(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
出射面と、前記出射面の反対側に配置された反射面と、前記出射面で内部反射された後に前記反射面で内部反射されて前記出射面から出射する光を導入する入射面と、を含む中実の導光体と、
前記入射面から前記導光体内に導入され、前記出射面で内部反射された後に前記反射面で内部反射されて前記出射面から出射する光を放射するように、前記入射面に対向して配置されたLED光源と、
を備えており、
前記反射面は、複数の反射領域に分割されており、
前記複数の反射領域は、基準位置に配置された反射領域と前記基準位置に配置された反射領域より前記出射面寄りにシフトした位置に配置された反射領域とを含んでおり、
前記複数の反射領域は、前記出射面で内部反射された光が当該複数の反射領域間に形成される段差に入射しないように、前記入射面に近い反射領域ほど前記基準位置に配置された反射領域より前記出射面寄りにシフトした位置に配置されていることを特徴とする車両用灯具ユニット。
前記複数の反射領域は、反射領域ごとに、内部反射して前記出射面から出射する光が所定配光パターンを構成する部分配光パターンを形成するように構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の車両用灯具ユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の灯具ユニット90においては、導光体91の前面91aが平面で、その反対側の後面91bが連続面(回転放物面)とされているため、前面91aと後面91bとの間の肉厚が厚くなり、これに起因して導光体92の成形時間やその成形に用いる透明樹脂材料が増加し、コストが上昇するという問題がある。一般的に成形時間は肉厚の2乗に比例する。
【0007】
また、肉厚が厚いと導光体91の精度(ひいては配光)に影響を与えるヒケが発生しやすくなるという問題もある。また、肉厚が厚いと(すなわち、導光体91内の光路長が長いと)、導光体91の成形に用いる透明樹脂材料による吸収やヘイズ(体積散乱)の影響を受けやすくなるという問題もある。なお、透明樹脂材料による吸収やヘイズ(体積散乱)の影響を減らすために、導光体91内の光路長を短くすると、導光体91全体のサイズが小さくなり、光利用効率が低下するという問題もある。
【0008】
また、特許文献1に記載の灯具ユニット90においては、導光体91の後面91bが連続面(回転放物面)とされているため、配光形成の自由度が低いという問題がある。このため、特許文献1においては、異なる配光を形成する複数の灯具ユニット90を組み合わせて目的とする配光を合成している。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、第1に、従来と比べ、肉厚が薄い導光体を用いた車両用灯具ユニットを提供することを目的とする。第2に、配光形成の自由度を高めることが可能な車両用灯具ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、出射面と、前記出射面の反対側に配置された反射面と、前記出射面で内部反射された後に前記反射面で内部反射されて前記出射面から出射する光を導入する入射面と、を含む中実の導光体と、前記入射面から前記導光体内に導入され、前記出射面で内部反射された後に前記反射面で内部反射されて前記出射面から出射する光を放射するように、前記入射面に対向して配置されたLED光源と、を備えており、前記反射面は、複数の反射領域に分割されており、前記複数の反射領域は、基準位置に配置された反射領域と前記基準位置に配置された反射領域より前記出射面寄りにシフトした位置に配置された反射領域とを含んで
おり、前記複数の反射領域は、前記出射面で内部反射された光が当該複数の反射領域間に形成される段差に入射しないように、前記入射面に近い反射領域ほど前記基準位置に配置された反射領域より前記出射面寄りにシフトした位置に配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、分割された複数の反射領域のうち特定の反射領域を出射面寄りにシフトした位置に配置した分、導光体の肉厚を薄くすることが可能となる。
【0012】
また、請求項1に記載の発明によれば、導光体の肉厚を薄くすることが可能であるため、その分、導光体の成形時間やその成形に用いる透明樹脂材料が減少し、コストを抑えることが可能となる。
【0013】
また、請求項1に記載の発明によれば、導光体の肉厚を薄くすることが可能であるため、導光体の精度(ひいては配光)に影響を与えるヒケの発生を抑えることが可能となる。
