特許第5707482号(P5707482)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5707482二重特異性二価抗VEGF/抗ANG−2抗体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5707482
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】二重特異性二価抗VEGF/抗ANG−2抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20150409BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20150409BHJP
   C07K 16/22 20060101ALI20150409BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20150409BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20150409BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20150409BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20150409BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20150409BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20150409BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20150409BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C07K16/46
   C07K16/22
   C12P21/08
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/00 101
   A61K39/395 N
   A61P9/00
   A61P35/00
【請求項の数】16
【全頁数】55
(21)【出願番号】特願2013-501760(P2013-501760)
(86)(22)【出願日】2011年3月24日
(65)【公表番号】特表2013-526848(P2013-526848A)
(43)【公表日】2013年6月27日
(86)【国際出願番号】EP2011054504
(87)【国際公開番号】WO2011117329
(87)【国際公開日】20110929
【審査請求日】2012年11月29日
(31)【優先権主張番号】10003269.7
(32)【優先日】2010年3月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】306021192
【氏名又は名称】エフ・ホフマン−ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】ベイナー, モニカ
(72)【発明者】
【氏名】イムホフ−ユング, ザビーネ
(72)【発明者】
【氏名】カヴリー, アニタ
(72)【発明者】
【氏名】ケッテンベルガー, フーベルト
(72)【発明者】
【氏名】クライン, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】レグラ, イェルク, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー, ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】シャンツァー, ユルゲン, ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ショイアー, ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】シュトゥーベンラウホ, カイ−グナー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス, マルクス
【審査官】 木原 啓一郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/068895(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/080253(WO,A1)
【文献】 Protein Eng Des Sel.,2009年12月18日,Vol.23, No.3,p.151-127
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
C07K 16/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトVEGFに特異的に結合する第一抗原結合部位、及びヒトANG-2に特異的に結合する第二抗原結合部位を含二重特異性二価抗体であって、
i)前記第一抗原結合部位が、重鎖可変ドメイン(VH)として配列番号:1、及び軽鎖可変ドメイン(VL)として配列番号:2を含むこと、及び
ii)前記第二抗原結合部位が、重鎖可変ドメイン(VH)として配列番号:3、及び軽鎖可変ドメイン(VL)として配列番号:4を含むことを特徴とし、
更に、a)VEGFに特異的に結合する第一完全長抗体の重鎖及び軽鎖、及び
b)定常ドメインCL及びCH1が互いに置換されている、ANG-2に特異的に結合する完全長抗体の修飾重鎖及び修飾軽鎖
を含むことを特徴とする、二重特異性抗体。
【請求項2】
)第一完全長抗体の重鎖として配列番号:7、及び第一完全長抗体の軽鎖として配列番号:5、及び
b)第二完全長抗体の修飾重鎖として配列番号:8、及び第二完全長抗体の修飾軽鎖として配列番号:6
を含ことを特徴とする、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項3】
)第一完全長抗体の重鎖として配列番号:11、及び第一完全長抗体の軽鎖として配列番号:9、及び
b)第二完全長抗体の修飾重鎖として配列番号:12、及び第二完全長抗体の修飾軽鎖として配列番号:10
を含ことを特徴とする、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項4】
)第一完全長抗体の重鎖として配列番号:15、及び第一完全長抗体の軽鎖として配列番号:13、及び
b)第二完全長抗体の修飾重鎖として配列番号:16、及び第二完全長抗体の修飾軽鎖として配列番号:14
を含ことを特徴とする、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載二重特異性抗体を含薬学的組成物。
【請求項6】
癌の治療のための請求項1から4の何れか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項7】
医薬の製造における、請求項1から4の何れか一項に記載の二重特異性抗体の使用
【請求項8】
請求項1から4の何れか一項に記載の二重特異性抗体を含む、癌を患っている患者を治療するための医薬。
【請求項9】
血管疾患の治療のための請求項1から4の何れか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項10】
血管疾患医薬の製造における、請求項1から4の何れか一項に記載の二重特異性抗体の使用
【請求項11】
請求項1から4の何れか一項に記載の二重特異性抗体を含む、血管疾患を患っている患者を治療するための医薬。
【請求項12】
請求項1から4の何れか一項に記載の二重特異性抗体をコードしている核酸。
【請求項13】
請求項12に記載の酸を有する発現ベクターであって、原核生物又は真核生物宿主細胞において前記核酸を発現可能である発現ベクター。
【請求項14】
請求項13に記載のベクターを含原核生物又は真核生物宿主細胞。
【請求項15】
請求項1から4に記載の二重特異性抗体の調製方法であって、
a)前記抗体をコードしている核酸分子を含ベクターを用いて宿主細胞を形質転換する工程;
b)前記抗体分子の合成を可能にする条件下で該宿主細胞を培養する工程;及び
c)前記培養物から前記抗体分子を回収する工程
を含む、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法によって得られる二重特異性抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト血管内皮増殖因子(VEGF/VEGF-A)及びヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)に対する二重特異性二価抗体、その生産方法、前記抗体を含有する薬学的組成物、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
血管新生は、固形腫瘍、眼内新生血管症候群、例えば増殖性網膜症又は加齢黄斑変性(AMD)、関節リウマチ、及び乾癬を含む様々な疾患の病変形成に関与する(Folkman, J., et al., J. Biol. Chem. 267 (1992) 10931-10934; Klagsbrun, M., et al., Annu. Rev. Physiol. 53 (1991) 217-239; and Garner, A., Vascular diseases, in: Pathobiology of ocular disease, A dynamic approach, Garner, A., and Klintworth, G. K. (eds.), 2nd edition, Marcel Dekker, New York (1994), pp. 1625-1710)。固形腫瘍の場合、新生血管は、腫瘍細胞が正常細胞と比較して増殖優位性及び増殖自立性を獲得することを可能にする。このように、腫瘍切片における微小血管の密度と、乳癌並びに幾つかの他の腫瘍における患者の生存度との間に相関が観察されている(Weidner, N., et al., N Engl J Med. 324 (1991) 1-8; Horak, E.R., et al., Lancet 340 (1992) 1120-1124; and Macchiarini, P., et al., Lancet 340 (1992) 145-146)。
【0003】
VEGF及び抗VEGF抗体
ヒト血管内皮増殖因子(VEGF/VEGF-A)(配列番号:105)が、例えばLeung, D.W., et al., Science 246 (1989) 1306-9; Keck, P.J., et al., Science 246 (1989) 1309-12 and Connolly, D.T., et al., J. Biol. Chem. 264 (1989) 20017-24に記載されている。VEGFは、正常及び異常血管新生の制御、及び腫瘍及び眼内疾患に伴う新生血管に関与する(Ferrara, N., et al., Endocr. Rev. 18 (1997) 4-25; Berkman, R.A., et al., J. Clin. Invest. 91 (1993) 153-159; Brown, L.F., et al., Human Pathol. 26 (1995) 86-91; Brown, L.F., et al., Cancer Res. 53 (1993) 4727-4735; Mattern, J., et al., Brit. J. Cancer. 73 (1996) 931-934; and Dvorak, H.F., et al., Am. J. Pathol. 146 (1995) 1029-1039)。VEGFは、幾つかの供給源から単離されたホモ二量体糖タンパク質である。VEGFは、内皮細胞に対し特異性の高いマイトジェン活性を示す。VEGFは、胚性脈管形成の間の新しい血管の形成において、また成人期の間の血管新生において重要な調整機能を有する(Carmeliet, P., et al., Nature, 380 (1996) 435-439; Ferrara, N., et al., Nature, 380 (1996) 439-442; reviewed in Ferrara, N., et al., Endocr. Rev. 18 (1997) 4-25。VEGFが果たす役割の重要性が、一つのVEGF対立遺伝子の不活性化が脈管構造の発生不全により胚性致死をもたらすことを示す研究において実証された(Carmeliet, P., et al., Nature, 380 (1996) 435-439; Ferrara, N., et al., Nature, 380 (1996) 439-442。更に、VEGFは単球対し強いケモアトラクタント活性を有し、内皮細胞においてプラスミノーゲンアクチベーター及びプラスミノーゲンアクチベーターインヒビターを誘導し得、また微小血管透過性も誘導しうる。後者の活性により、それは時に血管透過性因子(VPF)とも呼ばれる。VEGFの単離及び特性が総説されている;Ferrara, N., et al., J. Cellular Biochem., 47 (1991) 211-218 and Connolly, D.T., J. Cellular Biochem., 47 (1991) 219-223を参照のこと。一つのVEGF遺伝子の選択的mRNAスプライシングは、VEGFの5つのアイソフォームを生じる。
【0004】
抗VEGF中和抗体は、マウスにおいて様々なヒト腫瘍細胞株の増殖を抑制する(Kim, K.J., et al., Nature 362 (1993) 841-844; Warren, S.R., et al., J. Clin. Invest. 95 (1995) 1789-1797; Borgstrom, P., et al., Cancer Res. 56 (1996) 4032-4039; and Melnyk, O., et al., Cancer Res. 56 (1996) 921-924)。WO94/10202、WO98/45332、WO2005/00900及びWO00/35956はVEGFに対する抗体に言及する。ヒト化モノクローナル抗体ベバシズマブ(商品名Avastin(登録商標)で市販されている)は、腫瘍治療において使用される抗VEGF抗体である(WO98/45331)。
【0005】
ラニビズマブ(商品名Lucentis(登録商標))は、ベバシズマブ(アバスチン)と同じ親マウス抗体に由来するモノクローナル抗体断片である。それは、親分子よりずっと小さく、VEGF-Aへの強い結合を与えるために親和性成熟されている(WO98/45331)。加齢による失明の一般形態である加齢黄斑変性(ARMD)の「滲出型」の治療に認可されたのが抗血管新生である。別の抗VEGF抗体は、例えばHuMab G6-31であり、例えばUS2007/0141065に記載されている。
【0006】
ANG-2及び抗ANG-2抗体
ヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)(あるいはANGPT2又はANG2と略称される)(配列番号:106)は、Maisonpierre, P.C., et al, Science 277 (1997) 55-60 and Cheung,A.H., et al., Genomics 48 (1998) 389-91に記載されている。アンジオポエチン-1及び-2(ANG-1(配列番号:107)及びANG-2(配列番号:106))は、血管内皮に選択的に発現されるチロシンキナーゼのファミリーであるTieに対するリガンドとして発見された。Yancopoulos, G.D., et al., Nature 407 (2000) 242-48。現在、アンジオポエチンファミリーの4つの確定メンバーがある。アンジオポエチン-3及び-4(Ang-3及びAng-4)は、マウス及びヒトにおける同じ遺伝子座の広く分岐したカウンターパートを表しうる。Kim, I., et al., FEBS Let, 443 (1999) 353-56; Kim, I., et al., J Biol Chem 274 (1999) 26523-28。ANG-1及びANG-2はもともと、組織培養実験において、アゴニスト及びアンタゴニストとしてそれぞれ同定された(ANG-1については: Davis, S., et al., Cell 87 (1996) 1161-69;ANG-2については: Maisonpierre, P.C., et al., Science 277 (1997) 55-60を参照のこと)。全ての知られているアンジオポエチンは主にTie2に結合し、Ang-1及び-2は双方とも3nMの親和性(Kd)でTie2に結合する。Maisonpierre, P.C., et al., Science 277 (1997) 55-60。Ang-1はEC生存を支援し、内皮の完全性を促進することが示されたが、Davis, S., et al., Cell 87 (1996) 1161-69; Kwak, H.J., et al., FEBS Lett 448 (1999) 249-53; Suri, C., et al., Science 282 (1998) 468-71; Thurston, G., et al., Science 286 (1999) 2511-2514; Thurston, G., et al., Nat. Med. 6 (2000) 460-63、ANG-2は逆の効果を有し、生存因子VEGF又は塩基性線維芽細胞増殖因子の不在において、血管の不安定化及び退縮を促進した。Maisonpierre, P.C., et al., Science 277 (1997) 55-60。しかしながら、ANG-2機能の多くの研究は、更なる複雑な状況を提案した。ANG-2は血管発芽及び血管退縮双方において役割を果たしうる血管リモデリングの複雑な調節因子でありうる。ANG-2のこのような役割を裏付けするように、発現分析は、ANG-2が成人条件の血管新生出芽においてVEGFと共に急速に誘発されるが、ANG-2が血管退縮の条件ではVEGFの不存在下において誘発されることを示す。Holash, J., et al., Science 284 (1999) 1994-98; Holash, J., et al., Oncogene 18 (1999) 5356-62。状況依存的役割と一致して、ANG-2は同じ内皮特異的受容体、Tie-2(Ang-1によって活性化される)に特異的に結合するが、その活性化に対して状況依存効果を持つ。Maisonpierre, P.C., et al., Science 277 (1997) 55-60。
【0007】
角膜血管新生アッセイは、ANG-1及びANG-2双方が類似な効果を有し、VEGFと相乗的に作用して新しい血管の成長を促進することを示した。Asahara, T., et al., Circ. Res. 83 (1998) 233-40。用量依存内皮応答があるという可能性が、インビトロにおいて高濃度で、ANG-2がまた血管新生促進性でありうるという観察により生じた。Kim, I., et al., Oncogene 19 (2000) 4549-52。高濃度においてANG-2は、PI-3キナーゼ及びAkt経路を介するTie2の活性化を通して、血清欠乏アポトーシスの間、内皮細胞に対するアポトーシス生存因子として作用する。Kim, I., et al., Oncogene 19 (2000) 4549-52。
【0008】
他のインビトロ実験は、持続した曝露間に、ANG-2の作用はTie2のアンタゴニストからアゴニストの作用に徐々にシフトし得、後の時点で、それは血管形成及び新生血管の安定化に直接貢献しうることが提示された。Teichert-Kuliszewska, K., et al., Cardiovasc. Res. 49 (2001) 659-70。更に、ECがフィブリンゲルにおいて培養されると、ANG-2によるTie2の活性化も観察され、ANG-2の作用がECの分化状態に依存しうることがおそらく提案される。Teichert-Kuliszewska, K., et al., Cardiovasc. Res. 49 (2001) 659-70。三次元コラーゲンゲルにおいて培養される微少血管ECにおいて、ANG-2はまた、Tie2活性化を誘発し、毛細血管様構造の形成を促進しうる。Mochizuki, Y., et al., J. Cell. Sci. 115 (2002) 175-83。血管成熟のインビトロモデルとしての3-Dスフェロイド共培養の使用は、EC及び間葉系細胞間の直接の接触はVEGFへの応答性を抑止するが、VEGF及びANG-2の存在は発芽を誘発することが示された。Korff, T., et al., Faseb J. 15 (2001) 447-57。Etoh, T.H. et al. demonstrated that ECs that constitutively express Tie2, the expression of MMP-1,-9 and u-PA were strongly upregulated by ANG-2 in the presence of VEGF.Etoh, T., et al., Cancer Res. 61 (2001) 2145-53。インビボ瞳孔膜モデルにより、Lobov, I.B. et al.は、ANG-2が内因性VEGFの存在下において、毛細血管直径の急速な増加、基底膜のリモデリング、内皮細胞の増殖及び遊走を促進し、新しい血管の発芽を刺激することを示した。Lobov, I.B., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99 (2002) 11205-10。対照的に、ANG-2は、内因性VEGF無しでは、内皮細胞死及び血管退縮を促進する。Lobov, I.B., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99 (2002) 11205-10。同様に、インビボ腫瘍モデルにより、Vajkoczy, P., et al.は、多細胞凝集が、宿主及び腫瘍内皮によるVEGFR-2及びANG-2の同時発現を介した血管新生発芽による血管増殖を開始することを示した。Vajkoczy, P., et al., J. Clin. Invest. 109 (2002) 777-85。このモデルは、増殖腫瘍の確立された微少血管が、連続的なリモデリングによって特徴付けられ、おそらくVEGF及びANG-2の発現によって媒介されることを示した(Vajkoczy, P., et al., J. Clin. Invest. 109 (2002) 777-85)。
