(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記特徴分布特定手段は、前記複数のサンプルから第1サンプルと当該第1サンプルが示す前記時刻より後の最も近い時刻を示す第2サンプルとを選択し、前記第1サンプルが示す前記旅行時間よりも前記第2サンプルが示す前記旅行時間の方が第1閾値以上大きい場合、前記第1サンプルと前記第2サンプルとを含む分布を前記特徴分布として特定する、
請求項1に記載の信号周期解析システム。
前記特徴分布特定手段は、前記複数のサンプルの中に、前記第2サンプルが示す前記時刻以後の所定期間内の時刻を示し、かつ、前記第2サンプルが示す前記時刻からの経過時間が長くなるほど小さくなる第2閾値よりも小さい旅行時間を示すサンプルが存在しない場合に、前記第1サンプルと前記第2サンプルと前記所定期間内のサンプルとを含む分布を前記特徴分布として特定する、
請求項2に記載の信号周期解析システム。
前記第2閾値は、第1時刻における前記第2閾値と前記第1時刻よりも後の第2時刻における前記第2閾値との差分の大きさが前記第1時刻から前記第2時刻までの期間の長さと等しくなるように定義されている、
請求項3に記載の信号周期解析システム。
前記特徴分布特定手段は、複数の前記特徴分布が特定された場合、最も短い期間内に存在する2個の前記特徴分布同士の出現間隔を取得し、前記複数のサンプルを基準の時刻より前の時刻を示すサンプルと前記基準の時刻以後の時刻を示すサンプルとに分類するとともに、一方の分類に属するサンプルが示す時刻が、他方の分類に属するサンプルが示す時刻が属する時間帯に含まれるように前記出現間隔の整数倍だけシフトさせ、シフト後の前記旅行時間の時系列の分布に新たに前記特徴分布が生成された場合に、当該特徴分布を前記特徴分布として特定する、
請求項4に記載の信号周期解析システム。
前記特徴分布特定手段は、前記複数のサンプルの中に、前記第2サンプルが示す前記時刻以後の所定期間内の時刻を示し、かつ、前記所定期間内における前記分布の近似曲線によって定義される第2閾値よりも第3閾値以上小さい旅行時間を示すサンプルが存在しない場合に、前記第1サンプルと前記第2サンプルと前記所定期間内のサンプルとを含む分布を前記特徴分布として特定する、
請求項2に記載の信号周期解析システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術においては、停止時間や走行時間に周期性があるか否かを判定するものの、周期性が存在するか否かを判定するための具体的な手法は開示されていない。一般に、周期性の有無を解析するためには、解析の元となるサンプル数を十分に確保することが必要であり、サンプル数が比較的少ない状態において信号の現示が変化する周期を特定することはできなかった。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、サンプル数が少ない状態において信号の現示が変化する周期を特定する技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明においては、車両の旅行時間を時刻毎に示す複数のサンプルを取得し、複数のサンプルが示す旅行時間の時系列の分布に基づいて信号機の現示の変化に対応した分布である特徴分布を特定する。そして、特徴分布が出現する周期を信号機の現示が変化する周期として取得する。
【0006】
すなわち、道路区間の両端に信号機が存在せず、走行の妨げとなる状況が道路区間内で発生していない場合、道路区間の旅行時間は、統計的に、当該道路区間の平均車速で走行した場合の所要時間と同等になり、一定の旅行時間となる。しかし、道路区間の終了地点に信号機が存在する場合、信号機の現示が交差点への進入禁止を示している場合には道路区間内で車両を停止させる必要があるため、道路区間の旅行時間は道路区間の平均車速で走行した場合の所要時間よりも長くなる。
【0007】
そして、信号機の現示は所定の周期で切り替えられるため、時刻毎の旅行時間の時系列の分布においては一定の旅行時間を示すサンプルと当該一定の旅行時間よりも長い旅行時間を示すサンプルが周期的に現れる。このように、信号機の現示の変化に対応した特徴分布(分布の形状等)が予め分かっていれば、サンプル数が少なくても当該特徴分布が出現しているか否かを判定することは可能である。従って、旅行時間の時系列の分布に基づいて特徴分布が出現する周期を特定すれば、当該周期を信号機の現示が変化する周期と見なすことにより、サンプル数が少ない状態においても信号の現示が変化する周期を特定することが可能になる。
【0008】
ここで、サンプル取得手段は、終了地点に信号機が存在する道路区間を走行した車両の旅行時間を時刻毎に示す複数のサンプルを取得することができればよい。サンプルは少なくとも道路区間における旅行時間と時刻とを示す情報を含む情報単位であり、無線通信や有線通信によって取得しても良いし、記録媒体に記録された情報を参照することによって取得する構成であっても良い。サンプルは複数個取得されるが、車両は一台であっても良いし複数台であっても良い。また、道路区間は1以上であればよい。
【0009】
旅行時間に対応づけられる時刻は、車両が道路区間を走行した時刻を示すように定義されればよく、例えば、車両が道路区間に含まれる基準地点を通過した時刻を旅行時間に対応づける構成等を採用可能である。なお、基準地点は道路区間の開始地点や終了地点、中央地点など、予め決められた任意の地点によって構成することができる。
【0010】
また、道路区間においては、開始地点に信号機が存在しても良いし、信号機が存在しなくても良いが、終了地点には信号機が存在する。すなわち、道路区間の終了地点に信号機が存在する場合、道路区間の旅行時間は信号機の現示によって変化し得るため、少なくとも終了地点に信号機が存在する道路区間がサンプルの取得対象の区間となる。
【0011】
特徴分布特定手段は、複数のサンプルが示す旅行時間の時系列の分布に基づいて信号機の現示の変化に対応した分布である特徴分布を特定する。すなわち、信号機においては、進入許可を示す現示と進入禁止を示す現示とが所定の周期で切り替えられるため、当該所定の周期に応じて旅行時間が変動する。そして、信号機の現示が進入許可を示す場合の旅行時間は渋滞等の例外を除けば統計的に一定の旅行時間となり、信号機の現示が進入禁止を示す場合の旅行時間は当該一定の旅行時間よりも長い旅行時間となる。さらに、信号機の現示が進入許可から進入禁止に変化した直後に道路区間内で停止した車両での旅行時間は、信号機の現示が進入禁止となってからある程度時間が経過した後に道路区間に進入した車両での旅行時間よりも長くなる。
【0012】