【0014】
また、請求項1に記載の発明によれば、導光体の肉厚を薄くすること(すなわち、導光体内の光路長を短くすること)が可能であるため、導光体の成形に用いる透明樹脂材料による吸収やヘイズ(体積散乱)の影響を抑えることが可能となる。
【0015】
以上のように、請求項1に記載の発明によれば、従来と比べ、肉厚が薄い導光体を用いた車両用灯具ユニットを提供することが可能となる。
【0016】
また、請求項1に記載の発明によれば、分割された複数の反射領域のうち特定の反射領
域を出射面寄りにシフトした位置に配置したことで、反射領域間に段差が現れる新規見栄
えの車両用灯具ユニットを提供することが可能となる。
また、請求項1に記載の発明によれば、分割された複数の反射領域のうち入射面に近い反射領域ほど出射面寄りにシフトした位置に配置されているため、内部反射された光が反射領域間に現れる段差に入射するのを防止することが可能となる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、出射面と、前記出射面の反対側に配置された反射面と、前記反射面で内部反射されて前記出射面から出射する光を導入する入射面と、を含む中実の導光体と、前記入射面から前記導光体内に導入され、前記反射面で内部反射されて前記出射面から出射する光を放射するように、前記入射面に対向して配置されたLED光源と、を備えており、前記反射面は、複数の反射領域に分割されており、前記複数の反射領域は、基準位置に配置された反射領域と前記基準位置に配置された反射領域より前記出射面寄りにシフトした位置に配置された反射領域とを含んで
おり、前記複数の反射領域は、前記出射面で内部反射された光が当該複数の反射領域間に形成される段差に入射しないように、前記入射面に近い反射領域ほど前記基準位置に配置された反射領域より前記出射面寄りにシフトした位置に配置されていることを特徴とする。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、分割された複数の反射領域のうち特定の反射領域を出射面寄りにシフトした位置に配置した分、導光体の肉厚を薄くすることが可能となる。
【0019】
また、請求項2に記載の発明によれば、導光体の肉厚を薄くすることが可能であるため、その分、導光体の成形時間やその成形に用いる透明樹脂材料が減少し、コストを抑えることが可能となる。
【0020】
また、請求項2に記載の発明によれば、導光体の肉厚を薄くすることが可能であるため、導光体の精度(ひいては配光)に影響を与えるヒケの発生を抑えることが可能となる。
【0021】
また、請求項2に記載の発明によれば、導光体の肉厚を薄くすること(すなわち、導光体内の光路長を短くすること)が可能であるため、導光体の成形に用いられる透明樹脂材料による吸収やヘイズ(体積散乱)の影響を抑えることが可能となる。
【0022】
以上のように、請求項2に記載の発明によれば、従来と比べ、肉厚が薄い導光体を用いた車両用灯具ユニットを提供することが可能となる。
【0023】
また、請求項2に記載の発明によれば、分割された複数の反射領域のうち特定の反射領域を出射面寄りにシフトした位置に配置したことで、反射領域間に段差が現れる新規見栄えの車両用灯具ユニットを提供することが可能となる。
【0024】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記反射面は、少なくとも1つの水平面により複数の反射領域に分割されていることを特徴とする。
【0025】
請求項3によれば、少なくとも1つの水平面により分割された複数の反射領域のうち特定の反射領域を出射面寄りにシフトした位置に配置した分、導光体の肉厚を薄くすることが可能となる。
【0026】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の発明において、前記反射面は、少なくとも1つの鉛直面により複数の反射領域に分割されていることを特徴とする。
【0027】
請求項4によれば、反射面を少なくとも1つの鉛直面により分割された複数の反射領域のうち特定の反射領域を出射面寄りにシフトした位置に配置した分、導光体の肉厚を薄くすることが可能となる。
【0028】
請求項5に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の発明において、前記反射面は、少なくとも2つの鉛直面により複数の反射領域に分割されており、前記2つの鉛直面との間の反射領域はその両隣の反射領域より前記出射面寄りにシフトした位置に配置されていることを特徴とする。
【0029】
