(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の導電性組成物は、銀粉(A)と、脂肪酸銀塩(B)と、ガラス転移温度が50℃以下のポリエステルウレタン樹脂(C)と、ガラス転移温度が50℃超のポリエステルウレタン樹脂(D)とを含有する導電性組成物である。
また、本発明の導電性組成物は、後述するように印刷性等の観点から、必要に応じて溶媒(E)を含有していてもよい。
以下に、銀粉(A)、脂肪酸銀塩(B)、ポリエステルウレタン樹脂(C)およびポリエステルウレタン樹脂(D)ならびに所望により含有してもよい溶媒(E)について詳述する。
【0025】
<銀粉(A)>
本発明の導電性組成物で用いる銀粉(A)は特に限定されず、従来公知の導電性ペーストで配合されているものを使用することができる。
【0026】
上記銀粉(A)は、印刷性が良好となり、体積抵抗率のより小さい電極等を形成することができる理由から、平均粒子径が0.5〜10μmの球状の銀粉末であるのが好ましい。
ここで、球状とは、長径/短径の比率が2以下の粒子の形状をいう。
また、平均粒子径とは、球状の銀粉末の粒子径の平均値をいい、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された50%体積累積径(D50)をいう。なお、平均値を算出する基になる粒子径は、球状の銀粉末の断面が楕円形である場合はその長径と短径の合計値を2で割った平均値をいい、正円形である場合はその直径をいう。
例えば、後述する実施例で使用する銀粉(AgC−103、福田金属箔社製)の写真(
図2)で示されるものは球状の銀粉末に該当するが、銀粉(AgC−2011、福田金属箔社製)の写真(
図3)で示されるものは球状の銀粉末には該当せず、フレーク(鱗片)状の銀粉末に該当するものである。
【0027】
また、上記銀粉(A)の平均粒子径は、印刷性がより良好となる理由から、0.7〜5μmであるのが好ましく、焼結速度が適当となり作業性に優れる理由から、1〜3μmであるのがより好ましい。
【0028】
本発明においては、このような銀粉(A)として市販品を用いることができ、その具体例としては、AgC−103(形状:球状、平均粒子径:1.5μm、福田金属箔社製)、AG4−8F(形状:球状、平均粒子径:2.2μm、DOWAエレクトロニクス社製)、AG2−1C(形状:球状、平均粒子径:1.0μm、DOWAエレクトロニクス社製)、AG3−11F(形状:球状、平均粒子径:1.4μm、DOWAエレクトロニクス社製)、EHD(形状:球状、平均粒子径:0.5μm、三井金属社製)、AgC−2011(形状:フレーク状、平均粒子径:2〜10μm、福田金属箔社製)等が挙げられる。
【0029】
また、本発明においては、上記銀粉(A)の含有量は、印刷性が良好となり、体積抵抗率のより小さい電極等を形成することができる理由から、後述する溶媒(E)100質量部に対して300〜700質量部であるのが好ましく、400〜600質量部であるのがより好ましい。
【0030】
更に、本発明においては、後述する実施例4にも示すように、上記銀粉(A)として、球状の銀粉末とフレーク状の銀粉末とを併用することができる。
ここで、フレーク状の銀粉末を併用する場合の含有量は、上記銀粉(A)の総質量のうち50質量%以下であるのが好ましい。
【0031】
<脂肪酸銀塩(B)>
本発明の導電性組成物で用いる脂肪酸銀塩(B)は、有機カルボン酸の銀塩であれば特に限定されないが、低温(150〜350℃程度)焼成であっても、断線の発生を抑制して配線(電極)を形成することができ、シリコン基板への熱によるダメージを軽減できる理由から、カルボキシ銀塩基(−COOAg)と水酸基(−OH)とをそれぞれ1個以上有する脂肪酸銀塩(B1)、および/または、カルボキシ銀塩基(−COOAg)を2個以上有するポリカルボン酸銀塩(B2)であるのが好ましい。
このような脂肪酸銀塩(B1)またはポリカルボン酸銀塩(B2)を用いることにより、シリコン基板のみならず、耐熱性の低い基材上にも電子回路、アンテナ等の回路を容易かつ短時間で作製することができるため非常に有用である。
以下に、脂肪酸銀塩(B1)およびポリカルボン酸銀塩(B2)について詳述する。
【0032】
(脂肪酸銀塩(B1))
上記脂肪酸銀塩(B1)は、カルボキシ銀塩基(−COOAg)と水酸基(−OH)とをそれぞれ1個以上有する脂肪酸銀塩であり、具体的には、以下に示す水酸基を1個以上有する脂肪酸と酸化銀とを反応させて得られるものである。
【0033】
上記反応に用いられる脂肪酸は、水酸基を1個以上有する脂肪酸であれば特に限定されず、例えば、下記式(1)〜(3)で表される化合物が挙げられる。
【0035】
式(1)中、nは0〜2の整数を表し、R
1は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、R
2は炭素数1〜6のアルキレン基を表す。nが0または1である場合、複数のR
2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。nが2である場合、複数のR
1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
