【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 掲載年月日 平成25年 5月21日 掲載アドレス http://link.springer.com/article/10.1007/s10967−013−2546−3 掲載アドレスの管理者 Springer 掲載アドレスの刊行物名 Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry,2013,298,1359−1365
【文献】
MiroslavHavelka,Radon-in-waterstandard,Applied Radiation and Isotopes,2009年,Vol. 67,pp. 860-862
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2のループを構成するステップ前に、前記第1のループをさらに構成し、前記気体成分検出器で前記第1のループ内の気相物質のバックグラウンド濃度を測定するステップをさらに含み、前記第2のループを構成するステップ後の第1及び第3のループにおいて、前記気体成分検出器で検出した気相物質濃度は前記バックグラウンド濃度を差し引くことにより補正することを特徴とする請求項7に記載の基準溶液製造方法。
【背景技術】
【0002】
ラドンは、自然放射性系列のウラン系列(U−238)、アクチニウム系列(U−235)、そして、トリウム系列(Th−232)の3種類の自然放射性崩壊系列から生成され、ラドンは、Rn−222(半減期3.82日)、Rn−219(半減期3.96秒)、及びRn−220(半減期55.6秒)の3つの同位元素として存在する。これら3つのラドン同位元素のうち、半減期が3.82日として最も長いRn−222を通常ラドンという。
【0003】
ラドンは、ヘリウム(He)またはネオン(Ne)のような無色、無臭の不活性気体であって、吸入時、人体に非常に有害な物質として知られている。米国の国立癌センタ(International Agency for Research on Cancer、IARC)は、ラドンを石綿とともに、1級発癌物質と規定しており、米国の環境庁(Environment Protection Agency、EPA)は、喫煙の次の肺がん物質と規定している。
【0004】
実際、ラドンの危害性は、ラドン自体よりは、ラドン娘核種等によるものがほとんどである。ラドンの娘核種は8種があるが、生成率と半減期を考慮するとき、人体に有害な代表的な核種は、Po−218、Po−214、Bi−214、Pb−214などである(National Council on Radiation Protection and Measurements,NCRP,1988)。これらのラドン娘核種は全て重金属等であって、ラドンとは全く異なる物理化学的性質を有し、エアゾールとか埃のような空気浮遊物質に容易に吸着される。
【0005】
空気中に存在するラドンと浮遊物質に吸着されたラドンとの娘核種は、呼吸時、他の気相物質とともに人体に流入し、肺壁に蓄積された後、これらの崩壊過程で生成されるアルファ粒子に露出した肺組織細胞の変形により肺がんが誘発されることと知られている。
【0006】
ラドンによる一般人の平均有効放射線被ばくは、ラドンを除いた全体自然放射能やX線撮影のような医療活動よりも高いことはもちろん、原子力発電所のような産業活動による影響より一層高いと知られている。EPAは、科学者達の計算値を基に、毎年5,000〜20,000名の米国人がラドンによる肺がんで死亡すると報告している。
【0007】
大気中のラドンとラドン娘核種の濃度は、周辺に分布する土壌の中のウラニウム含量に大きく左右され、大気中のラドンの約80%が土壌表層から由来することと知られている。また、ラドンは、他の不活性気体より水に対する溶解度が高い。したがって、地下流動経路で接触する岩石や亀裂で放出されたラドンの運搬体役割をする地下水は、海水や河川水のような地表水に比べて1,000〜10,000倍高いラドンを含有している。
【0008】
ラドンは、人体有害物質だけでなく、物理化学的に極めて安定した不活性特性、地下水高含有特性などにより、保健学、環境学、海洋学、気候学など種々の分野で関心を受けている。近年、地下水の保存と確保、開発に対する関心が増加するにつれて、地下水と地表水の連携研究でラドンは非常に適した追跡子として利用されている。また、地下水の海洋または湖への流出による緑潮、赤潮などの発生要因の分析及び対策研究などに活発に利用されている傾向である。
