(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、予備苗台を備えた苗移植機が知られている。例えば、特許文献1に開示されたような苗移植機が知られている。
【0003】
図19は、特許文献1における、予備苗載置部102が重複状態に配列されている状態での乗用型田植機の全体側面図であり、
図20は、予備苗載置部102が展開状態に配列されている状態での乗用型田植機の全体側面図である。また、
図21および
図22は、それぞれ重複状態および展開状態における予備苗載置部102の拡大側面図を示している。
【0004】
図19および
図20に示すように、前輪112及び後輪113で支持された機体に運転部101が備えられ、また、機体の後部に、油圧シリンダ及び昇降リンク機構を介して苗植付装置100が昇降駆動自在に支持されている。
【0005】
運転部101におけるフロア107の後部には運転座席105が備えられている。エンジンを覆うボンネット106がフロア107の前方に備えられており、このボンネット106の上部に、前輪112を操向操作する操縦ハンドル104が備えられている。ボンネット106の右及び左の横側部には、フロア107につながる右及び左のステップ109が備えられており、フロア107及びステップ109の両横外側には、右及び左の補助ステップ108が備えられている。
【0006】
さらに、
図19および
図20に示すように、エンジンから前方にエンジンフレーム111が延出されており、このエンジンフレーム111に、予備苗載置部102を支持する左右の支持フレーム110が固定されている。これにより、機体前部の左右の横側部に左右の支持フレーム110が装備されていることになる。
【0007】
支持フレーム110の横外側には、3段の予備苗載せ台103(103u、103m、103d)が配設されることにより、機体前部の右側部及び左側部に予備苗載置部102が配設されている。
【0008】
この予備苗載置部102は、3つの予備苗載せ台103が平面視で重複した状態で配設された重複状態(
図19、
図21の状態)と、3つの予備苗載せ台103が少し斜め後方下方に傾斜して略一直線状になった展開状態(
図20、
図22の状態)とに、状態切換可能に構成されている。なお、重複状態での3段の予備苗載せ台103のうちの上段の予備苗載せ台を103uと表示し、中段の予備苗載せ台を103mと表示し、下段の予備苗載せ台を103dと表示する。
【0009】
図21および
図22に示すように、支持フレーム110の上部には、ブラケット120が固定されており、このブラケット120に中央支軸121が軸心P1周りで回動自在に支持されている。そして中央支軸121の外側端部には、後述する第1連係リンク122の中央部ボス部が回動自在に外嵌された状態で、また、前後に長い角パイプ状の第1フレーム部材123のボス部が外嵌固定された状態で装着されている。
【0010】
中段の予備苗載せ台103mは、この第1フレーム部材123に固定されている。さらに、第1フレーム部材123の前方端部には、軸心P4の周りで回動自在に、第2連係リンク124の下端が連係されている。
【0011】
また、第1フレーム部材123の後方端部には、軸心P6周りで回動自在に、第3連係リンク125の上端が連係されている。
【0012】
また、第1連係リンク122の上端には、上段の予備苗載せ台103uにおける第2フレーム部材126の後部が、軸心P2周りで回動自在に連係されている。さらに、第1連係リンク122の下端には、下段の予備苗載せ台103dにおける第3フレーム部材127の前部が、軸心P3周りで回動自在に連係されている。
【0013】
さらに、第2連係リンク124の上端は、上段の予備苗載せ台103uにおける第2フレーム部材126の中央部に、軸心P5周りで回動自在に連係されている。
【0014】
また、第3連係リンク125の下端は、下段の予備苗載せ台103dにおける第3フレーム部材127の中央部に、軸心P7周りで回動自在に連係されている。
【0015】
このような構造の予備苗載置部102は以下のようにして、重複状態から展開状態へと切り換えられる。
【0016】
作業者が操作具を操作すると、第1連係リンク122が左右向きの軸心P1周りで揺動し、第2連係リンク124が左右向きの軸心P4周りで揺動し、第3連係リンク125が左右向きの軸心P6周りで揺動する。
【0017】
そして、