【0009】
Tie-2及びアンジオポエチン-1のノックアウトマウス試験は類似な表現型を示し、アンジオポエチン-1刺激によるTie-2リン酸化が、発生中の血管のリモデリング及び安定化を媒介し、血管新生中の血管成熟及び内皮細胞支援細胞接着を促進することを示した(Dumont, D.J., et al., Genes & Development, 8 (1994) 1897-1909; Sato, T.N., Nature, 376 (1995) 70-74; (Thurston, G., et al., Nature Medicine 6 (2000) 460-463)。アンジオポエチン-1の役割は成人において保存されていると考えられており、それは広範に恒常的に発現されている(Hanahan, D., Science, 277 (1997) 48-50; Zagzag, D., et al., Exp Neurology 159 (1999) 391-400)。対照的に、アンジオポエチン-2発現は血管リモデリングの部位に主に限定され、そこではそれはアンジオポエチン-1の恒常的な安定化又は成熟化機能を阻止し、血管が、発芽シグナルに対してより応答でありうる可塑的状態に戻り留まることを可能にすると考えられている(Hanahan, D., 1997; Holash, J., et al., Oncogene 18 (199) 5356-62; Maisonpierre, P.C., 1997)。病理学的血管新生におけるアンジオポエチン-2発現の研究は、多くの腫瘍タイプが血管アンジオポエチン-2発現を示すことを発見した(Maisonpierre, P.C., et al., Science 277 (1997) 55-60)。機能研究は、アンジオポエチン-2が腫瘍血管新生に関与することを提案し、マウス異種移植モデルにおいてアンジオポエチン-2過剰発現を増加腫瘍と関連付ける(Ahmad, S.A., et al., Cancer Res., 61 (2001) 1255-1259)。他の研究はアンジオポエチン-2過剰発現を腫瘍血管過多と関連付けた(Etoh, T., et al., Cancer Res. 61 (2001) 2145-53; Tanaka, F., et al., Cancer Res. 62 (2002) 7124-7129)。
【0010】
近年、アンジオポエチン-1、アンジオポエチン-2及び/又はTie-2が、考えられる抗癌治療標的として提案された。例えばUS6,166,185、US5,650,490及びUS5,814,464は、抗Tie-2リガンド及び受容体抗体を各々開示する。可溶性Tie-2を用いた研究は、齧歯類において腫瘍の数及びサイズを低下することを報告した(Lin, 1997; Lin 1998)。Siemeister, G., et al., Cancer Res. 59:3 (1999) 3185-91は、Tie-2の細胞外ドメインを発現するヒトメラノーマ細胞株を生成し、これらをヌードマウスに注入し、可溶性Tie-2が腫瘍増殖及び腫瘍血管新生の顕著な阻害をもたらすことを報告した。アンジオポエチン-1及びアンジオポエチン-2双方がTie-2に結合するとして、アンジオポエチン-1、アンジオポエチン-2又はTie-2のどれが、抗癌治療に魅力的な標的かどうかこれらの研究からは不明である。しかしながら、効果的な抗アンジオポエチン-2治療が癌などの疾患の治療に有益であると考えられており、そこでは進行は異常血管新生に依存し、プロセスの遮断は疾患進行の防止を導きうる(Folkman, J., Nature Medicine. 1 (1995) 27-31)。
【0011】
更に、幾つかのグループが、アンジオポエチン-2に結合する抗体及びペプチドの使用を報告した。例えば、US6,166,185及びUS2003/10124129を参照のこと。WO03/030833、WO2006/068953、WO03/057134又はUS2006/0122370。
【0012】
アンジオポエチン-2の限局的な発現の効果の研究は、アンジオポエチン-1/Tie-2シグナルをアンタゴナイズすることは密着した血管構造を緩め、ECを血管新生誘導因子からの活性化シグナルに曝すことを示した(Hanahan, D., Science, 277 (1997) 48-50)。アンジオポエチン-1の阻害から生じるこの血管新生促進効果は、抗アンジオポエチン-1治療が効果的な抗癌治療とならないことを示す。
【0013】
ANG-2は、発生中に、血管リモデリングが生じている部位で発現される。Maisonpierre, P.C., et al., Science 277 (1997) 55-60。成人個体では、ANG-2発現は、血管リモデリングの部位並びに高く血管に富んだ腫瘍、グリオーマ、Osada, H., et al., Int. J. Oncol. 18 (2001) 305-09); Koga, K., et al., Cancer Res. 61 (2001) 6248-54、肝細胞癌、Tanaka, S., et al., J. Clin. Invest. 103 (1999) 341-45、胃癌、Etoh, T., et al., Cancer Res. 61 (2001) 2145-53; Lee, J.H., et al., Int. J. Oncol. 18 (2001) 355-61、甲状腺腫瘍、Bunone, G., et al., Am J Pathol 155 (1999) 1967-76、非小細胞肺癌、Wong, M.P., et al., Lung Cancer 29 (2000) 11-22、及び結腸の癌、Ahmad, S.A., et al., Cancer 92 (2001) 1138-43、及び前立腺Wurmbach, J.H., et al., Anticancer Res. 20 (2000) 5217-20を含む、に制限される。幾つかの腫瘍細胞はANG-2を発現することが発見された。例えば、Tanaka, S., et al., J. Clin. Invest. 103 (1999) 341-45は、ヒト肝細胞癌(HCC)の12のサンプルの内10においてANG-2 mRNAを検出した。Ellisのグループは、ANG-2が腫瘍上皮において遍在的に発現されることを報告した。Ahmad, S.A., et al., Cancer 92 (2001) 1138-43。他の調査員が類似な発見を報告した。Chen, L., et al., J. Tongji Med. Univ. 21 (2001) 228-35。保存されたヒト乳癌サンプルにおいてANG-2 mRNAレベルを検出することにより、Sfiligoi, C., et al., Int. J. Cancer 103 (2003) 466-74は、ANG-2 mRNAが、腋窩リンパ節浸潤、短い無病期間及び低い全生存度と顕著に関連することを報告した。Tanaka, F., et al., Cancer Res. 62 (2002) 7124-29は、それぞれ病理学的ステージ-I〜-IIIAを有する、非小細胞肺癌(NSCLC)の全部で236の患者を調査した。免疫組織化学を使用し、彼らは、16.9%のNSCLC患者がANG-2陽性であることを発見した。ANG-2陽性腫瘍の微小血管密度は、ANG-2陰性のそれより著しく高かった。ANG-2のこのような血管新生効果は、VEGF発現が高い場合にのみ見られた。更に、ANG-2の陽性発現は、不良な術後生存を予測するための重要な要因であった。Tanaka, F., et al., Cancer Res. 62 (2002) 7124-7129。しかしながら、彼らはAng-1発現及び微小血管密度の間に有意な相関を見出さなかった。Tanaka, F., et al., Cancer Res.62 (2002) 7124-7129。これらの結果は、ANG-2が、幾つかのタイプの癌の患者の予後不良の指標であることを示唆する。
【0014】
近年、ANG-2ノックアウトマウスモデルを使用して、Yancopoulosのグループは、ANG-2が生後血管新生に必要であることを報告した。Gale, N.W., et al., Dev.Cell 3-(2002) 411-23。彼らは、眼の硝子体脈管構造の発生的プログラム退縮はANG-2ノックアウトマウスにおいて生じず、それらの網膜血管が網膜中心動脈から出芽しないことを示した。Gale, N.W., et al., Dev.Cell 3 (2002) 411-23。彼らはまた、ANG-2の欠失は、リンパ管のパターニング及び機能において深刻な欠陥をもたらすことを発見した。Gale, N.W., et al., Dev.Cell 3 (2002) 411-23。Ang-1による遺伝子救済はリンパ性欠陥を修復するが、血管新生欠陥は修復しない。N.W., et al., Dev.Cell 3 (2002) 411-23。
【0015】
Peters及び彼の同僚は、可溶性Tie2が、組換えタンパク質として、又はウィルス発現ベクター中において送達される場合、マウスモデルにおけるマウス乳癌及びメラノーマのインビボ増殖を阻害したことを報告した。Lin, P., et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95 (1998) 8829-34; Lin, P., et al., J. Clin.Invest.100 (1997) 2072-78。そのように治療された腫瘍組織における脈管密度は高く低減された。更に、可溶性Tie2は、腫瘍細胞条件培地によって刺激されたラット角膜において血管新生を阻害した。Lin, P., et al., J. Clin.Invest.100 (1997) 2072-78。更に、Isner及び彼のチームは、VEGFへのANG-2の追加が、VEGF単独より、著しく長くそして周囲に広がった新生血管を促進したことを示した。Asahara, T., et al., Circ.Res.83 (1998) 233-40。過剰な可溶性Tie2受容体は、ANG-2によるVEGF誘発新生血管の調節を妨げた。Asahara, T., et al., Circ.Res.83 (1998) 233-40.Siemeister, G., et al., Cancer Res.59:3 (1999) 3185-91は、ヌードマウス異種移植を用いて、異種移植片におけるFlt-1又はTie2どちらかの細胞外リガンド結合ドメインの過剰発現が、経路の顕著な阻害をもたらし、もう一方では補われないことを示し、VEGF受容体経路及びTie2経路が、インビボ血管新生のプロセスに必須な2つの独立したメディエーターとして考えられるべきであることを提案した。Siemeister, G., et al., Cancer Res.59:3 (1999) 3185-91。これはWhite, R., R., et al., , Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100 (2003) 5028-33によるより最近の文献によって証明されている。彼らの研究において、特異的に結合しANG-2を阻害するヌクレアーゼ抵抗性RNAアプタマーが、ラット角膜微少ポケット血管新生モデルにおいてbFGFによって誘発される新生血管を顕著に阻害することが示された。
【0016】
二重特異性抗体
広範な組換え抗体フォーマットが近年に開発され、例えばIgG抗体フォーマット及び単鎖ドメインの融合による四価二重特異性抗体などである(例えばColoma, M.J., et al., Nature Biotech 15 (1997) 159-163; WO2001/077342; and Morrison, S.L., Nature Biotech 25 (2007) 1233-1234を参照)。
【0017】
また、2つ以上の抗原に結合可能な、抗体コア構造(IgA、IgD、IgE、IgG又はIgM)がもはや保たれていない幾つかの他の新しいフォーマット、例えばダイア-、トリア-又はテトラボディ、ミニボディ、幾つかの単鎖フォーマット(scFv、Bis-scFv)が開発されている(Holliger, P., et al., Nature Biotech 23 (2005) 1126-1136; Fischer, N., Leger, O., Pathobiology 74 (2007) 3-14; Shen, J., et al., Journal of Immunological Methods 318 (2007) 65-74; Wu, C., et al., Nature Biotech. 25 (2007) 1290-1297)。
【0018】
全てのこのようなフォーマットは、抗体コア(IgA、IgD、IgE、IgG又はIgM)を更なる結合タンパク質(例えばscFv)に融合するために、又は例えば2つのFab断片又はscFvsを融合するためにリンカーを使用する(Fischer, N., Leger, O., Pathobiology 74 (2007) 3-14)。自然発生的な抗体への高い類似性を維持することによって、エフェクター機能、例えば、Fc受容体結合により媒介される補体依存細胞傷害(CDC)又は抗体依存性細胞傷害(ADCC)などの保持が所望されうることを留意しておかなければならない。
【0019】
WO2007/024715において、組換え多価、多重特異性結合タンパク質としてデュアル可変ドメイン免疫グロブリンが報告されている。生物学的に活性な抗体二量体の調製プロセスがUS6,897,044に報告されている。ペプチドリンカーによって互いに結合された少なくとも4つの可変ドメインを有する多価F抗体コンストラクトがUS7,129,330に報告されている。二量体及び多量体抗原結合構造がUS2005/0079170に報告されている。天然免疫グロブリンではない、結合構造によって共有結合で互いに結合された3又は4つのFab断片を含んでなる三-又は四-価単一特異性抗原結合タンパク質がUS6,511,663に報告されている。WO2006/020258では、原核生物及び真核生物細胞において効果的に発現され得、治療及び診断方法において有用な四価二重特異性抗体が報告されている。2種類のポリペプチド二量体を含んでなる混合物から、少なくとも一つの鎖間ジスルフィド架橋で結合されない二量体から、少なくとも一つの鎖間ジスルフィド架橋で結合される二量体を分離し、優先的に合成する方法がUS2005/0163782に報告されている。二重特異性四価受容体がUS5,959,083に報告されている。3又は4つの機能的抗原結合部位を有する組換え抗体がWO2001/077342に報告されている。
【0020】
多重特異性及び多価抗原結合ポリペプチドがWO1997/001580に報告されている。WO1992/004053は、同じ抗原決定基に結合するIgGクラスのモノクローナル抗体から典型的には調製されるホモコンジュゲートが、合成架橋結合によって共有結合的に連結されることを報告する。抗原に対して高アビディティーを有するオリゴマーモノクローナル抗体がWO1991/06305に報告されており、典型的にはIgGクラスのオリゴマーが分泌され、2つ以上の免疫グロブリンモノマーが互いに会合し、四価又は六価のIgG分子が形成される。ヒツジ由来抗体及び組換え抗体コンストラクトがUS6,350,860に報告されており、インターフェロンガンマ活性が病原性である疾患を治療するために使用されうる。US2005/0100543では、二重特異性抗体の多価キャリアである標的可能コンストラクトが報告されており、すなわち、標的可能コンストラクト各分子が、2つ以上の二重特異性抗体のキャリアとして機能しうる。遺伝子操作された二重特異性四価抗体がWO1995/009917に報告されている。WO2007/109254では、安定化scFvから成る又は安定化scFvを含む安定化結合分子が報告されている。
【0021】
VEGF及びANG-2インヒビターの組合せ
WO2007/068895は、ANG-2アンタゴニスト及びVEGF、KDR及び/又はFLTLアンタゴニストの組合せを参照する。WO2007/089445は、ANG-2及びVEGFインヒビターの組合せを参照する。
【0022】
WO2003/106501は、アンジオポエチンに結合し、多量体化ドメインを有する融合タンパク質を参照する。WO2008/132568は、アンジオポエチン及びVEGFに結合する融合タンパク質に関する。WO2003/020906は、受容体の複数のリガンド結合ドメインを有する多価タンパク質コンジュゲートに関する。
【0023】
WO2009/136352は、抗血管新生化合物に関する。
【0024】
【発明の概要】
【0025】
発明は、ヒトVEGFに特異的に結合する第一抗原結合部位及びヒトANG-2に特異的に結合する第二抗原結合部位を含んでなる二重特異性二価抗体であって、
i)前記第一抗原結合部位が、重鎖可変ドメイン(VH)として配列番号:1、及び軽鎖可変ドメイン(VL)として配列番号:2を含み;
ii)前記第二抗原結合部位が、重鎖可変ドメイン(VH)として配列番号:3、及び軽鎖可変ドメイン(VL)として配列番号:4を含む
ことを特徴とする抗体に関する。
【0026】
発明の一態様では、発明による二重特異性抗体は、
a)VEGFに特異的に結合する第一完全長抗体の重鎖及び軽鎖;及び
b)定常ドメインCL及びCH1が互いに置換されている、ANG-2に特異的に結合する完全長抗体の修飾重鎖及び修飾軽鎖
を含んでなることを特徴とする。
【0027】
一実施態様では、このような二重特異性二価抗体は、
a)第一完全長抗体の重鎖として配列番号:7のアミノ酸配列、及び第一完全長抗体の軽鎖として配列番号:5のアミノ酸配列、及び
b)第二完全長抗体の修飾重鎖として配列番号:8のアミノ酸配列、及び第二完全長抗体の修飾軽鎖として配列番号:6のアミノ酸配列
を含んでなることを特徴とする。
【0028】
一実施態様では、このような二重特異性二価抗体は、
a)第一完全長抗体の重鎖として配列番号:11のアミノ酸配列、及び第一完全長抗体の軽鎖として配列番号:9のアミノ酸配列、及び
b)第二完全長抗体の修飾重鎖として配列番号:12のアミノ酸配列、及び第二完全長抗体の修飾軽鎖として配列番号:10のアミノ酸配列
を含んでなることを特徴とする。
【0029】
一実施態様では、このような二重特異性二価抗体は、
a)第一完全長抗体の重鎖として配列番号:15のアミノ酸配列、及び第一完全長抗体の軽鎖として配列番号:13のアミノ酸配列、及び
b)第二完全長抗体の修飾重鎖として配列番号:16のアミノ酸配列、及び第二完全長抗体の修飾軽鎖として配列番号:14のアミノ酸配列
を含んでなることを特徴とする。
【0030】
また、発明の更なる態様は、前記二重特異性抗体を含んでなる薬学的組成物、癌の治療のための前記組成物、癌の治療に対する医薬の製造のための前記二重特異性抗体の使用、癌を患っている患者の治療方法であって、かかる治療を必要としている患者に前記二重特異性抗体を投与することによる方法である。
【0031】
また、発明の更なる態様は、前記二重特異性抗体を含んでなる薬学的組成物、血管疾患の治療のための前記組成物、血管疾患の治療に対する医薬の製造のための前記二重特異性抗体の使用、血管疾患を患っている患者の治療方法であって、かかる治療を必要としている患者に前記二重特異性抗体を投与することによる方法である。
【0032】
発明の更なる態様は、発明による二重特異性抗体の鎖をコードする核酸分子である。
発明は更に、原核生物又は真核生物宿主細胞において前記核酸を発現可能な発明による前記核酸を有する発現ベクター、及び発明による二重特異性抗体の組換え生産のための、かかるベクターを有する宿主を提供する。
【0033】
発明は、発明によるベクターを含んでなる原核生物又は真核生物宿主細胞を更に含む。
【0034】
発明は更に、発明による二重特異性抗体の生産方法であって、原核生物又は真核生物宿主細胞において発明による核酸を発現させる工程、及び前記細胞又は細胞培養上清から前記二重特異性抗体を回収する工程を特徴とする方法含む。発明は更に、二重特異性抗体の生産のためのかかる方法によって得られる抗体を含む。
【0035】
従って、発明の一実施態様は、ヒトVEGFに特異的に結合する第一抗原結合部位、及びヒトANG-2に特異的に結合する第二抗原結合部位を含んでなる二重特異性二価抗体であって、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8のアミノ酸配列を含んでなることを特徴とする抗体である。
【0036】
従って、発明の一実施態様は、ヒトVEGFに特異的に結合する第一抗原結合部位、及びヒトANG-2に特異的に結合する第二抗原結合部位を含んでなる二重特異性二価抗体であって、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、及び配列番号:12のアミノ酸配列を含んでなることを特徴とする抗体である。
【0037】
従って、発明の一実施態様は、ヒトVEGFに特異的に結合する第一抗原結合部位、及びヒトANG-2に特異的に結合する第二抗原結合部位を含んでなる二重特異性二価抗体であって、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、及び配列番号:16のアミノ酸配列を含んでなることを特徴とする抗体である。
【0038】
発明による二重特異性二価抗体は、VEGF及びANG-2標的治療を必要としているヒト患者に対して利点を示す。発明による抗体は、このような疾患、特に癌を患っている患者に利益をもたらす非常に価値のある特性を有する。発明による二重特異性抗体は、腫瘍増殖及び/又は腫瘍血管新生又は血管疾患の阻害に非常に効果的である。発明による二重特異性二価<VEGF-ANG-2>抗体は、価値のある薬物動態/薬力学特性、例えば安定性、(例えば低用量で)良好な(すなわち、ゆっくりした)クリアランスを示す。
【0039】
発明による二重特異性抗体は、
a)腫瘍増殖阻害(例えば、発明による二重特異性抗体により、腫瘍停滞が、2つの単一特異性抗体の組合せと比較して低濃度ですでに得られ得る)(例えば、実施例9及び10のColo205及びKPL-4腫瘍モデルでは、腫瘍停滞が、10mg/kgのANG2i-LC06+10mg/kgのアバスチンの組合せと比較して、10mg/kgのXMAb1によってすでに得られた)、及び/又は
b)腫瘍血管新生又は血管疾患の阻害(例えば、発明による二重特異性抗体による最大抗血管新生効果が、2つの単一特異性抗体の組合せと比較して低濃度ですでに得られ得る)(例えば、実施例8のマウス角膜血管新生アッセイでは、最大抗血管新生効果が、10mg/kgのANG2i-LC06+10mg/kgのアバスチンの組合せと比較して、10mg/kgのXMAb1を用いて既に達成された)
