【文献】
J.Takahashi, et al.,"Optimization of Non-Contrast Renal MRA using a TI-Prep scan for Time-Spatial Labeling Pulse(以下備考),Proc.Intl.Soc.Mag.Reson.Med.16(2008),米国,2008年 5月 3日,p2903,(備考:名称続き) (time-SLIP) in 3D Balanced SSFP"
【文献】
K-L.Li, et al.,"Breast Tissue Perfusion Imaging with Arterial Spin Tagging Technique: Pilot Study Using GREAST",Proc.Intl.Soc.Mag.Reson.Med.13(2005),米国,2005年 5月 7日,p793
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0015】
(構成および機能)
図1は本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の実施の形態を示す構成図である。
【0016】
磁気共鳴イメージング装置20は、静磁場を形成する筒状の静磁場用磁石21と、この静磁場用磁石21の内部に設けられたシムコイル22、傾斜磁場コイル23およびRFコイル24とを図示しないガントリに内蔵した構成である。
【0017】
また、磁気共鳴イメージング装置20には、制御系25が備えられる。制御系25は、静磁場電源26、傾斜磁場電源27、シムコイル電源28、送信器29、受信器30、シーケンスコントローラ31およびコンピュータ32を具備している。制御系25の傾斜磁場電源27は、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zで構成される。また、コンピュータ32には、入力装置33、表示装置34、演算装置35および記憶装置36が備えられる。
【0018】
静磁場用磁石21は静磁場電源26と接続され、静磁場電源26から供給された電流により撮像領域に静磁場を形成させる機能を有する。尚、静磁場用磁石21は超伝導コイルで構成される場合が多く、励磁の際に静磁場電源26と接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は非接続状態とされるのが一般的である。また、静磁場用磁石21を永久磁石で構成し、静磁場電源26が設けられない場合もある。
【0019】
また、静磁場用磁石21の内側には、同軸上に筒状のシムコイル22が設けられる。シムコイル22はシムコイル電源28と接続され、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて静磁場が均一化されるように構成される。
【0020】
傾斜磁場コイル23は、X軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zで構成され、静磁場用磁石21の内部において筒状に形成される。傾斜磁場コイル23の内側には寝台37が設けられて撮像領域とされ、寝台37には被検体Pがセットされる。RFコイル24はガントリに内蔵されず、寝台37や被検体P近傍に設けられる場合もある。
【0021】
また、傾斜磁場コイル23は、傾斜磁場電源27と接続される。傾斜磁場コイル23のX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zはそれぞれ、傾斜磁場電源27のX軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zと接続される。
【0022】
そして、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zからそれぞれX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zに供給された電流により、撮像領域にそれぞれX軸方向の傾斜磁場Gx、Y軸方向の傾斜磁場Gy、Z軸方向の傾斜磁場Gzを形成することができるように構成される。
【0023】
RFコイル24は、送信器29および受信器30と接続される。RFコイル24は、送信器29からRF信号を受けて被検体Pに送信する機能と、被検体P内部の原子核スピンのRF信号による励起に伴って発生したNMR信号を受信して受信器30に与える機能を有する。
【0024】
一方、制御系25のシーケンスコントローラ31は、傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30と接続される。シーケンスコントローラ31は傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させるために必要な制御情報、例えば傾斜磁場電源27に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報を記憶する機能と、記憶した所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させることによりX軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy,Z軸傾斜磁場GzおよびRF信号を発生させる機能を有する。
【0025】