従って、旅行時間の時系列の分布において複数の旅行時間を観察すると、旅行時間が一定の状態から当該一定の旅行時間よりも長い旅行時間に変化した後、徐々に旅行時間が短くなって再び旅行時間が一定の状態となる。そこで、このような分布の一部または全部を特徴分布とすれば、信号機の現示の変化に対応した分布を特徴分布として特定することが可能である。
【0013】
信号周期取得手段は、特徴分布が出現する周期を信号機の現示が変化する周期として取得することができればよい。すなわち、旅行時間の時系列の分布において複数回特徴分布が出現する状態が観察された場合に、特徴分布が出現する最短の周期を特徴分布が出現する周期とすれば、当該周期を信号機の現示が変化する周期と見なすことが可能である。
【0014】
さらに、特徴分布を特定するための具体的な構成例として、時系列の分布上で隣接する2個のサンプル間の旅行時間の差異が信号機の現示の変化に対応した差異である場合の旅行時間の時系列の振る舞いを特徴分布として特定する構成を採用しても良い。例えば、複数のサンプルから第1サンプルと当該第1サンプルが示す時刻より後の最も近い時刻を示す第2サンプルとを選択し、第1サンプルが示す旅行時間よりも第2サンプルが示す旅行時間の方が第1閾値以上大きい場合、第1サンプルと第2サンプルとを含む分布を特徴分布として特定する構成を採用しても良い。
【0015】
すなわち、時系列の分布上で隣接する2個のサンプルにおいて、早い時刻を示すサンプルが信号機の現示が進入許可である状態で道路区間を通過した車両に関するサンプルであり、遅い時刻を示すサンプルが信号機の現示が進入禁止であることによって道路区間中で停止した後に信号機の現示が進入許可になることに伴って道路区間を退出した車両に関するサンプルである場合、両者の旅行時間は大きく変化する。そこで、第1サンプルが示す旅行時間よりも第2サンプルが示す旅行時間の方が第1閾値以上大きい場合には、第1サンプルと第2サンプルとを含む分布が、信号機の現示の変化に対応した特徴分布であると見なすことができる。
【0016】
なお、第1閾値は、第1サンプルが示す旅行時間よりも第2サンプルが示す旅行時間の方が第1閾値以上大きい場合に、両サンプルにおける旅行時間の変化が信号機の現示が異なることによって生じたと見なすことができる程度の値に設定されていればよい。従って、例えば、周期を解析する対象となる信号機の全てにおいて想定される進入禁止の現示の周期のうち、最も短い周期が当該第1閾値よりも長くなるように設定する構成等を採用可能である。
【0017】
さらに、特徴分布を特定するための具体的な構成例として、信号機の現示が進入禁止であることによって道路区間内で停止していた車両における旅行時間の時系列の振る舞いを特徴分布として特定する構成を採用しても良い。例えば、複数のサンプルの中に、第2サンプルが示す時刻以後の所定期間内の時刻を示し、かつ、第2サンプルが示す時刻からの経過時間が長くなるほど小さくなる第2閾値よりも小さい旅行時間を示すサンプルが存在しない場合に、第1サンプルと第2サンプルと所定期間内のサンプルとを含む分布を特徴分布として特定する構成を採用しても良い。
【0018】
すなわち、旅行時間の時系列の分布において複数の旅行時間を観察すると、上述のように、旅行時間が一定の状態から当該一定の旅行時間よりも長い旅行時間に変化した後、徐々に旅行時間が短くなって再び旅行時間が一定の状態となる。さらに、道路区間で異常な加速をせず、通常、あり得る速度で走行する限り、徐々に旅行時間が短くなる時間帯において、所定の旅行時間の変化傾向から逸脱して旅行時間が短くなることはない。そこで、第2サンプルが示す時刻からの経過時間が長くなるほど小さくなる第2閾値を定義し、複数のサンプルから、第2サンプルが示す時刻以後の所定期間内の時刻を示すサンプルを抽出する。さらに、抽出されたサンプルが示す旅行時間が第2閾値よりも小さい場合には、第1サンプルと第2サンプルと所定期間内のサンプルとを含む分布が、信号機の現示の変化に対応した特徴分布であると見なすことができる。
【0019】
なお、第2閾値は、当該第2閾値よりも小さい旅行時間で道路区間を走行することが現実的にはあり得ないと判断できるように予め設定されていればよい。従って、例えば、信号機の現示が進入禁止であることによって道路区間で停止した車両において、通常想定し得る範囲の加速度よりも大きい加速度で加速して道路区間を走行した場合の旅行時間を時系列の分布上で想定し、当該旅行時間を予め時刻毎に特定して第2閾値とする構成等を採用可能である。むろん、ここでは、信号機の現示が進入禁止であることによって道路区間で停止した車両について、現実的にあり得る範囲の加減速度で走行をして道路区間を通過した場合の旅行時間と現実的にあり得ない範囲の加減速度で走行をして道路区間を通過した場合の旅行時間とを区別することができればよい。従って、第2閾値に対するマージンとなる第3閾値を定義しておき、第2閾値よりも第3閾値以上小さい旅行時間を示すサンプルが存在しない場合に、第2閾値よりも小さい旅行時間を示すサンプルが存在しないと判定する構成であっても良い。この場合、第3閾値は、第2閾値と旅行時間との差分が当該第3閾値を超えることによって旅行時間の変化傾向から逸脱していることを判定できるように設定することができればよく、予め設定されればよい。
【0020】
さらに、第2閾値が、第1時刻における第2閾値と第1時刻よりも後の第2時刻における第2閾値との差分の大きさが第1時刻から第2時刻までの期間の長さと等しくなるように定義されていても良い。すなわち、旅行時間の時系列の分布においては、信号機の現示が進入禁止となることに起因して、旅行時間が一定の状態から当該一定の旅行時間よりも長い旅行時間に変化した後、徐々に旅行時間が短くなって再び旅行時間が一定の状態となる。従って、当該旅行時間の変化は信号機の現示が進入禁止となっている期間に対応している。
【0021】
具体的には、時系列の分布上で隣接する2個のサンプルにおいて早い時刻を示すサンプルが、信号機の現示が進入許可の状態で道路区間を通過した車両の旅行時間を示し、遅い時刻を示すサンプルが、信号機の現示が進入許可から進入禁止に変化することによって道路区間内で停止し、信号機の現示が再度進入許可となった直後に道路区間を通過した車両の旅行時間を示すことを想定する。この場合、時系列の分布上で隣接する2個のサンプルが示す旅行時間において、旅行時間が一定の状態から当該一定の旅行時間よりも長い旅行時間に変化する際の変化幅が最大となり、かつ、当該変化幅は信号機の現示が進入禁止となっている期間に等しい。
【0022】