【0009】
このように、ラドンが種々の分野で関心を受けるようになるにつれて、これの測定装置と測定方法が持続的に開発されてきたのであり、現在まで開発された代表的なラドンの測定方法としては、ラドンの娘核種であるPb−214とBi−214を測定するガンマ線分光法、閃光セルを利用するルーカスセル(Lucas cells)方法、液体閃光溶液を利用する液体シンチレーションカウンタ(Liquid Scintillation Counting、LSC)方法等がある。放射性核種や化学成分の正確な測定のためには、測定に使用される装置の校正が先行されなければならない。このような装置の校正は、それに必要な基準物質、または標準物を用いて行うことが一般的である。
【0010】
このような校正標準物は、均質性と長期間の安全性確保、そして、主成分一致(matrix matching)がカギとなるが、不幸にもラドンの場合、前述したように、半減期が3.82日で、標準物として使用するには長期的な安全性及び主成分一致の側面で適合でないため、現在まで商用化されたラドン基準溶液は開発されたことがない実情である。
【0011】
このような問題のため、ラドン基準溶液の代りに、ラドンの直系母核種であるラジウム(Ra−226、半減期1,600年)が代替物質として商用化されている。しかし、このようなラジウム標準物は、複雑な過程を経てラジウム化合物を合成し、これを強酸に溶解させることにより製造される。したがって、ラジウム標準物を希釈させて使用する場合、地下水、海水、河川水、浸出水などのように、測定を望む実際測定対象物とは溶解されている物質が異なり、このため、測定不確実性が高まり、結果的に正確な装備の校正が困難である。ラドンの室内空気汚染度評価、ラドン追跡子を利用した地下水−地表水影響評価を正確にするためには、測定対象物と主成分とが一致するラドン基準溶液の開発が急な実情である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0026】
次に紹介される実施形態等は、当業者に本発明の思想が十分に伝達され得るようにするために例として提供されるものである。したがって、本発明は、以下に説明された実施形態等に限定されず、他の形態で具体化されることもできる。図面において、構成要素の幅、長さ、厚さなどは、便宜のために誇張されて表現されることもできる。明細書の全体にわたって同じ参照符号は同じ構成要素を表す。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る基準溶液製造装置の概略図であり、
図2は、
図1に示された製造装置を利用して基準溶液を製造する方法を説明するためのフローチャートであり、
図3A〜
図3Dは、
図1に示された製造装置を利用して基準溶液を製造するための各々のステップで構成されるループを示す図である。
【0028】
本実施形態では、ラドンを所望の測定対象の気相物質の例としてラドン基準溶液を製造する装置及び方法について説明する。本発明は、気相物質が測定対象の液相物質に対して溶解される特性を利用したものであって、ラドンだけでなく、他の揮発性気体の基準溶液の製造にも適用され得る。すなわち、測定対象の気相物質として揮発性気体を用い、用いられた揮発性気体の濃度が測定可能であれば、当該揮発性気体の基準溶液の製造にも本発明が適用され得ることはもちろんである。
【0029】
まず、
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るラドン基準溶液製造装置100は、ラドンガスの濃度を検出するための気体成分検出器110と、ラドン濃縮ガスが収容される気体容器130と、所望の測定対象の液相物質が収容される基準溶液製造容器150と、前記気体成分検出器110、気体容器130、及び基準溶液製造容器150を互いに連結するパイプラインPLと、パイプラインPLの所定位置に設置されて、前記気体成分検出器110、気体容器130、基準溶液製造容器150、及びパイプラインPLで構成される複数の所定ループを切り換える複数のバルブ172、174とを備える。
【0030】
