(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5707491
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】高純度液化炭酸ガス製造方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C01B 31/20 20060101AFI20150409BHJP
【FI】
C01B31/20 C
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-515169(P2013-515169)
(86)(22)【出願日】2012年5月15日
(86)【国際出願番号】JP2012062424
(87)【国際公開番号】WO2012157648
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2013年7月30日
(31)【優先権主張番号】特願2011-111322(P2011-111322)
(32)【優先日】2011年5月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000187149
【氏名又は名称】昭和電工ガスプロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】菅原 広
(72)【発明者】
【氏名】小野 義宣
(72)【発明者】
【氏名】田中 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】那須 貴樹
【審査官】
森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−326429(JP,A)
【文献】
特開2001−261320(JP,A)
【文献】
特開2003−031533(JP,A)
【文献】
特開2010−254544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 31/00 − 31/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体状態の二酸化炭素を供給先に供給する液化炭酸ガス製造装置であって、
二酸化炭素を液体状態で貯蔵する貯槽と、二酸化炭素を気化させる蒸発器と、前記蒸発器の出口から流出する気相状態の二酸化炭素を凝縮して液体状態の二酸化炭素を生成する凝縮器と、前記貯槽内の液体状態の二酸化炭素を供給先に供給する供給ラインと、前記供給ラインから分岐され、前記貯槽内の液体状態の二酸化炭素の一部または全部を前記蒸発器に送る循環ラインと、前記凝縮器で生成した液体状態の二酸化炭素を前記貯槽に送る戻りラインと、を少なくとも備える循環系と、
外部の液体二酸化炭素源から二酸化炭素の供給を受け、前記循環系に気体状態、液体状態または気液混相状態で二酸化炭素を導入する導入手段と、
を有し、
前記蒸発器の出口と前記凝縮器の入口との間のライン上であって気相状態で二酸化炭素が流れる位置に、当該位置を流れる気相状態の二酸化炭素から水分及び有機物の少なくとも一方を除去する吸着装置が設けられている、液化炭酸ガス製造装置。
【請求項2】
前記供給先に供給される前記液体状態の二酸化炭素は、半導体デバイス製造プロセスにおいて用いられるものである、請求項1に記載の液化炭酸ガス製造装置。
【請求項3】
前記吸着装置の出口と前記凝縮器との間に配置されてフィルター処理を行うフィルターをさらに有する、請求項1または2に記載の液化炭酸ガス製造装置。
【請求項4】
前記導入手段は、前記循環ライン上あるいは前記蒸発器の入口において、前記循環系に液体状態の二酸化炭素を導入する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液化炭酸ガス製造装置。
【請求項5】
前記蒸発器は、二酸化炭素の気液界面が内部に形成された気液分離器である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液化炭酸ガス製造装置。
【請求項6】
前記循環ラインを流れる二酸化炭素を冷却する冷却器を有する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液化炭酸ガス製造装置。
