(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0013】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る画像処理装置100の全体構成を説明するための概略構成図である。画像処理装置100は、入力I/F101と、制御部102と、出力I/F106とを備える。
【0014】
入力I/F101は、例えば、LAN(Local Are Network)ケーブル、USB(Universal Serial Bus)ケーブルといった電気信号線を介して外部装置と接続可能となるように構成されており、外部装置から画像データを取得する。本実施形態において、入力I/F101は、外部装置として原稿上に形成された画像を読取ることでカラー画像データを生成することが可能なスキャナ110と接続されている。入力I/F101は、スキャナ110で生成された画素毎に3色のRGB色成分値によって表現されるカラー画像データ(以下、RGB画像データと称する)を取得する。
【0015】
制御部102は、揮発性メモリであるRAM(Random Access Memory)103、不揮発性メモリであるROM(Read Only Memory)104、及びCPU(Central Processing Unit)105を備え、カラー画像データの一時的な記憶や、画像処理プログラムの演算、実行などの動作を統括的に制御する。
【0016】
出力I/F106は、LANケーブル、USBケーブル、パラレルATA(Advanced Technology Attachment)ケーブル、又はシリアルATAケーブルといった電気信号線を介して外部装置と接続可能となるように構成されており、外部装置に対して処理されたカラー画像データを出力する。本実施形態において、出力I/F106は、外部装置としてカラー画像データを磁気的に書き込み可能なHDD(Hard Disk Drive)120と接続されている。
【0017】
図2は、第1の実施形態に係る画像処理装置100の機能を示す機能ブロック図である。各部における通信機構や書き込み制御、画像処理に係る演算等は、制御部102におけるCPU105がRAM104をワーキングメモリとしてROM103に記憶されたプログラムを実行することで実現される。
【0018】
画像取得部201は、入力I/F101を介してスキャナ110からRGB画像データを取得する。なお、本実施形態において、画像取得部201は、スキャナ110からRGB画像データを取得する形態について説明するが、これに限定されず、例えば、PC(Personal Computer)やネットワークに接続された記憶媒体、USBメモリスティック等の可搬記憶媒体からRGBデータを取得する形態としてもよい。そして、画像取得部201は、取得したRGB画像データをRAM103に記憶させる。
【0019】
第一の色変換部としての入力色変換部202は、RAM103に記憶されたRGB画像データを、第1画像データたる明度成分と色度成分とが独立した均等色空間の一種であるCIEL*a*b*(以下、単にLabと称する)画像データに変換する。本実施形態においては、取得したRGB画像データのR、G、Bの組み合わせに対応した出力Lab値を導出する3次元ルックアップテーブルを予め作成しておき、入力色変換部202は、RGB画像データのそれぞれのRGB値を読取り、3次元ルックアップテーブルを参照することで対応するLab値に変換する。なお、3次元ルックアップテーブルを用いた色空間の変換方法については、例えば、先行技術文献の特開平9−207389号公報に記載された方法を用いることができる。そして、入力色変換部202は、変換して得られたLab画像データを背景色検出部203、及び背景除去部200の白色変換部206に出力する。
【0020】
背景色検出部203は、入力色変換部202において変換して得られたLab画像データを参照し、後述する検出方法にてLab画像データ内の背景色成分である背景色Lab値(L
ws,a
ws,b
ws)を検出し、検出した背景色Lab値(L
ws,a
ws,b
ws)を背景除去部200の変換パラメータ導出部205に出力する。
【0021】
出力白色値設定部204は、背景色検出部203で検出した背景色Lab値を背景除去部200にて変換した際の変換結果となる白色Lab値(L
wd,a
wd,b
wd)を設定する。なお、本実施形態においては、出力値はRGB画像データとするため、白色Lab値としてL値は最大値、a値、b値は無彩色を示す(L
wd,a
wd,b
wd)=(100,0,0)とする。そして、出力白色値設定部204は、設定した白色Lab値を背景除去部200の変換パラメータ導出部205に出力する。