図22に示すように、上段の予備苗載せ台103uの後部の左右向きの軸心P2が、左右向きの軸心P1周りの回転軌跡L1に沿って前方下方に移動すると共に、上段の予備苗載せ台103uの前後中央部の軸心P5が、左右向きの軸心P4周りの回転軌跡L2に沿って前方下方に移動する。これにより、上段の予備苗載せ台103uの水平状態がほぼ維持された状態で、上段の予備苗載せ台103uが中段の予備苗載せ台103mの前側に移動する。
【0018】
また同時に、下段の予備苗載せ台103dの前部の左右向きの軸心P3が、左右向きの軸心P1周りの回転軌跡L3に沿って後方上方に移動すると共に、下段の予備苗載せ台103dの前後中央部の軸心P7が、左右向きの軸心P6周りの回転軌跡L4に沿って後方上方に移動する。これにより、下段の予備苗載せ台103dの水平状態がほぼ維持された状態で、下段の予備苗載せ台103dが中段の予備苗載せ台103mの後側に移動する。
【0019】
これにより、上段及び下段の予備苗載せ台103u、103dが中段の予備苗載せ台103mと略一直線状になって、予備苗載置部102が展開状態に切り換えられる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0046】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1の、予備苗載置部が重複状態のときの苗移植機の側面図を示し、
図2は、予備苗載置部が展開状態のときの苗移植機の側面図を示している。
図3は、本実施の形態1の、予備苗載置部が重複状態のときの苗移植機の平面図を示し、
図4は、予備苗載置部が展開状態のときの苗移植機の平面図を示している。
図5は、本実施の形態1の苗移植機の部分正面図であって、予備苗載置部が重複状態になっている状態を示している。
【0047】
なお、本明細書においては、前後、左右の方向基準は、運転席からみて、車体の走行方向を基準として、前後、左右の基準を規定している。
【0048】
図1、
図2、
図3、
図4および
図5に示すように、車体の運転部10におけるフロア11の後部には運転座席12が備えられている。エンジンを覆うボンネット13がフロア11の前方に備えられており、このボンネット13の上部に、前輪14を操向操作する操縦ハンドル18が備えられている。フロア11の両横外側には、右及び左の補助ステップ27が備えられている。以後車体の左側を中心に説明する。なお、
図1および
図2において、16は車体の後ろ側に取り付けられた植え付け部、15は後輪、17は施肥部である。
【0049】
車体左側の補助ステップ27の外側には、予備苗載台20u、20m、20d…等から構成される予備苗載置部19が、車体に固定された基礎支持フレーム23の前後に延びる両端部に固定されている2本の主支持フレーム24および副支持フレーム25によって支持されている。基礎支持フレーム23は、その下端部が屈曲しており、その屈曲部が補助ステップ27の下側に回り込み、車体フレームのブラケット26に固定されており、基礎支持フレーム23の上端部に固定されている主支持フレーム24および副支持フレーム25は、ほぼ垂直に立設している。
【0050】
また、車体右側の補助ステップ27の外側には、1枚分の予備苗を載置する固定された固定予備苗載置部28が設けられている。
【0051】
主支持フレーム24の上端部に切り替え部21が固定されており、3つの予備苗載台20u、20m、20dに連結される主リンク部材41を切り替え部21によって回動させることにより、予備苗載置部19の重複状態と展開状態が切り替えられるようになっている。
【0052】
切り替え部21は、主支持フレーム24の上端部に固定されているので、主支持フレーム24の上下長さを抑えつつ、リンク機構の回動軌跡を確保できるので、予備苗載台20u、20m、20dの位置が高くなり過ぎないようにでき、苗の積み込みや取り出しが困難になることを防止でき、作業効率が向上する。
【0053】
図5に示すように、切り替え部21を構成する切り替え用歯車32に指などが当たらないように、切り替え部21は切り替え部カバー31によって覆われている。
【0054】
図5に示す切り替え部カバー31では、切り替え部カバー31を被せた状態で小さくなるように、モータ22の上部が露出する構成となっている。切り替え部カバー31は、モータ22全体を覆うような構成としてもよい。
【0055】
また、空の苗箱や苗掬い板などを収納するための空苗箱収容部33が、主支持フレーム24および副支持フレーム25に固定されて、車体の内側に設けられている。空苗箱収容部33は、例えば、金属製の棒の組み合わせによって構成されている。なお、