請求項5によれば、少なくとも2つの鉛直面により分割された複数の反射領域のうち2つの鉛直面との間の反射領域を出射面寄りにシフトした位置に配置した分、導光体の肉厚を薄くすることが可能となる。
【0032】
請求項
6に記載の発明は、請求項1から
5のいずれかに記載の発明において、前記複数の反射領域は、反射領域ごとに、内部反射して前記出射面から出射する光が所定配光パターンを構成する部分配光パターンを形成するように構成されていることを特徴とする。
【0033】
請求項
6に記載の発明によれば、反射面が連続面(回転放物面)とされている従来と比べ、反射面が複数の反射領域に分割され、個々の反射領域が固有の部分配光パターンを形成するように構成されている分、配光形成の自由度を高めることが可能な車両用灯具ユニットを提供することが可能となる。
請求項7に記載の発明は、出射面と、前記出射面の反対側に配置された反射面と、前記出射面で内部反射された後に前記反射面で内部反射されて前記出射面から出射する光を導入する入射面と、を含む中実の導光体において、前記反射面は、複数の反射領域に分割されており、前記複数の反射領域は、基準位置に配置された反射領域と前記基準位置に配置された反射領域より前記出射面寄りにシフトした位置に配置された反射領域とを含んでおり、前記複数の反射領域は、前記出射面で内部反射された光が当該複数の反射領域間に形成される段差に入射しないように、前記入射面に近い反射領域ほど前記基準位置に配置された反射領域より前記出射面寄りにシフトした位置に配置されていることを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、出射面と、前記出射面の反対側に配置された反射面と、前記反射面で内部反射されて前記出射面から出射する光を導入する入射面と、を含む中実の導光体において、前記反射面は、複数の反射領域に分割されており、前記複数の反射領域は、基準位置に配置された反射領域と前記基準位置に配置された反射領域より前記出射面寄りにシフトした位置に配置された反射領域とを含んでおり、前記複数の反射領域は、前記出射面で内部反射された光が当該複数の反射領域間に形成される段差に入射しないように、前記入射面に近い反射領域ほど前記基準位置に配置された反射領域より前記出射面寄りにシフトした位置に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、第1に、従来と比べ、肉厚が薄い導光体を用いた車両用灯具ユニットを提供することが可能となる。第2に、配光形成の自由度を高めることが可能な車両用灯具ユニットを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】実施形態における車両用灯具ユニットの(a)側断面図であり、(b)平面図である。
【
図2】実施形態における導光体の後面の決定手順を説明するための図である。
【
図3】実施形態における車両用灯具ユニットの発光態様を説明するための図である。
【
図4】実施形態の変形例における車両用灯具ユニットの側断面図である。
【
図5】
図4の(a)II−II線での断面図であり、(b)III−III線での断面図である。
【
図6】実施形態の変形例における導光体の後面の決定手順を説明するための図である。
【
図7】実施形態の変形例における導光体の後面の不成立条件を説明するための図である。
【
図8】実施形態における導光体の前面を凸状にした場合の(a)車両用灯具ユニットの平面図であり、(b)配光パターン図である。
【
図9】実施形態における導光体の前面を凹状にした場合の(a)車両用灯具ユニットの平面図であり、(b)配光パターン図である。
【
図10】車両用灯具ユニット1B(変形例2)の斜視図である。
【
図11】(a)
図10に示した車両用灯具ユニット1BのA−A断面図、(b)B−B断面図、(c)背面側から見た斜視図である。
【
図12】(a)車両用灯具ユニット1B(変形例2)の縦断面図、(b)車両用灯具ユニット1(実施形態)の縦断面図である。
【
図13】車両用灯具ユニット1B(変形例2)の縦断面図(光路図含む)である。
【
図14】(a)個々の反射領域a1〜a3、b1〜b3、c1〜c3が形成する部分配光パターンA1〜A1、B1〜B3、C1〜C3の例、(b)部分配光パターンA1〜A1、B1〜B3、C1〜C3を合成した合成配光パターンの例である。
【
図15】(a)車両用灯具ユニット1Cの正面側から見た斜視図、(b)背面側から見た斜視図、(c)縦断面図である。
【
図16】(a)車両用灯具ユニット1D(変形例3)の正面側から見た斜視図、(b)縦断面図、(c)背面側から見た斜視図、(d)比較例である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0037】
