特許第5708188号(P5708188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5708188
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】積層コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20150409BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
   H01F17/00 D
   H01F15/00 C
   H01F15/14
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-91301(P2011-91301)
(22)【出願日】2011年4月15日
(65)【公開番号】特開2012-227223(P2012-227223A)
(43)【公開日】2012年11月15日
【審査請求日】2013年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】生出 章彦
(72)【発明者】
【氏名】大島 由也
(72)【発明者】
【氏名】東田 啓吾
【審査官】 田中 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−277695(JP,A)
【文献】 特開2010−135602(JP,A)
【文献】 特開2012−227225(JP,A)
【文献】 特開2006−148035(JP,A)
【文献】 特開平10−200357(JP,A)
【文献】 実開平03−088309(JP,U)
【文献】 特開2008−054287(JP,A)
【文献】 特開2006−032424(JP,A)
【文献】 特開平08−138937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00 − 21/12
H01F 27/00 − 27/02
H01F 27/06 − 27/08
H01F 27/23
H01F 27/28 − 27/29
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 38/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁体層が積層されてなる素体と、
前記素体の内部に並置された複数のコイルと、
前記素体の表面にそれぞれ形成され、前記複数のコイルそれぞれの両端が接続される複数の外部電極とを備え、
前記複数のコイルは、複数の第1コイル導体が直列に接続されて構成された螺旋状の第1コイルと、複数の第2コイル導体が直列に接続されて構成されると共に前記第1コイルと並列に接続された螺旋状の第2コイルとをそれぞれ含み、
前記第1コイル導体と前記第2コイル導体とは、同一形状を有し、前記第1コイル及び前記第2コイルそれぞれの周回中心線が一致するように、前記周回中心線を中心に同一の前記絶縁体層上に点対称にそれぞれ配置されており、
前記絶縁体層上に点対称に配置された前記第1コイル導体と前記第2コイル導体との間には離間部分が形成されており、
前記素体内で隣接する前記コイルにおいて、前記離間部分と前記第1コイル導体又は前記第2コイル導体とが対向していることを特徴とする積層コイル部品。
【請求項2】
前記隣接するコイル同士は、一方の前記コイルに対して他方の前記コイルが前記周回中心線を中心に略90°回転して配置されていることを特徴とする請求項1記載の積層コイル部品。
【請求項3】
前記第1コイル導体及び前記第2コイル導体は、直線状を呈していることを特徴とする請求項1又は2記載の積層コイル部品。
【請求項4】
前記素体は、互いに対向する一対の端面と、前記一対の端面を連結するように伸びる一対の主面と、前記一対の主面を連結するように伸び且つ前記複数の絶縁体層の積層方向において互いに対向する一対の側面とを有しており、
前記複数の外部電極は、前記一対の側面にそれぞれ形成されており、
前記複数のコイルの周回中心線が前記一対の側面の対向方向に延びていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の積層コイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の積層コイル部品として、複数の絶縁体層を積層することによって形成される素体と、素体内に螺旋状に形成される複数のコイルとを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この積層コイル部品では、各絶縁体層において略コ字状を呈する導体パターンが同じ向きで複数配置されており、この各導体パターンが積層方向に直列に接続されて複数のコイルが構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−32425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の積層コイル部品では、隣接するコイルにおいて導体パターンの辺同士が対向する部分があるため当該部分で浮遊容量が発生し、浮遊容量が大きくなるといった問題があった。また、積層コイル部品では、直流抵抗の低減が望まれている。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、浮遊容量及び直流抵抗を低減できる積層コイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る積層コイル部品は、複数の絶縁体層が積層されてなる素体と、素体の内部に並置された複数のコイルと、素体の表面にそれぞれ形成され、複数のコイルそれぞれの両端が接続される複数の外部電極とを備え、複数のコイルは、複数の第1コイル導体が直列に接続されて構成された螺旋状の第1コイルと、複数の第2コイル導体が直列に接続されて構成されると共に第1コイルと並列に接続された螺旋状の第2コイルとをそれぞれ含み、第1コイル導体と第2コイル導体とは、同一形状を有し、第1コイル及び第2コイルそれぞれの周回中心線が一致するように、周回中心線を中心に同一の絶縁体層上に点対称にそれぞれ配置されており、絶縁体層上に点対称に配置された第1コイル導体と第2コイル導体との間には離間部分が形成されており、素体内で隣接するコイルにおいて、離間部分と第1コイル導体又は第2コイル導体とが対向していることを特徴とする。