【請求項7】
前記循環ラインから分岐し前記蒸発器及び前記凝縮器をバイパスして二酸化炭素を前記貯槽に戻すバイパスラインをさらに備える、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液化炭酸ガス製造装置。
【請求項8】
二酸化炭素の循環処理を行って液体状態の二酸化炭素を供給先に供給する液化炭酸ガス製造方法であって、
前記循環処理を行う循環系内において、二酸化炭素を気化させる蒸発器の出口から流れ出る気体状態の二酸化炭素を凝縮器により凝縮して液体状態の二酸化炭素として貯槽に貯える工程と、
前記供給先に対して前記液体状態の二酸化炭素を供給するために前記貯槽に接続された供給ラインから分岐する循環ラインを介して、前記貯槽から前記液体状態の二酸化炭素を前記蒸発器に供給する工程と、
外部の液体二酸化炭素源から二酸化炭素の供給を受けて、気体状態、液体状態または気液混相状態で前記循環系に対して二酸化炭素を導入する導入工程と、
前記蒸発器の出口と前記凝縮器の入口との間のライン上の位置で、気相状態で流れる二酸化炭素から水分及び有機物の少なくとも一方を除去する不純物除去工程と、
を有する液化炭酸ガス製造方法。
【請求項9】
前記供給先に供給される前記液体状態の二酸化炭素は、半導体デバイス製造プロセスにおいて用いられるものである、請求項8に記載の液化炭酸ガス製造方法。
【請求項10】
前記導入工程は、前記循環ライン上あるいは前記蒸発器の入口において、前記循環系に対して液体状態の二酸化炭素を導入する工程である、請求項8または9に記載の液化炭酸ガス製造方法。
【請求項11】
前記蒸発器内において気液界面が形成されるようにして、前記蒸発器内に供給された前記液体状態の二酸化炭素を気化させ、前記液体状態の二酸化炭素に含まれるパーティクルを液相側に移行させる工程を有する、請求項8乃至10のいずれか1項に記載の液化炭酸ガス製造方法。
【請求項12】
前記循環ラインを流れる二酸化炭素を冷却する工程をさらに有する、請求項8乃至11のいずれか1項に記載の液化炭酸ガス製造方法。
【請求項13】
前記蒸発器の液相分を排出することにより、前記液相分に移行した前記パーティクルを前記循環系から取り除く工程をさらに有する、請求項8乃至12のいずれか1項に記載の液化炭酸ガス製造方法。
【請求項14】
前記循環系内の二酸化炭素の清浄度が所定の水準に達したのち、前記循環ラインから分岐し前記蒸発器及び前記凝縮器をバイパスして二酸化炭素を前記貯槽に送るバイパスラインに対し、前記循環ラインを流れる前記液体状態の二酸化炭素の一部または全部を流す工程をさらに有する、請求項8乃至13のいずれか1項に記載の液化炭酸ガス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化二酸化炭素(液化CO
2)の製造方法及び装置に関し、半導体デバイス製造をはじめとする電子部品の製造工程などにおいて使用できる超高純度の液化CO
2を製造できる液化炭酸ガス製造方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスの精製や高純度化に関する技術としては、種々のガスについて、これまでにも多くのものが提案されている。二酸化炭素(炭酸ガス;CO
2)の精製に関して言えば、石油精製プロセスから発生するガスを回収して精製するような一般的によく知られているものから、用途を明確にした、例えば半導体デバイス製造プロセス向けのような、高純度精製を可能にする方法まで、その精製技術は目的に応じて多岐にわたっている。
【0003】
半導体市場等における昨今の急激な成長に伴い、高純度液化CO
2を用いた光学部品やマイクロデバイスなどの精密洗浄、超臨界CO
2を用いた半導体ウェハ洗浄及び乾燥などが提案されており、液化CO
2の用途や需要が拡大している。またこれらの用途においては、液化CO
2に高い品質水準(例えば、不純物量が極めて少ない)が求められている。
【0004】
半導体デバイス製造プロセスなどのナノレベルの微細かつ高精密なプロセスに用いることができるレベルにまで高純度のCO
2を得るためには、これまで以上に精製レベルを高めた炭酸ガス製造方法が必要となり、また、そのようなCO
2を安定して供給できるような工程管理方法、供給方法あるいは分析技術が求められるところである。