また、シーケンスコントローラ31は、受信器30におけるNMR信号の検波およびA/D (analog to digital)変換により得られた複素データである生データ(raw data)を受けてコンピュータ32に与えるように構成される。
【0026】
このため、送信器29には、シーケンスコントローラ31から受けた制御情報に基づいてRF信号をRFコイル24に与える機能が備えられる一方、受信器30には、RFコイル24から受けたNMR信号を検波して所要の信号処理を実行するとともにA/D変換することにより、デジタル化された複素データである生データを生成する機能と生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える機能とが備えられる。
【0027】
さらに、磁気共鳴イメージング装置20には、被検体PのECG (electro cardiogram)信号を取得するECGユニット38が備えられる。ECGユニット38により取得されたECG信号はシーケンスコントローラ31を介してコンピュータ32に出力されるように構成される。
【0028】
尚、拍動を心拍情報として表すECG信号の代わりに拍動を脈波情報として表す脈波同期(PPG: peripheral pulse gating)信号を取得することもできる。PPG信号は、例えば指先の脈波を光信号として検出した信号である。PPG信号を取得する場合には、PPG信号検出ユニットが設けられる。以下、ECG信号を取得する場合について述べる。
【0029】
また、コンピュータ32の記憶装置36に保存されたプログラムを演算装置35で実行することにより、コンピュータ32には各種機能が備えられる。ただし、プログラムによらず、各種機能を有する特定の回路を磁気共鳴イメージング装置20に設けてもよい。
【0030】
図2は、
図1に示すコンピュータ32の機能ブロック図である。
【0031】
コンピュータ32は、プログラムにより撮像条件設定部40、シーケンスコントローラ制御部41、k空間データベース42、画像再構成部43、画像データベース44および血流情報作成部45として機能する。撮像条件設定部40は、血流像取得シーケンス設定部40AおよびTIME-SLIP (t-SLIP: time-Spatial Labeling Inversion Pulse)シーケンス設定部40Bを有し、TIME-SLIPシーケンス設定部40Bは、TAG領域設定部40CおよびBBTI設定部40Dを有する。また、血流情報生成部45は、血流像作成部45A、信号強度変化取得部45Bおよび腫瘍鑑別部45Cを有する。
【0032】
撮像条件設定部40は、入力装置33からの指示情報に基づいてパルスシーケンスを含む撮像条件を設定し、設定した撮像条件をシーケンスコントローラ制御部42に与える機能を有する。特に、撮像条件設定部40は、造影剤を用いずにFBI (flesh blood imaging)法または定常自由歳差運動(SSFP: steady state free precession)法により非造影MRA像を取得するためのパルスシーケンスを設定する機能を備えている。
【0033】
FBI法のパルスシーケンスとしてはFASE (FastASE: fast asymmetric spin echoまたはfast advanced spin echo)シーケンスが挙げられる。FASEシーケンスは、ハーフフーリエ法を利用した高速データ収集用のSE (spin echo)系のシーケンスである。また、核磁気スピンの定常自由歳差運動を利用したSSFPシーケンスには、balanced SSFPシーケンスやtrue SSFPシーケンス等の種類がある。
【0034】
FBI法では、ECGユニット38により取得されたECG信号を用いてECG同期撮像が行われ、R波等の被検体Pの心時相を表す基準波に同期したトリガ信号から所定時間遅延させて複数心拍毎にエコーデータが繰り返して収集される。このためFBI法では、複数心拍の経過によって血液の横緩和(T2)成分の磁化が回復し、血液のT2磁化成分を強調した水(血液)強調画像を血管画像として得ることができる。さらに、FBI法では所定スライスエンコード量分のエコーデータ(ボリュームデータ)を収集する3次元スキャンが実行される。
【0035】
また、FBI法では、ECG同期の遅延時間を変えて撮像した画像データ間で差分を取ることにより動静脈を分離したMRA像を得ることもできる。具体的には、ECG同期下で収縮期と拡張期の画像データを収集し、収集した画像データ間でサブトラクションを行って血流像データを作成することができる。この場合、収縮期における動脈信号を抑制するためのspoiler傾斜磁場パルスを印加することにより、心筋の拡張期と収縮期における動脈信号の差を動脈のMRA像として良好に画像化することもできる。また、ディフェーズパルスまたはリフェーズパルスを印加するようにすれば、流速の速い血流からの信号値と低流速の血流からの信号値との相対的な信号差を増大させて相対的な信号差から動静脈を明瞭に分離することが可能となる。
【0036】
ただし、FBI法以外の手法で、2次元データ収集または3次元データ収集を伴って非造影MRA像を取得するための撮像条件を設定してもよい。3次元データ収集を伴って非造影MRA像データを収集すれば、後述する血流部分における信号強度の時間変化の特性を表す3次元マップデータを作成することが可能となる。
【0037】
さらに、上述した撮像条件を設定するために、撮像条件設定部40は、撮像条件の設定用画面情報を表示装置34に表示させる機能を備えている。そして、ユーザは表示装置34に表示された設定画面を参照して入力装置33に操作を行うことにより、撮像プロトコルを選択したり、励起領域やタグ付け(ラベリング)領域等の撮像条件を設定することができる。
