)/a5〕+〔(TMa−Tx)/a4〕……式(18)。
【0267】
この式(18)において、Hxはサンプリング錠の硬度平均値、a5はW−H相関係数、〔(WMa−Wx)/a5〕で演算された値が第1硬度変動値である。これとともに、サンプリング錠のTxは厚み平均値、a4はT−H相関係数であり、〔(TMa−Tx)/a4〕で演算された値が第2硬度変動値である。したがって、式(18)は、硬度平均値Hxと第1硬度変動値と第2硬度変動値とを合計して、算定硬度Haを求める。
【0268】
次に、制御装置4aにより、算定硬度第1判断手段(算定硬度第1判断工程)をなすステップS141の判断が行われる。ステップS141の判断は次の二つの現象を前提としている。第1は、製造される錠剤の厚みTが同じ、言い換えれば、打錠機2の杵先間隔を一定に保持した条件で、錠剤の質量Wを減らす制御を行えば、製造される錠剤の硬度Hが下がる、という現象である。第2は、製造される錠剤の質量Wを一定に保持した条件で、錠剤の厚みTを増やす、言い換えれば、打錠機2の杵先間隔を広げる制御を行えば、製造される錠剤の硬度Hが下がる、という現象である。
【0269】
この前提のもとにステップS141は、算定硬度Haが適正(錠剤の硬度を規格範囲内に保持して生産することが可能)であるか否かを判断する。つまり、ステップS141は、算定硬度Haが、質量・厚み・硬度の各制御基準値補正範囲の上限値又は下限値への各制御基準値補正による硬度制御可能範囲内であるのか否かを判断する。
【0270】
既述の算定硬度Haが硬度制御可能範囲に入っているか否かは、次の二つの式に基づいて判断することができる。
HOL<Ha+〔(WOH−WMa)/a5〕+〔(TOL−TMa)/a4〕
HOH>Ha−〔(WMa−WOL)/a5〕−〔(TMa−TOH)/a4〕
さらに前記二つの式は各々次のように変換することができる。
【0271】
HOL−〔(WOH−WMa)/a5〕−〔(TOL−TMa)/a4<Ha〕
Ha<HOH+〔(WMa−WOL)/a5〕+〔(TMa−TOH)/a4〕
このことから、ステップS141に示すHOL−〔(WOH−WMa)/a5〕−〔(TOL−TMa)/a4〕<Ha<HOH+〔(WMa−WOL)/a5〕+〔(TMa−TOH)/a4〕の式に置き換えて判断することができる。
【0272】
ここで、HOL−〔(WOH−WMa)/a5〕−〔(TOL−TMa)/a4〕を硬度制御可能範囲の下限値HLとし、HOH+〔(WMa−WOL)/a5〕+〔(TMa−TOH)/a4〕を硬度可能範囲の上限値HHとした時、ステップS141での硬度制御可能範囲の下限値HLは次式で演算される。
【0273】
HL=HOL−〔(WOH−WMa)/a5〕−〔(TOL−TMa)/a4〕
ステップS141での硬度制御可能範囲の上限値HHは次式で演算される。
【0274】
HH=HOH+〔(WMa−WOL)/a5〕+〔(TMa−TOH)/a4〕
これらの式において、HOLは錠剤の硬度制御基準値補正範囲の下限値、HOHは錠剤の硬度制御基準値補正範囲の上限値、WOLは錠剤の質量制御基準値補正範囲の下限値、WOHは錠剤の質量制御基準値補正範囲の上限値、TOLは錠剤の厚み制御基準値補正範囲の下限値、TOHは錠剤の厚み制御基準値補正範囲の上限値であり、a5はW−H相関係数、a4はT−H相関係数である。
【0275】
したがって、ステップS141は、HL<Ha<HHの式によって算定硬度Haが適正(錠剤の硬度を規格範囲内に保持して生産することが可能)であるのか否かを判断する。
【0276】
ステップS141の判断がNO(算定硬度Haが質量・厚み・硬度の各制御基準算定値の補正による硬度制御可能範囲外)であることは、質量・厚み・硬度の全ての制御基準算定値を補正しても、製造される錠剤の硬度を規格範囲内とする制御ができない、ということである。この場合、制御装置4aにより、報知・停止手段(報知・停止手段工程)をなすステップS146が実行される。これにより、異常を報知する信号(異常信号)が出力されるととともに、例えば打錠機2の運転が停止される。
【0277】
ステップS141の判断がYESになると、制御装置4aにより、
図8に示す補正先第1判断手段(補正先第1判断工程)をなすステップS151の判断が行なわれる。このステップS151は、制御基準算定値の1番目の補正先が「硬度」であるか否かを判断する。
【0278】
制御基準算定値の1番目の補正先が「硬度」でない場合、ステップS151の判断はNOとなるので、制御装置4aにより、補正先第2判断手段(補正先第2判断工程)をなすステップS161の判断が行なわれる。このステップS161は、制御基準算定値の1番目の補正先が「厚み」であるか否かを判断する。
【0279】
制御基準算定値の1番目の補正先が「厚み」でない場合、ステップS161の判断はNOとなるので、制御装置4aにより、補正先第3判断手段(補正先第3判断工程)をなすステップS171の判断が行なわれる。ステップS171は、制御基準算定値の1番目の補正先が「質量」であるか否かを判断する。なお、これらステップS151、S161、およびS171は、いずれも硬度制御可能範囲に入るか否かを判断する手段ではなく、あくまでも制御基準算定値の1番目の補正先が何であるかを判断する手段である。
【0280】
ステップS171の判断がNOである場合、即ち、入力手段により設定された順位に従って硬度と厚みと質量のいずれの制御基準算定値も1番目の補正先として設定(登録)されていない、と判断された場合、制御装置4aによる制御はできない。このため、制御装置4aにより、前記ステップS146が実行されて、異常を報知する信号(異常信号)を出力するとともに例えば打錠機2の運転を停止させる。なお、このような選択肢は、前段のステップS4で予め制御基準算定値の補正順位を登録しているので、実際にはあり得ない。
【0281】
ステップS151の判断がYESである(制御基準算定値の1番目の補正先が硬度である)場合、制御装置4aにより、算定硬度第3判断手段(算定硬度第3判断工程)をなすステップS152の判断が行われる。このステップS152は、算定硬度Haが、硬度制御基準算定値HMaの補正による硬度制御可能範囲内であるか否かを判断する。
【0282】
ここで、硬度制御可能範囲は次式で規定される。
HMa−kh(HMa−HOL)≦Ha≦HMa+kh(HOH−HMa)
この式でkhは硬度制御基準算定値HMaを補正するときの硬度補正係数であり、0.01〜1.00の任意な値に設定される。硬度補正係数khは1.00未満であることが好ましい。
【0283】
なお、硬度補正係数khが1.00の場合、硬度制御可能範囲は次式の通りとなる。
HOL≦Ha≦HOH
ステップS152の判断がYESである(算定硬度Haが硬度制御基準算定値HMaの補正による硬度制御可能範囲内である)場合、制御装置4aにより、第1硬度制御基準算定値更新手段(第1硬度制御基準算定値更新工程)をなすステップS153が実行される。このステップS153は、以降の演算処理での整合性を確保するため算定硬度Haの値で硬度制御基準算定値HMaを更新する。
【0284】
この後、制御装置4aに格納されたプログラムは、ステップS153で更新された硬度制御基準算定値HMaを前記ステップS109に供給する。そのため、ステップS152がYESと判断した場合、ステップS153を経て前記ステップS109〜ステップS126が実行される。それにより、製造される錠剤の硬度を規格の範囲内に保持して錠剤が製造される。
【0285】
ステップS152の判断がNOである(算定硬度Haが硬度制御基準算定値HMaの補正による硬度制御可能範囲外である)場合、制御装置4aにより、算定硬度第6判断手段(算定硬度第6判断工程)であるステップS154が実行される。
図9に示すステップS154は、算定硬度Haが、錠剤の硬度制御基準算定値HMaより小さいか否かを、次式によって判断する。
【0286】
HMa−kh(HMa−HOL)>Ha
ステップS154の判断がYESである(算定硬度Haが硬度制御基準算定値HMaより小さい)場合、制御装置4aにより、第2硬度制御基準算定値更新手段(第2硬度制御基準算定値更新工程)をなすステップS155が実行される。
図9に示すステップS155は、硬度制御基準算定値HMa等を用いて錠剤の硬度制御基準暫定値HMbを下記の式によって求める。
HMb=HMa−kh(HMa−HOL)……式(19)。
【0287】
これとともに、ステップS155は、以降の演算処理との整合性を確保するために、算出された硬度制御基準暫定値HMbの値で硬度制御基準算定値HMaを更新する。つまり、ステップS155は、算定硬度Haが硬度制御基準算定値HMaより小さい場合、硬度制御基準値補正範囲の下限値HOLと硬度制御基準算定値HMaとの差に、ステップS152で用いた硬度補正係数khを乗じた値と、硬度制御基準算定値HMaとから硬度制御基準暫定値HMbを求めて、この硬度制御基準暫定値HMbの値で硬度制御基準算定値HMaを更新し、それにより、硬度制御基準算定値HMaを減らす処理をする。
【0288】
この処理において、硬度補正係数khが1.00未満に設定されている場合に従う補正では、許される範囲で限度一杯まで、硬度制御基準算定値HMaを一気に減らす処理をするのではなく、硬度補正係数khによる補正にしたがい前記限度より小さく硬度制御基準算定値HMaが減らされる。なお、硬度補正係数khが1.00に設定されている場合に従う補正では、許される範囲の限度一杯まで、硬度制御基準算定値HMaが一気に減らされる。
【0289】
ステップS154の判断がNOである(算定硬度Haが硬度制御基準算定値HMaより大きい)場合、制御装置4aにより、第2硬度制御基準算定値更新手段(第2硬度制御基準算定値更新工程)であるステップS156が実行される。
図9に示すステップS156は、硬度制御基準算定値HMa等を用いて錠剤の硬度制御基準暫定値HMbを下記の式によって求める。
HMb=HMa+kh(HOH−HMa)……式(20)。
【0290】
これとともに、ステップS156は、以降の演算処理との整合性を確保するために、算出された硬度制御基準暫定値HMbの値で硬度制御基準算定値HMaを更新する。つまり、ステップS156は、算定硬度Haが硬度制御基準算定値HMaより大きい場合、硬度制御基準値補正範囲の上限値HOHと硬度制御基準算定値HMaとの差に、ステップS152で用いた硬度補正係数khを乗じた値と、硬度制御基準算定値HMaとから硬度制御基準暫定値HMbを求めて、この硬度制御基準暫定値HMbの値で硬度制御基準算定値HMaを更新し、それにより、硬度制御基準算定値HMaを増やす処理をする。
【0291】
この処理において、硬度補正係数khが1.00未満に設定されている場合に従う補正では、許される範囲で限度一杯まで、硬度制御基準算定値HMaを一気に増やす処理をするのではなく、硬度補正係数khによる補正にしたがい前記限度より小さく硬度制御基準算定値HMaが増やされる。なお、硬度補正係数khが1.00に設定されている場合に従う補正では、許される範囲の限度一杯まで、硬度制御基準算定値HMaが一気に増やされる。
【0292】
以上のようにステップS154〜ステップS156で形成されて算定硬度補正工程を実行する算定硬度補正部(算定硬度補正手段)HKAによる演算上の硬度制御基準算定値HMaの補正では、錠剤の硬度制御基準算定値HMaが硬度制御基準値補正範囲を外れないように硬度制御基準算定値HMaを更新する。しかし、こうした硬度制御基準算定値HMaの補正では前記ステップS152の判断に従って錠剤の硬度を適正化できない。このため、ステップS155又はステップS156の終了後に、制御装置4aにより、補正先第4判断手段(補正先第4判断工程)をなすステップS157で次の補正先を判断して、その補正先に、ステップS155又はステップS156において硬度制御基準暫定値HMbの値で更新された硬度制御基準算定値HMaを供給する。なお、硬度制御基準暫定値HMbは硬度制御基準算定値HMaを補正(更新)するための演算値である。
【0293】
具体的には、ステップS157は次の補正先が「質量」であるか否かを判断する。これにより、次の補正先が「質量」である場合(ステップS157の判断がYESである場合)、制御装置4aによる制御は質量制御基準算定値WMaの補正処理手順を判断するためのステップS172に進む。又、次の補正先が「質量」でない場合(ステップS157の判断がNOである場合)、制御装置4aによる制御は厚み制御基準算定値TMaの補正処理手順を判断するためのステップS162に進む。このステップS157の判断(つまり、次の補正が「質量」であるのか「厚み」であるのか)は、入力手段により指定された制御基準算定値の補正順位に従っている。
【0294】
前記ステップS151の判断がNOとなったことに伴い、この次に実行されたステップS161の判断がYESである(制御基準算定値の1番目の補正先が厚みである)場合、制御装置4aにより、算定硬度第4判断手段(算定硬度第4判断工程)をなすステップS162の判断が行なわれる。このステップS162は、算定硬度Haが、厚み制御基準算定値TMaの補正による硬度制御可能範囲内であるか否かを判断する。
【0295】
ここで、硬度制御可能範囲は次式で規定される。
HMa−kt(TOL−TMa)/a4≦Ha≦HMa+kt(TMa−TOH)/a4
この式でktは、厚み制御基準算定値TMaを補正するときの厚み補正係数であり、0.01〜1.00の任意な値に設定される。厚み補正係数ktは1.00未満であることが好ましい。
【0296】
なお、厚み補正係数ktが1.00の場合、硬度制御可能範囲は次式の通りとなる。
HMa−(TOL−TMa)/a4≦Ha≦HMa+(TMa−TOH)/a4
ステップS162の判断がYESである(算定硬度Haが厚み制御基準算定値TMaの補正による硬度制御可能範囲内である)場合、制御装置4aにより、第1厚み制御基準算定値更新手段(第1厚み制御基準算定値更新工程)をなすステップS163が実行される。
【0297】
このステップS163は、厚み制御基準算定値TMa等を用いて錠剤の厚み制御基準暫定値TMbを下記の式によって求める。
TMb=TMa+a4(HMa−Ha)……式(21)。
【0298】
これとともに、ステップS163は、以降の演算処理との整合性を確保するために、算出された厚み制御基準暫定値TMbの値で、厚み制御基準算定値TMaを更新する。なお、厚み制御基準暫定値TMbは厚み制御基準算定値TMaを補正(更新)するための演算値である。
【0299】
この後、制御装置4aに格納されたプログラムは、ステップS163で更新された厚み制御基準算定値TMaを前記ステップS109以降の演算処理ステップに供給する。そのため、ステップS162がYES(算定硬度Haが厚み制御基準算定値TMaの補正による硬度制御可能範囲内である)と判断された場合、ステップS163を経てステップS109〜ステップS126実行される。それにより、製造される錠剤の硬度を規格の範囲内に保持して錠剤が製造される。
【0300】
ステップS162の判断がNOである(算定硬度Haが厚み制御基準算定値TMaの補正による硬度制御可能範囲外である)場合、制御装置4aにより、算定硬度第7判断手段(算定硬度第7判断工程)であるステップS164が実行される。
図10に示すステップS164は、算定硬度Haが、錠剤の硬度制御基準算定値HMaより小さいか否かを、次式によって判断する。
【0301】
HMa−kt(TOL−TMa)/a4>Ha
ステップS164の判断がYESである(算定硬度Haが硬度制御基準算定値HMaより小さい)場合、制御装置4aにより、第2厚み制御基準算定値更新手段(第2厚み制御基準算定値更新工程)をなすステップS165が実行される。
図10に示すステップS165は、厚み制御基準算定値TMa等を用いて錠剤の厚み制御基準暫定値TMbを下記の式によって求める。
TMb=TMa−kt(TMa−TOL)……式(22)。
【0302】
これとともに、ステップS165は、以降の演算処理との整合性を確保するために、算出された厚み制御基準暫定値TMbの値で厚み制御基準算定値TMaを更新する。つまり、ステップS165は、算定硬度Haが硬度制御基準算定値HMaより小さい場合、厚み制御基準値補正範囲の下限値TOLと厚み制御基準算定値TMaとの差に、ステップS162で用いた厚み補正係数ktを乗じた値と、厚み制御基準算定値TMaとから厚み制御基準暫定値TMbを求めて、この厚み制御基準暫定値TMbの値で厚み制御基準算定値TMaを更新し、それにより、厚み制御基準算定値TMaを減らす処理をする。
【0303】
この処理において、厚み補正係数ktが1.00未満に設定されている場合に従う補正では、許される範囲で限度一杯まで、厚み制御基準算定値TMaを一気に減らす処理をするのではなく、厚み補正係数ktによる補正にしたがい前記限度より小さく厚み制御基準算定値TMaが減らされる。なお、厚み補正係数ktが1.00に設定されている場合に従う補正では、許される範囲の限度一杯まで、厚み制御基準算定値TMaが一気に減らされる。
【0304】
ステップS164の判断がNOである(算定硬度Haが硬度制御基準算定値HMaより大きい)場合、制御装置4aにより、第2厚み制御基準算定値更新手段(第2厚み制御基準算定値更新工程)であるステップS166が実行される。
図10に示すステップS166は、厚み制御基準算定値TMa等を用いて錠剤の厚み制御基準暫定値TMbを下記に示す式によって求める。
TMb=TMa+kt(TOH−TMa)……式(23)。
【0305】
これとともに、ステップS166は、以降の演算処理との整合性を確保するために、算出された厚み制御基準暫定値TMbの値で厚み制御基準算定値TMaを更新する。つまり、ステップS166は、算定硬度Haが硬度制御基準算定値HMaより大きい場合、厚み制御基準値補正範囲の上限値TOHと前記厚み制御基準算定値TMaとの差に、ステップS162で用いた厚み補正係数ktを乗じた値と、厚み制御基準算定値TMaとから厚み制御基準暫定値TMbを求めて、この厚み制御基準暫定値TMbの値で厚み制御基準算定値TMaを更新し、それにより、厚み制御基準算定値TMaを増やす処理をする。
