特許第5708485号(P5708485)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5708485
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物及び成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/06 20060101AFI20150409BHJP
   C08K 5/18 20060101ALI20150409BHJP
   C08K 5/36 20060101ALI20150409BHJP
   C08G 69/26 20060101ALI20150409BHJP
   B60C 5/02 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
   C08L77/06
   C08K5/18
   C08K5/36
   C08G69/26
   B60C5/02 Z
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-516079(P2011-516079)
(86)(22)【出願日】2010年5月28日
(86)【国際出願番号】JP2010059138
(87)【国際公開番号】WO2010137704
(87)【国際公開日】20101202
【審査請求日】2013年4月3日
(31)【優先権主張番号】特願2009-129218(P2009-129218)
(32)【優先日】2009年5月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(72)【発明者】
【氏名】小川 俊
(72)【発明者】
【氏名】住野 隆彦
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−329169(JP,A)
【文献】 特開2003−026797(JP,A)
【文献】 特開平10−158461(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第01306168(FR,A1)
【文献】 特開昭59−027948(JP,A)
【文献】 特開2000−080270(JP,A)
【文献】 特開2008−275155(JP,A)
【文献】 特開平09−324121(JP,A)
【文献】 特開平08−311336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 77
C08G 69
C08K 5/18、5/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と炭素数6〜18の直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸単位とからなるポリアミド(A)、芳香族2級アミン化合物(B)および有機硫黄系化合物(C)を含むポリアミド樹脂組成物であって、
ポリアミド(A)100質量部に対して、芳香族2級アミン化合物を(B)0.05〜5質量部、および有機硫黄系化合物(C)を0.05〜5質量部含み、該有機硫黄系化合物(C)がメルカプトベンゾイミダゾール系化合物および有機チオ酸系化合物より選ばれる少なくとも1種類である、ポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
前記直鎖脂肪族ジカルボン酸が、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸およびドデカン二酸より選ばれる少なくとも1種類である請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
前記直鎖脂肪族ジカルボン酸が、セバシン酸およびアゼライン酸より選ばれる少なくとも1種類である請求項1または2記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
前記芳香族2級アミン化合物(B)が、ジフェニルアミン骨格を有する化合物、フェニルナフチルアミン骨格を有する化合物およびジナフチルアミン骨格を有する化合物より選ばれる少なくとも1種類である請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
前記芳香族2級アミン化合物(B)が、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミンおよび4,4′−ビス(α,α―ジメチルベンジル)ジフェニルアミンより選ばれる少なくとも1種類である請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
前記有機硫黄系化合物(C)が、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール、ジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3′−チオジプロピオネートおよびペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)より選ばれる少なくとも1種類である請求項1〜のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を含んでなる成形品。
【請求項8】
前記成形品が射出成形によるものである請求項記載の成形品。
【請求項9】
前記成形品が押出成形によるものである請求項記載の成形品。
【請求項10】