【0038】
撮像条件設定部40の血流像取得シーケンス設定部40Aは、上述したFBI法によるFASEシーケンスやSSFPシーケンス等のパルスシーケンスを設定する機能を有する。
【0039】
また、TIME-SLIPシーケンス設定部40Bは、血流像取得シーケンス設定部40Aにより設定されたパルスシーケンスに従って収集された血流像を参照画像としてTIME-SLIP法によるパルスシーケンスを設定する機能を有する。
【0040】
TIME-SLIP法は、撮像領域に流入する血液のラベリング(タグ付けまたは標識化ともいう)または識別を行うためのスピンラベリングパルスをプレパルスとしてFBIシーケンスやSSFPシーケンス等のイメージング用のシーケンスに先立って印加することによって画像のコントラストを制御する手法である。尚、血液のスピンラベリングを行うためのスピンラベリングパルスは、ASL (Arterial spin labeling)パルスと呼ばれる。TIME-SLIP法では、複数のASLパルスで構成されるTIME-SLIPパルスが印加される。
【0041】
図3は、
図2に示す撮像条件設定部40において設定されるTIME-SLIP法によるパルスシーケンスの一例を示す図である。
【0042】
図3において、ECGはECG信号を、RFは、RF送信パルスを、Gssはスライス選択(slice selection)用の傾斜磁場パルスを、Groは読出し(RO: readout)用の傾斜磁場パルスを、Gpeは位相エンコード(PE: phase encode)用の傾斜磁場パルスを、Δfは、RF送信パルスとともに印加される調整用の傾斜磁場パルス、ECHOは受信エコー信号を、それぞれ示す。
【0043】
図3に示すようにTIME-SLIPシーケンスでは、イメージング用のFBI法によるFASEシーケンスまたはTrueSSFPシーケンス等のSSFPシーケンスに先立って撮影領域に流入する血液をラベリングまたは識別するためのTIME-SLIPパルスが印加される。すなわちTIME-SLIPシーケンスは、撮像領域に流入するタグ付けされた血液を選択的に描出或いはタグ付けされた撮像領域に外部から流入する血液が識別できるように血液信号を抑制するシーケンスである。
【0044】
TIME-SLIPパルスは、ECG信号のR波から一定の遅延時間(delay)経過後に印加され、TIME-SLIPパルスの印加タイミングから反転時間(TI: inversion time)に相当するBBTI (Black Blood Traveling Time)経過後にRF励起パルスが印加される。そして、RF励起パルスの印加から実効エコー時間(effective TE: effective echo time) TEeff経過後にk空間中心におけるエコー信号が収集される。このため、BBTI経過後に撮影領域に到達した血液のみの信号強度を強調または抑制することができる。
【0045】
TIME-SLIPパルスは、領域非選択反転回復(IR: inversion recovery)パルスおよび領域選択IRパルスで構成される。ただし、領域非選択IRパルスはON/OFFの切換が可能である。従って、TIME-SLIPパルスは、領域選択IRパルスのみで構成される場合と領域選択IRパルスおよび領域非選択IRパルスの双方で構成される場合がある。領域選択IRパルスは、撮影領域と独立に任意に設定することが可能である。領域非選択IRパルスをOFFにした状態で領域選択IRパルスで撮影領域内に設定されたタグ付け領域をラベリングして縦磁化を反転させると、TI後にタグ付け領域に流入するラベリングされていない(つまり縦磁化が反転していない)血液が到達した部分の信号強度が高くなる。このため血液の移動方向や距離を把握することができる。すなわち、TI後に撮影領域に到達した血液のみの信号強度を選択的に強調または抑制することができる。
【0046】
TAG領域設定部40Cは、血流像取得シーケンス設定部40Aにより設定されたパルスシーケンスに従って収集された血流像を参照画像として、入力装置33からの操作情報に従って参照画像上にTIME-SLIPパルスによるタグ付け領域を設定する機能を有する。
【0047】
BBTI設定部40Dは、入力装置33からの操作情報に従ってTIME-SLIPシーケンスにおけるBBTIをTIME-SLIP法による撮像条件として設定する機能を有する。BBTIは、少なくとも2つ以上の複数の互に異なる値に設定されることが望ましい。
【0048】
シーケンスコントローラ制御部41は、入力装置33からのスキャン開始指示情報を受けた場合に、撮影条件設定部40から取得したパルスシーケンスを含む撮影条件をシーケンスコントローラ31に与えることにより駆動制御させる機能を有する。また、シーケンスコントローラ制御部41は、シーケンスコントローラ31から生データを受けてk空間データベース42に形成されたk空間に配置する機能を有する。このため、k空間データベース42には、受信器30において生成された各生データがk空間データとして保存される。
【0049】