一方、このように旅行時間の変化が最大幅となった時刻から信号機の現示が進入禁止である期間が経過する以前の時刻において、旅行時間は上述の一定の旅行時間よりも長く、信号機の現示が進入禁止である期間が経過した後に再び旅行時間が一定となる。従って、旅行時間が一定の旅行時間よりも長くなっている期間も信号機の現示が進入禁止となっている期間に等しい。すなわち、旅行時間の時系列の分布が連続的であると想定した場合、一定の値で推移する旅行時間が、ある時刻において、信号機の現示が進入禁止となっている期間と同等の変化幅だけ大きくなり、信号機の現示が進入禁止となっている期間だけ費やして徐々に旅行時間が短くなって一定の旅行時間に戻る。そこで、第1時刻における第2閾値と第1時刻よりも後の第2時刻における第2閾値との差分の大きさが第1時刻から第2時刻までの期間の長さと等しくなるように第2閾値を定義しておけば、旅行時間の変化傾向に追従した閾値を定義することができる。
【0023】
さらに、旅行時間の時系列の分布を補正し、補正後の分布を解析することによって特徴分布の周期を特定する構成を採用しても良い。例えば、旅行時間の時系列の分布に基づいて複数の特徴分布が特定された場合、最も短い期間内に存在する2個の特徴分布同士の出現間隔を取得し、複数のサンプルを基準の時刻より前の時刻を示すサンプルと基準の時刻以後の時刻を示すサンプルとに分類するとともに、一方の分類に属するサンプルが示す時刻が、他方の分類に属するサンプルが示す時刻が属する時間帯に含まれるように前記出現間隔の整数倍だけシフトさせ、シフト後の旅行時間の時系列の分布に新たに特徴分布が生成された場合に、当該特徴分布を特徴分布として特定する構成としても良い。
【0024】
すなわち、信号機の現示が変化することによって特徴分布が出現し、当該信号機の現示の変化が周期的である場合、信号機の現示が変化する周期の整数倍だけ時刻をシフトしても旅行時間の時系列の分布に現れる特徴は変動しない。そして、旅行時間の分布に基づいて特定された複数の特徴分布のうち、最も短い期間内に存在する2個の特徴分布に着目するとこれらの特徴分布の出現間隔は信号機の現示の変化の周期の整数倍となっている。そこで、基準の時刻を基準にしてサンプルを2つに分類し、一方の分類に含まれるサンプルの時刻を特徴分布の出現間隔の整数倍だけシフトさせると、シフト後の分布において単位期間内に含まれるサンプルの数は増加する。このため、シフト後の分布においては特徴分布をより容易に抽出可能になり、新たな特徴分布が特定される場合もある。この場合、新たな特徴分布を含めて特徴分布の周期を特定すればより正確に信号機の現示が変化する周期を取得することが可能である。むろん、サンプルの分類と時刻のシフトは、新たな特徴分布が生成されなくなるまで繰り返しても良い。
【0025】
なお、時刻のシフトは、サンプルが示す時刻に対して特徴分布の出現間隔の整数倍の値を増減させる補正を行うことによって実現される。また、基準の時刻は、サンプルを分類する際の基準となっていればよく、特徴分布に関連づけて基準の時刻を定義しても良い。例えば、旅行時間の分布に基づいて特定された複数の特徴分布のうち、最も短い期間内に存在する2個の特徴分布の開始時刻の一方を基準の時刻とする構成としても良い。この構成によれば、特徴分布の開始時刻を基準にして時刻をシフトすることができ、シフト後の分布の解析が容易になる。
【0026】
さらに、特徴分布を特定する際の構成として、特徴分布を構成するサンプルとして非現実的なサンプルが存在しない場合に特徴分布が出現したと見なす構成としても良い。例えば、上述の第2閾値を、所定期間内における旅行時間の時系列の分布の近似曲線によって定義しても良い。すなわち、複数のサンプルの中に、第2サンプルが示す時刻以後の所定期間内の時刻を示し、かつ、所定期間内における分布の近似曲線が示す旅行時間よりも第3閾値以上小さい旅行時間を示すサンプルが存在しない場合に、第1サンプルと第2サンプルと所定期間内のサンプルとを含む分布を特徴分布として特定する構成を採用可能である。
【0027】
上述のように、旅行時間の時系列の分布において複数の旅行時間を観察すると、旅行時間が一定の状態から当該一定の旅行時間よりも長い旅行時間に変化した後、徐々に旅行時間が短くなって再び旅行時間が一定の状態となる。当該徐々に旅行時間が短くなる変化を特徴的な変化ととらえた場合、通常想定し得る範囲の加速度よりも大きい加速度で加速して道路区間を走行しない限り、上述の特徴的な変化と比較して過度に旅行時間が小さくなることはない。
【0028】
従って、所定期間内における旅行時間の分布の近似曲線が上述の特徴的な変化であると見なして上述の第2閾値とし、当該第2閾値よりも第3閾値以上小さい旅行時間を示すサンプルが存在しない場合に、当該所定期間内のサンプルを含む分布を特徴分布と見なすことができる。この構成によれば、サンプル情報に基づいて第2閾値を動的に生成して特徴分布を特定することが可能である。
【0029】
さらに、本発明のように特徴分布が出現する周期を信号機の現示が変化する周期として取得する手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合や、複数の装置によって実現される場合、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合が想定可能であり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような装置を備えたクライアントサーバシステムや方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)信号周期解析システムの構成:
(2)信号周期解析処理:
(3)他の実施形態:
【0032】
(1)信号周期解析システムの構成:
図1は、本発明にかかる信号周期解析システムの構成を示す図である。信号周期解析システム10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20、記録媒体30を備えており、記録媒体30やROMに記憶されたプログラムを制御部20で実行することが可能である。本実施形態においては、このプログラムとして信号周期解析プログラム21を実行可能である。また、信号周期解析システム10は、通信部40を備えている。当該通信部40は、車両Cが備える通信装置と通信を行う回路を備えており、制御部20は、通信部40を介して当該通信装置が送信するサンプル情報を取得することができる。
【0033】
制御部20は、信号周期解析プログラム21を実行して当該通信部40を利用しつつ道路区間の終了地点に存在する信号機において現示が変化する周期を特定する。このために、信号周期解析プログラム21は、サンプル取得部21aと特徴分布特定部21bと信号周期取得部21cとを備えている。サンプル取得部21aは、終了地点に信号機が存在する道路区間を走行した車両の旅行時間を時刻毎に示す複数のサンプルを取得する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。
