【実施例】
【0041】
本発明の外装構造は、既存屋根(外装材1)上に持出架台2、レール材3、固定部材4を配して新設外装構造(緑化パネル6)を設置した構成であり、
図1〜3に示す第1実施例では、複数の山状部1Aが形成される屋根に、左右一対の部材からなる持出架台2を固定し、該持出架台2に、レール材3及び固定部材4を取り付けて一体化させ、新設外装構造として緑化パネル6を敷設した構成である。
【0042】
この第1実施例における既存屋根は、縦葺き屋根であり、略水平状の面板部11の左右側縁に傾斜状に立ち上がる立ち上げ部分12,12を形成し、該立ち上げ部分12,12の上端に略水平状の台状部分13,13、略垂直状の起立片14,14が延設された外装材1からなり、左右に隣接する外装材1,1の立ち上げ部分12,12及び台状部分13,13にて山状部(凸部)1Aが形成され、突き合わされた起立片14,14の上端を係合せしめて略円筒状の縦凸部10を形成した構成である。
【0043】
この第1実施例における持出架台2は、
図2(a)〜(c)に示すように略H字状であって、左右対称の左側部材20L,右側部材20Rと、それらを連結するボルトナットである連結具20B,20Nとからなる。左側部材20L及び右側部材20Rは、それぞれ横向き片である下面部分(着座部23)と略水平状の上面部分(受けフランジ21)とその間の半円弧状部分とからなり、この半円弧状部分が屋根の縦凸部10を左右から包持する包持部分221であり、その下端が締め付け部分222であり、連結具20B.20Nが締め付け機構223であり、取付部22を構成している。
【0044】
この第1実施例におけるレール材3は、
図2(d),(e)に示すように左右対称の略門側フレーム材であって、後述する新設外装構造としての緑化パネルを支持する支持部31と、流れ方向に対向する側壁部32,32と、該側壁部32,32の下方に位置して固定部材4の係止部と係合する被係止部33と、その下方に位置する規制部34とを有する通し材である。
【0045】
前記支持部31は、略平坦(水平面)状であって、その流れ(図では左右及び中央)に上方が開放する溝部311,311,311を備え、該溝部311は、その開放上縁が内部より幅狭に形成され、この溝部311内を
図4(g)に示す締着具30としての取付ボルトが長さ方向に移動することができる。
より詳しくは、この支持部31の溝部311に、締着具30として取付ボルトを配設するには、予め溝部311の内部幅を締着具(取付ボルト)30の頭部301よりも僅かに大きく形成すると共に溝部311の開放上縁の幅を取付ボルト30の雄ネジ部分302よりも僅かに大きく形成すればよく、溝部311内を取付ボルト30が長さ方向にスライド状に移動(調整)することができる。
【0046】
前記側壁部32は、前記支持部31から下方へ垂下する略垂直面状であって、各側壁部32の下端から外側へ略水平状にフランジ状(外向き延出片状)に被係止部33が延設され、さらにこの被係止部33の上方に外側へ突出する突出片状の規制部34が設けられている。
また、この側壁部32は、流れ方向に対向するものであって、この側壁部32,32の対向間隔は、持出架台2の受けフランジ21の流れ方向の寸法より僅かに大きく形成されている。
【0047】
前記被係止部33は、前記対向状の側壁部32,32の下端に位置する外向き延出片であるが、側壁部32,32の下端の被係止部33,33は、両方が被係止作用を果たすものではなく、流れ方向のうちの何れか一方の被係止部33は、後述する固定部材4の係止部42と係合し、他方の被係止部32は、固定部材4の取付手段43に組み付けられる。
【0048】
前記規制部34は、前記被係止部33の上方に位置する外向き延出片であり、前記被係止部33より短く形成され、締め付けボルト5Aの先端が下方へズレ動かないように設けられている。
【0049】
この第1実施例における固定部材4は、
図2(f)〜(h)に示すように中央が上方へ隆起する基板部41と、該基板部41の一端に設けた内向き溝状(上皿状)の係止部42と、基板部41の他端に設けた取付手段43とを有する構成である。
この固定部材4は、一端に係止部42を備える略矩形状の基板部41,41が左右に並列され、基板部41,41を隔てる空間44は持出架台2の取付部22の上方部分の幅よりも大きく形成され、この空間44を含めて略正方形状に形成されている。
【0050】