画像再構成部43は、k空間データベース42からk空間データを取り込んでフーリエ変換(FT: Fourier transform)を含む画像再構成処理を施すことにより画像データを再構成する機能と、再構成して得られた画像データを画像データベース44に書き込む機能を有する。このため、画像データベース44には、画像再構成部43において再構成された画像データが保存される。従って、画像データベース44には、血流像取得シーケンス設定部40Aにより設定されたFBI法によるシーケンスまたはSSFPシーケンス等のパルスシーケンスに従って収集された画像データと、TIME-SLIPシーケンス設定部40Bにより設定されたTIME-SLIPパルスの印加を伴って単一または互に異なる複数のBBTIに対応する画像データとが保存される。
【0050】
血流情報生成部45は、画像データベース44から必要な画像データを読み込んで、血流像データの生成や表示のために必要な画像処理を行う機能、血流像データに基づいて血流動態等の血流情報を生成する機能、血流情報や表示用の血流像データを表示装置34に表示させる機能を有する。血流像データの生成に必要な画像処理としては、拡張期に対応する画像データと収縮期に対応する画像データの間における差分処理が挙げられる。また、血流像データの表示に必要な画像処理としては、最大値投影(MIP: Maximum Intensity Projection)処理等の投影処理や信号強度に対応する色スケールで血流像を着色表示する処理のように信号強度ごとに血流像を識別表示させるための表示処理が挙げられる。
【0051】
血流像作成部45Aは、画像データベース44から取得した画像データを用いて血流像データを作成する機能と、TIME-SLIPパルスによるタグ付け領域の設定用に作成した血流像データの空間的位置情報をTAG領域設定部40Cに通知する機能を有する。
【0052】
信号強度変化取得部45Bは、TIME-SLIPシーケンスの単一または互に異なる複数のBBTIに対応する血流像データを血流像作成部45Aから取得して、特定の位置におけるBBTIの値またはBBTIの変化に対する信号強度の変化を血流情報として求める機能を有する。BBTIの変化に対する信号強度の変化は、数値として表すこともできるし、プロットすることによってカーブとして表すこともできる。また、信号強度の時間変化の特性を表す2次元データまたは3次元データの指標を作成することもできる。
【0053】
BBTIの変化に対する信号強度の変化は、信号強度の時間変化と考えることができる。従って、BBTIの変化に対する信号強度の変化を示すカーブは、従来のダイナミック造影MRAによって得られるパーフュージョンカーブとは異なるものの、血流信号の時間変化とみなせるカーブであることからパーフュージョンカーブとして扱うことができる。そこで、ここではBBTIの変化に対する信号強度の変化を示すカーブをパーフュージョンカーブと称する。このパーフュージョンカーブは、血流像データの単一または複数のピクセル位置ついてピクセルごとに求めることができる。従って、腫瘍部周辺領域等の所望の領域に含まれる複数のピクセル位置についてのパーフュージョンカーブを求めることもできるし、全てのピクセル位置についてのパーフュージョンカーブを求めることもできる
また、信号強度の時間変化の特性を表す2次元の指標としては、同一のピクセル位置における異なるBBTI間の信号強度変化の勾配、最大勾配および/または最大勾配までの時間、同一のピクセル位置における異なるBBTI間の信号強度比および/または信号強度差、同一のピクセル位置における信号強度の平均値、信号強度の最大値および/または信号強度の最大値までの時間などが挙げられる。同様に各ボクセル位置における指標を求めれば、3次元データとして信号強度の時間変化の特性を表す指標を得ることができる。
【0054】
具体例としては、信号強度の時間変化の特性を表す2次元マップまたは3次元マップを生成して表示させ、2次元マップまたは3次元マップ上において設定された関心領域(ROI: region of interest)について信号強度変化の代表値のパーフュージョンカーブを生成して表示させるという血流情報の提示方法が考えられる。
【0055】
腫瘍鑑別部45Cは、信号強度変化取得部45Bにより求められた血流像データの信号強度の値または時間変化に基づいて、悪性の腫瘍が存在するか否か、または腫瘍部位が悪性であるか良性であるのかを鑑別し、鑑別結果を血流情報として作成する機能を有する。
【0056】
信号強度変化取得部45Bおよび腫瘍鑑別部45Cにおいて血流情報として作成された血流像データの信号強度の時間変化や腫瘍の鑑別結果は表示装置34に表示させることができる。腫瘍部位は、色などにより識別させることができる。また、血流像データの信号強度の時間変化の特性を表す指標が複数のピクセル位置またはボクセル位置ついて求められる場合にも、時間変化の特性を表す指標の値に対応する色スケールで、指標の位置ごとの2次元データまたは3次元データを程度に応じて識別表示することができる。
【0057】
(動作および作用)
次に磁気共鳴イメージング装置20の動作および作用について説明する。
【0058】
図4は、
図1に示す磁気共鳴イメージング装置20により被検体Pの胸部におけるイメージングを行って腫瘍を含む血流像を描出し、描出した腫瘍が悪性であるか否かを鑑別するための血流情報を作成して表示する際の流れを示すフローチャートであり、図中Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
【0059】