式(2)中、R
1は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、複数のR
1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
式(3)中、R
1は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、R
3は炭素数1〜6のアルキレン基を表す。複数のR
1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0036】
上記式(1)〜(3)中、R
1の炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基が挙げられる。R
1としては、水素原子、メチル基、エチル基であるのが好ましい。
また、上記式(1)中、R
2の炭素数1〜6のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ヘプタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基が挙げられる。R
2としては、メチレン基、エチレン基であるのが好ましい。上記式(1)中、nの0〜2の整数としては、1または2であるのが好ましい。
また、上記式(3)中、R
3の炭素数1〜6のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ヘプタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基が挙げられる。R
2としては、メチレン基、エチレン基であるのが好ましい。
【0037】
上記式(1)で表される化合物としては、具体的には、例えば、下記式(1a)で表される2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−n−酪酸、下記式(1b)で表される2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、下記式(1c)で表されるヒドロキシピバリン酸、下記式(1d)で表されるβ−ヒドロキシイソ酪酸等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
上記式(2)で表される化合物としては、具体的には、例えば、下記式(2a)で表される2−ヒドロキシ−2−メチル−n−酪酸、下記式(2b)で表される2−ヒドロキシイソ酪酸、下記式(2c)で表されるグリコール酸、下記式(2d)で表されるDL−2−ヒドロキシ酪酸等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
上記式(3)で表される化合物としては、具体的には、例えば、下記式(3a)で表されるDL−3−ヒドロキシ酪酸、下記式(3b)で表されるβ−ヒドロキシ吉草酸等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種を併用してもよい。
【0043】
これらのうち、得られる脂肪酸銀塩(B1)の還元が速やかに行われ、銀粒子が生成しやすくなる結果、本発明の導電性組成物を用いた電極等の形成がより低温かつ短時間で可能となる理由から、上記カルボキシ銀塩基に対するα位および/またはβ位の炭素原子に上記水酸基を有しているものが好ましく、上記カルボキシ銀塩基を1個有し、上記水酸基を1個または2個有するものがより好ましい。
特に、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−n−酪酸および/または2−ヒドロキシイソ酪酸であるのが、得られる脂肪酸銀塩(B2)である2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−n−酪酸銀塩および/または2−ヒドロキシイソ酪酸銀塩を含有する本発明の導電性組成物を用いた電極等の形成が更に低温かつ短時間で可能となる理由から好ましい。
【0044】
一方、上記反応に用いられる酸化銀は、酸化銀(I)、即ち、Ag
2Oである。
【0045】
上記脂肪酸銀塩(B1)は、上述した水酸基を1個以上有する脂肪酸と酸化銀とを反応させて得られ、以下に示す反応式中の下記式(I)〜(III)で表される化合物であるのが好ましい。
この反応は、例えば、上記式(1)〜(3)で表される化合物を用いた場合は以下に示す反応式で表される反応が進行するものであれば特に限定されないが、上記酸化銀を粉砕しつつ進行させる方法や、上記酸化銀を粉砕した後に上記脂肪酸を反応させる方法が好ましい。前者の方法としては、具体的には、上記酸化銀と、溶剤により上記脂肪酸を溶液化したものとを、ボールミル等により混練し、固体である上記酸化銀を粉砕させながら、室温で、1〜24時間程度、好ましくは2〜8時間反応させるのが好ましい。
【0047】
式(I)中、nは0〜2の整数を表し、R
1は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、R
2は炭素数1〜6のアルキレン基を表す。nが0または1である場合、複数のR
