(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コアとカバーとを有し、外表面には多数のディンプルが形成されてなるゴルフボールにおいて、USGAのドラム回転式の初速度計と同方式の初速測定器を用いて測定した方法でのボール及びコアの初速度(m/s)をそれぞれBV,CV、ボール及びコアに対して初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)をそれぞれBE,CEと定義したとき、ボールの初速度BVが70.0〜76.0m/sであり、下記式(1)
0≦(BV/BE)−(CV/CE)≦1.9 ・・・(1)
を満たすことを特徴とするゴルフボール。
【背景技術】
【0002】
最近では、下記の2つのケースで飛距離を抑制したゴルフボールの要求が高まっている。
第1のケースは、“打ち放し”と言われるゴルフボール練習場において、練習場面積を十分広くすることができず、ゴルファーが打ったボールが練習場を飛び出してしまうという問題がある。この問題を解決するために、飛距離を抑制したゴルフボールが求められている。
第2のケースは、ティグラウンドからグリーンまでの距離が短いコースにおいても、ドライバー等の飛距離が出るクラブを用いてゲームを楽しむために、ボールの飛距離を抑制したいという要求がある。
【0003】
そこで、従来から提案されたゴルフボールの中には、飛び性能を抑制したゴルフボールや短距離用ゴルフボールがいくつかあり、例えば、特開昭60−194967号公報には、発泡成型された熱可塑性樹脂重合体及び充填材料を含み、ボールがその半径に沿ってその中心からその表面に増加していく密度勾配を有することを特徴とする短距離用のゴルフボールが提案されている。
しかしながら、このゴルフボールでは高ヘッドスピード(HS)だけでなく、低いヘッドピード(HS)でも飛距離が落ち過ぎてしまい、プレイヤーにとって競技上不利が多過ぎる。
【0004】
また、米国特許第5209485号明細書には、反発性が低くて飛距離を落としたゴルフボールが記載されているが、このゴルフボールの硬度が高く、打感が悪いという欠点がある。
【0005】
更には、米国特許第5273287号明細書には、外径が1.70〜1.80インチ(43.18〜45.72mm)、重さ1.62オンス以下、ボール球面に対するディンプル占有面積率が70%以上である大径のゴルフボールが記載されている。しかしながら、通常よりもボールが大きいのでプレイヤーに違和感を与え、更には打感についての改良はなされていない。
【0006】
そのほか、米国特許第5971870号明細書、米国特許第5695413号明細書には、軟らかいコアを備えたゴルフボールが提案されているが、この発明は良好な飛び性能を付与することを目的とするものであり、本発明の目的及び課題とは異なる。
【0007】
また、特開2007−301357号公報に記載されたゴルフボールは、初速、変形量、カバー硬度等を規定したものであるが、飛距離低下が十分でなく、また、打撃時のたわみが大きくなり打感が軟らか過ぎるという欠点がある。そのほか、特開平2−295573号公報及び特開平4−117969号公報に記載されたゴルフボールは飛びの低弾道を狙ったものではあるが、打感、コントロール性及び耐久性の全ての面で優れているものではなかった。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明のゴルフボールは、USGAのドラム回転式の初速度計と同方式の初速測定器を用いて測定した方法におけるボール及びコアの初速度(m/s)と、ボール及びコアに対して初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)を用い、これらの物性値が下記式(1)を満たすように設定することを特徴とする。
−1.0≦(BV/BE)−(CV/CE)≦3.0 ・・・(1)
【0016】