【0306】
この処理において、厚み補正係数ktが1.00未満に設定されている場合に従う補正では、許される範囲で限度一杯まで、厚み制御基準算定値TMaを一気に増やす処理をするのではなく、厚み補正係数ktによる補正にしたがい前記限度より小さく厚み制御基準算定値TMaが増やされる。なお、厚み補正係数ktが1.00に設定されている場合に従う補正では、許される範囲の限度一杯まで、厚み制御基準算定値TMaが一気に増やされる。
【0307】
ステップS165又はステップS166が終わると、制御装置4aにより、第3算定硬度演算手段(第3算定硬度演算工程)であるステップS167が実行されて、新たな算定硬度Haが次式により求められる。この式は前記式(18)と同じである。
【0308】
Ha=Hx+〔(WMa−Wx)/a5〕+〔(TMa−Tx)/a4〕……式(18)
以上のようにステップS164〜ステップS167で形成されて算定厚み補正工程を実行する算定厚み補正部(算定厚み補正手段)HKBによる演算上の厚み制御基準算定値TMaの補正では、錠剤の厚み制御基準算定値TMaが厚み制御基準値の補正範囲を外れないように厚み制御基準算定値TMaを更新し、この更新された厚み制御基準算定値TMa等を用いて新たな算定硬度Haを算出する。しかし、こうした厚み変化による硬度制御では前記ステップS162の判断に従って錠剤の硬度を適正化できない。このため、ステップS167の終了後に、制御装置4aにより、補正先第5判断手段(補正先第5判断工程)をなすステップS168で次の補正先を判断して、その補正先に、ステップS165またはステップS166で更新された厚み制御基準算定値TMaと、ステップS167で新たに算出された算定硬度Haを供給する。
【0309】
具体的には、ステップS168は次の補正先が「質量」であるか否かを判断する。これにより、次の補正先が「質量」である場合(ステップS168の判断がYESである場合)、制御装置4aによる制御は後述の質量制御基準算定値WMaの補正処理手順を判断するためのステップS172に進む。又、次の補正先が「質量」でない場合(ステップS168の判断がNOである場合)、制御装置4aによる制御は前記硬度制御基準算定値HMaの補正処理手順を判断するためのステップS152に進む。このステップS168の判断(つまり、次の補正が「質量」であるのか「硬度」であるのか)は、入力手段により指定された制御基準算定値の補正順位に従っている。
【0310】
前記ステップS161の判断がNOとなったことに伴い、この次に実行されたステップS171は、制御基準算定値の1番目の補正先が「質量」であるか否かを判断する。ステップS171の判断がYESである(制御基準算定値の1番目の補正先が質量である)場合、制御装置4aにより、算定硬度第5判断手段(算定硬度第5判断工程)をなすステップS172の判断が行なわれる。このステップS172は、算定硬度Haが、質量制御基準算定値WMaの補正による硬度制御可能範囲内であるか否かを判断する。
【0311】
ここで、硬度制御可能範囲は次式で規定される。
HMa−kw(WOH−WMa)/a5≦Ha≦HMa+kw(WMa−WOL)/a5
この式でkwは質量制御基準算定値WMaを補正するときの質量補正係数であり、0.01〜1.00の任意な値に設定される。質量補正係数kwは1.00未満であることが好ましい。
【0312】
なお、質量補正係数kwが1.00の場合、硬度制御可能範囲は次式の通りとなる。
【0313】
HMa−(WOH−WMa)/a5≦Ha≦HMa+(WMa−WOL)/a5
ステップS172の判断がYESである(算定硬度Haが質量制御基準算定値WMaの補正による硬度制御可能範囲内である)場合、制御装置4aにより、第1質量制御基準算定値更新手段(第1質量制御基準算定値更新工程)をなすステップS173が実行される。
【0314】
このステップS173は、質量制御基準算定値WMa等を用いて錠剤の質量制御基準暫定値WMbを下記の式によって求める。
WMb=WMa+a5(HMa−Ha)……式(24)。
【0315】
これとともに、ステップS173は、以降の演算処理との整合性を確保するために、算出された質量制御基準暫定値WMbの値で質量制御基準算定値WMaを更新する。なお、質量制御基準暫定値WMbは質量制御基準算定値WMaを補正(更新)するための演算値である。
【0316】
この後、制御装置4aに格納されたプログラムは、ステップS173で更新された質量制御基準算定値WMaを前記ステップS109に供給する。したがって、ステップS172がYES(算定硬度Haが質量制御基準算定値の補正による硬度制御可能範囲外である)と判断した場合、ステップS173を経て前記ステップS109〜ステップS126が実行される。それにより、製造される錠剤の硬度を規格の範囲内に保持して錠剤が製造される。
【0317】
ステップS172がNO(算定硬度Haが質量制御基準算定値の補正による硬度制御可能範囲外である)と判断した場合、制御装置4aにより、算定硬度第8判断手段であるステップS174が実行される。
図11に示すステップS174は、錠剤の算定硬度Haが、錠剤の硬度制御基準算定値HMaより小さいか否かを、次式によって判断する。
【0318】
HMa−kw(WOH−WMa)/a5>Ha
ステップS174の判断がYESである(算定硬度Haが硬度制御基準算定値HMaより小さい)場合、制御装置4aにより、第2質量制御基準算定値更新手段(第2質量制御基準算定値更新工程)をなすステップS175が実行される。
図11に示すステップS175は、質量制御基準算定値WMa等を用いて錠剤の質量制御基準暫定値WMbを下記の式によって求める。
WMb=WMa+kw(WOH−WMa)……式(25)。
【0319】
これとともに、ステップS175は、以降の演算処理との整合性を確保するために、算出された質量制御基準暫定値WMbの値で質量制御基準算定値WMaを更新する。つまり、ステップS175は、算定硬度Haが硬度制御基準算定値HMaより小さい場合、質量制御基準値補正範囲の上限値WOHと質量制御基準算定値WMaとの差に、ステップS172で用いた質量補正係数kwを乗じた値と、質量制御基準算定値WMaとから質量制御基準暫定値WMbを求めて、この質量制御基準暫定値WMbの値で質量制御基準算定値WMaを更新し、それにより、質量制御基準算定値WMaを増やす処理をする。
【0320】
この処理において、質量補正係数kwが1.00未満に設定されている場合に従う補正では、許される範囲で限度一杯まで、質量制御基準算定値WMaを一気に増やす処理をするのではなく、質量補正係数kwによる補正にしたがい前記限度より小さく質量制御基準算定値WMaが増やされる。なお、質量補正係数kwが1.00に設定されている場合に従う補正では、許される範囲の限度一杯まで、質量制御基準算定値WMaが一気に増やされる。
【0321】
ステップS174の判断がNOである(算定硬度Haが硬度制御基準算定値HMaより大きい)場合、制御装置4aにより、第2質量制御基準算定値更新手段(第2質量制御基準算定値更新工程)をなすステップS176が実行される。
図11に示すステップS176は、質量制御基準算定値WMa等を用いて錠剤の質量制御基準暫定値WMbを下記に示す式によって求める。
WMb=WMa−kw(WMa−WOL)……式(26)。
【0322】
これとともに、ステップS176は、以降の演算処理との整合性を確保するために、算出された質量制御基準暫定値WMbの値で質量制御基準算定値WMaを更新する。つまり、ステップS176は、算定硬度Haが硬度制御基準算定値HMaより大きい場合、質量制御基準値補正範囲の下限値WOLと質量制御基準算定値WMaとの差に、ステップS172で用いた質量補正係数kwを乗じた値と、質量制御基準算定値WMaとから質量制御基準暫定値WMbを求めて、この質量制御基準暫定値WMbの値で質量制御基準算定値WMaを更新し、それにより、質量制御基準算定値WMaを減らす処理をする。
【0323】
この処理において、質量補正係数kwが1.00未満に設定されている場合に従う補正では、許される範囲で限度一杯まで、質量制御基準算定値WMaを一気に減らす処理をするのではなく、質量補正係数kwによる補正にしたがい前記限度より小さく質量制御基準算定値WMaが減らされる。なお、質量補正係数kwが1.00に設定されている場合に従う補正では、許される範囲の限度一杯まで、質量制御基準算定値WMaが一気に減らされる。
【0324】
ステップS175又はステップS176が終わると、制御装置4aにより、第4算定硬度演算手段をなすステップS177が実行されて、新たな算定硬度Haが次式により求められる。この式は前記式(18)と同じである。
Ha=Hx+〔(WMa−Wx)/a5〕+〔(TMa−Tx)/a4〕……式(18)。
【0325】
以上のようにステップS174〜ステップS177で形成されて算定質量補正工程を実行する算定質量補正部(算定質量補正手段)HKCによる演算上の質量制御基準算定値WMaの補正では、質量制御基準算定値WMaが、質量制御基準値の補正範囲を外れないように質量制御基準算定値WMaを更新し、この更新された質量制御基準算定値WMa等を用いて新たな算定硬度Haを算出する。しかし、こうした質量変化による硬度制御では前記ステップS172の判断に従って錠剤の硬度を適正化できない。このため、ステップS177の終了後に、制御装置4aにより、補正先第6判断手段をなすステップS178で次の補正先を判断して、その補正先に、ステップS175又はステップS176で更新された質量制御基準算定値WMaと、ステップS177で算出された新たな算定硬度Haを供給する。
【0326】
具体的には、ステップS178は次の補正先が「厚み」であるか否かを判断する。これにより、次の補正先が「厚み」である場合(ステップS178の判断がYESである場合)、制御装置4aによる制御は前記厚み制御基準算定値TMaの補正処理手順を判断するためのステップS162に進む。又、次の補正先が「厚み」でない場合(ステップS178の判断がNOである場合)、制御装置4aによる制御は前記硬度制御基準算定値HMaの補正処理手順を判断するためのステップS152に進む。このステップS178の判断(つまり、次の補正が「厚み」であるのか「硬度」であるのかの判断)は、入力手段により指定された制御基準算定値の補正順位に従っている。
【0327】
以上のように制御パターン1(WTH制御)では、ステップS152の判断がNOとなるに伴い、ステップS154〜ステップS157が実行されて規格範囲内の硬度を得るための硬度制御基準算定値HMaの補正がなされる。この硬度制御基準算定値HMaの補正に基づいてステップS157で次の制御基準算定値の補正先が「厚み」であると判断された上で、ステップS162による判断がNOとなった場合、ステップS164〜ステップS168が実行されて規格範囲内の硬度を得るための厚み制御基準算定値TMaの補正がなされる。ステップS168で次の制御基準算定値の補正先が「質量」であると判断された上で、ステップS172による判断がNOとなった場合、ステップS174〜ステップS178が実行されて規格範囲内の硬度を得るための質量制御基準算定値WMaの補正がなされる。更に、ステップS152、又はステップS162、又はステップS172の何れかがYESとなるまで、入力手段により登録された制御基準算定値の補正順位に従って、既述の各制御基準算定値の補正処理が繰り返し行われる。これにより、製造される錠剤の硬度Hが規格範囲内に保持される。
【0328】
このように制御装置4aに格納されたプログラムの硬度制御系統を実行するステップS137〜ステップS178による制御で、打錠機2は、製造される錠剤の硬度を規格範囲内(硬度が製品の規格範囲内にある。)に保持して、錠剤を製造できる。これとともに、打錠機2は引き続いてステップS109〜ステップS126に従って運転される。これにより、杵先間隔が制御され、かつ、圧力制御部51に設定された圧力制御基準値(現在値)が更新される。したがって、厚みと質量と共に硬度が規格範囲内に保持された錠剤を製造することができる。
【0329】
以上説明したように第1実施形態の打錠装置1によれば、粉末を圧縮して製造される錠剤の質量と厚みと硬度のうちの少なくとも一つ例えば質量と厚みを、打錠機2の連続運転に伴う打錠機2各部の温度変化に拘らず規格範囲内に保持して製造可能な打錠装置1とその運転方法を提供することが可能である。
【0330】
なお、各補正係数kh、kt、kwが夫々1.00の条件で、以上説明したWTH制御での制御基準算定値の補正順位を1番目が硬度、2番目が厚み、3番目が質量とした場合、厚み制御基準算定値TMaの補正の結果、ステップS168の判断がNOとなって、ステップS172に進んだ場合、このステップS172の判断は必ずYESとなる。その理由は、ステップS141で、質量・厚み・硬度の全ての制御基準算定値を上限値又は下限値まで補正すれば、算定硬度Haが規格範囲内となるか否かを判断し、その判断がYESの場合に前記硬度H−厚みT−質量Wの制御基準算定値の補正順位で夫々補正がなされたことによる。
【0331】
以上説明した制御では、錠剤の硬度を規格範囲内とする上で、過度に大きな制御が一度に実施されないように硬度・厚み・質量についての各補正係数(kh、kt、kw)を夫々1.00未満として、これら各補正係数にしたがって、硬度・厚み・質量の夫々の制御基準算定値を小刻みに補正している。それにより、硬度制御での硬度・厚み・質量の夫々の制御基準値の変動を小さく抑制しつつ、前記夫々の制御基準算定値の補正範囲の限度まで補正をすることを必ずしも必要としない。よって、前記補正範囲の限度まで補正をする以前の段階で、前記夫々の規格基準値に略近似する錠剤を製造することが可能となり、製造する錠剤の品質を向上させることが可能である。なお、各補正係数(kh、kt、kw)の値を、第1実施形態では同じとしたが、これらは異なっていてもよい。
【0332】
以上の説明では選択された制御パターン1での各制御基準算定値の補正順位を1番目が硬度H、2番目が厚みT、3番目が質量Wとしたが、制御パターン1については、この他に、各制御基準算定値の補正順位を、HWTの記載順、THWの記載順、TWHの記載順、WHTの記載順、WTHの記載順のいずれかに指定することも可能である。そして、これらのうちの一つが指定されることによって、各制御基準算定値の補正順位に従った質量Wと厚みTと硬度Hの夫々の制御基準算定値の補正に基づく硬度制御が行われた上で、この補正された各制御基準算定値にするための杵先間隔設定値lM,LMの更新と圧力制御部51の圧力制御基準値PMの更新とによって、質量Wと厚みTと硬度Hが製品の規格範囲内に保持された錠剤を製造することが可能である。
【0333】
第1実施形態での制御パターン5(TH制御)について以下説明する。錠剤の厚みTと硬度Hを制御する制御パターン5(TH制御)が選択された場合、その硬度制御部HKでの制御基準算定値の補正順位を1番目が厚みT、2番目が硬度Hとする場合と、1番目が硬度H、2番目が厚みTとする場合とのいずれかを、パターン判別部において指定(選択)できる。
【0334】
パターン判別部で制御パターン5(TH制御)が選択された場合、前記ステップS138の判断はNOとなる。これを受けて、制御装置4aは、
図7に示すステップS142を実行する。このステップS142により、以降の演算処理の整合性を確保するために、ステップS104で求めた算定質量Waの値で質量制御基準算定値WMaを置換する。ステップS142は第4制御基準算定値更新手段(第4制御基準算定値更新工程)をなす。
【0335】
次に、制御装置4aは、ステップS144、ステップS145の各工程を有して錠剤の算定硬度Haを求める第2算定硬度判断部(第2算定硬度判断手段)WK2を実行する。
【0336】
即ち、まず、第2算定硬度演算手段(第2算定硬度演算工程)をなすステップS144が実行される。ステップS144は、前記ステップS140と同じに、質量制御をしたとき(質量平均値Wxを質量制御基準算定値WMaにしたとき)の硬度変動値(これを第1硬度変動値という。)と、厚み制御をしたとき(厚み平均値Txを厚み制御基準算定値TMaにしたとき)の硬度変動値(これを第2硬度変動値という。)と、硬度平均値Hxとから、錠剤の算定硬度Haを次式により求める。
Ha=Hx+〔(WMa−Wx)/a5〕+〔(TMa−Tx)/a4〕……式(18)。
この式(18)はステップS140で用いた式と同じである。
【0337】
次に、制御装置4aにより、ステップS141と同様な算定硬度第2判断手段(算定硬度第2判断工程)をなすステップS145が実行される。ステップS145は、算定硬度Haが適正(錠剤の硬度を規格範囲内に保持して生産することが可能)であるか否かを判断する。つまり、ステップS145は、算定硬度Haが、厚み・硬度の各制御基準算定値補正による硬度制御可能範囲内であるのか否かを判断する。
【0338】
但し、制御パターン5では質量制御基準値の補正は行わないため、質量制御基準算定値WMaを質量制御基準値補正範囲の上限値または下限値に補正することによる硬度制御は含まれない。
【0339】
既述の算定硬度Haが硬度制御可能範囲に入っているか否かは、次の二つの式に基づいて判断することができる。
【0340】
HOL<Ha+(TOL−TMa)/a4
HOH>Ha−(TMa−TOH)/a4
さらに前記二つの式は各々次のように変換することができる。
【0341】
HOL−(TOL−TMa)/a4<Ha
Ha<HOH+(TMa−TOH)/a
