(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光共振器の導波路の一周分の光学長L1が、前記レーザ媒質部材の導波路の一周分の光学長L2の整数倍(L1=m×L2:mは正の整数)とされていることを特徴とする請求項1に記載の光ジャイロ。
前記検出用導波路には、前記レーザ媒質部材にて生成される光のうち、検出に用いる光のみを伝搬させる光フィルタが形成されていることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の光ジャイロ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、半導体レーザを光源とするため、共振器長の長い光ジャイロでは、レーザ光を単一モードとすることが困難である。また、半導体レーザがもつ光吸収損失のため、共振器のQ値を高める(レーザ光の半値幅を狭くする)ことが困難である。これら理由により、高精度な光ジャイロを実現することができない。
【0008】
特許文献2では、希土類の添加濃度に限界があるため、共振させる(レーザ発振させる)ためには共振器長を長くしなければならず、共振器、ひいては光ジャイロの体格を小型化するのが困難である。また、共振器長が長いため、半導体レーザ同様、レーザ光を単一モードとすることが困難であり、高精度な光ジャイロを実現することができない。
【0009】
一方、特許文献3では、非線形光学効果(誘導ブルリアン散乱)を用いるため、これによりレーザ光を単一モードとし、高精度な光ジャイロを実現することが可能である。しかしながら、下記課題を生じる。
【0010】
先ず、特許文献3に示す構成では、共振器内で非線形光学効果(誘導ブルリアン散乱)を起こすようにしている。ここで、光ジャイロのように共振器長が長い場合、コアの屈折率を高くし、これにより光の閉じ込め効果を高めようとすると、共振器において光の散乱による損失が高くなる。このため、レーザ発振させるために、強度の高い光を共振器に入射させなければならず、励起光源を小型化するのが困難である。また、光の散乱によりQ値が低く(半値幅が広く)なるため、検出精度が低下する。
【0011】
そこで、一般には、共振器における光散乱の損失を低減するように設計する。しかしながら、共振器において、コアの屈折率を低くし、光の散乱を抑制するようにすると、その反面、光の閉じ込め効果が弱くなり、導波路のコア断面積を大きくしなければならない。一方、共振器内で非線形光学効果(誘導ブルリアン散乱)を起こすには、非線形光学効果を起こさない場合に較べて、パワー密度を高めなければならない。このため、コア断面積の増大した光共振器で非線形光学効果を起こすには、より強度の高い光を共振器に入射させなければならず、励起光源を小型化するのが困難である。
【0012】
また、特許文献3では、非線形光学効果として、そもそも誘導ブルリアン散乱を用いる。誘導ブルリアン散乱を起こすには、他の非線形光学効果に較べて強度の高い光を共振器に入射させなければならず、励起光源を小型化するのが困難である。
【0013】
本発明は上記問題点に鑑み、小型で高精度な光ジャイロを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成する為に請求項1に記載の光ジャイロは、
励起光を生成する励起光源と、
リング形状の導波路を有する光共振器と、
光共振器よりも屈折率の高いレーザ媒質を用いて形成され、光共振器よりも光学長の短いリング形状の導波路を有し、励起光を受けて非線形光学効果により励起光と異なる波長の光を生成するとともに、生成した光を光共振器に導くレーザ媒質部材と、を備えるレーザ発振器と、
レーザ媒質部材で生成されて光共振器及びレーザ媒質部材の導波路で共振し、光学的に結合された光共振器及びレーザ媒質部材の導波路内を互いに逆方向に伝搬する光を、重ね合わせるために光共振器の導波路からそれぞれ引き出す検出用導波路と、を同一の基板上に備えることを特徴とする。
【0015】
