(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0018】
本発明のR−T−B系永久磁石は、組成が(R
1−x(Y
1−zCe
z)
x)
2T
14B(RはLa、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuの1種以上からなる希土類元素であり、TはFeまたはFeおよびCoを必須とする1種以上の遷移金属元素、0.0<x≦0.5、0.0≦z≦0.5)である主相粒子を含み、前記主相粒子における正方晶R
2T
14B構造中の4fサイトを占有するYをY
4fとし、4gサイトを占有するYをY
4gとしたときの存在比率Y
4f/(Y
4f+Y
4g)が、0.8≦Y
4f/(Y
4f+Y
4g)≦1.0であることを特徴とする。
【0019】
本実施形態において、RはLa、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuの1種以上からなる希土類元素である。
【0020】
本実施形態において、主相粒子の組成に占めるYとCeの総量xは0.0<x≦0.5である。xの増加に伴って、原子量の大きいNdを原子量の小さいYで置換することによる低密度化、すなわち磁石の軽量化の効果が高くなる。しかしながら、xが0.5を超えると得られる試料の磁気特性が著しく低下する。
【0021】
本実施形態において、YとCeの相対量zは0.0≦z≦0.5である。Yは正方晶R
2T
14B構造のRとして選択される元素として最も原子量が小さく、磁石の軽量化のみに着目すれば、Yのみによる置換(z=0.0)が有効である。しかしながら、正方晶Nd
2Fe
14B構造の4fサイトを選択的にYに置換するには、置換したYが4fサイトにて安定となるよう、4fサイトおよび4gサイトの大きさ(近接原子間距離)を適当に調整する必要があり、価数揺動および、それに伴うイオン半径の変化を示すCeを適当な量(0.0≦z≦0.5)だけYとともにRに置換することが好ましい。
【0022】
本実施形態において、Bはその一部をCで置換してもよい。Cの置換量はBに対して10原子%以下とすることが好ましい。
【0023】
本実施形態において、組成残部であるTはFeまたはFeおよびCoを必須とする1種以上の遷移金属元素である。Co量はT量に対して0原子%以上10原子%以下が望ましい。Co量の増加によってキュリー温度を向上させることができ、温度上昇に対する保磁力の低下を小さく抑えることが可能となる。また、Co量の増加によって希土類永久磁石の耐食性を向上させることができる。
【0024】
以下、本件発明の製造方法の好適な例について説明する。
本実施形態のR−T−B系永久磁石の製造においては、まず、所望の組成を有するR−T−B系磁石が得られるような原料合金を準備する。原料合金は、真空又は不活性ガス、望ましくはAr雰囲気中でストリップキャスト法、その他公知の溶解法により作製することができる。ストリップキャスト法は、原料金属をArガス雰囲気などの非酸化雰囲気中で溶解して得た溶湯を回転するロールの表面に噴出させる。ロールで急冷された溶湯は、薄板または薄片(鱗片)状に急冷凝固される。この急冷凝固された合金は、結晶粒径が1〜50μmの均質な組織を有している。原料合金は、ストリップキャスト法に限らず、高周波誘導溶解等の溶解法によって得ることができる。なお、溶解後の偏析を防止するため、例えば水冷銅板に傾注して凝固させることができる。また、還元拡散法によって得られた合金を原料合金として用いることもできる。
【0025】
本発明においてR−T−B系永久磁石を得る場合、原料合金として、1種類の合金から磁石を作成するいわゆるシングル合金法の適用を基本とするが、主相粒子であるR
2T
14B結晶を主体とする主相合金(低R合金)と、低R合金よりRを多く含み、粒界の形成に有効に寄与する合金(高R合金)とを用いる所謂混合法を適用することもできる。
【0026】
