特許第5708946号(P5708946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5708946印刷インキ用バインダー、印刷インキ用ワニスおよび印刷インキ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5708946
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】印刷インキ用バインダー、印刷インキ用ワニスおよび印刷インキ
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/10 20140101AFI20150409BHJP
   C08G 8/34 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
   C09D11/10
   C08G8/34
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-34795(P2013-34795)
(22)【出願日】2013年2月25日
(65)【公開番号】特開2013-216867(P2013-216867A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2013年11月12日
(31)【優先権主張番号】特願2012-59945(P2012-59945)
(32)【優先日】2012年3月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 陽介
(72)【発明者】
【氏名】博多 宏一
【審査官】 内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−184660(JP,A)
【文献】 特開2000−212492(JP,A)
【文献】 特開平11−293129(JP,A)
【文献】 特開2010−138251(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/052470(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00− 11/54
C08G 8/00− 8/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリフェニルホスファイト(A)の存在下でロジン類(b−1)とポリオール(b−2)を、(b−1)成分に対する(A)成分の使用量が0.05〜0.5重量%となる条件でエステル化させることにより得られるロジンエステル類(B)と、フェノール類とホルムアルデヒドの縮合物(C)とを反応させることにより得られる、重量平均分子量(Mw)が0,000〜39,000であり、数平均分子量(Mn)が3,000〜4,940であり、かつ多分散度(Mw/Mn)が〜9のロジン変性フェノール樹脂を用いてなる印刷インキ用バインダー。
【請求項2】
前記ロジン変性フェノール樹脂の酸価が10〜50mgKOH/gである、請求項1の印刷インキ用バインダー。
【請求項3】
前記ロジン変性フェノール樹脂の軟化点が140〜190℃である、請求項1または2の印刷インキ用バインダー。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの印刷インキ用バインダーと植物油を含有する印刷インキ用ワニス。
【請求項5】
さらに石油系溶剤を含有する請求項4の印刷インキ用ワニス。
【請求項6】
さらにゲル化剤を含有する請求項4または5の印刷インキ用ワニス。
【請求項7】
請求項6の印刷インキ用ワニスを用いて得られる印刷インキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロジン変性フェノール樹脂を用いた印刷インキ用バインダー、当該印刷インキ用バインダーを含有する印刷インキ用樹脂ワニス、および該ワニスを用いて得られる印刷インキに関する。
【背景技術】
【0002】
ロジン変性フェノール樹脂とは一般的に、ロジン類、フェノール樹脂、ポリオール類を反応させることにより得られる樹脂であり、古くより印刷インキ用樹脂、例えばオフセット印刷インキ用樹脂として賞用されている(特許文献1、2等参照)。
【0003】