前記気体成分検出器110は、内部にポンプが装着された形態であって、ラドンガスの濃度を検出するための成分検出部と、前記パイプラインPLに各々連結された入力ポート112及び出力ポート114とを備える。本実施形態において使用された気体成分検出器110は、内部にポンプが装着されているため、前記ポンプの作動により入力ポート112に連結されたパイプラインPLを介してラドンガスが流入し、成分検出部によりその濃度が測定された後、出力ポート114を介して流出する。
【0031】
前記気体容器130及び基準溶液製造容器150は、基準溶液を製造するためのラドンガス及び液相物質を各々収容する密閉容器である。すなわち、蒸溜水、エタノールなどのような純粋な物質だけでなく、地下水、海水、河川水、浸出水などのような混合物の液相物質を溶媒とするラドン基準溶液を製造しようとする場合、前記基準溶液製造容器150には、蒸溜水、エタノール、地下水、海水、河川水、浸出水などの所望の測定対象の液相物質が収容され、前記気体容器130には、ラドン濃縮ガスが収容される。ここで、前記気体容器130には、ラドン濃縮ガスの代わりに、ラドンガスが発生する固相物質が収容されることが好ましい。このとき、基準溶液製造容器150には液相物質が部分的に満たされなければならない。前記気体容器130及び基準溶液製造容器150の各々には2個のポート(132、134)、(152、154)が備えられ、前記パイプラインPLに各々連結される。気体容器130の2個のポート132、134には、開閉バルブが各々設置されていることが好ましい。
【0032】
特に、基準溶液製造容器150は、所望の測定対象の液相物質を収容した後、以下で説明されるステップを経て製造されるラドン基準溶液を収容するようになる。製造されたラドン基準溶液を使用するために、基準溶液製造容器150は開封されるようにキャップを備えることができ、本発明の基準溶液製造装置100から除去可能でありうる。
【0033】
ラドン基準溶液の製造後、基準溶液製造容器150内の液相物質に溶解されているラドンは、温度と圧力とによって空気中に揮発するようになり、容器のキャップなどの隙間に洩れる恐れがある。したがって、製造されたラドン基準溶液の使用時、キャップを開ける瞬間、ラドンガスが外部に放出されて基準溶液内のラドンガス濃度が変わるようになる。これを防止するために、基準溶液製造容器150には、内部の隔膜キャップ(septum cap)と外部の密封キャップとからなる二重キャップ構造でなされることが好ましい。
【0034】
また、ラドン基準溶液の製造後、基準溶液製造容器150を本発明の基準溶液製造装置100から除去するためには、基準溶液製造容器150の2個のポート152、154に開閉バルブが各々設置されていることが好ましい。
【0035】
前記気体成分検出器110の入力ポート112及び出力ポート114は、2個のパイプラインPLにより気体容器130の2個のポート132、134と各々連結される。このとき、前記2個のパイプラインPLの中間にバルブ172、174が各々設置され、これらのバルブ172、174は、パイプラインPLにより互いに連結される。また、前記バルブ172、174の各々は、パイプラインPLにより基準溶液製造容器150の2個のポート152、154に各々連結される。このとき、パイプラインPLに設置されたバルブ172、174は各々4方向バルブである。
【0036】
このように、パイプラインPL及びバルブ172、174が連結及び設置された状態でバルブ172、174を制御することにより、製造されたラドン基準溶液内のラドンガス濃度の測定のための所定のループ(Loop−0、Loop−1、Loop−2、及びLoop−3)を構成するようになる。
【0037】
すなわち、バルブ172、174を制御することにより、
図3A及び
図3Cに太線で表示されたように、気体成分検出器110が気体容器130及び基準溶液製造容器150と連結されないようにするループ(Loop−0またはLoop−1、すなわち、本実施形態の場合、図面符号110、172、174、110へと連結される閉ループ)を構成し、
図3Bに太線で表示されたように、気体成分検出器110が気体容器130とは連結され、基準溶液製造容器150とは連結されないようにするループ(Loop−2、すなわち、本実施形態の場合、図面符号110、172、130、174、110へと連結される閉ループ)を構成し、また、
図3Dに太線で表示されたように、気体成分検出器110が気体容器130とは連結されず、基準溶液製造容器150とは連結されるようにするループ(Loop−3、すなわち、本実施形態の場合、図面符号110、172、150、174、110へと連結される閉ループ)を構成するようになる。
