特許第5709078号(P5709078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5709078
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】電柱支線用蔓巻防止装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 21/00 20060101AFI20150409BHJP
   H02G 7/00 20060101ALI20150409BHJP
   E04H 12/20 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
   A01M21/00 Z
   H02G7/00 P
   E04H12/20 D
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-60262(P2011-60262)
(22)【出願日】2011年3月18日
(65)【公開番号】特開2012-191916(P2012-191916A)
(43)【公開日】2012年10月11日
【審査請求日】2013年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000163408
【氏名又は名称】近畿電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000115382
【氏名又は名称】ヨツギ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】橋本 洋助
(72)【発明者】
【氏名】古城 健太
(72)【発明者】
【氏名】鷲野 賢一
(72)【発明者】
【氏名】小谷 栄治
(72)【発明者】
【氏名】久野 晋右
【審査官】 谷山 稔男
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−205368(JP,A)
【文献】 特開平11−000095(JP,A)
【文献】 特開2009−118751(JP,A)
【文献】 特開2012−170301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 21/00
H02G 7/00
E04H 12/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の半筒状体が一側縁の蝶番部を介して開閉可能に設けられていると共に両半筒状体の相対する内面に支線をガイドする凹溝が形成された防止具本体と、一対の半割体が一側縁の蝶番部を介して開閉可能に設けられていると共に支線を挟着固定する挟着機構が内装された固定体とからなり、
防止具本体の一端部に先端が膨らんだ突出部を形成し、固定体には該突出部を外側から抱持する筒状連結部を形成することにより、該固定体に該防止具本体が回転自在に連結されるようにしたことを特徴とする電柱支線用蔓巻防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱を支持する支線に取り付けることにより、ツタ等の蔓性の植物が巻き上がるのを防止する電柱支線用蔓巻防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ツタ等の蔓性植物が生い茂る場所では、電柱を支持するために地上から斜めに張られた支線にその蔓性植物が巻き上がり電柱の上部まで達することがあり、これが原因で地絡事故を発生させるおそれがあった。
このように蔓性植物が支線に巻き上がるのを防止するための蔓巻防止装置が下記特許文献1、2に示されており、特許文献1に示された蔓巻防止装置は、筒状の防止具本体内に支線を挟着する爪部材を備えることにより支線に対し強い挟着力が得られるものである。また、特許文献2に示された蔓巻防止装置は、支線に取り付けられた固定体を防止具本体が包み込み、内包後に固定体と防止具本体が一体化する構造である。しかしこれらの蔓巻防止装置は、支線が通常は複数本の鋼線を螺旋状に撚り合わせた索条からなるものであったので、風によって該防止具本体に回転トルクが掛かるとその鋼線に沿って該防止具本体が回転し、ずり落ちるおそれがあった。
【0003】
また、下記特許文献3に示された蔓巻防止装置は、支線にUボルトを固定し、該Uボルトの上部に円筒状の防止具本体が支持されるように構成されたものであり、特許文献4に示された蔓巻防止装置は、板状の防止具本体を支持してなるものであり、これらの特許文献に示された構成では、防止具本体が自由に回転し得るので、防止具本体の回転トルクがUボルト等の固定体に伝わらず、固定体が回転しないために上記のようなずり落ちが防止される。
また、下記特許文献5に示された蔓巻防止具は、防止具本体内に支線への固定体が設けられ、該固定体の外周に防止具本体が回転自在に取り付けられ、風によって該防止具本体が回転しても固定体に回転トルクが掛かることなく、ずり落ちが防止されるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平7−38585号公報
【特許文献2】実開平3−20663号公報