前記成形品が圧縮成形によるものである請求項記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂組成物及びそれを含んでなる成形品に関する。詳しくは特定のポリアミド原料、アミン化合物および有機硫黄系化合物よりなり、優れた成型加工性、耐熱性、耐熱老化性、低吸水性、耐薬品性、機械物性を有するポリアミド樹脂組成物及び成形品に関する。本発明のポリアミド樹脂組成物は、自動車部品、電気電子部品、機械部品などの産業、工業、および家庭用品の材料として有用であり、特に自動車エンジンルーム部品などの高熱条件で使用される種々の部品に好適に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
ナイロン6、ナイロン66に代表される脂肪族ポリアミドは、耐熱性、耐薬品性、剛性、耐磨耗性、成形性などの優れた性質を持つために、エンジニアリングプラスチックとして多くの用途に使用されてきた。これらの多くは耐熱性の要求される分野で使用されている。特に自動車部品など長期にわたり高温に晒されるような場合には、樹脂の熱劣化や酸化劣化が大きな問題となる。上記の脂肪族ポリアミドは融点は高いが、空気中で100℃以上の高温に晒されると短い時間で著しく脆くなる。そこで、このような長期熱安定性(以下、耐熱老化性と称することがある)が要求されるような用途分野で使用される場合には、様々な方法で高温での酸化劣化を防ぐ処方がなされている。
【0003】
最近では、従来のポリアミドよりも更に高融点の1,6−ヘキサンジアミンとテレフタル酸とを重縮合してなるポリアミドを主成分とした、6T系ポリアミドと呼ばれる半芳香族ポリアミドも、新しいエンジニアリングプラスチックとして使用され始めた。
例えば特許文献1では、6T系ポリアミドについて耐熱老化性を確保する方法が提案されている。しかしながら、テレフタル酸と1,6−ヘキサンジアミンとを重縮合してなるポリアミドは、ポリマーの分解温度を超える370℃付近に融点があるため、溶融重合、溶融成形が困難であり、実用に耐えるものではない。そのため実際には、アジピン酸、イソフタル酸などのジカルボン酸成分、あるいはナイロン6などの脂肪族ポリアミドを30〜40モル%共重合することにより、実使用可能温度領域、すなわち280〜320℃程度にまで低融点化した組成で用いられているのが現状である。このように多量の第3成分(場合によっては第4成分)を共重合することは、確かにポリマーの低融点化には有効なものの、一方では結晶化速度、到達結晶化度の低下を伴い、その結果、高温下での剛性、耐薬品性、寸法安定性などの諸物性が低下するばかりでなく、成形サイクルの延長に伴う生産性の低下をも招く。また、吸水による寸法安定性に関しては、従来の脂肪族ポリアミドに比べれば多少改善されてはいるものの、実質的な問題解決のレベルまでには達していない。また、耐熱老化性を確保するための、銅化合物の配合によるポリアミド樹脂組成物の靭性の低下、吸水率の増加も問題であった。
【0004】
6T系ポリアミド以外の高融点ポリアミドとして、1,9−ノナンジアミンおよび2−メチル−1,8−オクタンジアミンの混合物と、テレフタル酸とを重縮合してなる9T系ポリアミドと呼ばれる半芳香族ポリアミドがある。9T系ポリアミドについても、例えば特許文献2に、銅化合物および結晶核剤の添加により長期熱安定性を確保する方法が提案されている。しかしながらこれらの組成物も、結晶性、耐熱性、吸水に伴う寸法安定性などは改善されているものの、剛性が低いため適用範囲が限定されるという問題があった。また、9T系ポリアミドについても、銅化合物を配合することによるポリアミド樹脂組成物の靭性の低下、吸水率の増加は解決されていなかった。
【0005】
また、銅化合物以外の安定剤を配合して耐熱老化性を改善する方法としては、例えば特許文献3にヒンダードフェノール化合物、リン系安定剤および硫黄系安定剤を配合してなるポリアミド樹脂組成物が提案され、例えば特許文献4にアミン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤を配合してなるポリアミド樹脂組成物などが提案されているが、特に好ましい化合物の組合せについては記載されていない。
【0006】
【特許文献1】特開昭63−105057号公報
【特許文献2】特開平7−228768号公報
【特許文献3】特開平6−136263号公報
【特許文献4】特開平5−5060号公報
【特許文献5】特開2006−28327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記課題を解決し、耐熱性、耐熱老化性、機械物性に優れたポリアミド樹脂組成物及びそれを含んでなる成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、パラキシリレンジアミン単位を主成分とするジアミン単位と炭素数6〜18の直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位とからなるポリアミド、特定の芳香族2級アミン化合物および特定の有機硫黄系化合物よりなるポリアミド樹脂組成物が、耐熱性、耐熱老化性、耐薬品性、機械物性、寸法安定性などの諸物性に優れることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、パラキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と炭素数6〜18の直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸単位とからなるポリアミド(A)、芳香族2級アミン化合物(B)および有機硫黄系化合物(C)を含むポリアミド樹脂組成物であって、ポリアミド(A)100質量部に対して芳香族2級アミン化合物(B)を0.05〜5質量部、および有機硫黄系化合物(C)を0.05〜5質量部含むポリアミド樹脂組成物に関するものである。