【0038】
このとき、前記ループのうち、ループ(Loop−1)及びループ(Loop−3)の内部体積は、製造されたラドン基準溶液内のラドンガス濃度の測定に利用される。これらループ(Loop−1、Loop−3)の内部体積には、当該パイプラインPLの内部体積はもちろん、気体成分検出器110の入力ポート112から出力ポート114までの内部経路の体積、基準溶液製造容器150の内部空間の体積及び/又はバルブ172、174の内部空間の体積を含むということに留意すべきである。これらループの内部体積は、基本的に各ループ内に存在する巨視的空間の体積のみを考慮する。したがって、基準溶液製造容器150の場合には、基準溶液製造容器150の全体内部体積から溶媒が占める体積を除いた空間の体積が当該ループの内部体積に含まれる。
【0039】
次に、このように構成された製造装置100を利用してラドンの基準溶液を製造する方法について
図2及び
図3A〜
図3Dを参照して説明する。
【0040】
まず、気体容器130及び基準溶液製造容器150に基準溶液を製造するためのラドンガス及び液相物質を各々収容する(S110)。このとき、製造装置100は、気体成分検出器110が気体容器130及び基準溶液製造容器150と連結されないようにバルブ172、174を作動させて、すなわち、
図3Aに示されたように、気体成分検出器110の入力ポート112と出力ポート114とがパイプラインPLを介して連結されて構成されたループ(Loop−0)状態になければならない。このとき、気体容器130のポート132、134に開閉バルブが各々設置されており、これらのバルブが閉鎖された状態であれば、製造装置100は、いかなるループ状態にあっても関係ない。
【0041】
次いで、
図3Aに示されたループ(Loop−0)状態で気体成分検出器110を作動させる。このとき、構成されるループ(Loop−0)内には測定室内の空気が存在する。気体成分検出器110の作動時、その内部に備えられたポンプによりループ(Loop−0)内の空気が循環しつつ、気体成分検出器110内の成分検出部がループ(Loop−0)内の空気中に基本的に存在するラドンガスのバックグラウンド濃度(C
0)を測定する(S120)。すなわち、ラドンガスのバックグラウンド濃度(C
0)は、測定室、具体的には、製造装置100及びパイプラインPL内に基本的に存在するラドンガスの濃度である。向後構成されるループ(Loop−1、Loop−3)で測定されるラドンガスの濃度は、バックグラウンド濃度(C
0)を差し引いて補正することによりさらに正確に得られることができる。ただし、測定室に対する情報からラドンガスのバックグラウンド濃度が分かる場合であれば、バックグラウンド濃度(C
0)測定ステップが除外され得ることはもちろんである。
【0042】
一方、気体容器130及び基準溶液製造容器150にラドンガス及び液相物質を各々収容するステップS110と、ラドンガスのバックグラウンド濃度(C
0)を測定するステップS120とは順序が互いに変わっても関係ない。
【0043】
その後、バルブ172、174を作動させて、
図3Bに示されたように、前記気体成分検出器110と気体容器130とが連結されたループ(Loop−2)を構成し、気体容器130内に濃縮されていたラドンガスをループ(Loop−2)内に流入させる(S130)。このとき、気体容器130のポート132、134に開閉バルブが各々設置されている場合であれば、これらのバルブは開放状態になければならない。前記ループ(Loop−2)状態は、ほぼ10分ぐらい維持させることにより、ラドンガスをループ(Loop−2)内に均一に存在させる。このとき、気体成分検出器110内のポンプを作動させてラドンガスをループ(Loop−2)内で循環させることにより、均一状態に速かに到達できるようにする。
【0044】
次いで、バルブ172、174を作動させて、
図3Cに示されたように、これらのバルブ172、174が互いに直接連結されるように気体成分検出器110の入力ポート112と出力ポート114とがパイプラインPLを介して連結されたループ(Loop−1)を構成し、所定時間を維持した後、気体成分検出器110内の成分検出部がループ(Loop−1)内のラドンガス濃度(C
1)を測定する(S140)。このとき、前記ループ(Loop−1)内のラドンガス濃度(C
1)は、前記ステップS120で測定されたラドンガスのバックグラウンド濃度(C
