特許第5709081号(P5709081)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5709081
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】携帯入力端末の日本語入力方式
(51)【国際特許分類】
   H03M 11/08 20060101AFI20150409BHJP
   G06F 3/023 20060101ALI20150409BHJP
   H03M 11/10 20060101ALI20150409BHJP
   H03M 11/12 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
   G06F3/023 310K
   G06F3/023 310J
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-44390(P2014-44390)
(22)【出願日】2014年2月18日
【審査請求日】2014年9月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500299942
【氏名又は名称】佐竹 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 靖彦
【審査官】 佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−352217(JP,A)
【文献】 特開平05−298284(JP,A)
【文献】 特開平06−214691(JP,A)
【文献】 特開昭64−026922(JP,A)
【文献】 特許第4761234(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/023
H03M 11/08,11/10,11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3行5列のアルファベット鍵盤による日本語入力方式において、入力する字母あるいは字母群を母音鍵盤と子音鍵盤に分けて、入力とともにこの二つの鍵盤が自動的に交替する入力方式を採用した場合に、その母音鍵盤に置く鍵を、a i u e o、ann inn unn enn onn、ai ui uu ei ou、の15の鍵から構成した携帯入力電子機器の日本語入力方式において、母音鍵の押し下げが終わった時点で次の子音鍵を押し下げる前にポーズを置くと、鍵盤交替とは無関係に促音記号の小型の「っ」を表示するためのtが入力され、子音鍵の押し下げが終わった時点で次の母音鍵を押し下げる前にポーズを置くと、鍵盤交替とは無関係に拗音化のためのyが入力され、子音鍵盤のnを押し下げた時点でやや長いポーズを置き、母音鍵盤の同じ位置に置かれた母音鍵を押し下げると、鍵盤交替とは無関係にnnが入力されるように設定した携帯入力電子機器の日本語入力方式。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯入力端末の日本語入力方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の中心的課題は、アルファベット入力を採用する3行5列の鍵盤において、広義の母音鍵盤と子音鍵盤がその入力に応じて自動交代する方式の改善によって、日本語の音韻体系を全面的に反映する携帯入力端末の入力方式を確立する点にある。
【0003】
一般的に言って、日本語の音韻体系を反映する電子機器の入力方式としては、パーソナルコンピューターの場合のNECの森田方式とこれを改善しながら携帯入力端末に応用した後に示す特許文献1の場合、および一般的な携帯電話の場合における通常の五十音図に基づいた入力方式の2種類がある。
【0004】
周知のように、欧米諸国での携帯電話でのメールの使用は、きわめて低調であり、わが国におけるその盛行とは対照的である。
【0005】
このような事情の背景には、携帯電話における日本語入力が五十音図を基礎として組み立てられているという事実がある。
【0006】
言い換えれば、携帯電話における日本語入力は日本語の音韻体系を反映する形で行われているのであり、このことが、その良好なヒューマンインターフェイスを保障しているのである。
【0007】
このような、携帯電話の入力方式は、3行3列の鍵盤に配置された9個の鍵と別の1個の鍵を使用する形で行われるいわゆるテンキー方式である。
【0008】
この優れた方式は、それにもかかわらず、いくつかの問題点を抱えている。
