特許第5708172号(P5708172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5708172
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】クランプアーム装置
(51)【国際特許分類】
   B02C 21/02 20060101AFI20150409BHJP
【FI】
   B02C21/02
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-87416(P2011-87416)
(22)【出願日】2011年4月11日
(65)【公開番号】特開2012-217948(P2012-217948A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2014年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田添 祟司
(72)【発明者】
【氏名】吉川 拓也
【審査官】 日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−101323(JP,A)
【文献】 特開2005−263406(JP,A)
【文献】 特開2003−117428(JP,A)
【文献】 特開2003−071316(JP,A)
【文献】 特開平06−254420(JP,A)
【文献】 実開平02−132788(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 21/02
B66C 23/78
B66C 23/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被破砕物を破砕する作業に用いられる作業アタッチメントと、該作業アタッチメントを作動させる作動油を供給する作動油供給源と、自走するための走行機構とを有する解体作業機と共に使用されるクランプアーム装置であって、
前記解体作業機の走行機構が乗り上げ可能な踏み面を有する基台と、
前記基台に立設されたブラケットと、
前記被破砕物を押さえ込むため前記ブラケットに上下回動可能に取り付けられたクランプアームと、
前記クランプアームを回動させるため前記ブラケットに取り付けられた油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータに作動油を供給する作動油供給手段とを備え、
前記走行機構が前記踏み面に乗り上げることで前記解体作業機の自重により前記基台が押え込まれ、前記作動油供給手段を前記作動油供給源に接続することにより前記解体作業機を操作する作動油が前記油圧アクチュエータに供給されるように構成したことを特徴とするクランプアーム装置。
【請求項2】
前記解体作業機は、その左右両側に前記走行機構を備えており、
前記ブラケットは、前記基台上で前記左右の走行機構間の幅より狭い内幅をもって左右に形成され、該ブラケットの左右外側に前記踏み面が形成されていることを特徴とする請求項1記載のクランプアーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、破砕機を用いて被破砕物を破砕する際に被破砕物を押さえ込むクランプアームを備えるクランプアーム装置、及びクランプアーム装置を用いる解体作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用されなくなった車両等の大型廃棄物を処分するために、破砕機を備えた作業機が用いられている。これは、自走可能な下部走行体の上に旋回自在に設置された上部旋回体にブームの基端部を回動可能に取り付け、その先端部に回動自在に連結したアームの先端部に破砕機を取り付けている。その作業時には、廃棄物を破砕機で破砕するため、被破砕物を動かないように固定している。
【0003】
この固定には、地面上で被破砕物を押えつける押え具(クランプアーム)が用いられる。このクランプアームを作業機の前部に取り付けて作業機から操作可能とすることにより、作業機の操作者がクランプアームも操作して被破砕物を固定しながら、破砕機で破砕する操作を行うことができるようにした解体作業機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、上記のように下部走行体の前部にクランプアームを取り付けた解体作業機では、クランプアームの長さによって作業機の移動範囲が制限されるので、クランプアームを使用しない作業を行う場合は、クランプアームが作業機の移動やアームの作動の妨げになる場合があり、作業能率を低下させることになる。
【0005】
また、解体作業機をトレーラ等の輸送車両で搬送する場合も、解体作業機を載せる輸送車両のスペースをクランプアームの大きさに相当する分、広くする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭59−1701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、上記のようなクランプアームを解体作業機に取り付けるのを止めるか或いは取り付けたとしても、クランプアームを使用しないときは作業機から分離可能に構成することが考えられる。
【0008】
しかしながら、クランプアームを作業機に取り付けない場合には、破砕作業時にクランプアームを作業機とは別に離れた状態で操作することとなり、作業機の操作者がクランプアームをも操作して破砕作業を行うことは困難である。
【0009】
また、クランプアームを作業機から分離可能に構成した場合には、クランプアームを用いる破砕作業が終わる度にクランプアームを作業機から取り外す作業と、破砕作業を始める前に取り付ける作業とを行うことが要求され、作業者にとってそれらの作業が負担となる。
【0010】