【0005】
ところで、ユースポイントに対して高純度の液体CO
2を安定して供給する装置の一つとして、循環精製型の液化炭酸ガス供給システムがある。循環精製型の液化炭酸ガス供給システムでは、液体CO
2を気化させてCO
2ガスとしこのCO
2ガスを凝縮させて再び液体CO
2にする循環系を使用し、循環系内でCO
2を循環させることによってCO
2の純度を高めている。特許文献1は循環精製型の液化炭酸ガス供給システムを開示している。
図1は、特開2006−326429号公報(特許文献1)の記載に基づいて構成された従来の循環精製型液化炭酸ガス製造装置の構成の一例を示している。
【0006】
図1に示す液化炭酸ガス製造装置では、高純度の液体CO
2を一時的に貯える貯槽11と、貯槽11の出口に設けられて液体CO
2を圧送するポンプ12と、ポンプ12の出口に設けられたフィルター13とが設けられている。フィルター13から流出した液体CO
2の一部が分岐してユースポイント30に供給され、残りは、圧力調整弁14を介して冷却器15に送られる。圧力調整弁14は、ユースポイント30に供給される液体CO
2の圧力を規定された圧力にするために設けられている。冷却器15に供給されて冷却された液体CO
2は、次に、蒸発器16に供給されて気液分離がなされる。蒸発器16にはヒーターが組み込まれて蒸発器16内にCO
2の気液界面が形成されるようになっている。蒸発器16に供給された液体状態のCO
2は気化し、難揮発性のパーティクル(微粒子)は液相側に残ることとなる。そして、蒸発器16において気化することにより精製されたCO
2ガスは、蒸発器16の気相側出口から、パーティクル類をさらに除去するためのフィルター17を介して凝縮器18に送られ、凝縮器18において冷却されることにより再度液化され、液体CO
2として貯槽11に戻される。この構成では、貯槽11、ポンプ12、フィルター13、圧力調整弁14、冷却器15、蒸発器16、フィルター17及び凝縮器18によってCO
2の循環系10が構成されており、ユースポイント30において使用されなかった液体CO
2が循環処理されている。蒸発器16において液相に移行したパーティクルは、蒸発器16の液相側出口に設けられた弁21を開放することによって系外に排出(ブロー)される。フィルター13は、ポンプ12には発塵のおそれがあるので、設けられている。
【0007】
循環系10に対してCO
2を供給する導入装置20は、液化炭酸ガスボンベやコールドエバポレーター(CE)などを液体CO
2源23として使用して、CO
2の導入手段として機能するものである。導入装置20は、液体CO
2源23からの液体CO
2を気化させる気化器24と、気化器24で気化したCO
2ガス中のパーティクルを除去するフィルター25とを備えている。フィルター25を通ったCO
2ガスを凝縮器18に導入することによって、循環系10に対してCO
2が供給される。
【0008】
ところで、一般的に得られるCO
2源からのCO
2は、それが気体状態であるか液体状態であるかによらず、少なくない量のパーティクルを含んでいる。工業用のものとして一般的に流通している液体CO
2は、特に多くのパーティクルを含んでいるし、洗浄や乾燥などで使用したCO
2を回収して精製する場合であっても、回収CO
2にはパーティクルが多く含まれる。そのようなCO
2源を使用するので、気化器24から流れ出る気体のCO
2をフィルター25に通すことによって、パーティクルを除去するようにしている。このとき気化器24の内面には、パーティクルが付着・堆積する。しかしながら、気化器24及びフィルター25だけでは確実にパーティクルを除去できるとは言えず、CO
2とともにパーティクルも導入装置20から循環系10に混入するおそれがある。循環系10では、導入装置20では除去できなかったパーティクルとポンプ12や配管において発生したパーティクルとが、蒸発器16及びフィルター13,17によって除去される。このように特許文献1の液化炭酸ガス製造方法では、精製される高純度液体CO
2へのパーティクルの混入を防ぐことができる。
【0009】
特開2006−347842号公報(特許文献2)には、高純度の液体CO
2を製造する方法として、液体CO
2を気化器で気化させ、気化したCO