【0007】
この積層コイル部品では、絶縁体層上において点対称に配置された第1コイル導体と第2コイル導体との間に離間部分が形成されており、隣接するコイルにおいて離間部分と第1コイル導体又は第2コイル導体とが対向している。このように、隣接するコイルにおいてコイル導体の辺同士が対向していないため、辺同士による浮遊容量の発生を抑制でき、浮遊容量を低減できる。また、複数の第1コイル導体が直列に接続されて構成された螺旋状の第1コイルと、複数の第2コイル導体が直列に接続されて構成されると共に第1コイルと並列に接続された螺旋状の第2コイルとにより複数のコイルが構成されている。したがって、第1コイル及び第2コイルを構成する接続導体において、導通路が狭くなる(断面積が小さくなる)部分がほとんど存在しないため、直流抵抗の低減が図れる。
【0008】
隣接するコイル同士は、一方のコイルに対して他方のコイルが周回中心線を中心に略90°回転して配置されていることが好ましい。このような構成によれば、離間部分と第1コイル導体又は第2コイル導体とを好適に対向させることができる。
【0009】
第1コイル導体及び第2コイル導体は、直線状を呈していることが好ましい。このような構成によれば、第1コイル導体と第2コイル導体との間に離間部分が良好に形成されるため、隣接するコイルにおいて浮遊容量が発生することをより一層抑制できる。
【0010】
素体は、互いに対向する一対の端面と、一対の端面を連結するように伸びる一対の主面と、一対の主面を連結するように伸び且つ複数の絶縁体層の積層方向において互いに対向する一対の側面とを有しており、複数の外部電極は、一対の側面にそれぞれ形成されており、複数のコイルの周回中心線が一対の側面の対向方向に延びていることが好ましい。このような構成によれば、各コイルが主面の対向方向に延在する場合に比べて、コイルの巻回数を確保することができる。また、コイルと外部電極とが対向する部分を少なくでき、コイルと外部電極との間の浮遊容量を低減できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、浮遊容量及び直流抵抗を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る積層コイル部品を示す斜視図である。
図2図1に示す積層コイル部品の素体の展開斜視図である。
図3図2に示すコイル導体によって構成されるコイルを示す斜視図である。
図4図2に示す絶縁体層を上から見た図である。
図5】周波数とインピーダンスの関係を示すグラフである。
図6】第2実施形態に係る積層コイル部品の素体の展開斜視図である。
図7図6に示すコイル導体によって構成されるコイルを示す斜視図である。
図8図6に示す絶縁体層を上から見た図である。
図9】変形例に係るコイルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
[第1実施形態]
各図に示すように、積層コイル部品1は、回路基板(図示しない)の表面に実装される積層ビーズアレイであり、複数の絶縁体層L1〜L10を積層することによって形成される直方体形状の素体2と、素体2の一方の側面2eに形成された複数(ここでは4個)の外部電極3と、素体2の他方の側面2fに形成された複数(ここでは4個)の外部電極4と、複数(ここでは4個)のコイルC1〜C4を含むコイル部5とを備えて構成されている。
【0015】
素体2は、素体2の長手方向に向かい合って互いに平行をなす一対の端面2a,2bと、一対の端面2a,2b間を連結するように伸び且つ互いに対向する一対の主面2c,2dと、一対の主面2c,2dを連結するように伸び且つ互いに対向する一対の側面2e,2fとを有する。素体2において、一対の側面2e,2f間の寸法は、一対の主面2c,2d間の寸法よりも大きい。外部電極3は、側面2eにおいて積層方向に延在すると共に、側面2c,2dに張り出している。外部電極4は、側面2fにおいて積層方向に延在すると共に、側面2c,2dに張り出している。外部電極3,4は、素体2の焼成後、Agやガラスを主成分とした導電性ペーストを塗布し、焼成後、メッキ処理を施すことによって形成される。
【0016】
素体2は、複数(ここでは10枚)の矩形状の絶縁体層L1〜L10を積層することによって構成されている。具体的には、Fe、Ni、Cu、Znを主成分としたフェライト材からなるフェライトグリーンシートの表面にコイル導体などの所定の導体パターンを印刷すると共にスルーホールを形成する。その後、複数のフェライトグリーンシートを積層すると共に積層方向に圧力をかけることによって圧着し、シート積層体を得る。そして、当該シート積層体を素体2の単位形状にカットした後、焼成することによって素体2が形成される。素体2の焼成後の大きさは、積層方向における長さ(L)が0.35〜1.55mmとされ、積層方向と直交する辺の大きさ(幅:W)が0.8〜3.2mmとされ、積層方向と直交する辺の大きさ(高さ:T)が0.2〜0.8mmとされている。また、焼成後の絶縁体層L1〜L10の厚みは、0.005〜0.015mmとされている。積層コイル部品1の寸法(L×W×T)は、例えば0.8mm×0.4mm×0.2mm、1.6mm×0.8mm×0.4mmなどとなっている。なお、実際の積層コイル部品1では、絶縁体層L1〜L10の各層同士は、視認できない程度に一体化されている。
【0017】
図2に示すように、素体2は、複数(ここでは10枚)の矩形状の絶縁体層L1〜L10を積層することによって構成されている。素体2の内部には、フェライトグリーンシート上に印刷された導体パターンが積層されることによって4つのコイルC1〜C4が構成されており、これらのコイルC1〜C4は、素体2の長手方向(端面2a,2bの対向方向、或いは積層方向に直交する方向)に並置されている。
【0018】
また、素体2の内部には、各コイルC1〜C4を積層方向に引き出して外部電極3,4(図1参照)と各コイルC1〜C4とを電気的に接続する引出部6,7と、各コイルC1〜C4と引出部6,7とをそれぞれ電気的に接続する第1接続導体パターン8及び第2接続導体パターン9とがそれぞれ配置されている。また、各導体同士は積層方向にスルーホール導体によって接続されている。各コイルC1〜C4は、それぞれ第1コイルC1A〜C4Aと、第2コイルC1B〜C4Bとから構成されている。各コイルC1〜C4の周回中心線Cは、積層方向(側面2e,2fの対向方向)に延びている。
【0019】