2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。nが2である場合、複数のR
1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
式(II)中、R
1は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、複数のR
1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
式(III)中、R
1は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、R
3は炭素数1〜6のアルキレン基を表す。複数のR
1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0048】
上記脂肪酸を溶液化する溶媒としては、具体的には、例えば、ブチルカルビトール、メチルエチルケトン、イソホロン、α−テルピネオール等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
中でも、イソホロンおよび/またはα−テルピネオールを溶媒として用いるのが、上記反応により得られる脂肪酸銀塩(B1)を含有する本発明の導電性組成物のチクソ性が良好となる。
【0049】
(ポリカルボン酸銀塩(B2))
上記ポリカルボン酸銀塩(B2)は、カルボキシ銀塩基(−COOAg)を2個以上有するポリカルボン酸銀塩であり、具体的には、以下に示すカルボキシ基を2個以上有する脂肪酸と酸化銀とを反応させて得られるものである。
【0050】
上記反応に用いられる脂肪酸は、カルボキシ基を2個以上有する脂肪酸であれば特に限定されず、例えば、下記式(4)で表される化合物;タルトロン酸、リンゴ酸、クエン酸、β-ヒドロキシグルタル酸などの水酸基を有するヒドロキシポリカルボン酸;等が挙げられる。
【0052】
式(4)中、mは、2〜6の整数を表し、R
4は、炭素数1〜24のm価の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数2〜12のm価の不飽和脂肪族炭化水素基、炭素数3〜12のm価の脂環式炭化水素基、または、炭素数6〜12のm価の芳香族炭化水素基を表す。R
4の炭素数をpとすると、m≦2p+2である。
なお、式(4)中、mが2以上の場合、カルボキシ基の炭素が結合するR
4の炭素は、同一であっても異なっていてもよい。
【0053】
上記式(4)中、mの2〜6の整数としては、2〜5であるのが好ましく、2〜4であるのがより好ましい。
【0054】
上記式(4)中、R
4が示す飽和脂肪族炭化水素基の1〜24の炭素数としては、1〜12であるのが好ましく、1〜6であるのがより好ましい。
mが2の場合におけるR
4が示す飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基等が挙げられる。
mが3の場合におけるR
4が示す飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、メタン−トリイル基、エタン−1,1,2−トリイル基、プロパン−1,1,3−トリイル基、プロパン−1,2,3−トリイル基、ブタン−1,1,3−トリイル基、ブタン−1,1,4−トリイル基、ブタン−1,2,4−トリイル基等が挙げられる。
mが4の場合におけるR
4が示す飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、エタン−1,2,2,2−テトライル基、プロパン−1,2,2,3−テトライル基、ブタン−1,2,3,4−テトライル基等が挙げられる。
【0055】
上記式(4)中、R
4が示す不飽和脂肪族炭化水素基の2〜12の炭素数としては、2〜10であるのが好ましく、2〜6であるのがより好ましい。
mが2の場合におけるR
4が示す不飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、エチレン−1,2−ジイル基、プロペン−1,3−ジイル基等が挙げられる。
mが3の場合におけるR
4が示す不飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、プロペン−1,2,3−トリイル基、プロペン−1,3,3−トリイル基等が挙げられる。
mが4の場合におけるR
4が示す不飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、プロペン−1,1,2,3−テトライル基等が挙げられる。
【0056】
上記式(4)中、R
4が示す脂環式炭化水素基の3〜12の炭素数としては、3〜10であるのが好ましく、3〜6であるのがより好ましい。
mが2の場合におけるR
4が示す脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロヘキサン−1,2−ジイル基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基、シクロヘキセン−1,2−ジイル基、シクロヘキセン−4,5−ジイル基、1−メチルシクロヘキセン−4,5−ジイル基等が挙げられる。
