(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5708001
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】蓋材用ワニス
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20150409BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20150409BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20150409BHJP
B65D 77/20 20060101ALI20150409BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20150409BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20150409BHJP
C08L 1/18 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
B65D81/34 J
B65D65/40 D
B32B27/00 H
B65D77/20 K
B32B27/34
C08L77/00
C08L1/18
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-28311(P2011-28311)
(22)【出願日】2011年2月14日
(65)【公開番号】特開2012-166809(P2012-166809A)
(43)【公開日】2012年9月6日
【審査請求日】2013年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐井 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】塚脇 博
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克行
(72)【発明者】
【氏名】前田 大輔
【審査官】
結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−346993(JP,A)
【文献】
特開2000−219278(JP,A)
【文献】
特開2007−270074(JP,A)
【文献】
特開平9−296144(JP,A)
【文献】
特開2006−36342(JP,A)
【文献】
特開平4−90342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
B65D 65/40
B65D 77/20
B29D 9/00
B32B 1/00−35/00
C08L 1/18
C08L 77/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目止め層および剥離層より形成された易剥離領域と、接着領域とが互いに区画されて
得られる表面シート(A)と、
該表面シート(A)の易剥離領域に積層接着された複合シート(B)と
から構成される湯切付即席食品容器蓋材に使用される湯切付即席食品容器蓋材用ワニスセットであって、
前記易剥離領域を形成する目止め層を形成するワニス(1)
および
前記易剥離領域を形成する剥離層を形成するワニス(2)
からなるワニスセット
。
ただし、下記(ア)〜(オ)であることを特徴とする。
(ア)複合シート(B)は、表面シート(A)の易剥離領域と接する面に、押出しラミネート加工により得られる低密度ポリエチレン層(接着性樹脂層)を有する。
(イ)ワニス(1)およびワニス(2)が、それぞれポリアミド樹脂およびニトロセルロース樹脂を含有する。
(ウ)ニトロセルロース樹脂の平均重合度が50〜150である。
(エ)ポリアミド樹脂が、重量平均分子量7000〜30000である。
(オ)一般式(1)で定義されるワニス(1)におけるポリアミド樹脂の含有率(a1)(重量%)が、30<a1<76
かつ
一般式(1)で定義されるワニス(2)におけるポリアミド樹脂の含有率(a2)(重量%)が、76≦a2<99
である。
一般式(1)
【数1】
【請求項2】
前記ワニス(1)および前記ワニス(2)におけるポリアミド樹脂の含有率(a1)および(a2)が、
a2−a1≧4%
であることを特徴とする請求項1記載の湯切付即席食品容器蓋材用ワニスセット。
【請求項3】