引出部6は、複数(ここでは2層)の絶縁体層L1,L2が積層されて構成されている。絶縁体層L1の表面には、引出導体10が形成されている。各引出導体10は、互いに所定の間隔を有した状態で長手方向に並設されており、外部電極3と電気的に接続されている。各引出導体10同士は、電気的に絶縁されている。
【0020】
絶縁体層L2の表面には、引出導体11が形成されている。引出導体11は、互いに所定の間隔を有した状態で長手方向に並設されており、互いに電気的に絶縁されている。引出導体11は、絶縁体層L2を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H1と電気的に接続されている。引出導体11は、積層された状態でスルーホール導体H1を介して隣接する第1接続導体パターン8と電気的に接続されている。引出導体10と引出導体11とは、図示しないスルーホール導体によって電気的に接続されており、引出部6を構成している。
【0021】
絶縁体層L3の表面には、第1接続導体パターン8が形成されている。第1接続導体パターン8は、第1コイルC1A〜C4Aと第2コイルC1B〜C4Bを並列に接続する部分であり、直線状(I字状)に形成されている。各第1接続導体パターン8は、互いに所定の間隔を有した状態で長手方向に並設されており、互いに電気的に絶縁されている。第1接続導体パターン8の両端は、絶縁体層L3を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H2,H3と電気的に接続されている。第1接続導体パターン8は、積層された状態で各スルーホール導体H2,H3を介して隣接する第1導体パターン12aの一端及び第2導体パターン13aの一端と電気的に接続される。第1接続導体パターン8の中央部は、積層された状態でスルーホール導体H1と電気的に接続される領域となっている。この領域は、略円形を呈しており、導体パターンの幅よりも幅広に形成されている。以下、スルーホール導体と電気的に接続される領域は、同様の構成を有している。
【0022】
絶縁体層L4の表面には、第1導体パターン(第1コイル導体)12a及び第2導体パターン(第2コイル導体)13aが形成されている。第1導体パターン12aと第2導体パターン13aとの組は、互いに所定の間隔を有した状態で長手方向に並設されており、互いに電気的に絶縁されている。第1導体パターン12aは、第1コイルC1A〜C4Aを構成しており、絶縁体層L4上で直線状(I字状)に形成されている。第1導体パターン12aは、第1コイルC1A〜C4Aの略1/4ターンに相当する。第1導体パターン12aの一端は、積層された状態でスルーホール導体H2と電気的に接続される領域となっている。第1導体パターン12aの他端は、絶縁体層L4を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H4と電気的に接続されている。第1導体パターン12aは、積層された状態でスルーホール導体H4を介して隣接する第1導体パターン12bの一端と電気的に接続される。
【0023】
第2導体パターン13aは、第2コイルC1B〜C4Bを構成しており、絶縁体層L4上で直線状(I字状)に形成されている。第2導体パターン13aは、第2コイルC1B〜C4Bの略1/4ターンに相当する。第2導体パターン13aの一端は、積層された状態でスルーホール導体H3と電気的に接続される領域となっている。第2導体パターン13aの他端は、絶縁体層L4を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H5と電気的に接続されている。第2導体パターン13aは、積層された状態でスルーホール導体H5を介し隣接する第2導体パターン13bの一端と電気的に接続される。
【0024】
各第1導体パターン12aと各第2導体パターン13aとは、同一形状を有しており、絶縁体層L4上において、所定の間隔を有すると共に、コイルC1〜C4の周回中心線Cを中心にそれぞれ点対称に配置されている。絶縁体層L4上において、コイルC1を構成する第1導体パターン12aと第2導体パターン13aは、絶縁体層L4の対向する一対の辺S3,S4に沿うように配置されており、このコイルC1に隣接するコイルC2を構成する第1導体パターン12aと第2導体パターン13aは、絶縁体層L4の対向する一対の辺S1,S2に沿うように配置されている。
【0025】
同様に、コイルC3を構成する第1導体パターン12aと第2導体パターン13aは、絶縁体層L4の対向する一対の辺S3,S4に沿うように配置されており、このコイルC3に隣接するコイルC4を構成する第1導体パターン12aと第2導体パターン13aは、絶縁体層L4の対向する一対の辺S1,S2に沿うように配置されている。すなわち、隣接するコイルC1〜C4において、第1導体パターン12aと第2導体パターン13aの組は、隣接する組に対して周回中心線Cを中心に90°回転した状態で配置されている。
【0026】
絶縁体層L5の表面には、第1導体パターン12b及び第2導体パターン13bが形成されている。第1導体パターン12bと第2導体パターン13bとの組は、互いに所定の間隔を有した状態で長手方向に並設されており、互いに電気的に絶縁されている。第1導体パターン12bは、第1コイルC1A〜C4Aを構成しており、絶縁体層L5上で直線状に形成されている。第1導体パターン12bは、第1コイルC1A〜C4Aの略1/4ターンに相当する。第1導体パターン12bの一端は、積層された状態でスルーホール導体H4と電気的に接続される領域となっている。第1導体パターン12bの他端は、絶縁体層L5を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H6と電気的に接続されている。第1導体パターン12bは、積層された状態でスルーホール導体H6を介して隣接する第1導体パターン12cの一端と電気的に接続される。
【0027】
第2導体パターン13bは、第2コイルC1B〜C4Bを構成しており、絶縁体層L5上で直線状に形成されている。第2導体パターン13bは、第2コイルC1B〜C4Bの略1/4ターンに相当する。第2導体パターン13bの一端は、積層された状態でスルーホール導体H5と電気的に接続される領域となっている。第2導体パターン13bの他端は、絶縁体層L5を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H7と電気的に接続されている。第2導体パターン13bは、積層された状態でスルーホール導体H7を介し隣接する第2導体パターン13bの一端と電気的に接続される。
【0028】