図1〜
図4では、空苗箱収容部33の図示を省略している。
【0056】
空苗箱収容部33を設けたことにより、使い終わった苗の空箱や苗掬い板を収容しておくことができるので、苗箱や苗掬い板が風で飛ばされて圃場に落ちることを防止でき、作業者が拾い集める手間が省け、作業効率が向上する。
【0057】
また、空苗箱収容部33を予備苗載置部19とボンネット13との間に設けたことで、作業者はほとんど移動することなく苗箱や苗掬い板を空苗箱収容部33に収容することができ、作業者の労力を軽減できる。
【0058】
空苗箱収容部33を車体の外側に配置した場合には、車体を壁に寄せられなくなったり、運転者からは空苗箱収容部33に届き難いなどの問題があるため、本実施の形態1のように車体内部に配置することが合理的であり、苗移植機の操作性及び作業性が向上する。
【0059】
なお、本実施の形態1の苗移植機の車体が、本発明の走行車体の一例にあたる。また、主支持フレーム24および副支持フレーム25が、本発明の支持部材の一例にあたる。また、切り替え部21が、本発明の切替装置の一例にあたり、切り替え部カバー31が、本発明のカバーの一例にあたる。また、空苗箱収容部33が、本発明の収容部材の一例にあたる。
【0060】
次に、予備苗載置部19と切り替え部21との接続構成、および予備苗載置部19の動作について説明する。
【0061】
図6は、本実施の形態1の、重複状態における予備苗載置部19の、苗移植機の外側から見た側面図を示し、
図7は、苗移植機の内側から見た側面図を示す。
図8は、本実施の形態1の、展開状態における予備苗載置部19の、苗移植機の外側から見た側面図を示し、
図9は、苗移植機の内側から見た側面図を示す。
【0062】
図6に示すように、本実施の形態1の切り替え部21は、予備苗載置部19の重複状態において、側面視で3つの予備苗載台20u、20m、20dが位置する範囲内に収まるように配置されている。このように、切り替え部21の前後長さを、1つの予備苗載台20u、20m、20dの長さよりも短くしたことにより、重複状態において切り替え部21が予備苗載台20u、20m、20dの前後幅から突出することが無く、コンパクトな構成とすることができる。なお、切り替え部21の前後長さを、1つの予備苗載台20u、20m、20dの長さと略同じ長さとしてもよい。
【0063】
図6および
図7に示すように、3つの予備苗載台20u、20m、20dは、主リンク部材41によって連結されている。また、予備苗載台20uと予備苗載台20mは、第1副リンク部材42によっても連結されており、予備苗載台20mと予備苗載台20dは、第2副リンク部材43によっても連結されている。
【0064】
予備苗載台20uは、第1副リンク部材42に対して回動自在に回動部46で接続され、主リンク部材41に対して回動自在に回動部47で接続されている。
【0065】
予備苗載台20mは、第1副リンク部材42に対して回動自在に回動部48で接続され、主リンク部材41に対して回動自在に従回動軸45で接続され、第2副リンク部材43に対して回動自在に回動部49で接続されている。
【0066】
予備苗載台20dは、主リンク部材41に対して回動自在に回動部50で接続され、第2副リンク部材43に対して回動自在に回動部51で接続されている。
【0067】
主リンク部材41の中央部には、従回動軸45とは別に、主リンク部材41に固定された主回動軸44が設けられている。
【0068】
なお、主回動軸44が、本発明の軸の一例にあたり、主リンク部材41の主回動軸44が接続されている部分が、本発明のリンク部材の回動中心の部分の一例にあたる。
【0069】
また、第2副リンク部材43は、予備苗載台20mに近い部分で、副支持フレーム25の上端部と回動軸52によって接続されており、副支持フレーム25に対して回動軸52を中心として回動自在となっている。
【0070】
主回動軸44は、切り替え部21のモータ駆動によって回動するようになっており、主回動軸44の回動に伴って主リンク部材41が回動し、主リンク部材41の回動に伴って、その両端に接続される予備苗載台20uおよび予備苗載台20dが、それぞれ第1副リンク部材42および第2副リンク部材43によって規制されながら、ほぼ水平な状態を維持して移動する。
【0071】
また、主リンク部材41の回動に伴って、従回動軸45で接続される予備苗載台20mも、第1副リンク部材42および第2副リンク部材43によって規制されながら、ほぼ水平な状態を維持して移動する。