上記のボール初速度BV及びコアの初速度CVは、具体的には、ゴルフルールに規定された初速度測定方式に基づくものであり、R&Aの承認する装置であるUSGAのドラム回転式の初速度計と同方式の初速測定器を用いて測定した測定値である。即ち、ボールを23±1℃環境下で3時間以上温調した後、室温23±2℃の部屋でテストしたものであり、250ポンド(113.4kg)のヘッド(ストライキングマス)を用いて打撃速度143.8ft/s(43.83m/s)にてボールを打撃し、1ダースのボールを各々4回打撃して6.28ft(1.91m)の間を通過する時間を測定して初速度(m/s)を算出したものである。なお、約15分間でこのサイクルを行なう。
【0017】
上記ボールの初速度BVについては、70m/s以上、好ましくは71m/s以上、より好ましくは72m/s以上であり、上限として、76m/s以下、好ましくは75.5m/s以下、より好ましくは75m/s以下である。上記の値が大き過ぎると、W#1打撃時に十分な飛距離抑制ができなくなることがある。また、上記の値が小さ過ぎると、W#1のみならずアイアン打撃時において飛距離が落ち過ぎてしまうことがある。
【0018】
上記ボールに対して初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量BEは、好ましくは2.0mm以上、より好ましくは2.2mm以上、更に好ましくは2.4mm以上であり、上限値としては、好ましくは4.0mm以下、より好ましくは3.8mm以下、更に好ましくは3.6mm以下である。この数値が小さくなり過ぎると、打感が硬くなり過ぎ、又は飛び過ぎてしまい本発明の目的を達成することができなくなる場合がある。また、上記数値が大きくなり過ぎると、打感が軟らかくなり過ぎ、また耐久性に劣る場合がある。
【0019】
上記コアの初速度CVについては、好ましくは70m/s以上、より好ましくは71m/s以上、更に好ましくは72m/s以上であり、上限として、好ましくは78m/s以下、より好ましくは77m/s以下、更に好ましくは76m/s以下である。上記の値が大き過ぎると、W#1打撃時に十分な飛距離抑制ができなくなることがある。また、上記の値が小さ過ぎると、W#1のみならずアイアン打撃時において飛距離が落ち過ぎてしまうことがある。
【0020】
上記コアに対して初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量CEは、好ましくは2.3mm以上、より好ましくは2.5mm以上であり、上限として、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは4.7mm以下である。この数値が小さくなり過ぎると、打感が硬くなり過ぎ、又は飛び過ぎてしまい本発明の目的を達成することができなくなる場合がある。また、上記数値が大きくなり過ぎると、打感が軟らかくなり過ぎ、また耐久性に劣る場合がある。なお、コアの直径については、好ましくは35mm以上、より好ましくは36mm以上、更に好ましくは37mm以上であり、上限としては、好ましくは41mm以下、より好ましくは40.5mm以下、更に好ましくは40mm以下である。この直径の値が大き過ぎると、ドライバーでの飛距離が大き過ぎる場合があり、逆に、小さ過ぎると、アイアンでの打撃時にスピンがかかり過ぎてしまい飛距離が落ち過ぎる場合がある。
【0021】
そして、本発明では下記の式(1)を満たすことが必要である。
−1.0≦(BV/BE)−(CV/CE)≦3.0 ・・・(1)
即ち、(BV/BE)−(CV/CE)の値は−1.0以上3.0以下であることが必要であり、上限値として好ましくは2.0以下である。この値が上記範囲より小さくなると、コアとボールとが同じ変形量を想定した場合、コアよりボールでの反発性が小さ過ぎることを表しているものであって、特にアイアンでのスピンがかかり過ぎてゲーム用ボールとの違いが出過ぎたり、アイアンでの飛距離が出なくなったりする。逆に、(BV/BE)−(CV/CE)の値が上記範囲より大きいと、コアとボールとが同じ変形量を想定した場合、コアよりボールでの反発性が大き過ぎることを表しているものであって、ドライバー打撃時に飛び過ぎたり、ショートゲームでのコントロール性が悪かったり、また打感や繰返し打撃耐久性が悪かったりする。
【0022】
