(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
給油ポンプ(3)の第1のプーリー(22)と給油モータ(4)の第2のプーリー(23)とテンションプーリー(25)とにVベルト(24)を掛けたポンプ装置において、第1のプーリー(22)の回転を検出するために、第1のプーリー(22)には第1の被検出器(27)が設けられ、そして給油ポンプ(3)には第1の検出器(13)が設けられ、第2のプーリー(23)の回転を検出するために、第2のプーリー(23)には第2の被検出器(28)が設けられ、そして給油モータ(4)には第2の検出器(14)が設けられ、前記第1および第2の検出器(13、14)から検出信号を受けて給油モータ(4)の駆動中に給油ポンプ(3)の駆動状態を監視する制御装置(15)を設け、該制御装置(15)は、第1の検出器(13)が第1の被検出器(27)を検出し、検出信号が伝達され、当該検出信号に基づいて第1のプーリー(22)および給油ポンプ(3)の回転数を演算し(ST12)、前記給油ポンプ(3)の回転数が0であるか否かを判断し(ST13)、前記給油ポンプ(3)の回転数が0である場合、報知器(17)を作動して給油ポンプ(3)が停止していることを報知し(ST14)、給油ポンプ(3)が回転していれば、第2の検出器(14)の検出信号を受けて給油モータ(4)の回転数を演算し(ST15)、演算された給油モータ(4)の回転数と第1および第2のプーリー(22、23)の径比による減速比から給油ポンプ(3)および第1のプーリー(22)
の理論回転数を演算し(ST16)、給油ポンプ(3)および第1のプーリー(22)の実際の回転数と給油ポンプ(3)および第1のプーリー(22)の理論回転数との比率である第1および第2のプーリー(22、23)及びVベルト(24)による伝達率を演算し(ST17)、該伝達率がしきい値より小さいか否かを判断し(ST18)、前記伝達率がしきい値より小さい値であれば報知器(17)を作動する(ST19)機能を有することを特徴とするポンプ装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1において、本発明のポンプ装置1を組み込んだ給油装置は符号2で示されている。
ポンプ装置1は、給油ポンプ3と、給油ポンプ3を駆動する給油モータ4を有している。
給油ポンプ3は、ハウジング5内に配設された給油管6に介装されている。給油ポンプ3吸引側の給油管6は、地下に設けられた貯油タンク7に接続されている。一方、給油ポンプ3吐出側の給油管6は、流量計8及び給油ホース9を介して、給油ノズル10に接続されている。
ここで、流量計8は、当該給油管6を流れる作動流体(油:ガソリン、オイル等)の流量を計測して、計測結果を流量信号として発信する。
【0017】
ポンプ装置1はハウジング5を備えており、ハウジング5には、給油ノズル10を係止するノズル掛け11が設けられている。
ノズル掛け11にはノズルスイッチ12が設けられている。ノズルスイッチ12は、給油ノズル10をノズル掛け11に係止したことを検知して、給油ノズル10がノズル掛け11に係止された旨の検出信号を発信する機能を有している。それと共に、ノズルスイッチ12は、給油ノズル10をノズル掛け11から外したことを検知して、給油ノズル10をノズル掛け11から外した旨の検出信号を発信する機能を有している。
【0018】
流量計8の流量信号、ノズルスイッチ12からの検出信号、検出器13、14(後述)の検出信号は、制御装置15に入力される。
制御装置15からは、給油モータ4へ駆動信号が出力され、表示器16へ給油量表示信号が出力され、報知器17へ作動信号が出力される。
【0019】
以下、ポンプ装置1について詳細に説明する。
図2、
図3において、ポンプ装置1はブラケット21を備え、ブラケット21には給油ポンプ3が取り付けられている。そして、給油ポンプ3の上方には、給油モータ4が取り付けられている。