mが3の場合におけるR
4が示す脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロパン−1,2,3−トリイル基、シクロペンタン−1,1,2−トリイル基、シクロヘキサン−1,2,4−トリイル基等が挙げられる。
mが4の場合におけるR
4が示す脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロブタン−1,2,3,4−テトライル基、シクロペンタン−1,2,3,4−テトライル基、シクロペンタン−1,2,4,5−テトライル基、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトライル基、3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2,4,5−テトライル基等が挙げられる。
【0057】
上記式(4)中、R
4が示す芳香族炭化水素基の6〜12の炭素数としては、6〜10であるのが好ましく、6〜8であるのがより好ましい。
mが2の場合におけるR
4が示す芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン−1,2−ジイル基、ベンゼン−1,3−ジイル基、ベンゼン−1,4−ジイル基、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,3−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基等が挙げられる。
mが3の場合におけるR
4が示す芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン−1,2,4−トリイル基、ベンゼン−1,3,5−トリイル基等が挙げられる。
mが4の場合におけるR
4が示す芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン−1,2,4,5−テトライル基、ビフェニル−3,3′,4,4′−テトライル基等が挙げられる。
【0058】
上記式(4)で表される化合物としては、例えば、脂肪族ポリカルボン酸、脂環式ポリカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸が挙げられる。
脂肪族ポリカルボン酸としては、具体的には、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸などの飽和ジカルボン酸;フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸;トリカルバリル酸などの飽和トリカルボン酸;アコニット酸などの不飽和トリカルボン酸;1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸などの飽和テトラカルボン酸;等が挙げられる。
脂環式ポリカルボン酸としては、具体的には、例えば、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸などの不飽和脂環式ジカルボン酸;1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸などの飽和脂環式テトラカルボン酸;等が挙げられる。
芳香族ポリカルボン酸としては、具体的には、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などのベンゼンジカルボン酸;トリメリット酸、トリメシン酸などのトリカルボン酸;ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸などのテトラカルボン酸;1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸;等が挙げられる。
これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
これらのうち、印刷性が良好となり、本発明の導電性組成物を用いた電極等の形成がより低温かつ短時間で可能となる理由から、脂肪族ポリカルボン酸、脂環式ポリカルボン酸が好ましく、飽和ジカルボン酸、飽和テトラカルボン酸、不飽和脂環式ジカルボン酸であるのがより好ましい。
特に、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸であるのが、得られるポリカルボン酸銀塩(B2)である1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸銀塩を含有する本発明の導電性組成物を用いた電極等の形成が更に低温かつ短時間で可能となる理由から好ましい。
【0060】
一方、上記反応に用いられる酸化銀は、上述した脂肪酸銀塩(B1)の反応(合成)と同様、Ag
2Oである。
【0061】
上記ポリカルボン酸銀塩(B2)は、上述したカルボキシ基を2個以上有するポリカルボン酸と酸化銀とを反応させて得られ、以下に示す反応式中の下記式(IV)で表される化合物であるのが好ましい。