本発明では、励起光を受けてレーザ媒質部材で生じる光が、光学的に結合された光共振器及びレーザ媒質部材の導波路内を、該導波路に沿って周回する。このため、周回するごとに光がレーザ媒質部材の導波路を通過し、これにより効率よくレーザ発振することができる。
【0016】
また、レーザ媒質部材で生じる光は、非線形光学効果により、励起光と周波数(波長)が異なる。また、複数の光が生成される場合には、互いに周波数(波長)が異なる。このため、半導体レーザなどのように多モードとはならず、複数の光が生成されても分光が容易である。したがって、高精度な光ジャイロを実現することができる。
【0017】
また、光共振器とは別部材としてレーザ媒質部材を有しており、このレーザ媒質部材は、光共振器よりも屈折率の高いレーザ媒質を用いて、光共振器よりも短い光学長で形成されている。このため、レーザ媒質部材よりも光学長の長い光共振器において、光の散乱による損失を低減することができる。また、励起光を受けて光を生成するレーザ媒質部材において、光の閉じ込め効果を高めて導波路のコア断面積を小さくすることができるため、励起光の強度が必要な非線形光学効果を用いながらも、励起光源の体格の増大を抑制することができる。すなわち、励起光源、ひいては光ジャイロの体格を小型化することができる。
【0018】
なお、レーザ発振器を構成する励起光源、光共振器、及びレーザ媒質部材と、検出用導波路とが、同一基板上に集積されるので、これによっても光ジャイロの体格を小型化することができる。以上から、本発明によれば、小型で高精度な光ジャイロを提供することができる。
【0019】
請求項2に記載のように、
励起光の波長をλp、光共振器の導波路の一周分の光学長をL1、レーザ媒質部材の導波路の一周分の光学長をL2、
レーザ媒質部材で生成される、励起光と異なる波長の光の所定波長をλsとすると、光学長L1,L2が下記数式1の関係を満たすようにしても良い。なお、m1,m2,m3,m4は正の整数である。
(式1)L1≠m1×λp、L2=m2×λp、L1=m3×λs、L2=m4×λs
【0020】
請求項2に記載の構成とすると、励起光の波長λpが、光共振器の導波路の共振モードとずれるため、光検出器に励起光が入射するのを抑制することができる。このため、励起光をカットするための光フィルタを不要とすることができる。一方、請求項3に記載の構成とすると、レーザ媒質部材の導波路の共振モードが、光共振器の導波路の共振モードと完全に一致するため、レーザ発振器の設計が容易となる。
【0021】
請求項4に記載のように、非線形光学効果は、パラメトリック増幅及びラマン増幅のいずれかであることが好ましい。
【0022】
非線形光学効果として誘導ブルリアン散乱を起こすには、パラメトリック増幅及びラマン増幅のいずれかを起こす場合に較べて、強度の高い光を共振器に入射させなければならない。したがって、本発明によれば、励起光源、ひいては光ジャイロを、より小型化することができる。
【0023】
具体的には、請求項5に記載のように、
光共振器の導波路は、二酸化シリコンを用いて形成され、
レーザ媒質部材の導波路は、シリコン又は窒化シリコンを用いて形成されると良い。
【0024】
これによれば、導波路の長い光検出器において、散乱による損失を低減しつつ、非線形光学効果により光を生成するレーザ媒質部材において、光閉じ込め効果を高めてコアの断面積を小さくし、これにより励起光源を小型化することができる。
【0025】
請求項6に記載のように、
検出用導波路には、レーザ媒質部材にて生成される光のうち、検出に用いる光のみを伝搬させる光フィルタが形成されると良い。
【0026】
これによれば検出光以外の光が検出用導波路に入射される場合にも、検出光以外の光を光フィルタによりカットして、光ジャイロの精度を高めることができる。また、光フィルタも基板に集積するため、光フィルタを含む光ジャイロを小型化することができる。なお、光フィルタは、検出用導波路と光検出器との間に設けても良い。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下に示す各実施形態において、共通乃至関連する要素には同一の符号を付与するものとする。