【0072】
図6のような予備苗載置部19の重複状態において、主リンク部材41が左回りに回動すると、予備苗載台20uは、上昇した後、下降しながら前方へ移動していき、予備苗載台20dは、下降した後、上昇しながら前方へ移動していく。そして、予備苗載置部19は、
図8に示すような展開状態となる。
【0073】
図10は、重複状態における予備苗載置部19の平面図を示している。ここでは、予備苗載置部19および切り替え部21以外の部分の図示は省略している。
【0074】
主リンク部材41、第1副リンク部材42および第2副リンク部材43は、予備苗載台20u、20m、20dに対して平行で等距離の位置に配置されており、
図10に示すように、展開状態ではこれらのリンク部材41、42、43が重なるような状態となる。
【0075】
図10に示すように、運転部10側から車体外側に向けて、切り替え部21、各リンク部材41、42、43、予備苗載台20u、20m、20dの順に配置されているため、予備苗載台20u、20m、20dに載置される苗マットの動きを邪魔する部材が無く、苗マットの積み込みを容易にできる。
【0076】
図11は、本実施の形態1の予備苗載置部19が重複状態のときの、車体の左面外側から見た切り替え部21の拡大模式図を示し、
図12は、予備苗載置部19が展開状態のときの切り替え部21の拡大模式図を示している。
【0077】
主リンク部材41には主回動軸44が固定されており、主回動軸44に対して垂直な面となるように、切り替え用歯車32が主回動軸44に固定されている。
【0078】
切り替え用歯車32は、
図11および
図12に示すように、円弧部分に歯部55を有する平板形状であり、歯部55の反対側には突起部56が形成されており、突起部56の先端部分に、ピン57が立設されている。
【0079】
主支持フレーム24の上端部分に、切り替え用歯車32に対してほぼ平行になる位置に固定支持板58が固定されている。固定支持板58には、モータ22、第1停止スイッチ59および第2停止スイッチ60が取り付けられている。なお、
図10および
図11では、モータ22および主支持フレーム24の図示は省略している。
【0080】
なお、切り替え用歯車32が、本発明のモータによって動く歯車の一例にあたる。また、固定支持板58が、本発明の支持板の一例にあたり、第1停止スイッチ59および第2停止スイッチ60が、本発明の、予備苗載台の変動させる位置を決めるためのスイッチの一例にあたる。
【0081】
モータ22の駆動によって回転する回動歯車61が、切り替え用歯車32の歯部55に噛み合うように配置されている。
【0082】
主リンク部材41および切り替え用歯車32に固定されている主回動軸44は、主支持フレーム24の上端部において、主支持フレーム24に対して回動自在に接続されている。
【0083】
歯車61がモータ22の駆動によって回転すると、歯部55が歯車61に噛み合って、切り替え用歯車32は主回動軸44を中心にして回動する。そして、切り替え用歯車32の回動に伴って主回動軸44が回動し、主回動軸44の回動に伴って主リンク部材41が回動する。
【0084】
図11は、予備苗載置部19が重複状態のときの位置を示しており、このとき、切り替え用歯車32のピン57が第1停止スイッチ59に当接し、第1停止スイッチ59をオンした状態となっている。予備苗載置部19を展開状態から重複状態に切り替える際に、右回りに回動してきた切り替え用歯車32は、重複状態となった位置でピン57が第1停止スイッチ59に当接することによりモータ22が停止し、切り替え用歯車32も停止する。
【0085】
そして、
図11に示す予備苗載置部19の重複状態から展開状態に切り替える際には、モータ22を駆動して歯車61を逆回転させ、切り替え用歯車32を左回りに回動させる。
【0086】
図12は、予備苗載置部19が展開状態のときの位置を示しており、このとき、切り替え用歯車32のピン57が第2停止スイッチ60に当接し、第2停止スイッチ60をオンした状態となっている。予備苗載置部19を重複状態から展開状態に切り替える際に、左回りに回動してきた切り替え用歯車32は、展開状態となった位置でピン57が第2停止スイッチ60に当接することによりモータ22が停止し、切り替え用歯車32も停止する。
【0087】
このように、モータ22を駆動することによって切り替え用歯車32を左回りまたは右回りに回動させ、ピン57を第1停止スイッチ59または第2停止スイッチ60に当接させることによりモータ22を停止させるので、予備苗載置部19を重複状態の位置または展開状態の位置で確実に停止させることができる。