この反応は、例えば、上記式(4)で表される化合物を用いた場合は以下に示す反応式で表される反応が進行するものであれば特に限定されず、上述した式(1)〜(3)で表される化合物を用いた場合と同様の方法が挙げられる。
【0063】
式(IV)中、mは、2〜6の整数を表し、R
4は、炭素数1〜24のm価の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数2〜12のm価の不飽和脂肪族炭化水素基、炭素数3〜12のm価の脂環式炭化水素基、または、炭素数6〜12のm価の芳香族炭化水素基を表す。R
4の炭素数をpとすると、m≦2p+2である。
なお、式(IV)中、mが2以上の場合、カルボキシ基の炭素が結合するR
4の炭素は、同一であっても異なっていてもよい。
【0064】
本発明においては、上記脂肪酸銀塩(B)の含有量は、印刷性が良好となり、体積抵抗率のより小さい電極等を形成することができる理由から、上記銀粉(A)100質量部に対して1〜100質量部であるのが好ましく、5〜50質量部であるのがより好ましい。
【0065】
<ポリエステルウレタン樹脂(C)/ポリエステルウレタン樹脂(D)>
本発明の導電性組成物で用いるポリエステルウレタン樹脂(C)およびポリエステルウレタン樹脂(D)は、ポリイソシアネート化合物とポリエステルポリオールとの反応により得られるものである。
【0066】
上記ポリイソシアネート化合物としては、具体的には、例えば、TDI(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI))、MDI(例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI))、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)のような脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H
6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H
12MDI)のような脂環式ポリイソシアネート;これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート;等が挙げられる。
【0067】
上記ポリエステルポリオールとしては、ポリエステルの製造に用いられる公知のポリオール化合物を特に制限なく使用することができ、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,4−シクロヘキサンジメチロール、2,2−ビスヒドロキシメチル−n−酪酸およびその他の低分子ポリオールからなる群から選択される少なくとも1種と、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、テレフタル酸、イソフタル酸、メタフタル酸、ナフタレンジカルボン酸その他の脂肪族カルボン酸およびオリゴマー酸からなる群から選択される少なくとも1種との縮合重合体;プロピオンラクトン、バレロラクトンなどの開環重合体;等を使用することができる。
【0068】
本発明においては、上記ポリエステルウレタン樹脂(C)のガラス転移温度(Tg)が、50℃以下であり、0〜40℃であるのが好ましい。
同様に、上記ポリエステルウレタン樹脂(D)のガラス転移温度(Tg)が、50℃超であり、80〜100℃であるのが好ましい。
【0069】
また、本発明においては、上記ポリエステルウレタン樹脂(C)を製造する際のポリイソシアネート化合物とポリエステルポリオールとの組み合わせとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)と、1,4−シクロヘキサンジメチロール、ネオペンチルグリコールまたは1,6−ヘキサンジオールとの組み合わせが好適に例示される。
同様に、上記ポリエステルウレタン樹脂(D)を製造する際のポリイソシアネート化合物とポリエステルポリオールとの組み合わせとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)またはイソホロンジイソシアネート(IPDI)と、1,4−シクロヘキサンジメチロール、オペンチルグリコールまたは1,6−ヘキサンジオールとの組み合わせが好適に例示される。
【0070】
本発明においては、上記ポリエステルウレタン樹脂(C)および上記ポリエステルウレタン樹脂(D)の酸価が、いずれも5.0KOHmg/g以上であるのが好ましく、5〜30KOHmg/gであるのがより好ましい。
ここで、酸価とは、上記ポリエステルウレタン樹脂(C)および上記ポリエステルウレタン樹脂(D)に含まれる遊離脂肪酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数をいう。
酸価がこの範囲であると、ポリエステルウレタン樹脂の熱硬化性が高くなり、シリコン基板との密着性がより良好となる電極等を形成することができる。
【0071】
また、本発明においては、上記ポリエステルウレタン樹脂(C)および上記ポリエステルウレタン樹脂(D)の製造方法は特に限定されず、例えば、上述の当量比のポリイソシアネート化合物とポリエステルポリオールとを、50〜130℃で加熱かくはんすることによって製造することができる。また、必要に応じて、例えば、有機錫化合物、有機ビスマス、アミンのようなウレタン化触媒を用いることができる。