また、本発明は、該ポリアミド樹脂組成物を含んでなる成形品に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、高い結晶化速度、高い到達結晶化度や低吸水性が要求される小型・薄肉の成形品、耐熱性能や剛性が要求される自動車の前照灯反射板、エンジンルーム部品などの高熱条件で使用される種々の部品に好適に使用することができる。また、本発明のポリアミド樹脂組成物は、フィルム、シート、チューブや繊維の形態に成形加工可能であり、工業用品および家庭用品に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<ポリアミド樹脂組成物>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、後述するジアミン単位とジカルボン酸単位とからなるポリアミド(A)、芳香族2級アミン化合物(B)および有機硫黄系化合物(C)を含有する。なお、本発明において、「ジアミン単位」とは、ポリアミドの原料ジアミン成分に由来する構成単位を指し、「ジカルボン酸単位」とは、ポリアミドの原料ジカルボン酸に由来する構成単位を指す。
【0012】
ポリアミド(A)に用いる原料のジアミン成分は、パラキシリレンジアミンを70モル%以上含むものであり、さらには80モル%以上含むことがより好ましく、90%以上含むことが特に好ましい。ジアミン成分中のパラキシリレンジアミンを70モル%以上とすることで、得られるポリアミドは高融点、高結晶性を示し、耐熱性、耐薬品性などに優れるポリアミド樹脂組成物として種々の用途に好適に用いることができる。原料のジアミン成分中のパラキシリレンジアミン濃度が70モル%未満の場合、耐熱性、耐薬品性が低下するため好ましくない。
【0013】
パラキシリレンジアミン以外の原料ジアミン成分としては、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、および5−メチル−1,9−ノナンジアミンなどの脂肪族ジアミン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、およびイソホロンジアミンなどの脂環式ジアミン;メタキシリレンジアミンなどの芳香脂肪族ジアミン;あるいはこれらの混合物が例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
ポリアミド(A)に用いる原料のジカルボン酸成分は、炭素数6〜18の直鎖脂肪族ジカルボン酸を70モル%以上含むものであり、さらには80%以上含むことがより好ましく、90%以上含むことが特に好ましい。炭素数6〜18の直鎖脂肪族ジカルボン酸を70モル%以上とすることで、得られるポリアミドは溶融加工時の流動性、高い結晶性、低吸水率を示し、耐熱性、耐薬品性、成型加工性、寸法安定性に優れるポリアミド樹脂組成物として種々の用途に好適に用いることが可能となる。原料ジカルボン酸成分中の炭素数6〜18の直鎖脂肪族ジカルボン酸濃度が70モル%未満の場合、耐熱性、耐薬品性、成型加工性が低下するため好ましくない。
【0015】
炭素数6〜18の直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、およびヘキサデカン二酸などが例示できる。中でもアゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、およびドデカン二酸が好ましく、特に好ましいのはセバシン酸およびアゼライン酸である。炭素数が6〜18の直鎖脂肪族ジカルボン酸を使用した場合、重縮合反応時のジカルボン酸の反応系外への留出によるジアミンとジカルボン酸との反応モル比の崩れや融点の低下を防止することができ、得られるポリアミドの機械物性、熱安定性や耐熱性の低下を抑制することができる。
【0016】
炭素数6〜18の直鎖脂肪族ジカルボン酸以外の原料ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、2,4−ジメチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、および2,7−ナフタレンジカルボン酸、あるいはこれらの混合物が例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
前記ジアミン成分、ジカルボン酸成分以外にも、ポリアミド(A)を構成する成分として、本発明の効果を損なわない範囲でε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類;アミノカプロン酸およびアミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類も共重合成分として使用できる。
【0018】
本発明におけるポリアミド(A)の重縮合時に、分子量調整剤として、ポリアミドの末端アミノ基またはカルボキシル基と反応性を有する単官能化合物を少量添加しても良い。使用できる化合物としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、およびピバリン酸などの脂肪族モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、およびナフタレンカルボン酸などの芳香族モノカルボン酸;ブチルアミン、アミルアミン、イソアミルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、およびオクチルアミンなどの脂肪族モノアミン;ベンジルアミン、およびメチルベンジルアミンなどの芳香脂肪族モノアミン、あるいはこれらの混合物が例示できるがこれらに限定されるものではない。
【0019】
本発明におけるポリアミド(A)の重縮合時に分子量調節剤を使用する場合、好適な使用量については、用いる分子量調節剤の反応性や沸点、反応条件などにより異なるものとなるが、通常、原料ジアミン、ジカルボン酸に対して0.1〜10質量%程度である。
【0020】
本発明におけるポリアミド(A)は、(a)溶融状態における重縮合、(b)溶融状態で重縮合して低分子量のポリアミドを得た後に固相状態で加熱処理するいわゆる固相重合、(c)溶融状態で重縮合して低分子量のポリアミドを得た後混練押出機を使用して溶融状態で高分子量化する押出重合など公知のポリアミド合成方法で得ることができる。
【0021】
