特許第5707669号(P5707669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5707669
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】プラスチックフィルム挿入合わせガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20150409BHJP
   E06B 5/00 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
   C03C27/12 K
   E06B5/00 B
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2009-24409(P2009-24409)
(22)【出願日】2009年2月5日
(65)【公開番号】特開2010-180089(P2010-180089A)
(43)【公開日】2010年8月19日
【審査請求日】2011年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145632
【弁理士】
【氏名又は名称】小出 誠
(72)【発明者】
【氏名】坂本 浩道
(72)【発明者】
【氏名】高松 敦
(72)【発明者】
【氏名】泉谷 健介
(72)【発明者】
【氏名】中村 功
【審査官】 山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−503402(JP,A)
【文献】 特開昭60−225747(JP,A)
【文献】 特開2002−220262(JP,A)
【文献】 特開2001−106556(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/040868(WO,A1)
【文献】 特開2007−148330(JP,A)
【文献】 特開2001−310407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/00−29/00
B32B 1/00−43/00
E06B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の樹脂中間膜の間にプラスチックフィルムを挟持してなるフィルムを用いて作製されるプラスチックフィルム挿入合わせガラスにおいて、ガラス板が曲げ加工によって湾曲したガラス板であり、該湾曲したガラス板の曲率半径が、0.9m〜3mの範囲にあり、プラスチックフィルムが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルスルフォン、ナイロン、ポリアリレート、シクロオレフィンポリマーから選ばれる1つのプラスチックフィルムであり、該プラスチックフィルムの厚さは50〜200μmの範囲にあり、該プラスチックフィルムには、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデンとポリメチルメタクリレートのブレンド物、エチレンと不飽和モノカルボン酸とのコポリマー、スチレンとメチルメタクリレートのコポリマーから選ばれる屈折率の異なる樹脂膜(1)と樹脂膜(2)とを交互に積層してなる多層膜でなる赤外線反射膜が形成されており、該多層膜は、厚さt1の樹脂膜(1)と厚さt2の樹脂膜(2)とを交互に5回〜20回、すなわち10〜40層積層した単位積層膜を2〜6積層してなるものであり、該単位積層膜のt1およびt2が積層する他の単位積層膜のt1およびt2と異なるものであり、該赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルムが、次の(A)、(B)、(C)のいずれかの条件を満たしていることを特徴とするプラスチックフィルム挿入合わせガラス。
(A)TD方向及びMD方向の熱収縮率が90〜150℃の温度範囲において、0.5〜3%の範囲にある。
(B)弾性率が、90〜150℃の温度範囲で、30MPa〜2000MPaの範囲にある。
(C)90〜150℃の温度範囲で、プラスチックフィルムの1m幅あたりに引張力10Nを加えたとき、該プラスチックフィルムの伸び率が0.3%以下である。
【請求項2】
前記赤外線反射膜は、前記単位積層膜を5積層し、層数が50〜200層でなることを特徴とする請求項1に記載のプラスチックフィルム挿入合わせガラス。
【請求項3】
樹脂中間膜のうち、1枚が赤外線の吸収材として導電性酸化物の粒子を含有してなる赤外線吸収フィルムであり、樹脂中間膜の厚みが0.3〜1.2mmの範囲にあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプラスチックフィルム挿入合わせガラス。
【請求項4】
プラスチックフィルムと樹脂中間膜の界面に、ハードコート膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のプラスチックフィルム挿入合わせガラス。
【請求項5】
プラスチックフィルムと樹脂中間膜の界面に、シランカップリング剤の膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載のプラスチックフィルム挿入合わせガラス。
【請求項6】
ハードコート膜と樹脂中間膜の界面に、シランカップリング剤の膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載のプラスチックフィルム挿入合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板、樹脂中間膜、透明なプラスチックフィルム、樹脂中間膜、ガラス板をこの順に積層して作製される合わせガラスに関し、特に、透明なプラスチックフィルムに赤外線反射膜が形成されてなる、断熱機能を有する合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