【0034】
本実施形態において、サンプルは道路区間における車両の旅行時間と時刻とを示す情報を含む情報単位であり、当該サンプルはサンプル情報として車両から送信される。
図1においては、道路区間Rを通過する車両Cを模式的に示している。本実施形態において、車両Cはナビゲーション装置を備えており、当該ナビゲーション装置は、時刻を計測する計時装置と車両Cの現在位置検出装置と上述の通信装置を含んでいる。そして、車両Cにおいては、現在位置検出装置が任意の道路区間への進入と当該道路区間からの退出を検出し、計時装置が道路区間への進入時刻と道路区間からの退出時刻を特定する。
【0035】
さらに、ナビゲーション装置が任意の道路区間の退出時刻と進入時刻との差分を求めることによって旅行時間を特定し、当該旅行時間に対して道路区間を示す情報と当該道路区間への進入時刻を示す情報とを対応づけサンプル情報とし、通信装置によって送信する。
図1においては、車両Cから送信されるサンプル情報Iに、道路区間R、旅行時間Tt、進入時刻Teを示す情報が含まれることを示している。信号周期解析システム10の制御部20は、サンプル取得部21aの処理により通信部40を制御して車両Cから送信されるサンプル情報を取得し、記録媒体30に記録する(
図1に示すサンプル情報30a)。
【0036】
なお、本実施形態においては、一つの道路区間について複数個のサンプル(複数個の情報単位からなるサンプル情報)が取得されるが、サンプル情報の送信元の車両は一台であっても良いし複数台であっても良い。また、本実施形態においては、終了地点に信号機が存在する道路区間をサンプル情報の取得対象とするが、むろん道路区間の開始地点に信号機が存在しても良いし、信号機が存在しなくても良い。すなわち、道路区間の終了地点に信号機が存在する場合、道路区間の旅行時間は信号機の現示によって変化し得るため、少なくとも終了地点に信号機が存在する道路区間がサンプル情報の取得対象の区間となる。また、本実施形態におけるサンプル情報には道路区間への進入時刻が含まれている。そこで、本実施形態においては進入時刻に対する旅行時間の分布を旅行時間の時系列の分布と見なす構成となっている。
【0037】
特徴分布特定部21bは、複数のサンプルが示す旅行時間の時系列の分布に基づいて信号機の現示の変化に対応した分布である特徴分布を特定する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。すなわち、道路区間の両端に信号機が存在せず、走行の妨げとなる状況が道路区間内で発生していない場合、道路区間の旅行時間は、統計的に、当該道路区間の平均車速で走行した場合の所要時間と同等になり、一定の旅行時間となる。しかし、道路区間の終了地点に信号機が存在する場合、信号機の現示が交差点への進入禁止を示している場合には道路区間内で車両を停止させる必要があるため、道路区間の旅行時間は道路区間の平均車速で走行した場合の所要時間よりも長くなる。
【0038】
そして、信号機の現示は所定の周期で切り替えられるため、時刻毎の旅行時間の時系列の分布においては一定の旅行時間を示すサンプルと当該一定の旅行時間よりも長い旅行時間を示すサンプルが周期的に現れる。
図2は、旅行時間の時系列の分布の例を示している。すなわち、
図2においては、道路区間への進入時刻Teを横軸、旅行時間Ttを縦軸として複数のサンプルをグラフに黒丸でプロットしている。
【0039】
信号機の現示が進入許可を示す場合、車両は道路区間で停止することなく通過することができるため、旅行時間は、渋滞等の例外を除けば統計的に一定となる。
図2においては、当該統計的に特定される一定の旅行時間をTtcとして示している。一方、信号機の現示が進入禁止を示す場合、車両は道路区間で停止する必要があるため、旅行時間は当該一定の旅行時間よりも長い旅行時間となる。さらに、信号機の現示が進入許可から進入禁止に変化した直後に道路区間内で停止した車両での旅行時間は、信号機の現示が進入禁止となってからある程度時間が経過した後に道路区間に進入した車両での旅行時間よりも長くなる。
【0040】
従って、旅行時間の時系列の分布において複数の旅行時間を観察すると、旅行時間が一定の状態から当該一定の旅行時間よりも長い旅行時間に変化した後、徐々に旅行時間が短くなって再び旅行時間が一定の状態となる。
図2においては、破線の矢印で示す期間Tpに含まれるサンプルが示す旅行時間Ttが一定の旅行時間Ttcよりも長くなっており、かつ、時間の経過とともに徐々に旅行時間が短くなり、期間Tpよりも後には再び旅行時間が一定の旅行時間Ttcとなる。そこで、本実施形態において制御部20は、特徴分布特定部21bの処理により、サンプル情報30aを参照し、旅行時間の時系列の分布上で信号機の現示の変化に対応して現れる分布を特徴分布として特定する。特徴分布を特定するための詳細な処理については後述する。
【0041】
信号周期取得部21cは、特徴分布が出現する周期を信号機の現示が変化する周期として取得する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。すなわち、制御部20は、旅行時間の時系列の分布において複数回特徴分布が出現する状態が観察された場合に、特徴分布が出現する最短の周期を特徴分布が出現する周期とし、当該周期を信号機の現示が変化する周期と見なす。信号機の現示が変化する周期が特定されると、制御部20は、当該周期を信号周期情報30bとして記録媒体30に記録する。
【0042】
以上のようにして特定された周期は、種々の目的に利用することが可能である。例えば、信号機の現示の周期に応じて当該信号機が終了地点に存在する道路区間の走行困難性を示すコスト情報を生成可能である。なお、本実施形態においては、信号機の現示がある状態となった後、当該ある状態から他の状態に変化し、再び当該ある状態に戻るまでの期間を信号機の現示が変化する周期と見なしている。例えば、信号機の現示が青信号となった時刻から、赤信号を経て再び青信号となる時刻までの期間が信号機の現示が変化する周期である。
【0043】
一般に、時刻毎の旅行時間の分布を示す時系列の分布において、サンプル数が多いと信号機の現示の変化の周期に対応したサンプルの振る舞いを明確に観察することができるが、サンプル数が少ないと信号機の現示の変化の周期に対応したサンプルの振る舞いを明確に観察することは困難になる。しかし、信号機の現示の変化に対応した特徴分布(分布の形状等)が予め分かっていれば、サンプル数が少なくても当該特徴分布が出現しているか否かを判定することは可能である。そして、本実施形態においては、旅行時間の時系列の分布において、予め決められた特徴分布が形成されている場合に特徴分布が出現する周期を信号機の現示が変化する周期として取得する構成となっている。従って、サンプル数が少ない状態においても信号の現示が変化する周期を特定することが可能である。