【0022】
背景除去部200は、Lab色空間での白色点の変換を行うための変換パラメータを導出する導出部としての変換パラメータ導出部205と、Lab画像データの白色変換を実行する白色変換部206とを備える。
【0023】
本発明において、背景除去部200は、Lab色空間での白色点変換を可能とすることで、変換によるカラーバランスの崩れを防止する。以下に、当該変換に供される変換式の導出について説明する。
【0024】
例えば、光源Sと光源Dとでの色の見えの違いを補正する光源変換では、デバイス非依存性の表色系であるCIEXYZ(以下、単にXYZと称する)色空間において、光源SにおけるXYZ値(X
S,Y
S,Z
S)から光源DにおけるXYZ値(X
D,Y
D,Z
D)を導出する場合、光源Sの白色値(X
ws,X
ws,X
ws)と光源Dの白色値(X
wd,X
wd,X
wd)との比を用いて以下の式1、式2、及び式3で変換される。
【0028】
本実施形態においては、画像データの背景色に対応する成分値を基準となる白色の値に変換するため、上記の光源変換の白色値変換の考え方を応用する。
【0029】
ところで、XYZ空間とLab空間との変換式は、標準の白色光源Oの白色値(X
O,Y
O,Z
O)を用いて、以下の式4、式5、式6の順変換の式と、式7、式8、式9の逆変換の式で与えられる。
【0036】
ここで背景色検出部203において検出された背景色Lab値(L
ws,a
ws,b
ws)を、出力白色値設定部204で設定された白色Lab値(L
wd,a
wd,b
wd)に変換する白色変換をLab画像データに施す場合、XYZ色空間とLab色空間との間で変換演算を大量に行う必要がある。具体的には、まず、背景色Lab値(L
ws,a
ws,b
ws)と白色Lab値(L
wd,a
wd,b
wd)とのXYZ値をそれぞれ式7、式8、式9にて背景色XYZ値(X
ws,X
ws,X
ws)と白色XYZ値(X
wd,X
wd,X
wd)として求め、Lab画像データのLab値(L
s,a
s,b
s)も同様にXYZ値(X
s,Y
s,Z
s)を求めた後、白色変換式1、式2、式3を用いて補正XYZ値(X
D,Y
D,Z
D)を導出し、さらに、式4、式5、式6にて補正Lab値(L
D,a
D,b
D)を求めることになる。このように、XYZ色空間とLab色空間との間における相互変換には、累乗や3乗根等の複雑な計算が多く、例えば、白色比の演算には、乗算が24回、除算が16回含まれ、画素ごとの演算には、乗算が18回、除算が10回、立方根演算が5回含まれることから、演算時間に要する時間や、実装コストが大きくなってしまう。
【0037】
そこで、本発明においては、Lab画像データのLab値(L
s,a
s,b
s)から補正Lab値(L
D,a
D,b
D)を直接求める演算式を導出し、上記問題点の改善を図る。
【0038】
具体的には、式4、式5、式6より、補正Lab値(L
D,a
D,b
D)は以下の式10、式11、式12となる。
【0042】
ここで、式1、式2、式3より、式13、式14、式15が得られ、
【0046】
式13、式14、式15のX
ws、X
wd,X
s,Y
ws、Y
wd,Y
s,Z
ws、Z
wd,Z
sを、式7、式8、式9を用いて変換し整理すると、以下の式16、式17、式18が得られる。
【0050】
但し、係数C
0,C
1,C
2,C
3,C
4は、式19、式20、式21、式22、式23で、Nは式24で、K
a、K
bは式25、式26でそれぞれ表されるものとする。
【0059】
ここで、Nは入力明度L
sが低明度の場合の調整値である。以上、式16、式17、式18から、補正Lab値(L
D,a
D,b
D)は、背景色Lab値(L
ws,a
ws,b
ws)と白色Lab値(L
wd,a
wd,b
wd)によって決定される係数C
0,C
1,C
2,C
3,C
4をもった、Lab値(L
s,a
s,b
s)の多元一次方程式として求めることが可能となる。演算内容は、係数C
0,C
1,C
2,C
3,C
4の導出に乗算15回と除算4回、画素ごとの変換については調整値Nの演算と係数C
0,C
1,C
2,C
3,C
4を用いた乗算の6回のみであるため、演算時間を大幅に改善することができる。また、複数の変換を介さないことから、演算精度も高めることができる。
【0060】
変換パラメータ導出部205は、背景色検出部203で検出された背景色Lab値(L
ws,a
ws,b
ws)と、出力白色値設定部204で設定された白色Lab値(L
wd,a
wd,b
wd)に基づき、上記式19、式20、式21、式22、式23に示す係数C
0,C
1,C