【0088】
上記のように第1及び第2停止スイッチ59、60を設けない場合は、作業者はモータ22の駆動及び停止動作を手動で行なう必要があり、予備苗載置部19が重複状態または展開状態、あるいは重複状態と展開状態の間の任意の位置になった瞬間に停止動作を行なわねばならず、他の作業に集中しにくくなり、作業能率が向上しない、あるいは切替装置を備えていない予備苗載置部を手作業で操作するときよりも作業能率が低下する問題が生じる。
【0089】
これに対して、第1及び第2停止スイッチ59、60を設けたことにより、モータ22を作動させた後、作業者は苗移植機の操縦等、予備苗載置部19以外の操作を行なっても、切り替え用歯車32のピン57が第1及び第2停止スイッチ59、60に接触すればモータ22は停止するので、作業者は他の作業に集中することができ、作業能率が向上する。
【0090】
さらに、予備苗載置部19が重複状態または展開状態に変形した際、モータ22の駆動を停止させ忘れると、切り替え用歯車32は回転不能な領域まで回動した後もモータ22の駆動力によって回動してしまい、過負荷が発生してモータ22や主回動軸44が破損する問題が生じる。
【0091】
これに対して、第1及び第2停止スイッチ59、60を設けたことにより、モータ22は予備苗載置部19が重複状態または展開状態に変形すると停止するので、過負荷がかかってモータ22や主回動軸44が破損することが防止される。
【0092】
また、予備苗載置部19を重複状態または展開状態で停止させる位置を調整するために、第1停止スイッチ59および第2停止スイッチ60の固定支持板58への取り付け位置を調整できるようにしてもよい。
【0093】
例えば、第1停止スイッチ59および第2停止スイッチ60を取り付けるための固定支持板58側の穴を長穴としたり、ダブルナットにより固定支持板58に取り付けるようにしてもよい。
【0094】
上記構成により、圃場が住宅地の中や山間地など、壁や藪などが圃場端の近くにあり、3つの予備苗載台20u、20m、20dが側面視で一直線状に並ぶ展開状態にすると、先頭の予備苗載台20uが壁や藪に接触するおそれのある圃場で作業をする場合、第2停止スイッチ60を下方に移動させ、重複状態から展開状態に切り替える際に従来よりもピン57が第2停止スイッチ60に早く接触する構成とすると、重複状態で上段の予備苗載台20uが中段の予備苗載台20mよりも前方で且つ上方に位置し、下段の予備苗載台20dが中段の予備苗載台20mよりも後方で且つ下方に位置する、側面視で後下り傾斜姿勢の展開状態となるので、先頭の予備苗載台20uが壁や藪等に接触することが防止され、予備苗載台20uが破損することや、載置した苗マットが接触の衝撃で落下することが防止される。
【0095】
また、第2停止スイッチ60を上方に移動させ、従来よりもピン57が第2停止スイッチ60に遅く接触する構成とすると、先頭の予備苗載台20uが真ん中の予備苗載台20
mよりも側面視で下方に位置するので、苗マットの補充を行なう作業者は苗マットを高く持ち上げることなく先頭の予備苗載台20uに苗マットを積み込むことができ、作業者の労力が軽減される。
【0096】
次に、
図13を用いて、切り替え部21周辺の各部の位置関係を説明する。
【0097】
図13に、切り替え部21周辺の各部の位置関係を説明するための模式図を示す。
【0098】
図13において、主支持フレーム24が車体内側に配置され、主リンク部材41が主支持フレーム24よりも外側に配置される。
【0099】
主支持フレーム24の上端部に固定支持板58が固定されており、固定支持板58にはモータ22が固定されている。
【0100】
主回動軸44は、主リンク部材41に固定されており、また歯部55が形成されている円弧の中心の位置を貫通するように切り替え用歯車32にも固定されている。そして、主回動軸44は、主支持フレーム24に対して回動自在に接続されており、主回動軸44、切り替え用歯車32および主リンク部材41が一体となって回動するようになっている。
【0101】
図13に示すように、車体の内側から外側に向けて、主支持フレーム24、モータ22、切り替え用歯車32、主リンク部材41の順に配置されており、さらに主リンク部材41の外側に、予備苗載置部19が接続されている。
【0102】
