特許第5707463号(P5707463)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5707463
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】半導体装置とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/337 20060101AFI20150409BHJP
   H01L 27/098 20060101ALI20150409BHJP
   H01L 29/808 20060101ALI20150409BHJP
   H01L 21/338 20060101ALI20150409BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20150409BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
   H01L29/80 C
   H01L29/80 H
   H01L29/80 V
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-204162(P2013-204162)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-70151(P2015-70151A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2014年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】兼近 将一
(72)【発明者】
【氏名】桑原 誠
(72)【発明者】
【氏名】上田 博之
(72)【発明者】
【氏名】富田 英幹
【審査官】 須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−523700(JP,A)
【文献】 特開2011−233751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1化合物半導体層と、
前記第1化合物半導体層上に設けられており、前記第1化合物半導体層よりもバンドギャップが大きい第2化合物半導体層と、
前記第2化合物半導体層上の一部に設けられているp型の第3化合物半導体層と、
前記第3化合物半導体層上に設けられており、前記第3化合物半導体層よりも高抵抗であるp型の第4化合物半導体層と、
前記第4化合物半導体層上に設けられているゲート電極と、を備え、
前記第4化合物半導体層が、前記第3化合物半導体層よりも結晶性が低い半導体装置。
【請求項2】
前記第4化合物半導体層に含まれるp型不純物の濃度が、前記第3化合物半導体層に含まれるp型不純物の濃度よりも薄い請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1化合物半導体層、前記第2化合物半導体層、前記第3化合物半導体層及び前記第4化合物半導体層は、窒化物半導体である請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
第1化合物半導体層上に、前記第1化合物半導体層よりもバンドギャップが大きい第2化合物半導体層を形成する第1工程と、
前記第2化合物半導体層上の一部に、p型の第3化合物半導体層を形成する第2工程と、
前記第3化合物半導体層上に、前記第3化合物半導体層よりも高抵抗であるp型の第4化合物半導体層を形成する第3工程と、
前記第4化合物半導体層上に、ゲート電極を形成する第4工程と、を備え、
前記第2工程及び第3工程は、
前記第2化合物半導体層上の一部にp型の化合物半導体層を形成すること、
前記p型の化合物半導体層の表面にプラズマを照射すること、を有しており、
これにより、前記p型の化合物半導体層のうちのプラズマ照射されなかった部分が前記第3化合物半導体層となり、前記p型の化合物半導体層のうちのプラズマ照射された部分が前記第4化合物半導体層となる半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ヘテロ接合を有する半導体装置、及びその製造方法に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