この第1実施例における取付手段43は、基板部41の他端に受皿状(窪み状)の延出部45を介して上向きに形成した縦片431に、内向きに締め付けボルト5Aを保持させた構成であり、この締め付けボルト5Aを締め付けてその先端を前記レール材3の側壁部32に当接させることにより、この固定部材4は、前記レール材3を流れ方向の水上側及び水下側から挟着状に保持する。
また、前記レール材3には被係止部33の上方に規制部34が設けられているので、締め付けボルト5Aの先端の下方への位置規制が果たされる、即ち下方へズレ動くことが無い。
【0051】
これらの持出架台2、レール材3、固定部材4を前記屋根(外装材1)上に取り付ける手順(施工方法)を
図3に基づいて以下に説明する。
まず第1の工程として、前記持出架台2を屋根の山状部1Aの頂部に形成される縦凸部10に取り付け固定する。
その際、前述のように取付部22の左右の包持部分221で屋根の縦凸部10を包持するように臨ませ、ボルトナットである連結具20B,20N(締め付け機構)223で左右から挟持するように締め付けて取り付け固定する。
【0052】
次に、第2の工程として、
図3(a)に示すように屋根に取り付けられた前記持出架台2の受けフランジ21上に、前記レール材3を載置する。この第1実施例では、前述のようにレール材3の側壁部32,32の対向間隔が、持出架台2の受けフランジ21の流れ方向の寸法より僅かに大きく形成されているので、レール材3の配設に際し、単にレール材3を載置するだけでなく上方から嵌め込むように配設することができる。即ち側壁部32,32がレール材3の流れ方向のズレ動きを防止する位置規制の作用を果たす。
【0053】
次に、
図3(c)に示すように持出架台2の受けフランジ21の下面側に前記固定部材4の基板部41を臨ませ、その係止部42をレール材3の被係止部33に係止させ、該係止部42を支点として基板部41を回動させるように臨ませる。その際、固定部材4には空間44が形成されているので、持出架台2の取付部22の上方部分を左右から挟むように固定部材4の係止部42,42をレール材3の被係止部33に安定に係止させることができる。
なお、前記
図3(a)では、固定部材4を奥側から手前側へ向かって配する矢印を付記したが、この第1実施例における固定部材4は、前記
図3(c)では右側から左側へ向かって臨ませるものである。
【0054】
その後、
図3(b),(d)に示すように固定部材4の基板部41の他端に設けた延出部45をレール材3の係止部33に対して下方から沿わせ、縦片431が略垂直状になるように保持した状態で、締め付けボルト5Aを締め付け、その先端をレール材3の側壁部32に当接させる。それにより、この固定部材4は、レール材3を流れ方向の水上側及び水下側から挟着状に保持するものとなる。また、前記レール材3には固定部材4の取付手段43(締め付けボルト5A)を位置規制する規制部34が設けられているので、レール材3の適正位置に締め付けボルト5Aの先端が配置されて位置規制(がたつき防止)することができる。
【0055】
最後に、第3の工程として、取り付けられたレール材3に新設外装構造(緑化パネル6)を配して構築するが、この第1実施例では、レール材3の支持部31に設けられた三列の溝部311,311,311のうち中央を除く二列の溝部311,311に
図4(j)に示す締着具(取付ボルト)30を保持して長さ方向にスライド状に移動(調整)して固定することができる。
具体的には、この取付ボルト30が挿通する取付孔を設けた緑化パネル6を前記レール材3の支持部31上に載置し、その上面に押さえ面材7を配して締着ナット30'で締着する。前記取付ボルト30は、頭部301を溝部311内に嵌め込み、雄ネジ部分302を上方へ延在させた状態で保持するが、この状態で溝部311の長さ方向にスライド状に調整可能であって、雄ネジ部分302に締着ナット30'を締め付けることにより、緑化パネル6を挟着状に固定すると共に、この取付ボルト30自体を溝部311の適正位置に固定することができる。
また、前記押さえ面材7は、合計2つの長孔を備え、流れ方向及び左右方向に隣接する4つの緑化パネル6に跨って配設される。
【0056】
このように本発明の外装構造は、簡易構成の持出架台2、レール材3、固定部材4を用いて容易に一体的に組み付けることができるため、前記従来構造のように外装材の態様毎に部材を用意したり、その都度加工する必要が無く、容易に取付施工を実施でき、作業が容易である。