給油ポンプ3はプーリー22を有し、給油モータ4はプーリー23を有し、プーリー22とプーリー23にはベルト24(例えば、Vベルト)が掛けられている。このベルト24に適度の張りを持たせるため、ベルト24はテンションプーリー25にも掛けられている。
ベルト24を掛けた状態では、プーリー22、プーリー23のV字状の溝はベルト24により隠れるが、
図3では、ベルト24と共に、プーリー22、プーリー23のV字状の溝も表示している。
【0020】
図2で示すように、テンションプーリー25には移動用の調整ネジ26が設けられ、この調整ネジ26を回転することによって、テンションプーリー25を
図2の左右方向に移動し、以って、ベルト24の適度な張りを保つようになっている。
明確には図示されてはいないが、給油モータ4の電流値を監視するサーマルリレーが設けられている。図示しないサーマルリレーは、給油中にもかかわらず給油ポンプ3が停止(いわゆる「ロック」)してしまった場合には、給油モータ4に供給される電力を遮断する機能を有している。
図示しないサーマルリレーについては、公知、市販のものを適用可能である。
【0021】
図4で示すように、給油ポンプ3のプーリー22には、第1の被検出器として磁石27が設けられている。また、給油モータ4のプーリー23には、第2の被検出器として磁石28が設けられている。
一方、給油ポンプ3には、第1の検出器として磁気センサ13が設けられており、給油モータ4には、第2の検出器として磁気センサ14が設けられている。磁気センサ13はプーリー22の磁石27が近接した旨を検知する機能を有しており、磁気センサ14はプーリー23の磁石28が近接した旨を検知する機能を有している。
プーリー22、23の回転を検出する機構としては、磁石27、28と磁気センサ13、14とによる構造に限定される訳ではない。例えば、反射部材と光学センサにより、プーリー22、23の回転を検出するが可能である。また、ロータリーエンコーダを用いても良い。すなわち、プーリー22、23の回転を検出する機構については、従来、公知の技術を適用することが出来る。
【0022】
制御装置
15(
図1参照)は、
図5で示すように、給油制御手段15aを有している。
給油制御手段15aは、ノズルスイッチ12から、給油ノズル10をノズル掛け11から外した旨の信号(ノズル外し信号)を受信して、給油モータ4へ駆動信号を出力する。
そして、流量計8が発信した油(ガソリン、オイル等)の流量信号から給油量を演算して、演算された給油量の信号を表示器16へ発信して、表示器16に給油量を表示させる。
さらに給油制御手段15aは、ノズルスイッチ12から、給油ノズル10をノズル掛け11に係止した旨の信号(ノズル掛け信号)を受信して、給油モータ4へ駆動停止信号を発生する。或いは、給油モータ4への駆動信号の発信を停止する。
【0023】
制御装置15のポンプ監視手段15bは、検出器13、14から検出信号を受けて、給油モータ4の駆動中に給油ポンプ3の駆動状態を監視する。
そしてポンプ監視手段15bは、給油ポンプ3の駆動状態が異常な場合に、報知器17を作動する機能を有している。「給油ポンプ3の駆動状態が異常な場合」については、後述する。
【0024】
次に
図6に基づいて、制御装置15の給油制御手段15aによる制御、すなわち、給油作業に関する制御について説明する。
図6において、ステップST1では、給油ノズル10をノズル掛け11から外したか否かを判断する。給油ノズル10をノズル掛け11から外すと(ステップST1が「Y」)、ノズルスイッチ12からノズル外し信号が制御装置15へ出力される。そして給油制御手段15aは、表示器16に表示されていた前回の給油量の表示を帰零し、給油モータ4へ駆動信号を出力する(ステップST2)。そして、給油ノズル10から給油が開始される。
【0025】
ステップST3では、流量計8から流量信号が入力されたか否かを判断する。流量計8から流量信号が入力されると(ステップST3が「Y」)、流量計8の流量信号から給油量が演算され、当該演算された給油量が表示器16で表示される(ステップST4)。そして、ステップST5へ進む。