原料合金は粉砕工程に供される。混合法による場合には、低R合金及び高R合金は別々に又は一緒に粉砕される。粉砕工程には、粗粉砕工程と微粉砕工程とがある。まず、原料合金を、粒径数百μm程度になるまで粗粉砕する。粗粉砕は、スタンプミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル等を用い、不活性ガス雰囲気中にて行なうことが望ましい。粗粉砕に先立って、原料合金に水素を吸蔵させた後に放出させることにより粉砕を行なうことが効果的である。水素放出処理は、希土類焼結磁石として不純物となる水素を減少させることを目的として行われる。水素吸蔵のための加熱保持の温度は、200℃以上、望ましくは350℃以上とする。保持時間は、保持温度との関係、原料合金の厚さ等によって変わるが、少なくとも30分以上、望ましくは1時間以上とする。水素放出処理は、真空中又はArガスフローにて行う。なお、水素吸蔵処理、水素放出処理は必須の処理ではない。この水素粉砕を粗粉砕と位置付けて、機械的な粗粉砕を省略することもできる。
【0027】
粗粉砕工程後、微粉砕工程に移る。微粉砕には主にジェットミルが用いられ、粒径数百μm程度の粗粉砕粉末を、平均粒径2.5〜6μm、望ましくは3〜5μmとする。ジェットミルは、高圧の不活性ガスを狭いノズルより開放して高速のガス流を発生させ、この高速のガス流により粗粉砕粉末を加速し、粗粉砕粉末同士の衝突やターゲットあるいは容器壁との衝突を発生させて粉砕する方法である。
【0028】
微粉砕には湿式粉砕を用いても良い。湿式粉砕にはボールミルや湿式アトライタなどが用いられ、粒径数百μm程度の粗粉砕粉末を、平均粒径1.5〜5μm、望ましくは2〜4.5μmとする。湿式粉砕では適切な分散媒の選択により、磁石粉が酸素に触れることなく粉砕が進行するため、酸素濃度が低い微粉末が得られる。
【0029】
成形時の潤滑及び配向性の向上を目的とした脂肪酸又は脂肪酸の誘導体や炭化水素、例えばステアリン酸系やオレイン酸系であるステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、炭化水素であるパラフィン、ナフタレン等を微粉砕時に0.01〜0.3wt%程度添加することができる。
【0030】
微粉砕粉は磁場中成形に供される。磁場中成形における成形圧力は0.3〜3ton/cm
2(30〜300MPa)の範囲とすればよい。成形圧力は成形開始から終了まで一定であってもよく、漸増または漸減してもよく、あるいは不規則変化してもよい。成形圧力が低いほど配向性は良好となるが、成形圧力が低すぎると成形体の強度が不足してハンドリングに問題が生じるので、この点を考慮して上記範囲から成形圧力を選択する。磁場中成形で得られる成形体の最終的な相対密度は、通常、40〜60%である。
【0031】
印加する磁場は、960〜1600kA/m(10〜20kOe)程度とすればよい。印加する磁場は静磁場に限定されず、パルス状の磁場とすることもできる。また、静磁場とパルス状磁場を併用することもできる。
【0032】
成形体は焼結工程に供される。焼結は真空又は不活性ガス雰囲気中にて行われる。焼結保持温度および焼結保持時間は、組成、粉砕方法、平均粒径と粒度分布の違い等、諸条件により調整する必要があるが、凡そ1000℃〜1200℃、2時間〜20時間であればよい。しかるべき保持時間経過の後に降温させる工程に移るが、降温速度は10
−4℃/秒〜10
−2℃/秒とすればよい。この時、降温速度は保持温度から室温に至るまで常に一定とする必要は無く、所定の温度帯域のみにおいて前記範囲に制御すればよい。この降温速度を制御すべき帯域の温度は組成によって決まるが、凡そ400℃〜1000℃である。組成によって決まる所定の温度帯域において、降温速度を制御することによって、組成中に含まれる複数種類の元素が、構造的に最も安定な配置となり、本件発明の特徴である構造が形成されるものと発明者らは考える。すなわち、降温速度は十分に遅いことが本件発明を実現するための必要条件であり、少なくとも降温速度を10
−2℃/秒よりも遅くする必要があるが、10
−4℃/秒よりも遅い降温速度は製造上の効率の著しい低下を招くため、現実的ではない。
【0033】
焼結後、得られた焼結体に時効処理を施すことができる。時効処理工程は保磁力を増大させるために有効な工程であるが、前記の降温速度を制御すべき温度帯域の近傍の温度にて時効処理を行う際は、時効温度からの冷却速度も前記降温速度の範囲にて制御することが有効である。