オフセット印刷インキは通常、かかるロジン変性フェノール樹脂をインキ用溶剤に溶解させて得られるワニスに顔料を配合し、混合することにより得られるが、顔料が十分に分散しないと印刷インキの流動性が不良となったり、印刷物の光沢が低下したりする。そこで、顔料を十分に分散させるために機械的な分散工程を長時間行うことが考えられるが、生産性の低下を招く。
【0004】
また、インキメーカーにおいては、分散工程においてロジン変性フェノール樹脂の分散作用を補う目的で種々の添加剤が検討されており、例えば特許文献3には、所定の不溶性アゾ顔料組成物等を一定量用いることによりインキの顔料分散性が改善されることが示されている。
【0005】
一方、ロジン変性フェノール樹脂の物性面より顔料分散性を向上させる試みもなされており、例えば本出願人は、特許文献4で示すように、ロジン変性フェノール樹脂に含まれる重量平均分子量が400以下の低分子成分の量を限定することにより、印刷インキの流動性を改善できることを見出した。しかし、更なる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−36668号公報
【特許文献2】特開平1−170676号公報
【特許文献3】特開平6−49386号公報
【特許文献4】特開2009−227785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、顔料分散性が良好であり、印刷インキの流動性を向上させることができ、かつ印刷物に優れた光沢を付与できる、新規なロジン変性フェノール樹脂系の印刷インキ用バインダーを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、従来のロジン変性フェノール樹脂は分子量分布に大きな幅があり、このことが原因でバインダー性能が不足するケースがあると考え、その分子量分布幅を規定するべく、所定のリン系化合物を一定量用いることにより、目的とするロジン変性フェノール樹脂が得られることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、トリフェニルホスファイト(A)の存在下でロジン類(b−1)とポリオール(b−2)を、(b−1)成分に対する(A)成分の使用量が0.05〜0.5重量%となる条件でエステル化させることにより得られるロジンエステル類(B)と、フェノール類とホルムアルデヒドの縮合物(C)とを反応させることにより得られる、重量平均分子量(Mw)が0,000〜39,000であり、数平均分子量(Mn)が3,000〜4,940であり、かつ多分散度(Mw/Mn)が〜9のロジン変性フェノール樹脂を用いてなる印刷インキ用バインダー;該印刷インキ用バインダーと植物油を含有する印刷インキ用ワニス;当該印刷インキ用ワニスを用いて得られる印刷インキに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の印刷インキ用バインダーは、これをなすロジン変性フェノール樹脂が顔料分散性に優れているため、印刷インキの流動性が良好になる他、印刷物の光沢も良好になる。それゆえ当該バインダーは、特にオフセット印刷インキ用樹脂、例えばオフセット枚葉インキ(枚葉インキ)やオフセット輪転インキ(オフ輪インキ)、新聞インキ用等のオフセット印刷インキ用樹脂等として有用である。また、凸版印刷インキ用、グラビア印刷インキ用樹脂としても使用できる。また、顔料の表面処理剤としても利用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の印刷インキ用バインダーは、トリフェニルホスファイト(A)(以下、(A)成分という)の存在下でロジン類(b−1)(以下、(b−1)成分という)とポリオール(b−2)(以下、(b−2)成分という)をエステル化して得られるロジンエステル類(B)(以下、(B)成分という)と、フェノール類とホルムアルデヒドの縮合物(C)(以下、(C)成分という)とを反応させることにより得られるロジン変性フェノール樹脂を用いたものである。
【0012】
(A)成分、入手が容易であり、かつ本発明の所期の効果(顔料分散性、印刷インキ流動性、印刷インキ皮膜の光沢等をいう。以下、本発明の効果というときは、同様である。)達成しやすいため好ましい。
【0013】