各第1導体パターン12bと各第2導体パターン13bとは、同一形状を有しており、絶縁体層L5上において、所定の間隔を有すると共に、コイルC1〜C4の周回中心線Cを中心にそれぞれ点対称に配置されている。絶縁体層L5上において、コイルC1を構成する第1導体パターン12bと第2導体パターン13bは、絶縁体層L5の対向する一対の辺S1,S2に沿うように配置されており、このコイルC1に隣接するコイルC2を構成する第1導体パターン12bと第2導体パターン13bは、絶縁体層L5の対向する一対の辺S3,S4に沿うように配置されている。
【0029】
同様に、コイルC3を構成する第1導体パターン12bと第2導体パターン13bは、絶縁体層L5の対向する一対の辺S1,S2に沿うように配置されており、このコイルC3に隣接するコイルC4を構成する第1導体パターン12bと第2導体パターン13bは、絶縁体層L5の対向する一対の辺S3,S4に沿うように配置されている。すなわち、隣接するコイルC1〜C4において、第1導体パターン12bと第2導体パターン13bの組は、隣接する組に対して周回中心線Cを中心に90°回転した状態で配置されている。
【0030】
絶縁体層L6の表面には、第1導体パターン12c及び第2導体パターン13cが形成されており、第1導体パターン12c及び第2導体パターン13cは、第1導体パターン12a及び第2導体パターン13aと同様の構成を有している。絶縁体層L7の表面には、第1導体パターン12d及び第2導体パターン13dが形成されており、第1導体パターン12d及び第2導体パターン13dは、第1導体パターン12b及び第2導体パターン13bと同様の構成を有している。第1導体パターン12cと第1導体パターン12dとは、スルーホール導体H8によって電気的に接続されており、第2導体パターン13cと第2導体パターン13dとは、スルーホール導体H9によって電気的に接続されている。
【0031】
絶縁体層L8の表面には、第2接続導体パターン9が形成されている。第2接続導体パターン9は、第1コイルC1A〜C4Aと第2コイルC1B〜C4Bを並列に接続する部分であり、絶縁体層L8上で直線状に形成されている。第2接続導体パターン9の両端は、積層された状態で、第1導体パターン12dの他端に形成されたスルーホール導体H10、及び第2導体パターン13dの他端に形成されたスルーホール導体H11と電気的に接続される領域となっている。第2接続導体パターン9の中央部は、絶縁体層L8を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H12と電気的に接続されている。第2接続導体パターン9は、積層された状態でスルーホール導体H12を介して隣接する引出導体14と電気的に接続される。
【0032】
引出部7は、複数(ここでは2層)の絶縁体層L9,L10が積層されて構成されている。絶縁体層L9の表面には、引出導体14が形成されている。引出導体14は、積層された状態でスルーホール導体H12と電気的に接続される領域となっている。各引出導体14は、互いに所定の間隔を有した状態で長手方向に並設されており、互いに電気的に絶縁されている。
【0033】
絶縁体層L10の表面には、引出導体15が形成されている。各引出導体15は、互いに所定の間隔を有した状態で長手方向に並設されており、外部電極4と電気的に接続されている。各引出導体15同士は、電気的に絶縁されている。引出導体14と引出導体15とは、図示しないスルーホール導体によって電気的に接続されており、引出部7を構成している。
【0034】
上記絶縁体層L1〜L10が積層されることにより、第1導体パターン12a〜12dが直列に接続されると共に、第2導体パターン13a〜13dが直列に接続され、素体2の内部にコイルC1〜C4(第1コイルC1A〜C4A及び第2コイルC1B〜C4B)を備えるコイル部5が形成される。図3に示すように、コイルC1〜C4は、第1コイルC1A〜C4Aと、第2コイルC1B〜C4Bとにより構成されている。第1コイルC1A〜C4A及び第2コイルC1B〜C4Bは、第1接続導体パターン8及び第2接続導体パターン9により、並列に接続されている。第1コイルC1A〜C4A及び第2コイルC1B〜C4Bは、螺旋状をなして互いに交差しており、それぞれの周回中心線が一致している。これにより、コイルC1〜C4は、周回中心線Cを中心に螺旋状をなしている。各スルーホール導体H1,H12の中心軸線は、周回中心線Cと一致している。
【0035】
図4は、図2に示す絶縁体層を上から見た図である。図4に示すように、例えば絶縁体層L5上において、各コイルC1〜C4を構成する第1導体パターン12b及び第2導体パターン13bは、それぞれ所定の距離を有して対向配置されており、第1導体パターン12bと第2導体パターン13bとの間には、離間部分Dが形成されている。そして、コイル部5において、コイルC2はコイルC1に対して周回中心線Cを中心に90°回転して配置されており、コイルC3はコイルC2に対して周回中心線Cを中心に90°回転して配置されており、コイルC4はコイルC3に対して周回中心線Cを中心に90°回転して配置されている。
【0036】
このような構成により、隣接するコイルC1とコイルC2とでは、素体2の長手方向において第2導体パターン13bと離間部分Dとが対向し、コイルC2とコイルC3とでは、素体2の長手方向において離間部分Dと第1導体パターン12bとが対向し、コイルC3とコイルC4とでは、素体2の長手方向において第2導体パターン13bと離間部分Dとが対向している。つまり、隣接するコイルC1〜C4では、第1導体パターン12a〜12dと第2導体パターン13a〜13dとの辺、第1導体パターン12a〜12d同士の辺、第2導体パターン13a〜13d同士の辺が対向しない。
【0037】
以上説明したように、本実施形態に係る積層コイル部品1では、絶縁体層L4〜L7上において第1導体パターン12a〜12dと第2導体パターン13a〜13dとの間に離間部分Dが形成されており、隣接するコイルC1〜C4において離間部分Dと第1導体パターン12a〜12d又は第2導体パターン13a〜13dとが対向している。そのため、隣接するコイルC1〜C4において第1導体パターン12a〜12d及び第2導体パターン13a〜13dの辺同士が対向していないため、これら辺同士による浮遊容量の発生を抑制でき、浮遊容量を低減できる。
【0038】