本実施形態の車両用灯具ユニット1は、車両前部の左右両側にそれぞれ配置されて車両用前照灯を構成する。
【0038】
図1(a)は、本実施形態における車両用灯具ユニット1の側断面図であり、
図1(b)は、車両用灯具ユニット1の平面図である。
【0039】
これらの図に示すように、車両用灯具ユニット1は、前方への光軸Ax(車両前後方向に延びる光軸Ax)に沿って光を照射するものであり、光源2と導光体3を備えている。
【0040】
光源2は、例えば、青色LEDチップと蛍光体とを組み合わせた白色LED光源である。この光源2は、光軸Axに沿った方向に対し斜め前方へ光を出射させるように配設されており、より詳しくは、垂直断面での出光方向の中心軸と光軸Axとのなす角度θが45±10°となるように、出光面21が前方斜め下方へ向けられている。
【0041】
導光体3は、光源2の前方斜め下方に配置された透光部材であり、光源2から出射された光を光軸Axに沿った平行光となるように導光して出射させるものである。
【0042】
導光体3の上部後方には、光源2から出射された光を当該導光体内3へ入射させる入射面31が形成されている。この入射面31は、隙間を介在させて光源2の出光面21と対向しており、この出光面21と略平行になるように、垂直断面において光軸Axに対して45±10°の角度をなしている。
【0043】
導光体3の前面3aは、上下方向及び左右方向に沿った平面であり、後述するように、入射面31から当該導光体3内へ入射した光を後方へ内部反射させる第一反射面32と、当該導光体3内から光を出射させる出射面34とを構成している。
【0044】
一方、導光体3の後面3bは、前面3aの下端に向かって先細り状に湾曲した湾曲面であり、後述するように、第一反射面32で内部反射された光を光軸Axに沿った平行光としつつ出射面34へ内部反射させる第二反射面33を構成している。
【0045】
以上のように、導光体3は、出射面34、出射面34の反対側に出射面34に対して傾斜した姿勢で配置された第二反射面33、第一反射面32を兼ねる出射面34で内部反射された後に第二反射面33で内部反射されて出射面34から出射する光を導入する入射面31を含む中実の導光レンズである。導光体3は、例えば、アクリル、ポリカーボネート又はシクロオレフィンポリマー等の透明樹脂材料を射出成形することで形成されている。また、光源2は、入射面31から導光体3内に導入され、第一反射面32を兼ねる出射面34で内部反射された後に第二反射面33で内部反射されて出射面34から出射する光を放射するように、入射面31に対向して配置されている。
【0046】
ここで、導光体3の後面3b(第二反射面33)の垂直断面形状の決定手順について説明する。
【0047】
まず、
図2(a)に示すように、光源2から所定の範囲内で出射した光を想定し、入射面31での屈折を考慮しつつ、その光線を導光体3の前面3aまでトレースする。
【0048】
次に、
図2(b)に示すように、この光線を導光体3の前面3a(第一反射面32)で全反射されるものとして更にトレースする。
【0049】
次に、
図2(c)に示すように、導光体3後側の所定の開始点Pを始点として、トレースしてきた一番上の光線が光軸Axに沿って前方へ全反射されるように、反射点Rでの傾き角を決定する。
【0050】
次に、決定した傾き角の直線と、トレースしてきた上から二番目の光線との交点において、上記同様に傾き角を決定する。
【0051】
そして、
図2(d)に示すように、全ての光線について各交点での傾き角を順次決定し、これら各交点と入射面31及び前面3aの下端とを連続曲線もしくはスプライン曲線で接続する。
【0052】
こうして、後面3bの前後方向での垂直断面形状が求まる。なお、本実施形態の導光体3は、後面3bが一様に左右方向へ沿っているので、どの左右方向位置においても、
図2
(b)の光線が含まれる断面では同一の条件が成立する面となっている。
【0053】
以上の構成を具備する車両用灯具ユニット1では、
図3(a),(b)に示すように、光源2から出射された光が光軸Axに対して前方斜め下方へ向けて出射され、入射面31から導光体3内へ入射する。この光は、導光体3の前面3a(第一反射面32)で後方へ内部反射され、更に導光体3の後面3b(第二反射面33)で光軸Axに沿った平行光となるように前方へ内部反射された後に、導光体3の前面3a(出射面34)から出射する。こうして、光軸Axに沿った平行光を得ることができる。
【0054】