溶融状態における重縮合方法は特に限定されるものではないが、ジアミン成分とジカルボン酸成分とのナイロン塩の水溶液を加圧下で加熱し、水及び縮合水を除きながら溶融状態で重縮合させる方法、ジアミン成分を溶融状態のジカルボン酸に直接加えて、常圧または水蒸気加圧雰囲気下で重縮合する方法を例示できる。ジアミンを溶融状態のジカルボン酸に直接加えて重合する場合、反応系を均一な液状状態で保つためにジアミン成分を溶融ジカルボン酸相に連続的に加え、生成するオリゴアミドおよびポリアミドの融点を下回らないように反応温度を制御しつつ重縮合が進められる。
【0022】
溶融重縮合で得られたポリアミドは一旦取り出され、ペレット化された後、乾燥して使用される。また更に重合度を高めるために固相重合しても良い。乾燥乃至固相重合で用いられる加熱装置としては、連続式の加熱乾燥装置やタンブルドライヤー、コニカルドライヤー、およびロータリードライヤー等と称される回転ドラム式の加熱装置、並びにナウタミキサーと称される内部に回転翼を備えた円錐型の加熱装置が好適に使用できるが、これらに限定されることなく公知の方法、装置を使用することができる。特にポリアミドの固相重合を行う場合は、上述の装置の中では、回分式加熱装置が系内を密閉化でき、着色の原因となる酸素を除去した状態で重縮合を進めやすいことから好ましく用いられる。
【0023】
本発明におけるポリアミド(A)の重縮合系内には、重縮合反応の触媒、重縮合計内に存在する酸素によるポリアミドの着色を防止する酸化防止剤として、リン原子含有化合物を添加しても良い。添加するリン原子含有化合物としては、次亜リン酸のアルカリ土類金属塩、リン酸のアルカリ金属塩、リン酸のアルカリ土類金属塩、ピロリン酸のアルカリ金属塩、ピロリン酸のアルカリ土類金属塩、メタリン酸のアルカリ金属塩およびメタリン酸のアルカリ土類金属塩などが挙げられる。具体的には、次亜リン酸カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素二マグネシウム、リン酸二水素マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸水素二カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸二水素リチウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸リチウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸マグネシウム、メタリン酸カルシウム、およびメタリン酸リチウム、あるいはこれらの混合物が例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
本発明におけるポリアミド(A)の重縮合系内に添加するリン原子含有化合物の添加量は、ポリアミド(A)中のリン原子濃度換算で50〜1000ppmであることが好ましく、さらには60〜400ppmであることがより好ましく、70〜300ppmであることが特に好ましい。リン原子濃度が50〜1000ppmであれば、酸化防止剤としての効果を十分に得られ、ポリアミド樹脂組成物の着色を防止することができる。また、ポリアミド樹脂組成物のゲル化反応が抑制され、成形品中への異物の混入による外観の悪化を防止することができる。
【0025】
また、本発明におけるポリアミド(A)の重縮合系内には、リン原子含有化合物と併用して重合速度調整剤を添加することが好ましい。重縮合中のポリアミドの着色を防止するためにはリン原子含有化合物を十分な量存在させる必要があるが、ポリアミドのゲル化を招く恐れがあるため、アミド化反応速度を調整するためにも重合速度調整剤を共存させることが好ましい。重合速度調整剤としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属酢酸塩およびアルカリ土類金属酢酸塩などが挙げられ、アルカリ金属水酸化物やアルカリ金属酢酸塩が好ましい。重合速度調整剤として具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、および酢酸バリウム、あるいはこれらの混合物が挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0026】
重縮合系内に重合速度調整剤を添加する場合、リン原子含有化合物のリン原子と重合速度調整剤とのモル比(=[重合速度調整剤の物質量]/[リン原子含有化合物のリン原子の物質量])が0.1〜1.0となるようにすることが好ましく、さらには0.2〜0.95であることがより好ましく、0.3〜0.8であることが特に好ましい。前記モル比が0.1〜1.0であれば、リン原子含有化合物のアミド化反応促進効果が適度に抑制され、ポリアミド中のゲルの発生が少なくなる。
【0027】
ポリアミド樹脂の重合度の指標としては、いくつかあるが、相対粘度は一般的に使われるものである。本発明におけるポリアミド(A)の好ましい相対粘度は1.8〜4.2であり、さらには1.9〜3.5であることがより好ましく、2.0〜3.0であることが特に好ましい。ポリアミド(A)の相対粘度が1.8〜4.2であれば、溶融したポリアミド(A)の流動性が安定化し成形品の外観悪化を防止することができ、また成形加工も安定化することができる。尚、ここで言う相対粘度は、ポリアミド1gを96%硫酸100mLに溶解し、キャノンフェンスケ型粘度計にて25℃で測定した落下時間(t)と、同様に測定した96%硫酸そのものの落下時間(t0)の比であり、下記式(1)で示される。
相対粘度=t/t0 ・・・(1)
【0028】