また、積層コイル部品1では、並列に接続された第1コイルC1A〜C4A及び第2コイルC1B〜C4Bにより各コイルC1〜C4が構成されており、第1コイルC1A〜C4A及び第2コイルC1B〜C4Bの周回中心線Cが一致するように、同一の形状を有する第1導体パターン12a〜12dと第2導体パターン13a〜13dとが、周回中心線Cを中心に点対称に配置されている。そして、第1コイルC1A〜C4Aは、第1導体パターン12の一端部と絶縁体層L4〜L7を介して配置された他の第1導体パターン12の一端部とがスルーホール導体H2,H4,H6,H8によって直列に接続されて構成され、第2コイルC1B〜C4Bは、第2導体パターン13の一端部と絶縁体層L4〜L7を介して配置された他の第2導体パターン13の一端部とがスルーホール導体H3,H5,H7,H9によって直列に接続されて構成されている。
【0039】
したがって、積層コイル部品1では、第1コイルC1A〜C4A及び第2コイルC1B〜C4Bを構成する接続導体において、導通路が狭くなる(断面積が小さくなる)部分がほとんど存在しないため、直流抵抗の低減が図れる。また、積層コイル部品1では、絶縁体層L4〜L7の積層方向において第1導体パターン12a〜12d及び第2導体パターン13a〜13dの重なる部分が従来の積層コイル部品よりも少ないため、第1導体パターン12a〜12d及び第2導体パターン13a〜13dによる浮遊容量を低減できる。
【0040】
このような積層コイル部品1では、上述のように浮遊容量を低減できるため、以下のような特性を得ることができる。図5は、周波数とインピーダンスとの関係を示す図である。図5において、実線は従来の積層コイルの特性を示し、一点鎖線は本実施形態の積層コイルの特性を示している。図5に示すように、本実施形態の積層コイル部品1では、浮遊容量(C値)を低減することにより、従来の積層コイルに比べて、高周波帯域に特性をシフトさせることができる。
【0041】
[第2実施形態]
続いて、第2実施形態について説明する。図6は、第2実施形態に係る積層コイル部品の素体の展開斜視図であり、図7は、図6に示すコイル導体によって構成されるコイルを示す斜視図である。
【0042】
図6に示すように、素体20は、複数(ここでは14枚)の矩形状の絶縁体層L20〜L33を積層することによって構成されている。素体20の内部には、フェライトグリーンシート上に印刷された導体パターンが積層されることによって4つのコイルC11〜C14が構成されており、これらのコイルC11〜C14は、素体20の長手方向(端面2a,2bの対向方向、或いは積層方向に直交する方向)に並置されている。
【0043】
また、素体20の内部には、各コイルC11〜C14を積層方向に引き出して外部電極3,4(図1参照)と各コイルC11〜C14とを電気的に接続する引出部21,22と、各コイルC11〜C14と引出部21,22とをそれぞれ電気的に接続する第1接続導体パターン23及び第2接続導体パターン24とがそれぞれ配置されている。また、各導体同士は積層方向にスルーホール導体によって接続されている。各コイルC11〜C14は、それぞれ第1コイルC11A〜C14Aと、第2コイルC11B〜C14Bとから構成されている。各コイルC11〜C14の周回中心線Cは、積層方向に延びている。
【0044】
引出部22は、複数(ここでは2層)の絶縁体層L20,L21が積層されて構成されている。絶縁体層L20の表面には、引出導体25が形成されている。各引出導体25は、互いに所定の間隔を有した状態で長手方向に並設されており、外部電極3と電気的に接続されている。各引出導体25同士は、電気的に絶縁されている。
【0045】
絶縁体層L21の表面には、引出導体26が形成されている。各引出導体26は、互いに所定の間隔を有した状態で長手方向に並設されており、互いに電気的に絶縁されている。引出導体26は、絶縁体層L21を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H20と電気的に接続されている。引出導体26は、積層された状態でスルーホール導体H20を介して隣接する第1接続導体パターン23と電気的に接続されている。引出導体25と引出導体26とは、図示しないスルーホール導体によって電気的に接続されており、引出部22を構成している。
【0046】
絶縁体層L22の表面には、第1接続導体パターン23が形成されている。第1接続導体パターン23は、第1コイルC11A〜C14Aと第2コイルC11B〜C14Bを並列に接続する部分であり、直線状(I字状)に形成されている。各第1接続導体パターン23は、互いに所定の間隔を有した状態で長手方向に並設されており、互いに電気的に絶縁されている。第1接続導体パターン23の両端は、絶縁体層L22を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H21,H22と電気的に接続されている。第1接続導体パターン23は、積層された状態で各スルーホール導体H21,H22を介して隣接する第1導体パターン27aの一端及び第2導体パターン28aの一端と電気的に接続される。第1接続導体パターン23の中央部は、積層された状態でスルーホール導体H20と電気的に接続される領域となっている。この領域は、略円形を呈しており、導体パターンの幅よりも幅広に形成されている。以下、スルーホール導体と電気的に接続される領域は、同様の構成を有している。
【0047】
絶縁体層L23の表面には、第1導体パターン27a及び第2導体パターン28aが形成されている。第1導体パターン27aと第2導体パターン28aとの組は、互いに所定の間隔を有した状態で長手方向に並設されており、互いに電気的に絶縁されている。第1導体パターン27aは、第1コイルC11A〜C14Aを構成しており、絶縁体層L23上で略L字状に形成されている。第1導体パターン27aは、第1コイルC11A〜C14Aの略3/8ターンに相当する。第1導体パターン12aの一端は、積層された状態でスルーホール導体H21と電気的に接続される領域となっている。第1導体パターン27aの他端は、絶縁体層L23を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H23と電気的に接続されている。第1導体パターン27aは、積層された状態でスルーホール導体H23を介して隣接する第1導体パターン27bの他端と電気的に接続される。
【0048】