まずステップS1において、非造影MRA法により胸部全体の血管がイメージングされる。そのために、撮影条件設定部40の血流像取得シーケンス設定部40Aにおいて、FBI法によるシーケンスやSSFPシーケンスがイメージングスキャン用の撮影条件として設定される。また、撮影領域が被検体Pの主要血管を含む胸部に設定される。このイメージングスキャンは、3次元(3D: three-dimensional)血流像データを収集するためのスキャンとすることが有用な血流情報を少ない撮影回数で取得する観点から望ましい。ただし、撮影時間の短縮化の観点からは2次元(2D: two-dimensional)血流像データを収集するためのイメージングスキャンを行ってもよい。
【0060】
一方、予め寝台37に被検体Pがセットされ、静磁場電源26により励磁された静磁場用磁石21(超伝導磁石)の撮像領域に静磁場が形成される。また、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて撮像領域に形成された静磁場が均一化される。
【0061】
そして、設定された撮影条件に従ってイメージングスキャンによってデータ収集が行われる。すなわち、入力装置33からシーケンスコントローラ制御部41にスキャン開始指示が与えられると、シーケンスコントローラ制御部41は撮影条件設定部40から取得したパルスシーケンスを含む撮影条件をシーケンスコントローラ31に与える。シーケンスコントローラ31は、シーケンスコントローラ制御部41から受けたパルスシーケンスに従って傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させることにより被検体Pがセットされた撮像領域に傾斜磁場を形成させるとともに、RFコイル24からRF信号を発生させる。
【0062】
このため、被検体Pの胸部における核磁気共鳴により生じたNMR信号が、RFコイル24により受信されて受信器30に与えられる。受信器30は、RFコイル24からNMR信号を受けて、所要の信号処理を実行した後、A/D変換することにより、デジタルデータのNMR信号である生データを生成する。受信器30は、生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える。シーケンスコントローラ31は、生データをシーケンスコントローラ制御部41に与え、シーケンスコントローラ制御部41はk空間データベース42に形成されたk空間に生データをk空間データとして配置する。
【0063】
次に、画像再構成部43は、k空間データベース42からk空間データを取り込んで画像データを再構成し、再構成して得られた画像データを画像データベース44に書き込む。そして、血流情報生成部45の血流像作成部45Aは、画像データベース44から画像データを取得して差分処理やMIP処理等の必要な画像処理を行うことによって胸部全体における血流像データを生成し、生成した胸部全体における血流像データを表示装置34に表示させる。
【0064】
ここで、血流像の収集は非造影MRA法により行われるため、従来の造影剤の注入に伴う時間分解能および空間分解能の制約を受けることがない。このため、撮影条件としてのPE方向×RO方向×スライスエンコード(SE: slice encode)方向における空間分解能を、例えば、0.5 × 0.5 × 1.0 (内挿により0.5) mm以下に設定することができる。そして、このような高空間分解能によるデータ収集により、造影MRA法では描出することが困難であった3 mm程度の腫瘍を血流像上に描出することが可能となる。
【0065】
次にステップS2において、表示装置34に表示された血流像を参照画像としてnon-contrast enhanced MRA-TIME-SLIP法のタグ領域やBBTIを含む撮影条件が撮影条件設定部40のTIME-SLIPシーケンス設定部40Bにおいて設定される。パルスシーケンスは、FBI法によるシーケンスまたはSSFPシーケンスとされるが適切な撮影条件の設定を行う観点から参照画像の収集に用いたシーケンスとすることがより望ましい。また、イメージングスキャンは、2Dスキャンとしても良いし、3Dスキャンとしても良い。
【0066】
TIME-SLIPシーケンスのBBTIは、BBTI設定部40Dにおいて悪性腫瘍と良性腫瘍との鑑別を行うことが可能な単一または複数の値に設定される。一般に、腫瘍が悪性である場合には腫瘍が栄養血管からより早い速度で栄養される。このため、BBTI=1000 ms程度で収集された血流像およびBBTI=2000 ms程度で収集された血流像の双方において腫瘍が高信号部として描出されることが知られている。一方、腫瘍が良性である場合には腫瘍が悪性である場合に比べて遅い速度で腫瘍が栄養される。このため、BBTI=1000 ms程度で収集された血流像では腫瘍が高信号部として描出されないが、BBTI=2000 ms程度で収集された血流像では腫瘍が高信号部として描出されることが知られている。
【0067】
従って、少なくともBBTIを1300程度以下の値とする血流像データを収集すれば、FBI法による血流像上で描出された腫瘍が悪性であるか良性であるのかを判定することができる。そのため、BBTIは1300程度以下の値を少なくとも含むように設定される。ただし、腫瘍の鑑別の精度向上のためには、悪性腫瘍において信号強度の時間変化がピークとなる前後における複数のBBTIの値を設定することが望ましい。BBTIは、例えば1300前後の700, 1000, 1500, 2000, 2500に設定される。
【0068】