(b−1)成分としては、例えば、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンなどの天然ロジンやその精製物(以下、原料ロジン類という);原料ロジン類から誘導される重合ロジン;原料ロジン類や重合ロジンを不均化および/または水素添加して得られる安定化ロジン;原料ロジン類や重合ロジンに、(メタ)アクリル酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、クロトン酸、ケイ皮酸等のα,β不飽和カルボン酸類をディールス・アルダー付加反応させて得られるα,β不飽和酸変性ロジン;当該α,β不飽和酸変性ロジンを更に不均化または水素添加して得られる安定化ロジン等が挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。なお、α,β不飽和酸変性ロジンにおけるロジン種とα,β不飽和カルボン酸の使用量は特に限定されないが、本発明の効果の点より、通常は前者100重量部に対して後者が1〜30重量部程度となる範囲である。
【0014】
(b−2)成分としては、1分子中に少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物であれば特に限定されず、各種公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール等のジオール類、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等のトリオール類、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン等のテトラオール類、ジペンタエリスリトール等の6価以上のポリオール類等が挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。これらのうちトリオール類および/またはテトラオール類は、本発明であるロジン変性フェノール樹脂の物性(軟化点、重量平均分子量等)の制御の容易さの観点、および本発明の効果の点より野好ましい。
【0015】
本発明においては、(A)成分を、(b−1)成分に対して0.05〜0.5重量%となる条件で使用する必要がある。0.05重量%以上とすることにより、特に印刷インキの流動性とインキ皮膜の光沢を良好にできる。また、0.5重量%以下とすることにより、本発明のロジン変性フェノール樹脂の製造の際の不溶物を低減でき、かつ、本発明の効果のうち、特に印刷インキの流動性とインキ皮膜の光沢を良好にできる。かかる観点より、(A)成分の使用量は、(b−1)成分に対して好ましくは0.1〜0.4重量%程度、更に好ましくは0.15〜0.35重量%程度であるのがよい。
【0016】
(b−1)成分と(b−2)成分の使用量も特に限定されないが、本発明の効果の観点より、(b−2)成分の全ヒドロキシル基当量数(OH)と(b−1)成分の全カルボキシル基当量数(COOH)との比(OH/COOH)が通常0.5〜1.5程度となる範囲であるのがよい。
【0017】
(B)成分は、前記したように、所定量の(A)成分の存在下、(b−1)成分と(b−2)成分をエステル化反応させることによって得られる。反応条件は特に限定されないが、例えば、(A)成分、(b−1)成分および(b−2)成分を所定量ずつ反応容器に仕込み、必要に応じて各種公知の触媒の存在下、100〜300℃程度で1〜24時間程度エステル化反応を進行させればよい。
【0018】
触媒としては、例えば、塩酸、硫酸等の鉱酸類;メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のスルホン酸類;酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等の金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の金属の水酸化物;酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛等の酢酸塩が挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。また、その使用量は特に限定されないが、後述の多分散度を達成する目的において、通常は(b−1)成分および(b−2)成分の合計量に対して通常0〜5重量%程度であるのが望ましい。
【0019】
(C)成分としては、フェノール類とホルムアルデヒドの縮合物であれば各種公知のもの、例えばレゾール型フェノール樹脂やノボラック型フェノール樹脂等を使用できる。
【0020】
フェノール類としては、石炭酸、クレゾール、アミルフェノール、ビスフェノールA、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール等が挙げられる。またホルムアルデヒドとしては、ホルマリン、パラホルムアルデヒド等が挙げられる。