以上のように、車両用灯具ユニット1によれば、光源2が光軸Ax方向に対して斜め前方へ光を出射するので、光源を車両用灯具ユニットの前方(光照射方向)へ向けていた従来と異なり、車両用灯具ユニットにおける光源の前方に上下に亘って導光体を配置する必要なく、光源2の斜め前方に導光体3を配置するだけで、光源2からの光を効率良く取り込むことができる。これにより、従来に比べ、導光体3を上下方向にコンパクトに構成することができる。
【0055】
また、この結果、従来よりも導光体3の肉厚変化が少なくなるため、当該導光体3の成形精度を向上させることができ、ひいては、成形コストを低減させることができる。
【0056】
また、入射面31から導光体3内へ入射した光を第一反射面32で後方へ内部反射させた後に、第二反射面33で前方への平行光としつつ出射面34へ内部反射させて導光体3から出射させるので、つまり、導光体3では光を前後方向へ2回内部反射させた後に出射面34から出射させる。これにより、1回の内部反射だけで導光体から光を出射させていた従来に比べ、導光体3を前後方向にコンパクトに構成することができる。
【0057】
また、導光体3の入射面31は隙間を介在させて光源2と対向しているので、導光体と光源とが当接していた従来に比べ、光源2から導光体3への発熱の影響を低減することができる。
【0058】
<変形例1>
続いて、上記実施形態の変形例1について説明する。なお、上記実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0059】
図4は、本変形例における車両用灯具ユニット1Aの側断面図であり、
図5(a),(b)は、
図4のII−II線,III−III線での各断面図である。
【0060】
これらの図に示すように、車両用灯具ユニット1Aは、上記実施形態における導光体3に代えて導光体3Aを備えている。
【0061】
導光体3Aは、平面状の前面3aでなく、前方へ凸状となるように上下方向及び左右方向に湾曲した前面3cを有している点において、上記実施形態における導光体3と異なっている。また、導光体3Aは、この湾曲した前面3cを有することに伴って、上記実施形態における後面3bとは異なるように湾曲した後面3dを有している。
【0062】
ここで、導光体3Aの後面3d(第二反射面33)の垂直断面形状の決定手順について説明する。
【0063】
まず、
図6(a)に示すように、光源2から所定の範囲内で出射した光を想定し、入射面31での屈折を考慮しつつ、その光線を導光体3Aの前面3cまでトレースした後、当該前面3c(第一反射面32)で全反射されるものとして更にトレースする。
【0064】
次に、
図6(b)に示すように、前面3c(出射面34)での屈折を考慮しつつ、当該前面3cから出射されるべき平行光線を導光体3Aの後部まで逆トレースする。
【0065】
次に、
図6(c)に示すように、光源2からトレースしてきた光線と、前面3cから逆
トレースしてきた光線との交点を求め、この交点において2つの光線が互いに全反射の関係となるように傾き角を決定する。
【0066】
そして、全ての光線について各交点での傾き角を順次決定し、これら各交点と入射面31及び前面3cの下端とを連続曲線もしくはスプライン曲線で接続する。
【0067】
こうして、後面3dの前後方向での垂直断面形状が求まる。
【0068】
但し、前面3cの曲率が過度に大きく、
図7(a)に示すように、光源2からトレースした隣り合う各光線(想定光線)が交差してしまう場合には、後面3dが成立しなくなってしまう。つまり、この場合には、
図7(b)に示すように、前面3cから逆トレースした各光線が交差していなくとも、
図7(c)に示すように、これらの光線の各交点での傾き角を成立させつつ当該各交点をスプライン曲線で接続することができなくなってしまう。したがって、後面3dを成立させるためには、光源2からの隣り合う各光線が互いに平行以上に開いた角度で後面3dまで到達することが必要となり、前面3cはこの条件を満たす面であることが求められる。なお、入射面31を湾曲させた場合には、当該入射面31も同様の条件を満たす必要があるのは勿論である。
【0069】
以上の車両用灯具ユニット1Aによれば、上記実施形態における車両用灯具ユニット1と同様の効果を得ることができる。
【0070】
<変形例2>
次に、変形例2について説明する。
【0071】
図10は変形例2の車両用灯具ユニット1Bの斜視図、
図11(a)は
図10に示した車両用灯具ユニット1BのA−A断面図、
図11(b)はB−B断面図、
図11(c)は背面側から見た斜視図である。
【0072】
本変形例2の車両用灯具ユニット1Bは、