ヘテロ接合に形成される2次元電子ガス層をチャネルとして用いる半導体装置が知られている。このタイプの半導体装置では、ノーマリーオフタイプの開発が進められており、その一例が特許文献1に開示されている。特許文献1の半導体装置では、ヘテロ接合面を有する半導体層の表面の一部に、p型半導体層を設ける。さらに、そのp型半導体層の表面にn型半導体層を設け、n型半導体層の表面にゲート電極を設ける。特許文献1の半導体装置では、ゲート電極にオン電圧が印加されていないときに、p型半導体層から伸びる空乏層が2次元電子ガス層の一部を消失させことにより、ノーマリーオフを実現している。また、特許文献1の半導体装置では、p型半導体層の表面にn型半導体層を設けることにより、ゲート電極にオン電圧が印加されたときに、ゲート電流が流れることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−29507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の半導体装置は、ゲート電極に正電圧が印加されることにより、p型半導体層からヘテロ接合面に伸びていた空乏層が縮小し、ターンオンする。しかしながら、ゲート電極に正電圧が印加されると、n型半導体層とp型半導体層のpn接合には逆バイアスが印加され、そのpn接合の界面に空乏層が形成される。ゲート電圧に印加される正電圧の一部がn型半導体層とp型半導体層のpn接合に加わるので、ゲート電極に正電圧を印加してからヘテロ接合面に伸びていた空乏層が縮小して2次元電子ガス層が形成されるまでの時間が長くなる。換言すると、半導体装置のスイッチング速度が遅くなる。本明細書では、スイッチング速度が改善された半導体装置、及びその半導体装置の製造方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する技術は、p型半導体層とゲート電極の間に高抵抗のp型半導体層を設けることを特徴とする。高抵抗のp型半導体層は、ゲート電極に正電圧が印加されたときに、ゲート電流が流れることを抑制することができる。さらに、本明細で開示する半導体装置では、ゲート電極の下方にpn接合面が存在しないので、ゲート電極に正電圧が印加されたときの応答性が良い。このため、本明細書で開示する半導体装置は、高速なスイッチング動作に適している。
【0006】
本明細書で開示する半導体装置は、第1化合物半導体層と、第1化合物半導体層上に設けられており、第1化合物半導体層よりもバンドギャップが大きい第2化合物半導体層と、第2化合物半導体層上の一部に設けられているp型の第3化合物半導体層と、第3化合物半導体層上に設けられており、第3化合物半導体層よりも高抵抗であるp型の第4化合物半導体層と、第4化合物半導体層上に設けられているゲート電極とを備えている。第4化合物半導体層は、第3化合物半導体層よりも結晶性が低い。
【0007】
本明細書では、上記半導体装置の製造方法をも提供する。その製造方法は、第1化合物半導体層上に、第1化合物半導体層よりもバンドギャップが大きい第2化合物半導体層を形成する第1工程と、第2化合物半導体層上の一部に、p型の第3化合物半導体層を形成する第2工程と、第3化合物半導体層上に、第3化合物半導体層よりも高抵抗であるp型の第4化合物半導体層を形成する第3工程と、第4化合物半導体層上に、ゲート電極を形成する第4工程と、を備える。第2工程及び第3工程は、第2化合物半導体層上の一部にp型の化合物半導体層を形成すること、p型の化合物半導体層の表面にプラズマを照射することを有している。これにより、p型の化合物半導体層のうちのプラズマ照射されなかった部分が第3化合物半導体層となり、p型の化合物半導体層のうちのプラズマ照射された部分が第4化合物半導体層となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施例の半導体装置の断面図を示す。
図2】半導体装置の第1製造方法の製造工程を示す。
図3】半導体装置の第1製造方法の製造工程を示す。
図4】半導体装置の第1製造方法の製造工程を示す。
図5】半導体装置の第2製造方法の製造工程を示す。
図6】半導体装置の第2製造方法の製造工程を示す。
図7】半導体装置の第2製造方法の製造工程を示す。
図8】第2実施例の半導体装置の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本明細書で開示する実施例の技術的特徴の幾つかを記す。なお、以下に記す事項は、各々単独で技術的な有用性を有している。
【0010】