【0021】
また、前記レゾール型フェノール樹脂としては、各種塩基性触媒の存在下において、フェノール類(P)とホルムアルデヒド(F)とをF/P(モル比)が通常1〜3程度となる範囲内で付加・縮合反応させた縮合物が挙げられる。また、前記ノボラック型フェノール樹脂としては、各種酸触媒の存在下において、F/Pが通常0.5〜2程度となる範囲内で、付加・縮合反応させた縮合物が挙げられる。また、各縮合物は中和・水洗したものであってよい。また、各縮合物の製造は、水や有機溶剤(キシレン等)の存在下で実施できる。(C)成分としては、ロジン変性フェノール樹脂の高分子量化の観点、および本発明の効果(の観点より、前記レゾール型フェノール樹脂が好ましい。また、酸触媒と塩基性触媒としては、(B)成分を製造する際に用いたものと同様のものを使用できる。
【0022】
(B)成分と(C)成分の使用量は特に限定されず、用途に応じてそれぞれ適宜決定すればよいが、本発明の効果の観点より、通常は、両者の合計を100重量%とした場合において、順に41〜88重量%程度および59〜12重量%程度であり、好ましくは46〜80重量%程度および54〜20重量%程度であり、さらに好ましくは67〜77重量%および33〜23重量%である。
【0023】
また、(B)成分と(C)成分の反応条件は特に限定されないが、例えば、両成分を所定量ずつ反応容器に仕込み、必要に応じて各種公知の触媒の存在下、200〜300℃程度で1〜20時間程度反応させればよい。触媒としては前記したものを使用できる。
【0024】
このようにして得られる本発明のロジン変性フェノール樹脂は、本発明の効果の観点より、重量平均分子量(Mw)が0,000〜39,000であり、数平均分子量(Mn)が3,000〜4,940であり、かつ多分散度(Mw/Mn)が〜9に設定されている点に大きな特徴がある。多分散度は分子量分布幅を示す指標であり、本発明のロジン変性フェノール樹脂はその数値が比較的小さいため、分子量分布幅が狭いといえる。そして、多分散度を8以上としたことにより特に印刷インキ皮膜の光沢が、また9以下としたことにより特に印刷インキの流動性および印刷インキ皮膜の光沢が良好になる。
【0025】
なお、MwとMnはいずれもゲルパーメーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算値であり、市販の装置により測定可能であるMwとMnは、例えば前記(A)成分や(C)成分の使用量を変更したり、エステル化触媒の種類や使用量を変更したり、(b−1)成分として多官能のもの(例えば、(無水)マレイン酸変性ロジン等)を用いたりする等して調整可能である。
【0026】
また、当該ロジン変性フェノール樹脂の他の物性も特に限定されないが、本発明の効果の観点より、通常、酸価(JIS K5601−2−1)が10〜50mgKOH/g程度、好ましくは10〜30mgKOH/gである。
【0027】
また、軟化点(JIS K5601−2−2)も特に限定されないが、やはり本発明の効果の観点より、通常、140〜190℃程度、好ましくは150〜180℃である。
【0028】
本発明の印刷インキ用ワニスは、本発明の印刷インキ用バインダー(ロジン変性フェノール樹脂)と植物油類を含むものであり、必要に応じて石油系溶剤やゲル化剤を含めることができる。
【0029】
植物油類としては、例えば、アマニ油、桐油、サフラワー油、脱水ヒマシ油、大豆油等の植物油の他、アマニ油脂肪酸メチル、大豆油脂肪酸メチル、アマニ油脂肪酸エチル、大豆油脂肪酸エチル、アマニ油脂肪酸プロピル、大豆油脂肪酸プロピル、アマニ油脂肪酸ブチル、大豆油脂肪酸ブチル等といった前記植物油のモノエステル等が挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。これらのうち、印刷物の乾燥性を考慮すると、前記植物油、特に分子中に不飽和結合を有する植物油が好ましい。
【0030】
インキ用石油系溶剤としては、例えば、JX日鉱日石エネルギー(株)製の石油系溶剤である0号ソルベント、4号ソルベント、5号ソルベント、6号ソルベント、7号ソルベント、AFソルベント4号、AFソルベント5号、AFソルベント6号、AFソルベント7号等が挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。これらのうち、特に本発明のロジン変性フェノール樹脂の溶解性や、環境面への影響を考慮すると、沸点が200℃以上で芳香族炭化水素の含有率が1重量%以下であるものが好ましい。
