【実施例】
【0014】
(第1実施例)
図1に示すように、半導体装置100は横型であり、サファイア基板2、バッファ層4、第1化合物半導体層6、第2化合物半導体層8、第3化合物半導体層14、第4化合物半導体層16、ゲート電極18、ソース電極20及びドレイン電極10を備えている。
【0015】
サファイア基板2の表面に、窒化アルミニウム(AlN)を材料とするバッファ層4が設けられている。第1化合物半導体層6は、バッファ層4の表面に設けられている。第1化合物半導体層6の材料は、窒化ガリウムである。第1化合物半導体層6は、ノンドープである。第2化合物半導体層8は、第1化合物半導体層6の表面に設けられており、その材料は、窒化アルミニウムガリウムである。第2化合物半導体層8は、ノンドープである。すなわち、第1化合物半導体層6及び第2化合物半導体層8は、i型の窒化物半導体である。第2化合物半導体層8のバンドギャップは、第1化合物半導体層6のギャップより大きい。第1化合物半導体層6と第2化合物半導体層8はヘテロ接合しており、第1化合物半導体層6と第2化合物半導体層8の接合面22の近傍に、2次元電子ガス層が形成される。なお、第1化合物半導体層6の厚みはおよそ2μm〜3μmであり、第2化合物半導体層8の厚みはおよそ15nm〜25nmである。
【0016】
第3化合物半導体層14は、第2化合物半導体層8の表面の一部に設けられている。第3化合物半導体層14の材料は、窒化アルミニウムガリウムである。第3化合物半導体層14は、p型不純物であるマグネシウム(Mg)をおよそ1×10
19cm
−3含んでいる。第4化合物半導体層16は、第3化合物半導体層14の表面に設けられている。第4化合物半導体層16の材料は、窒化アルミニウムガリウムである。第3化合物半導体層14に含まれるアルミニウム(Al)の含有割合は、第2化合物半導体層8と同一である。第4化合物半導体層16は、マグネシウムをおよそ1×10
17〜5×10
18cm
−3含んでいる。第4化合物半導体層16に含まれるp型不純物(Mg)の濃度は、第3化合物半導体層14に含まれるp型不純物の濃度よりも薄い。そのため、第4化合物半導体層16は、第3化合物半導体層14よりも高抵抗である。なお、第3化合物半導体層14の厚みはおよそ70nm〜100nmであり、第4化合物半導体層16の厚みはおよそ10nm〜20nmである。
【0017】
ゲート電極18は、第4化合物半導体層16の表面に設けられており、ソース電極20とドレイン電極10の間に配置されている。ゲート電極18の材料は、ニッケル(Ni)である。ゲート電極18は、第4化合物半導体層16にオーミック接続されている。ソース電極20とドレイン電極10は、第2化合物半導体層8の表面の一部に離反して設けられている。ソース電極20とドレイン電極10は、チタン(Ti)とアルミニウムの積層電極であり、第2化合物半導体層8にオーミック接続されている。ソース電極20とドレイン電極10は、パッシベーション膜12によって、ゲート電極18から絶縁されている。
【0018】
半導体装置100は、ノーマリーオフタイプのHEMT(High Electron Mobility Transistor)である。ドレイン電極10に正電圧が印加され、ソース電極20に接地電圧が印加され、ゲート電極18に正電圧が印加されると、第1化合物半導体層6と第2化合物半導体層8の接合面22の近傍に形成される2次元電子ガス層を介して、ソース電極20からドレイン電極10に向けて電子が走行する。これにより、半導体装置100はオン状態となる。
【0019】
ゲート電極18への正電圧の印加を停止すると、第3化合物半導体層14から接合面22に向けて空乏層が伸び、2次元電子ガス層の電子が枯渇し、2次元電子ガス層を介した電子の走行が停止する。これにより、半導体装置100はオフ状態となる。再度ゲート電極18に正電圧が印加されると、接合面22に伸びていた空乏層が消失し、半導体装置100がオフ状態からオン状態に切り替わる。
【0020】