0)を差し引くことにより補正することが好ましい。実質的に、ループ(Loop−0)とループ(Loop−1)とは、同じ経路を有するが、ループ内に存在する物質の濃度が相違して、互いに区別したものである。
【0045】
次に、バルブ172、174を作動させて、
図3Dに示されたように、前記気体成分検出器110と基準溶液製造容器150とが連結されたループ(Loop−3)を構成し、ループ(Loop−3)内のラドンガスが平衡状態に到達すれば、基準溶液製造容器150内ではラドン基準溶液が製造され、このとき、ループ(Loop−3)内のラドンガスの濃度(C
3)を測定する(S150)。
図3Dに示されたようにループ(Loop−3)を構成すれば、ループ(Loop−1)内に存在していたラドンガスがループ(Loop−3)を介して基準溶液製造容器150内に流入し、流入したラドンガスは、その一部が基準溶液製造容器150内の液相物質に溶解されることによりラドン基準溶液が製造される。このとき、前記測定されたラドンガスの濃度(C
3)は、前記溶解が完了して平衡状態に到達した後に測定された値である。前記ループ(Loop−3)内のラドンガス濃度(C
3)も前記ステップS120で測定されたラドンガスのバックグラウンド濃度(C
0)を差し引くことにより補正することが好ましい。
【0046】
このように、ラドン基準溶液が製造されれば、ループ(Loop−1、Loop−3)内のラドンガスの濃度(C
1、C
3)を利用して次のような手続きにより前記製造されたラドン基準溶液に溶解されたラドンガスの濃度(C
L)を算出する(S160)。
【0047】
ループ(Loop−1)とループ(Loop−3)内のラドンガスの物質収支(mass balance)は、次のとおりである。
C
1*V
1=C
3*V
3+C
L*V
L (式1)
【0048】
ここで、C
1及びC
3は、各々ループ(Loop−1)及びループ(Loop−3)でのラドンガス濃度であり、V
1及びV
3は、各々ループ(Loop−1)及びループ(Loop−3)の内部体積であり、V
Lは、基準溶液製造容器150内に収容された液相物質、または製造されたラドン基準溶液の体積である。C
1及びC
3は、前述したように、ステップS140及びステップS150で各々測定され、V
1、V
3、及びV
Lは、気体成分検出器110の内部経路、基準溶液製造容器150内部、それに収容された溶液及びパイプラインPL内部の体積から得ることができ、これについては、下記でさらに説明する。
【0049】
前記式1をC
Lに対してまとめると、ラドン基準溶液に溶解されたラドンガスの濃度が次のように算出される。
すなわち、C
L=(C
1*V
1−C
3*V
3)/V
L (式2)
【0050】
一方、V
1及びV
3の値は、各々次のように算出され得る。
【0051】
まず、ループ(Loop−1)は、図面符号110、172、174、110へと連結されるループであって、その内部体積であるV
1は、気体成分検出器110の入力ポート112から出力ポート114までの内部経路の体積と、気体成分検出器110の入力ポート112からバルブ172とバルブ174とを経て気体成分検出器110の出力ポート114までのパイプラインPLの内部体積と、各バルブ172、174の内部経路の体積との合計である。気体成分検出器110及びバルブ172、174の内部経路の体積は、各々の規格から得ることができ、前記パイプラインPLの内部体積は、管の内径及び長さ、または重量法のような従来方法から求めることができる。
【0052】
前記重量法とは、密度を知っている流体、例えば、蒸溜水をパイプラインPL内に充填した後、充填された蒸溜水の質量から体積を求める方法である。
【0053】
ループ(Loop−3)は、図面符号110、172、150、174、110へと連結されるループであって、その内部体積であるV
3は、気体成分検出器110の入力ポート112から出力ポート114までの内部経路の体積と、気体成分検出器110の入力ポート112からバルブ172、基準溶液製造容器150、及びバルブ174を経て気体成分検出器110の出力ポート114までのパイプラインPLの内部体積と、基準溶液製造容器150の全体内部体積から溶媒の体積(V
L)を差し引いた体積と、各バルブ172、174の内部経路の体積との合計である。気体成分検出器110の内部経路の体積、パイプラインPLの内部体積、及びバルブ172、174の内部経路の体積は、各々前述したように求めることができ、基準溶液製造容器150の体積は、容器の規格または重量法で得ることができる。