このような構成とすることにより、補助ステップ27上で作業する作業者にとって、主リンク部材41、第1副リンク部材42および第2副リンク部材43よりも切り替え部21が手前に位置するので、回動中の主リンク部材41、第1副リンク部材42および第2副リンク部材43に作業者の手や腕がぶつかることを防止でき、作業の安全性が向上する。
【0103】
切り替え部21を構成しているモータ22、歯車61および切り替え用歯車32は、
図5に示すように、主支持フレーム24の上部と共に、切り替え部カバー31で覆われる。
【0104】
切り替え部カバー31は、例えば、下方が開放した箱型形状で切り替え部21の上部から被せる構造としてもよいし、側面が開放した箱型形状で主支持フレーム24側の側面から切り替え部21を覆うように被せ、その後に開放した側面部分に蓋を取り付けるような構造としてもよい。
【0105】
切り替え部カバー31を、下方が開放した箱型形状として切り替え部21の上方から着脱自在に取り付ける構造とすることにより、切り替え部カバー31の取り外しが容易となり、メンテナンス性が向上する。
【0106】
なお、モータ22を切り替え用歯車32のより近い位置に配置するほど、切り替え部21のサイズをよりコンパクトにすることができる。
【0107】
また、主支持フレーム24を内部が空洞のパイプ形状とし、モータ22に電源を供給するハーネスを主支持フレーム24の内部を通して、モータ22に接続するようにしてもよい。このような構成とすることにより、予備苗載置部19を車体の内側にも向けられるように主支持フレーム24が回動する構成の場合でも、モータ22に電源を供給するハーネスが絡まることを防止できる。
【0108】
また、予備苗載置部19の重複状態および展開状態を切り替えるためのスイッチ、すなわちモータ22を駆動するためのスイッチは、
図5の操縦ハンドル18の根元のハンドルポスト30の部分に配置する。ハンドルポスト30の部分に切り替え用のスイッチを設けることにより、運転者は、予備苗載置部19の状態の切り替えを運転部10で操作することができ、また運転座席12に座った状態では少し手を伸ばさなければ届かない位置であり、誤操作をする可能性は小さい。
【0109】
さらに、予備苗載置部19の状態を切り替えるためのスイッチを、ハンドルポスト30部分に設けたスイッチに加えて、ボンネット13上にも設けるようにしてもよい。このようにすることにより、運転者とは別の補助者も操作することができ、例えば危険と感じたときに予備苗載置部19の回動動作を停止させることができる。
【0110】
同様に、予備苗載置部19の状態を切り替えるためのスイッチを、予備苗載置部19や切り替え部21に設けるようにしてもよい。
【0111】
次に、切り替え部の配置の変形例について説明する。
【0112】
図14は、その変形例の重複状態における予備苗載置部の、苗移植機の外側から見た側面図を示している。
図6と同じ構成部分には、同じ符号を用いている。
【0113】
上記した本実施の形態1では、
図6に示すように切り替え部21を主支持フレーム24の上端部に配置していたのに対し、
図14に示す変形例では、切り替え部65を副支持フレーム25の上端部に配置している。なお、切り替え部65の構造は、切り替え部21と同様の構造とすることができる。
【0114】
図14の構成では、第2副リンク部材43の予備苗載台20mに近い位置に主回動軸68が固定されており、切り替え部65によって主回動軸68が回動されるのに伴い、第2副リンク部材43が回動する。第2副リンク部材43が回動することにより、連動して主リンク部材41および第1副リンク部材42が回動する。
【0115】
なお、第1副リンク部材42および第2副リンク部材43が、それぞれ、本発明の前側の副リンク部材および後側の副リンク部材の一例にあたる。また、第2副リンク部材43の主回動軸68が接続されている部分が、本発明の、後側の副リンク部材の回動中心の部分の一例にあたる。
【0116】
切り替え部65は、
図6の切り替え部21の場合よりも後ろ側に配置されるため、運転部10からの運転者の視線方向は、切り替え部21によって遮られることが無く、車体の左側前方下部の位置を見易くなり、運転部10からサイドマーカーの位置を確認し易くなる。また、運転者は、圃場に植え付けられた苗を視認することができ、車体を直進方向に向け易くなり、苗の植え付け精度が向上する。
【0117】
なお、ここでは、切り替え部65を運転者に近い側に配置することとしたが、第1副リンク部材42を切り替え部によって回動させる構成とし、運転者よりも遠い側に切り替え部を配置するようにしても、切り替え部が運転者の視線の邪魔にならず、同様の効果を得ることができる。