【特許文献3】実開昭57−198252号公報
【特許文献4】実用新案登録第3123795号公報
【特許文献5】特開2009−118751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献3、4に示された蔓巻防止具は、防止具本体が固定体から分離した別体のものであったので、防止具本体だけが強風を受けて支線に沿って上に登っていってしまい予期しない事故を起こしたり蔓巻防止機能が損なわれるおそれがあった。このことは、平地では電柱に対し張設される支線の傾斜角度が水平面に対して60度程度に保たれるものの、図10に示したような急な傾斜地、或いは崖のような場所では電柱aを支持する支線bの傾斜角度が水平に近くなるために、固定体cによって防止具本体dが支持されていても、防止具本体dだけが登って行き易いという問題がある。
また、爪部材等からなる挟着機構には、支線を伝って雨水が絶えず浸入するので、金属部材で発生した錆により、爪部材の動きが損なわれたり、爪部材を覆っているゴムの劣化等により、支線を挟着する能力が損なわれた状態になることが懸念されるため、メンテナンスが容易な解決手段が求められていた。
本発明は、このような防止具本体が、強風によりずり落ちたり、舞い上がるという問題、および経年劣化によるメンテナンス上の問題、および、取付作業上の問題など全ての問題点を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため本発明に係る電柱支線用蔓巻防止装置は、一対の半筒状体が一側縁の蝶番部を介して開閉可能に設けられていると共に両半筒状体の相対する内面に支線をガイドする凹溝が形成された防止具本体と、一対の半割体が一側縁の蝶番部を介して開閉可能に設けられていると共に支線を挟着固定する挟着機構が内装された固定体とからなり、該固定体に該防止具本体が回転自在に連結したことを特徴とする。
これによって、防止具本体が強風によってずり落ちたり舞い上がることがなくなる。
【0007】
また、本発明は上記電柱支線用蔓巻防止装置において、防止具本体の一端部に先端が膨らんだ突出部を形成し、固定体には該突出部を外側から抱持する筒状連結部を形成することにより、該固定体に該防止具本体が回転自在に連結されるようにしたことを特徴とする。
これによって、固定体のメンテナンスが容易になる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電柱支線用蔓巻防止装置によれば、防止具本体が支線に沿ってずり落ちたり舞い上がるといった問題がなくなる。また、固定体のメンテナンスを容易にする。さらには、この蔓巻防止装置の取付作業を容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る電柱支線用蔓巻防止装置の防止具本体の開状態の斜視図。
図2】本発明に係る電柱支線用蔓巻防止装置の固定体の開状態の斜視図。
図3】本発明に係る電柱支線用蔓巻防止装置の固定体と防止具本体との連結状態を示した斜視図。
図4】本発明に係る電柱支線用蔓巻防止装置を支線に取り付けた状態の側面図。
図5図4のA−A線断面図。
図6図4のB−B線断面図。
図7図4のC−C線断面図。
図8図4のD−D線断面図。
図9図4のE−E線断面図。
図10傾斜地での支線の張設状況を示す説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に本発明に係る電柱支線用蔓巻防止装置の第1の実施形態を図1図9に従い説明する。防止具本体1は、図1に開状態にて示したように、耐候性を有する合成樹脂をブロー成形することにより、半筒状体1aと半筒状体1bとが一側縁の肉薄状の蝶番部2を介して一体に形成される。該半筒状体1a,1bの内面3a,3bの中心線上に後述する支線をガイドするための凹溝4a,4bが形成され、また、該半筒状体1aの蝶番部2と反対側側縁に係合部5aが凹設され、該半筒状体1bの蝶番部2と反対側側縁に係合爪5bが突設される。また、半筒状体1aの内面3aの周囲に突条6aが形成され、半筒状体1bの内面3bの周囲には該突条6aが嵌合する凹条6bが形成される。7a,7bは前記凹溝4a,4bの一部に設けられたゴム等の弾性材からなる回転制動部材である。8aは凹溝4aの一側縁に突設されたガイド片、8bは該ガイド片が収まるように凹溝4bの一側縁に形成された凹部である。また、該半筒状体1a,1bの一端部に先端が丸く膨んだ半裁キノコ状の突出部9a,9bが一体に形成されている。
【0012】
このため、蝶番部2を屈曲させて相対する内面3a,3bを合着し、突条6aを凹条6bに嵌合し、係合爪5aを係合部5bに係合することにより、該半筒状体1a,1bは円筒形の防止具本体1になる。なお、該防止具本体1の直径Wおよび長さLは、蔓性植物が巻き付かない寸法(例えば、直径180mm、長さ1200mm程度)にする。
【0013】