窓ガラスを通して室内に流入する太陽光の熱輻射エネルギーを低くして室内の温度上昇を抑制し、冷房装置を運転することによって消費される電気エネルギーの消費を抑え、かつ、窓ガラスの高い可視光の透過率を保つことにより、快適な室内空間を作り出す試みが多くなされている。
【0003】
特許文献1では、少なくとも2枚の透明ガラス板状体の間に樹脂中間膜を有する合わせガラスにおいて、樹脂中間膜中に粒径が0.2μm以下の導電性超微粒子を分散させたことにより、可視光域の透過率を高く保ったまま、日射透過率を50%程度まで低下させることが考案されている。
【0004】
ただし、特許文献1に開示されている合わせガラスは、赤外域の光を吸収するため、合わせガラス自身が暖まって温度が高くなり、太陽光線の放射に対して再放射と呼ばれる、合わせガラスから室内に向けての輻射熱が放射されるために、長時間経過後には室内の温度が上昇する。
【0005】
導電性の膜を使わないで赤外線を反射するものとして、特許文献2に屈折率の異なる誘電体を積層してなる赤外線反射膜が開示され、また、特許文献3、特許文献4には、屈折率の異なる樹脂膜の積層してなる赤外線反射膜が開示されている。
【0006】
赤外線反射膜が形成されている透明なプラスチックフィルムを2枚の樹脂中間膜の間に挿入して3層構成の中間膜とし、この3層構成の中間膜を用いて合わせガラスを作製したものが、熱線反射機能を持たせた合わせガラスとして、知られている。
【0007】
通常、合わせガラスは、オートクレーブを用いて、高温高圧処理され、ガラス板と3層構成の中間膜が、樹脂中間膜により熱融着される。
【0008】
例えば、特許文献5では、薄膜がポリエステルフィルムに形成されてなる熱線反射プラスチックフィルムを、2枚の樹脂中間膜で挟持した可撓性積層体を、2枚のガラス板の間に挟んで積層される、合わせガラスが開示されている。
【0009】
また、特許文献4には、多層のプラスチック層でなる赤外線遮蔽フィルムを2枚のポリビニルブチラールシートの間に挟みもちし、さらに、これを2枚のガラスの間に挟んで積層したものが開示されている。また、この、赤外線遮蔽フィルムは、ガラスに貼り付けた後にガラスとフィルム間での剥がれやクラックが生じることを防ぐ観点から、フィルムの製膜方向と幅方向の150℃、30分処理での収縮率がともに2%以下であること、シワの発生することを防ぐ観点から、150℃、30分処理での収縮率差が0.5%以下であることが記載されている。
【0010】
さらに、ポリエチレンテレフタレートフィルムを2枚のPVB膜の間に挟持し、合わせガラスに積層したときのシワ等の欠陥を防ぐものとして、特許文献6には、選択光透過性・導電性を有する機能性フィルムをポリビニルブチラール膜で挟み、合わせガラス化したときに、シワなどの外観欠陥を防ぐため、機能性フィルムに用いるポリエステルテレフタレートの1方の熱伸張率を0.1〜1.0%、それに直行する方向の熱収縮率を0.1〜1.0%とすることが記載されている。 特許文献7には、プラスチックフィルムに酸化インジウムや銀の膜を形成した赤外線反射膜を用い、合わせガラスを作製するのに、プラスチックフィルムの熱加工時の熱収縮率が1〜20%のものを用いることが記載されている。
【0011】
赤外線を反射する膜として、特許文献8、特許文献9には、樹脂の多層膜でなる赤外線反射膜が開示されている。
【特許文献1】特開平8−259279号公報
【特許文献2】特開平2−160641号公報
【特許文献3】特表2003−515754号公報
【特許文献4】再公表2005−40868号公報
【特許文献5】特開昭56−32352号公報
【特許文献6】特開昭60−225747号広報
【特許文献7】特開平6−270318号公報
【特許文献8】特開平4−295804号公報
【特許文献9】特開平4−313704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、可視光透過率が高く、かつ赤外線領域の反射率が高くて良好な断熱効果を持ち、かつ各種電波を透過する、曲面形状の赤外反射合わせガラスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のプラスチックフィルム挿入合わせガラスは、2枚の樹脂中間膜の間にプラスチックフィルムを挟持してなるフィルムを用いて作製されるプラスチックフィルム挿入合わせガラスにおいて、ガラス板が曲げ加工によって湾曲したガラス板であり、プラスチックフィルムが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルスルフォン、ナイロン、ポリアリレート、シクロオレフィンポリマーから選ばれる1つのプラスチックフィルムであり、該プラスチックフィルムの厚さは30〜200μmの範囲にあり、該プラスチックフィルムには屈折率の異なる樹脂膜が交互に積層されてなる赤外線反射膜が形成されており、該赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルムが、次の(A)、(B)、(C)のいずれかの条件を満たしていることを特徴とするプラスチックフィルム挿入合わせガラスである。
【0014】
(A)熱収縮率が90〜150℃の温度範囲において、0.5〜3%の範囲にある。
【0015】
(B)弾性率が、90〜150℃の温度範囲で、30MPa〜2000MPaの範囲にある。
【0016】
(C)90〜150℃の温度範囲で、プラスチックフィルムの1m幅あたりに引張力10Nを加えたとき、該プラスチックフィルムの伸び率が0.3%以下である。
【0017】
また、本発明のプラスチック挿入合わせガラスは、前記プラスチックフィルム挿入合わせガラスにおいて、湾曲したガラス板の曲率半径が、0.9m〜3mの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のプラスチックフィルム挿入合わせガラスである。
【0018】
また、本発明のプラスチック挿入合わせガラスは、前記プラスチックフィルム挿入合わせガラスにおいて、赤外線反射膜が、層数が50〜200層の、屈折率の異なる樹脂膜(1)と樹脂膜(2)とを交互に積層してなる多層膜でなることを特徴とし、さらに、赤外線反射膜が、厚さt1の樹脂膜(1)と厚さt2の樹脂膜(2)とを交互に10〜40層積層した単位積層膜を形成し、t1およびt2を変え単位積層膜を2〜6積層して、形成されてなることを特徴とする、プラスチックフィルム挿入合わせガラスである。
