(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5708511
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】放射性セシウム含有飛灰のセメント固化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/30 20060101AFI20150409BHJP
G21F 9/02 20060101ALI20150409BHJP
G21F 9/32 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
G21F9/30 515C
G21F9/02 551Z
G21F9/32 J
G21F9/32 K
G21F9/32 C
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-16063(P2012-16063)
(22)【出願日】2012年1月30日
(65)【公開番号】特開2013-156107(P2013-156107A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085109
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 政浩
(72)【発明者】
【氏名】藤原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】多田 光宏
(72)【発明者】
【氏名】平本 泰敏
【審査官】
藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−309316(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3059152(JP,U)
【文献】
特開2004−066229(JP,A)
【文献】
特開昭59−136120(JP,A)
【文献】
特開昭61−008700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/02
G21F 9/12
G21F 9/16
G21F 9/30
G21F 9/32
B01D 53/34
B01D 53/68
B09B 1/00−5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性セシウム含有物を焼却する焼却炉あるいは溶融する溶融炉から排出される排ガス中の飛灰を煙道の集塵機で捕集し、これに水とセメントを加えて固化物とする方法において、該集塵機から捕集される飛灰の放射性物質の濃度変化を計測するとともに、該煙道の集塵機より上流側において、粉粒体状の陽イオン交換体を吹込み、該陽イオン交換体の吹込量を計測された放射性物質の濃度に応じて変えることを特徴とする、放射性セシウム含有飛灰のセメント固化物の製造方法。
【請求項2】
放射性セシウム含有物を焼却する焼却炉あるいは溶融する溶融炉から排出される排ガス中の飛灰を煙道の集塵機で捕集し、これに水とセメントを加えて固化物とする方法において、該煙道の集塵機より上流側において、放射性物質の濃度変化を計測するとともに、粉粒体状の陽イオン交換体を吹込み、該陽イオン交換体の吹込量を計測された放射性物質の濃度に応じて変えることを特徴とする、放射性セシウム含有飛灰のセメント固化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性セシウムを含有する飛灰や溶融飛灰のセメント固化物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所等の放射性物質を取扱う施設から排出される廃棄物のうち可燃性のものは焼却処理されるが、その焼却の際に発生する焼却灰には放射性物質が含まれており、そのなかで放射性セシウムは半減期が
134Csで約2年、
137Csで約30年と長いので、その保管には細心の注意を払う必要がある。特に、最近では福島県の原子力発電所の事故により多量の放射性物質が放出されて広範囲にわたって汚染を引起し、その汚染地域から出される可燃物の焼却灰の処理も問題になっている。
【0003】