また、固定体20は図2に開状態にて示したように、耐候性を有する合成樹脂を射出成形することにより半円筒状の一対の半割体20aと半割体20bとが形成され、該半割体20aおよび半割体20bの一側縁に形成された蝶番部21a,21bに支軸22を貫挿することにより、該半割体20aと半割体20bとが開閉可能なるように連結される。該半割体20a,20bの内面中心線上に支線をガイドするための凹溝23a,23bが形成され、また、該半割体20aの蝶番部21aと反対側側縁に係合部24aが凹設され、該半割体20bの蝶番部21bと反対側側縁には係合爪24bが突設される。また、図3にも示したように、該半割体20aおよび半割体20bの一端部に前記防止具本体1の突出部9a,9bを外側から抱持し得る内径を有した筒状連結部25a,25bが一体に形成される。また、該半割体20aおよび半割体20bの他端部には、スカート部26a,26bが一体に形成される。なお、27は該半割体20a内および半割体20b内に形成された補強用リブである。
【0014】
30は一方の半割体20a内に設けられた挟着機構で、該挟着機構30は、中心線の一側から起立し表面にゴム等の滑止用弾性材31を張設した起立壁32と、該中心線を間に挟むように該起立壁32の反対側にボルト33によって回転可能に軸支されたカム形の爪部材34とからなり、該爪部材34の表面にもゴム等の滑止用弾性材35を張設すると共に、該爪部材34を図9に示した矢印の方向に付勢し、該爪部材34を起立壁32の表面に圧接させる巻きバネ(図示されず)を該爪部材34内に設けている。37は該爪部材34の一側面に突設された指掛用の摘子部である。
【0015】
この蔓巻防止装置は、前記突出部9a,9bが傾斜下側となるように凹溝4a,4bに支線40を合致させ、係合爪5bを係合部5aに係合することにより、防止具本体1を該支線40の周囲に取り付ける。なお、このとき、突条6aが凹条6bに嵌合することにより半筒状体1aと半筒状体1bとが隙間なく閉じられる。また、ガイド片8aが支線40に当接することにより支線40のズレが防止される。また、半筒状体1aと半筒状体1bとを閉じたとき、回転制動部材7a,7bが支線40の外周に接することにより、強風時によって防止具本体1が回転するのがある程度抑制されるようにしている。
【0016】
こうして防止具本体1を支線40に取り付けた後、爪部材34の摘子部37に指を掛けて該爪部材34が起立壁32の表面から離間するように回転させ、該起立壁32と該爪部材34との間隔に支線40を通して摘子部37から指を離すことにより前記巻きバネの弾性により該爪部材34を該支線40に圧接させ、該起立壁32と該爪部材34とで支線40を挟着する。そのとき筒状連結部25aが前記防止具本体1の突出部9a,9bの外周に被るようにすると共に凹溝23a,23bに支線40を合致させる。なお、爪部材34はカム形に形成されていて矢印の方向に回転すればするほど該爪部材34の外周と起立壁32との間隔が狭くなるので、支線40が強固に狭着され、固定体20がずり落ちるのが防がれる。そして、筒状連結部25bを突出部9a,9bの外周に被せると共に、係合爪24bを係合部24aに係合し、半割体20a,20bを合着させる。これによって突出部9a,9bが筒状連結部25a,25bによって外側から抱持され、固定体20と防止具本体1とが回転自在に連結される。
【0017】
また、図8に示されるように、係合部24aの外側に空隙28が形成され、指もしくはドライバーなどの工具で係合爪24bを弾性限度内にて湾曲させることで、係合爪24bと係合部24aとはこのように一旦は係合させてもこの係合を解除(リリース)できるようにしている。
【0018】
このように支線40に取り付けられた蔓巻防止装置では、固定体20が支線40にしっかりと固定され、防止具本体1が強風を受けて回転してもその回転トルクが該固定体20に伝わらないので固定体20が回転してずり落ちるようなことがない。また、強風によって防止具本体1に浮力が掛かっても、該防止具本体1は突出部9a,9bによって固定体20と連結されているので、該防止具本体1だけが支線40に沿って上昇するようなこともなく、防止具本体1が常に適切な高さに保持され、支線40を蔓性植物が巻き上がるのを防止することができる。
【0019】
また、所要メンテナンス時には、上記したように係合爪24bと係合部24aとの係合を解除して半割体20a,20bを開くことで、該固定体20内の挟着機構30を容易に点検することができる。即ち、該固定体20の筒状連結部25a,25bは突出部9a,9bを外側から抱持しているので、いちいち防止具本体1を開かなくても該防止具本体1を閉じたままの状態で固定体20だけを開いて内部の挟着機構30を簡単に点検し、必要に応じて修理、或いは部品交換をすることができる。このためメンテナンス作業が著しく容易になる。なお、挟着機構30は、摘子部37に指を掛けて爪部材34を回転させるだけで支線40に簡単に取り付けられると共に、取り外す際にも摘子部37に指を掛けて爪部材34を回転させるだけで簡単にその挟着状態を解除でき、取り付け取り外しが容易であるので、いっそうメンテナンスが容易になる。
【符号の説明】
【0022】
1 防止具本体
1a,1b 半筒状体
2 蝶番部
3a,3b 内面
4a,4b 凹溝
5a 係合部
5b 係合爪
9a,9b 突出
0 固定体
20a,20b 半割体
21a,21b 蝶番部
23a,23b 凹溝
24a 係合部
24b 係合爪
25a,25b 筒状連結
0 挟着機構
32 起立壁
34 爪部材
40 支線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10