【0009】
その主要な問題点は、五十音の各行の入力が、標準的な場合に最低1回から5回、小型の字形を含む「あ行」の場合には、最低1回から10回の鍵の押し下げが必要であり、総計で80種類のキーストロークが必要であり、これをアルファベットによる英文入力の場合の26種類のキーストロークに対して、単に機械的物理的な面から見ると著しく煩瑣である点があげられる。
【0010】
わが国の携帯電話の五十音に基づく入力が、このような問題点を持ちながら、そして不当にもガラパゴス的と嘲笑されながら、圧倒的な実用性を誇っているのは、それが五十音という日本語の音韻体系を反映する入力方式となっているからである。
【0011】
一方、森田方式は、五十音を基礎とした入力方式としては、現今の携帯電話のそれに先立った優れた方式であり、現在、森田方式の達成点と失敗点を確認することは、重要な意味を持っている。
【0012】
森田方式の特色は、五十音の重視と省鍵打法という2点にまとめられる。
【0013】
前者は、本発明が受け継ぎ、さらに発展させようとする重要なポイントであるが、後者には重要な問題点が隠されている。
【0014】
端的に言えば、それは日本語の音韻体系との照応という優れた観点と、単純な物理的機械的な観点に立ってヒューマンインターフェイスを無視する方法が混在している点に表現されている。
【0015】
森田方式が、省打鍵とするなかで、本発明に関連するのは、第一に、ai、ei、ouの3個の鍵を正規の鍵盤に置いて、たとえば第一というときの第の字を、d+aiの2打鍵で入力し、正規というときの正の字をs+eiの2打鍵で入力し、省打鍵というときの省の字を、s+y+ouの3打鍵で入力し、その結果、一般的な入力に対して1打鍵を省略するというものである。
【0016】
第二は、子音シフト鍵によって呼び出される、ann、inn、unn、enn、onnの鍵を子音シフト鍵と同時に押し下げることで、たとえば鍵盤の盤をb+annの2打鍵で、音韻の韻をinnの1打鍵で、英文の文をb+unnの2打鍵で、鍵盤の鍵をk+ennの2打鍵で、日本の本をh+onnの2打鍵で入力し、その結果、一般的な入力に対して2打鍵を省略するというものである。
【0017】
第一の方式の問題については、すでに特許文献1が、日本語の二重母音にはai、ei、ou、だけではなく、ui、uu、が存在していることを指摘している。
【0018】
第二の母音+「ん」の字の入力については、微妙で重要な問題が残されている。
【0019】
一般的な入力においては、字母鍵盤に置かれた字母入力鍵を、たとえば、kenn、bannと入力するのであって、その入力はルーティンな順次4打鍵の操作であるのに対して、森田方式が主張する方法は、字母鍵盤以外の場所に置かれたシフト鍵を、字母鍵盤の打鍵と同時に打鍵するというものである。
【0020】
これは、単に機械的物理的な操作としては、2打鍵の省略になるが、ヒューマンインターフェイスの観点から言えば、シフト鍵を押し下げるのには1打鍵が必要である上、一般的には順次の打鍵をこの場合に限って同時に打鍵するというのは入力のリズムを狂わせる相当に重い負担であり、さらに打鍵の場所が通常の字母打鍵の鍵盤以外の場所であることは、その負担をさらに増加させるものである。
【0021】
ヒューマンインターフェイスの観点から言えば、字母入力を字母鍵盤で順次行うということは、一種の閉じられたシステムを構成するのであって、この問題については、森田方式はこの人間的心理的システムを機械的物理的な観点から否定しているのである。
【0022】
ただし、森田方式がここで「ん」が、必ず単母音と結びつき、またすべての単母音と結びつくとして、ann、inn、unn、enn、onn、の5個の鍵を広義の母音鍵として設定していることには、大きな意味がある。
【0023】
以上によって、森田方式の2側面である五十音への対応と省打鍵のうち、前者はきわめて優れた発想でありながら、二重母音の選定において不完全さを残し実用面では問題があること、後者は機械的物理的観点から心理的観点を否定する負の発想であることがわかった。
【0024】
そもそも字母入力とは、人間文化の中核をなす言語を字母体系を通じて電子機器にinputする行為であり、字母入力の設計は言語と字母の体系に対応する形でなされるべき問題であり、こうしてinputされた内容が機械言語に書き換えられる過程で、機械的物理的な要素が中核となるべきである状態とは、次元が異なっているのであって、この点への意識的対応が字母入力方式の核心である。
【0025】