一方、TIME-SLIPパルスのタグ領域は、TAG領域設定部40Cにおいて胸部の腫瘍への栄養血管(Feeding Artery)となり得る胸部への主要血管の全部または特定の一部が含まれない撮影領域内の領域に設定される。これにより、タグ領域外に存在する主要血管から撮影領域内のタグ領域に流入するラベリングされていない血液を選択的に描出させることが可能となる。胸部への主要血管としては、内乳動脈の貫通枝(perforating branches of the internal mammary artery)、外側胸動脈(the lateral thoracic artery)、胸背動脈(the thoracodorsal artery)、肋間動脈穿頭器 (intercostal artery perforators)、胸肩峰動脈(the thoracoacromial artery)が挙げられる。
【0069】
例えば、全ての主要血管が含まれないようにTIME-SLIPパルスのタグ領域を設定すれば、全ての主要血管からタグ領域に流入する血液を選択的に描出することができる。一方、所望の主要血管が含まれないようにTIME-SLIPパルスのタグ領域を設定すれば、タグ領域外となった主要血管からタグ領域に流入する血液を選択的に描出することができる。このため、TIME-SLIPパルスのタグ領域を着目する主要血管が含まれないように設定することにより、腫瘍への栄養血管がどの主要血管であるのかを調べて特定することができる。
【0070】
次にステップS3において、non-contrast enhanced MRA-TIME-SLIP法により腫瘍を含む領域がイメージングされる。すなわち、撮影条件設定部40からnon-contrast enhanced MRA-TIME-SLIP法の撮影条件がシーケンスコントローラ制御部41に与えられ、ステップS1における胸部全体の血管のイメージングと同様な流れでTIME-SLIP法のBBTIに対応する血流像データが作成され、生成された血流像データが表示装置34に表示される。
【0071】
図5は、
図1に示す磁気共鳴イメージング装置20において、TIME-SLIP法により互に異なるBBTIに対応して収集された胸部の血流像およびFBI法により参照画像として収集された胸部の血流像の一例を示す図である。
【0072】
図5において、BBTI=700, 1000, 1500, 2000, 2500 msと表記した血流像は、それぞれ対応するBBTIに対応する血流像であり、FBIと表記された血流像は、FBI法により撮像された血管全体の血流像である。FBI法により撮像された血管全体の血流像は、TIME-SLIPパルスのタグ領域等の撮影条件を設定するための参照画像とされる。FBI法により得られた血流像には、矢印で示す位置に腫瘍が確認できる。
【0073】
そこで、BBTI=700 msの血流像上の点線枠で示すように、腫瘍を含み、かつ腫瘍への栄養血管となり得る主要血管が含まれないような領域がTIME-SLIPパルスのタグ領域として設定される。そうすると、血液のinflow効果により主要血管から腫瘍を含むタグ領域に供給される血液がBBTIの値に応じて描出される。このため、
図5に示すように、BBTIの値が小さい順に血流像を観察すれば、胸部へ血液が流れていく様子を確認することができる。
【0074】
また、BBTI=1000 msに対応する血流像では、FBI法により得られた参照画像で確認できた腫瘍が確認できないが、BBTI=2000 msに対応する血流像では、腫瘍が中程度の信号強度を示す部分として確認できることが分かる。従って、腫瘍部分における信号強度の変化が小さいことが分かる。このため、FBI法により得られた血流像において描出された腫瘍が良性であると鑑別することができる。加えて、異なるBBTIに対応する複数の血流像上において血液の到達点間の距離を測定すれば、測定した距離とBBTIの差とから腫瘍へ向かう血流の速度や腫瘍に供給される血液の供給時間を求めることができる。そして、血流速度や血液の供給時間に基づいて腫瘍を鑑別することもできる。
【0075】
さらに、上述したようにTIME-SLIPパルスのタグ領域を変えて特定の主要血管のみが含まれないように設定し、非造影TIME-SLIP法により撮像された血流像を目視することにより腫瘍への栄養血管を特定することもできる。
【0076】
このように、FBI法等の非造影MRA法により胸部等の部位における血流像を撮像すれば、従来の造影ダイナミック撮影のように造影剤による染まり始めである最初の60秒以内のwash-in部分における血流像を収集しなければならないという時間的制約がないため、高空間分解能で血流像を得ることができる。これにより、造影MRA法では描出することが困難な3 mm程度の腫瘍を血流像上に描出することができる。さらに非造影MRA法により撮像された血流像と、非造影TIME-SLIP法により撮像された血流像とを比較することにより、ユーザは腫瘍が良性であるか否かを鑑別することができるのみならず、腫瘍への栄養血管を特性することも可能となる。これにより生体組織検査(バイオプシー)をより高精度で実施することができる。
【0077】
次にステップS4において、BBTIの値に応じた血流像データに基づいて血液のパーフュージョンカーブ等の血流情報が血流情報生成部45の信号強度変化取得部45Bにおいて作成され、作成された血流情報が表示装置34に表示される。例えば、単一のBBTI値に対応する血流像のみが収集されている場合には、腫瘍部分における信号値を血流情報として表示装置34に表示することができる。
【0078】