【0054】
前記構成要素の各々の内部体積は、前述した方法以外の他の様々な方法により求めることができることはもちろんである。例えば、気体成分検出器110の内部経路体積は、本発明の装置を利用して次のように求めることができる。
【0055】
前述した装置100において、基準溶液製造容器150に液相物質を収容していない、空いている容器状態で前述したような基準溶液製造方法の一部ステップ(S120ないしS150)を行う。すなわち、気体成分検出器110により測定可能な気相物質を気体容器130に収容し、
図3Aに示されたループ(Loop−0)状態で気相物質のバックグラウンド濃度(C
0)を測定し(S120に対応)、
図3Bに示されたループ(Loop−2)を構成して、気相物質をループ(Loop−2)内に均一に分布させ(S130に対応)、
図3Cに示されたループ(Loop−1)で気相物質濃度(C
1)を測定し(S140に対応)、
図3Dに示されたループ(Loop−3)を構成して所定時間を維持した後、ループ(Loop−3)内の気相物質濃度(C
3)を測定する(S150に対応)。次いで、次のような手続きにしたがって気体成分検出器110の内部経路体積を算出する。
【0056】
ループ(Loop−1)とループ(Loop−3)内の気相物質の物質収支は、次のとおりである。
C
1*V
1=C
3*V
3 (式3)
【0057】
ループ(Loop−1)及びループ(Loop−3)の内部体積(V
1、V
3)をより具体的に区分すれば、次のとおりである。
【0058】
ループ(Loop−1)の内部体積(V
1)は、気体成分検出器110の内部経路体積(V
d)と、ループ(Loop−1)をなすパイプラインPLの内部体積(V
P1)と、2個のバルブ172、174の内部経路体積(V
V)との合計である。すなわち、V
1=V
d+V
P1+V
Vである。
【0059】
ループ(Loop−3)の内部体積(V
3)は、気体成分検出器110の内部経路体積(V
d)と、ループ(Loop−3)をなすパイプラインPLの内部体積(V
P3)と、空いた容器150の内部体積(V
E)と、2個のバルブ172、174の内部経路体積(V
V)との合計である。すなわち、V
3=V
d+V
P3+V
E+V
Vである。
【0060】
V
1及びV
3を前記式3に代入すれば、次の式が得られる。
C
1*(V
d+V
P1+V
V)=C
3*(V
d+V
P3+V
E+V
V) (式4)
【0061】
前記式4を気体成分検出器110の内部経路体積V
dに対してまとめると、
V
d=(C
3*(V
P3+V
E)−C
1*V
P1+(C
3−C
1)*V
V)/(C
1−C
3) (式5)
が得られる。
【0062】
一方、前述した実施形態において、気体成分検出器110とバルブ172、174とは、測定者が各々個別的に作動させることもできるが、別の制御器をさらに設置して、気体容器130と基準溶液製造容器150とに測定しようとするラドンガス及び液相物質を収容した後、前述した製造/測定ステップを自動に行うようにすることもできる。
【0063】
前述した実施形態によってラドン基準溶液を製造し、その濃度を測定するときの温度と圧力だけでなく、濃度測定時刻を共に測定して、製造されたラドン基準溶液の濃度の温度と圧力条件、及び濃度測定時刻を共に明示することが好ましい。
【0064】
このように製造されたラドン基準溶液の濃度は、ラドンの短い半減期のため、時間の経過にしたがって下記の放射性崩壊式により減少される。
C
Lt=C
L0*e
(−λt) (式6)
【0065】
ここで、C
Ltは、ラドン基準溶液の使用時のラドンガス濃度であり、C
L0は、ラドン基準溶液の製造時のラドンガス濃度(すなわち、式2においてC
L)であり、λは、ラドンの崩壊定数であって、0.00756h
−1であり、tは、ラドン基準溶液のラドンガス濃度測定時刻からラドン基準溶液の使用時刻までの時間hである。
【0066】
また、基準溶液製造容器150内に製造されたラドン基準溶液の気相−液相平衡分配係数(K
L/A=C
L/C
A、ここで、C
Aは、基準溶液製造容器150内へのラドン基準溶液を除いた空間でラドンガスの濃度である)、すなわち、ラドンの溶液/空気中分布比は温度によって変わり、これは、よく知られた次の式で表現される。
K
L/A=0.105+0.405*exp(−0.052T) (式7)
【0067】
ここで、T(℃)は、使用時の溶液の温度であり、使用された溶液は水である。