【0118】
次に、切り替え部および予備苗載置部を支持する支持フレームの変形例について説明する。
【0119】
図15(a)は、その変形例の重複状態における予備苗載置部の、苗移植機の外側から見た側面図を示し、
図15(b)に、その平面図を示す。
図6と同じ構成部分には、同じ符号を用いている。なお、
図15(b)では、支持フレームの部分のみを図示し、切り替え部および予備苗載置部の図示を省略している。
【0120】
この変形例では、基礎支持フレーム66の上端部に、水平方向にV字形状を有するV字型支持部材67が取り付けられており、V字型支持部材67の両端部に、主支持フレーム24および副支持フレーム25が立設して取り付けられている。
【0121】
基礎支持フレーム66は、基礎支持フレーム23と同様に、その下端部が屈曲しており、その屈曲部が補助ステップ27の下側に回り込み、車体フレームのブラケット26に固定されている。
【0122】
この場合、基礎支持フレーム66が、2本の主支持フレーム24と副支持フレーム25の中央位置に配置されているので、主支持フレーム24と副支持フレーム25で支持される予備苗載置部のバランスが良くなる。予備苗載置部は、展開状態のときにバランスが偏り易いが、その場合でもバランスを保つことができる。
【0123】
次に、予備苗載置部の変形例について説明する。
【0124】
図16は、他の構造の予備苗載置部の重複状態における側面図を示し、
図17は、展開状態における側面図を示している。
【0125】
この変形例では、3つの予備苗載台79u、79mおよび79dが、
図6に示す主リンク部材41、第1副リンク部材42および第2副リンク部材43に代えて、平行四辺形状のリンク部材によって接続される。
【0126】
この平行四辺形状のリンク部材は、縦長の前側辺部73と、縦長の後側辺部74と、短い長さの上側辺部75と、短い長さの下側辺部76とで構成される。
【0127】
この平行四辺形状のリンク部材は、4隅で回動自在に変形出来るようになっている。
【0128】
前側辺部73の中央付近に、主回動軸71が固定されており、後側辺部74の中央付近に、従回動軸72が固定されている。従回動軸72は、副支持フレーム25(図示せず)の上端部に、回動可能に接続されている。
【0129】
切り替え部70によって主回動軸71が回動されることにより、前側辺部73が回動し、上側辺部75および下側辺部76がほぼ水平状態を保ちながら、後側辺部74も前側辺部73と平行な位置関係を保ちながら回動する。
【0130】
上側辺部75の前側端の近傍位置の下面からは上側短尺ロッド77が下向きに立設しており、上側短尺ロッド77の下端に、予備苗載台79uが水平になるように取り付けられている。
【0131】
また、下側辺部76の前側端の近傍位置の上面には、下側短尺ロッド78が上向きに立設しており、下側短尺ロッド78の上端に、予備苗載台79dが水平になるように取り付けられている。
【0132】
図16の重複状態の予備苗載置部の状態から、切り替え部70によって前側辺部73を左回りに回動させると、予備苗載台79uは、上昇した後、下降しながら前方へ移動していき、予備苗載台79dは、下降した後、上昇しながら前方へ移動していく。そして、予備苗載置部は、
図17に示すような展開状態となる。
【0133】
予備苗載置部を重複状態から展開状態へと切り替える際、予備苗載台79uが上昇する最上位置は、
図6の予備苗載置部19の予備苗載台20uが上昇する際の最上位置よりも、上側短尺ロッド77の長さ分だけ低い位置となる。また、予備苗載台79dが下降する最下位置は、
図6の予備苗載置部19の予備苗載台20dが下降する際の最下位置よりも、下側短尺ロッド78の長さ分だけ高い位置となる。
【0134】
その結果、
図16および
図17に示したような平行四辺形状のリンク部材を用いた場合、
図6および
図8に示した予備苗載置部19に比べて、予備苗載台79uの通る上方空間が低くなり、相対的に他の部材などを配置出来る有効空間が上方で広くなる。また、予備苗載台79dの通る下方空間が高く上がるので、相対的に他の部材などを配置出来る有効空間が下方で広くなる。
【0135】
図16および
図17に示したような平行四辺形状のリンク部材を用いることにより、有効空間が広がるにもかかわらず、展開状態において、上段下段の予備苗載台79uおよび下段の予備苗載台79dをより遠くへ運ぶことが出来、大きな苗を載置出来るという優れた効果は維持している。