ここで、上記式(1)について具体的に説明する。BV/BE、即ち、ボールの初速度をボールのたわみ量で除した値は、ボールでの硬度(変形量)に対する反発性レベルの指標となり得る。また、CV/CE、即ち、コアの初速度をコアのたわみ量で除した値は、コアでの硬度(変形量)に対する反発性レベルの指標となり得る。そして、BV/BEとCV/CEとの差は、硬度(変形量)に対するボールとコアとの反発性レベルのバランスを意味し、本発明においては、その範囲を−1.0以上3.0以下に設定したゴルフボールである。
【0023】
また、ボールの初速度をコアの初速度で除した値、即ち、BV/CVの値が0.99より小さいことが好ましく、より好ましくは0.97以上0.99以下である。BV/CVの値は、コア初速に対するボール初速を表しており、この値が小さ過ぎると、バランス的にコアの反発力が大きく、特にアイアンでのスピンがかかり過ぎてゲーム用ボールとの違いが出過ぎたり、アイアンでの飛距離が出なくなったりする場合がある。逆に、この値が大き過ぎると、バランス的にドライバー打撃時に飛び過ぎたり、ショートゲームでのコントロール性が悪かったり、また打感や繰り返し打撃時の耐久性が悪かったりする場合がある。
【0024】
また、ボールのたわみ量にコアのたわみ量を除した値、即ち、BE/CEの値が0.85以上1.00以下であることが好ましい。BE/CEの値は、ボールとコアとの間における荷重負荷時の変形量のバランスを意味している。この値が上記範囲より小さ過ぎると、カバーが硬く、厚くなる傾向になり、ショートゲームでコントロール性が悪くなり、打感や繰返し打撃耐久性が悪くなるおそれがある。逆に、この値が大き過ぎると、カバー軟らかく、薄くなる傾向にあり、ボールのスピンがかかり過ぎてしまい、ゲームボールとの違いに違和感を与えることがある。また、耐擦過傷性が悪くなる場合がある。
【0025】
上述したように、本発明においては、ゴルフボールを構成するコアとボール自体との間に、「初速度」及び「たわみ量」の物性値の適正化を図ることが必要であり、そのためには、コアの材料、製造方法、コアを被覆するカバーの材料及びカバーの形成方法など以下に示す内容に従って上記式(1)を満たしたゴルフボールを得ることができる。
【0026】
コアの材料
上記式を満足し、かつ上記範囲のたわみ変形量を有するコアの材料としては、ゴム製の弾性コアが用いられるものであり、特に制限されるものではないが、具体的には、ポリブタジエンゴムのほか、ポリイソプレンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴムなどの各種合成ゴムを基材ゴムとし、この基材ゴムに、アクリル酸亜鉛等の不飽和カルボン酸又はその金属塩、有機過酸化物、酸化亜鉛及び硫酸バリウム等の無機充填剤、老化防止剤などの公知の配合物を配合することができる。特に、ポリブタジエンゴムとポリイソプレンゴムとを併用する場合には、前者/後者の配合割合は95/5〜50/50(質量比)とすることが好ましい。また、ポリブタジエンゴムとブチルゴムとを併用する場合には、前者/後者の配合割合は95/5〜50/50(質量比)とすることが好ましい。いずれにせよ、反発弾性に優れるポリブタジエンゴムを主体とし、これに、ポリイソプレンゴムやブチルゴム等のゴムを少量配合して基材ゴムを構成し、耐久性を確保しつつコアの反発弾性をできる限り抑制することが本発明においては最適である。
【0027】
また、コア配合において、基材ゴムに対して添加される充填剤としては、例えば、硫酸バリウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、シリカ(二酸化珪素)等が例示されるが、コア架橋構造から反発弾性を低減させる点から、シリカ、炭酸カルシウム等を基材ゴム100質量部に対して10〜30質量部配合することが本発明の上記式(1)を満たす傾向にある。
【0028】
上記コアを形成する方法としては、特に制限はなく公知の方法を採用することができ、例えば、通常の混練機(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー及びロール等)を用いてコア用ゴム組成物を混練し、得られたコンパウンドをコア用金型を用いて、加熱圧縮成型などにより形成することができる。また、コア用ゴム組成物の加硫条件は、例えば、加硫温度100〜200℃、加硫時間10〜40分にて実施することができる。
【0029】