このことから、ステップS145に示すHOL−(TOL−TMa)/a4<Ha<HOH+(TMa−TOH)/a4の式に置き換えて判断することができる。
【0342】
ここで、HOL−(TOL−TMa)/a4を硬度制御可能範囲の下限値HLとし、HOH+(TMa−TOH)/a4を硬度可能範囲の上限値HHとした時、
ステップS145での硬度制御可能範囲の下限値HLは次式で演算される。
HL=HOL−(TOL−TMa)/a4
ステップS145での硬度制御可能範囲の上限値HHは次式で演算される。
HH=HOH+(TMa−TOH)/a4
これらの式において、HOLは錠剤の硬度制御基準値補正範囲の下限値、HOHは錠剤の硬度制御基準値補正範囲の上限値、TOLは錠剤の厚み制御基準値補正範囲の下限値、TOHは錠剤の厚み制御基準値補正範囲の上限値であり、a4はT−H相関係数である。
【0343】
したがって、ステップS145は、HL<Ha<HHの式によって算定硬度Haが適正(錠剤の硬度を規格範囲内に保持して生産することが可能)であるのか否かを判断する。
【0344】
ステップS145の判断がNO(算定硬度Haが厚み・硬度の各制御基準算定値の補正による硬度制御可能範囲外)であることは、厚みと硬度の各制御基準値を補正しても、製造される錠剤の硬度を規格の範囲内とする制御ができない、ということである。この場合、制御装置4aにより、前記ステップS146が実行される。これにより、異常を報知する信号(異常信号)が出力されるとともに、例えば打錠機2の運転が停止される。
【0345】
ステップS145の判断がYES(算定硬度Haが厚み・硬度の各制御基準算定値の補正による硬度制御可能範囲内)であることは、厚みと硬度の各制御基準値を補正することで、製造される錠剤の硬度を規格の範囲内とする制御が可能である、ということである。この場合、既に入力された各種制御基準算定値の補正先の順位に従って、制御装置4aは
図8に示した硬度制御部(硬度制御手段)HKを制御する。
【0346】
第1実施形態での制御パターン5(TH制御)が選択された条件下での硬度制御系統による制御では、ステップS152〜ステップS157の各工程を実行する算定硬度補正部HKAと、ステップS162〜ステップS168の各工程を実行する算定厚み補正部HKBが実行される。これらの制御は、制御パターン1で、
図8、
図9、
図10を用いて既に説明した制御と同じであるので、重複説明を避けるため、ここでは説明を省略する。しかし、制御パターン5では、算定質量補正部HKCに関するステップS172〜ステップS178は実行されない。
【0347】
このため、いずれかの制御基準算定値の補正順位が指定されることに基づいて、その補正順位に従った厚みTと硬度Hの各制御基準算定値の補正に基づく硬度制御が行われた上で、杵先間隔設定値lM,LMの更新と圧力制御部51の圧力制御基準値PMの更新とによって、錠剤の厚みと硬度の制御とがなされる。
【0348】
それにより、制御パターン5によれば、厚みTと硬度Hが製品の規格範囲内に保持された錠剤を製造することが可能である。
【0349】
第1実施形態での制御パターン3(WH制御)について以下説明する。
【0350】
錠剤の質量Wと硬度Hを制御する制御パターン3(WH制御)において、その硬度制御部HKでの制御基準算定値の補正順位を1番目が質量W、2番目が硬度Hとする場合と、1番目が硬度H、2番目が質量Wとする場合を、パターン判別部において指定できる。
【0351】
制御パターン3が選択された条件下での硬度制御系統による制御では、ステップS152〜ステップS157の各工程を実行する算定硬度補正部HKAと、ステップS172〜ステップS178の各工程を実行する算定質量補正部HKCが実行される。これらの制御は、制御パターン1で、
図8、
図9、
図11を用いて既に説明した制御と同じであるので、重複説明を避けるため、ここでは説明を省略する。しかし、制御パターン3では、算定厚み補正部HKBに関するステップS162〜ステップS168は実行されない。
【0352】
このため、いずれかの制御基準算定値の補正順位が指定されることに基づいて、その順位に従った質量Wと硬度Hの夫々の制御基準算定値の補正に基づく硬度制御が行われた上で、圧力制御部51の圧力制御基準値PMの更新によって質量を変える圧力制御が行われる。
【0353】
それにより、制御パターン3によれば、質量Wと硬度Hが製品の規格範囲内に保持された錠剤を製造することが可能である。
【0354】
以上説明した錠剤の製造において、錠剤の質量の制御を含む制御パターン例えば制御パターン2(WT制御)については、製造される錠剤の質量Wと厚みTを夫々の制御基準値に保持して、錠剤を製造できる。
【0355】
以下、繰り返し簡単に説明する。まず、質量の変動原因について説明する。打錠機2の連続運転に伴う打錠機2各部の温度上昇に起因する熱膨張により杵先間隔が狭まるように変化するので、それに伴い成型圧力が上昇する。これにより、圧力制御部51によるフィードバック制御は、錠剤の質量の増加がなくても、成型圧力を低下させる制御をする(つまり、質量を減少させる制御が行われる)。その結果として質量を規格範囲内に保つことができなくなる場合がある。この他、打錠機2の温度が上昇すると、圧縮される粉末の物性によって、当該粉末の結合性が高まることがある。この場合、杵先間隔を一定に保って成型したとしても、成型圧力が低下する。これに伴い圧力制御部51は、成型圧力を増やす制御をするので、質量が増えて、質量を規格範囲内に保つことができなくなる場合がある。
【0356】
これに対して、第1実施形態の打錠装置1によれば、粉末を圧縮して製造される錠剤の質量Wと厚みTと硬度Hのうちの少なくとも一つ例えば質量Wと厚みTを、打錠機2の連続運転に伴う打錠機2各部の温度変化に拘らず規格範囲内に保持して錠剤を製造可能な回転式の打錠装置1とその運転方法を提供することが可能である。言い換えれば、以上説明した制御装置4aに格納されたプログラムの運転制御系統での杵先間隔の自動制御によって、打錠機2の連続運転に伴う打錠機2各部の温度変化に拘らず、錠剤の厚みTを規格範囲内に保持できる。これとともに、圧力制御部51に設定された圧力制御基準値(現在値)を、自動的に更新する運転制御系統での制御によって、錠剤の質量Wを規格範囲内に保持して、錠剤を製造することが可能である。
【0357】
しかも、第1実施形態の打錠装置1によれば、運転制御系統により、錠剤の質量W及び厚みT及び硬度Hを夫々制御することが可能であることに加えて、錠剤の質量Wと厚みT、又は錠剤の質量Wと硬度H、あるいは錠剤の厚みTと硬度Hの夫々の組合せに応じて、夫々制御することが可能であり、更には錠剤の質量Wを単独に制御することも、又、錠剤の厚みTを単独に制御することも可能である。
【0358】
更に、第1実施形態の打錠装置1は、複数の制御パターン具体的には既述の制御パターン1〜制御パターン6について、それらの制御を担うフローチャートを共通して使用できるので、制御パターン毎に専用のフローチャートを用意しなくてよい利点がある。
【0359】
次に、本発明の第2実施形態に係る回転式粉末圧縮成型装置とその運転方法を、
図12〜
図19を参照して説明する。
【0360】
以下の説明で、第1実施形態と同じ構成か若しくは第1実施形態と同様な機能を奏する第2実施形態の構成については、第1実施形態と同一符号を付して、その説明を省略する。この第2実施形態で、基礎データ取得手順及びこの手順を実行する基礎データ取得部は第1実施形態と同じである。このため、基礎データ取得部での演算により各相関係数を求める手順も第1実施形態と同じであるので、その説明も省略する。これとともに、必要に応じて第1実施形態の説明で用いた
図1、
図2、及びフローチャートも参照して第2実施形態を説明する。
【0361】
第2実施形態は、錠剤の質量Wと厚みTと硬度Hの各制御基準算定値を指定順序で補正することによって、質量Wと厚みTと硬度Hの夫々を規格範囲内に保持する制御を行う制御パターン1(WTH制御)と、錠剤の質量Wと厚みTを各制御基準値に制御する制御パターン2(WT制御)とのいずれかを選択して錠剤を製造することが可能である点と、これに対応したパターン判別部を有している点が、第1実施形態とは異なる。そのため、第2実施形態の打錠装置1は、2通りの制御パターン1,2のうちのいずれかを選択できるとともに、これら2通りの制御パターン1,2の夫々に応じた個別のフローチャートを用意した点が、第1実施形態とは異なる。
【0362】
第2実施形態における制御装置4aでのパターン判別部は
図12に示されている。
【0363】
このパターン判別部は、指定された制御パターンが制御パターン1又は制御パターン2のいずれかであるのかを選択する制御パターン選択手段と、各基準値(規格基準値)及び各制御基準値の補正範囲並びに制御基準算定値の補正順位を登録する補正内容登録手段と、各制御基準値を登録する基準値登録手段と、使用するW−H相関係数a5の値をa5αにするかa5βにするかの取扱いを設定する相関係数設定手段を備える。なお、第2実施形態の制御パターン選択手段は、第1実施形態で用いたステップS6、つまり、不使用の相関係数の演算上の取扱いを定めたステップは省略して構成される。
【0364】
制御パターン選択手段はステップSAとステップSBとを有する。ステップSAは、指定された制御パターンが、「制御パターン1」であるのか否かを判断する。ステップSAの判断がYESの場合、補正内容登録手段をなすステップS4が実行される。ステップSAの判断がNOの場合、ステップSBに進む。ステップSBは、指定された制御パターンが、「制御パターン2」であるのか否かを判断する。ステップSBの判断がYESの場合、基準値登録手段をなすステップS5が実行される。ステップSBの判断がNOの場合、ステップSAに戻る。
【0365】
ステップS4及びステップS5は第1実施形態で説明した通りである。ステップS4の次に実行されるステップS17は相関係数設定手段をなしており、このステップS17は第1実施形態で説明した通りである。
【0366】
このような構成のパターン判別部によれば、第1実施形態で説明した第1〜第6の制御パターンの他にも、例えば「成型品の密度の制御」や「成型品の崩壊性の制御」等を考慮して、或いはこれら各パターンの組み合わせにより考えられる様々な制御パターンの中から、「制御パターン1」又は「制御パターン2」を選択して、選択されたパターンに応じた制御により錠剤(成型品)を製造することが可能となる。
【0367】
なお、パターン判別部の制御パターン選択手段は、
図12に例示に制約されず、錠剤の質量を制御するか否かを判断するステップS1と、錠剤の厚みを制御するか否かを判断するステップS2と、錠剤の硬度を制御するか否かを判断するステップS3を有した構成の代替例とすることも可能である。ステップS1〜ステップS3は第1実施形態で説明した通りである。
【0368】
図12で制御パターン1が選択された場合(なお、前記代替例ではステップS3の判断がYES(硬度を制御する)になった場合)、次のステップS4が実行されて、錠剤の硬度を制御するための質量、厚み、及び硬度の各制御基準算定値の補正順位の登録(指定)と、各基準値(規格基準値)及び各制御基準値の補正範囲が登録される。
【0369】
ステップS4で登録される各基準値は、質量基準値WOと、厚み基準値TOと、硬度基準値HOである。これと共に、登録される各制御基準値の補正範囲は、質量制御基準値補正範囲の上限値WOH及び同補正範囲の下限値WOLと、厚み制御基準値補正範囲の上限値TOH及び同補正範囲の下限値TOLと、硬度制御基準値補正範囲の上限値HOH及び同補正範囲の下限値HOLである。
【0370】
制御装置4aにより、ステップS4が実行された場合、次のステップS17を経由して質量と厚みと硬度を制御する制御パターン1(WTH制御)が選択される。ステップS17は、制御パターン1において使用するW−H相関係数a5を既述のW−H相関係数a5βの値で置換する処理を行う。
【0371】
この制御パターン1では、既に取得された相関係数a〜a5の全てが使用される。
【0372】
前記ステップS3の判断がNO(硬度を制御しない)である場合、制御装置4aにより、次のステップS5が実行されて、錠剤の質量を制御するための質量制御基準値WM及び厚みを制御するための厚み制御基準値TMが登録される。
【0373】
図12で制御パターン2が選択された場合(なお、前記代替例ではステップS3の判断がNO(硬度を制御しない)になった場合)、次のステップS5が実行される。
【0374】
ステップS5が実行された場合、制御装置4aにより、錠剤の質量と厚みを制御する制御パターン2(WT制御)が選択される。既述のようにステップS4は補正内容登録手段であり、ステップS5は基準値登録手段であり、ステップS17は相関係数設定手段である。
【0375】
第2実施形態での制御パターン1(WTH制御)による制御の流れを
図13〜
図18を参照して以下説明する。
【0376】
第2実施形態の制御パターン1では、第1実施形態で説明した算定質量演算手段をなすステップS104、及び制御パターン第1選択手段をなすステップS105が省略されている。そのため、
図13に示すようにサンプリングデータを取得するステップS103の次に、制御基準算定値更新手段(制御基準算定値更新工程)をなすステップS137が制御装置4aにより実行される。このステップS137は、第1実施形態で説明した第3制御基準算定値更新手段と同じである。
【0377】
第2実施形態は第1実施形態で説明した制御パターン3〜制御パターン6を有していない。このため、第2実施形態の制御パターン1では、第1実施形態で説明したステップS138(制御パターン第3選択手段)が省略されている。これに伴って、第2実施形態の制御パターン1では、第1実施形態で説明した第4制御基準算定値更新手段をなすステップS142と、第2算定硬度演算手段をなすステップS144、および算定硬度第2判断手段をなすステップS145(
図7参照)も省略されている。
【0378】
そのため、第2実施形態の制御パターン1では、
図13に示すようにステップS137の次に、制御装置4aにより、第1算定硬度判断部WK1の各工程が実行される。それにより、まず、第1算定硬度演算手段をなすステップS140が実行される。
【0379】
第2実施形態の制御パターン1では、ステップS140の次に、制御装置4aにより、算定硬度第1判断手段をなすステップS141の判断が行なわれる。このステップS141の判断がYESになると、制御装置4aにより、第1実施形態で説明した硬度制御工程を実施する硬度制御部(硬度制御手段)HKをなすステップS151〜ステップS178(
図14〜
図17参照)が順次行なわれる。
【0380】
第2実施形態の制御パターン1では、
図14に示す硬度制御部HKのステップS153、ステップS163、ステップS173のいずれかが実行された後、制御装置4aにより、
図18に示すように第1実施形態で説明した第1算定圧力変動値演算手段をなすステップS109が実行され、次に、第1実施形態で説明した算定厚み演算手段をなすステップS110が実行される。
【0381】
この場合、ステップS109は、硬度補正部HKを経由して与えられた質量制御基準算定値WMaを用いて質量制御をしたときの第1算定圧力変動値PWaを求める。同様に、ステップS110は、硬度補正部HKを経由して与えられた質量制御基準算定値WMaを用いて質量制御をしたときの厚み変動値と厚み平均値Txとから算定厚みTaを求める。
【0382】
ステップS110の次に、第2実施形態の制御パターン1では、制御装置4aにより、第1実施形態で説明した杵先間隔算定値演算手段をなすステップS111が実行される。この場合、ステップS111は、硬度補正部HKを経由して与えられた厚み制御基準算定値TMaを用いて厚み制御をしたときの杵先間隔変動値と杵先間隔設定値とから杵先間隔算定値(LMa、lMa)を求める。
【0383】
この後、第1実施形態で説明した第2算定圧力変動値演算手段をなすステップS112が実行され、次に、第1実施形態で説明した圧力制御基準算定値演算手段をなすステップS115が実行される。
【0384】
この場合、ステップS112は、硬度補正部HKを経由して与えられた厚み制御基準算定値TMaを用いて厚み制御をしたときの第2算定圧力変動値PTaを求める。ステップS115は、ステップS109で求めた第1算定圧力変動値PWaと、ステップS112で求めた第2算定圧力変動値PTaと、運転中に求めた
成型圧力平均値Pxとから圧力制御基準算定値PMaを求める。
【0385】
更に、第2実施形態の制御パターン1では、ステップS115の次に制御装置4aにより、ステップS111で求めた予圧及び本圧の杵先間隔算定値(lMa,LMa)の値で、予圧及び本圧の杵先間隔設定値(lM,LM)を更新して杵先間隔を制御する杵先間隔制御手段をなすステップS118が実行される。この後、制御装置4aにより、ステップS115で求めた圧力制御基準算定値PMaの値で圧力制御基準値(現在値)PMを更新し、圧力制御部51の各制御圧力値を更新する制御圧力値更新手段をなすステップS149が実行される。このステップS149の実行後に、スタートに戻る。
【0386】
以上説明した点を除いて、制御パターン1(WTH制御)についての制御の流れは、第1実施形態と同じである。したがって、この制御パターン1を指定して打錠装置1が運転された場合、第1実施形態で既に説明した理由によって、打錠機2の運転中の温度変化に拘らず、錠剤の質量Wと厚みTと硬度Hの全てを規格範囲内に保持して、錠剤を製造することが可能である。
【0387】
即ち、回転式の打錠装置1の連続運転が開始されると、まず、制御装置4aに格納されたプログラムに従い
図13に示すステップS101が実行されて、「サンプリング指令」が出力される。なお、これに代えて、人為的にサンプリング指令を出力させる「強制サンプリング指令」の有無を判断することも可能である。