において非常に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】ノブ-インツ-ホール修飾CH3ドメインを含むXMab例の例示的な二価二重特異性抗体フォーマット。
図2a】ノブ-インツ-ホール修飾CH3ドメインを含むOAscFab例の例示的な二価二重特異性抗体フォーマット。
図2b】ノブ-インツ-ホール修飾CH3ドメインを含むOAscXFab1などの例示的な二価二重特異性抗体フォーマット。
図2c】ノブ-インツ-ホール修飾CH3ドメインを含むOAscXFab2及びOAscXFab3などの例示的な二価二重特異性抗体フォーマット。
図3】VEGF(第一工程)、次いでhAng-2(第二工程)へ結合する<VEGF-Ang-2>XMab1の同時結合。
図4】結合活性mAb<Ang2/VEGF>抗体の定量化のELISA原理。
図5】結合活性<Ang2/VEGF>XMab1抗体の定量化のELISAのキャリブレーション曲線。
図6】マウス角膜血管新生アッセイ − 発明による二重特異性抗体の投与による、縁からVEGF勾配に向かう血管成長の阻害。
図7】マウス角膜血管新生アッセイ − 発明による二重特異性の投与による、縁からVEGF勾配に向かう血管新生/血管増殖の阻害 − 二重特異性<Ang2/VEGF>抗体XMab1、<Ang2>Mab ANG2i-LC06(LC06)、<VEGF>Mabベバシズマブ(アバスチン)、及びANG2i-LC06と<VEGF>Mabベバシズマブ(アバスチン)との組合せの比較。
図8】発明による二重特異性抗体によるヒト結腸直腸癌Colo205(小腫瘍)のマウス異種移植におけるインビボ腫瘍増殖阻害 − 二重特異性<Ang2/VEGF>抗体XMab1、<Ang2>Mab ANG2i-LC06(LC06)、<VEGF>Mabベバシズマブ(アバスチン)、及びANG2i-LC06と<VEGF>Mabベバシズマブ(アバスチン)との組合せの比較。
図9】発明による二重特異性抗体によるヒト結腸直腸癌Colo205(大腫瘍)のマウス異種移植におけるインビボ腫瘍増殖阻害 − 二重特異性<Ang2/VEGF>抗体XMab1、<Ang2>Mab ANG2i-LC06(LC06)、<VEGF>Mabベバシズマブ(アバスチン)、及びANG2i-LC06及び<VEGF>Mabベバシズマブ(アバスチン)の組合せの比較。
図10】発明による二重特異性抗体によるヒト乳癌KPL-4(小腫瘍)のマウス異種移植におけるインビボ腫瘍増殖阻害 − 二重特異性<Ang2/VEGF>抗体XMab1、<Ang2>Mab ANG2i-LC06(LC06)、<VEGF>Mabベバシズマブ(アバスチン)、及びANG2i-LC06と<VEGF>Mabベバシズマブ(アバスチン)との組合せの比較。
図11】発明による二重特異性抗体によるヒト乳癌KPL-4(大腫瘍)のマウス異種移植におけるインビボ腫瘍増殖阻害 − 二重特異性<Ang2/VEGF>抗体XMab1、<Ang2>Mab ANG2i-LC06(LC06)、<VEGF>Mabベバシズマブ(アバスチン)、及びANG2i-LC06と<VEGF>Mabベバシズマブ(アバスチン)との組合せの比較。
図12】発明による二重特異性抗体による胃癌N87のマウス異種移植におけるインビボ腫瘍増殖阻害 − 二重特異性<Ang2/VEGF>抗体XMab1、<Ang2>Mab ANG2i-LC06(LC06)、<VEGF>Mabベバシズマブ(アバスチン)、及びANG2i-LC06と<VEGF>Mabベバシズマブ(アバスチン)との組合せの比較。
【0041】
(発明の詳細な説明)
発明は、ヒトVEGFに特異的に結合する第一抗原結合部位及びヒトANG-2に特異的に結合する第二抗原結合部位を含んでなる二重特異性二価抗体であって、
i)前記第一抗原結合部位が、重鎖可変ドメイン(VH)として配列番号:1、及び軽鎖可変ドメイン(VL)として配列番号:2を含み;
ii)前記第二抗原結合部位が、重鎖可変ドメイン(VH)として配列番号:3、及び軽鎖可変ドメイン(VL)として配列番号:4を含む
ことを特徴とする抗体に関する。
【0042】
発明の一態様では、発明による二重特異性抗体は、
a)VEGFに特異的に結合する第一完全長抗体の重鎖及び軽鎖;
b)定常ドメインCL及びCH1が互いに置換されている、ANG-2に特異的に結合する完全長抗体の修飾重鎖及び修飾軽鎖
を含んでなることを特徴とする。
【0043】
ヒト血管内皮増殖因子及びヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)に特異的に結合する二重特異性抗体の二重特異性二価抗体フォーマットが、WO2009/080253に記載されている(図1の、ノブ-インツ-ホール修飾CH3ドメインを含む例示的スキームを参照のこと)。この二重特異性二価抗体フォーマットに基づく抗体は、本発明の実施例においてXMabと呼ばれる。
【0044】
一実施態様では、このような二重特異性二価抗体は、
a)第一完全長抗体の重鎖として配列番号:7のアミノ酸配列、及び第一完全長抗体の軽鎖として配列番号:5のアミノ酸配列、及び
b)第二完全長抗体の修飾重鎖として配列番号:8のアミノ酸配列、及び第二完全長抗体の修飾軽鎖として配列番号:6のアミノ酸配列
を含んでなることを特徴とする。
【0045】
一実施態様では、このような二重特異性二価抗体は、
a)第一完全長抗体の重鎖として配列番号:11のアミノ酸配列、及び第一完全長抗体の軽鎖として配列番号:9のアミノ酸配列、及び
b)第二完全長抗体の修飾重鎖として配列番号:12のアミノ酸配列、及び第二完全長抗体の修飾軽鎖として配列番号:10のアミノ酸配列
を含んでなることを特徴とする。
【0046】
一実施態様では、このような二重特異性二価抗体は、
a)第一完全長抗体の重鎖として配列番号:15のアミノ酸配列、及び第一完全長抗体の軽鎖として配列番号:13のアミノ酸配列、及び
b)第二完全長抗体の修飾重鎖として配列番号:16のアミノ酸配列、及び第二完全長抗体の修飾軽鎖として配列番号:14のアミノ酸配列
を含んでなることを特徴とする。
【0047】
一実施態様では、このような二重特異性二価抗体は、
a)第一完全長抗体の重鎖として配列番号:19のアミノ酸配列、及び第一完全長抗体の軽鎖として配列番号:17のアミノ酸配列、及び
b)第二完全長抗体の修飾重鎖として配列番号:20のアミノ酸配列、及び第二完全長抗体の修飾軽鎖として配列番号:18のアミノ酸配列
を含んでなることを特徴とする。
【0048】
一実施態様では、このような二重特異性二価抗体は、
a)第一完全長抗体の重鎖として配列番号:23のアミノ酸配列、及び第一完全長抗体の軽鎖として配列番号:21のアミノ酸配列、及び
b)第二完全長抗体の修飾重鎖として配列番号:24のアミノ酸配列、及び第二完全長抗体の修飾軽鎖として配列番号:22のアミノ酸配列
を含んでなることを特徴とする。
【0049】
一実施態様では、このような二重特異性二価抗体は、
a)第一完全長抗体の重鎖として配列番号:27のアミノ酸配列、及び第一完全長抗体の軽鎖として配列番号:25のアミノ酸配列、及び
b)第二完全長抗体の修飾重鎖として配列番号:28のアミノ酸配列、及び第二完全長抗体の修飾軽鎖として配列番号:26のアミノ酸配列
を含んでなることを特徴とする。
【0050】
従って、発明の一実施態様は、ヒトVEGFに特異的に結合する第一抗原結合部位、及びヒトANG-2に特異的に結合する第二抗原結合部位を含んでなる二重特異性二価抗体であって、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8のアミノ酸配列を含んでなることを特徴とする抗体である。
【0051】
従って、発明の一実施態様は、ヒトVEGFに特異的に結合する第一抗原結合部位、及びヒトANG-2に特異的に結合する第二抗原結合部位を含んでなる二重特異性二価抗体であって、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、及び配列番号:12のアミノ酸配列を含んでなることを特徴とする抗体である。
【0052】
従って、発明の一実施態様は、ヒトVEGFに特異的に結合する第一抗原結合部位、及びヒトANG-2に特異的に結合する第二抗原結合部位を含んでなる二重特異性二価抗体であって、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、及び配列番号:16のアミノ酸配列を含んでなることを特徴とする抗体である。
【0053】
従って、発明の一実施態様は、ヒトVEGFに特異的に結合する第一抗原結合部位、及びヒトANG-2に特異的に結合する第二抗原結合部位を含んでなる二重特異性二価抗体であって、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、及び配列番号:20のアミノ酸配列を含んでなることを特徴とする抗体である。
【0054】
従って、発明の一実施態様は、ヒトVEGFに特異的に結合する第一抗原結合部位、及びヒトANG-2に特異的に結合する第二抗原結合部位を含んでなる二重特異性二価抗体であって、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23、及び配列番号:24のアミノ酸配列を含んでなることを特徴とする抗体である。
【0055】
従って、発明の一実施態様は、ヒトVEGFに特異的に結合する第一抗原結合部位、及びヒトANG-2に特異的に結合する第二抗原結合部位を含んでなる二重特異性二価抗体であって、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27、及び配列番号:28のアミノ酸配列を含んでなることを特徴とする抗体である。
【0056】
発明の別の態様では、発明による二重特異性は、
a)VEGFに特異的に結合する第一完全長抗体の重鎖及び軽鎖;
b)重鎖のN末端が軽鎖のC末端にペプチドリンカーを介して連結されている、ANG-2に特異的に結合する第二完全長抗体の重鎖及び軽鎖
を含んでなることを特徴とする。
【0057】
ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)及びヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)に特異的に結合するこの二重特異性抗体のこの二重特異性二価抗体の例示的スキームを図2aに示し、ノブ-インツ-ホール修飾CH3ドメインを含む。この二重特異性二価抗体フォーマットに基づく抗体は、本発明の実施例においてOAscFabと呼ばれる。
【0058】
一実施態様では、このような二重特異性二価抗体は、
a)第一完全長抗体の重鎖として配列番号:30のアミノ酸配列、及び第一完全長抗体の軽鎖として配列番号:31のアミノ酸配列、及び
b)ペプチドリンカーを介して第二完全長抗体の軽鎖に連結される第二完全長抗体の重鎖として配列番号:29のアミノ酸配列
を含んでなることを特徴とする。
【0059】
一実施態様では、このような二重特異性二価抗体は、
a)第一完全長抗体の重鎖として配列番号:33のアミノ酸配列、及び第一完全長抗体の軽鎖として配列番号:34のアミノ酸配列、及び
b)ペプチドリンカーを介して第二完全長抗体の軽鎖に連結される第二完全長抗体の重鎖として配列番号:32のアミノ酸配列
を含んでなることを特徴とする。
【0060】
一実施態様では、第二完全長抗体の重及び軽鎖の抗体重鎖可変ドメイン(VH)及び抗体軽鎖可変ドメイン(VL)は、次の位置間へのジスルフィド結合の導入によってジスルフィド安定化される:重鎖可変ドメイン位置44から軽鎖可変ドメイン位置100(番号付けは常にKabatのEU indexに従う;(Kabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991))。このような更なるジスルフィド安定化は、第二完全長抗体重及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL間のジスルフィド結合の導入によって得られる。安定化のために非天然ジスルフィド架橋を導入する技術が、例えばWO94/029350, Rajagopal, V., et al, Prot. Engin. 10 (1997) 1453-59; Kobayashi, et al., Nuclear Medicine & Biology, Vol. 25 (1998) 387-393; or Schmidt, M., et al., Oncogene 18 (1999) 1711-1721に記載されている。
【0061】
従って一実施態様では、このような二重特異性二価抗体は、重鎖可変ドメイン位置44及び軽鎖可変ドメイン位置100間に、第二完全長抗体重及び軽鎖の可変ドメイン間のジスルフィド結合を含んでなることを特徴とし、また
a)第一完全長抗体の重鎖として配列番号:36のアミノ酸配列、及び第一完全長抗体の軽鎖として配列番号:37のアミノ酸配列、及び
b)ペプチドリンカーを介して第二完全長抗体の軽鎖に連結される第二完全長抗体の重鎖として配列番号:35のアミノ酸配列
を含む。
【0062】
発明の別の態様では、発明による二重特異性抗体は、
a)VEGFに特異的に結合する第一完全長抗体の重鎖及び軽鎖;
b)ANG-2に特異的に結合する第二完全長抗体の重鎖及び軽鎖
を含んでなることを特徴とし、
重鎖のN末端はペプチドリンカーによって軽鎖のC末端に結合され、
可変ドメインVL及びVHは互いに置換されている。
【0063】
ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)及びヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)に特異的に結合するこの二重特異性抗体のこの二重特異性二価抗体の例示的スキームを図2bに示し、ノブ-インツ-ホール修飾CH3ドメインを含む。この二重特異性二価抗体フォーマットに基づく抗体は、実施例においてOAscXFab1と呼ばれる。
【0064】
一実施態様では、このような二重特異性抗体は
a)第一完全長抗体の重鎖として配列番号:39、及び第一完全長抗体の軽鎖として配列番号:40、及び
b)ペプチドリンカーを介して第二完全長抗体の軽鎖に連結される第二完全長抗体の重鎖として配列番号:38
を含んでなることを特徴とする。
【0065】
発明の別の態様では、発明による二重特異性抗体は、
a)VEGFに特異的に結合する第一完全長抗体の重鎖及び軽鎖;
b)ANG-2に特異的に結合する第二完全長抗体の重鎖及び軽鎖
を含んでなることを特徴とし、
重鎖のN末端はペプチドリンカーによって軽鎖のC末端に結合され、
定常ドメインCL及びCH1は互いに置換されている。
【0066】
ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)及びヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)に特異的に結合するこの二重特異性抗体のこの二重特異性二価抗体の例示的スキームを図2cに示し、ノブ-インツ-ホール修飾CH3ドメインを含む。この二重特異性二価抗体フォーマットに基づく抗体は、実施例においてOAscXFab2及びOAscXFab3と呼ばれる。
【0067】
一実施態様では、このような二重特異性抗体は、
a)第一完全長抗体の重鎖として配列番号:42、及び第一完全長抗体の軽鎖として配列番号:43、及び
b)ペプチドリンカーを介して第二完全長抗体の軽鎖に連結される第二完全長抗体の重鎖として配列番号:41
を含んでなることを特徴とする。
【0068】
一実施態様では、このような二重特異性抗体は、
a)第一完全長抗体の重鎖として配列番号:45、及び第一完全長抗体の軽鎖として配列番号:46、及び
b)ペプチドリンカーを介して第二完全長抗体の軽鎖に連結される第二完全長抗体の重鎖として配列番号:44
を含んでなることを特徴とする。
【0069】
従って、発明の一実施態様は、ヒトVEGFに特異的に結合する第一抗原結合部位、及びヒトANG-2に特異的に結合する第二抗原結合部位を含んでなる二重特異性二価抗体であって、配列番号:29、配列番号:30、及び配列番号:31のアミノ酸配列を含んでなることを特徴とする抗体である。
【0070】
従って、発明の一実施態様は、ヒトVEGFに特異的に結合する第一抗原結合部位、及びヒトANG-2に特異的に結合する第二抗原結合部位を含んでなる二重特異性二価抗体であって、配列番号:32、配列番号:33、及び配列番号:34のアミノ酸配列を含んでなることを特徴とする抗体である。
【0071】
従って、発明の一実施態様は、ヒトVEGFに特異的に結合する第一抗原結合部位、及びヒトANG-2に特異的に結合する第二抗原結合部位を含んでなる二重特異性二価抗体であって、配列番号:35、配列番号:36、及び配列番号:37のアミノ酸配列を含んでなることを特徴とする抗体である。
【0072】
従って、発明の一実施態様は、ヒトVEGFに特異的に結合する第一抗原結合部位、及びヒトANG-2に特異的に結合する第二抗原結合部位を含んでなる二重特異性二価抗体であって、配列番号:38、配列番号:39、及び配列番号:40のアミノ酸配列を含んでなることを特徴とする抗体である。
【0073】
従って、発明の一実施態様は、ヒトVEGFに特異的に結合する第一抗原結合部位、及びヒトANG-2に特異的に結合する第二抗原結合部位を含んでなる二重特異性二価抗体であって、配列番号:41、配列番号:42、及び配列番号:43のアミノ酸配列を含んでなることを特徴とする抗体である。
【0074】
従って、発明の一実施態様は、ヒトVEGFに特異的に結合する第一抗原結合部位、及びヒトANG-2に特異的に結合する第二抗原結合部位を含んでなる二重特異性二価抗体であって、配列番号:44、配列番号:45、及び配列番号:46のアミノ酸配列を含んでなることを特徴とする抗体である。
【0075】
好ましくは、発明による二重特異性二価抗体のCH3ドメインは、例えばWO96/027011,Ridgway J.B., et al., Protein Eng 9 (1996) 617-621; and Merchant, A.M., et al., Nat Biotechnol 16 (1998) 677-681に幾つかの例と共に詳細に記載されてる「ノブ-インツ-ホール」技術によって変更される。この方法では、2つのCH3ドメインの相互作用面が、これらの2つのCH3ドメインを有する両重鎖のヘテロ二量体化を増加するように変更される。(2つの重鎖の)2つのCH3ドメインの各々は「ノブ」であり得、他方は「ホール」である。ジスルフィド架橋の導入はヘテロ二量体を安定化し(Merchant, A.M, et al., Nature Biotech 16 (1998) 677-681; Atwell, S., et al. J. Mol. Biol. 270 (1997) 26-35)、収率を増加させる。
【0076】
発明の好ましい態様では、発明による全ての二重特異性抗体は、
一重鎖のCH3ドメイン及び他方の重鎖のCH3ドメインが各々、抗体CH3ドメイン間のもとの接触面を含む接触面で会合することを特徴とし;
ここで前記接触面は二重特異性抗体の形成を促進するように変更されており、ここで変更は以下を特徴とする:
a) 一重鎖のCH3ドメインが変更され、
これにより、二重特異性抗体内で他方の重鎖のCH3ドメインのもとの接触面に会合する一重鎖のCH3ドメインのもとの接触面内で、
アミノ酸残基がより大きい側鎖体積を有するアミノ酸残基と置換され、これにより一重鎖のCH3ドメインの接触面内に隆起が生成され、これが他方の重鎖のCH3ドメインの接触面内のキャビティに配置可能となり、
また
b) 他方の重鎖のCH3ドメインが変更され、
これにより、二重特異性抗体内で第一CH3ドメインのもとの接触面と会合する第二CH3ドメインのもとの接触面内で
アミノ酸残基がより小さい側鎖体積を有するアミノ酸残基と置換され、これにより第二CH3ドメインの接触面内にキャビティが生成され、その中に第一CH3ドメインの接触面内の隆起が配置可能となる。
【0077】
このように、発明による抗体は好ましくは、
a)の完全長抗体の重鎖のCH3ドメイン及びb)の完全長抗体の重鎖のCH3ドメイン各々が、抗体CH3ドメイン間のもとの接触面における変更を含む接触面で会合することを特徴とし;ここで、
i)一方の重鎖のCH3ドメインにおいて
アミノ酸残基がより大きい側鎖体積を有するアミノ酸残基と置換されており、これにより一方の重鎖のCH3ドメインの接触面内に隆起が生成され、これが他方の重鎖のCH3ドメインの接触面内のキャビティに配置可能となり
また
ii)他方の重鎖のCH3ドメインにおいて
アミノ酸残基がより小さい側鎖体積を有するアミノ酸残基と置換されており、これにより第二CH3ドメインの接触面内にキャビティが生成され、その中に第一CH3ドメインの接触面内の隆起が配置可能となる。
【0078】
好ましくは、より大きい側鎖体積を有する前記アミノ酸残基はアルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)から成る群から選択される。
【0079】
好ましくは、より小さい側鎖体積を有する前記アミノ酸残基はアラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、バリン(V)から成る群から選択される。
【0080】
発明の一態様では、両CH3ドメインは、両CH3ドメイン間にジスルフィド架橋が形成されるように、各CH3ドメインの相応する位置へのアミノ酸としてシステイン(C)の導入により更に変更される。
【0081】
一実施態様では、二重特異性抗体は、「ノブ鎖」のCH3ドメインにT366W変異を、「ホール鎖」のCH3ドメインにT366S、L368A、Y407V変異を含む。CH3ドメイン間の更なる鎖間ジスルフィド架橋もまた使用され得(Merchant, A.M, et al., Nature Biotech 16 (1998) 677-681)、例えば、「ノブ鎖」のCH3ドメインへのY349C変異、及び「ホール鎖」のCH3ドメインへのE356C変異又はS354C変異の導入によりなされる。
【0082】
別の実施態様では、発明による二重特異性抗体は、2つのCH3ドメインの一方にY349C、T366W変異を、2つのCH3ドメインの他方にE356C、T366S、L368A、Y407V変異を含む。別の好ましい実施態様では、二重特異性抗体は、2つのCH3ドメインの一方にY349C、T366W変異を、2つのCH3ドメインの他方にS354C、T366S、L368A、Y407V変異を含む(一方のCH3ドメインにおける更なるY349C変異及び他方のCH3ドメインにおける更なるE356C又はS354C変異は鎖間ジスルフィド架橋を形成する)(番号付けは常にKabatのEU indexに従う; (Kabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)))。しかし、EP1870459A1に記載されるような他のノブ-イン-ホール技術も、代わりに又は追加として使用できる。従って、二重特異性抗体の別の例は、「ノブ鎖」のCH3ドメインにおけるR409D;K370E変異、及び「ホール鎖」のCH3ドメインにおけるD399K;E357K変異である(番号付けは常にKabatのEU indexに従う; (Kabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)))。