【0034】
以上、本件発明を好適に実施するための製造方法に関する形態を説明したが、次いで、本件発明のR−T−B系永久磁石について、主相粒子の組成およびR
2T
14B結晶構造中の希土類の占有位置を分析する方法について説明する。
【0035】
本件発明において、R−T−B系永久磁石の組成は、エネルギー分散型X線分析にて決定することが可能である。試料である焼結体を磁化容易軸である成形時の磁場印加方向と垂直に切断し、X線回折法によって主たる生成相が正方晶R
2T
14B構造に帰属されることを確認した後に、焼結体を集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)装置にて厚さ100nmの薄片状に加工し、走査透過電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscope)に備えられたエネルギー分散型X線分析(EDS:Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)装置にて主相粒子の中央近傍を分析し、薄膜補正機能を用いることによって主相粒子の組成を定量化できる。
【0036】
EDS装置は軽元素に対する感度が低いためにBの定量化は困難である。そこで、あらかじめX線回折法によって確認した、主たる生成相が正方晶R
2T
14B構造であることを根拠として、B以外の元素の組成比を以って主相粒子の組成を決定することができる。
【0037】
上述の方法によって定量化される主相粒子の組成は、焼結体試料全体の組成を調整することによって制御が可能である。誘導結合高周波プラズマ分光分析(ICP分光分析:Inductively Coupled Plasma Spectrometry)によって求めた焼結体試料全体の組成と、EDS装置にて求めた主相粒子の組成を比較した結果、焼結体試料全体の組成において希土類量が多い傾向を示した。これは焼結体試料は焼結による緻密化および粒界形成のために化学量論比組成であるR
2T
14Bよりも多い希土類を含む必要があることに起因する。しかしながら、Rとして含まれる希土類元素の割合については、焼結体試料全体の組成と主相粒子の組成は略同一であった。すなわち、焼結体試料全体の組成の調整によって、主相粒子R
2T
14BにRとして含まれる希土類元素の割合を制御することが可能である。
【0038】
正方晶R
2T
14B構造中の4fサイトを占有するYをY
4fとし、4gサイトを占有するYをY
4gとしたときの存在比率Y
4f/(Y
4f+Y
4g)は0.8≦Y
4f/(Y
4f+Y
4g)≦1.0である。本発明はNd
2Fe
14Bの異方性と垂直方向のイオン異方性によって、結晶全体の一軸異方性の損失を招いている4fサイトを占有するNdのみを、異方性を示さない球形電子雲を有するYに置換することによって、Nd
2Fe
14Bよりも高い一軸異方性を示す永久磁石を得ることを特徴とする。Nd
2Fe
14B結晶中に4fサイトと4gサイトは等量存在するため、すべての4fサイトがYにて置換されれば、Y
4f/(Y
4f+Y
4g)=1.0であり、本発明における最も望ましい形態となる。しかしながら、現実にはすべての4fサイトがYにて置換されている必要はなく、0.8≦Y
4f/(Y
4f+Y
4g)≦1.0の範囲にて十分に実用的な磁気特性を示す磁石を得ることができる。
【0039】
上述の正方晶R
2T
14B構造中の4fサイトを占有するYであるY
4fと4gサイトを占有するYであるY
4gの存在比率Y
4f/(Y
4f+Y
4g)は走査透過電子顕微鏡による高角度散乱暗視野(HAADF:High−Angle Annular Dark−Field)像より決定することが可能である。
【0040】
焼結体を磁化容易軸である成形時の磁場印加方向と垂直に切断し、集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)装置にて厚さ100nmの薄片状に加工した後に、走査透過電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscope)にてNd