すなわち、ラドン基準溶液の使用時には、その製造時ラドンガス濃度を測定した時刻から経過された時間tと使用時ラドン基準溶液の温度Tとを確認して、式6及び式7を利用してラドンガス濃度を補正しなければならない。
【0068】
本発明では、測定対象の液相物質を基準溶液製造容器150に注入してラドン基準溶液を製造するので、製造されたラドン基準溶液と測定対象の液相物質の成分とが同じであって、測定装置の校正時、主成分一致条件が確保される。ただし、ラドン基準溶液と測定対象の液相物質の成分とが相違していると、分配係数も異なり得るので、これを補正すべきことはもちろんである。
【0069】
次に、本発明の変形実施形態に係る基準溶液製造装置について説明する。
図4は、本発明の変形実施形態に係る基準溶液製造装置の概略図であり、
図5A〜
図5Dは、
図4に示された製造装置を利用して基準溶液を製造するための各々のステップで形成されるループを示す図である。
【0070】
本変形実施形態において、前述した実施形態の構成要素と同じ構成要素に対しては同じ図面符号を使用し、重複する説明は省略する。
【0071】
図4に示すように、本発明の一実施形態に係る基準溶液製造装置101は、ラドンガスの濃度を検出するための気体成分検出器120と、ポンプ122と、ラドン濃縮ガスが収容される気体容器130と、所望の測定対象の液相物質が収容される基準溶液製造容器150と、前記構成要素を互いに連結するパイプラインPLと、パイプラインPLの所定位置に設置されて、前記気体成分検出器120、ポンプ122、気体容器130、基準溶液製造容器150、及びパイプラインPLで構成される複数の所定ループを切り換える複数のバルブ182、184、186、188とを備える。
【0072】
前記気体成分検出器120は、ポンプが内蔵されていないという点を除いては、前述した実施形態の気体成分検出器110と同じものであって、前述した実施形態の気体成分検出器110の成分検出部に対応する構成要素であり、前記ポンプ122は、気体成分検出器110のポンプに対応する構成要素である。すなわち、本変形実施形態の気体成分検出器120及びポンプ122は、前述した実施形態の気体成分検出器110に内蔵された成分検出部とポンプとが分離された構成であって、気体成分検出器110と事実上同じ構成である。本発明に係る基準溶液製造装置においてポンプは、構成されるループ内のラドンガスがループ内で均一な状態になることを助ける機能をするので、これは事実上選択的構成要素である。したがって、本変形実施形態では、ポンプ122を除くこともでき、前述した実施形態でも気体成分検出器110はポンプが内蔵されていない形でありうる。
【0073】
前記気体容器130及び基準溶液製造容器150は、前述した実施形態の気体容器130及び基準溶液製造容器150と同様である。
【0074】
気体成分検出器120、ポンプ122、気体容器130、及び基準溶液製造容器150は、直列に1つの閉ループをなすように前記パイプラインPLにより互いに連結され、気体容器130及び基準溶液製造容器150の各々を通過せずに迂回する経路が各々追加される。すなわち、気体容器130の2個のポート近傍のパイプラインPLにバルブ182、184が各々設置され、バルブ182、184は、パイプラインPLにより互いに連結され、基準溶液製造容器150の2個のポート近傍のパイプラインPLにバルブ186、188が各々設置され、バルブ186、188は、パイプラインPLにより互いに連結される。
【0075】
このように、パイプラインPL及びバルブ182、184、186、188が連結及び設置された状態でバルブ182、184、186、188を制御することにより、前述した一実施形態と同じ経路を有するループ(Loop−0、Loop−1、Loop−2、Loop−3)が構成され得る。
【0076】
すなわち、バルブ182、184、186、188を各々制御することにより、
図5A及び
図5Cに示されたように、気体成分検出器120が気体容器130及び基準溶液製造容器150と連結されないようにするループ(Loop−0またはLoop−1、すなわち、本変形実施形態の場合、図面符号120、182、184、186、188、122、120へと連結される閉ループ)を構成し、
図5Bに示されたように、気体成分検出器120が気体容器130とは連結され、基準溶液製造容器150とは連結されないようにするループ(Loop−2、すなわち、本実施形態の場合、図面符号120、182、130、184、186、188、122、120へと連結される閉ループ)を構成し、また、