【0083】
別の実施態様では、二重特異性抗体は、「ノブ鎖」のCH3ドメインにT366W変異を、「ホール鎖」のCH3ドメインにT366S、L368A、Y407V変異を、更に「ノブ鎖」のCH3ドメインにR409D;K370E変異を、「ホール鎖」のCH3ドメインにD399K;E357K変異を含む。
【0084】
別の実施態様では、二重特異性抗体は、2つのCH3ドメインの一方にY349C、T366W変異を、2つのCH3ドメインの他方にS354C、T366S、L368A、Y407V変異を含み、又は前記三価二重特異性抗体は、2つのCH3ドメインの一方にY349C、T366W変異を、2つのCH3ドメインの他方にS354C、T366S、L368A、Y407V変異を、また更に「ノブ鎖」のCH3ドメインにR409D;K370E変異を、「ホール鎖」のCH3ドメインにD399K;E357K変異を含む。
【0085】
発明の一実施態様では、発明による二重特異性抗体は、一又は複数の次の特性を有することを特徴とする(実施例3〜7に記載されるアッセイにおいて決定される):
− 二重特異性二価抗体が、5nM以下の結合親和性のKD値でVEGFに結合する;
− 二重特異性二価抗体が、5nM以下の結合親和性のKD値でANG-2に結合する;
− 二重特異性二価抗体が、Tie2でトランスフェクトされたHEK293細胞におけるANG-2誘発Tie2リン酸化を、15nM以下のIC50で(一実施態様では、10nM以下のIC50で)阻害する;
− 二重特異性二価抗体が、Tie2へのANG-2の結合を20nM以下のIC50で(一実施態様では、15nM以下のIC50で)阻害する;
− 二重特異性二価抗体が、VEGF受容体へのVEGFの結合を20nM以下のIC50で(一実施態様では、15nM以下のIC50で)阻害する;
− 二重特異性二価抗体が、HUVEC細胞のVEGF誘発増殖を10nM以下のIC50で(一実施態様では、5nM以下のIC50で)阻害する。
【0086】
一実施態様では、二重特異性二価抗体は、ヒトVEGFに特異的に結合する第一抗原結合部位、及びヒトANG-2に特異的に結合する第二抗原結合部位を含んでなることを特徴とし、
i)前記第一抗原結合部位が、重鎖可変ドメイン(VH)として配列番号:1、及び軽鎖可変ドメイン(VL)として配列番号:2を含み;
ii)前記第二抗原結合部位が、重鎖可変ドメイン(VH)として配列番号:3、及び軽鎖可変ドメイン(VL)として配列番号:4を含む;
ことを特徴とし、
また、一又は複数の次の特性を有する(実施例3〜7に記載されるアッセイにおいて決定される):
− 二重特異性二価抗体が、5nM以下の結合親和性のKD値でVEGFに結合する;
− 二重特異性二価抗体が、5nM以下の結合親和性のKD値でANG-2に結合する;
− 二重特異性二価抗体が、Tie2でトランスフェクトされたHEK293細胞におけるANG-2誘発Tie2リン酸化を、15nM以下のIC50で(一実施態様では、10nM以下のIC50で)阻害する;
− 二重特異性二価抗体が、Tie2へのANG-2の結合を20nM以下のIC50で(一実施態様では、15nM以下のIC50で)阻害する;
− 二重特異性二価抗体が、VEGF受容体へのVEGFの結合を20nM以下のIC50で(一実施態様では、15nM以下のIC50で)阻害する;
− 二重特異性二価抗体が、HUVEC細胞のVEGF誘発増殖を10nM以下のIC50で(一実施態様では、5nM以下のIC50で)阻害する。
【0087】
発明の一態様では、発明によるこのような二重特異性抗体は、
a)VEGFに特異的に結合する第一完全長抗体の重鎖及び軽鎖;
b)定常ドメインCL及びCH1が互いに置換されている、ANG-2に特異的に結合する完全長抗体の修飾重鎖及び修飾軽鎖;
を含んでなることを特徴とし、
また、一又は複数の次の特性を有する(実施例3〜7に記載されるアッセイにおいて決定される):
− 二重特異性二価抗体が、5nM以下の結合親和性のKD値でVEGFに結合する;
− 二重特異性二価抗体が、5nM以下の結合親和性のKD値でANG-2に結合する;
− 二重特異性二価抗体が、Tie2でトランスフェクトされたHEK293細胞におけるANG-2誘発Tie2リン酸化を、15nM以下のIC50で(一実施態様では、10nM以下のIC50で)阻害する;
− 二重特異性二価抗体が、Tie2へのANG-2の結合を20nM以下のIC50で(一実施態様では、15nM以下のIC50で)阻害する;
− 二重特異性二価抗体が、VEGF受容体へのVEGFの結合を20nM以下のIC50で(一実施態様では、15nM以下のIC50で)阻害する;
− 二重特異性二価抗体が、HUVEC細胞のVEGF誘発増殖を10nM以下のIC50で(一実施態様では、5nM以下のIC50で)阻害する。
【0088】
一実施態様では、二重特異性二価抗体は、ヒトVEGFに特異的に結合する第一抗原結合部位、及びヒトANG-2に特異的に結合する第二抗原結合部位を含んでなることを特徴とし、
i)前記第一抗原結合部位が、重鎖可変ドメイン(VH)として配列番号:1(CDRに1以下のアミノ酸残基置換を有する)、軽鎖可変ドメイン(VL)として配列番号:2(CDRに1以下のアミノ酸残基置換を有する)を含み;
ii)前記第二抗原結合部位が、重鎖可変ドメイン(VH)として配列番号:3(CDRに1以下のアミノ酸残基置換を有する)、軽鎖可変ドメイン(VL)として配列番号:4(CDRに1以下のアミノ酸残基置換を有する)を含む
ことを特徴とする。
【0089】
一実施態様では、二重特異性二価抗体は、ヒトVEGFに特異的に結合する第一抗原結合部位、及びヒトANG-2に特異的に結合する第二抗原結合部位を含んでなることを特徴とし、
i)前記第一抗原結合部位が、重鎖可変ドメイン(VH)として配列番号:1(CDRに1以下のアミノ酸残基置換を有する)、軽鎖可変ドメイン(VL)として配列番号:2(CDRに1以下のアミノ酸残基置換を有する)を含み;
ii)前記第二抗原結合部位が、重鎖可変ドメイン(VH)として配列番号:3(CDRに1以下のアミノ酸残基置換を有する)、軽鎖可変ドメイン(VL)として配列番号:4(CDRに1以下のアミノ酸残基置換を有する)を含む;
ことを特徴とし、
また、一又は複数の次の特性を有する(実施例3〜7に記載されるアッセイにおいて決定される):
− 二重特異性二価抗体が、5nM以下の結合親和性のKD値でVEGFに結合する;
− 二重特異性二価抗体が、5nM以下の結合親和性のKD値でANG-2に結合する;
− 二重特異性二価抗体が、Tie2でトランスフェクトされたHEK293細胞におけるANG-2誘発Tie2リン酸化を、15nM以下のIC50で(一実施態様では、10nM以下のIC50で)阻害する;
− 二重特異性二価抗体が、Tie2へのANG-2の結合を20nM以下のIC50で(一実施態様では、15nM以下のIC50で)阻害する;
− 二重特異性二価抗体が、VEGF受容体へのVEGFの結合を20nM以下のIC50で(一実施態様では、15nM以下のIC50で)阻害する;
− 二重特異性二価抗体が、HUVEC細胞のVEGF誘発増殖を10nM以下のIC50で(一実施態様では、5nM以下のIC50で)阻害する。
【0090】
発明の一態様では、発明による二重特異性抗体は、
a)VEGFに特異的に結合する第一完全長抗体の重鎖及び軽鎖、
ここで、第一完全長抗体の重鎖が配列番号:7のアミノ酸配列を含み(CDRに1以下のアミノ酸残基置換を有する)、第一完全長抗体の軽鎖が配列番号:5のアミノ酸配列を含む(CDRに1以下のアミノ酸残基置換を有する)、及び
b)定常ドメインCL及びCH1が互いに置換されている、ANG-2に特異的に結合する完全長抗体の修飾重鎖及び修飾軽鎖、
ここで、第二完全長抗体の修飾重鎖が配列番号:8のアミノ酸配列を含み(CDRに1以下のアミノ酸残基置換を有する)、第二完全長抗体の修飾軽鎖が配列番号:6のアミノ酸配列を含む(CDRに1以下のアミノ酸残基置換を有する)
を含んでなることを特徴とする。
【0091】
発明の一態様では、発明による二重特異性抗体は、
a)VEGFに特異的に結合する第一完全長抗体の重鎖及び軽鎖、
ここで、第一完全長抗体の重鎖が配列番号:7のアミノ酸配列を含み(CDRに1以下のアミノ酸残基置換を有する)、第一完全長抗体の軽鎖が配列番号:5のアミノ酸配列を含む(CDRに1以下のアミノ酸残基置換を有する)、及び
b)定常ドメインCL及びCH1が互いに置換されている、ANG-2に特異的に結合する完全長抗体の修飾重鎖及び修飾軽鎖、
ここで、第二完全長抗体の修飾重鎖が配列番号:8のアミノ酸配列を含み(CDRに1以下のアミノ酸残基置換を有する)、第二完全長抗体の修飾軽鎖が配列番号:6のアミノ酸配列を含む(CDRに1以下のアミノ酸残基置換を有する);
を含んでなることを特徴とし、
また、一又は複数の次の特性を有する(実施例3〜7に記載されるアッセイにおいて決定される):
− 二重特異性二価抗体が、5nM以下の結合親和性のKD値でVEGFに結合する;
− 二重特異性二価抗体が、5nM以下の結合親和性のKD値でANG-2に結合する;
− 二重特異性二価抗体が、Tie2でトランスフェクトされたHEK293細胞におけるANG-2誘発Tie2リン酸化を、15nM以下のIC50で(一実施態様では、10nM以下のIC50で)阻害する;
− 二重特異性二価抗体が、Tie2へのANG-2の結合を20nM以下のIC50で(一実施態様では、15nM以下のIC50で)阻害する;
− 二重特異性二価抗体が、VEGF受容体へのVEGFの結合を20nM以下のIC50で(一実施態様では、15nM以下のIC50で)阻害する;
− 二重特異性二価抗体が、HUVEC細胞のVEGF誘発増殖を10nM以下のIC50で(一実施態様では、5nM以下のIC50で)阻害する。
【0092】
ここで使用される場合、「抗体」とは、抗原結合部位を含む結合タンパク質を指す。「結合部位」又は「抗原結合部位」なる用語は、ここで使用される場合、リガンドが実際に結合する抗体分子の領域を意味する。「抗原結合部位」なる用語は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)及び抗体軽鎖可変ドメイン(VL)(VH/VL)の対)を含む。
【0093】
抗体特異性とは、抗原の特定のエピトープに対する抗体の選択的認識を指す。天然抗体は、例えば、単一特異性である。
【0094】
発明による「二重特異性抗体」は、2つの異なる抗原結合特異性を有する抗体である。本発明の抗体は、2つの異なる抗原、第一抗原としてVEGF、及び第二抗原としてANG-2、に特異的である。
【0095】
「単一特異性」抗体なる用語は、ここで使用される場合、各々が同じ抗原の同じエピトープに結合する一又は複数の結合部位を有する抗体を意味する。
【0096】
「価」なる用語は、本出願内で使用される場合、抗体分子における特定数の結合部位の存在を意味する。従って、「二価」、「四価」、及び「六価」なる用語は、抗体分子における2つの結合部位、4つの結合部位、及び6つの結合部位の存在をそれぞれ意味する。発明による二重特異性抗体は「二価」である。
【0097】
「VEGF」なる用語は、ここで使用される場合、ヒト血管内皮増殖因子(VEGF/VEGF-A)(配列番号:47)を指し、例えばLeung, D.W., et al., Science 246 (1989) 1306-9; Keck, P.J., et al., Science 246 (1989) 1309-12 and Connolly, D.T., et al., J. Biol. Chem. 264 (1989) 20017-24に記載されている。VEGFは、正常及び異常血管新生の制御、及び腫瘍及び眼内疾患に伴う新生血管に関与する(Ferrara, N., et al., Endocr. Rev. 18 (1997) 4-25; Berkman, R.A., et al., J. Clin. Invest. 91 (1993) 153-159; Brown, L.F., et al., Human Pathol. 26 (1995) 86-91; Brown, L.F., et al., Cancer Res. 53 (1993) 4727-4735; Mattern, J., et al., Brit. J. Cancer. 73 (1996) 931-934; and Dvorak, H.F., et al., Am. J. Pathol. 146 (1995) 1029-1039)。VEGFは、幾つかの供給源から単離されたホモ二量体糖タンパク質である。VEGFは、内皮細胞に対し特異性の高いマイトジェン活性を示す。
【0098】
「ANG-2」なる用語は、ここで使用される場合、ヒトアンジオポエチン-2(あるいはANGPT2又はANG2と略称される)(配列番号:48)を指し、Maisonpierre, P.C., et al, Science 277 (1997) 55-60 and Cheung, A.H., et al., Genomics 48 (1998) 389-91に記載されている。アンジオポエチン-1及び-2(ANG-1(配列番号:107)及びANG-2(配列番号:106))は、血管内皮に選択的に発現されるチロシンキナーゼのファミリーであるTieに対するリガンドとして発見された。Yancopoulos, G.D., et al., Nature 407 (2000) 242-48。現在、アンジオポエチンファミリーの4つの確定メンバーがある。アンジオポエチン-3及び-4(Ang-3及びAng-4)は、マウス及びヒトにおける同じ遺伝子座の広く分岐したカウンターパートを表しうる。Kim, I., et al., FEBS Let, 443 (1999) 353-56; Kim, I., et al., J Biol Chem 274 (1999) 26523-28。ANG-1及びANG-2はもともと、組織培養実験において、アゴニスト及びアンタゴニストとしてそれぞれ同定された(ANG-1については: Davis, S., et al., Cell 87 (1996) 1161-69;ANG-2については: Maisonpierre, P.C., et al., Science 277 (1997) 55-60を参照のこと)。全ての知られているアンジオポエチンは主にTie2に結合し、Ang-1及び-2は双方とも3nMの親和性(Kd)でTie2に結合する。Maisonpierre, P.C., et al., Science 277 (1997) 55-60。
【0099】
発明の二重特異性抗体の抗原結合部位は、抗原に対する結合部位の親和性に異なる度合で寄与する6つの相補性決定領域(CDR)を含む。3つの重鎖可変ドメインCDR(CDRH1、CDRH2及びCDRH3)及び3つの軽鎖可変ドメインCDR(CDRL1、CDRL2及びCDRL3)がある。CDR及びフレームワーク領域(FR)の度合は、それらの領域が配列間の可変性に従って決定されている、アミノ酸配列の収集データベースとの比較によって決定される。また、発明の範囲内に含まれるものは、より少ないCDRから成る機能的抗原結合部位である(すなわち、結合特異性が3、4又は5つのCDRによって決定される)。例えば、6つのCDRの完全なセット未満が、結合に十分でありうる。幾つかの場合では、VH又はVLドメインで十分であろう。
【0100】
発明の抗体は、一又は複数の免疫グロブリンクラスの免疫グロブリン定常領域を更に含む。免疫グロブリンクラスは、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEアイソタイプ、またIgG及びIgAの場合にはそれらのサブタイプを含む。
【0101】
「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」なる用語は、ここで使用される場合、単一アミノ酸組成の抗体分子の調製物を指す。
【0102】
「キメラ抗体」なる用語は、一供給源又は種からの可変領域、すなわち結合領域、及び異なる供給源又は種由来の定常領域の少なくとも一部を含んでなる抗体を指し、通常は組換えDNA技術によって調製される。マウス可変領域及びヒト定常領域を含んでなるキメラ抗体が好ましい。本発明によって包含される「キメラ抗体」の他の好ましい形態は、発明による特性を作成するために、特にC1q結合及び/又はFc受容体(FcR)結合に関して、定常領域がもとの抗体の形態から修飾又は変化されたものである。このようなキメラ抗体は「クラス-スイッチ抗体」とも呼ばれる。キメラ抗体は、免疫グロブリン可変領域をコードしているDNAセグメント及び免疫グロブリン定常領域をコードしているDNAセグメントを含んでなる免疫グロブリン遺伝子の発現の産物である。キメラ抗体の生産方法は一般的な組換えDNAを含み、遺伝子トランスフェクション技術は当分野でよく知られている。例えばMorrison, S.L., et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81 (1984) 6851-6855; US5,202,238及びUS5,204,244を参照のこと。
【0103】
「ヒト化抗体」なる用語は、フレームワーク又は「相補性決定領域」(CDR)が、親免疫グロブリンのものと比較して異なる特異性の免疫グロブリンのCDRを含むように修飾された抗体を指す。好ましい実施態様では、マウスCDRがヒト抗体のフレームワーク領域に移植され、「ヒト化抗体」が調製される。例えば、Riechmann, L., et al., Nature 332 (1988) 323-327; and Neuberger, M.S., et al., Nature 314 (1985) 268-270を参照のこと。特に好ましいCDRは、キメラ抗体について上述した抗原を認識する配列を表すものに相応する。本発明によって包含される「ヒト化抗体」の他の形態は、発明による特性を作成するために、特にC1q結合及び/又はFc受容体(FcR)結合に関して、定常領域がもとの抗体の形態からさらに修飾又は変化されたものである。
【0104】
「ヒト抗体」なる用語は、ここで使用される場合、ヒト生殖系免疫グロブリン配列由来の可変及び定常領域を有する抗体を含むことが意図される。ヒト抗体は、当分野の水準においてよく知られている(van Dijk, M.A., and van de Winkel, J.G., Curr. Opin. Chem. Biol. 5 (2001) 368-374)。ヒト抗体はまた、内因性免疫グロブリン産生なく、免疫化によりヒト抗体の完全レパートリー又はセレクションを産生可能なトランスジェニック動物(例えばマウス)において産生されうる。このような生殖系変異体マウスにおけるヒト生殖系免疫グロブリン遺伝子アレイの移入は、抗原チャレンジによりヒト抗体の産生を生じるだろう(例えば、Jakobovits, A., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90 (1993) 2551-2555; Jakobovits, A., et al., Nature 362 (1993) 255-258; Brueggemann, M., et al., Year Immunol. 7 (1993) 33-40を参照のこと)。ヒト抗体はファージディスプレイライブラリにおいても生産されうる(Hoogenboom, H.R., and Winter, G., J. Mol. Biol. 227 (1992) 381-388; Marks, J.D., et al., J. Mol. Biol. 222 (1991) 581-597)。また、Cole, A., et al. and Boerner, P., et al.の技術もヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である(Cole, A., et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Liss, A.L., p. 77 (1985); and Boerner, P., et al., J. Immunol. 147 (1991) 86-95)。発明によるキメラ及びヒト化抗体について既に述べたように、「ヒト抗体」なる用語は、ここで使用される場合、発明による特性を作成するために、特にC1q結合及び/又はFcR結合に関して、例えば「クラススイッチング」、すなわちFc部分の変更又は変異によって(例えばIgG1からIgG4及び/又はIgG1/IgG4変異)、定常領域において修飾されたそのような抗体も含む。
【0105】
「組換えヒト抗体」なる用語は、ここで使用される場合、組換え手段によって調製、発現、作成又は単離される全てのヒト抗体を含むことを意図し、例えば、NS0又はCHO細胞などの宿主細胞から、又はヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックである動物(例えばマウス)から単離される抗体、又は宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを用いて発現される抗体である。このような組換えヒト抗体は、再編成形態において可変及び定常領域を有する。発明による組換えヒト抗体は、インビボ体細胞超変異を受けている。このように、組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系VH及びVL配列に由来し関連するが、インビボでヒト抗体生殖系レパートリー内に天然には存在しない場合がある配列である。
【0106】
「可変ドメイン」(軽鎖の可変ドメイン(VL)、重鎖の可変ドメイン(VH))は、ここで使用される場合、抗原への抗体の結合に直接関与する軽及び重鎖の対のそれぞれを意味する。可変ヒト軽及び重鎖のドメインは同じ一般構造を有し、各ドメインは、3つの「超可変領域」(又は相補性決定領域、CDR)によって連結される、配列が広く保存された4つのフレームワーク(FR)領域を含む。フレームワーク領域はβ-シートコンホメーションを採用し、CDRはβ-シート構造を連結するループを形成しうる。各鎖におけるCDRはフレームワーク領域によりそれらの三次元構造に保たれ、他の鎖のCDRと共に抗原結合部位を形成する。抗体重及び軽鎖CDR3領域は、発明による抗体の結合特異性/親和性において特に重要な役割を果たし、従って、発明の更なる目的を提供する。