請求項1又は2記載の湯切付即席食品容器蓋材用ワニスセットを用いてなる湯切付即席食品容器蓋材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキを塗布した印刷物に対し、低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体などの熱可塑性樹脂を溶融押し出しラミネートした場合に、その熱可塑性樹脂と印刷物とが優れた剥離性を有する湯切付即席食品容器蓋材用ワニスセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の湯切付即席食品容器蓋材として、ニトロセルロース樹脂系もしくはポリウレタン系樹脂やポリアミド系樹脂等の熱可塑性あるいはその混合物を主成分とする剥離ワニスの塗布によって形成した剥離面を有する表面シートと複合シートを積層圧着し、使用時に表面シートを剥がすことにより湯切り穴が表出されるように構成されたものが知られている。
【0003】
しかし、上記剥離タイプ即席食品容器の湯切付蓋材に於ける要求性能に対し、その剥離性は未だ不十分であった。
【0004】
そこで、剥離性能を満足するように研究を重ねてきた結果、特開2000−203653で開示されているように、塗膜中に剥離剤として、ワックスを5重量%〜95重量%含有するワニスが用いられてきたが、ワックスは低融点で有る為、熱に対する依存が大きく、また塗膜が凝集破壊を起こすという問題があった。
【0005】
また、剥離性能を満足させる為に、特開2000−219278で開示されているように、目止め層としてニトロセルロース樹脂とウレタン系樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル樹脂の混合ニスを塗布する事で、剥離層の浸透(易剥離性劣化)を防ぎ、剥離性能を引き出す手法が知られている。
【0006】
さらには、長期加温・加湿保管での剥離性能を満足させる為に、特開2006−346993で開示されているように、剥離層と目止め層を成す易剥離領域を形成するワニス中のポリアミド樹脂とニトロセルロース樹脂の混合重量比率を30:70〜90:10の範囲であるとする手法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−203653号公報
【特許文献2】特開2000−219278号公報
【特許文献3】特開2006−346993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の従来の剥離層と目止め層から形成する易剥離層では、剥離層と目止め層の何れかでワニス層間での凝集破壊を起こし、湯切り蓋材としての適性な剥離性を得られず、剥離後の外観劣化を引き起こしていた。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、即席食品容器の湯切蓋材に於ける、目止め層および剥離層より形成された易剥離領域を形成する際、ワニスを使用した場合に於いて、適性な剥離性およびその剥離性が長期間高温・多湿下で貯蔵した場合も劣化しない即席食品容器の湯切蓋材用易剥離性ワニスを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決するために、鋭意検討を行った結果、特定の樹脂を用いたワニスセットが、適正な剥離強度及び良好な剥離外観を与えることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、
目止め層および剥離層より形成された易剥離領域と、接着領域とが互いに区画されて
得られる表面シート(A)と、
該表面シート(A)の易剥離領域に積層接着された複合シート(B)と
から構成される湯切付即席食品容器蓋材に使用される湯切付即席食品容器蓋材用ワニスセットであって、
前記易剥離領域を形成する目止め層を形成するワニス(1)
および
前記易剥離領域を形成する剥離層を形成するワニス(2)
からなるワニスセット
に関する。
ただし、下記(ア)〜(オ)であることを特徴とする。
(ア)複合シート(B)は、表面シート(A)の易剥離領域と接する面に、押出しラミネート加工により得られる低密度ポリエチレン層(接着性樹脂層)を有する。
(イ)ワニス(1)およびワニス(2)が、それぞれポリアミド樹脂およびニトロセルロース樹脂を含有する。
(ウ)ニトロセルロース樹脂の平均重合度が50〜150である。
(エ)ポリアミド樹脂が、重量平均分子量7000〜30000である。