【0019】
また、本発明のプラスチック挿入合わせガラスは、前記プラスチックフィルム挿入合わせガラスにおいて、樹脂中間膜のうち、1枚が赤外線の吸収材として導電性酸化物の粒子を含有してなる赤外線吸収フィルムであり、樹脂中間膜の厚みが0.3〜1.2mmの範囲にあることを特徴とするプラスチックフィルム挿入合わせガラスである。
【0020】
また、本発明のプラスチック挿入合わせガラスは、前記プラスチックフィルム挿入合わせガラスにおいて、プラスチックフィルムと樹脂中間膜の界面に、ハードコート膜が形成されていることを特徴とするプラスチックフィルム挿入合わせガラスである。
【0021】
また、本発明のプラスチック挿入合わせガラスは、前記プラスチックフィルム挿入合わせガラスにおいて、プラスチックフィルムと樹脂中間膜の界面に、シランカップリング剤の膜が形成されていることを特徴とするプラスチックフィルム挿入合わせガラスである。
【0022】
また、本発明のプラスチック挿入合わせガラスは、前記プラスチックフィルム挿入合わせガラスにおいて、ハードコート膜と樹脂中間膜の界面に、シランカップリング剤の膜が形成されていることを特徴とするプラスチックフィルム挿入合わせガラスである。
【発明の効果】
【0023】
本発明のプラスチックフィルム挿入合わせガラスは、可視光域での透過率が高く、良好な断熱効果を有し、さらに、挿入されたプラスチックフィルムのシワや赤外線反射膜の剥離が無い、プラスチックフィルム挿入合わせガラスの提供を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明のプラスチックフィルム挿入合わせガラスは、室外側ガラス板、室外側樹脂中間膜、赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム、室内側樹脂中間膜、室内側ガラス板の順に積層された曲面形状の合わせガラスである。
【0025】
図1に示す断面図は、本発明の、合わせガラスの構成を模式的に示したものである。
室外側ガラス板には、日射透過率が85%以上の、フロート法で製造されるソーダライム系のガラス板を曲げ加工した、曲げガラス板が好適に用いられる。
【0026】
日射透過率は、JIS R3106:1998に基づいて算出される値である。
室外側樹脂中間膜には、無色透明なエチレンビニルアセテート(EVA)やポリビニルブチラール(PVB)が好適に用いられる。
【0027】
赤外線反射膜の効果を有効にし、合わせガラスの断熱性能を効果的にするためには、室外側樹脂中間膜の日射透過率は、85%以上であることが望ましい。
【0028】
赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルムは、透明なプラスチックフィルムに赤外線反射膜が成膜されてなるもので、赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルムの日射反射率は20%以上であることが好ましい。
【0029】
赤外線反射膜が形成されるプラスチックフィルムには、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルスルフォン、ナイロン、ポリアリレート、シクロオレフィンポリマーなどから選ばれる樹脂でなるプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0030】
プラスチックフィルムの厚さであるが、30μmよりも薄いとフィルムの取扱が難しくかつ赤外線反射膜や後述するハードコート膜の応力によりカールしやすく、一方、200μmより厚いと合わせ加工時に脱気不良による外観欠陥が出るため、厚さは30μm〜200μmであることが望ましい。
【0031】
プラスチックフィルムに積層する赤外線反射膜として、屈折率の異なる樹脂の多層膜を用いると、放送や通信で用いられる電磁波を透過するので好ましい。
【0032】
赤外線反射膜に、屈折率の異なる樹脂膜を交互に積層して、層数が40〜200層でなる多層膜とすることが好ましい。40層以下では反射率が小さく、200層を超えても、反射率は大きくならないので、200層以下とすることが好ましい。
【0033】
さらに、屈折率の異なる厚さt1の樹脂膜(1)と厚さt2の樹脂膜(2)とを交互に10〜40層積層して単位積層膜とし、厚さt1、t2を変えた単位積層膜の数を2〜6とすることにより、反射波長の範囲を広くすることができ好ましい。
【0034】
赤外線反射膜に用いる樹脂には、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデンとポリメチルメタクリレートのブレンド物、エチレンと不飽和モノカルボン酸とのコポリマー、スチレンとメチルメタクリレートのコポリマー等から選んで好適に用いることができる。
【0035】
自動車等の窓に用いられる曲面形状の合わせガラスでは、ガラス板が曲面状に曲がっているため、2枚の樹脂中間膜の間に赤外線反射膜を形成したプラスチックフィルムを挿入し、ガラス板を合わせ工程で一体化するときに、赤外線反射膜を形成したプラスチックフィルムにシワが発生しやすい。場合によっては、反射膜の剥離が生じる。
【0036】
これを防止するために、曲率が0.9m〜3mの曲率半径を有する湾曲したガラス板の場合には、赤外線反射膜を形成したプラスチックフィルムは、次の(A)、(B)、(C)のいずれかの条件を満たしていることが好ましい。
【0037】
なお、曲率の範囲を0.9m〜3mとするのは、曲率が0.9mより小さいとシワの発生をなくすことが困難となり、曲率が3mを超えると平らなガラス板との差異が無く、(A)、(B)、(C)の条件を満たす必要がなくなるためである。
【0038】
(A)赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルムの熱収縮率が90〜150℃の温度範囲において、0.5〜3%の範囲にある。