2Fe
14B型の結晶構造が[110]方向から観察可能な位置に調整し、HAADF像を得る。
図1に主相粒子の組成がNd
2Fe
14Bである焼結体より得た[110]方向からの(a)HAADF像および(b)結晶構造模型を例示する。
【0041】
上述のHAADF像は輝度が原子番号の略2乗に比例するため、B(原子番号:5)、Fe(原子番号:26)、Y(原子番号:39)、Yを含まない希土類元素(原子番号:57以上)は容易に判別が可能である。特に、[110]方向からのNd
2Fe
14B型の結晶構造を観察する場合には、4fサイトと4gサイトを重畳することなく明瞭に分離することが可能である。組成が(a)Nd
2Fe
14Bである焼結体、および、組成が(b)(Y
0.5Nd
0.5)
2Fe
14Bである焼結体のHAADF像より得た輝度のラインプロファイルを
図2に例示する。なお、ラインプロファイルは
図1(a)のHAADF像に示す矩形の領域に沿って取得した。
【0042】
図2(a)に示すNd
2Fe
14B結晶の[110]方向からのHAADF像においては、4fサイト位置と4gサイト位置の輝度はいずれも高く、同程度の強度であることから、4fサイトと4gサイトの両方が原子番号の大きいNdに占有されていることを判別することが可能である。
【0043】
図2(b)に示す(Y
0.5Nd
0.5)d
2Fe
14B結晶の[110]方向からのHAADF像においては、4fサイト位置の輝度が低く4gサイト位置の輝度が高い。すなわち、4fサイトを原子番号の小さいYが、4gサイトを原子番号の大きいNdが占有していることを判別することが可能である。
【実施例】
【0044】
以下、実施例および比較例に基づき、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0045】
主相粒子の組成が(Nd
1−x(Y
1−zCe
z)
x)
2Fe
14B(x=0.0〜0.7、z=0.0〜1.0)となるように、Ndメタル、Yメタル、Ceメタル、電解鉄、フェロボロンを所定量秤量し、ストリップキャスト法にて薄板状のR−T−B合金を作製した。この合金を水素気流中にて攪拌しながら熱処理することにより粗粉末にした後に、潤滑剤としてオレイン酸アミドを添加し、ジェットミルを用いて非酸化雰囲気中にて微粉末(平均粒径3μm)にした。得られた微粉末を金型(開口寸法:20mm×18mm)に充填し、加圧方向と直角方向に磁場(2T)を印加しながら2.0ton/cm
2の圧力にて1軸加圧成形した。得られた成形体を最適焼結温度まで昇温し、4時間保持した後に、400℃から800℃を中心とする±50℃の温度帯において、降温速度を10
0℃/秒〜10
−2℃/秒とし、それ以外の温度帯では降温速度を10
−1℃/秒として室温近傍まで冷却し焼結体を得た。焼結体の磁気特性をBHトレーサーにて測定した結果、および焼結体の密度を測定した結果を表1に示す。
【0046】
焼結体を磁化容易軸である成形時の磁場印加方向と垂直に切断し、X線回折法によって主たる生成相が正方晶R
2T
14B構造に帰属されることを確認した。次いで、FIB装置にて厚さ100nmの薄片状に加工した後に、STEMに備えられたEDS装置にて主相粒子の中央近傍分析し、薄膜補正機能を用いて主相粒子の組成を定量化した。次いで、試料を正方晶R
2T
14B構造が[110]方向から観察可能な位置に調整し、HAADF像を得た。HAADF像における10nm四方の領域について、輝度情報を基に4fサイトおよび4gサイトを占有するYの数を計数して得た、正方晶R
2T
14B構造中の4fサイトを占有するY
4fと4gサイトを占有するY
4gの存在比率Y
4f/(Y
4f+Y
4g)を表1に示す。
【0047】
[実施例1〜3、比較例1〜3]
正方晶R
2T
14B構造のRをNdとし、Yのみにて置換した組成(x=0.0〜0.7、z=0.0)では、Ndに対するYの置換量xの増加とともに密度が低下しており、密度低下・軽量化の効果が得られている。しかしながら、x≧0.6では残留磁束密度B
rおよび保磁力H
cJが著しく低下している。すなわち、NdをYのみにて置換した場合(z=0.0)では、0.0<x≦0.5の範囲にて実用的な残留磁束密度B