本明細書で開示する半導体装置は、第1化合物半導体層、第2化合物半導体層、p型の第3化合物半導体層、p型の第4化合物半導体層及びゲート電極を備えていてもよい。第2化合物半導体層は、第1化合物半導体層上に設けられており、第1化合物半導体層よりもバンドギャップが大きくてもよい。第3化合物半導体層は、第2化合物半導体層上の一部に設けられていてもよい。第4化合物半導体層は、第3化合物半導体層上に設けられており、第3化合物半導体層よりも高抵抗であってもよい。ゲート電極は、第4化合物半導体層上に設けられていてもよい。本明細書で開示する半導体装置は、横型であってもよく、縦型であってもよい。化合物半導体層の各々の間には、必要に応じて、他の化合物半導体層が設けられていてもよい。ここで、化合物半導体は、ワイドバンドギャップ半導体が好ましい。具体的には、化合物半導体には、窒化物半導体、炭化珪素が含まれる。
【0011】
第4化合物半導体層に含まれるp型不純物の濃度が、第3化合物半導体層に含まれるp型不純物の濃度よりも薄くてよい。第4化合物半導体層を、第3化合物半導体層より確実に高抵抗にすることができる。
【0012】
第4化合物半導体層が、第3化合物半導体層よりも結晶性が低くてよい。この場合でも、第4化合物半導体層を、第3化合物半導体層より確実に高抵抗にすることができる。なお、第4化合物半導体層は、p型不純物の濃度が第3化合物半導体層よりも薄く、さらに結晶性が第3化合物半導体層よりも低くてもよい。
【0013】
第1化合物半導体層、第2化合物半導体層、第3化合物半導体層及び第4化合物半導体層は、窒化物半導体であってもよい。窒化物半導体は、一般式がAlXGaYIn1-X-YN(0≦X≦1、0≦Y≦1、0≦1−X−Y≦1)で示されるものであってよい。第1化合物半導体層の一例として、窒化ガリウム(GaN)が挙げられる。第2化合物半導体層、第3化合物半導体層及び第4化合物半導体層の一例として、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)が挙げられる。
【実施例】
【0014】
(第1実施例)
図1に示すように、半導体装置100は横型であり、サファイア基板2、バッファ層4、第1化合物半導体層6、第2化合物半導体層8、第3化合物半導体層14、第4化合物半導体層16、ゲート電極18、ソース電極20及びドレイン電極10を備えている。
【0015】
サファイア基板2の表面に、窒化アルミニウム(AlN)を材料とするバッファ層4が設けられている。第1化合物半導体層6は、バッファ層4の表面に設けられている。第1化合物半導体層6の材料は、窒化ガリウムである。第1化合物半導体層6は、ノンドープである。第2化合物半導体層8は、第1化合物半導体層6の表面に設けられており、その材料は、窒化アルミニウムガリウムである。第2化合物半導体層8は、ノンドープである。すなわち、第1化合物半導体層6及び第2化合物半導体層8は、i型の窒化物半導体である。第2化合物半導体層8のバンドギャップは、第1化合物半導体層6のギャップより大きい。第1化合物半導体層6と第2化合物半導体層8はヘテロ接合しており、第1化合物半導体層6と第2化合物半導体層8の接合面22の近傍に、2次元電子ガス層が形成される。なお、第1化合物半導体層6の厚みはおよそ2μm〜3μmであり、第2化合物半導体層8の厚みはおよそ15nm〜25nmである。
【0016】
第3化合物半導体層14は、第2化合物半導体層8の表面の一部に設けられている。第3化合物半導体層14の材料は、窒化アルミニウムガリウムである。第3化合物半導体層14は、p型不純物であるマグネシウム(Mg)をおよそ1×1019cm−3含んでいる。第4化合物半導体層16は、第3化合物半導体層14の表面に設けられている。第4化合物半導体層16の材料は、窒化アルミニウムガリウムである。第3化合物半導体層14に含まれるアルミニウム(Al)の含有割合は、第2化合物半導体層8と同一である。第4化合物半導体層16は、マグネシウムをおよそ1×1017〜5×1018cm−3含んでいる。第4化合物半導体層16に含まれるp型不純物(Mg)の濃度は、第3化合物半導体層14に含まれるp型不純物の濃度よりも薄い。そのため、第4化合物半導体層16は、第3化合物半導体層14よりも高抵抗である。なお、第3化合物半導体層14の厚みはおよそ70nm〜100nmであり、第4化合物半導体層16の厚みはおよそ10nm〜20nmである。
【0017】