【0039】
(B)赤外線反射膜を形成したプラスチックフィルムの弾性率が、90〜150℃の温度範囲で、30MPa〜2000MPaの範囲にある。
【0040】
(C)90〜150℃の温度範囲で、赤外線反射膜を形成したプラスチックフィルムの1m幅あたりに引張力10Nを加えたとき、該赤外線反射膜を形成したプラスチックフィルムの伸び率が0.3%以下である。
【0041】
赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルムの、90〜150℃での、熱収縮率が、0.5%より小さいと、湾曲したガラス周囲部で赤外線反射膜つきフィルムがだぶついて、シワとなる外観欠陥が発生する。
【0042】
また、熱収縮率が3%より大きいと、赤外線反射膜がフィルムの収縮に耐えられず、ヒビ状に割れてクラックとなる外観欠陥が生ずる。
【0043】
したがって、合わせ加工での赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルムのシワや赤外線反射膜のクラックが発生しないようにするためには、赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルムの熱収縮率が、90〜150℃の温度範囲において、0.5〜3%の範囲にあることが好ましく、より好ましくは、赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルムの90〜150℃での熱収縮率は、0.5〜2%の範囲である。
【0044】
透明なプラスチックフィルムにおいて、逐次2軸延伸法などの延伸法で作製されたプラスチックフィルムでは、フィルム内部に製膜時の応力が残存し、熱処理により応力が緩和されて収縮されやすいので、好適に用いることができる。
【0045】
また、オートクレーブによる高温高圧処理において、90〜150℃の高温状態となっても、赤外線反射膜を形成したプラスチックフィルムにシワが生じないようにするためには、赤外線反射膜を形成したプラスチックフィルムの弾性率が、90〜150℃の温度範囲で、30MPa〜2000MPaであることが望ましく、より好ましくは30MPa〜500MPaである。
【0046】
赤外線反射膜を形成したプラスチックフィルムの弾性率は、粘弾性測定装置を用いて、90〜150℃の温度範囲での、応力―ひずみ曲線から求めることができる。赤外線反射膜を形成したプラスチックフィルムの弾性率が30MPaより小さいと、フィルムが少しの外力によって変形しやすく、合わせガラスの全面にシワ状の外観欠陥が発生しやすくなる。
【0047】
また、赤外線反射膜を形成したプラスチックフィルムの弾性率が2000MPaより大きいと、3次元的に湾曲したガラスに適用する場合、オートクレーブによる高温高圧処理において、樹脂中間膜と赤外線反射膜を形成したプラスチックフィルムとの間の空気が完全に抜けず、脱気不良となりやすい。
【0048】
あるいは、オートクレーブによる高温高圧処理において、90〜150℃の高温状態となっても、プラスチックフィルムにシワが生じないようにするためには、赤外線反射膜を形成したプラスチックフィルムの伸び率が、90〜150℃の高温範囲において、赤外線反射膜を形成したプラスチックフィルムに、幅1mあたり、引張力10Nを加えたとき、伸び率が0.3%以下であることが望ましい。
【0049】
赤外線反射膜を形成したプラスチックフィルムの幅1mあたりに加える、10Nの引張力は、樹脂中間膜に挟持されたプラスチックフィルムを、オートクレーブにより高温高圧にして、樹脂中間膜によって赤外線反射膜を形成したプラスチックフィルムとガラス板とが熱融着するとき、赤外線反射膜を形成したプラスチックフィルムに生じる、赤外線反射膜を形成したプラスチックフィルムを伸ばそうとする引張力に相当するものである。
【0050】
赤外線反射膜を形成したプラスチックフィルムの伸び率は、次の手順1〜5で測定される。
【0051】
手順1 赤外線反射膜を形成したプラスチックフィルムを、長さ15mm×幅5mmに切り出し、測定試料とする。測定用試料の両端に固定用の治具を取りつけ、両端固定用治具の間の、測定用試料が露出する長さを10mmにする。
【0052】
手順2 測定用試料に、赤外線反射膜を形成したプラスチックフィルムの1m幅あたり、引張力10Nの荷重を加える。手順1に示す測定試料の場合、0.05Nの荷重を加える。
【0053】
手順3 固定用治具間の測定用試料の長さLを測定する。
【0054】
手順4 5℃/minで、90〜150℃の間の、所定の測定温度まで加熱し、該測定温度での測定用試料の固定用治具間の長さLを測定する。
【0055】
手順5 伸び率(%)を(L−L)/L×100によって算定する。
【0056】
さらに、赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルムの赤外線反射膜が形成されていない方の面に、シランカップリング剤の膜が形成されていることが好ましい。
【0057】
シランカップリング剤は、赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルムのプラスチックフィルムの面と樹脂中間膜との密着性を良好にするものであり、アミノ基、イソシアネート基、エポキシ基等を有するシランカップリング剤を用いることができる。
【0058】
また、赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルムのプラスチックフィルムと赤外線反射膜との間には、ハードコート膜が形成されていることが好ましい。
【0059】
樹脂中間膜の間に挿入されるプラスチックフィルムによっては、樹脂中間膜と密着性が悪かったり、赤外線反射膜を成膜すると白濁が生じたりすることがあり、ハードコート膜を界面に形成することで、これらの不具合を解決できる。室内側樹脂中間膜は、エチレンビニルアセテート(EVA)やポリビニルブチラール(PVB)でなる膜において、可視光透過率を阻害しない範囲で、各種の赤外線を吸収する微粒子を含ませたり、色素を混入して着色したりして、日射透過率を75%以下とすることが好ましい。