rおよび保磁力H
cJを有しながら、従来のNd−Fe−B系磁石よりも軽量であり、永久磁石同期回転機に用いることによって、高い応答性と制御性を示す、優れた永久磁石が得られることがわかった。また、前記の範囲において、4fサイトを占有するY
4fと4gサイトを占有するY
4gの存在比率Y
4f/(Y
4f+Y
4g)は0.89〜0.96であり、Ndを置換したYの多くが4fサイトを選択的に占有していることがわかった。
【0048】
[比較例8〜12]
正方晶R
2T
14B構造のRをNdとし、Ceのみにて置換した組成(x=0.2〜0.7、z=1.0)では、Ndに対するCeの置換量xの増加とともに残留磁束密度B
rおよび保磁力H
cJが単調に低下している。また、Ceの置換量xの増加に伴う密度低下もみられない。すなわち、NdをCeのみにて置換した場合(z=1.0)に得られる永久磁石は、実用的な残留磁束密度B
rおよび保磁力H
cJを有さず、従来のNd−Fe−B系磁石よりも軽量な永久磁石は得られないことがわかった。
【0049】
[実施例4〜6、比較例4〜5]
正方晶R
2T
14B構造のRをNdとし、YおよびCeにて半量ずつ置換した組成(x=0.2〜0.7、z=0.5)では、Ndに対するYおよびCeの置換量xの増加とともに密度が低下しており、NdをYおよびCeに置換したことによる密度低下・軽量化の効果が得られている。また、Ndに対するYおよびCeの置換量xの増加とともに残留磁束密度B
rおよび保磁力H
cJが漸減しているが、特にx≧0.6では保磁力H
cJが急峻に低下している。すなわち、Ndに対してYおよびCeを半量ずつ置換した組成(z=0.5)においても0.0<x≦0.5の範囲にて、従来のNd−Fe−B系磁石と同等の磁気特性を有しながら、軽量であり、永久磁石同期回転機に用いることによって、高い応答性と制御性を示す、優れた永久磁石が得られることがわかった。また、前記の範囲において、4fサイトを占有するY
4fと4gサイトを占有するY
4gの存在比率Y
4f/(Y
4f+Y
4g)は0.87〜0.95であり、Ndを置換したYの多くが4fサイトを選択的に占有していることがわかった。
【0050】
[実施例3、実施例6〜8、比較例6〜7、比較例10]
正方晶R
2T
14B構造のRをNdとし、Ndの半量をYまたはCeもしくは両方にて置換した組成(x=0.5、z=0.0〜1.0)では、Yに対するCeの相対量zの増加とともに焼結体の密度が漸増し、z≧0.6では従来のNd−Fe−B系磁石と同等となってしまう。また、残留磁束密度B
rおよび保磁力H
cJも、Yに対するCeの相対量が半量を超える(z≧0.6)と著しく低下している。すなわち、0.0≦z≦0.5の範囲において従来のNd−Fe−B系磁石と同等の磁気特性を有しながら、軽量であり、永久磁石同期回転機に用いることによって、高い応答性と制御性を示す、優れた永久磁石が得られることがわかった。また、前記の範囲において、4fサイトを占有するY
4fと4gサイトを占有するY
4gの存在比率Y
4f/(Y
4f+Y
4g)は0.87〜0.89であり、Ndを置換したYの多くが4fサイトを選択的に占有していることがわかった。
【0051】
[実施例3、実施例11〜12、比較例13〜17]
正方晶R
2T
14B構造のRをNdとし、Ndの半量をYのみにて置換した組成(x=0.5、z=0.0)において、750℃〜850℃(800±50℃)の温度帯域の降温速度を1×10
0℃/秒〜5×10
−5℃/秒まで変化させた。降温速度が1×10
−4℃/秒〜1×10
−2℃/秒の場合には、Ndを置換しないNd−Fe−B系磁石(比較例1)と同等の優れた磁気特性が得られた。しかしながら、降温速度が10
−2℃/秒よりも大きい場合には、磁気特性が急峻に低下し、正方晶R
2T
14B構造中の4fサイトを占有するY
4fと4gサイトを占有するY
4gの存在比率Y
4f/(Y
4f+Y
4g)も低下した。この降温速度の増大に伴う磁気特性の急峻な低下は希土類元素が安定サイトへ移動するための時間が足りなかったことに起因すると本発明者らは考える。また、降温速度が1×10
−4℃/秒よりも小さい場合にも、磁気特性が僅かに低下するものの、正方晶R