【0136】
なお、本実施の形態1では3段タイプの予備苗載置部について説明したが、これに限らず、4段以上の予備苗載置部や、2段タイプの予備苗載置部であっても本発明の予備苗載置部移動機構を適用できる。また、1段のみの予備苗載置部であっても、本発明の予備苗載置部移動機構を利用して予備苗載台の位置を前後、上下方向に移動させることができる。
【0137】
図18は、4段タイプの予備苗載置部の重複状態における側面図を示す。
【0138】
4段タイプの予備苗載台84u、84h、84m、84dが、車体に固定された基礎支持フレームの前後に延びる両端部に立設している2本の第1副支持フレーム82および第2副支持フレーム83によって支持されている。そして、第1副支持フレーム82と第2副支持フレーム83の中間の位置に立設している主支持フレーム81の上端部に切り替え部80が固定されている。切り替え部80は、例えば、
図1などに示した切り替え部21と同じ構造のものである。
【0139】
4つの予備苗載台84u、84h、84m、84dは、主リンク部材85によって連結されている。また、予備苗載台84uと予備苗載台84hは、第1副リンク部材86によって連結されており、第1副リンク部材86の端部は、回動軸89によって第1副支持フレーム82の上端部に連結している。また、予備苗載台84mと予備苗載台84dは、第2副リンク部材87によって連結されており、第2副リンク部材87の端部は、回動軸90によって第2副支持フレーム83の上端部に連結している。
【0140】
主リンク部材85の中央部には、主回動軸88が固定されている。
【0141】
切り替え部80によって主回動軸88が回動されると、主リンク部材85が主回動軸88を中心にして回動し、予備苗載台84u、84h、84m、84dを介して連結している第1副リンク部材86および第2副リンク部材87も、それぞれ回動軸89および回動軸90を中心に回動する。
【0142】
図18の重複状態において主リンク部材85が左回りに回動すると、予備苗載台84uおよび予備苗載台84hは前へ移動していき、予備苗載台84mおよび予備苗載台84dは、後ろへ移動していく。このとき、第1副リンク部材86の端部が第1副支持フレーム82の上端部に連結し、第2副リンク部材87の端部が第2副支持フレーム83の上端部に連結していることにより、4つの予備苗載台84u、84h、84m、84dは、ほぼ水平状態を維持しながら前後方向へ移動していき、展開状態となる。
【0143】
このように、本発明の予備苗載置部移動機構は、3段を超えるタイプの予備苗載台にも適用できる。
【0144】
また、本実施の形態1では、
図13に示したように、主回動軸44が主リンク部材41および切り替え用歯車32に固定され、主回動軸44が主支持フレーム24に対して回動する構成としたが、主回動軸44を主支持フレーム24に固定し、切り替え用歯車32を主リンク部材41に固定させた構造とし、主支持フレーム24に固定された主回動軸44に対して、切り替え用歯車32および主リンク部材41が回動する構成としてもよい。
【0145】
また、
図1などにおいて、基礎支持フレーム23の垂直部分が180°回動できる構造としてもよい。このような構造にすることにより、車体から外側に出ている予備苗載置部19を車体の内側に移動させることができ、苗移植機の収納スペースを小さくすることができる。
【0146】
例えば、
図15(a)、(b)に示した支持フレームの構成の場合、基礎支持フレーム66に対してV字型支持部材67を回動できるようにすることにより、実現できる。
【0147】
また、
図5に示した空苗箱収容部33を折りたたみが可能な構造、例えば伸縮自在の蛇腹構造としてもよい。空苗箱収容部33を使用しない場合に折りたたむことにより、補助ステップ27上の空間が広くなり、補助ステップ27上での作業がし易くなる。
【0148】
また、空苗箱収容部33を広げたときに、ボンネット13側までさらに広がるようにしてもよい。補助ステップ27上で作業をしない場合に、より多くの空の苗箱や苗掬い板を収納することができる。
【0149】
空苗箱収容部33を伸縮自在の構造とすることにより、作業時は苗掬い板を収納し、苗補給時には、空苗箱収容部33を広げて空箱置き場として使用することができる。
【0150】
以上に説明したように、本発明の苗移植機は、予備苗載台を重複状態と展開状態に自動的に切り替えることができ、作業者が手作業で切り替えを行なう必要がなく、作業効率が向上する。