【0044】
(2)信号周期解析処理:
次に、本実施形態にかかる信号周期解析処理を詳細に説明する。制御部20は、サンプル取得部21aの処理により、通信部40に対するサンプル情報の送信がなされることを常に監視している。車両Cからサンプル情報が送信されると、制御部20は、通信部40を介して当該サンプル情報を取得し、記録媒体30にサンプル情報30aを記録する。
【0045】
このように、サンプル取得部21aによって制御部20がサンプル情報30aを蓄積する処理を実行する状況と並行して、制御部20は、
図3に示す信号周期解析処理を実行する。当該信号周期解析処理は所定の期間毎に実行される。当該信号周期解析処理において、まず制御部20は、特徴分布特定部21bの処理により、特徴分布を特定する(ステップS105)。なお、このとき制御部20は、サンプル情報30aを道路区間毎の情報に分類し、道路区間毎のサンプルを解析して特徴分布を特定する。
【0046】
本実施形態において制御部20は、
図2に示すような特徴分布を特定するため、時系列の分布上で隣接する2個のサンプル間の旅行時間の差異が信号機の現示の変化に対応した差異である場合の旅行時間の時系列の振る舞いに基づいて特徴分布を特定する。さらに、制御部20は、信号機の現示が進入禁止であることによって道路区間内で停止していた車両における旅行時間の時系列の振る舞いに基づいて特徴分布を特定する。具体的には、特徴分布が有する以下の特徴が旅行時間の時系列の分布上で観察された場合の特徴分布であると見なす。
特徴1)特定の時刻を境にして旅行時間が第1閾値以上変化する
特徴2)旅行時間が第1閾値以上変化した後の所定期間内において、時間の経過とともに小さくなる第2閾値よりも第3閾値以上小さい旅行時間が出現しない
【0047】
特徴1について制御部20は、以下の処理を行う。まず制御部20は、ある道路区間の旅行時間を時刻毎に示す複数のサンプルから第1サンプルと当該第1サンプルが示す時刻より後の最も近い時刻を示す第2サンプルとを選択する。そして、第1サンプルが示す旅行時間よりも第2サンプルが示す旅行時間の方が第1閾値以上大きい場合、旅行時間の時系列の分布上に特徴1が観察されると見なす。
【0048】
すなわち、時系列の分布上で隣接する2個のサンプルにおいて、早い時刻を示すサンプルが信号機の現示が進入許可である状態で道路区間を通過した車両に関するサンプルであり、遅い時刻を示すサンプルが信号機の現示が進入禁止であることによって道路区間中で停止した後に信号機の現示が進入許可になることに伴って道路区間を退出した車両に関するサンプルである場合、両者の旅行時間は大きく変化する。そこで、第1サンプルが示す旅行時間よりも第2サンプルが示す旅行時間の方が第1閾値以上大きい場合には、第1サンプルと第2サンプルとを含む分布が、特徴1を備える分布であると見なすことができる。
【0049】
なお、第1閾値は、第1サンプルが示す旅行時間よりも第2サンプルが示す旅行時間の方が第1閾値以上大きい場合に、両サンプルにおける旅行時間の変化が信号機の現示が異なることによって生じたと見なすことができる程度の値に設定されていればよい。本実施形態においては、周期を解析する対象となる信号機の全てにおいて想定される進入禁止の現示の期間のうち、最も短い期間が当該第1閾値よりも長くなるように設定されている。なお、制御部20は、第1サンプルと第2サンプルとを選択して旅行時間の差分を第1閾値と比較した後、第2サンプルとされていたサンプルを第1サンプルと見なすとともに新たに第2サンプルを選択して時刻を第1閾値と比較する処理を繰り返し、処理対象の道路区間についてN個のサンプルが存在する場合、N−1個のサンプルが第1サンプルに選択されるまで当該繰り返しを実行する。この結果、分布によっては、特徴1が複数箇所で観察され得る状態となる。
【0050】
図4Aは、道路区間への進入時刻Teを横軸、旅行時間Ttを縦軸としてある道路区間の旅行時間の時系列の分布の例を示した図である。同
図4Aにおいては、第1閾値の大きさをTh
1として示している。本例において、サンプルSaが第1サンプルとして選択された場合、サンプルSbが第2サンプルとなる。そして、サンプルSaが示す旅行時間とサンプルSbが示す旅行時間との差分は第1閾値Th
1以上であるため、サンプルSaおよびサンプルSbの分布は特徴1として観察されることになる。
【0051】
一方、サンプルSbが第1サンプルとして選択された場合、サンプルScが第2サンプルとなり、サンプルSbが示す旅行時間とサンプルScが示す旅行時間との差分は第1閾値Th
1よりも小さいため、サンプルSbおよびサンプルScの分布は特徴1として観察されない。以上の判定が繰り返されると、
図4Aにおいては、サンプルSdおよびサンプルSeの分布が特徴1として観察される。なお、旅行時間の時系列の分布上で特徴1を観察する際に、サンプルの時刻の差分が所定間隔以下である2個のサンプルのみを第1,第2サンプルとし、差分が所定間隔よりも大きい2個のサンプルは判定対象外としても良い。この構成によれば、より正確に特徴分布を特定することができる。
【0052】
特徴2について制御部20は、以下の処理を行う、すなわち、制御部20は、特徴1が観察された際に第2サンプルとされていたサンプルを特定し、複数のサンプルから、第2サンプルが示す時刻以後の所定期間内の時刻を示すサンプルを抽出する。そして、制御部20は、抽出されたサンプルの中に、第2サンプルが示す時刻からの経過時間が長くなるほど小さくなる第2閾値よりも第3閾値以上小さい旅行時間を示すサンプルが存在しない場合に、第1サンプルと第2サンプルと所定期間内のサンプルとを含む分布を特徴分布として特定する、
【0053】
すなわち、旅行時間の時系列の分布において複数の旅行時間を観察すると、上述のように、旅行時間が一定の状態から当該一定の旅行時間よりも長い旅行時間に変化した後、徐々に旅行時間が短くなって再び旅行時間が一定の状態となる。さらに、道路区間で異常な加速をせず、通常、あり得る速度で走行する限りにおいて、徐々に旅行時間が短くなる時間帯において、所定の旅行時間の変化傾向から逸脱して旅行時間が短くなることはない。そこで、当該旅行時間の変化傾向と見なすことができる第2閾値を定義しておき、当該第2閾値と旅行時間との差分が第3閾値を超える場合に旅行時間の変化傾向から逸脱していると見なすことができるように第3閾値を定義しておく。そして、制御部20にて、第2サンプルが示す時刻以後の所定期間内の時刻を示すサンプルであって、第2閾値よりも第3閾値以上小さい旅行時間を示すサンプルが存在しないと判定される場合には、当該所定期間内の時刻を示すサンプルを含む分布が特徴2を備える分布であると見なすことができる。