【0388】
この指令後に、ステップS102が実行されて、サンプリング手段41のサンプリング駆動器44が駆動される。それにより、サンプリングシャッタ43がサンプリングシュート42の入口を開く開き位置に移動されるとともに、このサンプリングシャッタ43で排出シュート39の出口側が閉じられる。したがって、製造される錠剤が、複数個サンプリングされ、サンプリングシュート42を通って測定器3に供給される。こうした錠剤のサンプリングは、制御装置4aによるサンプリング手段41の制御で、打錠機2の連続運転中、所定時間毎、例えば30分毎に実行される。
【0389】
前記サンプリングの開始に基づいて制御装置4aによりステップS103が実行されて、サンプリングデータが取得される。ここで取得されるサンプリングデータは、予圧位置での杵先間隔設定値lM、本圧位置での杵先間隔設定値LM、及び測定器3によって測定されかつ算出された質量平均値Wxと厚み平均値Txと硬度平均値Hxである。成型圧力平均値Px以外のいずれのデータも通信処理により制御装置4aに読み込まれる。これと共に、ステップS103において制御装置4aは、圧力センサ29により検出される圧力データを基に、サンプリングされた複数の錠剤についての成型圧力平均値Pxを算出する。なお、サンプリングデータの取得とその制御装置4aへの入力(供給)は、自動ではなく、手動で行うことも可能である。
【0390】
この後、制御装置4aにより、制御基準算定値更新手段をなすステップS137が実行される。ステップS137は、以降の演算処理の整合性を確保するために設けられていて、錠剤の各基準値の夫々の値で対応する制御基準算定値を置換する処理を行う。つまり、錠剤の質量基準値WOの値で錠剤の質量制御基準算定値WMaを、錠剤の厚み基準値TOの値で錠剤の厚み制御基準算定値TMaを、錠剤の硬度基準値HOの値で錠剤の硬度制御基準算定値HMaを、夫々置き換える。このとき、質量基準値WOと質量制御基準算定値WMaは同一値、厚み基準値TOと厚み制御基準算定値TMaは同一値、硬度基準値HOと硬度制御基準算定値HMaは同一値である。
【0391】
次に、制御装置4aにより、第1算定硬度演算手段をなすステップS140が実行される。ステップS140は、質量制御をしたとき(質量平均値Wxを質量制御基準算定値WMaにしたとき)の硬度変動値(これを第1硬度変動値という。)と、厚み制御をしたとき(厚み平均値Txを厚み制御基準算定値TMaにしたとき)の硬度変動値(これを第2硬度変動値という。)と、硬度平均値Hxとから、錠剤の算定硬度Haを求める。この式を下記に示す。
Ha=Hx+〔(WMa−Wx)/a5〕+〔(TMa−Tx)/a4〕……式(18)。
【0392】
この式(18)において、Hxはサンプリング錠の硬度平均値、a5はW−H相関係数、(WMa−Wx)/a5で演算された値が第1硬度変動値である。これとともに、Txはサンプリング錠の厚み平均値、a4はT−H相関係数であり、(TMa−Tx)/a4で演算された値が第2硬度変動値である。したがって、式(18)は、硬度平均値Hxと第1硬度変動値と第2硬度変動値とを合計して、算定硬度Haを求める。
【0393】
次に、制御装置4aにより、算定硬度第1判断手段をなすステップS141の判断が行なわれる。ステップS141は算定硬度Haが適正(硬度を規格範囲内に保持して生産を継続することが可能)であるか否かを判断する。つまり、ステップS141は、算定硬度Haが、質量・厚み・硬度の各制御基準算定値の補正による硬度制御可能範囲内であるのか否かを判断する。更に、言い換えれば、ステップS141は、演算上において質量と厚みの各制御基準算定値の全てが上限値又は下限値に補正されたとした場合に、算定硬度Haが、錠剤に対する硬度制御基準値の上限値と下限値で規定された範囲、つまり、硬度制御可能範囲に入っているのか否かを判断する。この場合、演算上において質量を最大に増やすとともに厚みを最小に減らしたときに、硬度を最も高くすることができ、この逆に、演算上において質量を最小に減らすとともに厚みを最大に増やしたときに硬度を最も低くすることができる。
【0394】
つまり、既述の算定硬度Haが硬度制御可能範囲に入っているか否かは、次の二つの式に基づいて判断することができる。
HOL<Ha+〔(WOH−WMa)/a5〕+〔(TOL−TMa)/a4〕
HOH>Ha−〔(WMa−WOL)/a5〕−〔(TMa−TOH)/a4〕
さらに上記二つの式は各々次のように変換することができる。
HOL−〔(WOH−WMa)/a5〕−〔(TOL−TMa)/a4〕<Ha
Ha<HOH+〔(WMa−WOL)/a5〕+〔(TMa−TOH)/a4〕
このことから、ステップS141に示すHOL−〔(WOH−WMa)/a5〕−〔(TOL−TMa)/a4〕<Ha<HOH+〔(WMa−WOL)/a5〕+〔(TMa−TOH)/a4〕の式に置き換えて判断することができる。
【0395】
ここで、HOL−〔(WOH−WMa)/a5〕−〔(TOL−TMa)/a4〕を硬度制御可能範囲の下限値HLとし、HOH+〔(WMa−WOL)/a5〕+〔(TMa−TOH)/a4〕を硬度可能範囲の上限値HHとした時、ステップS141での硬度制御可能範囲の下限値HLは次式で演算される。
HL=HOL−〔(WOH−WMa)/a5〕−〔(TOL−TMa)/a4〕
ステップS141での硬度制御可能範囲の上限値HHは次式で演算される。
HH=HOH+〔(WMa−WOL)/a5〕+〔(TMa−TOH)/a4〕
これらの式において、HOLは錠剤の硬度制御基準値補正範囲の下限値、HOHは錠剤の硬度制御基準値補正範囲の上限値、WOLは錠剤の質量制御基準値補正範囲の下限値、WOHは錠剤の質量制御基準値補正範囲の上限値、TOLは錠剤の厚み制御基準値補正範囲の下限値、TOHは錠剤の厚み制御基準値補正範囲の上限値であり、又、a5はW−H相関係数、a4はT−H相関係数である。
【0396】
したがって、ステップS141は、HL<Ha<HHの式によって、算定硬度Haが適正(硬度を規格範囲内に保持して生産を継続することが可能)であるのか否かを判断する。
【0397】
ステップS141の判断がNO(算定硬度Haが質量・厚み・硬度の各制御基準算定値補正による硬度制御可能範囲外)であることは、質量・厚み・硬度の全ての制御基準値を上限値又は下限値に補正しても、製造される錠剤の硬度を規格範囲内とする制御ができない、ということである。この場合、制御装置4aにより、報知・停止手段をなすステップS146が実行される。これにより、異常を報知する信号(異常信号)が出力されるとともに、例えば打錠機2の運転が停止される。
【0398】
ステップS141の判断がYES(算定硬度Haが質量・厚み・硬度の各制御基準算定値補正による硬度制御可能範囲内)である場合、制御装置4aにより、既に入力された制御基準算定値の補正順位に従って、硬度制御のための各制御基準算定値の補正を行う硬度制御部(硬度制御手段)HKが実行される。
【0399】
即ち、まず、制御装置4aにより、
図14に示す補正先第1判断手段をなすステップS151が実行される。このステップS151は、制御基準算定値の1番目の補正先が「硬度」であるか否かを判断する。
【0400】
制御基準算定値の1番目の補正先が「硬度」ではない場合、ステップS151の判断はNOとなるので、制御装置4aにより、補正先第2判断手段をなすステップS161の判断が行なわれる。このステップS161は、制御基準算定値の1番目の補正先が「厚み」であるか否かを判断する。
【0401】
制御基準算定値の1番目の補正先が「厚み」でない場合、ステップS161の判断はNOとなるので、制御装置4aにより、補正先第3判断手段をなすステップS171の判断が行なわれる。ステップS171は、制御基準算定値の1番目の補正先が「質量」であるか否かを判断する。
【0402】
ステップS151、ステップS161、ステップS171の判断がいずれもNOである場合、即ち、入力手段により設定された順位に従って硬度と厚みと質量のいずれの制御基準算定値も1番目の補正先として設定(登録)されていない、と判断された場合には、制御装置4aによる錠剤の硬度の制御はできない。このため、制御装置4aにより、前記ステップS146が実行されて、異常を報知する信号 (異常信号)を出力するとともに例えば打錠機2の運転を停止させる。なお、このような選択肢は、ステップS4で予め制御基準算定値の補正順位を設定(登録)しているので、実際にはあり得ない。
【0403】
ステップS151の判断がYESである(制御基準算定値の1番目の補正先が「硬度」である)場合、制御装置4aにより、算定硬度第3判断手段をなす次のステップS152の判断が行なわれる。このステップS152は、算定硬度Haが、硬度制御基準算定値HMaの補正による硬度制御可能範囲内であるか否かを判断する。ここで、硬度制御可能範囲は次式で規定される。
HMa−kh(HMa−HOL)≦Ha≦HMa+kh(HOH−HMa)
この式でkhは硬度制御基準算定値HMaを補正するときの硬度補正係数であり、0.01〜1.00の任意な値に設定され、この硬度補正係数khは1.00未満であることが好ましい。
【0404】
ステップS152の判断がYESである(算定硬度Haが硬度制御基準算定値HMaの補正による硬度制御可能範囲内である)場合、制御装置4aにより、第1硬度制御基準算定値更新手段をなすステップS153が実行される。このステップS153は、以降の演算処理での整合性を確保するため算定硬度Haの値で硬度制御基準算定値HMaを更新する。
【0405】
この後、制御装置4aに格納されたプログラムは、ステップS153で更新された硬度制御基準算定値HMaを後述する運転制御系統に供給して、この系統の各ステップを順次実行する。即ち、ステップS151の判断がYES(制御基準算定値の1番目の補正先が「硬度」)で、ステップS152がYES(算定硬度Haが硬度制御基準算定値HMaの補正による硬度制御可能範囲内である)と判断した場合、ステップS153を経て後述する運転制御系統の各ステップが実行される。それにより、製造される錠剤の硬度を規格範囲内に保持して錠剤が製造される。
【0406】
ステップS152の判断がNOである(算定硬度Haが硬度制御基準算定値HMaの補正による硬度制御可能範囲外である)場合、制御装置4aにより、算定硬度第6判断手段であるステップS154の判断が行なわれる。
図15に示すステップS154は、錠剤の算定硬度Haが、錠剤の硬度制御基準算定値HMaより小さいか否かを、次式によって判断する。
HMa−kh(HMa−HOL)>Ha
ステップS154の判断がYESである(算定硬度Haが硬度制御基準算定値HMaより小さい)場合、制御装置4aにより、第2硬度制御基準算定値更新手段(第2硬度制御基準算定値更新工程)をなすステップS155が実行される。
図15に示すステップS155は、硬度制御基準算定値HMa等を用いて錠剤の硬度制御基準暫定値HMbを下記の式によって求める。
HMb=HMa−kh(HMa−HOL)……式(19)。
【0407】
これとともに、ステップS155は、以降の演算処理との整合性を確保するために、算出された硬度制御基準暫定値HMbの値で硬度制御基準算定値HMaを更新する。つまり、ステップS155は、算定硬度Haが硬度制御基準算定値HMaより小さい場合、硬度制御基準値補正範囲の下限値HOLと硬度制御基準算定値HMaとの差に、ステップS152で用いた硬度補正係数khを乗じた値と、硬度制御基準算定値HMaとから硬度制御基準暫定値HMbを求めて、この硬度制御基準暫定値HMbの値で硬度制御基準算定値HMaを更新し、それにより、硬度制御基準算定値HMaを減らす処理をする。
【0408】
この処理において、硬度補正係数khが1.00未満に設定されている場合に従う補正では、許される範囲で限度一杯まで、硬度制御基準算定値HMaを一気に減らす処理をするのではなく、硬度補正係数khによる補正にしたがい前記限度より小さく硬度制御基準算定値HMaが減らされる。なお、硬度補正係数khが1.00に設定されている場合、許される範囲の限度一杯まで、硬度制御基準算定値HMaが一気に減らされる。
【0409】
ステップS154の判断がNOである(算定硬度Haが硬度制御基準算定値HMaより大きい)場合、制御装置4aにより、第2硬度制御基準算定値更新手段(第2硬度制御基準算定値更新工程)をなすステップS156が実行される。
図15に示すステップS156は、硬度制御基準算定値HMa等を用いて錠剤の硬度制御基準暫定値HMbを下記の式によって求める。
HMb=HMa+kh(HOH−HMa)……式(20)。
【0410】
これとともに、ステップS156は、以降の演算処理との整合性を確保するために、算出された硬度制御基準暫定値HMbの値で硬度制御基準算定値HMaを更新する。つまり、ステップS156は、算定硬度Haが硬度制御基準算定値HMaより大きい場合、硬度制御基準値補正範囲の上限値HOHと硬度制御基準算定値HMaとの差に、ステップS152で用いた硬度補正係数khを乗じた値と、硬度制御基準算定値HMaとから硬度制御基準暫定値HMbを求めて、この硬度制御基準暫定値HMbの値で硬度制御基準算定値HMaを更新し、それにより、硬度制御基準算定値HMaを増やす処理をする。
【0411】
この処理において、硬度補正係数khが1.00未満に設定されている場合に従う補正では、許される範囲で限度一杯まで、硬度制御基準算定値HMaを一気に増やす処理をするのではなく、硬度補正係数khによる補正に従い前記限度より小さく硬度制御基準算定値HMaが増やされる。なお、硬度補正係数khが1.00に設定されている場合に従う補正では、許される範囲の限度一杯まで、硬度制御基準算定値HMaが一気に増やされる。
【0412】
以上のようにステップS154〜ステップS156の各工程で形成される算定硬度補正部HKAによる演算上の硬度制御基準算定値HMaの補正では、錠剤の硬度制御基準算定値HMaが、硬度制御基準値補正範囲を外れないように硬度制御基準算定値HMaを更新する。しかし、こうした硬度制御基準算定値HMaの補正では前記ステップS152の判断に従って錠剤の硬度を適正化できない。このため、ステップS155又はステップS156の終了後に、制御装置4aにより、補正先第4判断手段をなすステップS157で次の補正先を判断して、その補正先に、ステップS155又はステップS156において硬度制御基準暫定値HMbの値で更新された硬度制御基準算定値HMaを供給する。
【0413】
具体的には、ステップS157は次の補正先が「質量」であるか否かを判断する。これにより、次の補正先が「質量」である場合(ステップS157の判断がYESである場合)、制御装置4aにより、質量制御基準算定値WMaの補正処理手順を判断するためのステップS172の判断が行なわれる。又、次の補正先が「質量」でない場合(ステップS157の判断がNOである場合)、制御装置4aにより、厚み制御基準算定値TMaの補正処理手順を判断するためのステップS162の判断が行なわれる。このステップS157の判断(つまり、次の補正が「質量」であるのか「厚み」であるのか)は、入力手段により指定された各制御基準算定値の補正順位に従っている。
【0414】
前記ステップS151の判断がNOとなったことに伴い、この次に実行されるステップS161の判断がYESである(制御基準算定値の1番目の補正先が「厚み」である)場合、制御装置4aにより、算定硬度第4判断手段をなすステップS162の判断が行なわれる。このステップS162は、算定硬度Haが、厚み制御基準算定値TMaの補正による硬度制御可能範囲内であるか否かを判断する。
【0415】
ここで、硬度制御可能範囲は次式で規定される。
HMa−kt(TOL−TMa)/a4≦Ha≦HMa+kt(TMa−TOH)/a4
この式でktは厚み制御基準算定値TMaを補正するときの厚み補正係数であり、0.01〜1.00の任意な値に設定され、この厚み補正係数ktは1.00未満であることが好ましい。
【0416】
ステップS162の判断がYESである(算定硬度Haが厚み制御基準算定値TMaの補正による硬度制御可能範囲内である)場合、制御装置4aにより、第1厚み制御基準算定値更新手段をなすステップS163が実行される。
【0417】
このステップS163は、厚み制御基準算定値TMa等を用いて錠剤の厚み制御基準暫定値TMbを下記の式によって求める。
TMb=TMa+a4(HMa−Ha)……式(21)。
【0418】
これとともに、ステップS163は、以降の演算処理との整合性を確保するために、算出された厚み制御基準暫定値TMbの値で厚み制御基準算定値TMaを更新する。
【0419】
この後、制御装置4aにより、ステップS163で更新された厚み制御基準算定値TMaが
図18に示す運転制御系統に供給され、この系統の各ステップS109〜ステップS149が順次実行される。即ち、ステップS161の判断がYES(制御基準算定値の1番目の補正先が「厚み」)で、ステップS162がYES(算定硬度Haが、厚み制御基準算定値TMaの補正による硬度制御可能範囲内である)と判断した場合、ステップS163を経て前記運転制御系統のステップS109〜ステップS149が順次実行される。それにより、製造される錠剤の硬度を規格範囲内に保持して錠剤が製造される。
【0420】
ステップS162の判断がNOである(算定硬度Haが厚み制御基準算定値TMaの補正による硬度制御可能範囲外である)場合、制御装置4aにより、算定硬度第7判断手段をなすステップS164の判断が行なわれる。
図16に示すステップS164は、錠剤の算定硬度Haが、錠剤の硬度制御基準算定値HMaより小さいか否かを、次式によって判断する。
HMa−kt(TOL−TMa)/a4>Ha
ステップS164の判断がYESである(算定硬度Haが硬度制御基準算定値HMaより小さい)場合、制御装置4aにより、第2厚み制御基準算定値更新手段(第2厚み制御基準算定値更新工程)をなすステップS165が実行される。