2を除湿装置及び活性炭塔に通し、その後、精留塔において精製及び液化させることにより、より純度が高められた液体CO
2を得る方法が示されている。この方法では、オフサイトで高純度液体CO
2を製造してボンベなどの高圧容器に充填してユースポイントまで運搬し、ユースポイントにおいては高圧容器から高純度液体CO
2を取り出して使用する。したがって特許文献2に記載の方法では、高純度液体CO
2専用の高圧容器を必要としたり、そのような高純度CO
2を通常の純度のCO
2から分別して取り扱う必要があり、管理が煩雑で高コストになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−326429号公報
【特許文献2】特開2006−347842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
半導体デバイス製造プロセス用途への適用を目指したCO
2精製技術についてはこれまでもいくつか提案があるが、製造される高純度液体CO
2における水分や油分、パーティクル数の管理までを行った高純度CO
2の製造、管理及び供給の方法は知られていない。油分とは、気相のCO
2を対象としたフィルターでは取り除くことが難しい各種の有機物のことである。
【0012】
本発明の目的は、オンサイトでの高純度液体CO
2の製造に適し、液体CO
2中におけるパーティクル、水分及び有機物を容易に低減できる液化炭酸ガス製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明の別の目的は、オンサイトでの高純度液体CO
2の製造に適し、液体CO
2中におけるパーティクル、水分及び有機物を容易に低減できる液化炭酸ガス製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の液化炭酸ガス製造装置は、液体状態の二酸化炭素を供給先に供給する液化炭酸ガス製造装置であって、二酸化炭素を液体状態で貯蔵する貯槽と、二酸化炭素を気化させる蒸発器と、蒸発器の出口から流出する気相状態の二酸化炭素を凝縮して液体状態の二酸化炭素を生成する凝縮器と、貯槽内の液体状態の二酸化炭素を供給先に供給する供給ラインと、供給ラインから分岐され、貯槽内の液体状態の二酸化炭素の一部または全部を蒸発器に送る循環ラインと、凝縮器で生成した液体状態の二酸化炭素を貯槽に送る戻りラインと、を少なくとも備える循環系と、外部の液体二酸化炭素源から二酸化炭素の供給を受け、循環系に気体状態、液体状態または気液混相状態で二酸化炭素を導入する導入手段と、を有し、液体二酸化炭素源から凝縮器までのライン上であって気相状態で二酸化炭素が流れる位置に、その位置を流れる気相状態の二酸化炭素から水分及び有機物の少なくとも一方を除去する吸着装置が設けられている。
【0015】
本発明の液化炭酸ガス製造方法は、二酸化炭素の循環処理を行って液体状態の二酸化炭素を供給先に供給する液化炭酸ガス製造方法であって、循環処理を行う循環系内において、二酸化炭素を気化させる蒸発器の出口から流れ出る気体状態の二酸化炭素を凝縮器により凝縮して液体状態の二酸化炭素として貯槽に貯える工程と、供給先に対して液体状態の二酸化炭素を供給するために貯槽に接続された供給ラインから分岐する循環ラインを介して、貯槽から液体状態の二酸化炭素を蒸発器に供給する工程と、外部の液体二酸化炭素源から二酸化炭素の供給を受けて、気体状態、液体状態または気液混相状態で循環系に対して二酸化炭素を導入する導入工程と、液体二酸化炭素源から凝縮器までのライン上の位置で、気相状態で流れる二酸化炭素から水分及び有機物の少なくとも一方を除去する不純物除去工程と、を有する。
【0016】
本発明によれば、液体CO
2源などに由来する水分や有機物が吸着除去され、また蒸発器の出口から流出する気体状態の二酸化炭素におけるパーティクルの量が減少し、ユースポイントなどに対して、パーティクルのみならず水分や有機物などの不純物が高度に除去された高純度液体CO
2を安定して供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】従来の循環精製型の液化炭酸ガス製造装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】本発明の実施の一形態の液化炭酸ガス製造装置の構成を示す図である。