【0060】
赤外線を吸収する微粒子として、例えば、Ag、Al、Tiなどの金属微粒子、金属窒化物、金属酸化物の微粒子、また、ITO、ATO、AZO、GZO、IZOなどの導電性透明酸化物微粒子があり、これらの中から1種以上を選択して、室内側樹脂中間膜13に含有させ、断熱性能を向上させることができる。
【0061】
特に、ITO、ATO、AZO、GZO、IZOなどの導電性透明酸化物微粒子が望ましい。
【0062】
EVAやPVBを着色する場合は、着色剤として、一般的に用いられている公知の各種顔料あるいは各種染料を用いることができる。
【0063】
各種染料として、アントラキノン染料、アゾ染料、アクリジン染料、インジゴイド染料等が、また、各種顔料として、カーボンブラック、赤色酸化鉄、フタロシアニンブルー、フタロシニアングリーン、紺青、亜鉛華、アゾ顔料、スレン系顔料等を用いることができる。
【0064】
さらに、ポリビニルアセタール膜を前記染料あるいは顔料で着色した着色ポリビニルアセタール膜をEVAあるいはPVBと積層したものを室内側樹脂中間膜に用いても良い。
【0065】
室内側ガラス板には、透過色がグリーン色、ブルー色、ブロンズ色、グレー色等の、日射透過率が75%未満の熱線吸収ガラスが好適に用いることができる。
前記熱線吸収ガラスは、クリアガラスにCe、Co、Ti、Fe、Se、Crなどの金属を含ませて作製される。
【0066】
前記熱線吸収ガラスの中で、特に、グリーン色及びブルー色の熱線吸収ガラスは、可視光透過率が高く、明るい室内を実現できるので好ましい。
【0067】
樹脂中間膜の表面には、合わせ加工時の脱気不良に起因する失透や泡欠陥が生じないように、凹凸状のエンボス加工がなされている。このような表面がエンボス加工されている樹脂中間膜は、表面で光が散乱し光学測定が困難である。このためエンボス加工されている樹脂中間膜をポリエチレンテレフタレート(以後PETと呼ぶ)フィルムで挟持し、さらにその両側を平なガラス板で挟んで、袋詰めし、袋の中の空気を吸引しながら、合わせガラスの作製と同じように、オートクレーブで、加圧・加熱処理を行った後、樹脂中間膜からPETフィルムを剥がして、表面が平らな樹脂中間膜の試料を作製し、この表面が平らな樹脂中間膜を用いて、可視光透過率及び日射透過率をJISR3106:1998に準拠する方法で、ガラス板と同様にして算定する。
【0068】
なお、本発明のプラスチックフィルム挿入合わせガラスで、JISR3212:1998に規定されている可視光線透過率を70%以上とすることにより、自動車の運転に必要とされる窓に使用することができ、好ましい。
【実施例】
【0069】
以下の実施例1〜4は本発明の(A)の条件を例証し、実施例5〜6は本発明の(B)の条件を例証し、実施例7〜8は本発明の(C)の条件を例証するものである。
【0070】
赤外線反射膜を形成したプラスチックフィルムの作製を、次のようにして行った。
【0071】
図3に示すように、単位積層膜L1〜L5をPETフィルム16に積層して、赤外線反射膜17が形成されてなるプラスチックフィルム12を作製した。
【0072】
単位積層膜L1〜L5は、低屈折率の樹脂膜(1)にポリメチルメタクリレート(以後PMMAと呼ぶ)を用い、高屈折率の樹脂膜(2)にポリエチレンテレフタレートを用いて、形成し(PMMAを用いて形成した低屈折率の層をPMMA層と呼び、ポリエチレンテレフタレートを用いて形成した高屈折率の層をPET層と呼ぶ)、同じ厚さのPMMA層(厚さt1)とPET層(厚さt2)とを交互に繰り返して積層したものを、単位積層膜L1〜L5とした。
【0073】
PMMA層は、PMMAを酢酸2−メトキシエチルに溶解させた液をロールコート法で塗布して成膜した。屈折率は1.49であった。
【0074】
PET層は、PETのペレットを押し出し機で溶融させながら塗膜した。PET層の屈折率は1.65であった。
【0075】
PMMA層とPET層を1積層単位としたときの繰り返し回数は、5回〜20回、すなわち10〜40層積層とした(これを単位積層膜Lとする)。図4は、繰り返しが5回の場合の単位積層膜の構成である。
【0076】
個々のPMMA層とPET層との膜厚を変え、かつ、いずれも積層回数が5回の単位積層膜を5層(L1〜L5)積層したものが、赤外線反射膜Aである。図3は、このフィルムの構成である。
【0077】
赤外線反射膜Bは、繰り返し数が15回のL1、繰り返し数が5回のL2、繰り返し数が各々10回のL3、L4、L5をプラスチックフィルムに順次積層したものである。また、赤外線反射膜Cは、繰り返し数が20回のL1、繰り返し数が10回のL2、繰り返し数が各々15回のL3、L4、L5を積層したものである。さらに、赤外線反射膜Dは、繰り返し数が各々20回のL1〜L5を積層したものである。単位積層膜L1〜L5のPMMA層、PET層の厚さ、層数を表1に示し、また、単位積層膜の厚さ、赤外線反射膜の厚さを表2に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
図5図8は、赤外線反射膜17として成膜した赤外線反射膜A、B、CおよびDの赤外線領域での反射率を示したグラフである。層数が50の場合(図5)、赤外線反射膜としての有効な反射率が得られ、また200層を超えても、反射率の増加が期待されないので、層数は50以上200以下とすることが好ましい。
【0081】
実施例1
厚さ60μmのPETフィルムをプラスチックフィルム16に用いて、図3に示す赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12を作製した。
赤外線反射膜17には、表2の赤外線反射膜D(厚さは約34.8μm)を用いた。赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム13の熱収縮率は、MD方向1.5%、TD方向1%であった。
【0082】
熱収縮率は、JIS C 2318に準じ、次のようにして測定した。
【0083】