【0036】
(第1実施形態)
図1に示すように、光ジャイロ10は、要部として、基板11の一面上に配置されたレーザ発振器12及び検出用導波路13を有する。また、レーザ発振器12として、励起光源20、レーザ媒質部材21、及び光共振器22を有する。
図1に示す例では、さらに、励起光源20とレーザ媒質部材21を光学的に連結する導波路23、検出用導波路13に形成された光フィルタ33、基板11と離れて配置された光検出器40を有する。
【0037】
先ずレーザ発振器12について説明する。
【0038】
励起光源20は、所定波長の励起光を生成して出力するものであり、本実施形態ではその出力対象を光共振器22ではなく、レーザ媒質部材21とする。レーザ媒質部材21の非線形光学効果により、所望波長のレーザ光(光検出器40で検出する光)が生成されるべく、所定波長の励起光を生じる構成が選択される。
【0039】
本実施形態では、励起光源20として、半導体レーザを採用する。また、後述するレーザ光CW,CCWをそれぞれ形成すべく、2つの励起光源20を備える。2つの励起光源20は、リング形状の光共振器22の内側において、励起光の出力面が互いに対向するように配置される。
【0040】
レーザ発振器12は、基板11の一面上に配置され、各励起光の出力方向に沿って直線状に延びる導波路23を有しており、該導波路23の一端が一方の励起光源20の出力面と光学的に結合され、他端が他方の励起光弦20の出力面と光学的に結合されている。そして、導波路23の長手方向中央付近にレーザ媒質部材21が光学的に結合されている。このため、各励起光源20から出力される励起光は、それぞれ導波路23を通じてレーザ媒質部材21に入射される。なお、導波路23は、後述する光共振器22の導波路(コア及びクラッド)と同じ構成となっている。
【0041】
なお、「光学的に結合されている」とは、隣り合う2つの導波路のうち、一方の導波路のコアからしみ出す光(エバネッセント波)が伝搬されるように、他方の導波路が結合された状態を指す。この状態としては、2つの導波路が接していても良いし、エバネッセント波が伝搬される範囲で間に僅かな隙間を有しても良い。この点は、以下に示す「光学的に結合されている」との記載においても同じである。
【0042】
レーザ媒質部材21は、光共振器22よりも屈折率の高いレーザ媒質を用いて形成され、光共振器22よりも光路長の短いリング形状の導波路を有する。そして、励起光源20が出力した励起光を受けて、非線形光学効果により励起光と異なる波長の光を生成するとともに、生成した光を光共振器22に導くものである。
【0043】
本実施形態では、レーザ媒質部材21に励起光が入射されると、非線形光学効果により、励起光とは波長が異なり、且つ、互いに波長が異なる2つの光が生成される。このうち一方の光を角速度の検出に用いる。なお、非線形光学効果とは、パラメトリック増幅、ラマン増幅、誘導ブルリアン散乱のいずれかである。好ましくは、パラメトリック増幅及びラマン増幅のいずれかとすると良い。
【0044】
レーザ媒質部材21の一周分の光学長は、角速度の検出に用いる光(生成した光)が共振するように設定されている。また、角速度の検出に用いる光がレーザ発振するように、レーザ媒質部材21の導波路は、光共振器22の導波路と光学的に結合されている。このため、角速度の検出に用いる光は、光学的に結合されたこれら導波路を周回する。また、1周ごとにレーザ媒質部材21を通過するようになっている。
【0045】
具体的には、基板11として単結晶シリコンを採用する。導波路は、二酸化シリコンからなるクラッド21aと、クラッド21a及び後述する光共振器22のコア22bよりも屈折率の高い材料(例えばシリコンや窒化シリコン)からなるコア21bによって構成されている。このコア21bを構成する材料が、光共振器22(コア22b)よりも屈折率の高いレーザ媒質に相当する。
【0046】
また、