上述したコアの表面にカバーが形成されるものであるが、カバーの層数は1層、2層、3層あるいはそれ以上の多層に仕上げることができる。例えば、単層のカバーをコアに被覆すると
図1に示したような内部構造を有するゴルフボール(ツーピースゴルフボール)が得られる。
図1中、符号1はコア、2はカバー、Dはディンプル及びGはゴルフボール全体を示す。以下、カバーについて説明する。
【0030】
カバーの材料
また、上記カバーの材料としては、特に制限はないが、本発明では、上述したように、コアとボール自体との間に、「初速度」及び「たわみ量」の物性値を用いた特定式を満足する必要があり、それを満たすよう、コアと同様に、カバー材料を適宜選定する必要がある。具体的には、アイオノマー樹脂,ウレタン樹脂,ポリオレフィン系エラストマー,ポリエステル系エラストマー樹脂及びポリアミド系エラストマー等の公知の熱可塑性樹脂又は各種エラストマーを好適に採用することができる。2層以上のカバーを有する場合、各カバー層の材料は、同種であっても異種であってもよい。特に、アイオノマー樹脂や熱可塑性ポリウレタンエラストマーを用いることが好適である。また、生産性を高める観点から、各種の熱可塑性樹脂を採用することが好適である。
【0031】
なお、上記カバー材料には、必要に応じて種々の添加剤を配合しても良く、例えば、酸化亜鉛、硫酸バリウム、二酸化チタン等の無機充填剤や顔料、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などを加えることができる。
【0032】
次に、カバーのショアD硬度について説明する。カバーが単層、多層のいずれの場合であっても、その最外層カバーのショアD硬度については、好ましくは41以上、より好ましくは42以上、更に好ましくは44以上、上限として、好ましくは60以下、より好ましくは58以下、更に好ましくは55以下である。この範囲よりカバーが軟らか過ぎると、ボールにスピンがかかり過ぎてしまう場合があり、逆に、硬過ぎると、飛び過ぎたり、耐久性が悪くなったりする場合がある。
【0033】
採用
また、カバーの厚さについては、カバーが1層の場合、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上、更に好ましくは0.7mm以上であり、上限としては、好ましくは2.3mm以下、より好ましくは2.1mm以下、更に好ましくは1.7mm以下である。なお、カバーを多層にした場合、それぞれの厚さは上記の厚さとすることが好ましい。
【0034】
上記カバーを形成する方法は、射出成型やコンプレッション成型等の公知の各種方法を採用でき、その射出温度や時間等の諸条件についても通常採用される範囲で適宜選定することによりカバーを容易に形成することができる。カバーを多層とする場合には、コアに1層のカバーを被覆した後、更に別のカバーを別の射出成型用金型にセットしてコアの周囲に2層又はそれ以上のカバーを被覆することができる。
【0035】
また、上記ボールの外表面には多数のディンプルが形成される。ディンプルの総数については、好ましくは280個以上、より好ましくは300個以上であり、上限値としては、好ましくは480個以下、より好ましくは440個以下、更に好ましくは400個以下にすることができる。ディンプルの個数が上記範囲より多くなると、ボールの弾道が低くなり過ぎることがある。逆に、ディンプルの個数が少なくなると、ボールの弾道が高くなり、アイアン打撃時に飛距離が出なくなることがある。
【0036】
ディンプルの形状については、円形や非円形、例えば、各種多角形、デュードロップ形、その他楕円形など1種類又は2種類以上を組み合わせて適宜使用することができる。例えば、円形ディンプルを使用する場合には、直径は、好ましくは1.5mm以上7.0mm以下、より好ましくは2.0mm以上6.0mm以下、更に好ましくは2.5mm以上4.0mm以下とすることができる。また、ディンプルの縁で囲まれた平面からの深さは、好ましくは0.05mm以上0.4mm以下である。ディンプルの縁で囲まれた平面からの深さDpは、
図2に示されるように、端縁eによって囲まれた平面L(円;直径Dm)からディンプルの底面j(底面をディンプルの上記平面と同一にする。)までの距離を意味する。
【0037】
ディンプル総容積(mm
3)については、好ましくは400〜480mm