図2に示すように、長さ150mm×幅40mmの短冊状フィルム30を切り出し、それぞれの幅方向の中央付近に、約100mmの距離をおいて、ダイヤモンドペンを用いて、標線を標した。標線を標した後、短冊状フィルム30を、150mm×20mmに2等分した。
【0084】
2等分した片方の試験片を、熱風循環式恒温槽内に垂直に吊り下げ、昇温速度約5℃/分で測定温度130℃まで昇温し、測定温度で約30分間保持した。
【0085】
その後、熱風循環式恒温槽を大気開放し約20℃/分で自然冷却し、さらに、室温で30分間、保持した。
【0086】
温度の測定には熱電対温度計を用い、熱風循環式恒温槽内の温度分布は±1℃以内とした。
【0087】
2等分した試験片の、室温で保持していた試験片31、測定温度に加熱した試験片32、それぞれについて、標線間の距離L1、L2を、レーザーテック社製走査型レーザー顕微鏡1LM21Dを用いて測定した。
【0088】
熱収縮率(%)は、(L1−L2)/L1×100で計算して求めた。
【0089】
また、PETフィルムのMD方向、TD方向それぞれに対し、短冊状フィルム30を3枚ずつ切り出し、熱収縮率は、3枚について測定された熱収縮率の平均値を用いた。赤外線反射膜17を形成した赤外線反射膜を形成したプラスチックフィルム12を、厚さ0.38mmの2枚のPVBフィルムの間に挟持し、さらに、大きさが250mm×350mm、厚さが2mmの湾曲した(曲率半径の最小値が0.9m、最大値1m)同形の2枚のガラス板10、14を用い、次のようにして、合わせガラスを作製した。
【0090】
なお、湾曲した室外側ガラス板10、室内側ガラス板14は、フロートガラスを曲げ加工して作製したものであり、曲率半径の最小値0.9mはガラス板10、14の周辺部付近での値であり、曲率半径の最大値1mはガラス板10、14の中央部での値である。
【0091】
室内側ガラス板14、室内側中間膜13、赤外線反射膜を形成したプラスチックフィルム12、室外側中間膜11、室外側ガラス板10を順次積載し、ガラス板のエッジ部からはみ出した室外側中間膜11、室内側中間膜13、赤外線反射膜を形成したプラスチックフィルム12の余分な部分を切断・除去した後、130℃に加熱したオートクレーブ中で30分、加圧脱気して合わせ処理した。
【0092】
作製したプラスチックフィルム挿入合わせガラス1には、赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルムのシワや赤外線反射膜のクラックがなく、良好な外観を有するプラスチックフィルム挿入合わせガラスが得られた。
【0093】
また、波長900nm〜1500nmの赤外線を良好に反射する合わせガラスが得られた。
【0094】
実施例2
プラスチックフィルム16に厚さ100μmのPETフィルムを用い、プラスチックフィルム16の両面に、アクリル系のハードコート膜(図示せず)を厚さ5μmで積層し、さらに、ハードコート膜を形成したプラスチックフィルム16の片面に、赤外線反射膜Aを形成して、図3に示す赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12を作製した。
【0095】
この赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12の熱収縮率は、実施例1と同様にして測定したところ、MD方向1.5%、TD方向1%であった。
【0096】
この赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12を用いて、実施例1と同様にして、図1に示す、プラスチックフィルム挿入合わせガラス1を作製した。 ガラス板10、14には、実施例1と大きさと厚みが同じで、曲率半径が2.8m〜3mの範囲の、曲げ加工されたフロートガラスを用いた。
【0097】
本実施例のプラスチックフィルム挿入合わせガラス1には、実施例1と同様に、赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12のシワや赤外線反射膜のクラックがなく、良好な外観を有するプラスチックフィルム挿入合わせガラス1が得られた。
【0098】
実施例3
プラスチックフィルム16には、実施例1で用いたPETフィルムを用いた。このプラスチックフィルム16の両面に、アクリル系のハードコート膜(図示せず)を厚さ2μmで積層し、さらに、このプラスチックフィルム16の片面に赤外線反射膜Aを形成し、図3に示す赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12を作製した。
【0099】
この赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12の熱収縮率は、実施例1と同様にして測定したところ、MD方向1%、TD方向0.6%であった。
【0100】
さらに、この赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12を用い、実施例1と同様にして、図1のプラスチックフィルム挿入合わせガラス1を作製した。
【0101】
本実施例のプラスチックフィルム挿入合わせガラス1も、赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルムのシワや赤外線反射膜のクラックがなく、良好な外観を有するプラスチックフィルム挿入合わせガラスが得られた。
【0102】
実施例4
プラスチックフィルム16に、130℃での熱収縮率がMD方向4%、TD方向3.5%の厚さ100μmのPETフィルムを用いた。実施例3と同様に、このPETフィルムにアクリル系のハードコート膜(図示せず)を厚さ2μm形成すると同時に50℃で熱処理し、さらに、実施例1と同様の赤外線反射膜Dを形成して、赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12を作製した。
【0103】
この赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12の熱収縮率は、実施例1と同様にして測定したところ、MD方向2.0%、TD方向1.6%であった。
【0104】