図16に示すステップS165は、厚み制御基準算定値TMa等を用いて錠剤の厚み制御基準暫定値TMbを下記の式によって求める。
TMb=TMa−kh(TMa−TOL)……式(22)。
【0421】
これとともに、ステップS165は、以降の演算処理との整合性を確保するために、算出された厚み制御基準暫定値TMbの値で厚み制御基準算定値TMaを更新する。つまり、ステップS165は、算定硬度Haが硬度制御基準算定値HMaより小さい場合、厚み制御基準値補正範囲の下限値TOLと厚み制御基準算定値TMaとの差に、ステップS162で用いた厚み補正係数ktを乗じた値と、厚み制御基準算定値TMaとから厚み制御基準暫定値TMbを求めて、この厚み制御基準暫定値TMbの値で厚み制御基準算定値TMaを更新し、それにより、厚み制御基準算定値TMaを減らす処理をする。
【0422】
この処理において、厚み補正係数ktが1.00未満に設定されている場合に従う補正では、許される範囲で限度一杯まで、厚み制御基準算定値TMaを一気に減らす処理をするのではなく、厚み補正係数ktによる補正にしたがい前記限度より小さく厚み制御基準算定値TMaが減らされる。なお、厚み補正係数ktが1.00に設定されている場合に従う補正では、許される範囲の限度一杯まで、厚み制御基準算定値TMaが一気に減らされる。
【0423】
ステップS164の判断がNOである(算定硬度Haが硬度制御基準算定値HMaより大きい)場合、制御装置4aにより、第2厚み制御基準算定値更新手段(第2厚み制御基準算定値更新工程)をなすステップS166が実行される。
図16に示すステップS166は、厚み制御基準算定値TMa等を用いて錠剤の厚み制御基準暫定値TMbを下記に示す式によって求める。
TMb=TMa+kt(TOH−TMa)……式(23)。
【0424】
これとともに、ステップS166は、以降の演算処理との整合性を確保するために、算出された厚み制御基準暫定値TMbの値で厚み制御基準算定値TMaを更新する。つまり、ステップS166は、算定硬度Haが硬度制御基準算定値HMaより大きい場合、厚み制御基準値補正範囲の上限値TOHと前記厚み制御基準算定値TMaとの差に、ステップS162で用いた厚み補正係数ktを乗じた値と、厚み制御基準算定値TMaとから厚み制御基準暫定値TMbを求めて、この厚み制御基準暫定値TMbの値で厚み制御基準算定値TMaを更新し、それにより、厚み制御基準算定値TMaを増やす処理をする。
【0425】
この処理において、厚み補正係数ktが1.00未満に設定されている場合に従う補正では、許される範囲で限度一杯まで、厚み制御基準算定値TMaを一気に増やす処理をするのではなく、厚み補正係数ktによる補正にしたがい前記限度より小さく厚み制御基準算定値TMaが増やされる。なお、厚み補正係数ktが1.00に設定されている場合に従う補正では、許される範囲の限度一杯まで、厚み制御基準算定値TMaが一気に増やされる。
【0426】
ステップS165又はステップS166が終わると、制御装置4aにより、第3算定硬度演算手段をなすステップS167が実行されて、新たな算定硬度Haが次式により求められる。
Ha=Hx+〔(WMa−Wx)/a5〕+〔(TMa−Tx)/a4〕……式(18)。
【0427】
以上のようにステップS164〜ステップS167の各工程で形成される算定厚み補正部HKBによる演算上の厚み制御基準算定値TMaの補正では、錠剤の厚み制御基準算定値TMaが、厚み制御基準値補正範囲を外れないように厚み制御基準算定値TMaを更新する。しかし、こうした厚み変化による硬度制御では前記ステップS162の判断に従って錠剤の硬度を適正化できない。このため、ステップS167の終了後に、制御装置4aにより、補正先第5判断手段をなすステップS168で次の補正先を判断して、その補正先に、ステップS165又はステップS166で更新された厚み制御基準算定値TMaと、ステップS167で新たに算出された算定硬度Haを供給する。
【0428】
具体的には、ステップS168は次の補正先が「質量」であるか否かを判断する。これにより、次の補正先が「質量」である場合(ステップS168の判断がYESである場合)、制御装置4aにより、質量制御基準算定値WMaの補正処理手順を判断するためのステップS172の判断が行なわれる。又、次の補正先が「質量」でない場合(ステップS168の判断がNOである場合)、制御装置4aにより、硬度制御基準算定値HMaの補正処理手順を判断するためのステップS152の判断が行なわれる。このステップS168の判断(つまり、次の補正が「質量」であるのか「硬度」であるのか)は、入力手段により指定された各制御基準算定値の補正順位に従っている。
【0429】
前記ステップS161の判断がNOとなったことに伴い、この次に実行されるステップS171は、制御基準算定値の1番目の補正先が「質量」であるか否かを判断する。ステップS171の判断がYESである(制御基準算定値の1番目の補正先が「質量」である)場合、制御装置4aにより、算定硬度第5判断手段をなすステップS172の判断が行なわれる。このステップS172は、算定硬度Haが、質量制御基準算定値WMaの補正による硬度制御可能範囲内であるか否かを判断する。
【0430】
ここで、硬度制御可能範囲は次式で規定される。
【0431】
HMa−kw(WOH−WMa)/a5≦Ha≦HMa+kw(WMa−WOL)/a5
この式でkwは質量制御基準算定値WMaを補正するときの質量補正係数であり、0.01〜1.00の任意な値に設定され、この質量補正係数kwは1.00未満であることが好ましい。
【0432】
ステップS172の判断がYESである(算定硬度Haが質量制御基準算定値WMaの補正による硬度制御可能範囲内である)場合、制御装置4aにより、第1質量制御基準算定値更新手段をなすステップS173が実行される。
【0433】
ステップS173は、質量制御基準算定値WMa等を用いて錠剤の質量制御基準暫定値WMbを下記の式によって求める。
WMb=WMa+a5(HMa−Ha)……式(24)。
【0434】
これとともに、ステップS173は、以降の演算処理との整合性を確保するために、算出された質量制御基準暫定値WMbの値で質量制御基準算定値WMaを更新する。
【0435】
この後、制御装置4aにより、ステップS173で更新された質量制御基準算定値WMaが前記運転制御系統に供給されて、この系統の各ステップS109〜ステップS149が順次実行される。
【0436】
即ち、ステップS171の判断がYES(制御基準算定値の1番目の補正先が「質量」である場合)で、ステップS172がYES(算定硬度Haが質量制御基準算定値WMaの補正による硬度制御可能範囲内である)と判断した場合、ステップS173を経て前記運転制御系統のステップS109〜ステップS149が順次実行される。それにより、製造される錠剤の硬度を規格範囲内に保持して錠剤が製造される。
【0437】
ステップS172の判断がNOである(算定硬度Haが質量制御基準算定値WMaの補正による硬度制御可能範囲外である)場合、制御装置4aにより、算定硬度第8判断手段をなすステップS174が実行される。
図17に示すステップS174は、錠剤の算定硬度Haが、錠剤の硬度制御基準算定値HMaより小さいか否かを、次式によって判断する。
HMa−kw(WOH−WMa)/a5>Ha
ステップS174の判断がYESである(算定硬度Haが硬度制御基準算定値HMaより小さい)場合、制御装置4aにより、第2質量制御基準算定値更新手段(第2質量制御基準算定値更新工程)をなすステップS175を実行する。
図17に示すステップS175は、質量制御基準算定値WMa等を用いて錠剤の質量制御基準暫定値WMbを下記の式によって求める。
WMb=WMa+kw(WOH−WMa)……式(25)。
【0438】
これとともに、ステップS175は、以降の演算処理との整合性を確保するために、算出された質量制御基準暫定値WMbの値で質量制御基準算定値WMaを更新する。つまり、ステップS175は、算定硬度Haが硬度制御基準算定値HMaより小さい場合、質量制御基準値補正範囲の上限値WOHと質量制御基準算定値WMaとの差に、ステップS172で用いた質量補正係数kwを乗じた値と、質量制御基準算定値WMaとから質量制御基準暫定値WMbを求めて、この質量制御基準暫定値WMbの値で質量制御基準算定値WMaを更新し、それにより、質量制御基準算定値WMaを増やす処理をする。
【0439】
この処理において、質量補正係数kwが1.00未満に設定されている場合に従う補正では、許される範囲で限度一杯まで、質量制御基準算定値WMaを一気に増やす処理をするのではなく、質量補正係数kwによる補正にしたがい前記限度より小さく質量制御基準算定値WMaが増やされる。なお、質量補正係数kwが1.00に設定されている場合に従う補正では、許される範囲の限度一杯まで、質量制御基準算定値WMaが一気に増やされる。
【0440】
ステップS174の判断がNOである(算定硬度Haが硬度制御基準算定値HMaより大きい)場合、制御装置4aにより、第2質量制御基準値更新手段(第2質量制御基準値更新工程)をなすステップS176が実行される。
図17に示すステップS176は、質量制御基準算定値WMa等を用いて錠剤の質量制御基準暫定値WMbを下記に示す式によって求める。
WMb=WMa−kw(WMa−WOL)……式(26)。
【0441】
これとともに、ステップS176は、以降の演算処理との整合性を確保するために、算出された質量制御基準暫定値WMbの値で質量制御基準算定値WMaを更新する。つまり、ステップS176は、算定硬度Haが硬度制御基準算定値HMaより大きい場合、質量制御基準値補正範囲の下限値WOLと質量制御基準算定値WMaとの差に、ステップS172で用いた質量補正係数kwを乗じた値と、質量制御基準算定値WMaとから質量制御基準暫定値WMbを求めて、この質量制御基準暫定値WMbの値で質量制御基準算定値WMaを更新し、それにより、質量制御基準算定値WMaを減らす処理をする。
【0442】
この処理において、質量補正係数kwが1.00未満に設定されている場合に従う補正では、許される範囲で限度一杯まで、質量制御基準算定値WMaを一気に減らす処理をするのではなく、質量補正係数kwによる補正にしたがい前記限度より小さく質量制御基準算定値WMaが減らされる。なお、質量補正係数kwが1.00に設定されている場合に従う補正では、許される範囲の限度一杯まで、質量制御基準算定値WMaが一気に減らされる。
【0443】
ステップS175又はステップS176が終わると、制御装置4aにより、第4算定硬度演算手段をなすステップS177が実行されて、新たな算定硬度Haが次式により求められる。この式は前記式(18)と同じである。
Ha=Hx+〔(WMa−Wx)/a5〕+〔(TMa−Tx)/a4〕……式(18)。
【0444】
以上のようにステップS174〜ステップS177の各工程で形成される算定質量補正部HKCによる演算上の質量制御基準算定値WMaの補正では、錠剤の質量制御基準算定値WMaが、質量制御基準値補正範囲を外れないように質量制御基準算定値WMaを更新し、この更新された質量制御基準算定値WMa等を用いて新たな算定硬度を算出する。しかし、こうした質量変化による硬度制御では前記ステップS172の判断に従って錠剤の硬度を適正化できない。このため、ステップS177の終了後に、制御装置4aにより、補正先第6判断手段をなすステップS178で次の補正先を判断して、その補正先に、ステップS175又はステップS176で更新された質量制御基準算定値WMaと、ステップS177で算出された新たな算定硬度Haを供給する。
【0445】
具体的には、ステップS178は次の補正先が「厚み」であるか否かを判断する。これにより、次の補正先が「厚み」である場合(ステップS178の判断がYESである場合)、制御装置4aにより、厚み制御基準算定値TMaの補正処理手順を判断するためのステップS162の判断が行なわれる。又、次の補正先が「厚み」でない場合(ステップS178の判断がNOである場合)、制御装置4aにより、硬度制御基準算定値HMaの補正処理手順を判断するためのステップS152の判断が行なわれる。このステップS178の判断(つまり、次の補正が「厚み」であるのか否か)は、入力手段により指定された各制御基準算定値の補正順位に従っている。
【0446】
次に、
図18に示した運転制御系統による制御を説明する。この運転制御系統は、
図14に示した硬度制御部HKのステップS153、ステップS163、ステップS173のいずれかが実行された後に、制御装置4aにより以下のように制御される。
【0447】
まず、制御装置4aによって、第1算定圧力変動値演算手段をなすステップS109が実行されることによって、質量の変動による圧力の変動値が求められる。つまり、ステップS109は、質量平均値Wxを、ステップS137で置換された質量制御基準算定値WMaにしたとき、又はステップS173、ステップS175、ステップS176のいずれかで更新(補正)された質量制御基準算定値WMaにしたとき(つまり、質量制御したとき)の算定圧力変動値PWaを次式により求める。この場合の質量制御基準算定値WMaは、ステップS137で置換された質量基準値WOと同一値ではなくなっている場合がある。
【0448】
PWa=a(WMa−Wx)……式(12)。
【0449】
この式(12)において、aはP−W相関係数、a(WMa−Wx)の演算で求められる算出値が、質量制御をしたとき、つまり、質量平均値Wxを質量制御基準算定値WMaにしたときの算定圧力変動値(これを第1算定圧力変動値と称する。)PWaである。
【0450】
ステップS109が終了すると、制御装置4aにより、算定厚み演算手段をなすステップS110が実行される。なお、ステップS109は後述のステップS115の処理までに実行すれば良く、ステップS110と並行処理で同時に実行することも可能である。
【0451】
ステップS110は、前記質量制御をしたとき(質量平均値Wxを、硬度制御部HKを経由して与えられた質量制御基準算定値WMaにしたとき)の厚み変動値を求め、これと厚み平均値Txとから錠剤の算定厚みTaを次式により求める。この場合の質量制御基準算定値WMaは、ステップS137で置換された質量基準値WOと同一値ではなくなっている場合がある。
Ta=Tx+a1(WMa−Wx)……式(13)。
【0452】
この式(13)において、a1はT−W相関係数、a1(WMa−Wx)の演算で求められる算出値が、質量制御をしたとき(質量平均値Wxを質量制御基準算定値WMaにしたとき)の厚み変動値である。これにより、質量平均値Wxを質量制御基準算定値WMaにしたときの算定厚みTaが、厚み変動値とサンプリング錠の厚み平均値Txとから求められる。
【0453】
次に、制御装置4aにより、杵先間隔算定値演算手段をなすステップS111が実行される。ステップS111は、算定厚みTaを、ステップS137で置換された厚み制御基準算定値TMaにしたとき、又は、ステップS163、ステップS165、ステップS166のいずれかで更新された厚み制御基準算定値TMaにしたとき(つまり、厚み制御したとき)の、予圧位置での杵先間隔算定値lMaと、本圧位置での杵先間隔算定値LMaを、夫々次式により求める。この場合の厚み制御基準算定値TMaはステップS137で置換された厚み基準値TOと同一値ではなくなっている場合がある。
LMa=LM+a3(TMa−Ta)……式(15)
lMa=lM+a3(TMa−Ta)……式(16)。
【0454】
式(15)において、LMは本圧位置での杵先間隔設定値、a3はL−T相関係数、TaはステップS110で求めた算定厚みである。同様に、式(16)において、lMは予圧位置での杵先間隔設定値、a3はL−T相関係数、TaはステップS110で求めた算定厚みである。
【0455】
ステップS111が終了すると、制御装置4aにより、第2算定圧力変動値演算手段をなすステップS112が実行される。ステップS112により、前記厚み制御をした(算定厚みTaを、硬度制御部HKを経由して与えられた厚み制御基準算定値TMaにした)ときの算定圧力変動値PTa(これを第2算定圧力変動値と称する。)が次式により求められる。この場合の厚み制御基準算定値TMaは、ステップ137で置換された厚み基準値TOと同一値ではなくなっている場合がある。
PTa=a2(TMa−Ta)……式(14)。
【0456】
この式(14)において、a2はP−T相関係数、a2(TMa−Ta)の演算で求められる算出値が算定圧力変動値PTa(第2算定圧力変動値)である。
【0457】
ステップS112の実行後に、制御装置4aにより、圧力制御基準算定値演算手段をなすステップS115が実行される。ステップS115は、硬度制御部HKを経由して与えられた質量制御基準算定値WMaを用いて質量制御をしたときの第1算定圧力変動値PWaと、硬度制御部HKを経由して与えられた厚み基準算定値TMaを用いて厚み制御をしたときの第2算定圧力変動値PTaと、
成型圧力平均値Pxとから圧力制御基準算定値PMaを次式により求める。
PMa=Px+PWa+PTa……式(17)。
【0458】
この式(17)において、Pxはサンプリング錠の成型圧力平均値、PWaはステップS109で求めた算定圧力変動値(第1算定圧力変動値)、PTaはステップS112で求めた算定圧力変動値(第2算定圧力変動値)である。これにより、ステップS115の式(17)で算出される圧力制御基準算定値PMaは、成型圧力平均値Pxと各算定圧力変動値PWa及びPTaの合計値に等しい。
【0459】