本発明は、上記のような破砕作業に用いられるクランプアームを作業機とは切り離して構成することで、クランプアームを使用しない作業では、作業機の作業性低下と輸送時のスペース対策を回避する一方、クランプアームを使用するときでも、作業機の操作者がクランプアームも操作して破砕作業等を行うことを可能にするクランプアーム装置、及びこれを用いる解体作業装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のクランプアーム装置は、被破砕物を破砕する作業に用いられる作業アタッチメントと、該作業アタッチメントを作動させる作動油を供給する作動油供給源と、自走するための走行機構とを有する解体作業機と共に使用されるクランプアーム装置であって、前記解体作業機の走行機構が乗り上げ可能な踏み面を有する基台と、前記基台に立設されたブラケットと、前記被破砕物を押さえ込むため前記ブラケットに上下回動可能に取り付けられたクランプアームと、前記クランプアームを回動させるため前記ブラケットに取り付けられた油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータに作動油を供給する作動油供給手段とを備え、前記走行機構が前記踏み面に乗り上げることで前記解体作業機の自重により前記基台が押え込まれ、前記作動油供給手段を前記作動油供給源に接続することにより前記解体作業機を操作する作動油が前記油圧アクチュエータに供給されるように構成したことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、被破砕物を破砕する作業に際して、解体作業機の走行機構が踏み台に乗り上げることで解体作業機の自重により基台が押え込まれる。このため、クランプアーム装置は、ボルトやナット等の留め具を用いることなく固定される。そして、動油供給手段を作動油供給源に接続することにより、解体作業機を操作する作動油がクランプアームを回動させる油圧アクチュエータに供給可能となる。このため、クランプアームの操作を解体作業機の操作と共に行うことができる。
【0013】
また、作動油供給手段を作動油供給源に接続しなければ、解体作業機は、クランプアーム装置を切り離して走行、旋回等の動作をすることが可能となる。従って、クランプアーム装置を用いない作業では、作業機の作業性向上と輸送時の省スペースを実現することができる。
【0014】
また、本発明によれば、走行機構を左右両側に備えた解体作業機に対して、前記ブラケットは、前記基台上で左右の走行機構間の幅より狭い内幅をもって左右に形成され、当該左右のブラケットの外側に前記踏み面が形成されることが好ましい。この場合、解体作業機は、ブラケットの左右外側に形成された踏み台に走行機構を乗り上げることができ、それによって基台をより安定して押えむことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態の構成図。
図2】(a)はクランプアーム装置の平面図、(b)はクランプアーム装置の側面図。
図3】作動油供給源からの作動油の供給先を示すブロック図。
図4】接続手段を示す部分図。
図5】破砕作業の工程を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照して、本発明による解体作業装置の構成を説明する。
【0017】
解体作業装置1は、クランプアーム装置2と解体作業機3とで構成される。解体作業機3は、下部走行体4と、この下部走行体4上に旋回自在に搭載される上部旋回体5とから構成されている。また、上部旋回体5の前側には、運転室6が設けられている。更に、運転室6と隣接する側には、上部旋回体5の上下方向に回動可能なブーム7が設けられている。ブーム7の先端側には、上部旋回体5の前後方向に回動可能なアーム8を介して破砕機9が取り付けられている。このブーム7、アーム8、及び破砕機9が作業アタッチメントに相当する。
【0018】
下部走行体4の右側には駆動輪10a(図示省略)が取り付けられ、下部走行体4の左側には駆動輪10bが取り付けられている。また、駆動輪10a、10bには無限軌道履帯11a(図示省略)、11bが掛け回されている。この無限軌道履帯11a、11bが走行機構に相当する。駆動輪10a、10bの前後進、すなわち下部走行体4の前後進と、上部旋回体5の旋回は、作動油供給源に相当するオイルポンプ12から供給される作動油によって駆動される。解体作業機3は、例えば図示しない外部電源からの電気の供給を受けて走行する。
【0019】
ブーム7及びアーム8には、それぞれ回動するためのシリンダ13及び14が設けられている。
【0020】
ブーム7を回動させるシリンダ13は、その基端部が上部旋回体5に支持され、先端部がブーム7に連結されている。このシリンダ13の作動により、ブーム7が上部旋回体5に取り付けられた基端部を支点として回動する。
【0021】
アーム8を回動させるシリンダ14は、その基端部がブーム7に設けた取付ブラケット7aに連結されると共に、先端部がアーム8の上端に連結されている。このシリンダ14の作動により、アーム8がブーム7に連結された基端部を支点として回動する。
【0022】
破砕機9は、アーム8の先端部に連結され、シリンダ15により、アーム先端部を支点として回動可能である。破砕機9は、その先端側に破砕刃16と、この破砕刃16を開閉動作させるシリンダ(図示せず)とを備えている。
【0023】
破砕機シリンダ15は、その基端部がアーム8の上端部に連結される一方、先端部が、アーム8に回動可能に取り付けたリンク8aと、破砕機9の基端に取り付けたリンク8bとの結合部に連結されている。従って、破砕機9は、シリンダ15の作動により、リンク8a及び8bを介して、アーム8の先端部を支点として回動する。
【0024】
上記解体作業機3の前方には、被破砕物aを上方から押え付けることができるクランプアーム装置2が位置する。
【0025】