さらに、この赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12を用い、実施例1と同様にして、図1に示すプラスチックフィルム挿入合わせガラス1を作製した。
【0105】
本実施例で作製されたプラスチックフィルム挿入合わせガラス1には、赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルムのシワや赤外線反射膜のクラックがなく、良好な外観を有するプラスチックフィルム挿入合わせガラスが得られた。
【0106】
実施例5
図1に示すような、湾曲したガラス板を用いてプラスチックフィルム挿入合わせガラス1を作製した。湾曲したガラス板10、14には、曲率半径が1200mmの、大きさが250mm×350mmで、厚さが2mmの2枚のガラス板を用いた。
【0107】
厚さ50μmのプラスチックフィルム16に赤外線反射膜Dを形成し、130℃での弾性率が40MPaの、赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12を用いた。
【0108】
本実施例で作製したプラスチックフィルム挿入合わせガラス1も、シワが観察されない、外観が良好なプラスチックフィルム挿入合わせガラスであった。
【0109】
実施例6
厚さ100μmのPETフィルム16の片面に、ハードコート膜(図示せず)と赤外線反射膜Aとを形成し、図3に示す、赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12とした。
【0110】
ハードコート膜は、アクリル系のものを用い、厚さ5μmで成膜した。
【0111】
本実施例の赤外線膜が形成されたプラスチックフィルム12の130℃での弾性率は、1000MPaであった。
【0112】
前記赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12を用いた他は、すべて実施例5と同様にして、図1に示す構成のプラスチックフィルム挿入合わせガラス1を作製した。
【0113】
本実施例のプラスチックフィルム挿入合わせガラス1も、シワが観察されない、良好な外観を有した。
【0114】
実施例7
ガラス板10、14に、250mm×300mmで厚さが2mm、曲率半径が1200mmの曲げ加工されたフロート法によるソーダライムガラスのガラス板を用い、図1に示すプラスチックフィルム挿入合わせガラス1を作製した。
【0115】
プラスチックフィルム16には、PETフィルム(厚さ100μm)を用いた。このPETフィルムに赤外線反射膜Aを形成し、測定温度150℃で、フィルムの幅1mあたりに10Nの引張力を負荷した状態で測定された伸び率は、MD方向で0.02%、TD方向で0.13%であった。
【0116】
伸び率の測定は、リガク製熱機械分析装置(PTC10A)を用いて、手順1から手順5に従って行った。
【0117】
室内側ガラス板14、室内側中間膜13、赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12、室外側中間膜11、室外側ガラス板10を順次重ね、ガラス板のエッジからはみ出した室内側中間膜13、赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12および室外側中間膜11の余分な部分を切断・除去した後、オートクレーブ中で30分間、130℃に加熱すると共に、加圧脱気して合わせ加工をおこない、プラスチックフィルム挿入合わせガラス1を作製した。
【0118】
作製したプラスチックフィルム挿入合わせガラス1には、赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12にシワ状の外観欠陥がなく、外観が良好なプラスチックフィルム挿入合わせガラスが得られた。
【0119】
実施例8
PETフィルム16の両面に、アクリル系のハードコート膜(図示せず)を厚さ5μmで積層し、さらに、ハードコート膜を成膜したPETフィルム16の片面に、赤外線反射膜Dを形成した。
【0120】
前記、ハードコート膜(図示せず)と赤外線反射膜Dとを形成した赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12の130℃での伸び率(フィルムの幅1mあたりに10Nの引張力を負荷した状態)は、MD方向で0.01%以下、TD方向で0.19%であった。
【0121】
この赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12を用い、実施例1と同様に、室内側ガラス板14、室内側中間膜13、赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12、室外側中間膜11、室外側ガラス板10を順次重ね、オートクレーブ中で30分間、130℃に加熱すると共に、加圧脱気して合わせ加工をおこない、図1に示すプラスチックフィルム挿入合わせガラス1を作製した。
【0122】
作製したプラスチックフィルム挿入合わせガラス1には、赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12にシワ状の外観欠陥がなく、外観が良好なプラスチックフィルム挿入合わせガラスが得られた。
【0123】
比較例1
実施例1で用いたPETフィルムをプラスチックフィルム16に用い、実施例1と同様にして赤外線反射膜Aを形成し、図3の赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12を作製した。
【0124】
この赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12の130℃での熱収縮率は、実施例1と同様にして測定したところ、MD方向0.4%、TD方向0.2%であった。
【0125】
さらに、この赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12を用いて、実施例1と同様にして、プラスチックフィルム挿入合わせガラス1を作製した。