(オ)一般式(1)で定義されるワニス(1)におけるポリアミド樹脂の含有率(a1)(重量%)が、30<a1<76
かつ
一般式(1)で定義されるワニス(2)におけるポリアミド樹脂の含有率(a2)(重量%)が、76≦a2<99
である。
一般式(1)
【数1】
【0013】
【数1】
【0014】
また、本発明は、前記ワニス(1)および前記ワニス(2)におけるポリアミド樹脂の含有率(a1)および(a2)が、
a2−a1≧4%
であることを特徴とする上記の湯切付即席食品容器蓋材用ワニスセットに関するものである。
【0015】
また、本発明は、上記の湯切付即席食品容器蓋材用ワニスセットを用いてなる湯切付即席食品容器蓋材湯切付即席食品容器蓋材に関するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明が提供するワニスセットにより、適性な剥離強度および良好な剥離外観を有する湯切付即席食品容器蓋材を得ることができ、長期間高温・多湿保管下でもその剥離性は劣化せず、湯切付即席食品容器蓋材として優れた実用上の効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の湯切付即席食品容器の一実施の形態を側断面で表した説明図であ る。
【
図2】本発明の湯切付即席食品容器の一実施の形態を平面で表した説明図である。
【
図3】本発明の湯切付即席食品容器の表面シートを剥離し、湯切口を形成した側面 図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の湯切付即席食品容器蓋材用ワニスセットについてより詳しく説明する。本発明の湯切付即席食品容器蓋材用ワニスセットは、
図1の側断面に示すように、例えば上質紙(20)からなる周縁部にプルタブ(30)を有する表面シート(A)の裏面に目止め層(L1)と剥離層(L2)を順次塗布されるものである。
【0019】
また、上記で得られた易剥離層(LA)を有する表面シート(A)は、接着性樹脂層(10)、金属箔層(12)、シーラント層(11)の順で積層してなる複合シート(B)の接着性樹脂層(10)と積層接着されて湯切付即席食品容器蓋材となるものである。
【0020】
上記湯切付即席食品容器蓋材は、
図2の平面図に示すように、前記プルタブ(30)側に於ける複合シート(B)の一箇所ないし複数箇所には湯切口形状の湯切口形成用ハーフカット(40)が形成されて、該湯切口形成用ハーフカット領域内の複合シート(B)の接着性樹脂層(10)面と目止め層(L1)面には、ハーフカット領域内接着部が形成されている湯切付即席食品容器蓋材であって、
図3に示すように、前記プルタブ(30)を引っ張り上げ、表面シート(B)を易剥離領域(L1)表面で部分的に蓋から剥離することにより湯切口(50)を開口しうるものである。
【0021】
また、上記易剥離領域(LA)を形成する目止め層(L1)がワニス(1)、剥離層(L2)がワニス(2)から成り、共にポリアミド樹脂とニトロセルロース樹脂とをバインダーとして含有し、かつ該ポリアミド樹脂の重量平均分子量が7000〜30000の範囲であり、9000〜25000の範囲が好ましい。ポリアミド樹脂の重量平均分子量が7000未満の場合、形成する易剥離領域の表面タック切れが悪く剥離しないといった不具合を招き、逆に30000を越えた場合は、易剥離領域の皮膜が硬くなり、接着性樹脂層と積層接着せず、内容物保護適性が劣化するので好ましくない。
【0022】
また、
一般式(1)で定義されるワニス(1)におけるポリアミド樹脂の含有率(a1) (重量%)が、30<a1<76
かつ
一般式(1)で定義されるワニス(2)におけるポリアミド樹脂の含有率(a2) (重量%)が、76≦a2<99
であることが好ましい。
一般式(1)
【0024】
ワニス(1)のポリアミド樹脂の含有率a1がa1≦30の場合、易剥離領域の剥離性の低下を招くので好ましくない。また、ワニス(1)のポリアミド樹脂の含有率a1が76<a1の場合、剥離性が良すぎ、内容物保護適性が劣化するので好ましくない。ワニス(2)のポリアミド樹脂の含有率a2がa2<76の場合、易剥離領域の剥離性の低下を招くので好ましくない。また、ワニス(2)のポリアミド樹脂の含有率a2が99≦a2の場合、剥離性が良すぎ、内容物保護適性が劣化するので好ましくない。
【0025】