【0107】
「超可変領域」又は「抗体の抗原結合部」なる用語は、ここで使用される場合、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基を含む。「フレームワーク」又は「FR」領域は、ここで定義される超可変領域残基以外のそれらの可変ドメイン領域である。従って、抗体の軽及び重鎖は、N-からC-末端へ、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4を含む。各鎖上のCDRは、このようなフレームワークアミノ酸によって分けられている。特に、重鎖のCDR3が、抗原結合に最も寄与する領域である。CDR及びFR領域は、Kabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991) (KabatのEU Indexによる番号付け(以下、Kabatによる番号付けと略す)を含む)の標準定義に従って決定される。
【0108】
ここで使用される場合、「結合する」又は「特異的に結合する」なる用語は、インビトロアッセイ、好ましくは精製野生型抗原を用いるプラズモン共鳴アッセイ(BIAcore, GE-Healthcare Uppsala, Sweden) (実施例3)における、抗原(ヒトVEGF又はヒトANG-2何れか)のエピトープへの抗体の結合を指す。結合の親和性は、ka(抗体/抗原複合体からの抗体の会合に対する速度定数)、k(解離定数)、及びK(k/ka)なる用語によって定義される。一実施態様では、結合又は特異的な結合は、10−8mol/l以下、好ましくは10−9M〜10−13mol/lの結合親和性(K)を意味する。
【0109】
「エピトープ」なる用語は、抗体に特異的に結合できる何れかのポリペプチド決定因子を含む。ある実施態様では、エピトープ決定因子は分子の化学的活性表面群、例えばアミノ酸、糖側鎖、ホスホリル、又はスルホニルを含み、ある実施態様では、特定の三次元構造特性、及び/又は特定の電荷特性を有しうる。エピトープは、抗体によって結合される抗原の領域である。
【0110】
ある実施態様では、抗体は、それが、タンパク質及び/又は巨大分子の複合混合物においてその標的抗原を優先的に認識する場合、抗原を特異的に結合すると言われる。
【0111】
「完全長抗体」なる用語は、2つの「完全長抗体重鎖」及び2つの「完全長抗体軽鎖」から成る抗体を意味する(図1を参照)。「完全長抗体重鎖」は、N末端からC末端方向に、VH-CH1-HR-CH2-CH3と略される、抗体重鎖可変ドメイン(VH)、抗体定常重鎖ドメイン1(CH1)、抗体ヒンジ領域(HR)、抗体重鎖定常ドメイン2(CH2)、抗体重鎖定常ドメイン3(CH3);及び場合によってはサブクラスIgEの抗体の場合は抗体重鎖定常ドメイン4(CH4)から成るポリペプチドである。好ましくは、「完全長抗体重鎖」は、N末端からC末端方向に、VH、CH1、HR、CH2及びCH3からなるポリペプチドである。「完全長抗体軽鎖」は、N末端からC末端方向に、VL-CLと略される、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、及び抗体軽鎖定常ドメイン(CL)から成るポリペプチドである。抗体軽鎖定常ドメイン(CL)は、κ(カッパ)又はλ(ラムダ)でありうる。2つの完全長抗体鎖は、CLドメイン及びCH1ドメイン間、及び完全長抗体重鎖のヒンジ領域間を、ポリペプチド間ジスルフィド結合によって結合される。典型的な完全長抗体の例は、IgG(例えばIgG1及びIgG2)、IgM、IgA、IgD、及びIgEなどの天然抗体である。発明による完全長抗体は、単一種、例えばヒトからであり得、又はそれらはキメラ又はヒト化抗体でありうる。発明による完全長抗体は、各々がVH及びVLの対によって形成される2つの抗原結合部位を含み、その双方は同じ抗原に特異的に結合する。前記完全長抗体の重又は軽鎖のC末端は、前記重又は軽鎖のC末端の最後のアミノ酸を意味する。前記完全長抗体の重又は軽鎖のN末端は、前記重又は軽鎖のN末端の最後のアミノ酸を意味する。
【0112】
「ペプチドリンカー」なる用語は、発明内で使用される場合、好ましくは合成起源のアミノ酸配列を有するペプチドを意味する。発明によるこれらのペプチドは、ペプチドリンカーにより、第二完全長抗体(第二抗原に特異的に結合する)の重鎖のN末端に軽鎖のC末端を結合するために使用される。第二完全長抗体重及び軽鎖内のペプチドリンカーは、少なくとも30アミノ酸の長さ、好ましくは32〜50アミノ酸の長さを有するアミノ酸配列のペプチドである。一つでは、ペプチドリンカーは、32〜40アミノ酸の長さを有するアミノ酸配列のペプチドである。一実施態様では、前記リンカーは(GxS)nであり、G=グリシン、S=セリン、(x=3、n=8、9又は10及びm=0、1、2又は3)又は(x=4及びn=6、7又は8及びm=0、1、2又は3)、好ましくはx=4、n=6又は7及びm=0、1、2又は3、より好ましくはx=4、n=7及びm=2である。一実施態様では、前記リンカーは(GS)である。
【0113】
「定常領域」なる用語は、本出願内で使用される場合、可変領域以外の抗体のドメインの和を意味する。定常領域は、抗原の結合に直接関与しないが、様々なエフェクター機能を呈する。それらの重鎖の定常領域のアミノ酸配列に応じて、抗体は、クラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMに分けられ、これらの幾つかは、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4、IgA1及びIgA2などのサブクラスに更に分けられうる。異なるクラスの抗体に対応する重鎖定常領域は、それぞれα、δ、ε、γ、及びmと呼ばれる。5つの抗体クラス全てに見られる軽鎖定常領域はk(カッパ)及びλ(ラムダ)と呼ばれる。
【0114】
「ヒト起源由来定常領域」なる用語は、本出願において使用される場合、サブクラスIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4のヒト抗体の定常重鎖領域及び/又は定常軽鎖カッパ又はラムダ領域を意味する。このような定常領域は当分野の水準においてよく知られており、例えばKabat, E.A.に記載されている(例えばJohnson, G., and Wu, T.T., Nucleic Acids Res. 28 (2000) 214-218; Kabat, E.A., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 72 (1975) 2785-2788を参照)。
【0115】
好ましくは、発明による二重特異性二価抗体は、ヒトIgG1サブクラスの定常領域を有する。
【0116】
IgG4サブクラスの抗体は低減されたFc受容体(FcγRIIIa)結合を示すが、他IgGサブクラスの抗体は結合を示す。しかしながら、Pro238、Asp265、Asp270、Asn297 (Fc糖質欠如)、Pro329、Leu234、Leu235、Gly236、Gly237、Ile253、Ser254、Lys288、Thr307、Gln311、Asn434、及びHis435は、変更されると、同様に低減されたFc受容体結合を提供する残基である(Shields, R.L., et al., J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604; Lund, J., et al., FASEB J. 9 (1995) 115-119; Morgan, A., et al., Immunology 86 (1995) 319-324; EP0307434)。
【0117】
一実施態様では、発明による抗体は、IgG1抗体と比較して低減されたFcR結合を有し、二重特異性二価抗体は、S228、L234、L235及び/又はD265において変異を有するIgG4サブクラス又はIgG1サブクラスのFcRに関して、及び/又はPVA236変異を有する。
【0118】
発明の別の態様では、二重特異性二価抗体は、
a)第一抗原に特異的に結合する第一完全長抗体の重鎖及び軽鎖;
b)第二抗原に特異的に結合する第二完全長抗体の重鎖及び軽鎖
を含んでなることを特徴とし、
重鎖のN末端はペプチドリンカーによって軽鎖のC末端に結合され、
可変ドメインVL及びVH、又は定常ドメインCL及びCH1は互いに置換されている。
【0119】
好ましくは、この二重特異性二価抗体フォーマットのCH3ドメインは、例えばWO96/027011, Ridgway J.B., et al., Protein Eng 9 (1996) 617-621; and Merchant, A.M., et al., Nat Biotechnol 16 (1998) 677-681に幾つかの例と共に詳細に記載されてる「ノブ-インツ-ホール」技術によって変更される。この方法では、2つのCH3ドメインの相互作用面は、これらの2つのCH3ドメインを有する両重鎖のヘテロ二量体化を増加するように変更される。(2つの重鎖の)2つのCH3ドメインの各々は「ノブ」であり得、他方は「ホール」である。ジスルフィド架橋の導入はヘテロ二量体を安定化し(Merchant, A.M, et al., Nature Biotech 16 (1998) 677-681; Atwell, S., et al. J. Mol. Biol. 270 (1997) 26-35)、収率を増加させる。更なる詳細及び実施態様については、上記を参照のこと。
【0120】
発明の別の態様では、二重特異性二価抗体は、
a) 第一抗原に特異的に結合する第一完全長抗体の重鎖及び軽鎖;
b) 第二抗原に特異的に結合する第二完全長抗体の重鎖及び軽鎖
を含んでなることを特徴とし、
重鎖のN末端はペプチドリンカーによって軽鎖のC末端に結合され、
可変ドメインVL及びVHは互いに置換されている。
【0121】
二重特異性二価抗体フォーマットの例示的スキームが図2bに示され、ノブ−インツ−ホール修飾CH3ドメインを含む。この二重特異性二価抗体フォーマットに基づく抗体は、実施例においてOAscXFab1と呼ばれる。
【0122】
一実施態様では、このような二重特異性抗体は、
a)第一完全長抗体の重鎖として配列番号:39、及び第一完全長抗体の軽鎖として配列番号:40、及び
b)ペプチドリンカーを介して第二完全長抗体の軽鎖に連結される第二完全長抗体の重鎖として配列番号:38
を含んでなることを特徴とする。
【0123】
発明の別の態様はでは、二重特異性二価抗体は、
a)第一抗原に特異的に結合する第一完全長抗体の重鎖及び軽鎖;
a)第二抗原に特異的に結合する第二完全長抗体の重鎖及び軽鎖、
を含んでなることを特徴とし、
重鎖のN末端はペプチドリンカーによって軽鎖のC末端に結合され、
定常ドメインCL及びCH1は互いに置換されている。
【0124】
二重特異性二価抗体フォーマットの例示的スキームが図2cに示され、ノブ-インツ-ホール修飾CH3ドメインを含む。この二重特異性二価抗体フォーマットに基づく抗体は、実施例においてOAscXFab2及びOAscXFab3と呼ばれる。
【0125】
一実施態様では、このような二重特異性抗体は、
a)第一完全長抗体の重鎖として配列番号:42、及び第一完全長抗体の軽鎖として配列番号:43、及び
b)ペプチドリンカーを介して第二完全長抗体の軽鎖に連結される第二完全長抗体の重鎖として配列番号:41
を含んでなることを特徴とする。
【0126】
一実施態様では、このような二重特異性抗体は、
a)第一完全長抗体の重鎖として配列番号:45、及び第一完全長抗体の軽鎖として配列番号:46、及び
b)ペプチドリンカーを介して第二完全長抗体の軽鎖に連結される第二完全長抗体の重鎖として配列番号:44
を含んでなることを特徴とする。
【0127】
発明による抗体は、組換え手段によって生産される。このように、本発明の一態様は、発明による抗体をコードする核酸であり、更なる態様は、発明による抗体をコードする前記核酸を含んでなる細胞である。組換え生産のための方法は当分野の水準で広く知られており、原核生物及び真核生物細胞におけるタンパク質発現、及びその後の抗体ポリペプチドの単離、そして通常は薬学的に許容可能な純度までの精製を含む。宿主細胞における上述の抗体の発現については、それぞれの修飾された軽及び重鎖をコードする核酸が、標準的な方法によって発現ベクターに挿入される。発現は、適切な原核生物又は真核生物宿主細胞、例えばCHO細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、HEK293細胞、COS細胞、PER.C6細胞、酵母、又は大腸菌細胞において実施され、抗体が該細胞(上澄又は溶解後の細胞)から回収される。抗体の組換え生産の一般的な方法は当分野の水準においてよく知られており、例えば、Makrides, S.C., Protein Expr. Purif. 17 (1999) 183-202; Geisse, S., et al., Protein Expr. Purif. 8 (1996) 271-282; Kaufman, R.J., Mol. Biotechnol. 16 (2000) 151-160; Werner, R.G., Drug Res. 48 (1998) 870-880の総説に記載されている。
【0128】
従って、発明の一実施態様は、発明による二重特異性抗体の調製方法であって、
a)前記抗体をコードしている核酸分子を含んでなるベクターを用いて宿主細胞を形質転換する工程;
b)前記抗体分子の合成を可能にする条件下で該宿主細胞を培養する工程;及び
c)前記培養物から前記抗体分子を回収する工程
を含んでなる。
【0129】
二重特異性抗体は、例えば、プロテインA-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィーなどの一般的な免疫グロブリン精製方法によって、培養培地から適切に分離される。モノクローナル抗体をコードしているDNA及びRNAは、一般的な手順を使用して容易に単離及び配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNA及びRNAの供給源としての役割を果たす。一旦単離されると、DNAは発現ベクターに挿入され得、次いでこれは他に免疫グロブリンタンパク質を産生しないHEK293細胞、CHO細胞、又は骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトされ、宿主細胞において組換えモノクローナル抗体の合成が得られる。
【0130】
二重特異性抗体のアミノ酸配列変異体(又はミュータント)は、適切なヌクレオチド変化を抗体DNAに導入することによって、又はヌクレオチド合成によって調製される。このような修飾は、しかしながら、非常に限られた範囲においてのみ実施されうる。例えば、修飾は、IgGアイソタイプ及び抗原結合などの上述の抗体特性を変更しないが、組換え生産の収率、タンパク質安定性を改善し得、又は精製を容易にしうる。
【0131】
「宿主細胞」なる用語は、本出願において使用される場合、本発明による抗体を生成するために操作されうる任意の細胞システムを意味する。一実施態様では、HEK293細胞及びCHO細胞が宿主細胞として使用される。ここで使用される場合、「細胞」、「細胞株」、及び「細胞培養物」なる表現は互換可能に使用され、かかる全ての表現は子孫を含む。従って、「形質転換体」及び「形質転換細胞」なる言葉は、転換の回数に関わらず、一次対象細胞及びそれらに由来する培養物を含む。また、全ての子孫が、故意又は偶発の変異により、DNA内容物において正確に同一ではない場合があることが理解される。もともとの形質転換細胞に対してスクリーニングされるのと同じ機能又は生物学的活性を有する変異体子孫が含まれる。
【0132】
NS0細胞における発現は、例えばBarnes, L.M., et al., Cytotechnology 32 (2000) 109-123; Barnes, L.M., et al., Biotech. Bioeng. 73 (2001) 261-270に記載されている。一過性発現は、例えばDurocher, Y., et al., Nucl. Acids. Res. 30 (2002) E9に記載されている。可変ドメインのクローニングは、Orlandi, R., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86 (1989) 3833-3837; Carter, P., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89 (1992) 4285-4289; and Norderhaug, L., et al., J. Immunol. Methods 204 (1997) 77-87に記載されている。好ましい一過性発現システム(HEK 293)は、Schlaeger, E.-J., and Christensen, K., in Cytotechnology 30 (1999) 71-83 and by Schlaeger, E.-J., in J. Immunol. Methods 194 (1996) 191-199に記載されている。
【0133】
原核生物に適したコントロール配列は、例えば、プロモーター、場合によってはオペレーター配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核生物細胞は、プロモーター、エンハンサー及びポリアデニル化シグナルを利用することが知られている。
【0134】
核酸は、別の核酸配列と機能的関係で配されている場合、「作用可能に連結」されている。例えば、プレ配列又は分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、ポリペプチドのDNAに作用可能に連結されており;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作用可能に連結されており;又は、リボソーム結合部位は、翻訳を容易にするように配置されている場合、コード配列に作用可能に連結されている。一般に、「作用可能に連結される」とは、連結されるDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合は、近接し、かつ読み枠にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは近接していなくてもよい。連結は、簡便な制限部位におけるライゲーションによって達成される。このような部位が存在しない場合には、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが、一般的な手法に従って使用される。
【0135】
抗体の精製は、アルカリ/SDS処理、CsClバンド形成、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動及び当分野でよく知られている他のものを含む標準的な技術によって、細胞成分又は他の混入物、例えば他細胞核酸又はタンパク質を除去するために実施される。Ausubel, F., et al., ed. Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New York (1987)を参照。異なる方法が十分に確立され、タンパク質精製のために広く使用されており、例えば微生物タンパク質を用いたアフィニティークロマトグラフィー(例えば、プロテインA又はプロテインGアフィニティークロマトグラフィー)、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陽イオン交換(カルボキシメチル樹脂)、陰イオン交換(アミノエチル樹脂)及び混合モードイオン交換)、チオフィリック(thiophilic)吸着(例えば、β-メルカプトエタノール及び他のSHリガンドを用いたもの)、疎水性相互作用又は芳香族吸着クロマトグラフィー(例えば、フェニル-セファロース、アザ-アレノフィリック(aza-arenophilic)樹脂、又はm-アミノフェニルボロン酸を用いたもの)、金属キレートアフィニティークロマトグラフィー(例えば、Ni(II)-及びCu(II)-アフィニティ物質を用いたもの)、サイズ排除クロマトグラフィー、及び電気泳動法(ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動など)などがある(Vijayalakshmi, M.A., Appl. Biochem. Biotech. 75 (1998) 93-102)。
【0136】
本発明によるヒトVEGF及びヒトANG-2に対する二重特異性抗体は、有益な特性、例えば高い安定性及び及び有益な薬物動態/薬力学特性、例えば(例えば低用量で)良好な(すなわち、ゆっくりした)クリアランスを有することが発見された。
【0137】
発明による二重特異性二価抗体は、VEGF及びANG-2標的治療を必要としているヒト患者に利益を示す。
【0138】
更に、それらは、生物学的又は薬理学的活性を有し、インビボ腫瘍増殖阻害及び/又は腫瘍血管新生の阻害を示す。
【0139】
発明による二重特異性抗体は、
a)腫瘍増殖阻害(例えば、発明による二重特異性抗体により、腫瘍停滞が、2つの単一特異性抗体の組合せと比較して低濃度ですでに得られ得る)(例えば、実施例9及び10のColo205及びKPL-4腫瘍モデルでは、腫瘍停滞が、10mg/kgのANG2i-LC06+10mg/kgのアバスチンの組合せと比較して、10mg/kgのXMAb1によってすでに得られた)、及び/又は
b)腫瘍血管新生又は血管疾患の阻害(例えば、発明による二重特異性抗体による最大抗血管新生効果が、2つの単一特異性抗体の組合せと比較して低濃度ですでに得られ得る)(例えば、実施例8のマウス角膜血管新生アッセイでは、最大抗血管新生効果が、10mg/kgのANG2i-LC06+10mg/kgのアバスチンの組合せと比較して、10mg/kgのXMAb1を用いて既に達成された)
において非常に効果的である。
【0140】
最後に、本発明によるヒトVEGF及びヒトANG-2に対する二価二重特異性は、有益な効果/毒性プロファイルを有し得、抗VEGF及び抗ANG-2治療を必要としている患者に利益をもたらしうる。
【0141】
発明の一態様は、発明による抗体を含んでなる薬学的組成物である。発明の別の態様は、薬学的組成物の製造のための、発明による抗体の使用である。発明の更なる態様は、発明による抗体を含んでなる薬学的組成物の製造方法である。別の態様では、本発明は、薬学的担体と共に製剤化される本発明による抗体を含有する組成物、例えば薬学的組成物を提供する。
【0142】
発明の一実施態様は、癌の治療のための発明による二重特異性抗体である。
【0143】