3であり、より好ましくは410〜470mm
3である。
【0038】
ディンプルがゴルフボールの球面に占めるディンプル占有率、具体的には、ディンプルの縁に囲まれた平面の面縁で定義されるディンプル面積の合計が、ディンプルが存在しないと仮定したボール球面積に占める比率(SR)については、弾道に違和感なく飛距離を低減させる点から、好ましくは40〜80%、より好ましくは40〜70%であり、更に好ましくは40〜60%である。
【0039】
また、上記のディンプル表面占有率(SR)に上記ディンプル深さ(単位:mm)を掛け合わせた値、即ち、式(4)
13≦ディンプル深さ×ディンプル表面占有率≦17 ・・・(4)
を満たすことが好適である。一般には、ディンプルが浅く、表面占有率が小さくなると、上記式(4)の値が小さくなる。上記値が13より小さくなると、ボールが飛び過ぎたり、高弾道になり過ぎることがあり、逆に、ボールが上がらなくなる場合がある。また、ディンプルが深く、表面占有率が大きくなると、上記値が大きくなる。上記値が17を超えると、低弾道になり過ぎたり、飛び過ぎたりする場合がある。
【実施例】
【0040】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0041】
〔実施例1〜8、比較例1〜4〕
実施例及び比較例におけるゴルフボールを作成するに際し、下記表1に示す配合のゴム材料を用意した。このゴム組成物をニーダー又はロールにて適宜混練した後、いずれも155℃、15分にて加硫して各例のソリッドコアを作成した。なお、下記表中の各材料の数字は質量部で表される。
【0042】
【表1】
※上記の数字は質量部を示す。
【0043】
上記表中のコア配合の材料は下記の内容である。
・ポリブタジエン: JSR社製、商品名「BR01」
・ポリイソプレンゴム:JSR社製、商品名「IR2200」
・ブチルゴム: 日本ブチル製、商品名「Bromobutyl 2222」
・アクリル酸亜鉛: 日本蒸留工業(株)製
・過酸化物(1): 日本油脂社製、商品名「パークミルD」
・過酸化物(2): 日本油脂社製、商品名「パーヘキサC−40」
・酸化亜鉛: 堺化学社製
・ステアリン酸亜鉛: 日本油脂社製、商品名「ジンクステアレートG」
・老化防止剤: 大内新興化学工業社製、商品名「ノクラックNS−6」
・炭酸カルシウム: 白石カルシウム製、商品名「シルバーW」
【0044】
上記の通りコアを加硫成型した後、カバー射出成型用金型にコアをセットし、コアの周囲に下記表2に示すカバー配合によりカバー配合物を射出成型した。
【0045】
【表2】
※上記の数字は質量部を示す。
【0046】
上記表中の説明は下記の通りである。
・商品名「ハイミラン」: 三井・デュポンポリケミカル製、アイオノマー樹脂
・商品名「パンデックス」: DIC Bayer Polymer社製、MDI-PTMGタイプの熱可塑性ポリ
ウレタン
・ポリイソシアネート化合物:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
・熱可塑性エラストマー: 熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー(東レ・デュ
ポン社製の「ハイトレル4001」)を使用した。
・酸化チタン: 石原産業社製、商品名「タイペークR550」
・ポリエチレンワックス: 三洋化成社製、商品名「サンワックス161P」
・ステアリン酸マグネシウム:日本油脂社製
【0047】
なお、カバー表面には下記表3,4に示すディンプル態様I又はディンプル態様IIのいずれかを使用した。金型キャビテイには、ディンプル態様I又はディンプル態様IIに相応した多数の凸状突起が形成されており、これにより、カバーの射出成型と同時にディンプルも型付けられた。
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
得られた各実施例及び比較例のボールを構成するコア・カバーの厚さ・硬度等の諸物性、ゴルフボールの飛び性能、アプローチスピン性能、打感及び繰り返し打撃耐久性について評価を行った。その結果を表5,6に記した。
【0051】
コアのたわみ変形量(CE)