これまでの電子機器の入力方式のなかで、森田方式は現在一般的な携帯電話の入力方式と並んで、言語と字母の体系に注意を集中したもっとも優れた方式であったが、なおこの点への配慮を欠く面がその欠陥となっているのである。
【0026】
一方、すでに述べたように、特許文献1として示す特許4761234は、携帯入力電子機器の入力方式に関する発明であるが、そこでは、森田方式が無視したui、uuが加えられ、二重母音として、ai、ui、uu、ei、ouの5鍵が設定されており、二重母音の入力の問題が解決されている。
【先行技術文献】
【0027】
【特許文献1】特許4761234
【特許文献2】特願平05−216575
【特許文献3】特願平06−043986
【特許文献4】特願平06−067777
【特許文献5】特願平09−190253
【発明の概要】
【発明が解決しようとする問題】
【0028】
以上によって、本発明の課題は、森田方式と特許文献1の長所を受け継ぎ、その短所を補正して、日本語の音韻体系に全面的に照応する入力方式を設計することである。
【0029】
これまでに本発明が言及しなかったし、森田方式もまたそれとして明言してはいない森田方式の長所として、日本語入力鍵を子音と広義の母音に分けて構成した点をあげることができる。
【0030】
いま、この観点から本発明が基本的に受け継ぐ日本語の広義の母音群を改めて設定する。
【0031】
第一群は、当然のことながらa、i、u、e、oの5個の単母音である。
【0032】
第二群は、a、i、u、e、oの単母音のそれぞれに、尾子音「ん」をつけたann、inn、unn、enn、onnの5音である。
【0033】
第三群は、a、i、u、e、o、の単母音のそれぞれにゆるやかに対応するai、ui、uu、ei、ouの5個の二重母音である。
【0034】
以上によって、本発明が採用する日本語の広義の母音を分類すると、1、あいうえお。2、あん、いん、うん、えん、おん。3、あい、うい、うう、えい、おう、の3種類15個となり、本発明においては、これらの15個の音を入力する15の鍵から広義の母音鍵盤を構成する。
【0035】
注目すべきことは、1、2、の場合にはいずれも、あいうえお、の五音が主軸となっており、3、の場合には、あいうえお、にほぼ対応する五音がそろっていることである。
【0036】
以上の結果は、日本語の音韻体系の基本となるのは五十音、とりわけあいうえお、の五音であることを示している。
【0037】
なお、念のために付記すれば、本発明における広義の母音という概念は、本発明者が恣意的に作り出した概念ではなく、中国語の場合の、声母と韻母の概念を援用したものである。
【0038】
すなわち、中国語においては、一般的な子音を声母と呼ぶが、これと対峙する韻母は、a、
や、ang、eng、ong、iang、ing、iong、uang、ueng、等のngを含む音のすべてを含んだ概念として成立しており、本来中国語由来の漢字音を扱うのにふさわしい概念である。
【0039】
そして、この中国語の音韻体系と日本漢語の音韻体系のあいだには、相当に明確な対応関係がある。
【0040】
のnを含む音に日本漢語の「ん」つき母音が対応し、ang、eng、ong、iang、ing、iong、uang、ueng、等のngを含む音は、日本漢語では基本的に二重母音になる。
【0041】
これ以外に、本来の中国語には、入声が存在し、これは日本に入ったときに、旧仮名遣いのいわゆるフクツチキの音として、たとえば、国籍というように、フクツチキの音で終わる二字音の漢語となった。
【0042】
現在の中国語では、この入声は、単母音と複合母音に吸収され、日本語の漢語では、二字音の漢字となっている。
【0043】
一方、以上のように設定した本発明の母音鍵盤と入力に応じて自動的に交代する子音鍵盤に設定される鍵は、自身は音価を持たず、単に鍵盤の入力に応じた自動的交代を実現するために設定された、いわゆるゼロ子音での母音入力を可能にする子音符と、k、s、t、n、h、m、y、r、w、g、z、d、b、p、の14鍵、あわせて15鍵である。
【0044】
ところで、本発明の子音鍵盤の構成は、基本的に特許文献1の場合と同様であるが、母音鍵盤のすべてを広義の母音の入力にあて、子音鍵盤に子音符と五十音図の子音列を構成する9個の清音を入力する子音と4個の濁音を入力する子音、および1個の半濁音を入力する子音を置いた本発明の場合には、このままでは、拗音、促音、鼻音の入力ができない。
【0045】
この拗音、促音、鼻音の入力の困難を解決するために、特許文献1の場合には、その母音鍵盤に、拗音入力のための、形式上の母音鍵である、ya、yu、yoの3個の鍵と、促音符、鼻音符を置いているのである。
【0046】