発明の別の態様は、癌の治療のための前記薬学的組成物である。
【0144】
発明の別の態様は、癌の治療に対する医薬の製造のための、発明による抗体の使用である。
【0145】
発明の別の態様は、癌を患っている患者の治療方法であって、かかる治療を必要としている患者に発明による抗体を投与することによって為される。
【0146】
発明の別の態様は、転移の防止のための前記薬学的組成物である。
【0147】
発明は、転移の防止のために、発明による二重特異性抗体を含む。
【0148】
発明の別の態様は、転移の防止に対する医薬の製造のための、発明による二重特異性抗体の使用である。
【0149】
発明の別の態様は、原発癌を患っている患者における転移予防の方法であって、かかる予防治療を必要としている患者に発明による二重特異性抗体を投与することによって為される。
【0150】
我々は、インビボの同所性及び皮下性癌モデルにおいて、自然転移/二次腫瘍の非常に効果的な防止を示すことができた(実施例9を参照)(腫瘍細胞が静脈内に注入される実験モデルとは対照的に、これは臨床条件と類似し、細胞が原発腫瘍から広まり、肺又は肝臓などの二次臓器(二次腫瘍)に転移する)。
【0151】
発明による「転移」なる用語は、原発腫瘍から患者の他の一又は複数の部位への癌細胞の伝達を指し、そこでは次いで二次腫瘍が発生する。癌が転移したか決定するための手段は当分野で知られており、骨スキャン、胸部X線、CATスキャン、MRIスキャン、及び腫瘍マーカーテストを含む。
【0152】
「転移の防止」又は「二次腫瘍の防止」なる用語は、ここで使用される場合、同じ意味を持ち、原発腫瘍から患者の他の一又は複数の部位への癌細胞の更なる伝達を阻害又は低減する、癌を患っている患者における転移に対する予防手段を指す。これは、原発性の腫瘍又は癌の転移が防止、遅延、又は低減されることを意味し、これにより、二次腫瘍の発生が防止、遅延、又は低減される。好ましくは、転移、すなわち肺の二次腫瘍が防止又は低減され、これは原発腫瘍から肺への癌細胞の転移性伝達が防止又は低減されることを意味する。
【0153】
ここで使用される場合、「薬学的な担体」は、生理学的に適合性のある任意の全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌及び抗真菌剤、等張及び吸収遅延化剤等を含む。好ましくは、担体は静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄又は上皮投与(例えば注射又は注入による)に適している。
【0154】
本発明の組成物は当該技術分野において知られている様々な方法によって投与することができる。当業者に理解されるように、投与の経路及び/又は態様は所望される結果に応じて変わる。ある投与経路によって本発明の化合物を投与するためには、その不活性化を防止するための材料で化合物を被覆し、又はそれと共に化合物を同時投与することが必要である場合がある。例えば、化合物はリポソーム又は希釈剤等の適切な担体で被験者に投与されうる。薬物学的に許容可能な希釈剤は、生理食塩水及び緩衝水溶液を含む。薬物学的な担体は、滅菌水溶液又は分散体、及び滅菌注射用溶液又は分散体の即時調製のための滅菌パウダーを含む。薬物学的に活性な物質のためのこのような媒体及び薬剤の使用は当該技術分野で知られている。
【0155】
ここで使用される「非経口投与」及び「非経口的に投与される」なる語句は、通常は注射による、経腸と局所投与以外の投与態様を意味し、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、クモ膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、髄腔内、硬膜外、胸骨内への注射及び注入を含む。
【0156】
ここで使用される「癌」なる用語は、増殖性疾患、例えば、リンパ腫、リンパ性白血病、肺癌、非小細胞肺(NSCL)癌、細気管支肺胞細胞肺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭部もしくは頚部の癌、皮膚もしくは眼内メラノーマ、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌(stomach cancer、gastric cancer)、結腸癌、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜の癌腫、子宮頚部の癌腫、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、副甲状腺の癌、副腎の癌、軟組織の肉腫、尿道の癌、陰茎の癌、前立腺癌、膀胱癌、腎臓もしくは尿道の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中皮腫、肝細胞癌、胆道癌、中枢神経系(CNS)の新生物、脊髄軸腫瘍、脳幹膠腫、多形膠芽腫、星状細胞腫、シュワン腫、上衣腫、髄芽腫、髄腹腫、扁平上皮癌、下垂体腺腫、及びユーイング肉腫を指し、上記癌の何れかの難治性型、又は上記癌の一又は複数の組み合わせを含む。
【0157】
発明の別の態様は、抗血管新生剤としての発明による二重特異性抗体又は前記薬学的組成物である。このような抗血管新生剤は、癌、特に固形腫瘍、及び他の血管疾患の治療に使用されうる。
【0158】
発明の一実施態様は、血管疾患の治療のための、発明による二重特異性抗体である。
【0159】
発明の別の態様は、血管疾患の治療のための前記薬学的組成物である。
【0160】
発明の別の態様は、血管疾患の治療に対する医薬の製造のための、発明による抗体の使用である。
【0161】
発明の別の態様は、血管疾患を患っている患者の治療方法であって、かかる治療を必要としている患者に発明による抗体を投与することによって為される。
【0162】
「血管疾患」なる用語は、癌、炎症性疾患、性動脈硬化症、虚血症、外傷、敗血症、COPD、喘息、糖尿病、AMD、網膜障害、脳卒中、肥満症、急性肺傷害、出血、脈管漏出、例えばサイトカイン誘発アレルギー、Graves病、橋本自己免疫性甲状腺炎、特発性血小板減少性紫斑病、巨細胞動脈炎、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、クローン病、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、特に固形腫瘍、眼内新生血管症候群、例えば増殖性網膜症又は加齢性網膜黄斑部変性(AMD)、慢性関節リウマチ、及び乾癬を含む(Folkman, J., et al., J. Biol. Chem. 267 (1992) 10931-10934; Klagsbrun, M., et al., Annu. Rev. Physiol. 53 (1991) 217-239; and Garner, A., Vascular diseases, In: Pathobiology of ocular disease, A dynamic approach, Garner, A., and Klintworth, G.K., (eds.), 2nd edition, Marcel Dekker, New York (1994), pp 1625-1710)。
【0163】
このような組成物はまた、アジュバント、例えば保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤を含みうる。微生物の存在の防止は、上掲の滅菌方法、又は様々な抗菌及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸及び同様なものの包含双方によって確実にされうる。また、組成物に、等張剤、例えば糖、塩化ナトリウム、及び同様なものを含むことが所望されうる。加えて、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含有せしめることにより、注射可能な薬学的形態の長期吸収がもたらされうる。
【0164】
選択される投与経路にかかわらず、適切な水和形態で使用されてもよい本発明の化合物、及び/又は本発明の薬学的組成物は、当業者に知られた一般的な方法により、薬学的に許容可能な投薬形態に製剤化される。
【0165】
本発明の薬学的組成物における活性成分の実際の投薬量レベルは、患者に対して毒性とならないで、特定の患者、組成物、投与態様に対して、所望の治療応答を達成するのに効果的な活性成分量が得られるように変化させうる。選択される投薬量レベルは、用いられる本発明の特定の組成物、投与経路、投与時間、用いられる特定化合物の排出率、治療期間、他の薬剤、用いられる特定の組成物と組み合わせて使用される化合物及び/又は材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、一般的健康及び先の医療歴、及び医学分野でよく知られた類似の要因を含む様々な薬物動態学的因子に依存するであろう。
【0166】
組成物は、無菌で、組成物がシリンジにより送達可能な程度に流動的でなければならない。水に加えて、担体は、好ましくは等張緩衝生理食塩水である。
【0167】
適切な流動性が、例えば、レシチンのようなコーティングを使用することによって、分散体の場合は要求される粒子サイズを維持することにより、また界面活性剤を使用することにより維持されうる。多くの場合、組成物中に、等張剤、例えば糖、多価アルコール、例えばマニトール又はソルビトール、及び塩化ナトリウムを含めることが好ましい。
【0168】
ここで使用される場合、「細胞」、「細胞株」、及び「細胞培養」という表現は互換可能に用いられ、全てのそのような標記は子孫を含む。従って、「形質転換体」及び「形質転換細胞」という語句は、一次対象細胞及び何度培養が継代されたかに関わらず初代のものから誘導された培養を含む。全ての子孫が、故意又は偶発の変異により、DNA内容物において正確に同一ではない場合があることが理解される。元々の形質転換細胞についてスクリーニングしたものと同じ機能又は生物活性を有する変異体子孫が含まれる。区別される標記が意図される場合は、文脈から明らかであろう。
【0169】
ここで使用される「形質転換」なる用語は、宿主細胞中へのベクター/核酸のトランスファープロセスを意味する。恐るべき細胞壁障壁のない細胞が宿主細胞として使用される場合、形質移入は、例えばGraham, F., L.,及びvan der Eb, Virology 52 (1973) 456-467により記載されるようなリン酸カルシウム沈殿法により実施される。しかしながら、核注入又はプロトプラスト融合等による細胞中へのDNAの導入のための他の方法がまた使用されうる。原核生物細胞又は実質的な細胞壁構成を含む細胞が使用される場合、例えば一つの形質移入法は、Cohen, S.N.等, PNAS 69 (1972) 2110-2114により記載される塩化カルシウムを使用するカルシウム処理である。
【0170】
ここで使用される場合、「発現」とは、核酸がmRNAに転写されるプロセス、及び/又は転写されたmRNA(また、転写物とも称される)がその後ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質に翻訳されるプロセスを意味する。転写物及びコードされたポリペプチドは、集合的には、遺伝子産物と称される。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、真核生物細胞における発現は、mRNAのスプライシングを含みうる。
【0171】
「ベクター」とは、挿入された核酸分子を宿主細胞中及び/又は宿主細胞間にトランスファーする核酸分子、特に自己複製する核酸分子である。該用語は、DNA又はRNAの細胞中への挿入(例えば、染色体組込み)のために主に機能するベクター、DNA又はRNAの複製のために主に機能するベクターの複製、及びDNA又はRNAの転写及び/又は翻訳のために機能する発現ベクターを含む。一以上の記載された機能を提供するベクターもまた含まれる。
【0172】
「発現ベクター」は、適切な宿主細胞に導入された場合、転写され、翻訳されてポリペプチドになるポリヌクレオチドである。「発現系」は通常は、所望の発現産物を産出するように機能可能な発現ベクターから成る適切な宿主細胞を指す。
【0173】
以下の実施例、配列表及び図は、本発明の理解を援助するために提供され、その真の範囲は添付の請求の範囲に記載される。発明の精神から逸脱することなしで記載された手順に変更をなすことができることが理解される。
【0174】
【0175】
実験手順
実施例
材料及び一般的方法
ヒト免疫グロブリン軽及び重鎖のヌクレオチド配列に関する一般的な情報は: Kabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)に提供されている。抗体鎖のアミノ酸はEU番号付けに従って番号付けされ参照される(Edelman, G.M., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 63 (1969) 78-85; Kabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD, (1991))。
【0176】
組換えDNA技術
Sambrook, J. et al., Molecular cloning: A laboratory manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989に記載されるように標準的な方法をDNAの操作に使用した。分子生物学試薬を製造者の説明に従い使用した。
【0177】
遺伝子合成
所望の遺伝子セグメントは、化学合成によって作成されるオリゴヌクレオチドから調製される。特異制限エンドヌクレアーゼ切断部位にはさまれる遺伝子セグメントを、PCR増幅を含むオリゴヌクレオチドのアニーリング及びライゲーションによって組立て、その後、指示制限部位、例えばKpnI/SacI又はAscI/PacIによって、pPCRScript (Stratagene)に基づくpGA4クローニングベクター中にクローン化した。サブクローン化遺伝子断片のDNA配列を、DNA配列決定により確認した。
【0178】
遺伝子合成断片を、Geneart(Regensburg, Germany)で得られる規格に従い注文した。Ang-2/VEGF二重特異性抗体の軽及び重鎖をコードする全遺伝子セグメントを、真核生物細胞における分泌のためのタンパク質を標的にするリーダーペプチド(MGWSCIILFLVATATGVHS)をコードする5’-端DNA配列、及び合成遺伝子の5’及び3’端のユニーク制限部位を用いて合成した。ジスルフィド安定化「ノブ-インツ-ホール」修飾重鎖を担持するDNA配列を、「ノブ」重鎖におけるS354C及びT366W変異、及び「ホール」重鎖におけるY349C、T366S、L368A及びY407V変異を用いて設計した。
【0179】
DNA配列決定
DNA配列を、MediGenomix GmbH (Martinsried, Germany)又はSequiserve GmbH (Vaterstetten, Germany)で実施される二本鎖配列決定によって決定した。
【0180】
DNA及びタンパク質配列分析及び配列データ管理
GCG(Genetics Computer Group, Madison, Wisconsin)ソフトウェアパッケージversion 10.2及びInfomax's Vector NT1 Advance suite version 8.0を、配列作成、マッピング、分析、アノテーション及び図説のために使用した。
【0181】
発現ベクター
記載した抗体の発現のために、CMV-Intron AプロモーターによるcDNA構成又はCMVプロモーターによるゲノム構成に基づいての一過性発現(例えばHEK293EBNA又はHEK293-F)細胞又は安定発現(例えばCHO細胞)のための発現プラスミドの変異体を使用した。
【0182】
抗体発現カセットの他に、ベクターは次のものを含んだ:
− 大腸菌におけるこのプラスミドの複製を可能にする複製の起点、及び
− 大腸菌におけるアンピシリン耐性を付与するβ-ラクタマーゼ遺伝子。
抗体遺伝子の転写ユニットは次の要素から成る:
− 5’末端のユニーク制限部位
− ヒトサイトメガロウイルスからの最初期エンハンサー及びプロモーター、
− cDNA構成の場合、続くイントロンA配列、
− ヒト抗体遺伝子の5’-非翻訳領域、
− 免疫グロブリン重鎖シグナル配列、
− cDNAとしての又は免疫グロブリンエキソン-イントロン構成を伴ってのゲノム構成としてのヒト抗体鎖(重鎖、修飾重鎖又は軽鎖)、
− ポリアデニル化シグナル配列を有する3’未翻訳領域、及び
− 3’末端でのユニーク制限部位。
【0183】
一過性及び安定トランスフェクションのために、より多量なプラスミドを、形質転換された大腸菌培養物(Nucleobond AX, Macherey-Nagel)からのプラスミド調製により調製した。
【0184】
細胞培養技法
標準の細胞培養技法を、Current Protocols in Cell Biology (2000), Bonifacino, J.S., Dasso, M., Harford, J.B., Lippincott-Schwartz, J. and Yamada, K.M. (eds.), John Wiley & Sons, Inc.に記載されるように使用した。
【0185】
HEK293-Fシステムにおける一過性トランスフェクション
組換え免疫グロブリン変異体を、製造者の指示に従いFreeStyleTM 293発現システムを用いて、ヒト胎児由来腎臓293-F細胞の一過性トランスフェクションにより発現させた(Invitrogen, USA)。簡単には、懸濁FreeStyleTM 293-F細胞を、FreeStyleTM 293発現培地において37°C/8 %COで培養し、細胞を、トランスフェクションの日に1−2x10生細胞/mlの密度で新鮮な培地に播種した。DNA-293fectinTM複合体を、単一特異性親抗体の250mlの最終トランスフェクション体積に対し、325μlの293fectinTM (Invitrogen, Germany)及び250μgの重及び軽鎖プラスミドDNAを1:1モル比において使用して、Opti-MEM(登録商標)I培地(Invitrogen, USA)において調製した。2つの重鎖及び1つの軽鎖を有する「ノブ-インツ-ホール」DNA-293fectin複合体を、250mlの最終トランスフェクション体積(OAscFab及びOAscXFab)に対し、325μlの293fectinTM (Invitrogen, Germany)及び250μgの「ノブ-インツ-ホール」重鎖1及び2及び軽鎖プラスミドDNAをおおむね1:1:1のモル比において使用して、Opti-MEM(登録商標)I培地(Invitrogen, USA)において調製した。発現収率の最適化により該比は異なりうる。XMab DNA-293fectin複合体を、250mlの最終トランスフェクション体積に対し、325μlの293fectinTM (Invitrogen, Germany)及び250μgの「ノブ-インツ-ホール」重鎖1及び2及び軽鎖プラスミドDNAを1:1:1:1のモル比において使用して、Opti-MEM(登録商標)I培地(Invitrogen, USA)において調製した。発現収率の最適化に対して該比は異なりうる。抗体を含む細胞培養上清を、トランスフェクションの7日後、30分間、14000gでの遠心分離によって収穫し、滅菌フィルター(0.22μm)を通して濾過した。上清を、精製まで、−20°Cで保管した。
【0186】
タンパク質決定
精製された抗体及び誘導体のタンパク質濃度を、Pace, C.N., et. al., Protein Science 4 (1995) 2411-1423によるアミノ酸配列に基づいて算出したモル消衰係数を用いて、280nmでの光学密度(OD)を決定することにより決定した。
【0187】
上清における抗体濃度決定
細胞培養上清液における抗体及び誘導体の濃度を、プロテインAアガロースビーズ(Roche)による免疫沈澱法により推定した。60μlのプロテインAアガロースビーズを、TBS-NP40(50mM Tris, pH7.5, 150mM NaCl, 1% Nonidet-P40)において3回洗浄した。続いて、1〜15mlの細胞培養上清液を、TBS-NP40においてプレ平衡化されたプロテインAアガロースビーズに適用した。室温での1時間のインキュベーションの後、ビーズを、Ultrafree- MC-filterカラム (Amicon)上で、0.5mlのTBS-NP40により1回、0.5mlの2×リン酸緩衝溶液(2×PBS, Roche)により2回、そして0.5mlの100mMのクエン酸ナトリウム(pH5.0)により、すばやく4回、洗浄した。結合抗体を、35μlのNuPAGE(商標登録)LDSサンプルバッファー(Invitrogen)の添加により溶出した。サンプルの半分をそれぞれ、NuPAGE(商標登録)サンプル還元剤と組み合わすか、又は末還元のままにし、そして70℃で10分間、加熱した。そして、20μlを、4−12% NuPAGE(商標登録)Bis-Tris SDS-PAGE(Invitrogen)(非還元SDS-PAGEに対しMOPS緩衝液、及び還元SDS-PAGEに対し、NuPAGE(商標登録) 抗酸化ランニング緩衝液添加剤(Invitrogen)と共にMES緩衝液を用いる)に適用し、そしてクーマシーブルーを用いて染色した。
【0188】
細胞培養上清液における抗体及び誘導体の濃度を、プロテインA-HPLCクロマトグラフィーによって測定した。簡単には、プロテインAに結合する抗体及び誘導体を含む細胞培養上清液を、50mMのK2HPO4、300mMのNaCl(pH7.3)においてHiTrapプロテインAカラム(GE Healthcare)に適用し、Dionex HPLC-Systemにおいて、550mMの酢酸を用いてマトリックスから溶出した。溶出されたタンパク質を、UV吸光度及びピーク領域の積分により定量化した。精製された標準のIgG1抗体が、標準として作用した。
【0189】