2,C
3,C
4を算出する。
【0061】
白色変換部206は、変換パレメータ導出部205で導出した係数C
0,C
1,C
2,C
3,C
4を用いて、上記式16、式17、式18により、入力色変換部202で得られるLab画像データの各画素値(L
s,a
s,b
s)を、白色変換したLab値(L
D,a
D,b
D)に変換する。
【0062】
第二の色変換部としての出力色変換部207は、背景除去部200により変換された第2画像データたるLab画像データを、第3画像データたるRGB画像データに変換する。本実施形態においては、変換後のLab画像データのL、a、bの組み合わせに対応した出力RGB値を導出する3次元ルックアップテーブルを予め作成しておき、出力色変換部207は、Lab画像データのそれぞれのLab値を読取り、3次元ルックアップテーブルを参照することで対応するRGB値に変換する。そして、出力色変換部207は、変換して得られたRGB画像データを画像出力部208に出力する。
【0063】
出力部としての画像出力部208は、出力I/F106を介してRGB画像データを出力し、HDD120に記憶させる。
【0064】
次に、本実施形態に係る画像処理装置100の動作について
図3のフローチャートを用いて説明する。
【0065】
まず、ステップS301において、画像取得部201は、入力I/F101を介してスキャナ110からRGB画像データを取得し、RAM103に記憶させる。
【0066】
次に、入力色変換部202は、ステップS301において取得したRGB画像データを3次元ルックアップテーブルを用いてLab画像データに変換する(ステップS302)。
【0067】
そして、ステップS303において、背景色検出部203は、入力色変換部202により変換されたLab画像データを参照し、背景色Lab値(L
ws,a
ws,b
ws)を検出する。なお、背景色検出部203による処理は後述する。
【0068】
次に、ステップS304において、出力白色値設定部204は、白色Lab値(L
wd,a
wd,b
wd)を設定する。本実施形態においては、出力白色値設定部204は、白色Lab値をLab画像データの白色に相当する(100,0,0)に設定する。
【0069】
そして、背景除去部200は、Lab空間での白色変換による背景除去を実行する(ステップS305)。なお、背景除去部200による処理は後述する。
【0070】
次に、出力色変換部207は、ステップS305において変換されたLab画像データを3次元ルックアップテーブルを用いてRGB画像データに変換する(ステップS306)。
【0071】
最後に、画像出力部208は、出力I/F106を介してRGB画像データを出力し、HDD120に記憶させる(ステップS307)。
【0072】
ここで、
図3のステップS303における背景色検出部203による背景色Lab値(L
ws,a
ws,b
ws)の検出動作について
図4のフローチャート、及び
図5のL値ヒストグラムの例を用いて説明する。
【0073】
まず、ステップS401において、背景色検出部203は、入力色変換部202により変換されたLab画像データから明度を表すL値ヒストグラム(histogram[L])を作成する、
図5は、背景検出部203により作成されたL値ヒストグラム900の例を示す図である。
【0074】
そして、背景色検出部203は、Lab画像データの各画素のLab値を参照し、L値ごとのa値の総和sum_a[L]と、L値ごとのb値の総和sum_b[L]を取得する(ステップS402)。
【0075】
次に、背景色検出部203は、L値ヒストグラム900の最高明度から低明度側にかけて検索を行い、最初のピーク開始明度start_Lを検出する(ステップS403)。なお、ピーク開始明度とは、
図5において、図中右側のピークの高明度側の裾の部分にあたる明度901を示し、本実施形態では、L値=100から徐々に明度を下げていき、L値ヒストグラム900が最初にhistogram[L]>0となった値をピーク開始明度とする。
【0076】
さらに、背景色検出部203は、低明度側にかけて検索を行い、ピーク頂点明度top_Lを検出する(ステップS404)。なお、ピーク頂点明度とは、
図5において、図中右側の最高頻度となったときの明度902を示し、本実施形態では、L値ヒストグラム900が最初にhistogram[L]<histogram[L+1]となった値をピーク頂点明度とする。
【0077】
そして、背景色検出部203は、ステップS403、及びステップS404において検出したstart_L、及びtop_Lの値から背景の明度L