図2に例示するレーザ媒質部材21の導波路のように、コア21bは断面矩形状とされ、矩形のコア21bを取り囲むようにクラッド21aが配置されている。すなわち、コア21bにおける基板11側の下面、該下面と反対の上面、及び両側面に、クラッド21aが接している。また、導波路は所定形状にパターニングされており、基板11の一面に沿って延びたリング形状となっている。このリング形状としては、円形状、多角形状などを採用することができる。
【0047】
本実施形態では、
図1に示すように、レーザ媒質部材21の導波路が円形(真円)のリング状となっている。また、リング形状の光共振器22の内側に、レーザ媒質部材21が配置されている。そして、リング形状のレーザ媒質部材21は、導波路23との結合部分と対向する部分(180度ずれた部分)で、リング形状の光共振器22の内周の一部に、光学的に結合されている。
【0048】
光共振器22は、導波路により構成されており、レーザ媒質部材21にて生成した光を周回させるべくリング形状(閉じた形状)を有している。また、その光学長は、レーザ媒質部材21にて生成した光(角速度の検出に用いる光)が共振するように設定されている。
【0049】
具体的には、光共振器22の導波路が、二酸化シリコンからなるクラッド22aと、クラッド22aよりも屈折率の高い材料(例えばリンドープ二酸化シリコン)からなるコア22bによって構成されている。また、
図3に例示する光共振器22の導波路のように、コア22bは断面矩形状とされ、矩形のコア22bを取り囲むようにクラッド22aが配置されている。すなわち、コア22bにおける基板11側の下面、該下面と反対の上面、及び両側面に、クラッド22aが接している。
【0050】
また、導波路は所定形状にパターニングされており、基板11の一面に沿って延びたリング形状となっている。このリング形状としては、円形状、多角形状などを採用することができる。本実施形態では、
図1に示すように、光共振器22の導波路も、円形(真円)のリング状となっている。
【0051】
一方、検出用導波路13は、レーザ媒質部材21で生成されて光共振器22及びレーザ媒質部材21の導波路で共振し、光学的に結合された光共振器22及びレーザ媒質部材21の導波路内を互いに逆方向に伝搬する光CW,CCWを、重ね合わせるために光共振器22からそれぞれ引き出すものである。この検出用導波路13は、光共振器22を構成する導波路と光学的に結合されている。また、その構成(コア及びクラッド)は、光共振器22の導波路と同じとなっている。
【0052】
本実施形態では、検出用導波路13が略U字状となっており、U字をなす一方の脚部30の中央付近外側に光共振器22の導波路が光学的に結合されている。また、検出用導波路13の脚部30のうち、光共振器22の導波路との結合部分よりも先端側の部分30aの一部と、検出用導波路13の他方の脚部31の一部とが、互いに平行且つ近接して配置され、4ポートの方向性結合器32を構成している。
【0053】
このため、本実施形態では、検出用導波路13の脚部30における先端側の部分30aを伝搬する光CWと、検出用導波路13の脚部30における先端側の部分30aを除く部分と脚部31を伝搬する光CCWが、方向性結合器32で重ね合わせせられてビート信号(干渉信号)となる。このビート信号は、検出用導波路13の脚部30から出力され、光検出器40にて検出される。
【0054】
なお、
図1に示すように、検出用導波路13の脚部30における先端側の部分30aであって方向性結合器32よりも先端側の部分に、光フィルタ33が設けられている。本実施形態では、この光フィルタ33により、励起光や、レーザ媒質部材21にて生成したものの、角速度の検出に不要な光をカットすることができる。
【0055】
このように構成される光ジャイロ10では、各励起光源20から同時に励起光が出力され、この励起光は導波路23を通じてレーザ媒質部材21に入射される。なお。
図1において紙面右側の励起光源20から出力される励起光により、時計回りの光CWが生成される。また、紙面左側の励起光源から出力される励起光により、反時計回りの光CCWが生成される。
【0056】
レーザ媒質部材21に励起光が入射すると、非線形光学効果により、レーザ媒質部材21の導波路内に励起光とは波長の異なる光が生成される。本実施形態では、パラメトリック増幅により、互いに波長の異なる2つの光が生成される。この生成された光は、レーザ媒質部材21の導波路から、光共振器22の導波路に入射され、