一方、複数のBBTI値に対応する血流像データが収集されている場合には、BBTIごとの腫瘍部分における信号値の変化を示す血流のパーフュージョンカーブや異なるBBTI間の複数の位置における信号値の変化の指標を示すマップデータを血流情報として信号強度変化取得部45Bにおいて作成することができる。特定の位置における信号値の変化は直線的とみなせるため、パーフュージョンカーブやマップデータを作成するためには、少なくとも2つの互に異なるBBTI値に対応する血流像データを収集する必要がある。
【0079】
また、パーフュージョンカーブやマップデータを作成する場合、ステップS1において取得した非造影MRA法による血流像データの信号強度で複数のBBTI値に対応する血流像データの信号強度を除算することによりBBTI値に対応する血流像データの正規化を行うことが有用な血流情報を生成する観点から望ましい。
【0080】
さらに、パーフュージョンカーブやマップデータを作成する場合において、最小のBBTI値に対応する基準となる血流像データを複数のBBTI値に対応する各血流像データから差し引けば、パーフュージョンカーブの開始点における信号強度やマップデータの最小値を0等の適切な値にするとともに、血流以外の背景組織の信号成分を除去することができる。この差分処理は正規化の前後のいずれにおいて行っても良い。正規化前であれば、ステップS1においてTIME-SLIP法によるタグ付けを行わずに収集した血流像データを複数のBBTI値に対応する各血流像データから差し引いてもよい。
【0081】
図6は、
図2に示す信号強度変化取得部45Bにより作成されるパーフュージョンカーブの一例を示す図である。
【0082】
図6において、横軸は基準時刻からの経過時間に相当するTIME-SLIPシーケンスのBBTIを示し、縦軸は正規化後における腫瘍部分の信号強度の変化を示す。
【0083】
図6に示すように、TIME-SLIP法で収集した複数のBBTI値に対応する血流像データの腫瘍部分における信号強度をプロットすることにより血液の腫瘍部分における信号強度の時間変化を示す非造影パーフュージョンカーブを得ることができる。腫瘍が悪性である場合には、丸印で示すようにパーフュージョンカーブの傾きが大きくなる。一方、腫瘍が良性である場合には、パーフュージョンカーブの傾きが、四角印で示すように小さくなる。
【0084】
このため、パーフュージョンカーブを表示させれば、ユーザはパーフュージョンカーブを目視することにより、一層容易に腫瘍が悪性であるか良性であるかを鑑別することが可能となる。
【0085】
尚、従来の造影MRA法により得られるパーフュージョンカーブの時間は、造影剤の注入速度や造影剤の粘性等の影響を受けた時間となっている。これに対して、non-contrast enhanced MRA-TIME-SLIP法により得られるパーフュージョンカーブの時間は、血液の自然な流れを反映しているため、より正確なパーフュージョンカーブとなる。
【0086】
また、複数のBBTI値に対応する血流像データの信号強度を時系列に差分することによって血流動態を観察することも可能である。
【0087】
パーフュージョンカーブや信号強度変化を表すマップデータ等の血流情報が得られると、腫瘍の鑑別を自動的に行うことも可能となる。
【0088】
その場合には、ステップS5において、腫瘍鑑別部45Cにより、腫瘍が悪性であるか否かの鑑別が実施され、鑑別結果が表示装置34に表示される。例えば、単一のBBTI値に対応する血流像データが得られている場合には、腫瘍鑑別部45Cは、腫瘍部分における信号強度または腫瘍部分における信号強度を非造影MRA法による血流像データの信号強度で正規化した値を予め設定した閾値と比較することにより腫瘍が悪性であるか良性であるかを鑑別することができる。また、複数のBBTI値に対応する血流像データに基づいてパーフュージョンカーブや信号強度変化を表すマップデータが得られている場合には、カーブの傾きやマップデータにおける特異点の有無を確認することにより腫瘍が悪性であるか良性であるのかを鑑別することができる。
【0089】
このため、ユーザによる血流像の読影を実施しなくても、腫瘍の鑑別を行うことが可能となる。また、腫瘍の鑑別を画一的に行うことが可能となる。
【0090】
つまり以上のような磁気共鳴イメージング装置20は、高分解能でデータ収集を行うことが可能なFBI法やSSFP法等の非造影MRA法によって腫瘍を良好に描出可能な胸部等の部位における血流像を取得するとともに、非造影TIME-SLIP法によって腫瘍部分に供給される血流を描出可能な血流像を取得するように構成したものである。さらに、磁気共鳴イメージング装置20は、非造影TIME-SLIP法によりBBTI値を可変設定して得られた複数の血流像データから腫瘍部分における血流のパーフュージョンカーブや血流信号の強度変化を表す2次元または3次元のマップデータを作成し、作成したパーフュージョンカーブやマップデータに基づいて腫瘍が悪性であるのか良性であるのかを鑑別できるようにしたものである。
【0091】
(効果)
上述したような磁気共鳴イメージング装置20によれば、造影剤の到達時間に起因する時間分解能の制約がない非造影MRA法によってデータが収集されるため高空間分解能な血流像を取得することができる。このため、胸部等の部位において造影ダイナミック法では描出困難な5mm以下の小さな腫瘍の描出が可能である。さらに、非造影TIME-SLIP法を用いて収集した高空間分解能な血流像データから腫瘍部分のパーフュージョンカーブを作成することができる。このため、血流像上において描出された3mm程度の小さな腫瘍の鑑別を行うことが可能である。
【0092】