wsを決定する(ステップS405)。なお、背景にあたる画素の明度はある一点ではなく正規分布していると考えられるため、本実施形態においては、背景画素がとりうる明度の最低明度を背景の明度L
wsとして設定する。これにより、背景明度L
wsより高い明度である全ての背景画素を除去することができる。背景の明度の低明度側の裾は、ピーク頂点明度から低明度側に、ピーク開始明度とピーク頂点明度との幅の位置(
図5における明度903)に存在すると考えられるため、背景検出部203は、以下の式27で求めた値を背景明度L
wsとする。
【0079】
次に、ステップS406において、背景検出部203は、背景の色度a
ws、b
wsを求める。本実施形態においては、背景の色度は、背景明度L
wsからピーク開始明度start_Lの間の明度をもつ画素のa、b値のそれぞれの平均値とする。よって、背景検出部203は、ステップS401で作成したL値ヒストグラム(histogram[L])と、ステップS402で取得したL値ごとのa値の総和sum_a[L]、L値ごとのb値の総和sum_b[L]とを用いて、以下の式28、式29で求めた値を背景の色度a
ws、b
wsとする。
【0082】
以上の動作により、入力色変換部202において変換して得られたLab画像データから背景色Lab値(L
ws,a
ws,b
ws)を検出することができる。
【0083】
次に、
図3のステップS305における背景除去部200によるLab空間の白色変換による背景除去動作について
図6のフローチャートを用いて説明する。
【0084】
まず、ステップS501において、背景除去部200の変換パラメータ導出部205は、
図3のステップS303において検出された背景色Lab値(L
ws,a
ws,b
ws)と、ステップS304において設定された白色Lab値(L
wd,a
wd,b
wd)を取得する。
【0085】
次に、変換パラメータ導出部205は、ステップS501において取得した背景色の色度(a
ws,b
ws)を参照し、a
wsの絶対値|a
ws|が所定の閾値a
THよりも大きい、又はb
wsの絶対値|b
ws|が所定の閾値b
THよりも大きい場合(ステップS502 Yes)、処理終了する。これは、背景色と判断した色が所定の閾値を越える彩度をもっている場合、その背景色は色情報として削除されるべきではないとの判断に基づくものである。一方、a
wsの絶対値|a
ws|が所定の閾値a
TH以下であり、且つb
wsの絶対値|b
ws|が所定の閾値b
TH以下である場合(ステップS502 No)、変換パラメータ導出部205による処理はステップS503へ移行する。
【0086】
ステップS503において、変換パラメータ導出部205は、ステップS501において取得した背景色Lab値(L
ws,a
ws,b
ws)と、白色Lab値(L
wd,a
wd,b
wd)を用い、式20、式21、式22、式23に示す係数C
1,C
2,C
3,C
4を導出する。
【0087】
そして、背景除去部200の白色変換部206は、ステップS503において導出した係数C
1,C
2,C
3,C
4を用い、式16、式17、式18により、ステップS302において変換されたLab画像データの各画素値(L
s,a
s,b
s)を白色変換したLab値(L
D,a
D,b
D)に変換する(ステップS504)。
【0088】
全ての画素のLab値を変換した場合(ステップS505 Yes)、背景除去部200による処理は終了する。一方、未処理の画素がある場合(ステップS505 No)、背景除去部200による処理はステップS504に戻り、次の画素のLab値変換が行われる。
【0089】
以上の動作により、背景色Lab値(L
ws,a
ws,b
ws)から白色Lab値(L
wd,a
wd,b
wd)へ白色変換されたLab画像データが作成される。
【0090】
図7は、第1の実施形態に係る白色点変換を用いた背景除去処理と、従来のLab値の一律変換による背景除去処理とについて、処理前後の色空間の変化の例を説明する図である。また、
図8は、画像データに対する処理結果の例を示す図であり、
図9は、
図8における各部のLab値の具体例を説明する図である。
【0091】
図7(a)は、第1の実施形態に係る白色変換による色空間の変化を示しており、縦軸が明度L、横軸は色度bとした断面図である。この例においては、スキャナ110で読取られた下地がやや黄みがかった画像の色空間範囲1001から、白色点変換後の色空間範囲1002に変化している。点1003は原稿スキャンデータの下地であり、
図8における原稿スキャンデータ1100の1101で示される色に相当する。例えば、
図9に示すように、Lab=(90,0,8)とする。
【0092】