図4に示すように、レーザ媒質部材21及び光共振器22の導波路を周回する。このとき、生成された光は、レーザ媒質部材21及び光共振器22の導波路で共振する。また、光共振器22を1周するごとにレーザ媒質部材21も通過(周回)するため、レーザ発振する。なお、
図4では、互いに逆方向の伝搬する光として、時計回りで伝搬する光CWを実線で示し、反時計回りで伝搬する光CCWを破線で示している。
【0057】
レーザ発振してなる光CW,CCWは、光共振器22から検出用導波路13に入射される。そして検出用導波路13に設けた方向性結合器32によって重なり合い、ビート信号が生成される。このビート信号は、検出用導波路13から出力され、光検出器40にて検出される。光CW,CCWは、光ジャイロ10が回転するとサニャック効果を受けるので、光CW,CCWに波長のずれが生じる。この波長のずれに応じてビート信号の強度が経時的に変化するため、この変化から角速度を検出することができる。
【0058】
次に、本実施形態に係る光ジャイロ10の特徴部分について説明する。
【0059】
先ず本実施形態では、励起光を受けてレーザ媒質部材21で生じる光が、光学的に結合された光共振器22及びレーザ媒質部材21の導波路内を、該導波路に沿って周回する。このため、周回するごとに光がレーザ媒質を通過し、これにより効率よくレーザ発振することができる。
【0060】
また、レーザ媒質部材21で生じる光は、非線形光学効果により、励起光と周波数(波長)が異なる。また、生成される2つの光は、容易に分光可能な程度に周波数(波長)が異なる。このため、半導体レーザなどのように多モードの発振状態とはならず、複数の光が生成されても分光が容易である。したがって、高精度な光ジャイロ10を実現することができる。
【0061】
また、光共振器22とは別部材としてレーザ媒質部材21を有しており、このレーザ媒質部材21は、光共振器22よりも屈折率の高いレーザ媒質を用いて形成されている。換言すれば、光共振器22を構成する材料として、レーザ媒質部材21よりも屈折率の低いものを用いている。具体的には、光共振器22の導波路が、二酸化シリコンを用いて形成され、レーザ媒質部材21の導波路は、シリコン又は窒化シリコンを用い、光共振器22よりも短い光学長で形成されている。
【0062】
このため、光学長の長い光共振器22において、光の散乱による損失を低減することができる。また、光を生成するレーザ媒質部材21において、光の閉じ込め効果を高めて導波路のコア断面積を小さくすることができる。このため、励起光の強度が必要な非線形光学効果を用いながらも、励起光源20の体格の増大を抑制することができる。すなわち、励起光源20、ひいては光ジャイロ10の体格を小型化することができる。また、光学長の長い光共振器22において、光の散乱を抑制するため、Q値を高く(半値幅を狭く)する、すなわち検出精度を向上することもできる。
【0063】
また、レーザ発振器12を構成する励起光源20、光共振器22、及びレーザ媒質部材21と、検出用導波路13とが、同一の基板11上に集積されるので、これによっても光ジャイロ10の体格を小型化することができる。以上から、本実施形態によれば、小型で高精度な光ジャイロ10を提供することができる。
【0064】
特に本実施形態では、非線形光学効果として、パラメトリック増幅を用いる。非線形光学効果として誘導ブルリアン散乱を起こすには、パラメトリック増幅及びラマン増幅のいずれかを起こす場合に較べて、強度の高い光を光共振器22に入射させなければならない。したがって、本実施形態によれば、励起光源20、ひいては光ジャイロ10を、より小型化することができる。なお、パラメトリック増幅の代わりにラマン増幅を用いても同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0065】