そこで、環境省では、放射性セシウム濃度が8,000Bq/kgを超え100,000Bq/kg以下の焼却灰については、セメントを加えて固化物とし、セメント固化物の周囲を覆って埋立処分する指針を示している(非特許文献1)。そして、セメントの固化物の強度について、セメント固化物1m
3あたり150kg以上で、埋立処分を行う際の一軸圧縮強度が0.98メガパスカルの場合とそうでない場合の埋立方法を別に規定している。
【0004】
一方、有害物を含む焼却灰のセメント固化方法として配合比率を変えて一軸圧縮強度を求めた報告もある(非特許文献2)。
【0005】
また、放射性廃棄物の焼却灰をセメントで固化する際に、焼却処理によって生じた塩化鉛等の重金属塩化物を水への溶解性が低い状態に変換する方法も開示されている(特許文献1)。この変換には、アルカリ金属水酸化物やアルカリ土類金属水酸化物などが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−256660号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】環境省環廃対発第110831001号、環廃産発第110831001号、平成23年8月31日
【非特許文献2】川戸ら、「焼却灰のセメント固化試験I−模擬焼却灰の基本的固化特性−」、JAEA−Technology2010−013、2010年7月、p1〜38
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
焼却灰のセメント固化物には亀裂が入っていることがあり、その場合、雨水が浸透するとこの亀裂から放射性セシウムが溶出してくる。そこで、従来の埋立方法では、埋立処分場の構造を変えて、隔壁層を設けたり、コンクリート容器に入れたり、処分場からの廃水を処理する方法などが挙げられている。しかしながら、放射性セシウムは漏出しないよう細心の注意を払う必要があり、これらの方法でも、運搬中のトラブルや地震などによる処分場の地割れや廃水処理設備のトラブルなどの不測の事態が起これば放射性セシウムが漏出する懸念がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討の結果、焼却灰の内、炉底灰である主灰には放射性セシウムの含有量が少なく、また、セシウムが主に水に難溶性の酸化物の形態で存在しているのに対し、煙道から捕集される飛灰には放射性セシウムの含有量が大きく、しかも多くが水溶性の塩化セシウムなどの形態で含まれていることを見出した。そして、この飛灰に予め水に難不溶性で粉粒体状の陽イオン交換体を混合し、水を加えてスラリー状にしておけば、そこに含まれている塩化セシウムなどの水溶性の放射性セシウムが溶けだして、放射性セシウムが陽イオン交換体に吸着され、この状態でセメント固化物にしておけば、雨水が浸透してきても放射性セシウムは陽イオン交換体に吸着されていて溶出の問題がなく、放射性セシウムをセメント固化物に封じ込めておくことが出来ることを見出した。
【0010】
そして、この陽イオン交換体を煙道に吹込むことにより、陽イオン交換体を飛灰と均一に混合できることを見出した。そして、さらに、煙道、集塵機から捕集される飛灰の放射性物質の濃度変化を計測し、その計測値に応じて陽イオン交換体の吹込量を変えることによって放射性セシウムの溶出を安定して抑制できることを見出した。
【0011】
本発明は、これらの知見に基いてなされたものであり、放射性セシウム含有物を焼却する焼却炉あるいは溶融する溶融炉から排出される排ガス中の飛灰を煙道の集塵機で捕集し、これに水とセメントを加えて固化物とする方法において、該集塵機から捕集される飛灰の放射性物質の濃度変化を計測するとともに、該煙道の集塵機より上流側において、粉粒体状の陽イオン交換体を吹込み、該陽イオン交換体の吹込量を計測された放射性物質の濃度に応じて変えることを特徴とする、放射性セシウム含有飛灰のセメント固化物の製造方法と、放射性セシウム含有物を焼却する焼却炉あるいは溶融する溶融炉から排出される排ガス中の飛灰を煙道の集塵機で捕集し、これに水とセメントを加えて固化物とする方法において、該煙道の集塵機より上流側において、放射性物質の濃度変化を計測するとともに、粉粒体状の陽イオン交換体を吹込み、該陽イオン交換体の吹込量を計測された放射性物質の濃度に応じて変えることを特徴とする、放射性セシウム含有飛灰のセメント固化物の製造方法を提供するものである。
【0012】
本発明の方法の概略を