第2導体パターン28aは、第2コイルC11B〜C14Bを構成しており、絶縁体層L23上で略L字状に形成されている。第2導体パターン28aは、第2コイルC11B〜C14Bの略3/8ターンに相当する。第2導体パターン13aの一端は、積層された状態でスルーホール導体H22と電気的に接続される領域となっている。第2導体パターン28aの他端は、絶縁体層L23を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H24と電気的に接続されている。第2導体パターン28aは、積層された状態でスルーホール導体H24を介し隣接する第2導体パターン28bの他端と電気的に接続される。
【0049】
各第1導体パターン27aと各第2導体パターン28aとは、同一形状を有しており、絶縁体層L23上において、所定の間隔を有すると共に、コイルC11〜C14の周回中心線Cを中心に点対称に配置されている。具体的には、第1導体パターン27aの長辺部分と第2導体パターン28aの長辺部分とが対向して配置されており、第1導体パターン27aの短辺部分と第2導体パターン28aの短辺部分とが対向して配置されている。コイルC11,C13における第1導体パターン27aの長辺部分及び第2導体パターン28aの長辺部分は、絶縁体層L23の対向する一対の辺S1,S2に沿うように形成されており、第1導体パターン27aの短辺部分と第2導体パターン28aの短辺部分は、絶縁体層L23の対向する一対の辺S3,S4に沿うように配置されている。コイルC12,C14における第1導体パターン27aの長辺部分及び第2導体パターン28aの長辺部分は、絶縁体層L23の対向する一対の辺S3,S4に沿うように形成されており、第1導体パターン27aの短辺部分と第2導体パターン28aの短辺部分は、絶縁体層L23の対向する一対の辺S1,S2に沿うように配置されている。
【0050】
絶縁体層L24の表面には、第1導体パターン27b及び第2導体パターン28bが形成されている。第1導体パターン27bと第2導体パターン28bとの組は、互いに所定の間隔を有した状態で長手方向に並設されており、互いに電気的に絶縁されている。第1導体パターン27bは、第1コイルC11A〜C14Aを構成しており、絶縁体層L24上で略L字状に形成されている。第1導体パターン27bは、第1コイルC11A〜C14Aの略3/8ターンに相当する。第1導体パターン27bの一端は、絶縁体層L24を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H25と電気的に接続されている。第1導体パターン27bは、積層された状態でスルーホール導体H25を介して隣接する第1導体パターン27cの一端と電気的に接続されている。第1導体パターン27bの他端は、積層された状態でスルーホール導体H23と電気的に接続される領域となっている。
【0051】
第2導体パターン28bは、第2コイルC11B〜C14Bを構成しており、絶縁体層L24上で略L字状に形成されている。第2導体パターン28bは、第2コイルC11B〜C14Bの略3/8ターンに相当する。第2導体パターン28bの一端は、絶縁体層L24を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H26と電気的に接続されている。第2導体パターン28bは、積層された状態でスルーホール導体H26を介して隣接する第2導体パターン28cの一端と電気的に接続されている。第2導体パターン28bの他端は、積層された状態でスルーホール導体H24と電気的に接続される領域となっている。
【0052】
各第1導体パターン27bと各第2導体パターン28bとは、同一形状を有しており、絶縁体層L5上において、所定の間隔を有すると共に、コイルC11〜C14の周回中心線Cを中心に点対称に配置されている。コイルC11,C13における第1導体パターン27bの長辺部分及び第2導体パターン28bの長辺部分は、絶縁体層L24の対向する一対の辺S1,S2に沿うように形成されており、第1導体パターン27bの短辺部分と第2導体パターン28bの短辺部分は、絶縁体層L24の対向する一対の辺S3,S4に沿うように配置されている。コイルC12,C14における第1導体パターン27bの長辺部分及び第2導体パターン28bの長辺部分は、絶縁体層L24の対向する一対の辺S3,S4に沿うように形成されており、第1導体パターン27bの短辺部分と第2導体パターン28aの短辺部分は、絶縁体層L24の対向する一対の辺S1,S2に沿うように配置されている。
【0053】
絶縁体層L25の表面には、第1導体パターン27c及び第2導体パターン28cが形成されている。第1導体パターン27cと第2導体パターン28cとの組は、互いに所定の間隔を有した状態で長手方向に並設されており、互いに電気的に絶縁されている。第1導体パターン27cは、第1コイルC11A〜C14Aを構成しており、絶縁体層L25上で略L字状に形成されている。第1導体パターン27cは、第1コイルC11A〜C14Aの略3/8ターンに相当する。第1導体パターン27cの一端は、積層された状態でスルーホール導体H25と電気的に接続される領域となっている。第1導体パターン27cの他端は、絶縁体層L25を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H27と電気的に接続されている。第1導体パターン27cは、積層された状態でスルーホール導体H27を介して隣接する第1導体パターン27dの他端と電気的に接続されている。
【0054】
第2導体パターン28cは、第2コイルC11B〜C14Bを構成しており、絶縁体層L25上で略L字状に形成されている。第2導体パターン28cは、第2コイルC11B〜C14Bの略3/8ターンに相当する。第2導体パターン28cの一端は、積層された状態でスルーホール導体H26と電気的に接続される領域となっている。第2導体パターン28cの他端は、絶縁体層L25の厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H28と電気的に接続されている。第2導体パターン28cは、積層された状態でスルーホール導体H28を介して隣接する第2導体パターン28dの他端と電気的に接続されている。
【0055】
各第1導体パターン27cと各第2導体パターン28cとは、同一形状を有しており、絶縁体層L25上において、所定の間隔を有すると共に、コイルC11〜C14の周回中心線Cを中心に点対称に配置されている。コイルC11,C13における第1導体パターン27cの長辺部分及び第2導体パターン28cの長辺部分は、絶縁体層L25の対向する一対の辺S3,S4に沿うように形成されており、第1導体パターン27cの短辺部分と第2導体パターン28cの短辺部分は、絶縁体層L25の対向する一対の辺S1,S2に沿うように配置されている。コイルC12,14における第1導体パターン27cの長辺部分及び第2導体パターン28cの長辺部分は、絶縁体層L25の対向する一対の辺S1,S2に沿うように形成されており、第1導体パターン27cの短辺部分と第2導体パターン28cの短辺部分は、絶縁体層L25の対向する一対の辺S3,S4に沿うように配置されている。