これに対して、本発明においては、鍵の押し下げ以外の要素を用いて、拗音、促音、鼻音の入力を行うことによって、母音鍵盤の5個の鍵を省略するのである。
【0047】
すなわち、本発明においては、母音鍵盤の鍵を押し下げた直後に、ポーズをとってから次の子音を入力すると、この母音で終わる仮名と子音で始まる仮名の間に、促音を表示する小型の「っ」が入力され、子音鍵盤の鍵を押し下げた直後に、ポーズをとってから次の母音を入力すると、この子音とこの次の母音で構成される仮名が拗音化し、子音鍵盤に置かれたnの鍵を押し下げた直後に、やや長いポーズをとって、もう一度同じ鍵を押し下げると、「ん」の字が入力されるように設定するのである。
【0048】
これら、いずれの場合にも形式上の子音鍵盤と母音鍵盤との間の自動交代は維持されるものとする。
【0049】
前二者の場合は、たとえば、やったと入力する場合、一般的な打鍵は、yattaであり、母音で終わる仮名のや(ya)と子音で始まる仮名のた(ta)の間に、促音を指示するtが入り、しょせき、と入力する場合のsyoは、子音鍵のsと母音鍵のoの間にyが入って、拗音化が行われるので、ポーズが、このtやyに相当するものとしてイメージすれば、大きな抵抗はなくて、促音と拗音の入力が行われるものと推測される。
【0050】
これに対して、やや複雑なのが、鼻音の「n」の入力である。
【0051】
本発明においては、母音鍵盤の第一行に、左から順に、ann、inn、unn、enn、onn、の鍵を置き、第二行に、a、i、u、e、o、の鍵を置き、第三行にai、ui、uu、ei、ouの鍵を置き、子音鍵盤の第一行に、左から順に、子音符、k、s、t、n、の鍵を置き、第二行に、h、m、y、r、w、の鍵を置き、第三行に、g、z、d、b、p、の鍵を置くように設定しているので、子音鍵盤のnの置かれた位置には、母音鍵盤では、onnの鍵が置かれることになる。
【0052】
そこで、より具体的に言えば、子音鍵盤のn鍵を押し下げた後に、もう一度同じ鍵を押し下げると、nonnすなわち、「のん」と入力され、ポーズをとって同じ鍵を押し下げると、nyonnすなわち「にょん」と入力され、長いポーズをとって同じ鍵を押し下げると、n鍵を二度連続押し下げた感覚で、「ん」と入力されることになる。
【0053】
すなわち、「ん」の入力は、感覚的には、n鍵を二度連続押し下げた感覚となるが、この二度の入力は、形式的には、子音鍵の入力ののちに母音鍵の入力がなされたとして処理されるのである。
【0054】
こうして、「ん」の入力には、やや紛らわしい事態が伴うが、そもそも本来の日本語に「にょん」の音が現れることは珍しいと思われる上、日本語で字母「ん」が単独で現れることは劇画などの特殊な表現を除いて、原則的には無い。
【0055】
もともと、「ん」は漢字音を表記するために作られた文字であり、漢字音においては「ん」は常に、ann、inn、unn、enn、onn、の形で現れるのである。
【0056】
たとえば、岩波書店の日本古典文学大系に収められた古事記では、その序文約4ページのなかに、混元、乾坤、から始まって、「ん」を含む漢字が約60個含まれているが、その本文約290ページのなかで、その仮名のなかには「ん」は1例も現れず、唯一の例は、応神天皇紀の百済の和邇吉師(王仁)が、論語、千字文を献上したという部分に出てくる漢字の論と文なのである。
【0057】
そこで、実用的な観点から言えば、本発明における「ん」の入力には、ほとんど問題が無いと言えよう。
【0058】
本発明の目的は、この日本語音韻体系の特性を最大限に反映することで、携帯電話で現行の五十音方式が占めているのと同じ位置に立つ、携帯入力電子機器の入力方式を確立することである。
【0059】
今、日本国憲法の序文を対象として、これらの3類の広義の母音の出現率を示すと、以下のようになる。
【0060】
単母音66例(26.83%)、母音プラス「ん」、59例(23.98%)、二重母音73例(29.67%)、現代仮名遣いでクキチツに終わる二音節漢語が48例(19.51%)、総計246例。
【0061】
この場合、すでに述べたように森田方式では、母音プラス「ん」を、子音シフト鍵との同時打鍵で呼び出し入力するものとしているが、本発明の場合には、先に述べたような理由で、これらの音を直接に入力できる基本鍵盤に置くことにする。
【0062】
一方、本発明の基本的鍵盤の構成では、とりわけ外来語の表記に必要な小型の母音字、あいうえおが呼び出せないので、このような字体のあいうえおの仮名が入力できる鍵をシフト鍵によって、呼び出すことにする。
【0063】