点1004は色空間の最大明度の無彩色、すなわち白色点である。点1005は色空間の最低明度の無彩色、すなわち黒色点である。線1006は下地色1003と黒色点1005とを結ぶ線分であり、黄みがかったグレーのグラデーションの領域である。
図8のパッチ1106,1107,1108,1109は、上記線1006上に位置する色のパッチであり、
図9に示す値のように黄みがかったグラデーションである。線1007は白色点と黒色点とを結ぶ線分、すなわち無彩色軸である。また
図8のパッチ1102,1103,1104,1105は、この線1007上に位置する色のパッチで
図9に示す値のように無彩色グラデーションである。
【0093】
ここで、人間の目は、背景色に彩度の低い色がついていても、その背景色を白色と認識し、その他の色を背景色との相対的な色として捉えようとする特性がある。この場合、原稿目視認識1110のように、黄みがかった背景1101に相当する背景1111は白と認識され、黄みがかったグレーのグラデーション1106,1107,1108,1109は無彩色のグラデーション1116,1117,1118,1119と認識され、無彩色のグラデーション1102,1103,1104,1105は青みがかったグレーのグラデーション1112,1113,1114,1115として認識されることになる。そのため、出力画像を生成するにあたっては、人間の見えの特性と同等の出力とする必要がある。
【0094】
図7(a)に示されるように、白色点変換では、下地色1003から白色1004へ変換されると同時に、色空間全体が伸長されるように変換される。このとき、線1006の黄みがかったグレーの軸は、線1007の無彩色軸へ、線1007の無彩色軸上の点は線1008の青みがかったグレーの軸に変化している。このため、
図8の白色点変換データ1120で示されるように、背景1101は、白色の背景1121へ、黄みがかったグレーのグラデーション1106,1107,1108,1109は無彩色のグラデーション1126,1127,1128,1129へ、無彩色のグラデーション1102,1103,1104,1105は、青みがかったグレーのグラデーション1122,1123,1124,1125に変換され、人間の見え特性に合った自然な色変換を実現することができる(Lab値の具体例は
図9を参照)。
【0095】
一方、従来のLab値を一律変換する方式では、
図7(b)に示されるように、下地色1003を色度は変えずに明度を最大とした点1011に引き伸ばした色空間範囲1009を、さらに色度が無彩色となる方向に平行移動した色空間範囲1011を補正結果としている。この場合、下地色1003は白色点1004に補正されるが、黒色点1005が青みの方向にずれた点1012に移動しているように、下地色以外の色度が一律に変化してしまう。また、
図7(c)に示されるように、黄みがかったグレーのグラデーションである線1006は、白色点1004と青みの黒色点1012とを結ぶ線1013に変換されることとなり、
図8の一律変換データ1130に示されるように、背景1101は白色の背景1131へ変換されるものの、黄みがかったグレーのグラデーション1106,1107,1108,1109は白色点から青みがかった黒へのグラデーション1136,1137,1138,1139へ、無彩色のグラデーション1102,1103,1104,1105は青みがかった白から青みがかった黒へのグラデーション1132,1133,1134,1135に変換されてしまい、原稿目視認識1110と異なる結果となる(Lab値の具体例は
図9を参照)。
【0096】
以上のように、第1の実施形態によれば、色空間にゆがみやずれが発生することなく、カラーバランスが崩れることがない背景色除去処理を行うことができる。
【0097】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る画像処理装置600は、第1の実施形態に係る画像処理装置100の構成と略同一である。したがって、本実施形態の説明においては、同一な箇所については同一の符号付してその説明を省略する。
【0098】
図10は、第2の実施形態に係る画像処理装置600の全体構成を説明するための概略構成図である。画像処理装置600は第1の実施形態に係る画像処理装置100が有する出力I/F106に替えて入出力I/F606を備える。
【0099】
入出力I/F606は、例えば、LANケーブル、USBケーブルといった電気信号線を介して外部装置としてのプリンタ620と接続され、プリンタ620で用いられるプリンタプロファイルが記述されたプリンタプロファイル情報を取得したり、Lab画像データをプリンタ620に対して出力することができる。ここで、プリンタ620は、電子写真方式の画像形成装置であり、入出力I/F606から出力されたLab画像データをプリンタプロファイルに基づいてCMYK画像データに変換し、当該CMYK画像データに基づく画像を媒体上に形成することができる。