【0056】
絶縁体層L26の表面には、第1導体パターン27d及び第2導体パターン28dが形成されている。第1導体パターン27dと第2導体パターン28dとの組は、互いに所定の間隔を有した状態で長手方向に並設されており、互いに電気的に絶縁されている。第1導体パターン27dは、第1コイルC11A〜C14Aを構成しており、絶縁体層L26上で略L字状に形成されている。第1導体パターン27dは、第1コイルC11A〜C14Aの略3/8ターンに相当する。第1導体パターン27dの一端は、絶縁体層L26を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H29と電気的に接続されている。第1導体パターン27dの他端は、積層された状態でスルーホール導体H29を介して隣接する第1導体パターン27eの一端と電気的に接続されている。第1導体パターン27dの他端は、積層された状態でスルーホール導体H27と電気的に接続される領域となっている。
【0057】
第2導体パターン28dは、第2コイルC11B〜C14Bを構成しており、絶縁体層L26上で略L字状に形成されている。第2導体パターン28dは、第2コイルC11B〜C14Bの略3/8ターンに相当する。第2導体パターン28dの一端は、絶縁体層L26を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H30と電気的に接続されている。第2導体パターン28dは、積層された状態でスルーホール導体H30を介して隣接する第2導体パターン28eの一端と電気的に接続されている。第2導体パターン28dの他端は、積層された状態でスルーホール導体H28と電気的に接続される領域となっている。
【0058】
各第1導体パターン27dと各第2導体パターン28dとは、同一形状を有しており、絶縁体層L26上において、所定の間隔を有すると共に、コイルC11〜C14の周回中心線Cを中心に点対称に配置されている。コイルC11,C13における第1導体パターン27dの長辺部分及び第2導体パターン28dの長辺部分は、絶縁体層L26の対向する一対の辺S3,S4に沿うように形成されており、第1導体パターン27dの短辺部分と第2導体パターン28dの短辺部分は、絶縁体層L26の対向する一対の辺S1,S2に沿うように配置されている。コイルC12,14における第1導体パターン27dの長辺部分及び第2導体パターン28dの長辺部分は、絶縁体層L26の対向する一対の辺S1,S2に沿うように形成されており、第1導体パターン27dの短辺部分と第2導体パターン28dの短辺部分は、絶縁体層L26の対向する一対の辺S3,S4に沿うように配置されている。
【0059】
絶縁体層L27の表面には、第1導体パターン27e及び第2導体パターン28eが形成されており、第1導体パターン27e及び第2導体パターン28eは、第1導体パターン27a及び第2導体パターン28aと同様の構成を有している。絶縁体層L28の表面には、第1導体パターン27f及び第2導体パターン28fが形成されており、第1導体パターン27f及び第2導体パターン28fは、第1導体パターン27b及び第2導体パターン28bと同様の構成を有している。絶縁体層L29の表面には、第1導体パターン27g及び第2導体パターン28gが形成されており、第1導体パターン27g及び第2導体パターン28gは、第1導体パターン27c及び第2導体パターン28cと同様の構成を有している。絶縁体層L30の表面には、第1導体パターン27h及び第2導体パターン28hが形成されており、第1導体パターン27h及び第2導体パターン28hは、第1導体パターン27d及び第2導体パターン28dと同様の構成を有している。
【0060】
第1導体パターン27eと第1導体パターン28fとは、スルーホール導体H31によって電気的に接続されており、第2導体パターン28eと第2導体パターン28fとは、スルーホール導体H32によって電気的に接続されている。第1導体パターン27fと第1導体パターン27gとは、スルーホール導体H33によって電気的に接続されており、第2導体パターン28fと第2導体パターン28gとは、スルーホール導体H34によって電気的に接続されている。第1導体パターン27gと第1導体パターン27hとは、スルーホール導体H35によって電気的に接続されており、第2導体パターン28gと第2導体パターン28hとは、スルーホール導体H36によって電気的に接続されている。
【0061】
絶縁体層L31の表面には、第2接続導体パターン24が形成されている。第2接続導体パターン24は、第1コイルC11A〜C14Aと第2コイルC11B〜C14Bを並列に接続する部分であり、直線状に形成されている。各第2接続導体パターン24は、互いに所定の間隔を有した状態で長手方向に並設されており、互いに電気的に絶縁されている。第2接続導体パターン24の両端は、積層された状態で、第1導体パターン27hの一端に形成されたスルーホール導体H37、及び第2導体パターン28hの一端に形成されたスルーホール導体H38と電気的に接続される領域となっている。第2接続導体パターン24の中央部は、絶縁体層L31を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H39と電気的に接続されている。第2接続導体パターン24は、積層された状態でスルーホール導体H39を介して隣接する引出導体29と電気的に接続される。
【0062】
引出部22は、複数(ここでは2層)の絶縁体層L32,L33が積層されて構成されている。絶縁体層L32の表面には、引出導体29が形成されている。引出導体29は、積層された状態でスルーホール導体H39と電気的に接続される領域となっている。各引出導体29は、互いに所定の間隔を有した状態で長手方向に並設されており、互いに電気的に絶縁されている。
【0063】
絶縁体層L33の表面には、引出導体30が形成されている。引出導体30は、互いに所定の間隔を有した状態で長手方向に並設されており、外部電極4と電気的に接続されている。各引出導体30同士は、電気的に絶縁されている。引出導体29と引出導体30とは、図示しないスルーホール導体によって電気的に接続されており、引出部22を構成している。