本発明におけるポリアミド(A)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定における数平均分子量(Mn)が10,000〜50,000の範囲であることが好ましく、14,000〜30,000の範囲であることが特に好ましい。Mnを10,000〜50,000の範囲にすることで、成形品とした場合の機械的強度が安定し、また成形性の上でも加工性良好となる適度な溶融粘度を持つものとなる。また、分散度(重量平均分子量/数平均分子量=Mw/Mn)が5.0以下であることが好ましく、3.5以下であることが特に好ましい。分散度を5.0以下とすることにより溶融時の流動性や溶融粘度の安定性が増し、溶融混練や溶融成形の加工性が良好となる。また靭性が良好であり、耐吸水性、耐薬品性、耐熱老化性といった諸物性も良好となる。
【0029】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド(A)以外の構成成分として芳香族2級アミン化合物(B)を含有する。芳香族2級アミン化合物の中でもジフェニルアミン骨格を有するもの、フェニルナフチルアミン骨格を有するものおよびジナフチルアミン骨格を有するものが好ましい。具体的には、フェニル−1−ナフチルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4′−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン、2,2′−ジナフチルアミン、1,2′−ジナフチルアミン、および1,1′−ジナフチルアミン、あるいはこれらの混合物が例示できるがこれらに限定されるものではない。これらの中でも4,4′−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンおよびN,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミンが特に好ましい。
【0030】
これらの芳香族2級アミン化合物(B)の配合量は、ポリアミド(A)100質量部に対して0.05〜5質量部が好ましい。さらには0.1〜2.0質量部であることがより好ましく、0.2〜1.0質量部であることが特に好ましい。配合量を0.05〜5質量部とすることにより、十分な耐熱老化の効果が得られ、また成形品表面へのブリードによる成形品の表面不良、表面硬度の低下などを防止することができる。
【0031】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド(A)以外の構成成分として有機硫黄系化合物(C)を含有する。有機硫黄系化合物の中でもメルカプトベンゾイミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸系化合物、チオウレア系化合物および有機チオ酸系化合物が好ましい。具体的には、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾールの金属塩、ジラウリル−3,3′−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3′−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジエチルジチオカルバミン酸の金属塩、ジブチルジチオカルバミン酸の金属塩、1,3−ビス(ジメチルアミノプロピル)−2−チオ尿素、およびトリブチルチオ尿素、あるいはこれらの混合物が例示できるがこれらに限定されるものではない。これらの中でも、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール、ジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3′−チオジプロピオネートおよびペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)が好ましく、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)が特に好ましい。
【0032】
これらの有機硫黄系化合物(C)の配合量は、ポリアミド(A)100質量部に対して0.05〜5質量部が好ましい。さらには0.1〜2.0質量部であることがより好ましく、0.2〜1.0質量部であることが特に好ましい。配合量を0.05〜5質量部とすることにより、十分な耐熱老化の効果が得られ、成形品表面へのブリードによる成形品の表面不良、表面硬度の低下などを防止することができる。
【0033】
本発明のポリアミド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、およびゲル化防止剤等の添加剤、層状珪酸塩等のクレイやナノフィラーなどの無機充填剤を加えることもできるが、以上に示したものに限定されることなく、種々の材料を混合することができる。
【0034】
また、本発明のポリアミド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、耐熱性樹脂を配合してもよい。このような耐熱性樹脂の例としてはポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、およびポリエーテルイミドなどを例示することができる。
【0035】
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、ポリアミド(A)、芳香族2級アミン(B)、有機硫黄系化合物(C)、さらに必要に応じてその他添加剤、樹脂および強化材を押出機やニーダーなどの公知の装置で溶融混練することによって得ることができる。例えばポリアミド(A)と無機充填剤以外の材料とを二軸押出機の基部ホッパーより供給し、無機充填剤は押出機途中より別フィーダーで供給して混練する方法が例示できる。
【0036】
<成形品>
本発明のポリアミド樹脂組成物を含んでなる成形品は、射出成形、ブロー成形、押出成形、圧縮成形、延伸、および真空成形などの公知の成形方法により製造することができる。本発明のポリアミド樹脂組成物は、エンジニアリングプラスチックとして成形体のみならず、フィルム、シート、中空容器、繊維、チューブなどの形態にも成形可能であり、産業資材、工業材料、家庭用品などに好適に使用することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本実施例において、各種測定は以下の方法により行った。