【0031】
ゲル化剤としては、例えば、オクチル酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリブトキシド、アルミニウムジプロポキシドモノアセチルアセテート、アルミニウムジブトキシドモノアセチルアセテート、アルミニウムトリアセチルアセテート等のアルミニウム系キレート剤が挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0032】
本発明の印刷インキ用ワニスは、上記した成分を混合し、撹拌することにより製造できる。また、混合撹拌時の温度は特に制限されないが、100〜240℃程度であるのが好ましい。なお、本ワニスには他に添加剤として酸化防止剤等を配合できる。
【0033】
本発明の印刷インキは、本発明の印刷インキ用ワニスを用いたものであり、これに顔料(黄、紅、藍、墨)及び各種公知の添加剤配合し、ロールミル、ボールミル、アトライター、サンドミルといった公知のインキ製造装置を用いて適切なインキ恒数となるよう、練肉・調製することにより得られる。添加剤としては、インキ流動性やインキ表面被膜を改善するための界面活性剤、ワックス等があげられる。
【実施例】
【0034】
以下、製造例、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、これらにより本発明の範囲が限定されることはない。なお、以下「部」とは重量部を示す。
【0035】
また、各例中、33重量%アマニ油粘度とは、樹脂とアマニ油を1対2重量比で加熱混合したものを、日本レオロジー(株)製コーン・アンド・プレート型粘度計を用いて25℃で測定した粘度である(以下、同様)。
【0036】
また、数平均分子量と重量平均分子量はいずれも、ゲルパーメーションクロマトグラフィー(東ソー(株)製、HLC−8120GPC)および市販のカラム(東ソー(株)製、TSK−GEL)を用い、テトラヒドロフラン(THF)を展開溶媒として測定されたポリスチレン換算値であり、求めた数平均分子量と重量平均分子量より多分散度(Mw/Mn)を算出した。
【0037】
製造例1
((C)成分の製造)
撹拌機、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器に、オクチルフェノール1,000部、92%パラホルムアルデヒド396部、キシレン584部および水500部を仕込み、撹拌下に50℃まで昇温した。次いで、同反応容器に45%水酸化ナトリウム溶液89部を仕込み、冷却しながら反応系を90℃まで徐々に昇温した後、2時間保温し、更に硫酸を滴下してpHを約6に調整した。その後、ホルムアルデヒドなどを含んだ水層部を除去し、再度水洗した後に内容物を冷却して、レゾール型オクチルフェノール(C−1)の70重量%キシレン溶液を得た。
【0038】
製造例2
((C)成分の製造)
製造例1と同様の反応容器に、ブチルフェノール1,000部、92%パラホルムアルデヒド543部、キシレン646部および水500部を仕込み、撹拌下に50℃まで昇温した。次いで、同反応容器に45%水酸化ナトリウム溶液89部を仕込み、冷却しながら反応系を90℃まで徐々に昇温した後、2時間保温し、更に硫酸を滴下してpHを約6に調整した。その後、ホルムアルデヒドなどを含んだ水層部を除去し、再度水洗した後に内容物を冷却して、レゾール型ブチルフェノール(C−2)の70重量%キシレン溶液を得た。
【0039】
製造例3
((C)成分の製造)
製造例1と同様の反応容器に、ノニルフェノール1,000部、92%パラホルムアルデヒド370部、キシレン573部および水500部を仕込み、撹拌下に50℃まで昇温した。次いで、同反応容器に45%水酸化ナトリウム溶液89部を仕込み、冷却しながら反応系を90℃まで徐々に昇温した後、2時間保温し、更に硫酸を滴下してpHを約6に調整した。その後、ホルムアルデヒドなどを含んだ水層部を除去し、再度水洗した後に内容物を冷却して、レゾール型ノニルフェノール(C−3)の70重量%キシレン溶液を得た。
【0040】
参照例1