次に、制御装置4aにより、杵先間隔制御手段をなすステップS118が実行される。それにより、ステップS111で求めた予圧位置の杵先間隔算定値lMaの値で、予圧位置の杵先間隔設定値lMが更新され、この更新された杵先間隔設定値lMで予圧位置の杵先間隔lが制御されるとともに、同じくステップS111で求めた本圧位置の杵先間隔算定値LMaの値で、本圧位置の杵先間隔設定値LMが更新され、この更新された杵先間隔設定値LMで本圧位置の杵先間隔Lが制御される。
【0460】
この後、制御装置4aにより、第1実施形態で説明した制御圧力値更新手段をなすステップS149が実行される。それにより、ステップS115で求めた圧力制御基準算定値PMaの値で圧力制御基準値(現在値)PMが更新されるとともに、圧力制御部51の各制御圧力値が更新される。ステップS149の実行後に、スタートに戻る。
【0461】
以上説明した第2実施形態によれば、
図13〜
図18に示した制御パターン1に従った制御により、錠剤の質量Wと厚みTと硬度Hを制御することができる。この制御パターン1を指定して打錠装置1が運転された場合、第1実施形態での説明と同様な理由により、打錠機2の運転中の温度変化に拘らず、錠剤の質量Wと厚みTと硬度Hを規格範囲内に保持して、錠剤を製造することが可能である。
【0462】
次に、
図19を参照して、第2実施形態での制御パターン2(WT制御)が選択された場合の制御の流れを説明する。
【0463】
第2実施形態の制御パターン2は、この制御パターン2に応じた個別のフローチャートを用いて実行される。この場合、第1実施形態で説明した他の制御パターンとの整合性を取るためのステップS106(第1制御基準算定値更新手段)の処理、つまり、質量と厚みの各制御基準値(WM、TM)を夫々に対応する制御基準算定値(WMa、TMa)に置き換える処理は必要としないので省略されている。このことから、第2実施形態の制御パターン2では、後述するステップS109〜ステップS112での質量制御と厚み制御の各演算処理に夫々に対応する前記制御基準値を用いている。
【0464】
しかし、この第2実施形態の制御パターン2では、第1実施形態と同様にステップS106(第1制御基準算定値更新手段)の置換処理を行っても良い。この場合でも、前記制御基準値(WM、TM)と夫々に対応する制御基準算定値(WMa、TMa)は夫々が同一値であるから、ステップS109〜ステップS112、及びステップS115で求められる夫々の演算値は、前記ステップS106の置換処理をしない(省略した)場合で求める夫々の演算値と同一値となる。
【0465】
このことは、前記制御パターン2以外の他の制御パターンを夫々に対応する個別のフローチャートを用いて実行する場合でも、また、幾つかの制御パターンを2つ以上組合せた制御パターンの中から選択される制御パターンに応じて個別のフローチャートを用いて実行する際に、制御パターン2が選択された場合でも同様である。
【0466】
更に、制御パターン2は硬度制御系統を備えていない。これにより、第2実施形態の制御パターン2を実行するフローチャートでは、第2実施形態の制御パターン1において
図13を用いて説明したステップS137、ステップS140、ステップS141、ステップS146と、
図14〜
図17を用いて説明した硬度制御部をなす全てのステップ(ステップS151〜ステップS178)が、省略されている。
【0467】
制御装置4aにより、
図19に示したフローチャートにおいてサンプリングデータを取得するステップS103の次に、第1算定圧力変動値演算手段をなすステップS109が実行される。なお、
図19のステップS101〜ステップS103、及び運転制御系統に含まれるステップS109〜ステップS112、ステップS115、ステップS118、及びステップS149は、
図18等に記載した該当ステップと同じ機能を奏するように構成されている。
【0468】
次に、
図19に示したフローチャートに基づく制御を説明する。
【0469】
図19に示した運転制御系統で、制御装置4aによって、第1算定圧力変動値演算手段をなすステップS109が実行される。ステップS109は、質量制御をしたとき(質量平均値Wxを、質量制御基準値WMにしたとき)の算定圧力変動値PWa(第1算定圧力変動値)を次式により求める。
PWa=a(WM−Wx)……式(12a)。
【0470】
ステップS109は、
図18に示したステップS109に相当する。このステップS109を実行する前記式(12a)において、aはP−W相関係数、a(WM−Wx)の演算で求められる算出値が、質量制御をしたとき(質量平均値Wxを質量制御基準値WMにしたとき)の算定圧力変動値PWa(これを第1算定圧力変動値と称する。)である。
【0471】
ステップS109が終了すると、制御装置4aにより、算定厚み演算手段をなすステップS110が実行される。なお、ステップS109は、圧力制御基準算定値PMaを求めるためのステップS115の処理までに実行すれば良く、ステップS110と並行処理で同時に実行することも可能である。
【0472】
ステップS110は、前記質量制御をしたときの厚み変動値と厚み平均値Txとから算定厚みTaを次式により求める。
Ta=Tx+a1(WM−Wx)……式(13a)。
【0473】
ステップS110は、
図18に示したステップS110に相当する。このステップS110を実行する前記式(13a)において、a1はT−W相関係数、a1(WM−Wx)の演算で求められる算出値が質量制御をしたとき(質量平均値Wxを質量制御基準値WMにしたとき)の厚み変動値である。これにより、質量制御をしたときの算定厚みTaは、前記厚み変動値とサンプリング錠の厚み平均値Txとから求められる。
【0474】
次に、制御装置4aにより、杵先間隔算定値演算手段をなすステップS111が実行される。ステップS111により、厚み制御をしたとき(算定厚みTaを厚み制御基準値TMにしたとき)の、予圧位置での杵先間隔算定値lMaと、本圧位置での杵先間隔算定値LMaが、夫々次式により求められる。
LMa=LM+a3(TM−Ta)……式(15a)
lMa=lM+a3(TM−Ta)……式(16a)。
【0475】
ステップS111は、
図18に示したステップS111に相当する。このステップS111を実行する前記式(15a)において、LMは本圧位置での杵先間隔設定値、a3はL−T相関係数、TaはステップS110で求めた算定厚みである。同様に、ステップS111を実行する前記式(16a)において、lMは予圧位置での杵先間隔設定値、a3はL−T相関係数、TaはステップS110で求めた算定厚みである。
【0476】
ステップS111が終了すると、制御装置4aにより、第2算定圧力変動値演算手段をなすステップS112が実行される。ステップS112は、厚み制御をしたとき(算定厚みTaを厚み制御基準値TMにしたとき)の算定圧力変動値PTa(これを第2算定圧力変動値と称する。)を次式により求める。
PTa=a2(TM−Ta)……式(14a)。
【0477】
ステップS112は、
図18に示したステップS112に相当する。このステップS112を実行する前記式(14a)において、a2はP−T相関係数、a2(TM−Ta)の演算で求められる算出値が算定圧力変動値PTa(第2算定圧力変動値)である。
【0478】
ステップS112の実行後に、制御装置4aにより、圧力制御基準算定値演算手段をなすステップS115が実行される。ステップS115により、質量制御及び厚み制御による各算定圧力変動値PWa,PTaと、
成型圧力平均値Pxとから圧力制御基準算定値PMaが次式により求められる。
PMa=Px+PWa+PTa……式(17)。
【0479】
ステップS115は、
図18に示したステップS115に相当する。このステップS115を実行する前記式(17)において、Pxはサンプリング錠の成型圧力平均値、PWaはステップS109で求めた算定圧力変動値(第1算定圧力変動値)、PTaはステップS112で求めた算定圧力変動値(第2算定圧力変動値)である。これにより、ステップS115の式(17)で算出される圧力制御基準算定値PMaは、成型圧力平均値Pxと各算定圧力変動値PWa及びPTaの合計値に等しい。
【0480】
次に、制御装置4aにより、杵先間隔制御手段をなすステップS118が実行される。それにより、ステップS111で求めた予圧位置の杵先間隔算定値lMaの値で、予圧位置の杵先間隔設定値lMが更新され、この更新された杵先間隔設定値lMで予圧位置の杵先間隔lが制御される。これとともに,ステップS111で求めた本圧位置の杵先間隔算定値LMaの値で、本圧位置の杵先間隔設定値LMが更新され、この更新された杵先間隔設定値LMで本圧位置の杵先間隔Lが制御される。ステップS118は、
図18に示したステップS118に相当する。
【0481】
この後、制御装置4aにより、制御圧力値更新手段をなすステップS149が実行され、ステップS115で求めた圧力制御基準算定値PMaの値で圧力制御基準値(現在値)PMが更新される。それにより、圧力制御部51の各制御圧力値が更新された後、プログラムはスタートに戻る。ステップS149は、
図18に示したステップS149に相当する。
【0482】
したがって、
図19に示した制御パターン2に従った制御により、錠剤の質量Wと厚みTを制御することができる。この制御パターン2を指定して打錠装置1が運転された場合、第1実施形態での説明と同様な理由により、打錠機2の運転中の温度変化や粉末の物性変化などに拘らず、錠剤の質量Wと厚みTをステップS5で登録された各制御基準値に保持して、錠剤を製造することが可能である。
【0483】
以上説明した第2実施形態で制御パターン2(WT制御)を実行する運転制御系統は、以下の工程を有している。
1.質量制御をしたときの第1算定圧力変動値PWa求める工程。
2.前記質量制御をしたときの算定厚みTaを求める工程。
3.厚み制御をしたときの杵先間隔算定値lMa,LMaを求める工程。
4.前記厚み制御をしたときの第2算定圧力変動値PTaを求める工程。
5.運転中に求めた複数の成型品の成型圧力平均値Pxと第1算定圧力変動値PWaと第2算定圧力変動値PTaとから圧力制御基準算定値PMaを求める工程。
6.杵先間隔算定値lMa,LMaの値で杵先間隔設定値lM,LMを更新して、杵先間隔を制御する工程。
7.
前記成型圧力が更新される前記圧力制御基準値となるように、前記圧力制御基準算定値
PMaで
、臼への粉末の充填深さを規定する下杵の高さ位置を制御するための圧力制御部の前記圧力制御基準値
PMを更新
する制御圧力値更新工程。
【0484】
これにより、第2実施形態の制御パターン2が実行された場合、第1実施形態で既に説明したように、サンプリングされた複数の錠剤のサンプリングデータから算出された錠剤の厚み平均値Txにしたがって直接的に杵先間隔設定値lM,LMを変更する制御をするのではなく、まず、サンプリングの度にサンプリングデータから得た錠剤の質量平均値Wxを錠剤の質量制御基準値WMにしたとき(質量制御をしたとき)の第1算定圧力変動値PWa及び算定厚みTaを夫々求める。
【0485】
その上で、算定厚みTaを厚み制御基準値TMにしたとき(厚み制御をしたとき)の杵先間隔算定値lMa,LMa及び第2算定圧力変動値PTaを夫々求める。ここで、杵先間隔算定値lMa,LMaは、厚み制御をしたときの杵先間隔変動値と杵先間隔設定値とから求める。これにより、質量平均値Wxに基づいて杵先間隔を変える場合の杵先間隔に対する影響が評価されて、この影響(杵先間隔の変動)を考慮した杵先間隔算定値lMa,LMaが求められる。そして、この杵先間隔算定値lMa,LMaの値で杵先間隔設定値lM,LMを更新し、更新された値で杵先間隔l,Lを制御する。これにより、温度変化に伴う錠剤の厚み変動が補正されるので、錠剤の厚みTを厚み制御基準値TMに保持できる。
【0486】
これと共に、第2実施形態の制御パターン2は、杵先間隔設定値lM,LMの更新により成型圧力が変動して錠剤の質量Wが変わらないように調整している。この調整のために、先に求めた算定圧力変動値PWaと、先に求めた算定圧力変動値PTaと、成型圧力平均値Pxとから圧力制御基準算定値PMaを求める。その上で、圧力制御基準算定値PMaの値で圧力制御基準値(現在値)PMを更新している。
【0487】
このように質量制御と厚み制御による
成型圧力に対する影響(つまり、質量制御をしたときの算定圧力変動値PWaと、厚み制御をしたときの算定圧力変動値PTa)を考慮して求めた圧力制御基準算定値PMaの値で、圧力制御基準値PMを更新することにより、圧力制御部51の圧力制御基準値(現在値)PMが更新される。
【0488】
そして、更新された圧力制御基準値PMに基づいて成型圧力を制御
する。つまり、打錠機2の連続運転中に、更新された圧力制御基準値PMを基準とするフィードバック制御が行われる。それにより、製造される成型品の成型圧力が圧力制御基準値PMとなるように、臼12への粉末の充填深さを規定する下杵16の高さ位置が調節される。
【0489】
以上説明したように制御パターン2による運転では、第1実施形態と同様に、打錠機2の連続運転に伴う打錠機2各部の温度変化等に拘らず錠剤の厚みTを予め登録された厚み制御基準値に保持して、錠剤を製造することが可能である。これとともに、前記運転制御系統において、演算に基づくステップS149での圧力制御基準値の更新によって、圧力制御部51に設定された圧力制御基準値(現在値)をはじめとする各制御圧力値が、前記質量制御と前記厚み制御に見合うように自動的に更新されるので、錠剤の質量Wを予め登録された質量制御基準値に保持して、錠剤を製造することが可能である。
【0490】
このように、制御パターン2は、錠剤の質量と厚みを制御対象とすることで、質量と厚みを夫々に対応する制御基準値に保持して錠剤を製造することが可能である。しかも、この制御方法においては錠剤(成型品)の密度を制御することも可能である。
【0491】
つまり、錠剤の密度は錠剤の質量と体積によって求められる。この場合、各臼12の穴径が略同一寸法に加工されていることに基づいて、成型される錠剤の直径寸法が略同一となるので固定値として扱うことができる。これとともに、体積の変化は厚みの変化に相当することから、錠剤の密度は錠剤の質量と厚みの夫々の値に基づいて求めることができる。それにより、錠剤の密度を制御するためには質量と厚みを制御すれば良いことになる。したがって、既述のように錠剤の質量と厚みを制御対象とする制御パターン2に従う制御は、「錠剤の密度を制御する」ことと同等である。
【0492】
又、医薬品用の錠剤に対しては、体内に投与された錠剤の崩壊性や溶出性などの特性を一定に保持することが求められることがある。この場合、錠剤の密度と崩壊性、又は溶出性との間に成立する相関関係に基づいて、前記制御パターン2のWT制御に従う錠剤の密度の制御によって、前記崩壊性や溶出性が規格範囲内に保持された錠剤を製造することが可能となる。
【0493】
更に、第2実施形態の制御パターン1及び制御パターン2において、予圧・本圧の各杵先間隔
設定値及び圧力制御部
51での各制御圧力値の夫々の変更(更新)は、第1実施形態で示したステップS116a〜ステップS124、及びステップS125〜ステップS135による、杵先間隔制御部KK及び制御圧力値更新部PKを経由して、杵先間隔設定値及び
各制御圧力値を徐々に変更し、急激な成型圧力の変化に伴う異常圧力の発生を抑制できるようにすることが望ましい。
【0494】
なお、本発明は前記各実施形態に制約されない。例えば、本発明は、予圧ロールを備えない回転式粉末圧縮成型装置、つまり、本圧位置に配設された上下一組だけの圧縮成型ロールを備えた成型装置にも適用できる。制御装置の制御対象(例えば、成型品の質量、厚み、及び硬度)を制御する場合、そのうちの少なくとも質量と厚みについて、圧力制御部51に設定された
各制御圧力値の更新と杵先間隔設定値の更新は、時間差を持たせてもよく、或いは同時であってよい。
【0495】
又、前記各実施形態では、質量・厚み・硬度の夫々の制御基準値に対して、それらに対応する演算上の各算定値(算定質量、算定厚み、算定硬度)が外れていた場合に、杵先間隔設定値(現在値)と圧力制御部の圧力制御基準値(現在値)と、硬度制御においては質量・厚み・硬度の各制御基準値(現在値)を更新する制御をしている(これら現在値を更新する値を「更新制御対象値」と言う。)。しかし、これに代えて、質量制御基準値に対して質量制御不要範囲を、厚み制御基準値に対して厚み制御不要範囲を、硬度制御基準値に対して硬度制御不要範囲を夫々設定して、演算により求められた更新制御対象値が夫々の制御不要範囲外の値である場合に限って、これら更新制御対象値に基づく制御が行われるようにしても良い。この場合、演算により求められた更新制御対象値が夫々の制御基準値に対して定められた制御不要範囲内の値であれば、更新制御対象値に基づく制御をする必要がない。
【0496】
そして、各制御基準値に対して前記制御不要範囲を設定した場合、前記制御が行われる度に、制御装置によって再サンプリングが行われるようにサンプリング手段を制御することによって、前記制御後のサンプリングデータが取得できる構成とすることもできる。これにより、前記制御が適正になされたか否かを検証することが可能である。これとともに、演算で求めた前記更新制御対象値が無視できるほど僅かな数値の変化でしかないときにも、再サンプリングが継続して繰り返されて製品ロスが発生し、打錠機2での製品の生産を効率よく運転できない、ということを解消することが可能である。
【0497】
各実施形態は、試打データの取得に基づく制御装置の記憶部への登録後に、オペレータの手動操作で運転スイッチを投入して打錠機2を連続生産運転させている。しかし、本発明では、質量、厚み、硬度の試打データが規格範囲内であるか否かを判断するデータ判断手段を制御装置に設けて、このデータ判断手段が、質量、厚み、硬度の試打データが規格範囲内であると判断した場合、運転スイッチが自動的に投入されて連続生産運転に移行できるように制御装置を構成することが可能である。これとともに、相関係数a〜a5の値が生産される錠剤の品目や特定された原料に対応して予め求められている場合は、これら相関係数を制御装置に登録しておくことができる。これによって、生産開始時などで試打運転により試打データに基づく相関係数の取得をあらためて行うことなく、連続生産運転に自動的に移行させることも可能である。