【0064】
上記絶縁体層L20〜L33が積層されることにより、第1導体パターン27a〜27hが直列に接続されると共に、第2導体パターン28a〜28hが直列に接続され、素体20の内部にコイルC11〜C14(第1コイルC11A〜C14A及び第2コイルC11B〜C14B)を備えるコイル部31が形成される。図7に示すように、コイルC11〜C14は、第1コイルC11A〜C14Aと、第2コイルC11B〜C14Bとにより構成されている。第1コイルC11A〜C14A及び第2コイルC11B〜C14Bは、第1接続導体パターン23及び第2接続導体パターン24により、並列に接続されている。第1コイルC11A〜C14A及び第2コイルC11B〜C14Bは、螺旋状をなして互いに交差しており、それぞれの周回中心線が一致している。これにより、コイルC11〜C14は、周回中心線Cを中心に螺旋状をなしている。スルーホール導体H20,H39の中心軸線は、周回中心線Cと一致している。
【0065】
図8は、図6に示す絶縁体層を上から見た図である。図8に示すように、例えば絶縁体層L24上において、各コイルC11〜C14を構成する第1導体パターン27b及び第2導体パターン28bは、それぞれ所定の距離を有して対向配置されており、第1導体パターン27bと第2導体パターン28bとの間には、離間部分Dが形成されている。そして、コイル部31において、コイルC12はコイルC11に対して周回中心線Cを中心に90°回転して配置されており、コイルC13はコイルC12に対して周回中心線Cを中心に90°回転して配置されており、コイルC14はコイルC12に対して周回中心線Cを中心に90°回転して配置されている。
【0066】
このような構成により、隣接するコイルC11とコイルC12とでは、素体20の長手方向において第2導体パターン28bと離間部分Dとが対向し、コイルC2とコイルC3とでは、素体2の長手方向において離間部分Dと第1導体パターン27bとが対向し、コイルC3とコイルC4とでは、素体2の長手方向において第2導体パターン28bと離間部分Dとが対向している。
【0067】
以上説明したように、素体20を備える積層コイル部品では、絶縁体層L23〜L30上において第1導体パターン27a〜27hと第2導体パターン28a〜28hとの間に離間部分Dが形成されており、隣接するコイルC11〜C14において離間部分Dと第1導体パターン27a〜27h又は第2導体パターン28a〜28hとが対向している。そのため、隣接するコイルC11〜C14において第1導体パターン27a〜27h及び第2導体パターン28a〜28hの辺同士が対向していないため、これら辺同士による浮遊容量の発生を抑制でき、浮遊容量を低減できる。
【0068】
また、この積層コイル部品では、並列に接続された第1コイルC11A〜C14A及び第2コイルC11B〜C14Bにより各コイルC11〜C14が構成されており、第1コイルC11A〜C14A及び第2コイルC11B〜C14Bの周回中心線Cが一致するように、同一の形状を有する第1導体パターン27a〜27hと第2導体パターン28a〜28hとが、周回中心線Cを中心に点対称に配置されている。そして、第1コイルC11A〜C14Aは、第1導体パターン27の一端部と絶縁体層L23〜L30を介して配置された他の第1導体パターン27の一端部とがスルーホール導体H23,H25,H27,H29,H31,H33,H35によって直列に接続されて構成され、第2コイルC11B〜C14Bは、第2導体パターン28の一端部と絶縁体層L23〜L30を介して配置された他の第2導体パターン28の一端部とがスルーホール導体H24,H26,H28,H30,H32,H34,H36によって直列に接続されて構成されている。
【0069】
したがって、この積層コイル部品では、第1コイルC11A〜C14A及び第2コイルC11B〜C14Bを構成する接続導体において、導通路が狭くなる(断面積が小さくなる)部分がほとんど存在しないため、直流抵抗の低減が図れる。
【0070】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、コイルは、図9に示す構成であってもよい。図9は、変形例に係るコイルを示す斜視図である。図9に示すように、コイル60は、第1導体パターン61a〜61hから構成される第1コイル60A、第2導体パターン62a〜62hから構成される第2コイル60B、第3導体パターン63a〜63hから構成される第3コイル60C及び第4導体パターン64a〜64hから構成される第4コイル60Dを含んで構成されている。第1導体パターン61a〜61h及び第2導体パターン62a〜62hは、絶縁体層上において周回中心線Cを中心に点対称をなしており、第3導体パターン63a〜63h及び第4導体パターン64a〜64hは、絶縁体層上において周回中心線Cを中心に点対称をなしている。各導体パターンは、スルーホール導体によって電気的に接続されている。
【0071】
また、上記実施形態では、第1引出導体パターン8,24及び第2引出導体パターン9,25によって第1コイルC1A〜C4A,C11A〜C14A及び第2コイルC1B〜C4B,C11B〜C14Bを接続して引出部6,7,22,23に接続しているが、第1コイルC1A〜C4A,C11A〜C14及び第2コイルC1B〜C4B,C11B〜C14Bが外部電極3,4に直接接続される構成であってもよい。
【0072】
また、上記実施形態の積層コイル部品では、導体パターン及びスルーホール導体が形成された絶縁体層を複数積層して形成しているが、積層コイル部品は、絶縁体グリーンシートの上に直接導体ペーストと絶縁体ペーストとを交互に印刷して積層する印刷工法などによって形成されてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1…積層コイル部品、2,20…素体、2a,2b…端面、2c〜2f…側面、3,4…外部電極、12a〜12d,27a〜27h,61a〜61h…第1導体パターン(第1コイル導体)、13a〜13d,28a〜28h,61a〜61h…第2導体パターン(第2コイル導体)、C…周回中心線、C1〜C4,C11〜C14,60…コイル、C1A〜C4A,C11A〜C14A,60A…第1コイル、C1B〜C4B,C11B〜C14B,60B…第2コイル、L1〜L10,L20〜L33…絶縁体層。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9