あるいは、細胞培養上清液における抗体及び誘導体の濃度を、Sandwich-IgG-ELISAにより測定した。簡単には、StreptaWell High Bind Strepatavidin A-96 ウエルマイクロタイタープレート (Roche)を、100μl/ウェルのビオチン化抗ヒトIgG捕獲分子F(ab’)2<h-Fcガンマ>BI(Dianova)により、0.1μg/mlで室温で1時間、あるいは4℃で一晩、被覆し、その後、200μl/ウェルのPBS、0.05%Tween(PBST, Sigma)を用いて3回、洗浄した。それぞれの抗体含有細胞培養上清液のPBS(Sigma)中における100μL/wellの希釈系列を、ウェルに加え、室温でマイクロタイタープレートシェーカー上で1−2時間インキュベートした。ウェルを、200μl/ウェルのPBSTにより3回、洗浄し、そして結合された抗体を、室温でマイクロタイタープレートシェーカー上で1−2時間、検出抗体として0.1μg/mlでの100μlのF(ab’)2<hFcガンマ>POD(Dianova)により検出した。結合されなかった検出抗体を、200μl/ウェルのPBSTにより3回、洗浄し、そして結合された検出抗体を100μlのABTS/ウェルの添加により検出した。吸光度の決定を、Tecan Fluor分光計で、405nmの測定波長(492nmの参照波長)で実施した。
【0190】
二重特異性抗体の精製
二重特異性抗体を、Protein A-SepharoseTM (GE Healthcare, Sweden)を使用するアフィニティークロマトグラフィー及びSuperdex200サイズ排除クロマトグラフィーにより、細胞培養上澄から精製した。簡単には、滅菌濾過細胞培養上澄を、PBSバッファー(10 mM Na2HPO4, 1 mM KH2PO4, 137 mM NaCl and 2.7mM KCl, pH 7.4)を用いて平衡化したHiTrap ProteinA HP(5ml)カラムに適用した。非結合タンパク質を平衡バッファーを用いて洗浄した。抗体及び抗体変異体を、0.1Mのクエン酸バッファー(pH2.8)を用いて溶出し、タンパク質含有画分を0.1mlの1M Tris,pH8.5を用いて中和した。次いで、溶出タンパク質画分をプールし、3mlの体積までAmicon Ultra centrifugal filter device (MWCO: 30 K, Millipore)を用いて濃縮し、 20mM Histidin, 140 mM NaCl, pH 6.0を用いて平衡化したSuperdex200 HiLoad 120ml 16/60 gel濾過カラム(GE Healthcare, Sweden)に搭載した。高分子量凝集5%未満の精製された二重特異性抗体を有する画分をプールし、−80°Cで1.0mg/mlのアリコートとして保管した。
【0191】
SDS-PAGE
NuPAGE(商標登録)Pre-Castゲルシステム(Invitrogen)を、その製造業者の指示に従って使用した。具体的には、4−20%NuPAGE(商標登録)Novex(商標登録)TRIS-Glycine Pre-Cast gels及びNovex(商標登録)TRIS-Glycine SDSランニングバッファーを使用した。(例えば図3を参照)。サンプルの還元を、ゲルのランニング前にNuPAGE(登録商標)サンプル還元剤によって行った。
【0192】
分析サイズ排除クロマトグラフィー
抗体の凝集及びオリゴマー状態の決定のためのサイズ排除クロマトグラフィー処理を、HPLCクロマトグラフィーにより実施した。簡単には、プロテインA精製された抗体を、Agilent HPLC 1100システムにおいて、300mM NaCl, 50mM KH2PO4/K2HPO4, pH 7.5におけるTosoh TSKgel G3000SWカラムに、又はDionex HPLC-システムにおいて、2xPBSにおけるSuperdex 200カラム(GE Healthcare)に適用した。溶出されたタンパク質を、UV吸光度及びピーク領域の積分により定量化した。BioRad Gel Filtration Standard 151-1901が、標準として作用した。(例えば図4を参照)。
【0193】
質量分析法
クロスオーバー抗体の全体の脱グリコシル化の質量を、電子噴霧イオン化質量分析(ESI-MS)により決定し、確認した。手短に言及すると、100μgの精製された抗体を、100mMのKH2PO4/K2HPO4(pH7)中において50mUのN-Glycosidase F (PNGaseF, ProZyme)により、37℃で12−24時間、2mg/mlまでのタンパク質濃度で脱グリコシル化し、そして続いてSephadex G25カラム(GE Healthcare)においてHPLCにより脱塩した。それぞれのH及びL鎖の質量を、脱グリコシル化及び還元の後、ESI−MSにより決定した。手短に言及すると、115μl中における50μgの抗体を、60μlの1MのTCEP及び50μlの8Mのグアニジン塩酸塩と共にインキュベートし、続いて脱塩した。全質量及び還元された重及び軽鎖の質量を、NanoMate源を具備するQ-Star Elite MSシステムにおいてESI-MSにより決定した。
【0194】
HEK293-Tie2細胞株の生成
アンジオポエチン-2抗体のANGPT2刺激Tie2リン酸化への干渉、及び細胞上におけるTie2へのANGPT2の結合を決定するために、組換えHEK293-Tie細胞株を生成した。簡単には、CMVプロモーターのコントロール下で完全長ヒトTie2(配列番号:108)をコードするpcDNA3をベースにするプラスミド(RB22-pcDNA3 Topo hTie2)及びネオマイシン耐性マーカーを、トランスフェクション剤としてFugene (Roche Applied Science)を使用して、HEK293細胞(ATCC)にトランスフェクトし、耐性細胞をDMEM 10%FCS、500μg/ml G418において選択した。個々のクローンをクローニングシリンダーによって単離し、その後、FACSによってTie2発現を分析した。クローン22が、G418の非存在下においても高く安定したTie2発現を有するクローンとして同定された(HEK293-Tie2 クローン22)。HEK293-Tie2 クローン22をその後、細胞アッセイに使用した:ANGPT2誘発Tie2リン酸化及びANGPT2細胞リガンド結合アッセイ。
【0195】
ANGPT2誘発Tie2リン酸化アッセイ
ANGPT2抗体によるANGPT2誘発Tie2リン酸化の阻害を、次のアッセイ原則に従って測定した。HEK293-Tie2 クローン22を、ANGPT2抗体の有無において5分間、ANGPT2で刺激し、P−Tie2をサンドイッチELISAによって定量化した。簡単には、ウェルあたり2x105のHEK293-Tie2クローン22細胞を一晩、100μl DMEM、10%FCS、500μg/mlジェネテシン中において、ポリ-D-リシンでコートされた96ウェルにおいて増殖させた。翌日、ANGPT2抗体のtitration rowをマイクロタイタープレートにおいて調製し(4倍濃度、75μlの最終量/ウェル、2つ組)、75μlのANGPT2 (R&D systems # 623-AN]希釈(四倍濃度溶液として3.2 μg/ml)と混合した。抗体及びANGPT2を、室温で15分間プレインキュベートした。100μlの混合物をHEK293-Tie2クローン22細胞に加え(1 mM NaV3O4, Sigma #S6508で5分間プレインキュベートし)、37°Cで5分間インキュベートした。その後、細胞を、200μlの氷冷PBS+1mMのNaV3O4/ウェルで洗浄し、氷上において120μlの溶解バッファー (20mM Tris, pH 8.0, 137 mM NaCl, 1% NP-40, 10% glycerol, 2mM EDTA, 1 mM NaV3O4, 1 mM PMSF 及び10 μg/ml Aprotinin)/ウェルの添加によって溶解させた。細胞をマイクロタイタープレートシェーカー上で4°Cで30分間溶解させ、100μlの溶解物を、事前の遠心分離及び全タンパク質決定を行うことなく、p-Tie2 ELISAマイクロタイタープレート(R&D Systems, R&D #DY990)に移した。P-Tie2量を、製造者の指示に従って定量化し、阻害のIC50値をXLfit4 analysis plug-in for Excel (Dose-response one site, model 205)を使用して決定した。IC50値を実験内で比較することができるが、実験ごとに異なりうる。
【0196】
VEGF誘発HUVEC増殖アッセイ
VEGF誘発HUVEC(Human Umbilical Vein Endothelial Cells, Promocell #C-12200) 増殖を、VEGF抗体の細胞機能を測定するために選択した。簡単には、96ウェルあたり、5000のHUVEC細胞(low passage number,≦5 passages)を、コラーゲンIでコートされたBD Biocoat Collagen I 96ウェルマイクロタイタープレート(BD #354407 / 35640)において、100μlの飢餓培地(EBM-2 Endothelial basal medium 2, Promocell # C-22211, 0.5% FCS, Penicilline/Streptomycine)中において一晩インキュベートした。様々な濃度の抗体をrhVEGF(30ng1/mlの最終濃度, BD # 354107)と混合し、室温で15分間プレインキュベートした。その後、混合物をHUVEC細胞に加え、それらを72時間、37°C、5%CO2でインキュベートした。分析の日に、プレートを30分間室温に平衡化させ、細胞生存度/増殖を、マニュアルに従いCellTiter-GloTM Luminescent Cell Viability Assayキットを使用して決定した(Promega, # G7571/2/3)。蛍光を分光光度計において決定した。
【0197】
実施例 1a
二重特異性二価ドメイン交換二重特異性二価ドメイン交換抗体分子XMabの発現及び精製
上の材料及び方法に記載される手順に従い、二重特異性二価ドメイン交換<VEGF-ANG-2>抗体分子XMab1、XMab1及びXMab3を発現させ、精製した。<VEGF>部分のVH及びVL(配列番号:1及び配列番号:2)はベバシズマブに基づく。<ANG2>部分のVH(配列番号:3)を、ANG2i-LC06のVH配列のE6Q変異(位置6のオリジナルのアミノ酸グルタミン酸(E)をグルタミン(Q)で置換した)から得た(PCT出願番号PCT/EP2009/007182(WO2010/040508)に記載され、ファージディスプレイによって得られた配列のさらに成熟された断片である)。<ANG2>部分のVL(配列番号:4)を、ANG2i-LC06のVL配列から得た(PCT出願番号PCT/EP2009/007182(WO2010/040508)を参照)。二重特異性二価ドメイン交換<VEGF-ANG-2>抗体XMab1、XMab2及びXMab3を発現させ、精製した。これらの二重特異性二価抗体の関連軽及び重鎖アミノ酸配列を、配列番号:5−8(XMab1)、配列番号:9−12(XMab2)、及び配列番号:13−16(XMab3)に記載する。
【0198】
例示的な構造については図1を参照のこと。
【0199】
二重特異性二価<VEGF-ANG-2>抗体XMab4、XMab5及びXMab6(関連軽及び重鎖アミノ酸配列を、配列番号:17−20(XMab4)、配列番号:21−24(XMab5)、及び配列番号:25−28(XMab6)に記載する)を同様に発現させ、精製させる。
結合親和性及び他の特性を記載のように決定した。
【0200】
実施例 1b
二重特異性二価<VEGF-ANG-2>抗体分子OAscFabの発現及び精製
上の材料及び方法に記載される手順に従い、二重特異性二価<VEGF-ANG-2>抗体分子OAscFab1、OAscFab2、OAscFab3を発現させ、精製した。<VEGF>部分のVH及びVL(配列番号:1及び配列番号:2)はベバシズマブに基づく。<ANG2>E6Q部分のVH(配列番号:3)を、ANG2i-LC06のVH配列のE6Q変異(位置6のオリジナルのアミノ酸グルタミン酸(E)をグルタミン(Q)で置換した)から得た(PCT出願番号PCT/EP2009/007182(WO2010/040508)に記載され、ファージディスプレイによって得られた配列のさらに成熟された断片である)。<ANG2>E6Q部分のVL(配列番号:4)を、ANG2i-LC06のVL配列から得た(PCT出願番号PCT/EP2009/007182(WO2010/040508)(WO2010/040508)を参照)。これらの二重特異性二価抗体の関連軽及び重鎖アミノ酸配列を、配列番号:29−31(OAscFab1)、配列番号:32−34(OAscFab2)、及び配列番号:35−37(OAscFab3)に記載する。例示的な構造については図2aを参照のこと。OAscFab1、OAscFab1、OAscFab2及びOAscFab3の発現をウエスタンブロットによって確認した。OAscFab2及びOAscFab3の精製から以下の収率を得た。
結合親和性及び他の特性を記載の通りに決定する。
【0201】
実施例 1c
二重特異性二価ドメイン交換<VEGF-ANG-2>抗体分子OAscXFabの発現及び精製
上の材料及び方法に記載される手順に従い、二重特異性二価ドメイン交換<VEGF-ANG-2>抗体分子OAscXFab1、OAscXFab2、OAscXFab3を発現させ、精製した。<VEGF>部分のVH及びVL(配列番号:1及び配列番号:2)はベバシズマブに基づく。<ANG2>E6Q部分のVH(配列番号:3)を、ANG2i-LC06のVH配列のE6Q変異(位置6のオリジナルのアミノ酸グルタミン酸(E)をグルタミン(Q)で置換した)から得た(PCT出願番号PCT/EP2009/007182(WO2010/040508)に記載され、ファージディスプレイによって得られた配列のさらに成熟された断片である)。<ANG2>E6Q部分のVL(配列番号:4)を、ANG2i-LC06のVL配列から得た(PCT出願番号PCT/EP2009/007182(WO2010/040508)を参照)。これらの二重特異性二価抗体の関連軽及び重鎖アミノ酸配列を、配列番号:38−40(OAscXFab1)、配列番号:41−43(OAscXFab2)、及び配列番号:44−46(OAscXFab3)に記載する。例示的な構造については、図2b(OAscXFab1)及び図2c(OAscXFab2,OAscXFab3)を参照のこと。発現をウエスタンブロットによって確認した。
結合親和性及び他の特性を記載の通りに決定する。
【0202】
実施例 2
二重特異性抗体の安定性
変性温度(SYPROオレンジ法)
タンパク質変性が生じる温度(すなわち、タンパク質構造の温度誘発喪失)を決定するために、疎水性環境において強い蛍光を示す疎水性蛍光色素(SYPROオレンジ, Invitrogen)を利用する方法を使用した。タンパク質変性により、疎水性パッチが溶媒にさらされ蛍光の増加に至る。変性温度より上の温度で蛍光強度は再度低下し、これにより最大強度が得られる温度が変性温度として定義される。該方法はEricsson, U.B., et al., Anal Biochem 357 (2006) 289-298 and He, F., et al., Journal of Pharmaceutical Sciences 99 (2010) 1707-1720に記載されている。
【0203】
タンパク質サンプルを、20mMのHis/HisCl、140mMのNaCl、pH6.0中におよそ1mg/mLの濃度で、SYPROオレンジ(5000x原液)と混合させ、1:5000の最終希釈を得た。20μLの体積を384ウェル-プレートに移し、温度依存蛍光をLightCycler(登録商標)480 Real-Time PCR System (Roche Applied Sciences)において0.36°C/分の加熱率で記録した。
【0204】
動的光散乱(DLS)による凝集温度
熱誘起タンパク質凝集が生じる温度を動的光散乱(DLS)により決定した。DLSは、マイクロ秒スケールによる散乱光強度の変動から、溶液中における巨大分子のサイズ分布に関する情報を出す。サンプルが徐々に加熱されると、凝集が特定の温度で開始され、粒子サイズの増加が生じる。粒子サイズが増加する温度が凝集温度として定義される。凝集及び変性温度は必ずしも同一である必要はなく、これは変性が必ずしも凝集に対する必要条件ではないからである。
【0205】
凝集温度測定に対し、DynaPro DLS platereader(Wyatt technologies)を使用した。測定に先行して、サンプルを384-ウェルフィルタープレート(Millipore MultiScreen 384-well Filtration System, 0.45 μm)により濾過し、オプティカル384-ウェルプレート(Corning #3540)に入れた。35μLのサンプル体積を、製剤バッファー中(20mM クエン酸、180mM スクロース、20mM アルギニン、0.02% ポリソルベート20)におよそ1mg/mLのタンパク質濃度で使用した。各ウェルを、蒸発を避けるために20μLのパラフィンオイル(Sigma)で覆った。サンプルを0.05°C/分の割合で25°Cから80°Cまで加熱し、DLSデータを、実行につき最大15のサンプル数について連続的に得た。
【0206】
DLSによる凝集率
凝集は強い光散乱シグナルを生じさせるため、DLSは溶液中における巨大分子の凝集を検出する高感度法である。従って、分子の凝集傾向は、DLSデータの反復取得により経時観察される。潜在凝集を実行レートに加速させるために、測定を50°Cで実施した。
【0207】
サンプルの調製を上記のように実施した。DLSデータを最大で100時間まで記録した。凝集率(nm/日)を時間に対する平均直径の線形フィッティングの傾きとして算出した。
【0208】
製剤バッファー中における安定性
二重特異性分子を凝集/断片化に関するそれらの安定性について評価するために、サンプルを、製剤バッファー(20mMクエン酸、180mM スクロース、20mM アルギニン、0.02% ポリソルベート20)中において、およそ1mg/mLのタンパク質濃度で40°Cで3週間インキュベートした。コントロールサンプルを−80°Cで3週間貯蔵した。
【0209】
凝集及び低分子量(LMW)種の定量化のためにサイズ排除クロマトグラフィーをHPLCによって実施した。25−100μg量のタンパク質を、Ultimate3000 HPLC system (Dionex)において、300mM NaCl、50mM リン酸カリウム、pH7.5中においてTosoh TSKgel G3000SWXLカラムに用いた。溶出タンパク質をUV吸光により280nmで定量化した。
【0210】
実施例 3:
二重特異性抗体<VEGF-Ang-2>の結合特性
A)表面プラズモン共鳴(SPR)分析にり特徴付けられる結合特性
両抗原の同時結合を、BIAcore T100 instrument (GE Healthcare Biosciences AB, Uppsala, Sweden)を用いて表面プラズモン共鳴(SPR)を行うことにより確認した。VEGFを標準的なアミンカップリング化学を使用してCM5センサーチップに固定化した。第一工程では、<VEGF-Ang-2>XMAbを、25°CのHBSバッファー(10mM HEPES, 150 mM NaCl, 0.05% Tween 20, pH 7.4)中に10μg/mlの濃度で注入した。固定化VEGFへの抗体の結合後、hAng-2を第二工程において10μg/mlで注入した(図3)。
【0211】
更なる実験では、<VEGF-Ang-2>XMabの親和性及び結合キネティクスを決定した。簡潔には、ヤギ<hIgG-Fcガンマ>ポリクローナル抗体を、Ang-2及びVEGFに対する二重特異性抗体の提示のためにアミンカップリングによりCM4チップ上に固定化した。結合を、HBSバッファー中において25°C又は37°Cで測定した。精製したAng-2-His(R&D systems又はインハウス精製)又はVEGF(R&D systems又はインハウス精製)を、溶液中に0.37nM及び30nMの間、又は3.7nM及び200nMの間の様々な濃度で加えた。会合を3分間の注入により測定し;解離をチップをHBSバッファーを用いて10分間洗浄することにより測定し、KD値を1:1ラングミュア結合モデルを用いて推定した。Ang-2調製物の不均一性により、1:1結合は観察されたなかった。したがって、KD値は見かけの値である。VEGFに対する<VEGF-Ang-2>XMabの決定された親和性は極めて高く、算出したoff-rateは37°CであってもBiacore規格外であった。表1に両抗原に対する結合定数をまとめる。
【0212】
B)結合活性二重特異性<Ang2/VEGF>XMab1の定量化のためのアッセイ
SPR分析に加え、結合活性二重特異性mAb<Ang2/VEGF>抗体の量を定量化するためにELISAを実施した。このアッセイでは、第一工程においてhAng2がmaxisorpマイクロタイタープレート(MTP)のウェルに直接コートされる。一方、サンプル/参照基準(mAb<Ang2/VEGF>)を別のMTPのウェルにおいてジゴキシゲニン化VEGFを用いてプレインキュベートした。プレインキュベーション及びコーティングの後、過剰な非結合Ang2を、Ang2でコートされたMTPを洗浄することによって除去した。<Ang2/VEGF>及びVEGF-Digのプレインキュベート混合物を次いで、hAng2でコートされたMTPに移しインキュベートした。インキュベーション後、過剰なプレインキュベーション溶液を洗浄により除去し、その後西洋ワサビペルオキシダーゼ標識された抗ジゴキシゲニン抗体でインキュベートした。抗体-酵素コンジュゲートはABTS(登録商標)基質の呈色反応を触媒する。シグナルをELISAリーダーにより405nmの波長(基準波長:490nm([405/490]nm))で測定した。各サンプルの吸光度値を2つ組において決定した。(この試験システムを例示するスキームを図4に示し、定量化に対するELISAのキャリブレーション曲線を図5に示す)。
【0213】
実施例 4
Tie2リン酸化
抗ANGPT2関連活性が二重特異性二価<VEGF-ANGPT2>抗体XMAb1において維持されていることを確認するために、Tie2リン酸化アッセイを実施した。XMAb1の効果を、上記のようにANGPT2刺激Tie2リン酸化アッセイにおいて決定した。
【0214】
XMAb1が、上記のようにANGPT2刺激Tie2リン酸化アッセイにおいてANGPT2刺激Tie2リン酸化を干渉することが示された。XMAb1に対するIC50は7.4nM+/−2.3であった。
【0215】
実施例 5
Tie-2へのhuANG-2結合の阻害(ELISA)