また、本実施形態では、励起光の波長をλp、光共振器22の導波路の一周分の光学長をL1、レーザ媒質部材21の導波路の一周分の光学長をL2(L2<L1)、波長λpと異なる所定波長をλsとすると、光学長L1,L2が、下記数式1の関係を満たすように構成されている。なお、m1,m2,m3,m4は正の整数である。
(数2)L1≠m1×λp、L2=m2×λp、L1=m3×λs、L2=m4×λs
上記数式2の関係を
図5に示す。数式2の関係を満たすと、
図5に示すように、励起光の波長λpが光共振器22の導波路の共振モードとずれる(何れのモードとも一致しない)こととなる。したがって、レーザ媒質部材21から光共振器22に励起光が入射するのを抑制することができる。すなわち、励起光をカットする光フィルタ33を不要とすることができる。なお、レーザ媒質部材21の共振モードと、光共振器22の共振モードは所定波長λsで一致するため、レーザ媒質部材21で生成された所定波長λsの光を、光学的に結合された光共振器22及びレーザ媒質部材21の導波路で共振させることができる。
【0066】
また、本実施形態では、検出用導波路13に、ビート信号以外の光をカットし、ビート信号(角速度の検出に用いる検出光)のみを伝搬させる光フィルタ33が形成される。このため、本実施形態に示すように、ビート信号(検出光)以外の光が検出用導波路13に入射される場合にも、光ジャイロ10の精度を高めることができる。また、光フィルタ33も基板11上に集積するため、光フィルタ33を含めた光ジャイロ10の体格を小型化することができる。なお、光フィルタ33は、検出用導波路13と光検出器40との間に設けることもできる。
【0067】
(変形例)
本実施形態では、上記数式2の関係を満たすように、光共振器22の導波路の一周分の光学長L1、レーザ媒質部材21の導波路の一周分の光学長L2が設定される例を示した。しかしながら、光学長L1,L2が、下記数式3の関係を満たすように構成されても良い。なお、mは正の整数である。
(数3)L1=m×L2
上記数式3の関係を
図6に示す。数式3の関係を満たす(光学長L1を、光学長L2の整数倍とする)と、
図6に示すように、レーザ媒質部材21の導波路の共振モードが、光共振器22の導波路の共振モードと全て一致することとなる。このため、レーザ発振器12の設計が容易となる。
【0068】
(第2実施形態)
第1実施形態では、光共振器22とは別部材として、非線形光学効果を生じるレーザ媒質(レーザ媒質部材21)を設ける例を示した。これに対し、本実施形態では、光共振器22がレーザ媒質を用いて形成されており、励起光を受けて、非線形光学効果としてのパラメトリック増幅又はラマン増幅により、励起光と異なる波長の光を生成する。そして、生成された光は、光共振器のリング形状の導波路を周回することでレーザ発振する点を特徴とする。
【0069】
その一例を
図7に示す。
図7では、光ジャイロ10がレーザ媒質部材21を有しておらず、励起光源20と結合された導波路23が光共振器22と光学的に結合されている。光共振器22における導波路23との結合部分は、光共振器22における検出用導波路13との結合部分の対向位置(180度ずれた位置)となっている。また、励起光源20及び導波路23は、光共振器22の導波路の外側に位置している。
【0070】
また、光共振器22の導波路は、二酸化シリコンからなるクラッド22aと、クラッド22aよりも屈折率の高い材料(リンドープ二酸化シリコン、窒化シリコン、シリコンなど)からなるコア22bによって構成されている。それ以外の構成は、第1実施形態と同じである。
【0071】
次に、本実施形態に係る光ジャイロ10の特徴部分について説明する。
【0072】
本実施形態においても、レーザ媒質の非線形光学効果(パラメトリック増幅又はラマン増幅)により生成される2つの光は、励起光と周波数(波長)が異なる。また、生成される2つの光は、互いに周波数(波長)が異なる。このため、半導体レーザなどのように多モードとはならず、2つの光の分光が容易である。したがって、高精度な光ジャイロを実現することができる。
【0073】