製造例1と同様の反応容器に、ガムロジン1,000部を仕込み、これを窒素雰囲気下に撹拌しながら180℃まで昇温して溶融させた。次いで、グリセリン93部を添加し、撹拌下に280℃まで昇温した。昇温後、トリフェニルホスファイト0.7部を仕込み、酸価が25mgKOH/g以下となるまで反応させた。更に230℃まで冷却した後、(C−1)成分の溶液500部(固形分350部)を230〜260℃の温度範囲内で4時間かけて系内へ滴下した。滴下終了後、33重量%アマニ油粘度が2.5Pa・sとなるよう調整し、0.02MPaで10分間減圧することにより、ロジン変性フェノール樹脂(1)を得た。原料と物性を表1に示す(以下、同様。)。
【0041】
参照例2
製造例1と同様の反応容器に、ガムロジン1,000部を仕込み、これを窒素雰囲気下に撹拌しながら180℃まで昇温して溶融させた。次いで、グリセリン93部を添加し、撹拌下に280℃まで昇温した。昇温後、トリフェニルホスファイト2.5部を仕込み、酸価が25mgKOH/g以下となるまで反応させた。更に230℃まで冷却した後、(C−1)成分の溶液500部(固形分350部)を230〜260℃の温度範囲内で4時間かけて系内へ滴下した。滴下終了後、33重量%アマニ油粘度が2.5Pa・sとなるよう調整し、0.02MPaで10分間減圧することにより、ロジン変性フェノール樹脂(2)を得た。
【0042】
参照例
製造例1と同様の反応容器に、ガムロジン1,000部を仕込み、これを窒素雰囲気下に撹拌しながら180℃まで昇温して溶融させた。次いで、グリセリン93部を添加し、撹拌下に280℃まで昇温した。昇温後、トリフェニルホスファイト4.8部を仕込み、酸価が25mgKOH/g以下となるまで反応させた。更に230℃まで冷却した後、(C−1)成分の溶液500部(固形分350部)を230〜260℃の温度範囲内で4時間かけて系内へ滴下した。滴下終了後、33重量%アマニ油粘度が2.5Pa・sとなるよう調整し、0.02MPaで10分間減圧することにより、ロジン変性フェノール樹脂(3)を得た。
【0043】
参照例
製造例1と同様の反応容器に、ガムロジン1,000部を仕込み、これを窒素雰囲気下に撹拌しながら180℃まで昇温して溶融させた。次いで、グリセリン93部を添加し、撹拌下に280℃まで昇温した。昇温後、トリフェニルホスファイト2.5部を仕込み、酸価が25mgKOH/g以下となるまで反応させた。更に230℃まで冷却した後、(C−1)成分の溶液386部(固形分270部)、次いで(C−2)成分の溶液114部(固形分80部)を230〜260℃の温度範囲内で4時間かけて系内へ滴下した。滴下終了後、33重量%アマニ油粘度が2.5Pa・sとなるよう調整し、0.02MPaで10分間減圧することにより、ロジン変性フェノール樹脂(4)を得た。
【0044】
参照例
製造例1と同様の反応容器に、ガムロジン1,000部を仕込み、これを窒素雰囲気下に撹拌しながら180℃まで昇温して溶融させた。次いで、グリセリン93部を添加し、撹拌下280℃まで昇温した。昇温後、トリフェニルホスファイト2.5部を仕込み、酸価が25mgKOH/g以下となるまで反応させた。更に230℃まで冷却した後、(C−1)成分の溶液357部(固形分250部)、次いで(C−3)成分の溶液143部(固形分100部)を230〜260℃の温度範囲内で4時間かけて系内へ滴下した。滴下終了後、33重量%アマニ油粘度が2.5Pa・sとなるよう調整し、0.02MPaで10分間減圧することにより、ロジン変性フェノール樹脂(5)を得た。
【0047】
参照例6
製造例1と同様の反応容器に、ガムロジン1,000部を仕込み、これを窒素雰囲気下に撹拌しながら180℃まで昇温して溶融させた。次いで、ペンタリスリトール103部を添加し、撹拌下に280℃まで昇温した。昇温後、トリフェニルホスファイト2.5部を仕込み、酸価が25mgKOH/g以下となるまで反応させた。更に230℃まで冷却した後、(C−1)成分の溶液500部(固形分350部)を230〜260℃の温度範囲内で4時間かけて系内へ滴下した。滴下終了後、33重量%アマニ油粘度が2.5Pa・sとなるよう調整し、0.02MPaで10分間減圧することにより、ロジン変性フェノール樹脂(8)を得た。
【0048】
実施例
製造例1と同様の反応容器に、トール油ロジン1,000部を仕込み、これを窒素雰囲気下に撹拌しながら180℃まで昇温して溶融させた。次いで、グリセリン93部を添加し、撹拌下に280℃まで昇温した。昇温後、トリフェニルホスファイト2.5部を仕込み、酸価が25mgKOH/g以下となるまで反応させた。更に230℃まで冷却した後、(C−1)成分の溶液500部(固形分350部)を230〜260℃の温度範囲内で4時間かけて系内へ滴下した。滴下終了後、33重量%アマニ油粘度が2.5Pa・sとなるよう調整し、0.02MPaで10分間減圧することにより、ロジン変性フェノール樹脂(9)を得た。原料と物性を表1に示す(以下、同様。)。