【
図3】バイパスラインを備える液化炭酸ガス製造装置の構成を示す図である。
【
図4】別の実施形態の液化炭酸ガス製造装置の構成を示す図である。
【
図5】さらに別の実施形態の液化炭酸ガス製造装置の構成を示す図である。
【
図6】さらに別の実施形態の液化炭酸ガス製造装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に基づく液化炭酸ガス製造装置は、
図1に示した循環精製型の液化炭酸ガス製造装置と同様の構成のものとして構成できるが、液化CO
2源から凝縮器に至るまでのライン上であってCO
2が気相状態で流れる位置に、水分及び有機物の少なくとも一方をCO
2ガスから取り除く吸着装置が設けられていることを特徴とするものである。吸着装置は、水分及び有機物の少なくとも一方を吸着する吸着剤を備えている。
【0019】
油分に代表される有機物や水分が高純度CO
2の循環系に持ち込まれると、これらはフィルターなどでは除去しにくいので、ユースポイントに供給される液体CO
2における不純物となる。水分や有機物を吸着装置で除去することにより、ユースポイントに対して安定して高純度の液体CO
2を供給できるようになる。気化状態のCO
2を吸着装置に通すことから、吸着装置内に充填された吸着剤の性能を最大限に発揮することができるようになる。また、気体状態のCO
2に対して吸着処理を行うことから、吸着剤からの溶出や、吸着装置自体からのパーティクルの吐き出しが少なくなる。
【0020】
吸着装置としては、例えば、水分除去あるいは有機物(油分)除去のための吸着剤を吸着塔に充填したものを用いることができる。この場合、水分除去のための吸着塔と有機物除去のための吸着塔とを別個に設けてこれらを直列に接続してもよいし、あるいは、水分除去に適した吸着剤と有機物除去に適した吸着剤とを単一の吸着塔に充填するようにしてもよい。液体CO
2源が何であるかによってそこに含まれる水分や有機物の量、有機物の種類が異なるから、液体CO
2源に応じて吸着剤を選択することが好ましい。一般的に公知なものとして、水分除去用の吸着剤には、ゼオライト、モレキュラーシーブス、活性アルミナ、シリカゲルなどを用いることができ、有機物除去用の吸着剤には活性炭などを用いることができる。水分除去用、有機物除去用を問わず、これらの吸着剤は、その使用前に、十分に低水分管理されたドライガスを通すことによって、それらの吸着剤内の水分を予め除去しておくことが好ましい。
【0021】
液体CO
2源としては、ボンベあるいはコールドエバポレーター内に貯蔵されているものを使用することもできるし、あるいは、ユースポイントで使用したものを回収した回収CO
2を使用することもできる。市販の液体CO
2として、ある程度の純度が見込め、さらに比較的安価であるものは、食品用CO
2すなわち食品添加物としての基準に則って製造されたCO
2である。しかしながら食品用CO
2には、少量の水分及び有機物が含まれている。本発明に基づく液化炭酸ガス製造装置は、上述のように吸着装置を設けることにより、食品用CO
2を外部からの液化CO
2源として用いて、例えば、半導体デバイス製造プロセスへの適用できる高純度の液体CO
2を生成できる。
【0022】
循環系内に設けられる蒸発器としては、液体CO
2を単に気化させる機能を有するものであってもよい。あるいは蒸発器は、内部に気液界面が形成されており、液体CO
2を気化させるとともに液体CO
2中に含まれていた難揮発性のパーティクル(微粒子)を液相側に移行させる機能を有する気液分離器であってよい。気液分離器である蒸発器を使用すれば、適時に液相分をパージ(排出)することによって、パーティクル類を系外に排出することができる。
【0023】
図2は、本発明の実施の一形態の液化炭酸ガス製造装置の構成を示している。
図2に示す液化炭酸ガス製造装置は、
図1に示した液化炭酸ガス製造装置と同様の構成のものであり、ユースポイント30に対して液体CO
2(二酸化炭素)を供給するものであって、大別すると、循環系10と導入装置20とを備えている。
【0024】
循環系10は、
図1に示したものと同じ構成である。すなわち循環系10は、高純度液体CO
2を一時的に貯える貯槽11と、貯槽11の出口に設けられたポンプ12と、ポンプ12の出口に設けられたフィルター13と、ユースポイント30に供給される液体CO