相互作用ELISAを384ウェルマイクロタイタープレート(MicroCoat, DE, Cat.No.464718)において室温で実施した。各インキュベーション工程後、プレートをPBSTで3回洗浄した。ELISAプレートを5μg/mlのTie-2タンパク質で1時間コートした。その後、ウェルを、0.2%Tween-20及び2%BSA (Roche Diagnostics GmbH, DE)で補充されたPBSで1時間ブロックした。PBS中における精製二重特異性Xmab抗体の希釈を0.2μg/mlのhuAngiopoietin-2(R&D Systems, UK, Cat.No. 623-AN)と共に室温で1時間インキュベートした。洗浄後、0.5μg/mlのビオチン化抗アンジオポエチン-2クローンBAM0981(R&D Systems, UK)及び1:3000に希釈されたストレプトアビジンHRP(Roche Diagnostics GmbH, DE, Cat.No.11089153001)の混合物を1時間加えた。その後、プレートをPBSTで3回洗浄した。プレートを、新鮮に調製されたABTS試薬(Roche Diagnostics GmbH, DE, buffer #204 530 001, tablets #11 112 422 001)で室温で30分間展開させる。吸光度を405nmで測定し、IC50を決定した。XMab1は、12nMのIC50によるTie-2へのANG-2結合の阻害を示した。
【0216】
実施例 6
hVEGF受容体へのhVEGF結合の阻害(ELISA)
試験を384ウェルマイクロタイタープレート(MicroCoat, DE, Cat.No. 464718)において室温で実施した。各インキュベーション工程後、プレートをPBSTで3回洗浄した。初めに、プレートを1μg/mlのhVEGF-Rタンパク質(R&D Systems,UK,Cat.No.321-FL)で1時間コートした。その後、ウェルを0.2% Tween-20及び2%BSA(Roche Diagnostics GmbH, DE)で補充されたPBSで1時間ブロックした。PBS中における精製二重特異性XMab抗体の希釈を0.15μg/mlのhuVEGF121(R&D Systems, UK, Cat.No. 298-VS)と共に室温で1時間インキュベートした。洗浄後、0.5μg/mlの抗VEGFクローンMab923(R&D Systems, UK)及び1:2000の西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートF(ab’)2抗マウスIgG(GE Healthcare, UK, Cat.No.NA9310V)の混合物を1時間加えた。その後、プレートをPBSTで6回洗浄した。プレートを、新鮮に調製されたABTS試薬(Roche Diagnostics GmbH, DE, buffer #204 530 001, tablets #11 112 422 001)で室温で30分間展開させた。吸光度を405nmで測定し、IC50を決定した。XMab1は、10nMのIC50によりVEGF受容体へのVEGF結合の阻害を示した。
【0217】
実施例 7
HUVEC増殖
抗VEGF関連活性が二重特異性二価<VEGF-ANG2>抗体XMAb1において維持されているか確認するために、VEGF誘発HUVEC増殖アッセイを実施した。上記のようにVEGF誘発HUVEC増殖アッセイにおけるベバシズマブと類似した様式において、XMAb1がVEGF誘発HUVEC増殖を干渉することが示された。XMAb1は、親抗体ベバシズマブ(アバスチン)と類似して、濃度依存様式において、VEGF誘発HUVEC増殖を阻害する。IC50は、ベバシズマブについては1.1nM、XMAbについては2.3nMであった。
【0218】
実施例 8
マウス角膜微少ポケット血管新生アッセイ
8〜10週の年齢の雌のBalb/cマウスをCharles River, Sulzfeld, Germanyから購入した。プロトコルをRogers, M.S., et al., Nat Protoc 2 (2007) 2545-2550に記載される方法に従い変更した。簡潔には、約500μmの幅を有する微少ポケットを、麻酔マウスにおいて手術用ブレード及びシャープピンセットを用いて角膜の縁から頭頂におよそ1mmのところに顕微鏡下で調製した。0.6mmの直径を有するディスク(Nylaflo(登録商標), Pall Corporation, Michigan)をインプラントし、インプラントの表面を滑らかにした。ディスクを対応する増殖因子又はビヒクルにおいて少なくとも30分間インキュベートした。3、5及び7日後(又はあるいは3日後のみ)、眼を撮影し血管反応を測定した。アッセイを、角膜の全面積あたりの新しい血管の面積のパーセンテージを算出することによって定量化した。
【0219】
ディスクに300ngのVEGF又はコントロールとしてPBSを搭載し、7日間インプラントした。縁からディスクへの血管の成長を3、5及び7日目に経時にモニタした。ディスクインプランテーションの一日前、抗体(<Ang-2/VEGF>XMAb1、<hVEGF>アバスチン(ベバシズマブ))を、アバスチン及びXMAb1について10mg/kgの用量で静脈内投与した。コントロールグループの動物はビヒクルを受けた。適用量は10ml/kgであった。
【0220】
インビボにおけるVEGF誘発血管新生に対するXMAb1の効果を試験するために、我々はマウス角膜血管新生アッセイを実施した。このアッセイでは、VEGF浸漬Nylafloディスクが、無血管角膜のポケットに、縁上血管に対し固定距離でインプラントされる。血管は直ちに展開中のVEGF勾配に対して角膜中に成長する。我々の結果はXMAb1(10mg/kg)の全身性投与が、研究3〜5日目に、縁からVEGF勾配への血管の成長をほぼ完全に阻害したことを示す(図6)。更なる実験では、直接比較試験を実施した。ディスクに300ngのVEGF又はコントロールとしてPBSを搭載し、3日間インプラントした。縁からディスクへの血管の増殖を3日目に経時にモニタした。ディスクインプランテーションの一日前に抗体(二重特異性<Ang-2/VEGF>抗体XMAb1、親<VEGF>抗体ベバシズマブ(アバスチン)、親<Ang-2>抗体ANG2i-LC06、及び<VEGF>抗体ベバシズマブ(アバスチン)及び<Ang-2>抗体ANG2i-LC06の組合せ)を、ベバシズマブ(アバスチン)に対し10mg/kg、XMAb1に対し10mg/kg、ベバシズマブ(アバスチン)に対し10mg/kg、ANG2i-LC06に対し10mg/kgの用量で静脈内投与した。ベバシズマブ(アバスチン)及びANG2i-LC06の組合せをベバシズマブ(アバスチン)に対し10mg/kg、ANG2i-LC06に対し10mg/kgで投与した。コントロールグループの動物はビヒクルを受けた。適用量は10ml/kgであった。
【0221】
我々の結果(図7及び下の表を参照)は、XMAb1(10mg/kg)の全身性投与が、ベバシズマブ及びANG2i-LC06の組合せと同等に、研究3日目で、縁からVEGF勾配への血管の成長をほぼ完全に阻害したことを示す。抗Ang-2単剤治療は対照的に、VEGF誘発血管新生をわずかにのみ阻害した(図7)。最大効果が、10mg/kgのANG2i-LC06+10mg/kgのベバシズマブ(アバスチン)の組合せと比較して、10mg/kgの低い濃度ですでに得られた。
【0222】
実施例 9
Scid beigeマウスのColo205異種移植モデルにおける二重特異性抗体<VEGF-ANG-2>抗体のインビボ効果
細胞株及び培養条件:
Colo205ヒト結腸直腸癌細胞(ATCC No. CCL-222)。腫瘍細胞株を、10%ウシ胎児血清(PAA Laboratories, Austria)及び2mMのL-グルタミンで補充されたRPMI 1640培地(PAA, Laboratories, Austria)において、37°Cで、水飽和雰囲気において5%COでルーチン的に培養した。継代2−5が移植に使用される。
【0223】
動物:
雌のSCID beigeマウス;到着時に4−5週の年齢(Charles River Germanyから購入)を特定病原体除去条件下、12時間の明かり/12時間の暗闇の一日サイクルを、関連ガイドライン(GV-Solas; Felasa; TierschG)に従い維持した。実験研究プロトコルは地方自治体によって検討され認可された。到着後、動物を、新しい環境に慣れさせるため及び観察のために一週間、動物施設の検疫所に保持した。継続的な健康モニタリングが定期的に実施される。ダイエット食(Provimi Kliba 3337)及び水(酸性化 pH2.5−3)を自由に与えた。研究の開始時のマウスの年齢は約10週である。
【0224】
腫瘍細胞注入:
注入の日に、腫瘍細胞を培養フラスコ(Greiner)から収集し(トリプシン-EDTA)、50mlの培養培地に移し、一度洗浄し、PBS中に再懸濁させた。PBSを用いた更なる洗浄工程及び濾過(セルストレーナー; Falconφ100μm)の後、最終細胞タイターを2.5x 10/mlに調整した。腫瘍細胞懸濁液を、細胞凝集を避けるためにホールピペットを用いて注意深く混合した。この後、細胞懸濁液を広口針(1.10 x 40 mm)を使用して1.0mlのツベルクリンシリンジ(Braun Melsungen)に充填した;注入には、針のサイズを変更し(0.45 x 25 mm)、注入ごとに新しい針を使用した。麻酔を、閉循環システムにおいて、プレインキュベーションチャンバー(plexiglas)、個々のマウスノーズマスク(silicon)、不燃性又は非爆発性の麻酔化合物イソフルラン(cp-pharma)を用いて、小動物のためのStephens吸入ユニットを使用して実施した。注入の2日前に動物の毛を剃り、細胞注入のために、麻酔動物の皮膚を解剖鉗子を用いて注意深く持ち上げ、100μlの細胞懸濁液(= 2.5 x 106細胞)を動物の右側腹部に皮下注入した。
【0225】
動物の治療
動物の治療を、〜100mm3の平均腫瘍体積でランダム化の日にそれぞれ開始した。マウスを、次の表に示すように異なる化合物を用いて週に一度、腹腔内処置した。
【0226】
モニタリング:
動物を、それらの健康状態について週に2xコントロールした。体重を、細胞注入後、週に2x記録した。腫瘍寸法を、ステージ分類の最初、及びその後は全治療期間中、週に2回キャリパーにより測定した。腫瘍体積を、NCIプロトコル(腫瘍量=1/2ab、ここで「a」及び「b」はそれぞれ腫瘍の長及び短直径である)に従い算出した。終了基準を、臨界腫瘍量(1.7g又はO>1.5cmまで)、ベースラインから20%より多い体重減少、腫瘍潰瘍化又は動物の不良な一般状態とした。
【0227】
結果((図8)を参照)は、二重特異性二価<VEGF-ANG-2>抗体XMAb1が、単一特異性抗体での治療と比較して、Scid beigeマウスにおける異種移植腫瘍モデルColo205において、より高い腫瘍増殖阻害を示したことを示す。ANG2i-LC06及びベバシズマブの組合せの効果は、XMAb1と同等な結果を示した。XMAb1の最大効果は10mg/kgにより既に達せられた。
【0228】
第二の実験では、より大きな腫瘍に対するXMAb1の効果を分析した。
【0229】
動物の治療
動物の治療を、〜400mm3の平均腫瘍体積でランダム化の日にそれぞれ開始した。マウスを、次の表に示すように異なる化合物を用いて週に一度、腹腔内処置した。
【0230】
モニタリング:
動物を、それらの健康状態について週に2xコントロールした。体重を、細胞注入後、週に2x記録した。腫瘍寸法を、ステージ分類の最初、及びその後は全治療期間中、週に2回キャリパーにより測定した。腫瘍体積は、NCIプロトコル(腫瘍量=1/2ab、ここで「a」及び「b」はそれぞれ腫瘍の長及び短直径である)に従い算出される。終了基準を、臨界腫瘍量(1.7g又はO>1.5cmまで)、ベースラインから20%より多い体重減少、腫瘍潰瘍化又は動物の不良な一般状態とした。
【0231】
結果((図9)を参照)は、二重特異性二価<VEGF-ANG-2>抗体XMAb1が、コントロールと比較して大きい腫瘍において効果を示さなかった単一特異性抗体での治療と比較して、Scid beigeマウスにおける異種移植腫瘍モデルColo205において、より高い腫瘍増殖阻害を示したことを示す。ANG2i-LC06及びベバシズマブの組合せの効果は、XMAb1と同等な結果を示した。XMAb1の最大効果は10mg/kgにより既に達せられた。
【0232】
総合すると、結果は、腫瘍サイズと独立して、XMAb1が、単一特異性抗体での治療と比較して優れた効果を示すことを実証する。
【0233】
これらのモデルにおける腫瘍停滞が、10mg/kgのANG2i-LC06+10mg/kgのAvastinの組合せと比較して、10mg/kgXMAb1の低い濃度ですでに得られた。
【0234】
実施例 10
Scid beigeマウスの同所性KPL-4異種移植モデルにおける二重特異性抗体<VEGF-ANG-2>抗体のインビボ効果
腫瘍細胞株
ヒト乳癌細胞株KPL-4((Kurebayashi, J., et al., Br. J. Cancer 79 (1999) 707-17))を、炎症性皮膚転移を有する乳癌患者の悪性胸水から得た。腫瘍細胞株を、10%ウシ胎児血清(PAN Biotech, Germany)及び2mMのL-グルタミン(PAN Biotech, Germany)で補充されたDMEM培地(PAN Biotech, Germany)において、37°Cで、水飽和雰囲気において5 % COでルーチン的に培養した。培養継代を、週に3回、トリプシン/EDTA 1x(PAN)分割により実施した。
【0235】
マウス
到着後、雌のSCID beigeマウス(年齢10−12週;体重18−20g)Charles River, Sulzfeld, Germany)を、それらを新しい環境に慣れさせるため及び観察のために一週間、AALAAC認可の動物施設の検疫所に保持した。継続的な健康モニタリングを実施した。マウスを、12時間の明かり/12時間の暗闇の一日サイクルで、国際ガイドライン(GV-Solas; Felasa; TierschG)に従いSPF条件下に維持した。ダイエット食(Kliba Provimi 3347)及び水(濾過)を自由に与えた。実験研究プロトコルは、地方自治体により検討され、認証された(Regierung von Oberbayern; registration no. 211.2531.2-22/2003)。
【0236】
腫瘍細胞注入
注入の日に、腫瘍細胞を培養フラスコ(Greiner TriFlask)から収集し(トリプシン-EDTA)、50mlの培養培地に移し、一度洗浄し、PBS中に再懸濁させた。PBSを用いた更なる洗浄工程及び濾過(セルストレーナー; Falconφ100μm)の後、最終細胞タイターを1.5x10/mlに調整した。腫瘍細胞懸濁液を、細胞凝集を避けるためにホールピペットを用いて注意深く混合した。麻酔を、閉循環システムにおいて、プレインキュベーションチャンバー(plexiglas)、個々のマウスノーズマスク(silicon)、不燃性又は非爆発性の麻酔化合物イソフルラン(Pharmacia-Upjohn, Germany)を用いて、小動物のためのStephens吸入ユニットを使用して実施した。注入の2日前に、動物の毛を剃った。i.m.f.p.注入のために、細胞を、各麻酔マウスのright penultimate inguinal mammary fat padに、20μlの量で同所性注入した。同所性移植のために、細胞懸濁液を、Hamilton microliterシリンジ及び30Gx1/2”針を使用して、乳頭の下の皮膚から注入した。
【0237】
動物の治療
動物の治療を、〜80mm3の平均腫瘍体積でランダム化の日にそれぞれ開始した。マウスを、次の表に示すように異なる化合物を用いて週に一度、腹腔内処置した。
【0238】
腫瘍増殖のモニタリング
動物を、それらの健康状態について週に2xコントロールした。体重を、細胞注入後、週に2x記録した。腫瘍寸法を、ステージ分類の日、治療期間の開始時は週に2回、キャリパーにより測定した。腫瘍体積を、NCIプロトコル(B. Teicher; Anticancer drug development guide, Humana Press, 1997, Chapter 5, page 92)(腫瘍量=1/2ab、ここで「a」及び「b」はそれぞれ腫瘍の長及び短直径である)に従い算出した。
【0239】
終了基準を、臨界腫瘍量(1.7g又はO>1.5cmまで)、ベースラインから20%より多い体重減少、腫瘍潰瘍化又は動物の不良な一般状態とした。
【0240】
結果((図10)を参照)は、二重特異性二価<VEGF-ANG-2>抗体XMAb1が、単一特異性抗体での治療と比較して、Scid beigeマウスにおける異種移植腫瘍モデルColo205において、より高い腫瘍増殖阻害を示したことを示す。ANG2i-LC06及びベバシズマブの組合せの効果は、XMAb1と同等な結果を示した。XMAb1の最大効果は10mg/kgにより既に達せられた。
【0241】
第二の実験では、より大きな腫瘍に対するXMAb1の効果を分析した。
【0242】
動物の治療
動物の治療を、〜160mm3の平均腫瘍体積でランダム化の日にそれぞれ開始した。マウスを、次の表に示すように異なる化合物を用いて週に一度、腹腔内処置した。
【0243】
モニタリング:
動物を、それらの健康状態について週に2xコントロールした。体重を、細胞注入後、週に2x記録した。腫瘍寸法を、ステージ分類の日、治療期間の開始時は週に2回、キャリパーにより測定した。腫瘍体積を、NCIプロトコル(B. Teicher; Anticancer drug development guide, Humana Press, 1997, Chapter 5, page 92)(腫瘍量=1/2ab、ここで「a」及び「b」はそれぞれ腫瘍の長及び短直径である)に従い算出した。
【0244】
終了基準を、臨界腫瘍量(1.7g又はφ>1.5cmまで)、ベースラインから20%より多い体重減少、腫瘍潰瘍化又は動物の不良な一般状態とした。
【0245】
結果((図11)を参照)は、二重特異性二価<VEGF-ANG-2>抗体XMAb1が、単一特異性抗体での治療と比較して、Scid beigeマウスにおける異種移植腫瘍モデルColo205において、より高い腫瘍増殖阻害を示したことを示す。ANG2i-LC06及びベバシズマブの組合せの効果は、XMAb1と同等な結果を示した。XMAb1の最大効果は10mg/kgにより既に達せられた。
【0246】
総合すると、結果は、腫瘍サイズと独立して、XMAb1が、単一特異性抗体での治療と比較して優れた効果を示すことを実証する。
【0247】
これらのモデルにおける腫瘍停滞が、10mg/kgのAng2i-LC06+10mg/kgのアバスチンの組合せと比較して、10mg/kgのXMAb1の低い濃度ですでに得られた。
実施例 11
s.c.における微少血管密度に対するXMAb1による治療の効果Colo205異種移植
血管密度を、腫瘍スライドの全血管をカウントすることによって評価した。血管を、パラフィン包埋切片に対し蛍光抗マウスCD34抗体(クローンMEC14.7)で標識した。血管を定量化し、微小血管密度を、mmあたりの血管として算出した。全ての結果を平均±SEMとして表した。実験グループ間の有意な差を決定するために、Dunnetts法を使用した。p<0.05を統計的に有意とした。結果は、全腫瘍内MVDが、処置された腫瘍において低下したことを示す。ANG2i-LC06での治療がMVDを29%低減し、ベバシズマブが0%、ベバシズマブ+ANG2i-LC06が15%、XMAb1が28%低減した。
【0248】
実施例 12
s.c.における二重特異性抗体<VEGF-ANG-2>抗体のインビボ効果Scid beigeマウスにおけるN87異種移植モデル
腫瘍細胞株
ヒト胃癌細胞株N87癌細胞(NCI-N87(ATCC No.CRL 5822))。腫瘍細胞株を、10%ウシ胎児血清(PAN Biotech, Germany)及び2mMのL-グルタミン(PAN Biotech, Germany)で補充されたRPMI1640において、37°Cで、水飽和雰囲気において5%COでルーチン的に培養した。培養継代を、週に3回、トリプシン/EDTA1x(PAN)分割により実施した。
【0249】
マウス
到着後、雌のSCID beigeマウス(年齢10−12週;体重18−20g)Charles River, Sulzfeld, Germany)を、それらを新しい環境に慣れさせるため及び観察のために一週間、AALAAC認可の動物施設の検疫所に保持した。継続的な健康モニタリングを実施した。マウスを、12時間の明かり/12時間の暗闇の一日サイクルで、国際ガイドライン(GV-Solas; Felasa; TierschG)に従いSPF条件下に維持した。ダイエット食(Kliba Provimi 3347)及び水(濾過)を自由に与えた。実験研究プロトコルは、地方自治体により検討され、認証された(Regierung von Oberbayern; registration no. 211.2531.2-22/2003)。
【0250】
腫瘍細胞注入
注入の日に、細胞を培養フラスコ(Greiner T 75)から収集し、50mlの培養培地に移し、一度洗浄し、PBS中に再懸濁させた。PBSで更に洗浄した後、細胞濃度をVi-CellTM(Cell Viability Analyzer, Beckman Coulter, Madison, Wisconsin, U.S.A.)を用いて測定した。腫瘍細胞懸濁液(PBS)を、慎重に混合し(細胞凝集を低減するため)、氷上に保持した。細胞懸濁液を1.0mlシリンジに充填した。注入に対し、0.45x25mmの針サイズを使用した。原発腫瘍を生成するために、100μl量のPBS中における5x10のN87腫瘍細胞を、各マウスの右側腹部に皮下注入した。
【0251】
動物の治療
動物の治療を、〜130mm3の平均腫瘍体積でランダム化の日にそれぞれ開始した。マウスは、次の表に示すように異なる化合物を用いて週に一度、腹腔内処置される。
【0252】
腫瘍増殖のモニタリング
動物を、それらの健康状態について週に1xコントロールした。体重を、細胞注入後、週に1x記録した。腫瘍寸法を、ステージ分類の日、治療期間の開始時は週に2回、キャリパーにより測定した。腫瘍体積を、NCIプロトコル(B. Teicher; Anticancer drug development guide, Humana Press, 1997, Chapter 5, page 92)(腫瘍量=1/2ab、ここで「a」及び「b」はそれぞれ腫瘍の長及び短直径である)に従い算出した。
【0253】
終了基準を、臨界腫瘍量(1.7g又はφ>1.5cmまで)、ベースラインから20%より多い体重減少、腫瘍潰瘍化又は動物の不良な一般状態とした。
【0254】
結果は、二重特異性二価<VEGF-ANG-2>抗体XMAb1が、単一特異性抗体での治療と比較して、Scid beigeマウスにおける異種移植腫瘍モデルColo205において、より高い腫瘍増殖阻害を示したことを示す(図12)。
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]