図5Dに示されたように、気体成分検出器120が気体容器130とは連結されず、基準溶液製造容器150とは連結されるようにするループ(Loop−3、すなわち、本実施形態の場合、図面符号120、182、184、186、150、188、122、120へと連結される閉ループ)を構成するようになる。
【0077】
本変形実施形態では、前述した一実施形態と比較してパイプライン及びバルブの連結構成が多少変形され、バルブの個数が増加した。本変形実施形態で使用されるバルブは、その個数が増加するが、4方向でない3方向バルブである。
【0078】
実質的に、バルブ182とバルブ188とを結合して1つの4方向バルブに代替し、バルブ184とバルブ186とを結合して1つの4方向バルブに代替すれば、前述した一実施形態と同じ構成となる。
【0079】
このように構成された製造装置101を利用してラドン基準溶液を製造する方法は、前述した実施形態で説明された製造方法と同様である。
【0080】
すなわち、気体容器130と基準溶液製造容器150とに基準溶液を製造するためのラドンガス及び液相物質を収容し(S110)、
図5Aに示されたループ(Loop−0)状態でラドンガスのバックグラウンド濃度(C
0)を測定し(S120)、
図5Bに示されたループ(Loop−2)を構成してラドンガスをループ(Loop−2)内に均一に分布させ(S130)、
図5Cに示されたループ(Loop−1)でラドンガス濃度(C
1)を測定し(S140)、
図5Dに示されたループ(Loop−3)で平衡状態に到達するようにしてラドン基準溶液を製造し、ループ(Loop−3)内のラドンガスの濃度(C
3)を測定する(S150)。このように、ラドン基準溶液が製造され、ラドンガスの濃度(C
1、C
3)が測定されれば、前述した式2によってラドン基準溶液に溶解されたラドンガスの濃度を算出する(S160)。
【0081】
このような変形実施形態において、気体成分検出器120とポンプ122とバルブ182、184、186、188とは、測定者が各々個別的に作動させることもできるが、別の制御器をさらに設置して、気体容器130と基準溶液製造容器150とに基準溶液を製造するためのラドンガス及び液相物質を収容した後、前記した製造/測定ステップを自動に行うようにすることもできる。
【0082】
一方、前記実施形態及び変形実施形態において各構成要素、すなわち、気体成分検出器110または120、気体容器130、基準溶液製造容器150、パイプラインPL、及びバルブが互いに連結され、ループ(Loop−0、Loop−1、Loop−2、及びLoop−3)を各々構成することができれば、それらの位置、順序、及び/または個数を変えていかなる他の形態でも変形が可能である。ただし、ポンプ122が含まれる場合、前記ポンプ122は、気体成分検出器120に隣接して設置されることが好ましい。
【0083】
また、気体成分検出器110または120に隣接して乾燥管をさらに設置することができる。乾燥管内には乾燥剤が備えられ、これを通過する気相物質から水分を除去することになる。本発明に係る基準溶液製造装置100または101において、ループ(Loop−1)が構成された状態でループ(Loop−1)内を循環する空気が乾燥管を通過することにより、ループ(Loop−1)内部、特に、気体成分検出器110または120内の水分を除去することにより、ラドンガスの濃度をより正確に測定することができる。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態について例示的に説明したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有した者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲内で様々な修正及び変形が可能であろう。したがって、前述した実施形態は、本発明の技術思想を限定するためのものでなく、単によりよく理解できるように説明するためのものと理解されなければならない。本発明の権利範囲は、このような実施形態によって限定されず、下記の請求の範囲により解釈されなければならず、それと同等な範囲内にある技術思想は、本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されなければならない。