【0054】
なお、第2閾値は、当該第2閾値よりも第3閾値以上短い旅行時間で道路区間を走行することが現実的にはあり得ないと判断できるように予め設定されていればよい。従って、例えば、信号機の現示が進入禁止であることによって道路区間で停止した車両において、通常想定し得る範囲の加速度よりも大きい加速度で加速して道路区間を走行した場合の旅行時間を時系列の分布上で想定し、当該旅行時間を予め時刻毎に特定して第2閾値とする構成等を採用可能である。また、上述の所定期間は、旅行時間が一定の状態から当該一定の旅行時間よりも長い旅行時間に変化した後、徐々に旅行時間が短くなって再び旅行時間が一定の状態となるまでの期間として想定し得る最長の期間として予め決められた期間である。
【0055】
図4Aにおいては、サンプルSaを第1サンプル、サンプルSbを第2サンプルとすることによって特徴1が観察され、サンプルSdを第1サンプル、サンプルSeを第2サンプルとすることによって特徴1が観察される。そこで、
図4Aに示す例において制御部20は、第2サンプルとしてのサンプルSbが示す時刻Tb
1において最大値となり時間の経過とともに小さくなる第2閾値Th
21と、第2サンプルとしてのサンプルSeが示す時刻Tb
2において最大値となり時間の経過とともに小さくなる第2閾値Th
22とを一点鎖線のように定義する。
【0056】
また、
図4Aにおいては、第3閾値の大きさをTh
3として示し、所定期間をTaとして示している。この例において制御部20は、所定期間Ta内の時刻を示すサンプルとして、サンプルScおよびサンプルSfを抽出する。制御部20は、各サンプルSc,Sfが示す旅行時間が第2閾値よりも第3閾値以上小さいか否かを判定するが、
図4Aに示す例においてサンプルSc,Sfが示す旅行時間はいずれも第2閾値付近であり、各サンプルSc,Sfが示す時刻において、各サンプルSc,Sfが示す旅行時間が第2閾値よりも第3閾値以上小さいとは判定されない。従って、サンプルScを含む分布およびサンプルSfを含む分布が特徴2を備えると判定される。
【0057】
以上の処理により、特徴1、特徴2の双方が観察された場合、制御部20は、特徴1、特徴2の双方が観察された分布を特徴分布であると見なす。例えば、
図4Aに示す例において、サンプルSa,Sb,Scを含む分布が特徴分布であると判定され、サンプルSd,Se,Sfを含む分布が特徴分布であると判定される。
【0058】
なお、第2閾値は、第2サンプルが示す時刻からの経過時間が長くなるほど小さくなるように設定されていればよいが、本実施形態においては、第1時刻における第2閾値と第1時刻よりも後の第2時刻における第2閾値との差分の大きさが第1時刻から第2時刻までの期間の長さと等しくなるように定義されている。すなわち、旅行時間の時系列の分布においては、信号機の現示が進入禁止となることに起因して、旅行時間が一定の状態から当該一定の旅行時間よりも長い旅行時間に変化した後、徐々に旅行時間が短くなって再び旅行時間が一定の状態となる。従って、当該旅行時間の変化は信号機の現示が進入禁止となっている期間に対応している。
【0059】
具体的には、時系列の分布上で隣接する2個のサンプルにおいて早い時刻を示すサンプルが、信号機の現示が進入許可の状態で道路区間を通過した車両の旅行時間を示し、遅い時刻を示すサンプルが、信号機の現示が進入許可から進入禁止に変化することによって道路区間内で停止し、信号機の現示が再度進入許可となった直後に道路区間を通過した車両の旅行時間を示すことを想定する。この場合、時系列の分布上で隣接する2個のサンプルが示す旅行時間において、旅行時間が一定の状態から当該一定の旅行時間よりも長い旅行時間に変化する際の変化幅が最大となり、かつ、当該変化幅は信号機の現示が進入禁止となっている期間に等しい。
【0060】
一方、このように旅行時間の変化が最大幅となった時刻から信号機の現示が進入禁止である期間が経過する以前の時刻においては、上述の一定の旅行時間よりも長く、信号機の現示が進入禁止である期間が経過した後に再び旅行時間が一定となる。従って、旅行時間が一定の旅行時間よりも長くなっている期間も信号機の現示が進入禁止となっている期間に等しい。すなわち、旅行時間の時系列の分布が連続的であると想定した場合、一定の値で推移する旅行時間が、ある時刻において、信号機の現示が進入禁止となっている期間と同等の変化幅だけ大きくなり、信号機の現示が進入禁止となっている期間だけ費やして徐々に旅行時間が短くなって一定の旅行時間に戻る。
【0061】
例えば、
図2に示す例において旅行時間の変化幅の最大値Tmaxと期間Tpとはともに、信号機の現示が進入禁止となっている期間に等しい。そこで、本実施形態においては、第1時刻における第2閾値と第1時刻よりも後の第2時刻における第2閾値との差分の大きさが第1時刻から第2時刻までの期間の長さと等しくなるように第2閾値を定義し、旅行時間の変化傾向に追従した閾値を定義するように構成している。例えば、
図4Aに示す例において、時刻Tb
1における第2閾値Ttbと時刻Tb
1よりも後の時刻Tc
1における第2閾値Ttcとの差分の大きさΔTが時刻Tb
1から時刻Tc
1までの期間の長さTaと等しくなるように第2閾値Th
21が定義されている。なお、
図4Aに一点鎖線で示すように、第2閾値Th
21,Th
22は時間の経過とともに小さくなり、第3閾値Th
3は一定値であるため、「第2閾値よりも第3閾値以上小さい旅行時間を示すサンプルが存在しない」ことと、
図4Aにて二点鎖線で示す領域A内の旅行時間を示すサンプルが存在しないこととは等価である。従って、制御部20においては、予め決められた二等辺三角形の領域A内の旅行時間を示すサンプルが存在するか否かを判定する構成であっても良い。
【0062】
以上の処理により、ステップS105にて特徴分布を特定すると、制御部20は、信号周期取得部21cの処理により、特徴分布を2カ所で特定したか否かを判定する(ステップS110)。ステップS110にて、特徴分布を2カ所で特定したと判定されない場合、特徴分布が出現する周期を特定できないため信号周期解析処理を終了する。
【0063】
一方、ステップS110にて、特徴分布を2カ所で特定したと判定された場合、制御部20は、信号周期取得部21cの処理により、特徴分布が出現する最短の周期を特定する(ステップS115)。すなわち、制御部20は、特徴分布に基づいて特徴分布の開始時刻を特定し、開始時刻の差分の中で最も短い差分に相当する期間を最短の周期として特定する。なお、特徴分布の開始時刻は、特徴分布の出現周期を特定するための基準となる時刻であればよく、例えば、上述の第1サンプルが示す時刻であっても良いし、第2サンプルが示す時刻であってもよいし、第1サンプルが示す時刻と第2サンプルが示す時刻との間の時刻であっても良い。