【0100】
図11は、第2の実施形態に係る画像処理装置600の機能を示す機能ブロック図である。各部における通信機構や書き込み制御、画像処理に係る演算等は、制御部102におけるCPU105がRAM104をワーキングメモリとしてROM103に記憶されたプログラムを実行することで実現される。なお、画像取得部201,入力色変換部202,背景色検出部203,背景除去部200,変換パラメータ導出部205,白色変換部206については、第1の実施形態で説明したものと同一であるため、ここでの説明は省略する。
【0101】
出力プロファイル取得部709は、プリンタ620において用いられるプリンタプロファイルが記述されたプリンタプロファイル情報を入出力I/F606を介して取得する。
【0102】
出力白色値設定部704は、背景色検出部203で検出した背景色Lab値を背景除去部200にて変換した際の変換結果となる白色Lab値(L
wd,a
wd,b
wd)を設定する。なお、本実施形態においては、出力白色値設定部704は、出力プロファイル取得部709にて取得されたプリンタプロファイル情報を参照し、これに記述されているプリンタプロファイルにて白色と定義されたLab値を白色Lab値(L
wd,a
wd,b
wd)と設定する。そして、出力白色値設定部704は、設定した白色Lab値を背景除去部200の変換パラメータ導出部205に出力する。
【0103】
画像出力部708は、背景除去部200により変換されたLab画像データを、入出力I/F606を介してプリンタ620に出力する。画像出力部708から出力されたLab画像データは、プリンタプロファイルに基づいてCMYK画像データに変換され、当該CMYK画像データに基づく画像が媒体上に形成される。
【0104】
次に、本実施形態に係る画像処理装置600の動作について
図12のフローチャートを用いて説明する。なお、ステップS301,ステップS302,ステップS303,ステップS305に係る処理は、第1の実施形態の
図3のフローチャートで説明したものと同一であるため、ここでの説明は省略する。
【0105】
ステップS807において、出力プロファイル取得部709は、入出力I/F606を介してプリンタ620からプリンタプロファイル情報を取得する。
【0106】
そして、出力白色値設定部704は、白色Lab値(L
wd,a
wd,b
wd)を設定する。本実施形態においては、出力白色値設定部704は、ステップS807において取得されたプリンタプロファイル情報に記述されたプリンタプロファイルにて白色と定義されたLab値を白色Lab値(L
wd,a
wd,b
wd)として設定する(ステップS804)。
【0107】
ステップS806において、画像出力部707はステップS305において変換されたLab画像データをプリンタ620に入出力I/F606を介して出力する。
【0108】
以上のように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態に係る効果に加え、プリンタ等の出力デバイスが任意のプロファイルを用いている場合においても、色空間にゆがみやずれが発生することなく、カラーバランスが崩れることがない背景色除去処理を行うことができる。
【0109】
本実施形態の説明においては、カラー画像データの取得方法として、外部のPC、スキャナ等から取得する形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、外部I/Fを有さず、スキャナを内蔵した複写機、ファクシミリ、複合機等にも適用可能である。また、本実施形態の説明においては、カラー画像データの出力方法として、外部のHDD、プリンタ等へ出力する形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、モニタ等の他の出力デバイスを用いた構成でも良く、また、外部I/Fを有さず、出力デバイスを内蔵した構成としてもかまわない。
【0110】
さらに、本実施形態の説明においては、XYZ色空間での白色の比をもとに算出したL*a*b*空間での白色変換式を導出する形態について説明したが、これら変換式は白色に基づいて色空間全体を調整できるものであればこれに限定されるものではなく、例えば、Bladfordの白色変換をもとにL*a*b*空間での白色変式を導出する形態としてもかまわない。また、変換式ではなく、ルックアップテーブルとして予めメモリ入力値に対応する変換値を記憶する形態としてもよい。