【0126】
作製したプラスチックフィルム挿入合わせガラス1の周辺部において、赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルムのシワが観察され、外観不良のため、実用には適さないものであった。
【0127】
比較例2
プラスチックフィルム16に、130℃での熱収縮率がMD方向1.0%、TD方向0.5%の厚さ100μmのPETフィルムを用いた。
【0128】
実施例3と同様に、このPETフィルムにアクリル系のハードコート膜(図示せず)を厚さ2μm形成し、さらに、実施例1と同様の赤外線反射膜Dを形成して、赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12を作製した。
【0129】
この赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12の熱収縮率を、実施例1と同様にして測定したところ、MD方向0.3%、TD方向0.2%であった。
【0130】
さらに、この赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12を用いて、実施例1と同様にして、図1に示す構成のプラスチックフィルム挿入合わせガラス1を作製した。
【0131】
作製したプラスチックフィルム挿入合わせガラス1の周辺部において、赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルムのシワが観察され、外観不良のため、実用は困難であった。
【0132】
比較例3
プラスチックフィルム16に、130℃での熱収縮率がMD方向8%、TD方向7%の厚さ100μmのPETフィルムを用いた。実施例3と同様に、このPETフィルムにアクリル系のハードコート膜(図示せず)を厚さ2μm形成し、さらに、実施例1と同様の赤外線反射膜Dを形成して、赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12を作製した。
【0133】
この赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12の熱収縮率を、実施例1と同様にして測定したところ、MD方向7%、TD方向6%であった。
【0134】
さらに、この赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12を用いて、実施例1と同様にして、図1に示す構成のプラスチックフィルム挿入合わせガラス1を作製した。
【0135】
作製したプラスチックフィルム挿入合わせガラス1では赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12にシワ状の欠陥はなかったもの、赤外線反射膜17の全面にクラックが発生し、実用は困難であった。
【0136】
比較例4
ガラス板10、14に、大きさが250mm×350mm、厚さが2mmの、周辺部付近で曲率半径が最小値0.7mであり、中央部での曲率半径が0.8mである、湾曲した同形の2枚のガラス板を用いた他は、すべて実施例1と同様にして、プラスチックフィルム挿入合わせガラス1を作製した。
【0137】
作製したプラスチックフィルム挿入合わせガラス1の周辺部において、赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルムのシワが観察され、外観不良のため、実用には適さないものであった。
【0138】
比較例5
厚さ50μmのPETフィルム16に赤外線反射膜Aを形成して、130℃での弾性率が20MPaの赤外線膜が形成されたプラスチックフィルムを用いた他は、すべて実施例5と同様にして、プラスチックフィルム挿入合わせガラス1を作製した。
【0139】
本比較例で作製したプラスチックフィルム挿入合わせガラス1の全面に、シワ状の外観欠陥が発生した。
【0140】
比較例6
厚さ100μmのPETフィルム16に赤外線反射膜Dを形成して、130℃での弾性率が3000MPaの、赤外線膜が形成されたプラスチックフィルムを用いた他は、全て実施例5と同様にして、赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム挿入合わせガラス5を作製した。
【0141】
本比較例で作製したプラスチックフィルム挿入合わせガラス1では、ガラス中央部のPVBとプラスチックフィルムとの間に空気が残存した脱気不良の状態になり、実用できないものであった。
【0142】
比較例7
赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム12に、130℃での伸び率が0.3%のPETフィルム(厚さ100μm)を用いた他は、全て実施例7と同様にして、図1に示すプラスチックフィルム挿入合わせガラス1を作製した。
【0143】
作製したプラスチックフィルム挿入合わせガラス1の全面に、シワ状の外観欠陥が発生した。
【図面の簡単な説明】
【0144】
図1】曲げガラス板を用いた本発明の構成を示す概略断面図である。
図2】熱収縮率の測定を説明するための図である。
図3】赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルムの構成を示す概略断面図である。
図4】繰り返し数が5回の場合の単位積層膜の構成を示す概略断面図である。
図5】50層の赤外線反射膜の反射を示すグラフ。
図6】100層の赤外線反射膜の反射を示すグラフ。
図7】150層の赤外線反射膜の反射を示すグラフ。
図8】200層の赤外線反射膜の反射を示すグラフ。
【符号の説明】
【0145】
1 プラスチックフィルム挿入合わせガラス
10 室外側ガラス板
11 室外側樹脂中間膜
12 赤外線反射膜が形成されたプラスチックフィルム
13 室内側樹脂中間膜
14 室内側ガラス板
16 プラスチックフィルム
17 赤外線反射膜
18 単位積層膜
30 短冊状フィルム
31、32 試験片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8