図2に示すように、クランプアーム装置2は、被破砕物aを破砕作業場に相当する地面bに押さえ込むことができるように形成された一対のクランプアーム21と、このクランプアーム21を作動油で作動させるアクチュエータに相当するクランプアームシリンダ22を備える。
【0026】
また、クランプアーム装置2は、地面b上に設置される基台23を備える。この基台23は板状で、その上面の左右両側にブラケット23bを立設すると共に、左右のブラケット23bの外側に解体作業機3の走行機構を乗り上げることができる踏み面23aを形成している。ブラケット23bは、基台23上で解体作業機3の左右の無限軌道履帯11a、11b間の幅よりも狭い内幅をもって左右に形成され、踏み面23aは当該左右のブラケット23bの外側に形成されている。
【0027】
ブラケット23bには、クランプアーム21とクランプアームシリンダ22が取り付けられている。クランプアーム21の一端部21aには回動軸21oが設けられ、クランプアームシリンダ22が伸縮することによって、クランプアーム21は回動軸21oを支点として上下方向に回動する。
【0028】
クランプアームシリンダ22には、油圧ホース24が接続され、この油圧ホース24の先端に配管接続装置25が取り付けられている。また、踏み面23aの両端には、上方向に凸となる位置決め部26が設けられ、クランプアーム21の他端部21bには、被破砕物aを押えるための爪部27が設けられている。
【0029】
次に、図3及び図4を参照して、オイルポンプ(作動油供給源)12からクランプアームシリンダ22への作動油の供給について説明する。オイルポンプ12は、ブームシリンダ13とアームシリンダ14と破砕機シリンダ15とに作動油を供給する。
【0030】
操作レバー31を操作すると、操作レバー31の操作に応じて、オイルポンプ12から供給された作動油が油圧回路32を経由してブームシリンダ13、アームシリンダ14、及び破砕機シリンダ15に供給される。ブームシリンダ13、アームシリンダ14、及び破砕機シリンダ15への作動油の供給によって、ブーム7、アーム8及び破砕機9が回動する。
【0031】
また、オイルポンプ12には油圧ホース33が取り付けられており、オイルポンプ12とクランプアーム21を駆動するクランプアームシリンダ22とは、後述する配管接続装置25、34を介して分離可能に接続されている。オイルポンプ12とクランプアームシリンダ22とが接続されている場合には、作業者の操作に応じて、オイルポンプ12から供給された作動油がクランプアームシリンダ22に供給され、クランプアーム21が回動軸21oを回転軸として回動する。
【0032】
配管接続装置25、34は、雄側の配管接続装置25と雌側の配管接続装置34とからなる。配管接続装置25は、クランプアーム21を作動油で作動させるクランプアームシリンダ22に作動油を供給する油圧ホース24の先端に設けられている。また、配管接続装置34は、オイルポンプ12から作動油を供給される油圧ホース33に設けられている。
【0033】
配管接続装置25、34は互いに接続及び分離を可能とするように形成され、両者を接続することによって、油圧ホース24、33とが互いに接続される。本実施形態では、油圧ホース24、33が作動油供給手段に相当する。
【0034】
次に、図5に示すフローチャートを参照して、被破砕物の破砕方法について説明する。まず、破砕機9を有する解体作業機3が、踏み面23aに乗り上がるように移動する(STEP1)。このとき、解体作業機3の無限軌道履帯11a、11bが、ブラケット23bと位置決め部26との間に乗り上がり、解体作業機3の自重で基台23を地面bに押え込む。このステップ1における解体作業機3の移動が、作業機移動工程に相当する。この工程で、基台23が地面bに対して固定される。
【0035】
次に、クランプアームシリンダ22に作動油を供給する油圧ホース24に取り付けられた配管接続装置25に、オイルポンプ12から作動油を供給される油圧ホース33に取り付けられた配管接続装置34を接続することで、オイルポンプ12からの作動油をクランプアームシリンダ22に供給可能にする(STEP2)。
【0036】
このステップ2における配管接続装置25、34の接続によるオイルポンプ12からクランプアームシリンダ22への作動油の供給が、作動油供給工程に相当する。なお、配管接続装置25、34の接続は分離することができ、配管接続装置25、34の分離によって、オイルポンプ12からクランプアームシリンダ22への作動油の供給を断つことができる。
【0037】
次に、操作レバー31の操作によって、オイルポンプ12からの作動油の供給されているブームシリンダ13とアームシリンダ14と破砕機シリンダ15とが駆動されて、ブーム7とアーム8と破砕機9が回動される。この操作によって、被破砕物aは、クランプアーム21で押さえ込むことを可能とする場所に移動される(STEP3)。このステップ3において被破砕物aを破砕可能な位置に移動させる工程が破砕物移動工程に相当する。
【0038】
次に、操作レバー31の操作によって、被破砕物aをクランプアーム21で地面に押さえ込む押さえ込み工程が実行される(STEP4)。この押さえ込みによって、被破砕物aを破砕する際に、被破砕物aを固定した状態で破砕することが可能となる。
【0039】
次に、被破砕物aをクランプアーム21で地面に押さえ込んだ状態で、破砕機9によって被破砕物aを破砕する破砕工程が実行される(STEP5)。破砕工程によって、被破砕物aが破砕されることで、被破砕物aの破砕作業を終了する。
【符号の説明】
【0040】
1…解体作業装置、2…クランプアーム装置、3…解体作業機、7…ブーム(作業アタッチメント)、8…アーム(作業アタッチメント)、9…破砕機(作業アタッチメント)、11a、11b…無限軌道履帯(走行体)、12…オイルポンプ(作動油供給源)、21…クランプアーム、22…クランプアームシリンダ(アクチュエータ)、23…基台、23a…踏み面、23b…ブラケット、24、33…油圧ホース(作動油供給手段)、a…被破砕物。
図1
図2
図3
図4
図5