【0498】
各実施形態においては、杵先間隔制御部KKと制御圧力値更新部PKを交互にかつ徐々に、夫々目標とする制御基準値に変更する制御をすることが望ましい。しかし、これに代えて、杵先間隔制御部KK又は制御圧力値更新部PKのどちらかを先に目標とする制御基準値まで徐々に変更するように制御し、最初に実行した制御部または更新部の制御が終了してから、引き続き、残された他の制御部または更新部の制御を目標とする制御基準値まで徐々に変更するように制御しても良い。
【0499】
又、前記各実施形態で、選択された制御パターンの演算処理で使用することのできる各種相関係数や、試打データに基づく相関係数の求め方などは既述の説明に制約されない。これは、既述のように成型圧力Pと、質量Wと、厚みTと、硬度Hと、杵先間隔L(またはl)との間には、夫々相関関係があって、夫々に対応する相関係数が成立するので、錠剤の質量の変更(制御)に応じて錠剤の厚みと硬度と成型圧力が変化し、錠剤の厚みの変更(制御)又は杵先間隔設定値の変更(制御)に応じて錠剤の硬度と成型圧力が変化する、と言う相関関係があることに基づく。
【0500】
例えば、錠剤の質量と厚みと成型圧力との三つの要素の関係について例を挙げると、既述の実施形態におけるP−W相関係数aの求め方では、質量制御(W2をW1に変更)をした時に生じる錠剤の厚みTの変化量、つまりT−W相関係数a1を用いて〔a1(W1−W2)〕の式により求められる値(これを「厚み変動値」と称する。)の補正処理をしていない。言い換えれば、演算処理において、錠剤の質量制御に応じて変化する錠剤の厚みT2を厚みT1に補正(厚み制御)しないことを前提としたときの成型圧力Pと質量Wの相関係数をP−W相関係数aとしている。なお、この求め方に従うP−W相関係数を、ここでは、「aα」とする。
【0501】
この求め方とは異なり、錠剤の質量制御に応じて変化する前記錠剤の厚み変動値の補正処理を行うことを前提としたときのP−W相関係数を「aβ」とすると、例えば質量制御に伴う算定圧力変動値PWa(既述の第1算定圧力変動値)を演算処理で求める場合、既述のP−W相関係数aの値を前記「aα」の値にして演算しても良く、同様にP−W相関係数aの値を前記「aβ」の値にして演算しても良い。
【0502】
前記「aα」か「aβ」かの何れかの値をP−W相関係数aとして演算処理しても、既述の第1,第2夫々の算定圧力変動値(PTa,PWa)と成型圧力平均値Pxとから算出される圧力制御基準算定値PMaの値は同じ値になる。
【0503】
既述の実施形態において、試打データからP−W相関係数aは、既述の試打1および試打2での成型圧力Pと質量Wの試打データ(P1,W1及びP2,W2)を用いて、以下の式によってP−W相関係数a(これをP−W相関係数aαと称する。)を求めている。
a=ΔP/ΔW=(P1−P2)/(W1−W2)……式(1)。
ここで、a=aαである。
【0504】
このようにして求めるP−W相関係数aαは、質量W2を質量W1にしたときの質量変化に伴う錠剤の厚みTの変化(厚み変動値=T1−T2)が生じることを前提とした係数である。しかし、演算処理上ではこの厚み変動値の補正を行わないことを前提として、質量W2を質量W1にした時の成型圧力の変動値によって求めている。
【0505】
具体的には、質量制御に応じて変化する錠剤の厚み変動値の補正処理をしないことを前提としたP−W相関係数aαの値をP−W相関係数aとして演算処理した場合、既述の演算式〔PWa=a(WMa−Wx)…式(12)〕で求められる第1算定圧力変動値PWaの値には、質量制御に応じて変化する厚み変動値を補正することに基づく圧力変動値(変動要素)は含まれないことなる。
【0506】
これに伴って、既述の演算式〔Ta=Tx+a1(WMa−Wx)…式(13)〕により、前記質量制御に応じて変化する厚み変動値と錠剤の厚み平均値Txとから、前記質量制御をしたときに相当する錠剤の厚み(既述の算定厚みTa)を求め、この算定厚みTaを厚み制御基準算定値TMaにしたとき(厚み制御をしたとき)の第2算定圧力変動値PTaを、既述の演算式〔PTa=a2(TMa−Ta)…式(14)〕から求めればよい。それにより、この第2算定圧力変動値PTaの値にも、前記質量制御に応じて変化する前記厚み変動値〔a1(WMa−Wx)=Ta−Tx〕を補正することによる圧力変動要素(圧力変動値)が含まれない演算処理を行うことができる。
【0507】
このように、前記質量制御に応じて変化する厚み変動値を補正したときの圧力変動値(変動要素)を含めないP−W相関係数aαを用いた演算処理をすることで、前記質量制御と前記厚み制御の双方の制御に対応した正確な算定圧力変動値(PTa,PWa)を算出することが可能となる。そして、前記第1,第2の算定圧力変動値(PTa,PWa)と成型圧力平均値Pxとから前記圧力制御基準算定値PMaを求めれば、質量制御に応じて変化する錠剤の厚み変動値を補正しないことを前提としたP−W相関係数aαを用いた以下に示す演算式に従って、圧力制御基準算定値PMaを求めることができる。
【0508】
PWa=aα(WMa−Wx)…式(12b)
PTa=a2(TMa−Ta)…式(14)
PMa=Px+PWa+PTa …式(17)。
【0509】
この場合、式(12b)で求めた圧力制御基準算定値PWaの値は、a=aαとしているから、既述の演算式〔PWa=a(WMa−Wx)…式(12)〕で求めた値と同一値である。
【0510】
このように質量制御に応じて変化する錠剤の厚み変動値(Ta−Tx)を補正しないことを前提としたP−W相関係数aαを用いて求める圧力制御基準算定値PMaの演算処理において、質量制御に応じて変化する錠剤の厚み変動値を補正(TxをTaに補正)して求める場合、以下の式に従って行えばよい。
【0511】
PWa=aα(WMa−Wx)−a2(Ta−Tx)…式(12c)
PTa=a2(TMa−Ta)+a2(Ta−Tx)…式(14b)
PMa=Px+PWa+PTa…式(17)
ここで、a2(Ta−Tx)で求められる値は厚み変動値の補正に基づく圧力変動値である。
【0512】
このように圧力制御基準算定値PMaを、厚み変動値を補正せずに前記式(12b)と前記式(14)とで求める夫々の算定圧力変動値PWa,PTaから求めても、厚み変動値を補正して前記式(12c)と前記式(14b)とで求める夫々の算定圧力変動値PWa,PTaから求めても、前記式(12c)と前記式(14b)夫々の〔a2(Ta−Tx)〕で求められる値が相殺されて、いずれの値も同一値となる。
【0513】
これとは異なり、質量制御に応じて変化する錠剤の厚み変動値(Ta−Tx)を補正することを前提としたP−W相関係数aβを求める場合は、以下の演算方法に従う。
【0514】
既述のように質量制御に伴う錠剤の厚み変動により成型圧力も変動する可能性があることに基づき、既述の試打データから、まず、厚みデータT2を厚みデータT1に制御したときに、成型圧力データP2がどのような成型圧力(これを算定圧力P2aと称する。)になるのかを、P−W相関係数a2を用いて次式により求める。
P2a=P2+a2(T1−T2)……式(3a)。
【0515】
この算定圧力P2aを用いて、厚み変動値によって補正された成型圧力の変動値ΔPを錠剤の質量の変動値ΔWで割る次式により、P−W相関係数aβを求める。
aβ=ΔP/ΔW=(P1−P2a)/(W1−W2)……式(1a)。
算定圧力P2aにより、P−W相関係数aβを求める上での厚みデータの基準を揃えることができて、厚みデータT1と厚みデータT2との差によって生じる成型圧力の誤差(圧力変動要素)を排除することが可能となる。
【0516】
従って、質量制御に応じて変化する錠剤の厚み変動値を補正することを前提として求めたP−W相関係数aβを用いて圧力制御基準算定値PMaを求める場合は、以下の式に従う演算処理を行えばよい。
【0517】
PWa=aβ(WMa−Wx)…式(12d)
PTa=a2(TMa−Ta)+a2(Ta−Tx)=a2(TMa−Tx)…式(14c)
PMa=Px+PWa+PTa…式(17)。
【0518】
ここで、aβ(WMa−Wx)で求められる算定圧力変動値PWaは、質量制御に応じて変化する錠剤の厚み変動値を補正することを前提として求めたP−W相関係数aβを用いているため、厚み変動値補正による圧力変動値が含まれている。
【0519】
これらから、前記夫々の前提の下で求められる圧力制御基準算定値PMaを以下の各計算方法で求めても、前記質量制御と前記厚み制御の双方の制御に対応した正確な算定圧力変動値(PTa,PWa)を算出することが可能となり、いずれの方法で求めた圧力制御基準算定値PMaの値も同一値となる。
【0520】
第1方法では、質量制御に応じて変化する厚み変動値の補正をせずに前記式(12b)と前記式(14)とで求める夫々の算定圧力変動値PWa,PTaから圧力制御基準算定値PMaを求める。第2方法では、質量制御に応じて変化する錠剤の厚み変動値を補正しないことを前提として求めたP−W相関係数aαを用いることにより、厚み変動値を補正することが含まれる前記式(12c)と前記式(14b)とで求める夫々の算定圧力変動値PWa,PTaから圧力制御基準算定値PMaを求める。第3方法は、質量制御に応じて変化する錠剤の厚み変動値を補正することを前提として求めたP−W相関係数aβを用いて前記式(12d)と、厚み変動値を補正することが含まれる前記式(14c)とで求める夫々の算定圧力変動値PWa,PTaから圧力制御基準算定値PMaを求める。
【0521】
又、前述したP−W相関係数に「aα」を用いて第1算定圧力変動値PWaを求める場合、第2算定圧力変動値PTaは、既述の計算式〔PTa=a2(TMa−Ta)…式(14)〕で求めている。しかし、この計算式に代えて、成型圧力Pと杵先間隔L(又はl)との間に成立するP−L相関係数(又はP−l相関係数)と、杵先間隔変動値(杵先間隔算定値LMaと前記杵先間隔設定値LMの差)とを用いて第2算定圧力変動値PTaを求めることも可能である。
【0522】
具体的には、既述の計算式〔LMa=LM+a3(TMa−Ta)…式(15)〕は、 (TMa−Ta)=(LMa−LM)/a3とすることができ、これを、第2算定圧力変動値PTaを求める既述の計算式〔PTa=a2(TMa−Ta)…式(14)〕に代入すると、PTa=a2(LMa−LM)/a3となり、更にPTa=(a2/a3)×(LMa−LM)……式(14d)とすることができる。
【0523】
ここで既述のように、P−T相関係数a2はΔP/ΔTで、L−T相関係数a3はΔL/ΔTで求める係数である。このため、PTaを求める前記式(14d)の(a2/a3)は、以下に示す計算式によって圧力変動値(ΔP)を杵先間隔変動値(ΔL)で割ることで求められ、これをP−L相関係数(例えばa6)と言い換えることができる。
【0524】
a2/a3=(ΔP/ΔT)/(ΔL/ΔT)=ΔP/ΔL
このことから、前記杵先間隔算定値LMaと前記杵先間隔設定値LMの差(LMa−LM)に前記P−L相関係数(a6=a2/a3)を乗じて求める第2算定圧力変動値PTaは、前記厚み制御基準算定値TMaと前記算定厚みTaの差(TMa−Ta)にP−T相関係数(a2)を乗じて求める既述の第2算定圧力変動値PTaの値と同一値になる。
【0525】
更に、錠剤の硬度の制御を伴う制御パターンにおいて使用するW−H相関係数a5については、制御パターン3(WH制御)ではa5αの値を用い、制御パターン1(WTH制御)及び制御パターン5(TH制御)ではa5βの値を用いた実施形態を説明したが、a5βをa5αに置換えて演算処理を行うことも可能である。これは、前述した錠剤の質量と厚みと成型圧力の夫々に成立する相関関係から、質量制御と厚み制御をしたときの夫々の圧力変動値を求める方法と同様に、既述のように錠剤の質量と厚みと硬度の夫々にも相関関係が成立することにより、質量制御と厚み制御をしたときの夫々の硬度変動値を求めることも可能であることに基づく。
【0526】
又、既述の制御パターン1(WTH制御)で所望の成型品を製造するには、以下の各方法で実施することが可能である。
【0527】
(成型品の硬度の単独制御方法)
制御パターン1(WTH制御)において、質量制御基準値補正範囲と厚み制御基準値補正範囲を夫々大幅に広げる設定をする。例えば、質量と厚みの各制御基準値補正範囲の下限値を0とし、
質量と厚みの各制御基準値補正範囲の上限値を設定可能範囲の最大値にする等。次に、硬度制御基準値補正範囲だけを最小にする(例えば、硬度制御基準値補正範囲の下限値と上限値を同値にする等)ことで、硬度変化に応じて圧力制御基準値PMと杵先間隔設定値LMおよびlMが更新される。
【0528】
これにより、成型品の硬度Hが単独で規格範囲内となるように制御(H単独制御)されて所望の成型品を製造することが可能である。
【0529】
(成型品の質量の単独制御方法)
制御パターン1(WTH制御)において、厚み制御基準値補正範囲と硬度制御基準値補正範囲を夫々大幅に広げる設定をする。例えば、厚みと硬度の各制御基準値補正範囲の下限値を0と
し、厚みと硬度の各制御基準値補正範囲の上限値を設定可能範囲の最大値に
する等。次に、質量制御基準値補正範囲だけを最小にする(例えば、質量制御基準値補正範囲の下限値と上限値を同値にする等)ことで、質量変化に応じて圧力制御基準値PMと杵先間隔設定値LMおよびlMが更新される。
これにより、成型品の質量Wが単独で規格範囲内となるように制御(W単独制御)されて所望の成型品を製造することが可能である。
【0530】
これにより、成型品の質量Wが単独で規格範囲内となるように制御(W単独制御)されて所望の成型品を製造することが可能である。
【0531】
(成型品の厚みの単独制御方法)
制御パターン1(WTH制御)において、質量制御基準値補正範囲と硬度制御基準値補正範囲を夫々大幅に広げる設定をする。例えば、質量と硬度の各制御基準値補正範囲の下限値を0とし、質量と硬度の各制御基準値補正範囲の上限値を設定可能範囲の最大値にする等。次に、厚み制御基準値補正範囲だけを最小にする(例えば、厚み制御基準値補正範囲の下限値と上限値を同値にする等)ことで、厚み変化に応じて圧力制御基準値PMと杵先間隔設定値LMおよびlMが更新される。
【0532】
それより、成型品の厚みTが単独で規格範囲内となるように制御(T単独制御)されて所望の成型品を製造することが可能である。
【0533】
(成型品の厚みと硬度の制御方法)
制御パターン1(WTH制御)において、質量制御基準値補正範囲を大幅に広げる設定をする。例えば、質量制御基準値補正範囲の下限値を0とし、質量制御基準値補正範囲の上限値を設定可能範囲の最大値にする等。次に、厚み制御基準値補正範囲と硬度制御基準値補正範囲の夫々を最小にする(例えば、厚みと硬度の各制御基準値補正範囲の下限値と上限値を同値にする等)により、厚みと硬度の各変化に応じて圧力制御基準値PMと杵先間隔設定値LMおよびlMが更新される。
【0534】
それにより、成型品の厚みTと硬度Hの夫々が規格範囲内となるように制御(TH制御)されて所望の成型品を製造することが可能である。
【0535】
(成型品の質量と硬度の制御方法)
制御パターン1(WTH制御)において、厚み制御基準値補正範囲を大幅に広げる設定をする。例えば、厚み制御基準値補正範囲の下限値を0とし、厚み制御基準値補正範囲の上限値を設定可能範囲の最大値にする等。次に、質量制御基準値補正範囲と硬度制御基準値補正範囲の夫々を最小にする(例えば、質量と硬度の各制御基準値補正範囲の下限値と上限値を同値にする等)により、質量と硬度の各変化に応じて圧力制御基準値PMと杵先間隔設定値LMおよびlMが更新される。
【0536】
それにより、成型品の質量Wと硬度Hの夫々が規格範囲内となるように制御(WH制御)されて所望の成型品を製造することが可能である。
【0537】
(成型品の質量と厚みの制御方法)
制御パターン1(WTH制御)において、硬度制御基準値補正範囲を大幅に広げる設定をする。例えば、硬度制御基準値補正範囲の下限値を0とし、硬度制御基準値補正範囲の上限値を設定可能範囲の最大値にする等。次に、質量制御基準値補正範囲と厚み制御基準値補正範囲の夫々を最小にする(例えば、質量と厚みの各制御基準値補正範囲の下限値と上限値を同値にする等)により、質量と厚みの各変化に応じて圧力制御基準値PMと杵先間隔設定値LMおよびlMが更新される。
【0538】
それにより、成型品の質量Wと厚みTの夫々が規格範囲内となるように制御(WT制御)されて所望の成型品を製造することが可能である。
【0539】
以上のように本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。
【0540】
発明の範囲は、制御パターン1(WTH制御)、又は制御パターン2(WT制御)のみを単独で実施できる実施形態を含むことはもちろんであり、更に、これら夫々の制御パターン1,2と他の制御パターン又は制御手段とを組み合わせることによって、その組み合せの中から、前記夫々の制御パターンを選択して実施することも含むものである。
【0541】
又、本明細書に記載された実施形態には以下の発明が含まれている。
【0542】
〔1〕
回転盤11を備える粉末圧縮成型機2の運転を制御する制御装置4aに備えられかつ製造される成型品の成型圧力が圧力制御基準値PMに保持されるように前記回転盤11に取付けられた臼12への粉末の充填深さを規定する下杵16の高さ位置を制御する圧力制御部51を有する回転式粉末圧縮成型装置1(又はこの装置の運転方法)であって、成型品の厚みのみの制御を行うための以下の各手段(又は各工程)を備えることを特徴とする。