上記したように、第4化合物半導体層16に含まれるp型不純物の濃度は、第3化合物半導体層14に含まれるp型不純物の濃度よりも薄い。すなわち、第4化合物半導体層16は、第3化合物半導体層14と比較して高抵抗である。そのため、第3化合物半導体層14の表面に直接ゲート電極18を設ける形態と比較して、オン状態のときにゲート電流が流れることを抑制することができる。また、第4化合物半導体層16は、第3化合物半導体層14と同様にp型不純物を含んでいる。そのため、ゲート電極18に正電圧を印加しても、第3化合物半導体層14と第4化合物半導体層16の界面から空乏層が伸びることはない。
【0021】
上記したように、従来の半導体装置は、第3化合物半導体層14に相当するp型化合物半導体層の表面にn型化合物半導体層を設け、そのn型化合物半導体層の表面にゲート電極を設ける。そのため、ゲート電極に正電圧を印加すると、p型化合物半導体層とn型化合物半導体層の界面から空乏層が伸びる。従来の半導体装置は、ゲート電極に印加した正電圧の一部がp型化合物半導体層とn型化合物半導体層のpn接合に加わるので、p型化合物半導体層からヘテロ接合面に伸びていた空乏層が縮小して2次元電子ガス層が形成されるまでの時間が長くなる。
【0022】
半導体装置100では、オフ状態からオン状態に切り替わるときに、第3化合物半導体層14と第4化合物半導体層16の界面から空乏層が伸びない。そのため、半導体装置100は、ゲート電極18に正電圧を印加したときに、速やかにヘテロ接合面に伸びていた空乏層が消失する。すなわち、半導体装置100は、従来の半導体装置よりもスイッチング速度が速い。
【0023】
なお、ゲート電流が流れることを抑制するという観点から、第4化合物半導体層16に代えて絶縁膜(ゲート絶縁膜)を設け、その絶縁膜の表面にゲート電極を設けることも考え得る。このような形態であれば、ゲート電極とp型化合物半導体層の間にn型化合物半導体層を介在させる必要がない。しかしながら、この半導体装置の場合、ゲート電極に正電圧を印加したときにゲート絶縁膜とp型化合物半導体層との界面に電子が蓄積し、閾値電圧が変動することがある。半導体装置100は、第3化合物半導体層14と第4化合物半導体層16の界面に電子が蓄積することがないので、閾値電圧が安定している。
【0024】
(第1製造方法)
半導体装置100の第1製造方法について説明する。
図2に示すように、サファイア基板2の表面にAlNを材料とするバッファ層4を成長させる。その後、GaNを材料とする第1化合物半導体層6を結晶成長させ(第1工程)、AlGaNを材料とする第2化合物半導体層8を結晶成長させる(第2工程)。第2化合物半導体層8は、第1化合物半導体層6が所定の厚みに達した後に原料ガスを切り替える(Al含有ガスの供給を開始する)ことにより、第1化合物半導体層6の結晶成長に続いて連続的に結晶成長させることができる。なお、バッファ層4を設けることにより、第1化合物半導体層6の結晶構造が安定する。
【0025】
次に、
図3に示すように、第2化合物半導体層8の表面に、p型不純物を高濃度に含む高濃度p型AlGaN層14aを結晶成長させる(第3工程)。その後、高濃度p型AlGaN層14aの表面に、p型不純物の濃度が高濃度p型AlGaN層14aよりも薄い低濃度p型AlGaN層16aを結晶成長させる(第4工程)。高濃度p型AlGaN層14aは、第2化合物半導体層8が所定の厚みに達した後に原料ガスを切り替える(Mg含有ガスの供給を開始する)ことにより、第2化合物半導体層8の結晶成長に続いて連続的に結晶成長させることができる。また、低濃度p型AlGaN層16aは、高濃度p型AlGaN層14aが所定の厚みに達した後に原料ガスを切り替える(原料ガス中のMg濃度を減らす)ことにより、高濃度p型AlGaN層14aの結晶成長に続いて連続的に結晶成長させることができる。
【0026】
次に、