図4Aにおいては、第1サンプルが示す時刻と第2サンプルが示す時刻との中間の時刻を開始時刻Ts
1,Ts
2とし、特徴分布が出現する最短の周期をC
1として示している。
【0064】
本実施形態において制御部20は、旅行時間の時系列の分布を補正し、補正後の分布を解析することによって新たに特徴分布を特定できた場合には新たに特定された特徴分布を含めて特徴分布の周期を特定する。このため、まず、制御部20は、信号周期取得部21cの処理により、旅行時間の時系列の分布をシフトする(ステップS120)。すなわち、制御部20は、ステップS115にて特定された最短の周期を構成する2個の特徴分布の開始時刻のうち、遅い方の開始時刻を基準の時刻とし、複数のサンプルを当該基準の時刻より前の時刻を示すサンプルと基準の時刻以後の時刻を示すサンプルとに分類する。そして、制御部20は、一方の分類に属するサンプルが示す時刻が、他方の分類に属するサンプルが示す時刻が属する時間帯に含まれるように特徴分布の最短の周期の整数倍だけシフトさせる。なお、
図4Bは、
図4Aに示す例において時刻Ts
2を基準の時刻とし、時刻Ts
2以後の時刻を示すサンプルについて最短の周期C
1(周期の1倍に相当)だけ時刻を前方にシフトさせた場合の例を示している。
【0065】
次に、制御部20は、信号周期取得部21cの処理により、特定済の特徴分布がシフト後においても特徴分布を構成するか否かを判定する(ステップS125)。すなわち、制御部20は、特定済の特徴分布がシフト後においても依然として上述の特徴1および特徴2を兼ね備えているか否かを判定する。例えば、
図4Bに示す例において、サンプルSa,Sb,Scによって構成される特徴分布が存在する時間帯にサンプルSfがシフトされた状態においてサンプルSa,Sb,Sc,Sfによって依然として特徴分布が構成されるか否かを判定する。
【0066】
図4Bに示す例においては、サンプルSaが示す旅行時間よりもサンプルSbが示す旅行時間の方が第1閾値以上大きいため、サンプルSa,Sb,Sc,Sfによって構成される分布は特徴1を有している。さらに、サンプルSb,Sc,Sfが示す旅行時間のいずれにおいても、サンプルが示す旅行時間は第2閾値Th
21とほぼ同値であり、サンプルSbが示す時刻Tb
1以後において時間の経過とともに小さくなる第2閾値Th
21よりも第3閾値以上小さい旅行時間を示すサンプルは存在しない。従って、シフト後のサンプルSa,Sb,Sc,Sfによって依然として特徴分布が構成されると判定される。
【0067】
特定済の特徴分布がシフト後においても特徴分布を構成すると、ステップS125において判定されない場合、制御部20は、信号周期取得部21cの処理により、特定済の特徴分布の最短周期を信号周期として特定する(ステップS155)。すなわち、制御部20は、ステップS105にて特定された特徴分布の最短周期を信号の現示が変化する周期とし、当該周期を示す信号周期情報30bを記録媒体30に記録する。
【0068】
一方、特定済の特徴分布がシフト後においても特徴分布を構成すると、ステップS125において判定された場合、制御部20は、特徴分布特定部21bの処理により、シフト後の分布に基づいて特徴分布を特定する(ステップS130)。すなわち、制御部20は、シフト後の旅行時間の時系列の分布に基づいて上述の特徴1および特徴2を備える分布を特定する。なお、ここでは、既に特定済の特徴分布を除いた部分にて特徴分布を特定するための処理が行われる。従って、ステップS130にて特徴分布が特定された場合には、旅行時間の時系列の分布をシフトさせた分布において、ステップS105にて特定された特徴分布以外に新たに特徴分布が特定されたことになる。
【0069】
図4Bに示すシフト後の例においては、サンプルSgを第1サンプル、サンプルShを第2サンプルと見なした場合に、特徴1が観察される。すなわち、サンプルSgが示す旅行時間よりもサンプルShが示す旅行時間の方が第1閾値以上大きいため、制御部20はサンプルSgおよびサンプルShが特徴1を備えているとみなす。さらに、サンプルSh,Si,Sjが示す旅行時間のいずれにおいても、サンプルが示す旅行時間は第2閾値Th
23とほぼ同値であり、サンプルShが示す時刻Tb
3以後において時間の経過とともに小さくなる第2閾値Th
23よりも第3閾値以上小さい旅行時間を示すサンプルは存在しない。従って、シフト後のサンプルSh,Si,Sjによって新たに特徴分布が構成されると判定される。
【0070】
制御部20は、ステップS130の処理によって、新たな特徴分布が特定されたか否かを判定し(ステップS135)、新たな特徴分布が特定されたと判定されない場合にはステップS155を実行する。すなわち、ステップS105にて特定された特徴分布の最短周期を信号の現示が変化する周期とし、当該周期を示す信号周期情報30bを記録媒体30に記録する。
【0071】
一方、新たな特徴分布が特定されたとステップS135において判定された場合、制御部20は、信号周期取得部21cの処理により、特徴分布が出現する最短の周期を特定する(ステップS140)。すなわち、ステップS115と同様の処理により、特徴分布の開始時刻の差分の中で最も短い差分に相当する期間を最短の周期として特定する。
図4Bにおいては、特徴分布の開始時刻をTs
1,Ts
3とし、特徴分布が出現する最短の周期をC
2として示している。
【0072】
次に、制御部20は、信号周期取得部21cの処理により、旅行時間の時系列の分布をシフトする(ステップS145)。すなわち、ステップS140にて特定された最短の周期を構成する2個の特徴分布の開始時刻のうち、遅い方の開始時刻を基準の時刻とし、複数のサンプルを当該基準の時刻より前の時刻を示すサンプルと基準の時刻以後の時刻を示すサンプルとに分類する。そして、制御部20は、一方の分類に属するサンプルが示す時刻が、他方の分類に属するサンプルが示す時刻が属する時間帯に含まれるように特徴分布の最短の周期の整数倍だけシフトさせる。なお、
図4Cは、
図4Bに示す例において時刻Ts
3を基準の時刻とし、時刻Ts
3以後の時刻を示すサンプルについて最短の周期C
2(周期の1倍に相当)だけ時刻を前方にシフトさせた場合の例を示している。
【0073】
次に、制御部20は、信号周期取得部21cの処理により、特定済の特徴分布がシフト後においても特徴分布を構成するか否かを判定する(ステップS150)。すなわち、制御部20は、特定済の特徴分布がシフト後においても依然として上述の特徴1および特徴2を兼ね備えているか否かを判定する。
図4Cにおいては、特定済の特徴分布がシフト後においても特徴分布を構成している場合の例を示している。
【0074】