ゲート電極18は、第4化合物半導体層16の表面に設けられており、ソース電極20とドレイン電極10の間に配置されている。ゲート電極18の材料は、ニッケル(Ni)である。ゲート電極18は、第4化合物半導体層16にオーミック接続されている。ソース電極20とドレイン電極10は、第2化合物半導体層8の表面の一部に離反して設けられている。ソース電極20とドレイン電極10は、チタン(Ti)とアルミニウムの積層電極であり、第2化合物半導体層8にオーミック接続されている。ソース電極20とドレイン電極10は、パッシベーション膜12によって、ゲート電極18から絶縁されている。
【0018】
半導体装置100は、ノーマリーオフタイプのHEMT(High Electron Mobility Transistor)である。ドレイン電極10に正電圧が印加され、ソース電極20に接地電圧が印加され、ゲート電極18に正電圧が印加されると、第1化合物半導体層6と第2化合物半導体層8の接合面22の近傍に形成される2次元電子ガス層を介して、ソース電極20からドレイン電極10に向けて電子が走行する。これにより、半導体装置100はオン状態となる。
【0019】
ゲート電極18への正電圧の印加を停止すると、第3化合物半導体層14から接合面22に向けて空乏層が伸び、2次元電子ガス層の電子が枯渇し、2次元電子ガス層を介した電子の走行が停止する。これにより、半導体装置100はオフ状態となる。再度ゲート電極18に正電圧が印加されると、接合面22に伸びていた空乏層が消失し、半導体装置100がオフ状態からオン状態に切り替わる。
【0020】
上記したように、第4化合物半導体層16に含まれるp型不純物の濃度は、第3化合物半導体層14に含まれるp型不純物の濃度よりも薄い。すなわち、第4化合物半導体層16は、第3化合物半導体層14と比較して高抵抗である。そのため、第3化合物半導体層14の表面に直接ゲート電極18を設ける形態と比較して、オン状態のときにゲート電流が流れることを抑制することができる。また、第4化合物半導体層16は、第3化合物半導体層14と同様にp型不純物を含んでいる。そのため、ゲート電極18に正電圧を印加しても、第3化合物半導体層14と第4化合物半導体層16の界面から空乏層が伸びることはない。
【0021】
上記したように、従来の半導体装置は、第3化合物半導体層14に相当するp型化合物半導体層の表面にn型化合物半導体層を設け、そのn型化合物半導体層の表面にゲート電極を設ける。そのため、ゲート電極に正電圧を印加すると、p型化合物半導体層とn型化合物半導体層の界面から空乏層が伸びる。従来の半導体装置は、ゲート電極に印加した正電圧の一部がp型化合物半導体層とn型化合物半導体層のpn接合に加わるので、p型化合物半導体層からヘテロ接合面に伸びていた空乏層が縮小して2次元電子ガス層が形成されるまでの時間が長くなる。
【0022】
半導体装置100では、オフ状態からオン状態に切り替わるときに、第3化合物半導体層14と第4化合物半導体層16の界面から空乏層が伸びない。そのため、半導体装置100は、ゲート電極18に正電圧を印加したときに、速やかにヘテロ接合面に伸びていた空乏層が消失する。すなわち、半導体装置100は、従来の半導体装置よりもスイッチング速度が速い。
【0023】
なお、ゲート電流が流れることを抑制するという観点から、第4化合物半導体層16に代えて絶縁膜(ゲート絶縁膜)を設け、その絶縁膜の表面にゲート電極を設けることも考え得る。このような形態であれば、ゲート電極とp型化合物半導体層の間にn型化合物半導体層を介在させる必要がない。しかしながら、この半導体装置の場合、ゲート電極に正電圧を印加したときにゲート絶縁膜とp型化合物半導体層との界面に電子が蓄積し、閾値電圧が変動することがある。半導体装置100は、第3化合物半導体層14と第4化合物半導体層16の界面に電子が蓄積することがないので、閾値電圧が安定している。
【0024】
(第1製造方法)
半導体装置100の第1製造方法について説明する。図2に示すように、サファイア基板2の表面にAlNを材料とするバッファ層4を成長させる。その後、GaNを材料とする第1化合物半導体層6を結晶成長させ(第1工程)、AlGaNを材料とする第2化合物半導体層8を結晶成長させる(第2工程)。第2化合物半導体層8は、第1化合物半導体層6が所定の厚みに達した後に原料ガスを切り替える(Al含有ガスの供給を開始する)ことにより、第1化合物半導体層6の結晶成長に続いて連続的に結晶成長させることができる。なお、バッファ層4を設けることにより、第1化合物半導体層6の結晶構造が安定する。
【0025】