2の圧力を調整するための圧力調整弁14と、圧力調整弁14から流れ出た液体CO
2を冷却する冷却器15と、冷却器15から流れ出る液体CO
2に対して気液分離を行う蒸発器16と、蒸発器16の出口に接続したフィルター17と、フィルターから17から流れ出た気体CO
2を凝縮する凝縮器18と、を備えており、凝縮器18で液化したCO
2が貯槽11に戻されるようになっている。ユースポイント30へは、フィルター13の出口からの液体CO
2が循環系10から分岐するように供給され、ユースポイント30で使用されなかった残りの液体CO
2が圧力調整弁14に送られるようになっている。貯槽11には、不純物成分として混入している他の低沸点成分(例えば空気)などを外部に強制的に排出(ブロー)するための弁22も設けられている。冷却器15は設けなくてもよいが、蒸発器16において気液分離を精密に行うためには液体CO
2への液化を確実なものとすることが好ましく、そのためには、冷却器15を設ける方が好ましい。
【0025】
図2に示した構成では、貯槽11からポンプ12及びフィルター13を経てユースポイント30に至るラインが、液体CO
2のユースポイント30への供給ラインであり、供給ラインから分岐し圧力調整弁14を介して蒸発器16の入口に至るラインが液体CO
2の循環ラインである。また、凝縮器18から貯槽11に向かうラインが液体CO
2についての戻りラインとなる。
【0026】
循環系において、内部にCO
2の気液界面が形成されている蒸発器(すなわち気液分離器)を蒸発器16として使用することができる。圧力調整弁14は、ユースポイント30に供給される液体CO
2の圧力を規定された圧力にするために設けられているが、ユースポイント30で必要とする供給圧力や供給速度の範囲などによっては必ずしも設ける必要はない。
【0027】
導入装置20は、外部の液体二酸化炭素源から二酸化炭素の供給を受けて循環系10に二酸化炭素を導入する導入手段として機能するものである。導入装置20は、液体CO
2源23からの液体CO
2を気化させる気化器24と、気化器24からのCO
2ガスから水分及び有機物を除去する吸着装置27と、吸着装置27から流れ出るCO
2ガスからパーティクルを除去するフィルター25とを備えており、フィルター25からCO
2ガスが循環系10の凝縮器18に供給される。吸着装置27としては、上述したように、水分除去用の吸着剤と有機物(油分)除去用の吸着剤とを備えたものが用いられる。
【0028】
この構成では、液体CO
2源23からの液体CO
2が気化器24で気化されるので、水分や有機物が含まれていてもそれらは吸着装置27によって吸着され除去される。また、吸着装置27からは、吸着剤に起因するパーティクルが発生することがあるが、吸着装置27で発生したパーティクルは、液体CO
2源23に由来するパーティクルとともに、フィルター25によって除去され、それでも除去されなかったパーティクルは、蒸発器16及びフィルター17などによって除去されることになる。したがって、ユースポイント30に対し、水分、有機物及びパーティクルが送られることが防止される。例えば、難揮発性または蒸気圧が低く、液体CO
2に分散したり溶け込みやすいパーティクルは、気液分離機能を有する蒸発器を用いているのであれば、その蒸発器16において液相側に移行し、CO
2から除去される。蒸発器16において液相側に移行したパーティクルは、蒸発器16の液相側排出口に設けられている弁21を開放することにより、循環系10の外に排出(パージ)することができる。特にこの構成では、循環系10内でCO
2を循環させる運転を行っているときであっても、適切なタイミングにより弁21を開放することによってパーティクルを系外に排出でき、これにより、循環系10の全体や後段のフィルター13,17等への負荷を低減することができ、高品質の液体CO
2を安定して得られるようになり、液化炭酸ガス製造装置全体のメンテナンス頻度を低減することが可能になる。気相中に残ったパーティクルは、蒸発器16の出口に接続されたフィルター17によって除去することができる。フィルター17は、気相状態のCO
2に対してフィルター処理を行うので、高い分離除去効率を発揮する。
【0029】
また、本実施形態の液化炭酸ガス製造装置において、供給ラインから冷却器15及び蒸発器16を経ることなく精製CO