コアに対し、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)を負荷したときまでの変形量(mm)を計測した。
ボールのたわみ変形量(BE)
ボール球体に対し、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)を負荷したときまでの変形量(mm)を計測した。
【0052】
カバーのショアD硬度
カバー用組成物を約2mmの厚さに熱プレスで成型し、得られたシートを23℃で2週間保存した後、ASTM D2240に準じて測定した。
【0053】
ボールの初速度(BV)
R&Aの承認する装置であるUSGAのドラム回転式の初速度計と同方式の初速測定器を用いてボールの初速度を測定した。ボールを23±1℃環境下で3時間以上温調した後、室温23±2℃の部屋でテストした。250ポンド(113.4kg)のヘッド(ストライキングマス)を用いて打撃速度143.8ft/s(43.83m/s)にてボールを打撃し、1ダースのボールを各々4回打撃して6.28ft(1.91m)の間を通過する時間を測定して初速度(m/s)を算出した。約15分間でこのサイクルを行なった。
コアの初速度(CV)
コアの初速度も上記ボールと同じ測定方法により求めた。
【0054】
ディンプルの定義
・直径: ディンプルの縁に囲まれた平面の直径
・深さ: ディンプルの縁に囲まれた平面からのディンプルの最大深さ
・V
0 : ディンプルの縁に囲まれた平面下のディンプルの空間体積を、前記平面を底面
とし、かつこの底面からのディンプルの最大深さを高さとする円柱体積で除し
た値
・SR: ディンプルの縁に囲まれた平面の面縁で定義されるディンプル面積の合計が、
ディンプルが存在しないと仮定したボール球面積に占める比率
・VR: ディンプルの縁に囲まれた平面から下方に形成されるディンプル容積の合計が
、ディンプルが存在しないと仮定したボール球容積に占める比率
【0055】
下記表中の(i)〜(iv)式は下記のように定義される。
(i)式:(BV/BE)−(CV/CE)
(ii)式:BV/CV
(iii)式:BE/CE
(iv)式:ディンプル深さ×ディンプル表面占有率(SR)
【0056】
飛び性能
ゴルフ打撃ロボットに、ブリヂストンスポーツ社製「TourStage X-DRIVE」(ロフト10°)のW#1クラブをセットし、ヘッドスピード(HS)45m/sで打撃した時の飛距離を測定し、下記の基準に従って評価した。
○:220m未満
×:220m以上(飛び過ぎる)
【0057】
アプローチスピン性能
ゴルフ打撃ロボットに、ブリヂストンスポーツ社製「TourStage X-WEDGE」(ロフト58°)のSWクラブをセットし、ヘッドスピード(HS)18m/sで打撃した時のスピン量(rpm)を測定し、下記の基準に従って評価した。
○:6000以上7000rpm未満(コントロール性が良好)
△:7000rpm以上(スピン量が多過ぎて距離が合わせ難い)
×:6000rpm未満(スピンが少なく、コントロール性は悪い)
【0058】
打感
W#1打撃時のヘッドスピードが40〜45m/sのトップアマチュアゴルファー3人により下記の基準に従って打感を評価した。
○:良好な打感
×:硬過ぎる、又は軟らか過ぎる
【0059】
繰り返し打撃耐久性
W#1にてHS50m/sにて繰り返し打撃し、ボールの反発性が連続して3%低下した時の回数を調べ、下記を基準にした。
○:100回以上
×:100回未満
【0060】
【表5】
【0061】
【表6】
【0062】
上記表5,6から、本発明(実施例)に比べて比較例1〜4は下記の欠点を有する。
比較例1では、ボールの初速度が76.0m/sを超えてしまい、ボールが飛び過ぎてしまう。
比較例2では、(i)式の値が3.0を超え、(ii)式の値が0.99を超え、(iii)式の値が0.85を下回り、その結果、アプローチ時のボールのコントロール性が悪く、繰返し打撃耐久性が劣る。
比較例3では、(i)式の値が3.0を超え、(ii)式の値が0.99を超えてしまい、その結果、アプローチ時のコントロール性が悪いと飛び過ぎてしまう。
比較例4では、(i)式の値が−1.0を下回り、(iii)式の値が1.00を超えてしまい、その結果、ボールの飛距離は出ないものの、アプローチ時にスピンがかかり過ぎてしまう。