さらに、前記ワニス(1)と前記ワニス(2)におけるポリアミド樹脂の含有率a1、a2がa2−a1≧4%の範囲であることが好ましい。前記ワニス(1)と前記ワニス(2)におけるポリアミド樹脂の含有率a1、a2が、a2−a1<4%の場合、ポリアミド樹脂の含有率が近似している為、前記ワニス(1)と前記ワニス(2)の相溶性が良すぎ、製品が長期間高温・多湿条件下に保管された場合、目止め層(L1)と剥離層(L2)の一体化が促進され、剥離層(L2)の性能を充分引き出せず、剥離後の外観不良や剥離不良を引き起こす。
【0026】
本発明で使用するポリアミド樹脂は、多塩基酸と多価アミンとを重縮合して得られるような従来からの既知の方法で製造出来る熱可塑性ポリアミドであり、製造方法は特に制限されるものではない。また、ポリアミド樹脂の軟化点は、80〜150℃の範囲であることが好ましい。軟化点が80℃未満の場合、形成する易剥離領域は表面タック切れが悪く剥離しないといった不具合を招き、逆に150℃を越えた場合は、易剥離領域の皮膜が硬くなり、凝集破壊といった外観不良を起こすので好ましくない。
【0027】
本発明で使用するニトロセルロース樹脂は、天然セルロースと硝酸を反応させて、天然セルロース中の無水グルコピラノース基の6員環中の3個の水酸基を、硝酸基に置換した硝酸エステルとして得られるものであり、平均重合度が50〜150の範囲のものが好適に使用される。平均重合度が50未満の場合、形成する易剥離領域は表面タック切れが悪く剥離しないといった不具合を招き、逆に150を越えた場合は、溶剤への溶解性、ポリアミド樹脂との相溶性の低下を招くので好ましくない。
【0028】
本発明の湯切付即席食品容器蓋材用ワニスセットは、粘度調整の為、各種有機溶剤を使用することができ、特に制約されるものではないが、その例としては、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−i−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−i−プロピルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル等のエステル類;3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;アロマフリーの石油系溶剤等を挙げることができる。
【0029】
これらの溶剤のうち、芳香族炭化水素類、ケトン類、アルコール類、エステル類等の、沸点が、好ましくは40〜120℃、特に好ましくは60〜100℃の範囲にある溶剤を含むものが望ましい。
【0030】
本発明において、溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
本発明の湯切付即席食品容器蓋材用ワニスセットには、上記構成材料の他に、必要に応じて、気相法シリカ、湿式法シリカ、有機処理シリカ、アルミナ処理シリカ等の微粉末シリカ、ポリエチレンワックス、脂肪酸アマイドワックス、消泡剤、レベリング剤等の添加剤も配合することができる。
【0031】
本発明の湯切付即席食品容器蓋材用ワニスセットを有する即席食品容器の湯切付蓋材を構成する基材(表面シート)としては、その表面が印刷適性に優れている必要があるため、紙が主体となり、それに対し上記ワニスセットを目止め層、剥離層と二度積層塗布する事により、湯切付即席食品容器蓋材用易剥離性グラビア印刷物を得ることが出来る。
【実施例】
【0032】
以下,実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明において、特に断らない限り、「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」を表す。
【0033】
<ポリアミドワニスの調整>
重量平均分子量が6000であるポリアミド樹脂(レオマイドS−8200 花王(株)製)30部をトルエン50部、イソプロピルアルコール20部に混合溶解させて、固形分30%の試験用ポリアミドワニス(樹脂A)を得た。
【0034】
<ポリアミドワニスの調整>
重量平均分子量が9000であるポリアミド樹脂(レオマイドS−2110PL 花王(株)製)30部をトルエン50部、イソプロピルアルコール20部に混合溶解させて、固形分30%の試験用ポリアミドワニス(樹脂B)を得た。
【0035】
<ポリアミドワニスの調整>
重量平均分子量が25000であるポリアミド樹脂(レオマイドS−2800 花王(株)製)30部をトルエン50部、イソプロピルアルコール20部に混合溶解させて、固形分30%の試験用ポリアミドワニス(樹脂C)を得た。
【0036】
<ポリアミドワニスの調整>