【0072】
更に、本発明においては、上記ポリエステルウレタン樹脂(C)および上記ポリエステルウレタン樹脂(D)として市販品を用いることができる。
上記ポリエステルウレタン樹脂(C)の市販品としては、例えば、バイロンUR3500(酸価:35KOHmg/g、Tg:10℃、東洋紡績社製)等を用いることができる。
同様に、上記ポリエステルウレタン樹脂(D)の市販品としては、例えば、東洋紡績社製のバイロン(登録商標)URシリーズを用いることができ、具体的には、バイロンUR1700(酸価:26KOHmg/g、Tg:92℃、東洋紡績社製)等を用いることができる。
【0073】
本発明においては、上述した銀粉(A)および脂肪酸銀塩(B)とともに、ポリエステルウレタン樹脂(C)およびポリエステルウレタン樹脂(D)を配合した導電性組成物を用いることにより、体積抵抗率を低く、また、シリコン基板との密着性にも優れる電極等を形成することができる。
これは、熱処理の際にポリエステルウレタンが凝集し、上述した銀粉(A)同士の接触によるネットワークが形成されることにより、体積抵抗率が低くなったと考えられる。また、ガラス転移温度の異なる2種のポリエステルウレタンを併用することで、硬化物の耐熱性を確保しつつ、柔軟性にも優れるため、シリコン基板との密着性が向上すると考えられる。
【0074】
また、本発明においては、上記ポリエステルウレタン樹脂(C)および上記ポリエステルウレタン樹脂(D)の合計の含有量は、体積抵抗率がより低く、シリコン基板との密着性がより良好となる電極等を形成することができる理由から、上記銀粉(A)100質量部に対して、3〜50質量部であるのが好ましく、10〜20質量部であるのがより好ましい。
【0075】
<溶媒(E)>
本発明の導電性組成物は、印刷性等の作業性の観点から、溶媒(E)を含有するのが好ましい。
上記溶媒(E)は、本発明の導電性組成物を基材上に塗布することができるものであれば特に限定されず、その具体例としては、ブチルカルビトール、メチルエチルケトン、イソホロン、α−テルピネオール等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0076】
<硬化剤>
本発明の導電性組成物は、上述したポリエステルウレタン樹脂(C)およびポリエステルウレタン樹脂(D)の硬化剤を含有するのが好ましい。
上記硬化剤としては、ブロックイソシアネート基を有する化合物(以下、「ブロックイソシアネート化合物」という。)が好適に用いられる。
ここで、ブロックイソシアネート基とは、イソシアネート基が保護基でブロックされ、熱や湿気等により容易にブロックが外れてイソシアネート基を発生しうる基をいい、例えば、アルコール類、フェノール類、オキシム類、トリアゾール類、カプロラクタム類等のブロック剤でブロックしたイソシアネート基が挙げられる。
【0077】
上記ブロックイソシアネート化合物としては、例えば、ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基をブロック剤で保護したもの;ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られるウレタンプレポリマーに残存するイソシアネート基をブロック剤で保護したもの;等が挙げられる。
ここで、上記ポリイソシアネート化合物は特に限定されず、その具体例としては、上述したポリエステルウレタン樹脂(C)およびポリエステルウレタン樹脂(D)の生成に用いるポリイソシアネート化合物と同様のものが挙げられる。
また、上記ポリオール化合物は特に限定されず、従来公知のウレタンプレポリマーの生成に用いるポリオール化合物を用いることができる。
【0078】
<酸化銀>
本発明の導電性組成物は、上述したポリエステルウレタン樹脂(C)およびポリエステルウレタン樹脂(D)の分解を抑制し、シリコン基板との優れた密着性を保持できる理由から、酸化銀の含有量は上述した溶媒(E)100質量部に対して5質量部以下であるのが好ましく、1質量部以下であるのがより好ましく、実質的に酸化銀を含有していない態様が最も好ましい。
【0079】
<ガラスフリット>
本発明の導電性組成物は、太陽電池電極用ペーストに用いる場合、形成される電極とシリコン基板との密着性がより良好となる理由から、所望によりガラスフリットを含有することができる。なお、低温(150〜350℃程度)、特に200℃以下の温度による焼成で電極等を形成する場合は、通常、ガラスフリットは含有しない。
【0080】
<添加剤>
本発明の導電性組成物は、必要に応じて、上述した銀粉(A)以外の金属粉、還元剤等の添加剤を含有していてもよい。
上記金属粉としては、具体的には、例えば、銅、アルミニウム等が挙げられ、中でも、銅であるのが好ましい。また、0.01〜10μmの粒径の金属粉であるのが好ましい。
上記還元剤としては、具体的には、例えば、エチレングリコール類等が挙げられる。
【0081】