また、非線形光学効果として誘導ブルリアン散乱を起こすには、パラメトリック増幅及びラマン増幅のいずれかを起こす場合に較べて、強度の高い光を光共振器22に入射させなければならない。これに対し、本実施形態では、非線形光学効果としてパラメトリック増幅及びラマン増幅のいずれかを利用するので、励起光源20、ひいては光ジャイロ10を小型化することができる。また、励起光源20、光共振器22、検出用導波路13を、同一の基板11上に集積させるので、これによっても光ジャイロ10の体格を小型化することができる。
【0074】
以上から、本実施形態によれば、小型で高精度な光ジャイロ10を提供することができる。
【0075】
また、本実施形態では、光共振器22とは別部材としてレーザ媒質部材21を有さないため、光共振器22での共振のみを考慮すれば良く、設計が容易である。
【0076】
また、本実施形態では、光共振器22の導波路が、シリコンや窒化シリコンに較べて屈折率の低い二酸化シリコンを用いて形成されるため、導波路の長い光共振器22において、光の散乱による損失を低減することができる。また、光学長の長い光共振器22において、光の散乱を抑制するため、Q値を高く(半値幅を狭く)する、すなわち検出精度を向上することもできる。
【0077】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0078】
本実施形態では、励起光がレーザ媒質(レーザ媒質部材21)に入射されると、非線形光学効果(パラメトリック増幅、ラマン増幅、誘導ブルリアン増幅のいずれか)により2つの光が生成される例を示した。しかしながら、非線形光学効果として、高調波発生の効果を用いることもできる。この場合、励起光が入射されると、周波数2倍の第2高調波(SHG)や、周波数3倍の第3高長波(THG)が生成される。この場合も、第1実施形態及び第2実施形態に示す構成と同等の効果を奏することができる。
【0079】
なお、高調波発生の場合には、レーザ媒質(レーザ媒質部材21)として、例えば非線形結晶であるKTP(KTiOPO
4)、LBO(LiB
3O
5)、BiBO(BiB
3O
6)、PPLTP(Periodically Poled KTP)などを用いて、導波路のコアを構成すれば良い。
【0080】
本実施形態では、光検出器40を基板11と離れた位置に配置する例を示した。しかしながら、光検出器40を基板11における光共振器22などの配置面上に設け、光検出器40を一体的に含む光ジャイロ10としても良い。
【0081】
第1実施形態では、リング形状を有する光共振器22の導波路の内側に、励起光源20、レーザ媒質部材21、導波路23が配置される例を示した。しかしながら、光共振器22の導波路の外側に、励起光源20、レーザ媒質部材21、導波路23が配置された構成としても良い。また第2実施形態では、リング形状を有する光共振器22の導波路の外側に、励起光源20、導波路23が配置される例を示した。しかしながら、光共振器22の導波路の内側に、励起光源20、導波路23が配置された構成としても良い。
【0082】
また、本実施形態では、検出用導波路13が、リング形状を有する光共振器22の導波路の外側に配置される例を示した。しかしながら、光共振器22の導波路の内側に配置された構成としても良い。
【0083】
本実施形態では、検出用導波路13の一部に方向性結合器32を設け、光CW,CCWを重ね合わせたビート信号を、検出用導波路13から出力する例を示した。しかしながら、検出用導波路13としては、上記例に限定されるものではない。光CW,CCWを重ね合わせるために光共振器22の導波路から、光CW,CCWをそれぞれ引き出すものであれば良い。例えば、2本の脚部の一方から光CWを出力し、他方から光CCWを出力し、出力した光CW,CCWを光検出器40の位置で重ね合わせ、干渉縞を形成するようにしても良い。光CW,CCWは、光ジャイロ10が回転するとサニャック効果を受けるので、これにより干渉光のパターン(干渉縞)が光検出器40に構成された光検出素子の配列方向においてシフトする。したがって、例えば配列方向におけるシフト量により角速度を検出し、シフト方向により回転方向を検出することができる。