【0049】
実施例
製造例1と同様の反応容器に、ガムロジン1,000部を仕込み、これを窒素雰囲気下に撹拌しながら180℃まで昇温して溶融させた。次いで、グリセリン93部を添加し、撹拌下に280℃まで昇温した。昇温後、トリフェニルホスファイト2.5部を仕込み、酸価が25mgKOH/g以下となるまで反応させた。更に230℃まで冷却した後、(C−1)成分の溶液357部(固形分250部)を230〜260℃の温度範囲内で4時間かけて系内へ滴下した。滴下終了後、33重量%アマニ油粘度が2.5Pa・sとなるよう調整し、0.02MPaで10分間減圧することにより、ロジン変性フェノール樹脂(10)を得た。原料と物性を表1に示す(以下、同様。)。
【0050】
参照
製造例1と同様の反応容器に、ガムロジン1,000部を仕込み、これを窒素雰囲気下に撹拌しながら180℃まで昇温して溶融させた。次いで、グリセリン93部を添加し、撹拌下に280℃まで昇温した。昇温後、トリフェニルホスファイト2.5部を仕込み、酸価が25mgKOH/g以下となるまで反応させた。更に230℃まで冷却した後、(C−1)成分の溶液600部(固形分420部)を230〜260℃の温度範囲内で4時間かけて系内へ滴下した。滴下終了後、33重量%アマニ油粘度が2.5Pa・sとなるよう調整し、0.02MPaで10分間減圧することにより、ロジン変性フェノール樹脂(11)を得た。原料と物性を表1に示す(以下、同様。)。
【0051】
比較例1
製造例1と同様の反応容器に、ガムロジン1,000部を仕込み、撹拌下に220℃まで昇温して溶融させた。ついで、(C−1)成分の溶液571部(固形分400部)を、4時間かけて系内に滴下した。滴下終了後、グリセリン84部及びパラトルエンスルホン酸2.0部を仕込み、220〜260℃の温度範囲内で酸価が25以下となるまで反応させた。その後、0.02MPaで10分間減圧することにより、ロジン変性フェノール樹脂(1’)を得た。
【0052】
比較例2
実施例2において、トリフェニルホスファイトを0.3部に変更した他は同様にして、ロジン変性フェノール樹脂(2’)を得た。
【0053】
比較例3
実施例2において、トリフェニルホスファイトを5.3部に変更した他は同様にして、ロジン変性フェノール樹脂(3’)を得たが、多量の不溶物が発生していたため、物性は測定しなかった。
【0056】
(ワニスの調製)
実施例1のロジン変性フェノール樹脂(1)を45.0部、アマニ油を10.0部、AFソルベント7号(JX日鉱日石エネルギー(株)製、非芳香族石油系溶剤)を43.5部、容器に仕込み、200℃で30分間混合した後、80℃まで冷却した。次いで、アルミニウムジプロポキシドモノアセチルアセテート(商品名ケロープEP−2、ホープ製薬(株)製)1.5部を加え、200℃まで加熱して1時間ゲル化反応させることにより、ゲルワニスを得た。他の実施例および比較例の樹脂についても同様にしてゲルワニスを得た。
【0057】
(印刷インキの調製)
前記実施例および比較例のゲルワニスを用い、次の配合割合で3本ロールミルにより練肉して印刷インキを調製した。
フタロシアニンブルー(藍顔料) 18重量部
ゲルワニス 62〜70重量部
日石AFソルベント7号 12〜20重量部
上記配合に基づいて30℃、400rpmにおけるインコメーターのタック値が6.5±0.5、25℃におけるスプレッドメーターのフロー値(直径値)が38.0±1.0となるよう適宜調製した。
【0058】
(印刷インキの性能試験)
実施例及び比較例の各ゲルワニスを用いて調製した印刷インキの諸性能を評価した。結果を表1に示す。
【0059】
(光沢)
インキ0.4mlをRIテスター(石川島産業機械(株)製)にてアート紙に展色した後、23℃、50%R.H.にて24時間調湿し、60゜−60゜の反射率を光沢計により測定した。
【0060】
(流動性)
25℃に空調された室内において、インキ1.3mlを地平面と60゜の角度をなすガラス板の上端に置き、30分間に流動した距離を測定した。数値が大きいほど流動性が良好であることを示す。
【0061】
【表1】
【0062】
表1中、TPPはトリフェニルホスファイトを、ガムRoはガムロジンを、トール油Roはトール油ロジンを、MAn−Roは無水マレイン酸変性ロジンを、Glyはグリセリンを、Penはペンタエリスリトールをそれぞれ表す。