図11(a)〜(c)に示すように、導光体3(以下導光体3Bと称す)の第二反射面33が光軸Axに対して平行な二つの水平面及び光軸Axに対して平行な二つの鉛直面により複数の反射領域a1〜a3、b1〜b3、c1〜c3に分割されている点以外、上記実施形態と同様である。なお、第二反射面33は、一つの水平面(及び/又は鉛直面)又は三つ以上の水平面(及び/又は鉛直面)で分割されていてもよい。
【0073】
複数の反射領域a1〜a3、b1〜b3、c1〜c3は、入射面31に近い反射領域ほど出射面34寄りにシフトした位置に配置されている。例えば、
図11(b)に示すように、反射領域a3、b3、c3の列に注目すると、反射領域b3は反射領域c3(本発明の基準位置に配置された反射領域に相当)より出射面34寄りにシフトした位置に配置されており、反射領域a3は反射領域b3より出射面34寄りにシフトした位置に配置されている。これにより、隣接する反射領域間に段差d1、d2が現れる。他の列についても同様である。
【0074】
また、2つの鉛直面との間の反射領域a2、b2、c2はその両隣の反射領域a1〜c1、a3〜c3より出射面34寄りにシフトした位置に配置されている。例えば、
図11(a)に示すように、反射領域a1〜a3の段に注目すると、反射領域a2はその両隣の反射領域a1、a3より出射面34寄りにシフトした位置に配置されている。これにより、隣接する反射領域間に段差d3、d4が現れる。他の段についても同様である。
【0075】
図12(a)は車両用灯具ユニット1B(変形例2)の縦断面図、
図12(b)は車両用灯具ユニット1(実施形態)の縦断面図である。
【0076】
図12(a)及び
図12(b)を参照すると、
図12(a)に描いた最大内接円C1<
図12(b)に描いた最大内接円C2であること、すなわち、上記実施形態の導光体3と比べ、導光体3Bの肉厚が薄い(最大肉厚部が薄い)ことが分かる。
【0077】
以上説明したように、本変形例2によれば、分割された複数の反射領域a1〜a3、b1〜b3、c1〜c3のうち入射面31に近い反射領域ほど出射面34寄りにシフトした位置に配置し、さらに、2つの鉛直面との間の反射領域a2、b2、c2を出射面34寄りにさらにシフトした位置に配置した分、導光体3Bの肉厚を薄くすることが可能となる。
【0078】
また、本変形例2によれば、導光体3Bの肉厚を薄くすることが可能であるため、その分、導光体3Bの成形時間やその成形に用いる透明樹脂材料が減少し、コストを抑えることが可能となる。
【0079】
また、本変形例2によれば、導光体3Bの肉厚を薄くすることが可能であるため、導光体3Bの精度(ひいては配光)に影響を与えるヒケの発生を抑えることが可能となる。これにより、導光体3Bの精度(ひいては配光)が向上し、設計以外の不要な光の発生を抑えることが可能となる。
【0080】
また、本変形例2によれば、導光体3B内に導入された光源2からの光は、
図13に示すように、
図3(a)と同様の光路を通って出射面34から出射するが、上記のように導光体3Bの肉厚が薄くなる分、導光体3B内の光路長が短くなる。このように、本変形例2によれば、導光体3Bの肉厚を薄くすること(すなわち、導光体3B内の光路長を短くすること)が可能であるため、導光体3Bの成形に用いられる透明樹脂材料による吸収やヘイズ(体積散乱)の影響を抑えることが可能となる。ヘイズは、媒質内で体積散乱を引き起こし、カットオフラインの明瞭度を低下し、グレア発生の原因となる。特に、入射面31に近い部分は光束が多いので、この部分の光路長が短くなることによる効果が大きい。特に、ポリカーボネートのように透明ではあるが吸光の大きい透明樹脂材料を使用する場合、光束の多い入射面31付近の光路長を短くすることにより、光束の低下を抑えることが可能となる。なお、光の減衰は以下の式で表される。
【0081】
I=I
010
−βx
ただし、β=吸光度、x=媒質を通過する距離、I
0=入射光強度、I=出射光強度である。
【0082】
以上のように、本変形例2によれば、従来と比べ、肉厚が薄い導光体3Bを用いた車両用灯具ユニット1Bを提供することが可能となる。
【0083】
また、本変形例2によれば、分割された複数の反射領域a1〜a3、b1〜b3、c1〜c3のうち入射面31に近い反射領域ほど出射面34寄りにシフトした位置に配置したことで、反射領域間に段差d1〜d4等(
図11(b)、
図11(c)参照)が現れる新規見栄えの車両用灯具ユニット1Bを提供することが可能となる。
【0084】
また、本変形例2によれば、分割された複数の反射領域a1〜a3、b1〜b3、c1〜c3のうち入射面31に近い反射領域ほど出射面34寄りにシフトした位置に配置されているため(
図11(b)参照)、出射面34で内部反射された光が反射領域間に現れる段差d1、d2等に入射するのを防止することが可能となる。