本発明の導電性組成物の製造方法は特に限定されず、上記銀粉(A)、上記脂肪酸銀塩(B)、ポリエステルウレタン樹脂(C)およびポリエステルウレタン樹脂(D)ならびに所望により含有してもよい上記溶媒(E)、硬化剤および添加剤等を、ロール、ニーダー、押出し機、万能かくはん機等により混合する方法が挙げられる。
【0082】
本発明の太陽電池セルは、受光面側の表面電極、半導体基板および裏面電極を具備し、上記表面電極および/または上記裏面電極が、上述した本発明の導電性組成物を用いて形成される太陽電池セルである。
ここで、本発明の太陽電池セルは、上述した本発明の導電性組成物が全裏面電極型(いわゆるバックコンタクト型)太陽電池の裏面電極の形成にも適用することができるため、全裏面電極型の太陽電池にも適用することができる。
以下に、本発明の太陽電池セルの構成について
図1を用いて説明する。
【0083】
図1に示すように、本発明の太陽電池セル1は、受光面側の表面電極4と、p層5およびn層2が接合したpn接合シリコン基板7と、裏面電極6とを具備するものである。
また、
図1に示すように、本発明の太陽電池セル1は、反射率低減のため、例えば、ウェハー表面にエッチングを施して、ピラミッド状のテクスチャを形成し、反射防止膜3を具備するのが好ましい。
【0084】
<表面電極/裏面電極>
本発明の太陽電池セルが具備する表面電極および裏面電極は、いずれか一方または両方が本発明の導電性組成物を用いて形成されていれば、電極の配置(ピッチ)、形状、高さ、幅等は特に限定されない。なお、電極の高さは、通常、数〜数十μmに設計されるが、本発明の導電性組成物を用いて形成した電極の断面の高さと幅の比率(高さ/幅)(以下、「アスペクト比」という。)を大きく(例えば、0.4程度以上)調整することが可能となる。
ここで、表面電極および裏面電極は、
図1に示すように、通常、複数個有するものであるが、本発明においては、例えば、複数の表面電極の一部のみが本発明の導電性組成物で形成されたものであってもよく、複数の表面電極の一部と複数の裏面電極の一部が本発明の導電性組成物で形成されたものであってもよい。
【0085】
<反射防止膜>
本発明の太陽電池セルが具備していてもよい反射防止膜は、受光面の表面電極が形成されていない部分に形成される膜(膜厚:0.05〜0.1μm程度)であって、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、酸化チタン膜、これらの積層膜等から構成されるものである。
【0086】
<シリコン基板>
本発明の太陽電池セルが具備するシリコン基板は特に限定されず、太陽電池を形成するための公知のシリコン基板(板厚:100〜450μm程度)を用いることができ、また、単結晶または多結晶のいずれのシリコン基板であってもよい。
【0087】
また、上記シリコン基板はpn接合を有するが、これは、第1導電型の半導体基板の表面側に第2導電型の受光面不純物拡散領域が形成されていることを意味する。なお、第1導電型がn型の場合には、第2導電型はp型であり、第1導電型がp型の場合には、第2導電型はn型である。
ここで、p型を与える不純物としては、ホウ素、アルミニウム等が挙げられ、n型を与える不純物としては、リン、砒素などが挙げられる。
【0088】
本発明の太陽電池セルは、表面電極および/または裏面電極が本発明の導電性組成物を用いて形成されているため、電極のアスペクト比を大きくし易く、受光により発生した起電力を電流として効率良く取り出すことができる。
【0089】
本発明の太陽電池セルの製造方法は特に限定されないが、本発明の導電性組成物をシリコン基板上に塗布して配線を形成する配線形成工程と、得られた配線を熱処理して電極(表面電極および/または裏面電極)を形成する電極形成工程とを有する方法が挙げられる。
なお、本発明の太陽電池セルが反射防止層を具備する場合、反射防止膜は、プラズマCVD法等の公知の方法により形成することができる。
以下に、配線形成工程、熱処理工程について詳述する。
【0090】
<配線形成工程>
上記配線形成工程は、本発明の導電性組成物をシリコン基材上に塗布して配線を形成する工程である。
ここで、塗布方法としては、具体的には、例えば、インクジェット、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷等が挙げられる。
【0091】
<熱処理工程>
上記熱処理工程は、上記配線形成工程で得られた塗膜を熱処理して導電性の配線(電極)を得る工程である。
配線を熱処理することにより、脂肪酸銀塩(B)から分解される銀が融解する際に銀粉(A)が連結され、電極(銀膜)が形成される。
【0092】
本発明においては、上記熱処理は特に限定されないが、150〜350℃の比較的低い温度で、数秒〜数十分間、加熱(焼成)する処理であるのが好ましい。温度および時間がこの範囲であると、シリコン基板上に反射防止膜を形成した場合であっても、ファイヤースルー法により容易に電極を形成することができる。
【0093】
なお、本発明においては、上記配線形成工程で得られた配線は、紫外線または赤外線の照射でも電極を形成することができるため、上記熱処理工程は、紫外線または赤外線の照射によるものであってもよい。
【実施例】
【0094】