(1)ポリアミドの相対粘度
ポリアミド1gを精秤し、96%硫酸100mlに20〜30℃で攪拌溶解した。完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5mlを取り、25℃の恒温漕中で10分間放置後、落下時間(t)を測定した。また、96%硫酸そのものの落下時間(t0)も同様に測定した。tおよびt0から下記式(1)により相対粘度を算出した。
相対粘度=t/t0 ・・・(1)
(2)フィルムの引張強度
JIS−K−7127に準じてフィルムの引張強度(初期)を測定した。測定条件は各々、試験片幅:10mm、チャック間距離:50mm、引張速度:50mm/min、測定温度および湿度:23℃50%RHとし、装置は東洋精機株式会社製ストログラフELを使用した。
(3)耐熱老化性
作製したフィルムに対し、熱風乾燥機にて150℃で所定時間(50時間、100時間、150時間)の熱処理を行い、その後のフィルムの引張強度を(2)と同様の方法で測定し、初期の引張強度と比較した。
【0038】
<合成例1>
攪拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下装置及び窒素導入管、ストランドダイを備えた内容積50リットルの反応容器に、精秤したセバシン酸8950g(44.25mol)、次亜リン酸カルシウム12.54g(0.073mol)、及び酢酸ナトリウム6.45g(0.073mol)を秤量して仕込んだ(次亜リン酸カルシウムと酢酸ナトリウムとのモル比は0.5)。反応容器内を十分に窒素置換した後、窒素で0.3MPaに加圧し、攪拌しながら160℃に昇温してセバシン酸を均一に溶融した。次いでパラキシリレンジアミン6026g(44.25mol)を攪拌下で170分を要して滴下した。この間、反応容器内温は281℃まで連続的に上昇させた。滴下工程では圧力を0.5MPaに制御し、生成水は分縮器及び冷却器を通して系外に除いた。分縮器の温度は145〜147℃の範囲に制御した。パラキシリレンジアミン滴下終了後、0.4MPa/hの速度で降圧し、60分間で常圧まで降圧した。この間に内温は299℃まで昇温した。その後0.002MPa/minの速度で降圧し、20分間で0.08MPaまで降圧した。その後攪拌装置のトルクが所定の値となるまで0.08MPaで反応を継続した。0.08MPaでの反応時間は10分であった。その後、系内を窒素で加圧し、ストランドダイからポリマーを取り出してこれをペレット化し、約13kgのポリアミド1を得た。ポリアミド1の相対粘度は2.47であった。
【0039】
<実施例1>
100質量部のポリアミド1、0.2質量部のN,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン(大内新興化学工業株式会社製、商品名ノクラックwhite)、及び0.2質量部のペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)(住友化学株式会社製、商品名Sumilizer TP−D)を、T型ヘッドを備えた二軸押出機(東洋精機株式会社製、ラボプラストミル)の基部ホッパーに1kg/hの速度で供給した。次いで、シリンダー温度:280〜300℃、Tダイ温度:300℃にて、スクリュー回転数を40rpmとして押出し、冷却ロール温度50℃、引取り速度2.5m/にて引取り、厚さ70μmのフィルムを作製した。次いで150℃1時間のアニール処理を行い評価用フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0040】
<実施例2>
実施例1において、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンを0.4質量部、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)を0.4質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得、同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0041】
<実施例3>
実施例1において、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンを4,4′−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(大内新興化学工業株式会社製、商品名ノクラックCD)に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得、同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0042】
<実施例4>
実施例1において、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)をジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート(住友化学株式会社製、商品名Sumilizer TPM)に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得、同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0043】
<実施例5>
実施例1において、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)を2−メルカプトベンゾイミダゾール(住友化学株式会社製、商品名Sumilizer MB)に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得、同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0044】