2を貯槽11に戻すバイパスラインを備えるようにしてもよい。
図3は、バイパスラインを備えた液化炭酸ガス製造装置を示している。循環ラインにおいて圧力調整弁14から冷却器15に接続する配管に弁31が設けられ、圧力調整弁14と弁31との間の位置からバイパスライン33が分岐しており、バイパスライン33の先端は貯槽11に直接接続している。バイパスライン33には、弁31と協働して切替弁として機能する弁32が設けられている。
【0030】
図3に示す液化炭酸ガス製造装置では、運転開始当初は弁31を開け弁32を閉じ蒸発器16や凝縮器18を通るように循環系10内でCO
2を循環させることにより、高清浄度のCO
2を生成する。高清浄度のCO
2が十分に生成して循環系10内を循環するようになったら、例えば、循環系10内のCO
2の清浄度が所定の水準に達したら、弁31を閉じて弁32を開け、液体CO
2が蒸発器16や凝縮器18を経由せずに循環系10内を循環するようにする。場合によっては、弁31及び弁32をどちらも半開状態とし、圧力調整弁14から流出する液体CO
2の一部がバイパスライン33を流れ、残りが蒸発器16に供給されるようにしてもよい。蒸発器16及び凝縮器18にCO
2を通すことで高清浄度のCO
2が生成したのちはこの高清浄度のCO
2を再び蒸発器16や凝縮器18に通さずに済むので、蒸発器16や凝縮器18での処理のために必要なエネルギーが不要となり、エネルギーの消費を抑えることができる。
【0031】
図4は、本発明の別の実施形態の液化炭酸ガス製造装置を示している。
図4に示す液化炭酸ガス製造装置は、
図2に示したものと比べ、導入装置20から循環系10へのCO
2ガスの導入位置が異なっている。
図4に示す液化炭酸ガス製造装置では、循環ラインの冷却器15の入口側に、導入装置20からCO
2ガスが供給されている。供給されたCO
2ガスは、圧力調整弁14からの液体CO
2と混合され、冷却器15で液化されて、気液分離機能を有する蒸発器16に送られる。この構成では、液体CO
2源23から供給されたCO
2が必ず蒸発器16において気液分離処理の対象となるので、より確実にパーティクルが除去されることとなり、パーティクル数の多い液体CO
2源を用いた場合であっても、パーティクル数が十分に低減された高純度液体CO
2をユースポイント30に供給することができる。
【0032】
図4に示した液化炭酸ガス製造装置においても、
図3に示したものと同様に、循環ラインから冷却器15及び蒸発器16を経ることなく精製CO
2を貯槽11に戻すバイパスラインを備えるようにしてもよい。バイパスラインを設けることによって、蒸発器16や凝縮器18を通すことによって清浄度の高いCO
2がひとたび生成されると、この高清浄度のCO
2を再び蒸発器16や凝縮器18に通す必要がなくなるので、エネルギーの消費を抑えることができる。
【0033】
図5は、本発明のさらに別の実施形態の液化炭酸ガス製造装置を示している。
図5に示す液化炭酸ガス製造装置は、
図2に示した液化炭酸ガス製造装置と同様の構成のものであるが、吸着装置27が導入装置20内でなくて循環系10内に設けられていること、導入装置20の内部に気化器が設けられずに液体CO
2源23からCO
2が蒸発器16の入口側で循環系10に導入されること、冷却器が設けられていない点で、
図2に示したものと相違する。
【0034】
図5に示した液化炭酸ガス製造装置では、気化器を設けていないので、導入装置20では、液体CO
2源23からの液体CO
2が、液体CO
2中のパーティクルを除去するフィルター28に直接供給されており、フィルター28から流出する液体CO
2が循環系10に供給される。循環系10における液体CO
2の供給位置は、圧力調整弁14の出口から蒸発器16の入口まで管路、あるいは蒸発器16の入口である。すなわち、圧力調整弁14からの液体CO
2と導入装置20からの液体CO
2とが合流して蒸発器16に供給される。ただし、導入装置20における配管長や周囲温度等によっては、循環系10への導入位置において導入装置20から循環系10に供給されるCO
2の一部または全部が気化していてもよい。吸着装置27は、循環系10内において、蒸発器16の出口とフィルター17との間に設けられている。吸着装置27としては上述したものと同様のものを使用できる。
【0035】