さらに、本発明の場合には、基本的な字母入力鍵盤に記号入力を設定していないので、このシフト鍵を使って呼び出す二次的な鍵盤に記号入力鍵を設定する必要がある。
【0064】
図2」に示すのは、この記号入力鍵盤であるが、そこに小型の母音字、あいうえおが呼び出せるように、a、i、u、e、o、が置かれ、さらに、外来語の記述の場合に必要なヴの字母の入力を託すためにVを設定しているが、この記号鍵盤に長音記号を設定するのもまた、外来語の表記のためである。
【0065】
このシフト鍵は、さらに連続して押し下げると、その押し下げ回数に対応して、新しい記号入力鍵盤が呼び出されるが、このシフト鍵の1回から複数回の押下げによって呼び出される字母や記号は、それらを入力すると鍵盤は直ちに基本鍵盤に戻るように設定される。
【0066】
また、この記号鍵盤の内容を画面表示し、画面の鍵の位置に対応する鍵を入力することによって、記号の入力を確実なものにする。
【0067】
日本国憲法序文を例に、以上のような設定を持つ本発明の打鍵数の省略効果を改めて示すと、母音プラス「ん」、59×2=118、二重母音73×1=73、合計191の打鍵数の節約となり、これは191÷246=0.7764の式によって、ほぼ10漢字入力するたびに、8回弱打鍵数が減ることになる。
【0068】
こうした数値以上に重要なのは、この入力方式においては、すべての広義の母音が、基本的なあいうえお、の5個の母音と明確な対応関係を持つことであり、このような日本語の音韻体系の特質を反映した入力方式は、著しくそのヒューマンインターフェイスを改善するものと予想できる。
【0069】
また、実際の入力過程に於いては、1、あいうえお、の5種の単母音を含む漢字はそれぞれ2打鍵。2、あん、いん、うん、えん、おん、の5種の広義の母音を含む漢字も2打鍵。3、あい、うい、うう、えい、おう、の5種の広義の母音を含む漢字もそれぞれ2打鍵であり、いずれも仮名入力と同じである。
【0070】
すなわち、旧仮名遣いでフクツチキ、現行仮名遣いでキクチツで終わる本来の漢語の入声の漢字の場合でも、それらは実際には、子音+母音が二回繰り返されるので、入力のリズムとしては、すべて単音漢字やひらかなと同様の2打鍵で入力できるので、このことは漢字ひいては日本語の入力のリズムを著しく改善するものと思われる。
【0071】
さらに、本発明では、拗音、促音、鼻音(撥音)が打鍵によらないで入力されるので、パーソナルコンピューターの入力の場合とは異なって、入力時に完全に子音鍵と母音鍵の交替がなされるので、入力の動作と鍵盤の自動交替が一致しており、誤入力が少なくなると思われるが、実際に誤入力が起こったときのために、ソフトが不順な入力がなされたと判断した場合には自動的に、入力者がそのように判断した場合には手動によって最後の正規の入力の時点まで戻って不順な入力を取り消すための鍵を設定して置く。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】「図1」は、本発明が提唱する3行5列の基本的字母入力鍵盤における子音字母と広義の母音字母の配置を示す示意図である。
図2】「図2」は、シフト鍵を何回か押し下げることによって呼び出される記号鍵盤のうち、その最初の一回の押し下げによって呼び出される記号と字母の配置を示す示意図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
携帯電話や小型パーソナルコンピューター等、3行5列の鍵盤を持つ電子機器。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、全面的に日本語の音韻体系に照応する入力方式であり、いわゆる鍵盤アレルギーを解消し、自然なスタンスに立って、思考しながら、感じながらの入力を可能にするので、携帯電話やこの発明によって誕生する3行5列の鍵盤を持つ小型パーソナルコンピューターの市場の創始や拡大に貢献するはずである。
【要約】
【課題】現在携帯入力電子機器の日本語入力においては、現行の携帯電話の入力方式が圧倒的に有力であるが、この方式は電子辞書など他の携帯入力電子機器の入力方式としては採用されていない。
【解決手段】パーソナルコンピューターにおける森田方式の長所を十分に踏まえながら、3行5列の入力鍵盤を子音鍵盤と母音鍵盤にわけ、入力とともに鍵盤が自動的に交代する方式を採用し、打鍵時のポーズを入力の要素に組み入れることによって鼻音(撥音)、促音、拗音の入力を行い、母音鍵盤に単母音とともに、二重母音、「ん」つき母音を置き、これらの音を含む漢字の入力を、仮名と同様に2打鍵でしかも五段の母音、あいうえおの枠にしたがって入力することを可能にする。
【選択図】図1
図1
図2