図4に示すように、低濃度p型AlGaN層16aの一部にエッチングマスク(図示省略)を形成し、エッチングマスクが形成されていない部分の低濃度p型AlGaN層16aと高濃度p型AlGaN層14aを、第2化合物半導体層8が露出するまでエッチングする。それにより、第3化合物半導体層14と第4化合物半導体層16が完成する。その後、エッチングマスクを除去し、ソース電極20,ゲート電極18,ドレイン電極10及びパッシベーション膜12を既知の方法で形成することにより、
図1に示す半導体装置100が完成する。
【0027】
なお、第4化合物半導体層16は、第3化合物半導体層14より結晶性が低くてもよい。第4化合物半導体層16の結晶性を第3化合物半導体層14より低くすることにより、第4化合物半導体層16を第3化合物半導体層14よりも高抵抗にすることができる。なお、この場合、第4化合物半導体層16に含まれるp型不純物(Mg)の濃度は、第3化合物半導体層14と同じでもよいし、第3化合物半導体層14より薄くてもよい。すなわち、第4化合物半導体層16は、p型不純物を含み第3化合物半導体層14よりも高抵抗であればよい。以下に、第4化合物半導体層16の結晶性が第3化合物半導体層14よりも低い半導体装置100の製造方法について説明する。
【0028】
(第2製造方法)
図5〜
図7を参照し、半導体装置100の第2製造方法について説明する。まず、第1製造方法と同様に、サファイア基板2上にバッファ層4,第1化合物半導体層6及び第2化合物半導体層8を形成する(
図2を参照)。次に、
図5に示すように、第2化合物半導体層8の表面に、p型不純物を含むp型AlGaN層30を結晶成長させる。p型不純物を含むp型AlGaN層30の厚みは、第3化合物半導体層14と第4化合物半導体層16の合計の厚み(
図1を参照)に相当する。また、p型不純物の濃度は、第3化合物半導体層14の不純物濃度と同様に調整する。p型AlGaN層30は、第2化合物半導体層8の結晶成長に続いて連続的に結晶成長させることができる。
【0029】
次に、
図6に示すように、p型AlGaN層30の表面にプラズマを照射し、p型AlGaN層30の表層の結晶性を低下させる。例えば、塩素(Cl)、フッ素(F)、アルゴン(Ar)のイオンを100V以下の加速エネルギーで照射することにより、p型AlGaN層30の表層から窒素(N)を抜き、表層を高抵抗にすることができる。この条件により、高抵抗層(p型AlGaN層30の表層部30a)の厚みを10nm程度に制御することができる。p型AlGaN層30の表層部30aの結晶性が、深部30bの結晶性よりも低くなる。具体的には、p型AlGaN層30の表層部30aの窒素原子が、深部30bより減少する。その結果、表層部30aが、深部30bよりも高抵抗になる。
【0030】
次に、
図7に示すように、p型AlGaN層39の一部にエッチングマスク(図示省略)を形成し、エッチングマスクが形成されていない部分のp型AlGaN層30を、第2化合物半導体層8が露出するまでエッチングする。それにより、第3化合物半導体層14と第4化合物半導体層16が完成する。その後の工程は第1製造方法と同じなので省略する。
【0031】
(第2実施例)
図8を参照し、半導体装置200について説明する。半導体装置200は縦型であり、ドレイン電極210と、ドレイン電極210上に設けられている半導体層240と、半導体層240の表面に設けられているソース電極220及びゲート電極218を備えている。半導体層240は、n型不純物を高濃度に含む基板234と、基板234よりもn型不純物を低濃度に含むドリフト層232と、p型不純物を高濃度に含む埋込みp型化合物半導体層230と、実質的に不純物が含まれていない第1化合物半導体層206及び第2化合物半導体層208と、p型不純物を高濃度に含む第3化合物半導体層214と、第3化合物半導体層214よりもp型不純物を低濃度に含む第4化合物半導体層216を備えている。
【0032】
ドレイン電極210が、基板234の裏面にオーミック接続されている。ドレイン電極210は、チタンとアルミニウムの積層電極である。基板234材料は、窒化ガリウム(GaN)である。基板234は、n型不純物としてシリコン(Si)をおよそ1×10