次に、図3に示すように、第2化合物半導体層8の表面に、p型不純物を高濃度に含む高濃度p型AlGaN層14aを結晶成長させる(第3工程)。その後、高濃度p型AlGaN層14aの表面に、p型不純物の濃度が高濃度p型AlGaN層14aよりも薄い低濃度p型AlGaN層16aを結晶成長させる(第4工程)。高濃度p型AlGaN層14aは、第2化合物半導体層8が所定の厚みに達した後に原料ガスを切り替える(Mg含有ガスの供給を開始する)ことにより、第2化合物半導体層8の結晶成長に続いて連続的に結晶成長させることができる。また、低濃度p型AlGaN層16aは、高濃度p型AlGaN層14aが所定の厚みに達した後に原料ガスを切り替える(原料ガス中のMg濃度を減らす)ことにより、高濃度p型AlGaN層14aの結晶成長に続いて連続的に結晶成長させることができる。
【0026】
次に、図4に示すように、低濃度p型AlGaN層16aの一部にエッチングマスク(図示省略)を形成し、エッチングマスクが形成されていない部分の低濃度p型AlGaN層16aと高濃度p型AlGaN層14aを、第2化合物半導体層8が露出するまでエッチングする。それにより、第3化合物半導体層14と第4化合物半導体層16が完成する。その後、エッチングマスクを除去し、ソース電極20,ゲート電極18,ドレイン電極10及びパッシベーション膜12を既知の方法で形成することにより、図1に示す半導体装置100が完成する。
【0027】
なお、第4化合物半導体層16は、第3化合物半導体層14より結晶性が低くてもよい。第4化合物半導体層16の結晶性を第3化合物半導体層14より低くすることにより、第4化合物半導体層16を第3化合物半導体層14よりも高抵抗にすることができる。なお、この場合、第4化合物半導体層16に含まれるp型不純物(Mg)の濃度は、第3化合物半導体層14と同じでもよいし、第3化合物半導体層14より薄くてもよい。すなわち、第4化合物半導体層16は、p型不純物を含み第3化合物半導体層14よりも高抵抗であればよい。以下に、第4化合物半導体層16の結晶性が第3化合物半導体層14よりも低い半導体装置100の製造方法について説明する。
【0028】
(第2製造方法)
図5図7を参照し、半導体装置100の第2製造方法について説明する。まず、第1製造方法と同様に、サファイア基板2上にバッファ層4,第1化合物半導体層6及び第2化合物半導体層8を形成する(図2を参照)。次に、図5に示すように、第2化合物半導体層8の表面に、p型不純物を含むp型AlGaN層30を結晶成長させる。p型不純物を含むp型AlGaN層30の厚みは、第3化合物半導体層14と第4化合物半導体層16の合計の厚み(図1を参照)に相当する。また、p型不純物の濃度は、第3化合物半導体層14の不純物濃度と同様に調整する。p型AlGaN層30は、第2化合物半導体層8の結晶成長に続いて連続的に結晶成長させることができる。
【0029】
次に、図6に示すように、p型AlGaN層30の表面にプラズマを照射し、p型AlGaN層30の表層の結晶性を低下させる。例えば、塩素(Cl)、フッ素(F)、アルゴン(Ar)のイオンを100V以下の加速エネルギーで照射することにより、p型AlGaN層30の表層から窒素(N)を抜き、表層を高抵抗にすることができる。この条件により、高抵抗層(p型AlGaN層30の表層部30a)の厚みを10nm程度に制御することができる。p型AlGaN層30の表層部30aの結晶性が、深部30bの結晶性よりも低くなる。具体的には、p型AlGaN層30の表層部30aの窒素原子が、深部30bより減少する。その結果、表層部30aが、深部30bよりも高抵抗になる。
【0030】
次に、図7に示すように、p型AlGaN層39の一部にエッチングマスク(図示省略)を形成し、エッチングマスクが形成されていない部分のp型AlGaN層30を、第2化合物半導体層8が露出するまでエッチングする。それにより、第3化合物半導体層14と第4化合物半導体層16が完成する。その後の工程は第1製造方法と同じなので省略する。
【0031】
(第2実施例)
図8を参照し、半導体装置200について説明する。半導体装置200は縦型であり、ドレイン電極210と、ドレイン電極210上に設けられている半導体層240と、半導体層240の表面に設けられているソース電極220及びゲート電極218を備えている。半導体層240は、n型不純物を高濃度に含む基板234と、基板234よりもn型不純物を低濃度に含むドリフト層232と、p型不純物を高濃度に含む埋込みp型化合物半導体層230と、実質的に不純物が含まれていない第1化合物半導体層206及び第2化合物半導体層208と、p型不純物を高濃度に含む第3化合物半導体層214と、第3化合物半導体層214よりもp型不純物を低濃度に含む第4化合物半導体層216を備えている。