以下、実施例を用いて、本発明の導電性組成物について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0095】
(実施例1〜5、比較例1〜3)
ボールミルに、下記第1表に示す銀粉等を下記第1表中に示す組成比となるように添加し、これらを混合することにより導電性組成物を調製した。
次いで、調製した導電性組成物をシリコン基板(単結晶シリコンウェハー、LS−25TVA、156mm×156mm×200μm、信越化学工業社製)上に、スクリーン印刷で塗布して塗膜を形成した後、オーブンにて200℃で30分間乾燥し、導電性被膜を作製した。
【0096】
<体積抵抗率(比抵抗)>
形成した各導電性被膜について、低抵抗率計(ロレスターGP、三菱化学社製)を用いた4端子4探針法により比抵抗(体積固有抵抗値)を測定した。その結果を下記第1表に示す。
【0097】
<密着性>
形成した各導電性被膜のシリコン基板に対する密着性の評価は、碁盤目はく離試験により行った。その結果を下記第1表に示す。
具体的には、得られた各導電性被膜付きシリコン基板に、1mmの基盤目を100個(10×10)作り、基盤目上にセロハン粘着テープを完全に付着させ、指の腹で10回こすった後、テープの一端を導電性膜に直角に保った状態で瞬間的に引き離し、完全に剥がれないで残った基盤目の数を調べた。完全に剥がれないで残った基盤目数が100、即ち、全く剥がれなかったものが最も好ましい。
【0098】
【表1】
【0099】
第1表中の各成分は、以下のものを使用した。
・銀粉1:AgC−103(形状:球状、平均粒子径:1.5μm、福田金属箔社製)
・銀粉2:AgC−2011(形状:フレーク状、平均粒子径:2〜10μm、福田金属箔社製)
【0100】
・2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−n−酪酸銀塩:
まず、酸化銀(東洋化学工業社製)50g、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−n−酪酸(東京化成社製)64gおよびメチルエチルケトン(MEK)300gをボールミルに投入し、室温で24時間撹拌させることにより反応させた。
次いで、吸引ろ過によりMEKを取り除き、得られた粉末を乾燥させることにより、白色の2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−n−酪酸銀塩を調製した。
【0101】
・2−ヒドロキシイソ酪酸銀塩:
まず、酸化銀(東洋化学工業社製)50g、2−ヒドロキシイソ酪酸(東京化成社製)45gおよびメチルエチルケトン(MEK)300gをボールミルに投入し、室温で24時間撹拌させることにより反応させた。
次いで、吸引ろ過によりMEKを取り除き、得られた粉末を乾燥させることにより、白色の2−ヒドロキシイソ酪酸銀塩を調製した。
【0102】
・1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸銀塩:
まず、酸化銀(東洋化学工業社製)50g、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(新日本理化社製)25.29gおよびメチルエチルケトン(MEK)300gをボールミルに投入し、室温で24時間撹拌させることにより反応させた。
次いで、吸引ろ過によりMEKを取り除き、得られた粉末を乾燥させることによって、白色の1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸銀塩を調製した。
【0103】
・ピバル酸銀塩:
まず、酸化銀(東洋化学工業社製)50g、ピバル酸(和光純薬社製)88.1gおよびメチルエチルケトン(MEK)300gをボールミルに投入し、室温で24時間撹拌させることにより反応させた。
次いで、吸引ろ過によりMEKを取り除き、得られた粉末を乾燥させることにより、ピバル酸銀塩を調製した。
【0104】
・ポリエステルウレタン樹脂C1:バイロンUR3500(酸価:35KOHmg/g、Tg:10℃、東洋紡績社製)
・ポリエステルウレタン樹脂D1:バイロンUR1700(酸価:26KOHmg/g、Tg:92℃、東洋紡績社製)
・ウレタン樹脂:パンデックス(DIC社製)
・溶媒:α−テルピネール
・ポリエステルウレタン樹脂の硬化剤:ジフェニルメタンジイソシアネートと2−ブタノンオキシムとをNCO/OH=1.0で反応させたブロックイソシアネート
・ウレタン樹脂の硬化剤:4,4′−メチレンジアニリン
【0105】
第1表に示す結果から、ポリエステルウレタン樹脂(C)およびポリエステルウレタン樹脂(D)に代えてウレタン樹脂を用いて調製した比較例1は、体積抵抗率が高くなり、また、シリコン基板との密着性にも劣ることが分かった。
また、ポリエステルウレタン樹脂(C)およびポリエステルウレタン樹脂(D)のいずれか一方のみを用いて調製した比較例2および3は、体積抵抗率は低くなるが、シリコン基板との密着性に劣ることが分かった。
これに対し、ポリエステルウレタン樹脂(C)およびポリエステルウレタン樹脂(D)を用いて調製した実施例1〜5は、200℃で30分間という低温焼成条件であっても、体積抵抗率を低く、また、シリコン基板との密着性にも優れることが分かった。