<実施例6>
実施例1において、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンを0.2質量部、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)を3.0質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得、同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0045】
<実施例7>
実施例1において、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンを3.0質量部、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)を0.2質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得、同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0046】
<比較例1>
実施例1において、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン及びペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)を添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得、同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0047】
<比較例2>
実施例1において、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)を添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得、同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0048】
<比較例3>
実施例1において、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンを添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得、同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0049】
<比較例4>
実施例1において、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンをN,N′−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)](チバ・ジャパン株式会社製イルガノックス1098)に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得、同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0050】
<比較例5>
実施例1において、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)をN,N′−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)]に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得、同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0051】
<比較例6>
実施例1において、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)をビス(2,6−ジ-tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト(旭電化(株)製、商品名:Mark PEP−36)に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得、同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
[注]
1)芳香族2級アミン化合物(B)及び有機硫黄化合物(C)等の添加剤の添加量は、ポリアミド1を100質量部を基準とする。
2)B−1:N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン
3)B−2:4,4′−ビス(α,α―ジメチルベンジル)ジフェニルアミン
4)B−3:N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン
5)C−1:ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)
6)C−2:ジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート
7)C−3:2−メルカプトメチルベンズイミダゾール
8)D−1:N,N′−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)](チバ・ジャパン株式会社製、イルガノックス1098)
9)E−1:N,N′−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)]
10)E−2:ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト(旭電化(株)製、商品名:Mark PEP−36)
【0054】
表1から明らかなように、各比較例では熱処理後の引張強度が大幅に低下したのに対し、各実施例では初期の引張強度がほぼ維持されており、耐熱老化性に優れている。