重量平均分子量が31000であるポリアミド樹脂(レオマイドSP−40N 花王(株)製)30部をトルエン50部、イソプロピルアルコール20部に混合溶解させて、固形分30%の試験用ポリアミドワニス(樹脂D)を得た。
【0037】
<アクリルワニスの調製>
重量平均分子量が8100であるアクリル樹脂(JONCRYL611、BASF(株)製)30部を、酢酸エチル70部に混合溶解させて、固形分30%の試験用アクリルワニス(樹脂E)を得た。
【0038】
<ポリウレタンワニスの調整>
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコにアジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールから得られる数平均分子量2000のポリエステルジオール240.6部とイソホロンジイソシアネート39.8部および酢酸エチル60.0部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させた。次いでイソホロンジアミン20.12部、アセトアミド0.75部、酢酸エチル430.0部、イソプロピルアルコール 210.4部を添加し、固形分30%、重量平均分子量10000のポリウレタン樹脂ワニス(樹脂F)を得た。
【0039】
<ニトロセルロースワニスの調整>
平均重合度が50であるニトロセルロース(1/8H、旭化成(株)製)30部を、酢酸エチル30部とイソプロピルアルコール40部に混合溶解させて、固形分30%の試験用ニトロセルロースワニス(樹脂G)を得た。
【0040】
〔ワニスA〜V〕
表1に示す配合にて上記調整ワニスおよびポリエチレン系ワックスを混合し、蓋材用ワニスA〜Vを得た。
【0041】
【表1】
【0042】
〔実施例1〜17、比較例1〜4〕
次に上記で得られた湯切付即席食品容器蓋材用ワニスを用いて、坪量127.9/m
2の片面アート紙の裏面にグラビア校正機を利用し、グラビア用30ミクロン ベタ版にて表2に示す構成にて目止め層、剥離層の順に印刷し蓋材用易剥離性グラビア印刷物を得た。
【0043】
さらに、上記で得られた湯切蓋材用易剥離性グラビア印刷面に溶融した低密度ポリエチレン樹脂を押し出してラミネート加工しラミネート物を得た。
上記ラミネート物のラミネート直後および温度50℃、湿度80%の雰囲気下で10日、60日経過後させたものについて、ポリエチレンの剥離強度および剥がしたポリエチレンへのワニス転移度合い(凝集破壊具合)を評価し、その結果を表2に示し、易剥離性の評価とした。
(剥離強度)ラミネート物を15mm幅に切り、引っ張り速度300mm/minにおい て、引っ張り方向に対し、90°の角度でポリエチレンを剥がした時の強度 を剥離強度とした。
(剥離外観)剥離強度測定で使用したサンプルのポリエチレン側にインキが転移した量を 目視判定した。
−評価基準−
○:インキ取られ無く、外観良好
△:僅かにインキ取られがあるが、実用上問題なし
×:インキ取られ多い。
【0044】
【表2】
【0045】
表2の結果から、
アクリル樹脂/ニトロセルロース樹脂混合ワニス(比較例3)
および
ポリウレタン樹脂/ニトロセルロース樹脂混合ワニス(比較例4)
を使用した剥離ワニスおよび目止めワニスの剥離性は不良であった。
【0046】
また、ポリアミド樹脂/ニトロセルロース樹脂混合ワニスにおいてもポリアミド樹脂の重量平均分子量が、6000のワニスセット(比較例1)は、剥離性能が経時劣化し満足する物ではなかった。
【0047】
さらに、ポリアミド樹脂の重量平均分子量が、31000のワニスセット(比較例2)は、接着性不良を起こし、内容物保護適性の不具合が確認された。
【0048】
これに対して、剥離層と目止め層から形成される剥離領域において、ワニスB、C、H、I、M〜Vを塗布した実施例
1〜9、参考実施例10〜17は、剥離外観および経時劣化も良好で充分な易剥離性を有していた。
【0049】
従って本発明により、生産上適度な剥離強度および良好な剥離外観を有する、湯切付即席食品容器蓋材を得ることが出来、長期間高温・多湿保存下でもその剥離性は劣化せず、湯切付即席食品容器蓋材として、優れた実用上の効果を発揮する。
【符号の説明】
【0050】
10・・・接着性樹脂層
11・・・シーラント層
12・・・金属箔層
20・・・上質紙
30・・・プルタブ
40・・・湯切口形成用ハーフカット
50・・・湯切口
LA・・・易剥離領域
L1・・・目止め層
L2・・・剥離層
A・・・・表面シート
B・・・・複合シート