2T
14B構造中の4fサイトを占有するY
4fと4gサイトを占有するY
4gの存在比率Y
4f/(Y
4f+Y
4g)は凡そ維持される。この降温速度の減少に伴う磁気特性の低下はYの4fサイト占有率によるものではなく、小さすぎる降温速度によって、R
2T
14B型永久磁石の保磁力発現に必要な粒界構造が失われたことに起因すると本発明者らは考える。
【0052】
[実施例3、比較例18〜22]
正方晶R
2T
14B構造のRをNdとし、Ndの半量をYのみにて置換した組成(x=0.5、z=0.0)において、降温速度を1×10
−2℃/秒とする温度帯域を450℃〜1050℃(500±50℃〜1000±50℃)まで変化させた。降温速度を1×10
−2℃/秒とする温度帯域が750℃〜850℃(800±50℃)の場合には、Ndを置換しないNd−Fe−B系磁石(比較例1)と同等の優れた磁気特性が得られた。しかしながら、降温速度を1×10
−2℃/秒とする温度帯域が750℃〜850℃(800±50℃)よりも低温である場合には磁気特性が低下し、正方晶R
2T
14B構造中の4fサイトを占有するY
4fと4gサイトを占有するY
4gの存在比率Y
4f/(Y
4f+Y
4g)も低下した。この降温速度を制御する温度帯域の低温化に伴う磁気特性の低下は希土類元素が安定サイトへ移動するためのエネルギーが足りなかったことに起因すると本発明者らは考える。また、降温速度を1×10
−2℃/秒とする温度帯域が750℃〜850℃(800±50℃)よりも高温である場合には磁気特性が低下し、正方晶R
2T
14B構造中の4fサイトを占有するY
4fと4gサイトを占有するY
4gの存在比率Y
4f/(Y
4f+Y
4g)も僅かに低下した。この降温速度を制御する温度帯域の高温化に伴う磁気特性の低下はエネルギーが過剰であるために、希土類元素が近接サイト外への移動してしまったことに起因すると本発明者らは考える。
【0053】
[実施例6、比較例23〜26]
正方晶R
2T
14B構造のRをNdとし、Ndの半量をYおよびCeにて半量ずつ置換した組成(x=0.5、z=0.5)において、降温速度を1×10
−2℃/秒とする温度帯域を350℃〜850℃(400±50℃〜800±50℃)まで変化させた。降温速度を1×10
−2℃/秒とする温度帯域が550℃〜650℃(600±50℃)の場合には、Ndを置換しないNd−Fe−B系磁石(比較例1)と同等の優れた磁気特性が得られた。しかしながら、降温速度を1×10
−2℃/秒とする温度帯域が550℃〜650℃(600±50℃)よりも低温である場合には磁気特性が低下し、正方晶R
2T
14B構造中の4fサイトを占有するY
4fと4gサイトを占有するY
4gの存在比率Y
4f/(Y
4f+Y
4g)も低下した。また、降温速度を1×10
−2℃/秒とする温度帯域が550℃〜650℃(600±50℃)よりも高温である場合にも磁気特性が低下し、正方晶R
2T
14B構造中の4fサイトを占有するY
4fと4gサイトを占有するY
4gの存在比率Y
4f/(Y
4f+Y
4g)も低下した。Ndの半量をYのみにて置換した組成(実施例3、比較例18〜22)において降温速度を制御する最適な温度帯域と、Ndの半量をYおよびCeにて置換した組成(実施例6、比較例23〜26)において降温速度を制御する最適な温度帯域が異なるのは、希土類元素が安定サイトへ移動するためのエネルギーが異なるためであると本発明者らは考える。
【0054】
[実施例3、実施例9〜10]
正方晶R
2T
14B構造のRをNdとした場合でも、RをNdおよびDy、もしくは、NdおよびTbとした場合でも、Rの半量をYのみにて置換した組成(x=0.5、z=0.0)において、従来のNd−Fe−B系磁石と同等の磁気特性を有しながら、軽量であり、永久磁石同期回転機に用いることによって、高い応答性と制御性を示す、優れた永久磁石が得られることがわかった。また、前記の組成において、4fサイトを占有するY
4fと4gサイトを占有するY
4gの存在比率Y
4f/(Y
4f+Y
4g)は0.88〜0.89であり、Rを置換したYの多くが4fサイトを選択的に占有していることがわかった。
【表1】