この構成においても、液体CO
2源23から凝縮器18までのライン上であってCO
2ガスが流れる位置に吸着装置27が設けられていることとなり、液体CO
2源からの液体CO
2に水分や有機物が含まれていても、それらは吸着装置27によって吸着され除去される。また、導入装置20から循環系10に供給されるCO
2中に、パーティクルやその他の難揮発性の物質が含まれていたとしても、それらは蒸発器16及びフィルター17などによってCO
2中から除去される。内部に気液界面が形成されている蒸発器16を使用している場合であれば、気相のCO
2よりも液相のCO
2に対して親和性を有し液体CO
2側に溶けやすい不純物も、蒸発器16によって、循環系10内を循環するCO
2から除去される。吸着装置27自体がパーティクルを発生したとしても、そのパーティクルはフィルター17で除去される。したがって、水分、有機物及びパーティクルがユースポイント30に送られることが防止される。
【0036】
ところで、
図5に示した液化炭酸ガス製造装置において、蒸発器16の内部圧力よりも液体CO
2源23からの液体CO
2の圧力が十分に高くない場合には、導入装置20から循環系10への液体CO
2の導入が適切に行えないことがある。そのような場合には、例えば、液体CO
2源23とフィルター28との間に、液体CO
2の圧送を行うポンプを配置すればよい。循環系10内にあるパーティクルが蒸発器16において液相側に移行するためには、CO
2が完全に液体状態で蒸発器16に供給されることが好ましい。運転条件などによっては圧力調整弁14の出口から流れ出るCO
2の一部が気化していることがあるので、そのような場合には、液体状態でCO
2が蒸発器16に供給されることを確実とするために、圧力調整弁14と蒸発器16の入口との間を流れるCO
2を冷却する冷却器を設け、冷却器の出口と蒸発器16の入口との間で導入装置20から液体CO
2が導入されるようにすればよい。また、導入装置20からのCO
2も完全に液体状態で蒸発器16に供給されることが好ましく、冷却器15の手前で循環系にCO
2を導入してもよい。ユースポイント30に対して超臨界CO
2を供給したい場合には、圧力調整弁14に設定される圧力をCO
2の臨界圧力以上とするとともに、ポンプ12からユースポイント30までの間にヒーターを設置してCO
2の温度をCO
2の臨界温度以上にまで上昇させるようにすればよい。
【0037】
図5に示した液化炭酸ガス製造装置においても、
図3に示したものと同様に、循環ラインから冷却器15及び蒸発器16を経ることなく精製CO
2を貯槽11に戻すバイパスラインを備えるようにしてもよい。バイパスラインを設けることによって、蒸発器16や凝縮器18を通すことによって清浄度の高いCO
2がひとたび生成されると、この高清浄度のCO
2を再び蒸発器16や凝縮器18に通す必要がなくなるので、エネルギーの消費を抑えることができる。
【0038】
図6に示す液化炭酸ガス製造装置は、
図5に示す液化炭酸ガス製造装置に対し、圧力調整弁14と蒸発器16の入口との間に冷却器15を設け、ユースポイント30に対して超臨界CO
2を供給するためにフィルター13の出口にヒーター19を設け、導入装置20において液体CO
2の圧力を高めるために液体CO
2源23とフィルター28との間にポンプ26を設けたものを示している。これらの冷却器15、ヒーター19及びポンプ26は、それぞれ独立に必要に応じて設けることができるものである。
【0039】
図6に示した液化炭酸ガス製造装置においても、
図3に示したものと同様に、循環ラインから冷却器15及び蒸発器16を経ることなく精製CO
2を貯槽11に戻すバイパスラインを備えるようにしてもよい。バイパスラインを設けることによって、蒸発器16や凝縮器18を通すことによって清浄度の高いCO
2がひとたび生成されると、この高清浄度のCO
2を再び蒸発器16や凝縮器18に通す必要がなくなるので、エネルギーの消費を抑えることができる。
【符号の説明】
【0040】
10 循環系
11 貯槽
12,26 ポンプ
13,17,25,28 フィルター
14 圧力調整弁
15 冷却器
16 蒸発器
18 凝縮器
19 ヒーター
20 導入装置
21,22,31,32 弁
23 液体CO
2源
24 気化器
27 吸着装置
30 ユースポイント
33 バイパスライン