【0032】
ドレイン電極210が、基板234の裏面にオーミック接続されている。ドレイン電極210は、チタンとアルミニウムの積層電極である。基板234材料は、窒化ガリウム(GaN)である。基板234は、n型不純物としてシリコン(Si)をおよそ1×1018〜3×1018cm−3含んでいる。基板234の厚みはおよそ100μm〜350μmである。ドリフト層232は、基板234の表面に設けられている。ドリフト層232材料は、窒化ガリウムである。ドリフト層232は、n型不純物としてシリコン(Si)をおよそ1×1016〜2×1016cm−3含んでいる。ドリフト層232の厚みはおよそ8μm〜12μmである。
【0033】
p型化合物半導体層230は、ドリフト層232の表層に分散して設けられている。p型化合物半導体層230は、p型の不純物としてマグネシウム(Mg)をおよそ1×1019〜5×1019cm−3含んでいる。p型化合物半導体層230の厚み(ソース電極220とドレイン電極210を結ぶ方向の長さ)はおよそ0.5μm〜1.0μmである。隣り合うp型化合物半導体層230の間には、ドリフト層232が介在している。
【0034】
第1化合物半導体層206は、ドリフト層232及びp型化合物半導体層230の表面に設けられている。第1化合物半導体層206材料は、窒化ガリウムである。第1化合物半導体層206の厚みはおよそ0.1μm〜0.2μmである。第2化合物半導体層208は、第1化合物半導体層206の表面に設けられている。第2化合物半導体層208の材料は、窒化アルミニウムガリウムである。第2化合物半導体層208の厚みはおよそ15nm〜25nmである。第1化合物半導体層206と第2化合物半導体層208によってヘテロ接合が形成されている。
【0035】
第3化合物半導体層214は、第2化合物半導体層208の表面の一部に設けられている。平面視すると、第3化合物半導体層214は、p型化合物半導体層230が形成されていない部分のドリフト層232と重複する。第3化合物半導体層214の材料は、窒化アルミニウムガリウムである。第3化合物半導体層214は、p型不純物でとしてマグネシウムをおよそ1×1019cm−3含んでいる。第3化合物半導体層214の厚みはおよそ70nm〜100nmである。第4化合物半導体層216は、第3化合物半導体層214の表面に設けられている。第4化合物半導体層216の材料は、窒化アルミニウムガリウムである。第4化合物半導体層16は、マグネシウムをおよそ1×1017〜5×1018cm−3含んでいる。第4化合物半導体層216の厚みはおよそ10nm〜20nmである。
【0036】
ゲート電極218は、第4化合物半導体層216の表面に設けられている。ゲート電極18の材料はニッケルである。ゲート電極218は、第4化合物半導体層216にオーミック接続されている。ソース電極220は、第2化合物半導体層208の表面の一部に設けられている。ソース電極220は、チタンとアルミニウムの積層電極であり、第2化合物半導体層208にオーミック接続されている。ソース電極220は、パッシベーション膜212によって、ゲート電極218から絶縁されている。半導体装置200を平面視すると、ソース電極220とゲート電極218の隙間が、p型化合物半導体層230と重複する。
【0037】
半導体装置200は、ドレイン電極210に正電圧が印加され、ソース電極220に接地電圧が印加され、ゲート電極218に正電圧が印加されると、ソース電極220から供給された電子が、第1化合物半導体層206と第2化合物半導体層208の接合面近傍に2次元電子ガス層を横方向に走行する。電子は、p型化合物半導体層230の間からドリフト層232を走行し、基板234を経てドレイン電極10に到達する。
【0038】
半導体装置200の場合、ゲート電極218への正電圧の印加を停止すると、第3化合物半導体層214からヘテロ界面に向けて空乏層が伸びるとともに、p型化合物半導体層230からもヘテロ界面に向けて空乏層が伸びる。半導体装置200のオフ時に、ソース電極220からドレイン電極210までの導通経路を、より確実に遮断することができる。
【0039】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0040】
6:第1化合物半導体層
8:第2化合物半導体層
14:第3化合物半導体層
16:第4化合物半導体層
18:ゲート電極
100:半導体装置
図1
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図8