圧力制御をしたときの質量変動値と、運転中に求めた複数の成型品の質量平均値Wxとから成型品の算定質量Waを求める算定質量演算手段(又は算定質量演算工程)。
厚み制御基準値TMの値で厚み制御基準算定値TMaを置換する第1制御基準算定値更新手段(又は第1制御基準算定値更新工程)。
前記算定質量Waの値で前記質量制御基準算定値WMaを置換する第2制御基準値更新手段(又は第2制御基準値更新工程)。
質量制御をしたときの算定圧力変動値PWaを求める第1算定圧力変動値演算手段(又は第1算定圧力変動値演算工程)。
前記質量制御をしたときの厚み変動値と運転中に求めた複数の成型品の厚み平均値Txとから成型品の算定厚みTaを求める算定厚み演算手段(又は算定厚み演算工程)。
厚み制御をしたときの杵先間隔算定値(lMa及びLMa)を求める杵先間隔算定値演算手段(又は杵先間隔算定値演算工程)。
前記厚み制御をしたときの第2算定圧力変動値PTaを求める第2算定圧力変動値演算手段(又は第2算定圧力変動値演算工程)。
運転中に求めた複数の成型品の成型圧力平均値Pxと前記第1、第2の夫々の算定圧力変動値(PWa、PTa)とから圧力制御基準算定値PMaを求める圧力制御基準算定値演算手段(又は圧力制御基準算定値演算工程)。
杵先間隔を制御する必要性を判断し、その必要性があると判断した場合、杵先間隔を変更させる杵先間隔制御手段(又は杵先間隔制御工程)。
前記圧力制御基準値PMを更新する必要性を判断し、その必要性があると判断した場合、
前記成型圧力が更新される前記圧力制御基準値PMとなるように、前記圧力制御基準算定値PMaで、前記臼12への粉末の充填深さを規定する前記下杵16の高さ位置を制御するための前記圧力制御部51の前記圧力制御基準値PMを更新する制御圧力値更新手段(又は制御圧力値更新工程)。
【0543】
〔2〕
回転盤11を備える粉末圧縮成型機2の運転を制御する制御装置4aに備えられかつ製造される成型品の成型圧力が圧力制御基準値PMに保持されるように前記回転盤11に取付けられた臼12への粉末の充填深さを規定する下杵16の高さ位置を制御する圧力制御部51を有する回転式粉末圧縮成型装置1(又はこの装置の運転方法)であって、厚みと硬度の制御を行うための以下の各手段(又は各工程)を備えることを特徴とする。
圧力制御をしたときの質量変動値と、運転中に求めた複数の成型品の質量平均値Wxとから成型品の算定質量Waを求める算定質量演算手段(又は算定質量演算工程)。
厚み基準値TOの値で厚み制御基準算定値TMaを、硬度基準値HOの値で硬度制御基準算定値HMaを夫々置換する第3制御基準算定値更新手段(又は第3制御基準算定値更新工程)。
前記算定質量Waの値で質量制御基準算定値WMaを置換する第4制御基準算定値更新手段(又は第4制御基準算定値更新工程)。
前記質量制御基準算定値WMaを用いて質量制御をしたときの硬度変動値と、厚み制御基準算定値TMaを用いて厚み制御をしたときの硬度変動値とを夫々求め、これら硬度変動値と、運転中に求めた複数の成型品の硬度平均値Hxとから成型品の算定硬度Haを求める第2算定硬度演算手段(又は第2算定硬度演算工程)。
前記算定硬度Haが、厚み・硬度の各制御基準算定値が補正されたとしたときの硬度制御可能範囲内であるか否かを判断する算定硬度第2判断手段(又は算定硬度第2判断工程)。
前記算定硬度第2判断手段(又は算定硬度第2判断工程)の判断が硬度制御可能範囲内の場合、厚み及び硬度の各制御基準算定値の少なくとも一つを、この少なくとも一つに対応する制御基準値補正範囲の範囲内で更新する硬度制御手段(又は硬度制御工程)。
前記硬度制御手段(又は硬度制御工程)を経由して与えられる質量制御基準算定値を用いて質量制御をしたときの第1算定圧力変動値PWaを求める第1算定圧力変動値演算手段(又は第1算定圧力変動値演算工程)。
前記質量制御をしたときの厚み変動値と前記厚み平均値Txとから成型品の算定厚みTaを求める算定厚み演算手段(又は算定厚み演算工程)。
前記硬度制御手段(又は硬度制御工程)を経由して与えられる厚み制御基準算定値を用いて厚み制御をしたときの杵先間隔算定値lMa,LMaを求める杵先間隔算定値演算手段(又は杵先間隔算定値演算工程)。
前記厚み制御をしたときの第2算定圧力変動値PTaを求める第2算定圧力変動値演算手段(又は第2算定圧力変動値演算工程)。
運転中に求めた複数の成型品の成型圧力平均値Pxと前記第1、第2の算定圧力変動値PWa,PTaとから圧力制御基準算定値PMaを求める圧力制御基準算定値演算手段(又は圧力制御基準算定値演算工程)。
杵先間隔を制御する必要性を判断し、その必要性があると判断した場合、杵先間隔を変更させる杵先間隔制御手段(又は杵先間隔制御工程)。
前記圧力制御基準値PMを更新する必要性を判断し、その必要性があると判断した場合、
前記成型圧力が更新される前記圧力制御基準値PMとなるように、前記圧力制御基準算定値PMaで、前記臼12への粉末の充填深さを規定する前記下杵16の高さ位置を制御するための前記圧力制御部51の
前記圧力制御基準値PMを更新する制御圧力値更新手段(又は制御圧力値更新工程)。
【0544】
〔3〕
回転盤11を備える粉末圧縮成型機2の運転を制御する制御装置4aに備えられかつ製造される成型品の成型圧力が圧力制御基準値PMに保持されるように前記回転盤11に取付けられた臼12への粉末の充填深さを規定する下杵16の高さ位置を制御する圧力制御部51を有する回転式粉末圧縮成型装置1(又はこの装置の運転方法)であって、質量と硬度の制御を行うための以下の各手段(又は各工程)を備えることを特徴とする。
質量基準値WOの値で質量制御基準算定値WMaを、硬度基準値HOの値で硬度制御基準算定値HMaを夫々置換する第3制御基準算定値更新手段(又は第3制御基準算定値更新工程)。
質量制御をしたときの硬度変動値と、運転中に求めた複数の成型品の硬度平均値Hxとから成型品の算定硬度Haを求める第1算定硬度演算手段(又は第1算定硬度演算工程)。
前記算定硬度Haが、質量・硬度の各制御基準算定値が補正されたとしたときの硬度制御可能範囲内であるか否かを判断する算定硬度第1判断手段(又は算定硬度第1判断工程)。
前記算定硬度第1判断手段(又は算定硬度第1判断工程)の判断が前記硬度制御可能範囲内の場合、質量及び硬度の各制御基準算定値の少なくとも一つを、この少なくとも一つに対応する制御基準値補正範囲の範囲内で更新する硬度制御手段(又は硬度制御工程)。
前記硬度制御手段(又は硬度制御工程)を経由して与えられる質量制御基準算定値を用いて質量制御をしたときの第1算定圧力変動値PWaを求める第1算定圧力変動値演算手段(又は第1算定圧力変動値演算工程)。
運転中に求めた複数の成型品の成型圧力平均値Pxと前記第1算定圧力変動値PWaとから圧力制御基準算定値PMaを求める圧力制御基準算定値演算手段(又は圧力制御基準算定値演算工程)。
前記圧力制御基準値PMを更新する必要性を判断し、その必要性があると判断した場合、
前記成型圧力が更新される前記圧力制御基準値PMとなるように、前記圧力制御基準算定値PMaで、前記臼12への粉末の充填深さを規定する前記下杵16の高さ位置を制御するための前記圧力制御部51の
前記圧力制御基準値PMを更新する制御圧力値更新手段(又は制御圧力値更新工程)。
【0545】
〔4〕
回転盤11を備える粉末圧縮成型機2の運転を制御する制御装置4aに備えられかつ製造される成型品の成型圧力が圧力制御基準値PMに保持されるように前記回転盤11に取付けられた臼12への粉末の充填深さを規定する下杵16の高さ位置を制御する圧力制御部51を有する回転式粉末圧縮成型装置1(又はこの装置の運転方法)であって、質量と厚みと硬度の制御を行うための以下の各手段(又は各工程)を備えることを特徴とする。
圧力制御をしたときの質量変動値と、運転中に求めた複数の成型品の質量平均値Wxとから成型品の算定質量Waを求める算定質量演算手段(又は算定質量演算工程)。
指定された制御パターンが成型品の硬度の制御を含むのか否かを判断する制御パターン第1選択手段(又は制御パターン第1選択工程)。
指定された制御パターンが成型品の硬度の制御を含ないと前記制御パターン第1選択手段(又は制御パターン第1選択工程)が判断した場合、質量制御基準値WMの値で質量制御基準算定値WMaを、厚み制御基準値TMの値で厚み制御基準算定値TMaを夫々置換する第1制御基準算定値更新手段(又は第1制御基準算定値更新工程)。
指定された制御パターンが成型品の質量の制御を含むのか否かを判断する制御パターン第2選択手段(又は制御パターン第2選択工程)。
指定された制御パターンが成型品の質量の制御を含まないと前記制御パターン第2選択手段(又は制御パターン第2選択工程)が判断した場合、前記算定質量Waの値で前記質量制御基準算定値WMaを置換する第2制御基準算定値更新手段(又は第2制御基準算定値更新工程)。
指定された制御パターンが成型品の硬度の制御を含むと前記制御パターン第1選択手段(又は制御パターン第1選択工程)が判断した場合、質量基準値WOの値で質量制御基準算定値WMaを、厚み基準値TOの値で厚み制御基準算定値TMaを、硬度基準値HOの値で硬度制御基準算定値HMaを、夫々置換する第3制御基準算定値更新手段(又は第3制御基準算定値更新工程)。
指定された制御パターンが成型品の質量の制御を含むか否かを判断する制御パターン第3選択手段(又は制御パターン第3選択工程)。
指定された制御パターンが成型品の質量の制御を含むと前記制御パターン第3選択手段(又は制御パターン第3選択工程)が判断した場合、質量制御をしたときの硬度変動値と、前記厚み制御をしたときの硬度変動値とを夫々求め、これら硬度変動値と運転中に求めた複数の成型品の硬度平均値Hxとから成型品の算定硬度Haを求める第1算定硬度演算手段(又は第1算定硬度演算工程)。
前記算定硬度Haが、質量・厚み・硬度の各制御基準算定値が補正されたとしたときの硬度制御可能範囲内であるか否かを判断する算定硬度第1判断手段(又は算定硬度第1判断工程)。
指定された制御パターンが成型品の質量の制御を含まないと前記制御パターン第3選択手段(又は制御パターン第3選択工程)が判断した場合、前記算定質量Waの値で質量制御基準算定値WMaを置換する第4制御基準算定値更新手段(又は第4制御基準算定値更新工程)。
質量制御をしたときの硬度変動値と、厚み制御をしたときの硬度変動値とを求め、これら硬度変動値と運転中に求めた複数の成型品の硬度平均値Hxとから成型品の算定硬度Haを求める第2算定硬度演算手段(又は第2算定硬度演算工程)。
前記算定硬度が、厚み・硬度の各制御基準算定値が補正されたとしたときの硬度制御可能範囲内であるか否かを判断する算定硬度第2判断手段(又は算定硬度第2判断工程)。
前記算定硬度第1判断手段(又は算定硬度第1判断工程)の判断が硬度制御可能範囲内の場合、質量、厚み、及び硬度の各制御基準算定値の少なくとも一つを、この少なくとも一つに対応する制御基準値補正範囲の範囲内で更新する硬度制御手段(又は硬度制御工程)、又は、前記算定硬度第2判断手段(又は算定硬度第2判断工程)の判断が硬度制御可能範囲内の場合、厚み及び硬度の各制御基準算定値の少なくとも一つを、この少なくとも一つに対応する制御基準値補正範囲の範囲内で更新する硬度制御手段(又は硬度制御工程)。
指定された制御パターンが成型品の質量の制御を含むと前記制御パターン第2選択手段(又は制御パターン第2選択工程)が判断した場合、又は、指定された制御パターンが成型品の質量の制御を含まないと前記制御パターン第2選択手段(又は制御パターン第2選択工程)が判断した場合で、かつ、前記第2制御基準値更新手段(又は前記第2制御基準値更新工程)を経由した場合、若しくは指定された制御パターンが前記硬度制御手段(又は前記硬度制御工程)を経由した場合に、質量制御をしたときの第1算定圧力変動値を求める第1算定圧力変動値演算手段(又は第1算定圧力変動値演算工程)。
前記質量制御をしたときの厚み変動値と運転中に求めた複数の成型品の厚み平均値Txとから成型品の算定厚みTaを求める算定厚み演算手段(又は算定厚み演算工程)。
厚み制御をしたときの杵先間隔変動値と杵先間隔設定値とから杵先間隔算定値LMa,lMaを求める杵先間隔算定値演算手段(又は杵先間隔算定値演算工程)。
前記厚み制御をしたときの第2算定圧力変動値PTaを求める第2算定圧力変動値演算手段(又は第2算定圧力変動値演算工程)。
運転中に求めた複数の成型品の成型圧力平均値Pxと前記第1算定圧力変動値PWaと前記第2算定圧力変動値PTaとから圧力制御基準算定値PMaを求める圧力制御基準算定値演算手段(又は圧力制御基準算定値演算工程)。
杵先間隔を制御する必要性を判断し、その必要性があると判断した場合、杵先間隔を変更させる杵先間隔制御手段(又は杵先間隔制御工程)。
前記圧力制御基準値PMを更新する必要性を判断し、その必要性があると判断した場合、
前記成型圧力が更新される前記圧力制御基準値PMとなるように、前記圧力制御基準算定値PMaで、前記臼12への粉末の充填深さを規定する前記下杵16の高さ位置を制御するための前記圧力制御部51の
前記圧力制御基準値PMを更新する制御圧力値更新手段(又は制御圧力値更新工程)。
【0546】
〔5〕
前記〔1〕、前記〔2〕、前記〔4〕、特許請求の範囲の請求項2,4,7のいずれかに記載の回転式粉末圧縮成型装置(又は前記〔1〕、前記〔2〕、前記〔4〕、特許請求の範囲の請求項1,3,5のいずれかに記載の回転式粉末圧縮成型装置の運転方法)において、
前記杵先間隔制御手段(又は杵先間隔制御工程)が、
前記杵先間隔算定値と前記杵先間隔設定値とが同じであるか否かを判断する杵先間隔制御判断手段(又は杵先間隔制御判断工程)と、
この杵先間隔制御判断手段(又は杵先間隔制御判断工程)の判断がYESとなるまで繰り返し実行される以下の各手段(又は各工程)と、
を、更に備えることを特徴とする。
前記杵先間隔制御判断手段(又は前記杵先間隔制御判断工程)の判断がNOである場合、前記杵先間隔設定値が前記杵先間隔算定値より大きいか否かを判断する第1杵先間隔判断手段(又は第1杵先間隔判断工程)。
この第1杵先間隔判断手段(又は第1杵先間隔判断工程)の判断がYESの場合、前記杵先間隔設定値と前記杵先間隔算定値との差(絶対値)が、規定寸法値より小さいか否かを判断する第2杵先間隔判断手段(又は第2杵先間隔判断工程)。
前記第1杵先間隔判断手段(又は第1杵先間隔判断工程)の判断がNOの場合、前記杵先間隔設定値と前記杵先間隔算定値との差(絶対値)が、前記規定寸法値より小さいか否かを判断する第3杵先間隔判断手段(又は第3杵先間隔判断工程)。
前記第2杵先間隔判断手段(又は第2杵先間隔判断工程)の判断がNOの場合、前記杵先間隔設定値から前記規定寸法値を減らした値で前記杵先間隔設定値を更新して、杵先間隔を狭める第1杵先間隔制御手段(又は第1杵先間隔制御工程)。
前記第2杵先間隔判断手段(又は第2杵先間隔判断工程)の判断がYESの場合及び前記第3杵先間隔判断手段(又は第3杵先間隔判断工程)の判断がYESの場合、前記杵先間隔算定値で前記杵先間隔設定値を更新し、この更新された値に杵先間隔を変更する第2杵先間隔制御手段(又は第2杵先間隔制御工程)。
前記第3杵先間隔判断手段(又は第3杵先間隔判断工程)の判断がNOの場合、前記杵先間隔設定値に前記規定寸法値を加えた値で前記杵先間隔設定値を更新して、杵先間隔を広げる第3杵先間隔制御手段(又は第3杵先間隔制御工程)。
【0547】
〔6〕
前記〔1〕、前記〔2〕、前記〔3〕、前記〔4〕、前記〔5〕特許請求の範囲の請求項2,4,7のうちのいずれかに記載の回転式粉末圧縮成型装置(又は、前記〔1〕、前記〔2〕、前記〔3〕、前記〔4〕、前記〔5〕、特許請求の範囲の請求項1,3.5のうちのいずれかに記載の回転式粉末圧縮成型装置の運転方法)において、
前記制御圧力値更新手段(又は制御圧力値更新工程)が、
前記圧力制御基準値PMと前記圧力制御基準算定値PMaとが同じであるか否かを判断する圧力制御基準値更新判断手段(又は圧力制御基準値更新判断工程)と、
この圧力制御基準値更新判断手段(又は圧力制御基準値更新判断工程)の判断がYESとなるまで繰り返し実行される以下の手段(又は工程)を、更に備えることを特徴とする。
前記圧力制御基準値PMが前記圧力制御基準算定値PMaより大きいか否かを判断する第1圧力制御基準値判断手段(又は第1圧力制御基準値判断工程)。
この第1圧力制御基準値判断手段(又は第1圧力制御基準値判断工程)の判断がYESの場合、前記圧力制御基準値PMと前記圧力制御基準算定値PMaとの差(絶対値)が、規定圧力値より小さいか否かを判断する第2圧力制御基準値判断手段(又は第2圧力制御基準値判断工程)。
前記第1圧力制御基準値判断手段(又は第1圧力制御基準値判断工程)の判断がNOの場合、前記圧力制御基準値PMと前記圧力制御基準算定値PMaとの差(絶対値)が、前記規定圧力値より小さいか否かを判断する第3圧力制御基準値判断手段(又は第3圧力制御基準値判断工程)。
前記第2圧力制御基準値判断手段(又は第2圧力制御基準値判断工程)の判断がNOの場合、前記圧力制御基準値PMから前記規定圧力値を引いた値で前記圧力制御基準値PMを
更新する第1制御圧力値更新手段(又は第1制御圧力値更新工程)。
前記第2圧力制御基準値判断手段(又は第2圧力制御基準値判断工程)の判断がYESの場合及び前記第3圧力制御基準値判断手段(又は第3圧力制御基準値判断工程)の判断がYESの場合、前記圧力制御基準算定値PMaの値で前記圧力制御基準値PMを
更新する第2制御圧力値更新手段(又は第2制御圧力値更新工程)。
前記第3圧力制御基準値判断手段(又は第3圧力制御基準値判断工程)の判断がNOの場合、前記圧力制御基準値PMに前記規定圧力値を加えた値で前記圧力制御基準値PMを
更新する第3制御圧力値更新手段(又は第3制御圧力値更新工程)。