そのため、持出架台2、レール材3、固定部材5の各部材を作製する作業も容易であり、例えば各種新設屋根の仕様・形状が変更されても様々な既存屋根に対しても、或いは例えば新設外装構造としての太陽電池パネルの仕様・形状が変更されても、必要に応じて前記各部材を容易に形状や寸法を適応させることができる。
さらに、本発明の外装構造の施工法は、第1〜第3の工程を容易に実施でき、特に第2の工程において、固定部材4の取り付けによって持出架台2とレール材3を一体的に組み付けるため、従来技術のように外装材の態様毎に部材を用意したり、その都度加工する必要が無く、製造時に手間がかかることもなく、素材の厚みに制限を受けたり、部材コストを高騰させることもない。
【0057】
特にこの第1実施例では、固定部材4が、左右方向に並列する基板部41,41を備え、各基板部41の一端に係止部42を有する場合、取付部22の上方部分を左右から挟むように配設することができ、一つの取付手段43にて二つの係止部42,42を係止させることができる。
【0058】
図4(a)〜(e)は本発明に用い得る固定部材4A〜4Eを示すものであって、
図4(c),(d),(e)は本発明に用い得るレール部材3A,3B,3Cとの組み合わせをも示すものである。
固定部材に関し、基板部41は固定部材4A,4Bのように一つのみでもよく、また固定部材4B,4Dにおける基板部4b,4dのように略平坦状でもよい。さらに、締め付けボルト5Aを保持する縦片431は、固定部材4A〜4Cのように上向き鉛直状でもよいし、固定部材4Eのように傾斜状片433でもよい。
レール材に関し、レール材3A,3Cのように被係止部33が規制部34を兼ねる構成でもよく、その場合、固定部材4C,4Eのように取付手段である締め付けボルト5Aが被係止部兼規制部33,34に係止されるものであればよい。
また、レール材3Bのように支持部31bが二列の溝部311を備える構成でもよく、一端(右側)のみに規制部34を設けるようにしてもよい。
【0059】
図4(g)に示すくさび状の固定具5B、及び
図4(i)に示す固定部材4Fの態様(被係止部453を有する延出部45')は、本発明に用い得る別の態様の取付手段を示すものである。
前記くさび状の固定具5Bは、前後(図では左右)に略水平状に延在する係止部51,51を備え、略中央に上方へ突出状の把持部52を備えるピース材であり、横幅寸法(外側の係止部51の端縁から内側の係止部51の端縁までの長さ)xLは、一方端(図では手前側又は奥側)と他方端(図では奥側又は手前側)とで長さが異なるように成形され、両係止部51,51からなる底面形状はテーパ状に形成されている。
前記固定部材4Fの延出部45'は、横片451から段差452を介して端部を折り返して内側が解放する溝状の被係止部453を形成して上方が開放する皿状に形成した構成である。
なお、
図4(h)に示すレール部材3Dでは、被係止部33である外向き延出片と前記第1実施例では規制部34と説明した外向き延出片との間に形成される内向き溝状部分を係止部兼規制部35とし、前記固定具5Bの係止片51の厚みより僅かに大きい幅を有するように形成した。
【0060】
このくさび状の固定具5Bを用いた取付手段は、前記固定部材4Fの延出部45'上に、前記レール材3Dのフランジ状の被係止部33が位置するように載置し、被係止部453と側壁部32間に固定具5Bを取り付ける(差し込む)ことでレール材3Dと固定部材4Fとが組み付けられる。
詳しくは、当該図面には図示しないが前記第1実施例と同様に固定部材4Fの基板部41の一端に設けた係止部42をレール材3Dの被係止部33に係止させ、該係止部42を支点として基板部41を回動させるように臨ませ、基板部41の他端に設けた延出部45をレール材3Dの係止部33に対して下方から沿わせる点では前記第1実施例と同様であるが、この取付手段では、固定具5Bを延出部45'の上方に臨ませ、その係止部51,51がレール材3Dの被係止部兼規制部35、固定部材4Fの被係止部453に位置するように差し込んで取り付ける。なお、延出部45'の皿状底面は内側よりも外側が高く形成されている。
【0061】
このような取付手段にて施工された外装構造は、固定具5Bの取り付け(差し込み)によって持出架台2とレール材3D、固定部材4Fを組み付けるため、素材にビス穴やボルト孔を形成することがないので、前記「切り粉」が発生することも錆の発生もなく、仮に施工誤差が判明した場合には容易に取り外して柔軟に対応することができる。