図1に示す。同図に示すように、汚染飛灰に、微粉化陽イオン交換体と水を加えて混合することによって放射性セシウムを陽イオン交換体に吸着させ、これにセメントを加えて固化物とすることにより、埋立てても放射性セシウムの溶出しない安定固化物を得ることができる。
【0013】
一方、従来の方法では、
図4に示すように、水溶性の放射性セシウムがそのままセメントで固化されているので、雨水が割れ目等から浸透すると放射性セシウムが溶出してくる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、放射性セシウムを含有する飛灰を安定してセメント固化物に封じ込めて、埋立て処分場からの溶出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】本発明による方法の一例を示す工程図である。
【
図3】本発明による方法の他の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
放射性セシウム含有物は、焼却処理される、放射性セシウムを含有する可燃物、その焼却灰、溶融飛灰などである。すなわち、放射性セシウムを含有する可燃物を焼却した焼却灰には、焼却炉の炉底に溜まる炉底灰である主灰と、燃焼排ガスに含まれてバグフィルター等の集塵機で捕集される飛灰がある。また、この主灰を溶融炉で加熱溶融してスラグ化する際に発生してバグフィルター等の集塵機で捕集される溶融飛灰もある。本発明では、焼却炉から発生する飛灰と溶融炉から発生する飛灰のいずれにも適用できる。これら飛灰のセシウムの含有量は通常0.1〜10ppm程度であり、そのうち、放射性セシウムの含有量は、放射能濃度により異なるが、初期の灰の放射線濃度を
134Csと
137Csが等しく、たとえば、それぞれ500Bq/kg(すなわち、合計で1,000Bq/kg)とすると、
134Csは約10pg/kg、
137Csは約155pg/kgと極微量である。
【0017】
焼却炉の種類は問わないが、通常のごみの焼却炉などでよく、基本的には、燃焼炉と、それに放射性セシウム含有可燃物を投入する投入口、燃焼排ガスを排出する煙道と煙窓、煙道の途中に設けられる集塵機、燃焼の結果生じた焼却灰の取出口などで構成される。
【0018】
溶融炉は、焼却炉で発生した焼却灰を溶融スラグ化する炉であり、シャフト式ガス化溶融炉や電気抵抗式灰溶融炉などがある。
【0019】
煙道は、これらの焼却炉や溶融炉の排ガスの通路であり、その途中に排ガス中の飛灰を捕集する集塵機が設けられる。
【0020】
集塵機の種類は問わないが、典型的なものはバグフィルターである。
【0021】
本発明では、煙道又は集塵機あるいはそれから排出される飛灰の放射性物質の濃度変化を計測する。放射性物質はセシウムのみではないが、原子力発電所から排出されて半減期が長いのは放射性セシウムであるから、現実に、飛灰に含まれる放射性物質はほとんどが放射性セシウムである。
【0022】
放射性物質の濃度変化の計測には市販の放射能計測器を用いれば足りる。放射能計測器の例としては、ガイガーカウンター、シンチュレーションカウンター等を挙げることができる。
【0023】
放射能計測器の取付位置として、煙道に設ける場合には、配管の側壁に設けた座を例示することができる。集塵機あるいはそれから排出される飛灰で計測する場合には、集塵機自体の入口配管の外、そこから排出される飛灰のホッパー、クリーンルーム、出側の配管等を取付位置として例示することができる。放射能の計測は、連続あるいは断続的に行ない、放射能の経時変化を測定する。そして、原則として、レコーダー等で記録する。
【0024】
煙道に吹込む陽イオン交換体は、放射性セシウムを効率よく吸着できるものが良い。また、放射性セシウムを吸着後も雨水等で溶出しないために水に難不溶性、特に不溶性のものがよく、均一に混合させる観点から粉粒体であることが好ましい。
【0025】
このような陽イオン交換体の好ましいものの例としては、無機の陽イオン交換体では、ゼオライト、ベントナイト、ヘテロボリ酸塩であるモリブドリン酸アンモニウム、タングストリン酸アンモニウム、およびNi系もしくはFe系フェロシアン化物等、有機の陽イオン交換体ではイオン交換樹脂、破砕したイオン交換膜等を挙げることができる。イオン交換樹脂やイオン交換膜は、イオン交換基が酸基のものであり、強酸性、弱酸性のいずれであってもよい。陽イオン交換容量は大きいほうが好ましく、50meq/100g以上、好ましくは、100meq/100g以上のものがよい。上限は特に制限されないが、実用上120meq/100g程度まで、特に200meq/100g程度である。粒径は、均一分散という観点からは細かい方がよいが、あまり細かいと凝集しやすい等の取り扱い上の問題があり、大きすぎると吸着能力上好ましくない。そこで、平均粒径で0.01〜200μm程度、好ましくは0.1〜50μm程度のものがよい。粒形は問わないが、球形、破砕形などを例示することができる。