【0085】
なお、複数の反射領域a1〜a3、b1〜b3、c1〜c3は、反射領域ごとに、内部反射して出射面34から出射する光が所定配光パターン(例えば、
図14(b)に示すすれ違いビーム用配光パターン参照)を構成する部分配光パターン(例えば、
図14(a)に示すA1〜A3、B1〜B3、C1〜C3参照)を形成するように構成されていてもよい。
【0086】
このようにすれば、反射面が連続面(回転放物面)とされている従来と比べ、第二反射面33が複数の反射領域a1〜a3、b1〜b3、c1〜c3に分割され、個々の反射領域a1〜a3、b1〜b3、c1〜c3が固有の部分配光パターン(例えば、
図14(a)に示すA1〜A1、B1〜B3、C1〜C3参照)を形成するように構成されている分、配光形成の自由度を高めることが可能な車両用灯具ユニット1Bを提供することが可能となる。
【0087】
なお、本変形例2では、1つの導光体3Bを用いて車両用灯具ユニット1Bを構成した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図15(a)〜
図15(c)に示すように、上下対称に配置された2つの導光体3Bを用い、かつ、光源12を光軸Axに対して垂直に配置して車両用灯具ユニット1Cを構成してもよい。
【0088】
<変形例3>
次に、変形例3について説明する。
【0089】
図16(a)は車両用灯具ユニット1D(変形例3)の正面側から見た斜視図、
図16(b)は縦断面図、
図16(c)は背面側から見た斜視図、
図16(d)は比較例である。
【0090】
本変形例3の車両用灯具ユニット1Dは、
図16(a)〜(c)に示すように、導光体3(以下導光体3Cと称す)の入射面31が、第二反射面33に相当する反射面33Dで内部反射されて出射面34から出射する光を導入する面である点、及び、光源2が、入射面31から導光体3C内に導入され、反射面33Dで内部反射されて出射面34から出射する光を放射するように、入射面31に対向して配置されている点(すなわち、本変形例が第一反射面32を備えておらず、反射面33Dで1回内部反射する構成である点)以外、上記変形例2と同様である。
【0091】
すなわち、導光体3Cは、出射面34、出射面34の反対側に出射面34に対して傾斜した姿勢で配置された反射面33D、反射面33Dで内部反射されて出射面34から出射する光を導入する入射面31を含む中実の導光レンズである。
【0092】
反射面33Dは、上記変形例2と同様、光軸Axに対して平行な二つの水平面及び光軸Axに対して平行な二つの鉛直面により複数の反射領域a1〜a3、b1〜b3、c1〜c3に分割されている(
図16(c)参照)。
【0093】
図16(b)及び
図16(d)を参照すると、
図16(b)に描いた最大内接円C3<
図16(d)に描いた最大内接円C4であること、すなわち、反射面が連続面である導光体と比べ、導光体3Cの肉厚が薄い(最大肉厚部が薄い)ことが分かる。
【0094】
本変形例によっても、上記変形例2と同様の効果を奏することが可能となる。
【0095】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態及びその変形例に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0096】
例えば、上記実施形態及び変形例2、3では、導光体3の前面3aを平面としたが、所望の配光パターンに応じて当該前面3aを適宜湾曲させてもよい。例えば、
図8(a)に示すように、上記変形例1と同様に前面3aを前方へ凸状に湾曲させた場合には、
図8(b)に示すように、前面3aを平面としたときの配光パターンD0よりも左右方向(水平方向)に狭い配光パターンD1を得ることができる。一方、
図9(a)に示すように、前面3aを前方へ凹状に湾曲させた場合には、
図9(b)に示すように、前面3aを平面としたときの配光パターンD0よりも左右方向(水平方向)に広い配光パターンD2を得ることができる。
【0097】
また、上記実施形態及び各変形例では、導光体3,3Aは光源2の前方斜め下方に配置されることとしたが、斜め前方であれば下方でなくともよく、例えば前方斜め側方に配置されることとしてもよい。但し、この場合に、光源2からの光を前方斜め側方へ向けて出射させる他、必要な向きの変更が行われることは勿論である。
【0098】
また、第一反射面32と出射面34とは、前面3a,3cとして連続した同一の面に形成されるものとしたが、互いに分離した異なる面としてもよい。
【0099】
また、導光体3,3Aの入射面31は、各図に示したように平面であってもよいし、湾曲面であってもよい。