(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5707888
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】グリップ被覆体セット及びラケット
(51)【国際特許分類】
A63B 60/14 20150101AFI20150409BHJP
【FI】
A63B49/08 A
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-256046(P2010-256046)
(22)【出願日】2010年11月16日
(65)【公開番号】特開2012-105773(P2012-105773A)
(43)【公開日】2012年6月7日
【審査請求日】2013年10月30日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】松岡 豊武
(72)【発明者】
【氏名】野竹 貴裕
【審査官】
東 治企
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−231952(JP,A)
【文献】
特開2009−112500(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3038154(JP,U)
【文献】
特開平11−047315(JP,A)
【文献】
特開2009−066272(JP,A)
【文献】
実公昭33−000630(JP,Y1)
【文献】
特開平08−089606(JP,A)
【文献】
特表昭63−501131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 60/14
A63B 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラケットのグリップ部に装着される複数個のグリップ被覆体よりなるグリップ被覆体セットであって、
各グリップ被覆体の内径寸法及び重量が同一であり、各グリップ被覆体の厚みが異なっており、
最小厚みのグリップ被覆体よりも厚みが大きいグリップ被覆体には、厚み増加相当分の重量を減少させるための空所が設けられていることを特徴とするグリップ被覆体セット。
【請求項2】
請求項1において、該空所はグリップ被覆体の基端側に設けられていることを特徴とするグリップ被覆体セット。
【請求項3】
請求項1又は2において、各グリップ被覆体に、ラケットのグリップ部と係合する係合部が設けられていることを特徴とするグリップ被覆体セット。
【請求項4】
請求項3において、前記グリップ部に凸部が設けられており、該係合部は、グリップ被覆体を厚み方向に貫通する開口であることを特徴とするグリップ被覆体セット。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のグリップ被覆体セットのうちの1個のグリップ被覆体がグリップ部に着脱可能に装着されているラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テニスラケット、バトミントンラケット等のラケットのグリップ部に装着されるグリップ被覆体のセットと、このグリップ被覆体を備えたラケットとに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2に記載されているように、テニスラケット等のグリップ部にゴム、エラストマー、又は合成樹脂等の弾性材料よりなるグリップ被覆体を装着することが行われている。このグリップ被覆体をそのままプレーヤーが握ることもあるが、このグリップ被覆体の上にレザー又は合成樹脂等よりなる表装材を装着することもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−141196
【特許文献2】特開2006−223601
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1には、グリップ被覆体をラケットのグリップ部に対し着脱自在に装着することが記載されている。このようにグリップ被覆体を着脱自在とした場合、グリップ被覆体を厚みの異なるものに交換することにより、ラケットのグリップの太さを変えることができる。
【0005】
しかしながら、グリップ被覆体を厚みの異なるものに変えた場合、グリップ被覆体の重量も変わるところから、ラケットの重量やバランスが変化し、プレーヤーにとって振り易さ等が微妙に変化する。
【0006】
本発明は、グリップ被覆体として内径寸法及び重量は同一であるが厚みが異なるものを複数個用意しておき、ラケットに装着するグリップ被覆体を別サイズのものに交換することにより、ラケットの重量やバランスを変えることなくグリップ太さを変えることができるグリップ被覆体セット及びラケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項
1のグリップ被覆体セットは、ラケットのグリップ部に装着される複数個のグリップ被覆体よりなるグリップ被覆体セットであって、各グリップ被覆体の内径寸法及び重量が同一であり、各グリップ被覆体の厚みが異なっており、最小厚みのグリップ被覆体よりも厚みが大きいグリップ被覆体には、厚み増加相当分の重量を減少させるための空所が設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項
2のグリップ被覆体セットは、請求項
1において、該空所はグリップ被覆体の基端側に設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項
3のグリップ被覆体セットは、請求項1
又は2において、各グリップ被覆体に、ラケットのグリップ部と係合する係合部が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項
4のグリップ被覆体セットは、請求項
3において、前記グリップ部に凸部が設けられており、該係合部は、グリップ被覆体を厚み方向に貫通する開口であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項
5のラケットは、請求項1ないし
4のいずれか1項に記載のグリップ被覆体セットのうちの1個のグリップ被覆体がグリップ部に着脱可能に装着されているものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のグリップ被覆体セットのグリップ被覆体は、内径寸法及び重量が同一であるが、各グリップ被覆体の厚みが異なる。そのため、ラケットに対しグリップ被覆体セットの中からプレーヤーの握りに適する厚みのグリップ被覆体を選んでラケットグリップ部に装着することにより、個々のプレーヤーにマッチしたグリップ太さのラケットとすることができる。もちろん、同一のプレーヤーであっても、握力の変化や、グローブ(手袋)装着の有無などに対応してグリップ太さを変えることもできる。