【0026】
特に、フェロシアン化物をシリカゲルやシリカなどの無機多孔体に担持しておくことが好ましい。好ましいフェロシアン化物の例として、プルシアンブルー、フェロシアン化カリウム、フェリシアン化カリウム、へキサシアノニッケル(II)鉄(II)酸カリウム等のヘキサシアノ鉄塩等を挙げることができる。担持方法としては、Ni(NO
3)
2、K
4Fe(CN)
6塩溶液を順次含浸させ、不溶性フェロシアン化物を細孔内に沈殿生成させることが好ましい。
【0027】
陽イオン交換体の吹込量としては、飛灰重量では、灰100g当り1〜100g程度、好ましくは10〜50g程度になるようにするのがよい。フェロシアン化物を担持させた無機多孔体の場合には、1〜2割程度添加量を減少させることができる。
【0028】
本発明においては、煙道又は集塵機あるいはそれから排出される飛灰の放射性物質の濃度変化の計測結果に基いて陽イオン交換体の吹込量を増減させて、上記の添加量範囲に入るように調整する。この調整は厳密に行わなくともよく、段階的に可変すればよい。
【0029】
集塵機から回収した飛灰と陽イオン交換体の混合物における飛灰中の放射性セシウムを陽イオン交換体に吸着させるためには水を存在させてスラリー状にする必要がある。この水の添加量は少なすぎると放射性セシウムの陽イオン交換体への吸着が不充分になり、多すぎるとその後のセメント固化の障害になるためその対策が必要になる。そこで、飛灰と陽イオン交換体の混合物をスラリー状に存在させるための水の量は、飛灰に対して10〜90重量%、好ましくは20〜70重量%である。飛灰に対して水の添加量が10重量%未満の場合、飛灰と陽イオン交換体の混合物はスラリー状にならず陽イオン交換体への吸着が不充分となる。さらに、飛灰に対して水の添加量が90重量%を超えると、セメントが固化するまで長時間を要する。
【0030】
混合物に水を加えた後は、撹拌混合して、放射性セシウムが陽イオン交換体に充分吸着するようにする。そのためには、水溶性の放射性セシウムの飛灰からの溶出と、溶出した放射性セシウムの陽イオン交換体への移動が必要であり、混合後10〜20分程度おくことが好ましい。セメントは、この撹拌混合時に加えてもよいが、放射性セシウムの陽イオン交換体へ吸着させた後に加えるほうが、吸着を充分に行わせる点で好ましい。
【0031】
このようにして生成したスラリーに、鉛、カドニウムなどの溶出を防止する重金属の安定剤を水とともに添加してもよい。重金属溶出安定剤としては、ジチオカルバミン酸ソーダのようなキレート薬剤やリン酸化合物を用いることができる。
【0032】
セメントの種類は、特に限定されず、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメント、高炉セメント、低アルカリ性セメント、水砕スラグ系セメントなどを使用することができる。セメントの配合量は、非特許文献1の別添資料に示された、セメント固化物1m
3当り150kg以上、かつ埋立処分を行う際における一軸圧縮強度が0.98メガパスカルの強度が得られるように定められ、セメントの種類等にもよるが、通常飛灰に対する重量比で10〜50重量%程度である。セメントには砂利、砂、その他の各種骨材を配合することもできる。セメント混合物には、水分が不足している場合には、不足分の水を追加して混練し、型に流し込んで設定強度が得られるまで養生し、非特許文献1の指針に従い、所定の構造で埋立てを行う。
【実施例】
【0033】
(実施例1)
本発明による方法の一例を
図2の工程図に従って説明する。
【0034】