加えて、造影剤が不要であることから安全性が高く、かつ造影剤の注入速度や粘性といった影響を受けないためTIME-SLIP法により自然な血液の流れを血流像として描出することができる。さらに、自然な血液の流れを反映したパーフュージョンカーブを作成することが可能となり、より高精度で腫瘍の鑑別を行うことができる。
【0093】
また、TIME-SLIPパルスのタグ領域の設定位置を調整することによって、腫瘍への栄養血管を特定することができる。
【0094】
(変形例)
第1の変形例
上述した実施形態においては、TIME-SLIPパルスによりラベリングされたタグ領域に流入するラベリングされていない血液を描出するFlow-in法により血流像データを生成する例を示した。しかし、腫瘍を含む所望の着目領域の外部において主要血管を含むタグ領域を設定し、描出しようとする血液自体をラベリングするFlow-out法により血流像データを生成してもよい。Flow-out法の場合、所望の着目領域に流入するラベリングされた血液が血流像データとして描出される。
【0095】
図7は、
図1に示す磁気共鳴イメージング装置20において血液をラベリングして血流像データを生成する場合におけるタグ領域の設定例を示す図である。
【0096】
図7に示すように、胸部の栄養血管となる主要血管を含む点線で示す領域をタグ領域に設定して領域選択IRパルスを印加すると、腫瘍を含む実線で示す着目領域に供給される血液がラベリングされる。また、TIME-SLIPパルスの領域非選択IRパルスをONにすれば、背景部分の縦磁化が負値に反転する一方、ラベリングされた血液の縦磁化は正値となる。このため、ラベリングされた血液からの信号を選択的に高信号値として収集することができる。
【0097】
尚、Flow-out法の場合、領域非選択IRパルスを印加するが領域選択IRパルスを印加しないで収集したk空間データまたは画像データを、領域非選択IRパルスおよび領域選択IRパルスを印加して収集したk空間データまたは画像データから差分処理によって差し引くと、血液信号成分のみのk空間データまたは画像データを抽出することができる。そしてこの抽出したデータを用いれば、良好に血液を描出した血流像データを生成することができる。
【0098】
図8は、
図7に示すタグ領域に領域選択IRパルスを印加することによってFlow-out法により得られた血流像データから作成された血液のパーフュージョンカーブの一例を示す図である。
【0099】
図8において、横軸は基準時刻からの経過時間に相当するTIME-SLIPシーケンスのBBTIを示し、縦軸は正規化後における腫瘍部分の信号強度の変化を示す。
【0100】
信号強度変化取得部45Bにおいて、Flow-out法により収集した血流像データに基づいて血液のパーフュージョンカーブを作成すると、
図8に示すようなカーブが得られる。すなわち、Flow-out法の場合には、血液の腫瘍部分へのwash-in部分およびwash-out部分における信号強度の時間変化を示すパーフュージョンカーブを得ることができる。
【0101】
腫瘍が悪性である場合には、丸印で示すようにwash-in部分におけるパーフュージョンカーブの傾きが大きくなり、パーフュージョンカーブはwash-out部分との境界においてピークを有するカーブとなる。これは、時間の経過とともに流入する血液の量が増えるが、さらに時間が経過すると縦磁化の回復により血液信号と背景信号との差分値が小さくなるためである。一方、腫瘍が良性である場合には、パーフュージョンカーブは、四角印で示すようにほぼ一定の傾きを有する直線的なカーブとなる。
【0102】
このため、ユーザはパーフュージョンカーブを目視することにより、一層容易に腫瘍が悪性であるか良性であるかを鑑別することが可能となる。
【0103】
第2の変形例
上述した実施形態および変形例においては、FBI法やSSFP法等の非造影MRA法によって収集された第1の血流像データを用いて非造影TIME-SLIP FBI法または非造影TIME-SLIP SSFP法によって収集された複数の第2の血流像データを正規化する例を示した。しかし、第1の血流像データを用いずに非造影TIME-SLIP FBI法または非造影TIME-SLIP SSFP法により収集された第2の血流像データのみを用いて複数の第2の血流像データの信号値の定量化を行うこともできる。
【0104】
例えば、MR信号を発生する物質を含むマーカを被検体Pの体表に設置し、TIME-SLIP法によりBBTI (TI)の異なる複数の第2の血流像データが収集される。そうすると、マーカはTIME-SLIPパルスによってスピンラベリングを受けないため、マーカからのMR信号の信号値は変わらない。そこで、マーカからのMR信号の信号値を用いて第2の血流像データの信号値の正規化を行うことができる。
【0105】
このように、第2の血流像データのみを用いて複数の血流像データの正規化を行うようにすれば、撮像時間の長期化を低減させることができる。例えば、FBI法によるイメージングは複数心拍ごとに所定のスライスエンコード量のデータ収集を繰り返すイメージング法である。さらに、TIME-SLIP法によるイメージングでは、スピンラベリングを行ってからイメージング用のデータ収集を行うまでに2R-Rから3R-R程度の時間を要する。従って、繰り返し心拍が3R-Rである場合にはTIME-SLIP法によるイメージングにおける所定のスライスエンコード量のデータ収集は5R-Rから6R-R程度となり撮像時間が比較的長くなるが、第1の血流像データの収集が不要となるため撮像時間の長期化という問題を解消することができる。