ステップS150において、特定済の特徴分布がシフト後においても特徴分布を構成すると判定された場合、制御部20は、ステップS130以降の処理を繰り返す。すなわち、新たな特徴分布が特定されない状態となるか、新たな特徴分布が特定されるものの既存の特徴分布が特徴分布でなくなる状態となるまでシフトを繰り返す。そして、ステップS130以降を繰り返す過程において、ステップS135にて新たな特徴分布が特定されたと判定されない場合、制御部20は、ステップS155において、特定済の特徴分布の最短周期を信号周期として特定する。また、ステップS150において、特定済の特徴分布がシフト後においても特徴分布を構成すると判定されない場合も、ステップS155において、特定済の特徴分布の最短周期を信号周期として特定する。なお、ステップS135およびステップS150の判定を経てステップS155が実行される場合、制御部20は、ステップS140にて特定された最短の周期のうち、最も短い周期を信号周期として特定する。
【0075】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、特徴分布が出現する周期を信号機の現示が変化する周期として取得する限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。
【0076】
例えば、サンプルは無線通信に限らず、有線通信によって取得しても良いし、予め他の装置にて収集したサンプル情報を記録媒体に記録しておき、当該記録媒体に記録されたサンプル情報を取得する構成であっても良い。また、特徴分布は旅行時間の時系列の分布において特定されていればよく、旅行時間に対応づけられる時刻は、車両が道路区間を走行した時刻を示すように定義されればよい。従って、車両が道路区間に含まれる基準地点を通過した時刻を旅行時間に対応づける構成であればよく、基準地点は上述のような道路区間の開始地点に限定されず、道路区間の終了地点や中央地点など、予め決められた任意の地点によって構成することができる。
【0077】
さらに、旅行時間の時系列の分布において特徴1あるいは特徴2のいずれかが観察された場合にそのサンプルを特徴分布とみなす構成であってもよいし、さらに他の特徴が観察された場合にそのサンプルを特徴分布と見なす構成であっても良い。他の特徴としては、例えば、上述の第1サンプルが示す時刻と上述の第2サンプルが示す時刻との差分が所定の関係になっていることが挙げられる。例えば、上述のように第1,第2サンプルが示す時刻の差分が所定間隔以下であるという特徴を特徴分布と見なす条件に追加しても良い。当該条件は、旅行時間に対応づけられる時刻が道路区間への進入時刻である場合に追加され得る条件である。旅行時間に対応づけられる時刻が道路区間からの退出時刻である場合には、第1,第2サンプルが示す時刻の差分が所定間隔以上であるという特徴を特徴分布と見なす条件に追加すればよい。むろん、両者において所定間隔は異なった期間であってよい。
【0078】
さらに、第2閾値は、少なくとも第2サンプルが示す時刻以後の所定期間内において定義されていればよく、当該所定期間より早い時刻あるいは遅い時刻に渡って第2閾値が定義されていても良い。例えば、第2閾値が第1サンプルが示す時刻や第1サンプルが示す時刻と第2サンプルが示す時刻との間の時刻以後の時刻において定義されていても良い。
【0079】
さらに、旅行時間の時系列の分布をシフトさせるための手順は、上述の
図3に示す手順に限定されない。例えば、上述の手順のように、サンプル情報がある程度蓄積された後に旅行時間の時系列の分布をシフトさせるのではなく、サンプル情報を収集する処理とシフトとを同時に行っても良い。すなわち、複数のサンプルが示す旅行時間の時系列の分布に基づいて特徴分布が特定され、特徴分布の最短周期が特定された後に収集されるサンプルが示す時刻については、常に当該最短周期の整数倍のシフトを行うこととする。そして、当該シフトを行った後に生成される分布で新たに特徴分布が特定された場合には、さらに特徴分布の最短周期を特定してシフトを行う構成とする。この構成によれば、サンプル情報の収集とシフトおよび信号周期の解析とを並行して実行することが可能である。むろん、特徴分布の最短周期はシフト量を特定する指標とするのみではなく、シフト先の期間を特定するための指標となっても良い。例えば、時系列の分布において、最短周期と同じ長さの期間となるように期間の開始時刻と終了時刻とを特定し、当該開始時刻から終了時刻までの期間に時刻がシフトされるように、他の期間の時刻を示すサンプルにおいて時刻に対して最短周期の整数倍の値を加算あるいは減算する補正を行う。なお、開始時刻や終了時刻の一方は時間軸上で任意のタイミングに設定され得るが、最短周期を形成する特徴分布が現れた最初の時刻を開始時刻とし、次に特徴分布が現れた最初の時刻を終了時刻とする構成とすれば、最短周期内に新たな特徴分布が現れるか否かを容易に解析することが可能になる。
【0080】
さらに、特徴分布を特定する際の構成として、特徴分布を構成するサンプルとして非現実的なサンプルが存在しない場合に特徴分布が出現したと見なす構成としても良い。例えば、上述の第2閾値を、所定期間内における旅行時間の時系列の分布の近似曲線によって定義しても良い。旅行時間の時系列の分布において複数の旅行時間を観察すると、
図2に示すように、旅行時間が一定の状態から当該一定の旅行時間よりも長い旅行時間に変化した後、徐々に旅行時間が短くなって再び旅行時間が一定の状態となる。
【0081】
すなわち、期間Tp内において、特定の変化傾向で旅行時間が短くなる。当該徐々に旅行時間が短くなる際の変化を特徴的な変化ととらえた場合、通常想定し得る範囲の加速度よりも大きい加速度で加速して道路区間を走行しない限り、上述の特徴的な変化と比較して過度に旅行時間が小さくなることはない。そこで、所定期間内における旅行時間の分布の近似曲線(直線を含む)が上述の特徴的な変化であると見なして上述の第2閾値とすれば、当該第2閾値よりも第3閾値以上小さい旅行時間を示すサンプルが存在しない場合に、当該所定期間内のサンプルを含む分布を特徴分布と見なすことができる。
【0082】
図2においては、期間Tp内における旅行時間を直線近似させた場合の直線を一点鎖線で示している。そこで、当該一点鎖線を第2閾値と見なした場合、期間Tp内の時刻であって第2閾値よりも第3閾値以上小さい旅行時間を示すサンプルが存在せず、上述の特徴1を備える分布が存在すれば当該分布を特徴分布と見なすことができる。この構成によれば、サンプル情報に基づいて第2閾値を動的に生成して特徴分布を特定することが可能である。なお、第2閾値は
図2に示すように直線であることは必須ではなく、曲線を示す関数によって近似曲線を定義して第2閾値とする構成等を採用しても良い。