放射性セシウムを含有する可燃物を焼却炉で焼却する。焼却で生じた排ガスは、煙道を通って集塵機であるバグフィルターで集塵されてから煙窓から大気中に放出される。煙道の集塵機の上流側には陽イオン交換体の吹込口が設けられ、そこからゼオライトが吹込まれる。バグフィルターで集塵されて落下した飛灰とゼオライトの混合物はホッパーに入り、そこで攪拌され、一時的に貯留される。このホッパーには放射能計測器が取付けられていて、その計測値に応じてゼオライトの吹込量が調整される。このホッパーからはスクリューフィーダーにより混練・成型機に供給される。この混練・成型機には、セメントもスクリューフィーダーにより供給され、さらに、ジチオカルバミン酸ソーダからなるキレート薬剤と加湿水もそれぞれのタンクから供給される。混練・成型機内では、混練されて放射性セシウムがゼオライトに吸着され、さらに成型され養生コンベア上で固化した固化物はピットに入って埋立地に搬送される。
【0035】
ここで、得られた飛灰の成分は、Si:10重量%、Al:2重量%、Ca:20重量%、Na:4重量%、K:4重量%、Cl:10重量%、Pb:0.3重量%であり、放射性セシウムの濃度(
134Csと
137Csの合計)は10,000Bq/kgである。
【0036】
また、陽イオン交換体は、以下の性質を有する天然ゼオライト(新東北化学工業製)を用いた。
【0037】
・ 酸化ケイ素(SiO
2):70重量%
・ 酸化アルミニウム(Al
2O
3):10重量%
・ 酸化カルシウム(CaO):2重量%
・ 平均粒径:30μm
・ 交換容量:110meq/100g陽イオン
焼却炉の煙道に、飛灰100gあたり平均で30gの陽イオン交換体を吹込み混合した。
煙道では、HClやSO
Xを除去するために、消石灰などの酸性ガス除去薬剤を吹き込んでいるが、酸性ガス除去薬剤と煤塵量とを合計した量を飛灰量とした。
【0038】
混練・成型機では、飛灰100gに対して、水50mLを添加し、重金属溶出安定剤として、ジチオカルバミン酸ソーダからなるキレート薬剤を飛灰100gに対して1g添加した。
【0039】
セメントは飛灰100gに対して30g添加し、養生コンベア上で養生してセメント固化物を製造した。
【0040】
環境庁告示13号法に基いて上記のセメント固化物の溶出試験を実施した結果、放射性セシウムの溶出濃度は100Bq/Lであった。一方、陽イオン交換体を煙道に吹込まないでセメント固化物を製造した場合、放射性セシウムの溶出濃度は1,000Bq/Lであった。
(実施例2)
本発明による方法の他の一例を
図3の工程図に従って説明する。
【0041】
放射性セシウムを含有する可燃物を焼却炉で焼却する。焼却で生じた排ガスは、煙道を通って集塵機であるバグフィルターで集塵されてから煙窓から大気中に放出される。この煙道には放射能計測器が取付けられていて、その計測値に応じてゼオライトの吹込量が調整される。煙道の集塵機の上流側には陽イオン交換体の吹込口が設けられ、そこからゼオライトが吹込まれる。バグフィルターで集塵されて落下した飛灰とゼオライトの混合物はホッパーに入り、そこで攪拌され、一時的に貯留される。このホッパーからはスクリューフィーダーにより混練・成型機に供給される。この混練・成型機には、セメントもスクリューフィーダーにより供給され、さらに、ジチオカルバミン酸ソーダからなるキレート薬剤と加湿水もそれぞれのタンクから供給される。混練・成型機内では、混練されて放射性セシウムがゼオライトに吸着され、さらに成型され養生コンベア上で固化した固化物はピットに入って埋立地に搬送される。
【0042】
ここで、焼却炉からの焼却灰の成分は、Si:5重量%、Al:5重量%、Ca:15重量%、Na:10重量%、K:10重量%、Cl:17重量%であり、放射性セシウムの濃度(
134Csと
137Csの合計)は5,500Bq/kgである。
【0043】
また、陽イオン交換体は、実施例1と同様の天然ゼオライトを用いた。
【0044】
焼却炉の煙道に、焼却灰100gあたり平均で65gの陽イオン交換体を吹込み混合した。
【0045】
混練・成型機では、飛灰100gに対して、水50mLを添加し、重金属溶出安定剤として、ジチオカルバミン酸ソーダからなるキレート薬剤を飛灰100gに対して1g添加した。
【0046】
セメントは飛灰100gに対して30g添加し、養生コンベア上で養生してセメント固化物を製造した。
【0047】
環境庁告示13号法に基いて上記のセメント固化物の溶出試験を実施した結果、放射性セシウムの溶出濃度は90Bq/Lであった。一方、陽イオン交換体を煙道に吹込まないでセメント固化物を製造した場合、放射性セシウムの溶出濃度は1,500Bq/Lであった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明により、放射性セシウムを漏出させずに埋立処分できるので、放射性セシウム含有飛灰の埋立処理に広く利用できる。