18〜3×10
18cm
−3含んでいる。基板234の厚みはおよそ100μm〜350μmである。ドリフト層232は、基板234の表面に設けられている。ドリフト層232材料は、窒化ガリウムである。ドリフト層232は、n型不純物としてシリコン(Si)をおよそ1×10
16〜2×10
16cm
−3含んでいる。ドリフト層232の厚みはおよそ8μm〜12μmである。
【0033】
p型化合物半導体層230は、ドリフト層232の表層に分散して設けられている。p型化合物半導体層230は、p型の不純物としてマグネシウム(Mg)をおよそ1×10
19〜5×10
19cm
−3含んでいる。p型化合物半導体層230の厚み(ソース電極220とドレイン電極210を結ぶ方向の長さ)はおよそ0.5μm〜1.0μmである。隣り合うp型化合物半導体層230の間には、ドリフト層232が介在している。
【0034】
第1化合物半導体層206は、ドリフト層232及びp型化合物半導体層230の表面に設けられている。第1化合物半導体層206材料は、窒化ガリウムである。第1化合物半導体層206の厚みはおよそ0.1μm〜0.2μmである。第2化合物半導体層208は、第1化合物半導体層206の表面に設けられている。第2化合物半導体層208の材料は、窒化アルミニウムガリウムである。第2化合物半導体層208の厚みはおよそ15nm〜25nmである。第1化合物半導体層206と第2化合物半導体層208によってヘテロ接合が形成されている。
【0035】
第3化合物半導体層214は、第2化合物半導体層208の表面の一部に設けられている。平面視すると、第3化合物半導体層214は、p型化合物半導体層230が形成されていない部分のドリフト層232と重複する。第3化合物半導体層214の材料は、窒化アルミニウムガリウムである。第3化合物半導体層214は、p型不純物でとしてマグネシウムをおよそ1×10
19cm
−3含んでいる。第3化合物半導体層214の厚みはおよそ70nm〜100nmである。第4化合物半導体層216は、第3化合物半導体層214の表面に設けられている。第4化合物半導体層216の材料は、窒化アルミニウムガリウムである。第4化合物半導体層16は、マグネシウムをおよそ1×10
17〜5×10
18cm
−3含んでいる。第4化合物半導体層216の厚みはおよそ10nm〜20nmである。
【0036】
ゲート電極218は、第4化合物半導体層216の表面に設けられている。ゲート電極18の材料はニッケルである。ゲート電極218は、第4化合物半導体層216にオーミック接続されている。ソース電極220は、第2化合物半導体層208の表面の一部に設けられている。ソース電極220は、チタンとアルミニウムの積層電極であり、第2化合物半導体層208にオーミック接続されている。ソース電極220は、パッシベーション膜212によって、ゲート電極218から絶縁されている。半導体装置200を平面視すると、ソース電極220とゲート電極218の隙間が、p型化合物半導体層230と重複する。
【0037】
半導体装置200は、ドレイン電極210に正電圧が印加され、ソース電極220に接地電圧が印加され、ゲート電極218に正電圧が印加されると、ソース電極220から供給された電子が、第1化合物半導体層206と第2化合物半導体層208の接合面近傍に2次元電子ガス層を横方向に走行する。電子は、p型化合物半導体層230の間からドリフト層232を走行し、基板234を経てドレイン電極10に到達する。
【0038】
半導体装置200の場合、ゲート電極218への正電圧の印加を停止すると、第3化合物半導体層214からヘテロ界面に向けて空乏層が伸びるとともに、p型化合物半導体層230からもヘテロ界面に向けて空乏層が伸びる。半導体装置200のオフ時に、ソース電極220からドレイン電極210までの導通経路を、より確実に遮断することができる。
【0039】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。