【0015】
このようにグリップ被覆体を交換しても、各グリップ被覆体の重量が同一であるので、ラケットの重量や振り抜き感などには変化はない。グリップ被覆体の厚みが変化しても重量を同一とするためには、厚み増加相当分の重量を減少させるための空所をグリップ被覆体に設けるか、厚み減少相当分の重量を増加させるための高比重材を備えるのが好ましい。該空所は、プレーヤーが握ることが殆どないグリップ被覆体の基端側に設けるのが好ましい。
【0016】
グリップ被覆体にラケットグリップ部との係合部を設けることにより、グリップ被覆体が着脱可能に装着されたラケットにおいてもグリップ被覆体をグリップ部にしっかりと装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態に係るグリップ被覆体の斜視図である。
【
図2】(a)図は実施の形態に係るグリップ被覆体の側面図、(b)図はその平面図である。
【
図3】(a)図は
図2(b)のIIIa-IIIa線に沿う断面図、(b)図は
図2(a)のIIIb-IIIb線に沿う断面図である。
【
図4】実施の形態に係るグリップ被覆体とラケットとの係合関係を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、第1図〜第5図を参照して実施の形態に係るグリップ被覆体セットの1つのグリップ被覆体について説明する。
【0019】
このグリップ被覆体1は、八角形の筒状である。グリップ被覆体1の対向する2側面1aには、グリップ被覆体1の長手方向に間隔を置いて複数個(この実施の形態では5個)の係合部としての開口2が設けられている。
【0020】
グリップ被覆体1の基端近傍部分3、すなわちグリップエンド側は、末端側ほど径が大きくなるようにテーパ形状(八角錐台形状)となっている。この基端近傍部分3には、厚み増加による重量増加を相殺するための空所4,5,6が設けられている。空所4は、前記1対の側面1aの外面に設けられた凹穴よりなる。空所5は、該側面1aと直交方向の1対の側面1bに設けられた凹条(溝)よりなる。空所6は、これらの側面1a,1bと斜交する4面の側面1cに設けられた複数個の凹穴よりなる。
【0021】
この実施の形態では、第5図の通り、側面1bの内周面に、グリップ被覆体1の長手方向に延在する複数本の溝9が設けられている。この溝9は、グリップ被覆体1をラケットのグリップ部10(第4図)に着脱するときの滑りを良くするためのものであり、先端部分から後述のインサート7部分にまで延在している。
【0022】
この実施の形態では、グリップ被覆体1の基端部の内周面にポリプロピレン等の比較的硬質の合成樹脂よりなるインサート7が設けられている。
【0023】
このインサート7には内向きの鍔状部7aが設けられている。この鍔状部7aは、蓋8を接着等によって取り付けるための取付面や、グリップ被覆体1をグリップ部10に嵌め込んで装着するときの位置決めに利用される。インサート7の鍔状部7aよりも奥側の内周面は、グリップ被覆体1の内周面と面一状となっている。
【0024】
インサート7を除いて、グリップ被覆体1はスチレン系エラストマーなどのエラストマーや、ゴム、軟質合成樹脂などの弾性材料にて構成されている。エラストマーの場合、比重0.5〜1.5が好ましく(この実施の形態ではスチレン系エラストマーを用いる為0.9としている。)、ショアA硬度60〜100程度であることが好ましい。なお、1個のグリップ被覆体1において、側面1a,1b,1cにおける厚みdは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0025】
グリップ被覆体セットは、厚みd(第5図)が異なる複数個のグリップ被覆体1よりなる。
【0026】
グリップ被覆体1をグリップ部に装着した後、レザーなどの外装材をグリップ被覆体1の上に装着してラケットとしてもよく、外装材を装着せずにグリップ被覆体1それ自体を握るようにしたラケットとしてもよい。
【0027】
外装材を装着するタイプのグリップ被覆体1にあっては、最も厚みの小さいグリップ被覆体で厚みdは0.4〜1.2mmであることが好ましい。dを0.4mm未満にするとクッション性が低下してしまい、プレーに影響が出る可能性がある。一方、1.2mmよりも大きくすると、外装材を装着する関係上、薄い外装材を選ばなくてはならず、不便になる。
【0028】
外装材を装着しないタイプのグリップ被覆体1にあっては、厚みdは(被覆体+レザーを想定すると)1.4mm以上程度が好ましい。
【0029】
厚みdの異なるグリップ被覆体であっても、内径は同一とし、空所4,5,6の数や深さを変えることにより各グリップ被覆体の重量を同一とする。
【0030】
グリップ被覆体1をラケットのグリップ部10に装着するには、グリップ部10の外面に両面接着テープを貼っておき、グリップ被覆体1の内面に白ガソリン等の揮発性溶媒をスプレー等により付着させておき、グリップ被覆体1をグリップ部10に嵌め通せばよい。
【0031】
この実施の形態では、鍔状部7aがグリップ部10の後端面に突き当るまで嵌めるようにする。グリップ被覆体1を奥まで嵌め通すと、グリップ部10に設けておいて凸部11が開口2に係合する溶媒が揮発すると、グリップ被覆体1がグリップ部10に固着状態となる。
【0032】
グリップ被覆体1をグリップ部10から取り外すには、グリップ被覆体1をカッターナイフ等で切開して引き剥す。なお、注射器のようなものでグリップ被覆体に白ガソリンを注入すると簡単に抜けるので、そのようにしてもよい。この場合グリップ被覆体を再度使うことができる。
【0033】
このようにグリップ被覆体を交換してプレーヤーにマッチしたグリップ太さのラケットを構成することができる。
【0034】
このラケットとしてはテニスラケット、バトミントンラケットなどが例示されるが、特にテニスラケットが好適である。
【0035】
上記実施の形態では、空所4,5,6によって各グリップ被覆体1の重量が同一となるように重量調整しているが、グリップ被覆体1を構成するエラストマー中にタングステン、タングステン合金、銅、銅合金、ステンレス等の金属粉や比重の異なる樹脂を配合し、厚みの異なるグリップ被覆体においてこの金属粉や比重の異なる樹脂の配合量を変えることによってグリップ被覆体同士を同一重量とするようにしてもよい。
【0036】
上記実施の形態では、硬質のインサート7を設けているので、グリップ被覆体1の基端側の硬度が高く、プレーヤーがラケットを振り回してもラケットが手から抜け出ることが防止される効果が高い。本発明では、グリップ被覆体を臭い付きのものとしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 グリップ被覆体
2 開口
4,5,6 空所
7 インサート
10 グリップ部