ステップST3において、流量計8から流量信号が入力されていなければ(ステップST3が「N」)、ステップST4をパスしてステップST5へ進む。
【0026】
ステップST5では、給油が終了し、給油ノズル10をノズル掛け11に掛けて、ノズルスイッチ12からノズル掛け信号が制御装置15へ入力されたか否かを判断する。
ノズルスイッチ12からノズル掛け信号が制御装置15へ入力された場合には(ステップST5が「Y」)、給油が完了したと判断して、給油モータ4への駆動信号を停止して、或いは、給油モータ4へ停止信号を出力して、給油ポンプ3を停止する(ステップST6)。
ノズルスイッチ12からノズル掛け信号が制御装置15へ入力されていない場合には(ステップST5が「N」)、ステップST3に戻って、ステップST3〜ST5を繰り返す(ステップST5が「N」のループ)。
【0027】
次に、主として
図7に基づいて、制御装置15のポンプ監視手段15bにより、給油ポンプ3の駆動状態が異常であるか否かを監視する制御について説明する。
図7の制御は、
図6で説明した給油に関する制御に並行して実行される。
図7において、ステップST11では、給油モータ4が駆動しているか否かを判断する。換言すれば、ポンプ監視手段15bによって給油ポンプ3の駆動状態が異常であるか否かを監視する制御を実行する段階(給油モータ4が駆動している状態)であるか否かが、ステップST11で判断される。
給油モータ4が駆動しているか否かは、例えば、図示しない電流計により給油モータ4へ駆動電流が供給されているか否かを検出することで、判断することが出来る。或いは、上述したサーマルリレーによって、給油モータ4に供給される電力を遮断されているか否かを検出することによっても判断することが出来る。
その他、従来、公知の手法により、給油モータ4が駆動しているか否かを判断することが可能である。
【0028】
給油モータ4が駆動されていれば(ステップST11が「Y」)、検出器13からの検出信号に基いて、ポンプ監視手段15bにより、給油ポンプ3の回転数を演算する(ST12)。
図1〜
図3を参照して説明した通り、給油ノズル10がノズル掛け11から外されて、ノズルスイッチ12からノズル外し信号が制御装置15へ入力している場合に、給油モータ4に対して駆動信号が伝達されて、給油モータ4は駆動する。
給油モータ4が駆動すると、その出力軸に取り付けられたプーリー23は回転し、プーリー23の回転はベルト24を介して給油ポンプ3のプーリー22へ伝達され、以って、給油ポンプ3が駆動される。
給油モータ4のプーリー23が回転していると、検出器14が断続的に被検出器28を検出し、その旨の検出信号が制御装置15へ伝達されることにより、制御装置15において、プーリー23及び給油モータ4の回転数を演算することが出来る。
【0029】
ステップST11において、給油モータ4が駆動されていなければ(ステップST11が「N」)、「給油ポンプ3の駆動状態が異常であるか否かを監視する制御を行なう段階ではない」と判断して、ステップST11が「N」のループを繰り返す。
【0030】
ステップST12で給油ポンプ3の回転数を演算したならば、ステップST13に進み、給油ポンプ3の回転数がゼロであるか否かを判断する。
給油ポンプ3の回転数がゼロである場合(ステップST13が「Y」)、給油モータ4が駆動しているにも拘らず給油ポンプ3が回転していないということなので、何らかの原因で給油ポンプ3がロックされてしまい、サーマルリレーにより供給電力が遮断されたと判断する。
そしてステップST14に進み、報知器17を作動して給油ポンプ3が停止していることを報知して、供給電力が遮断された状態の給油モータ4に対して必要な措置(例えば、停止用のボタン等の操作:
図7ではステップST14において「給油モータ停止」と標記)を実行する。
【0031】
ステップST14で報知器17を作動することにより、給油作業を行なっている作業者は、ポンプ装置駆動用の給油モータが過負荷状態となり、過熱していることを迅速に把握して、安全のために必要な措置を迅速に実行することが出来る。
そして、給油作業を行なっている作業者は、給油ポンプ3がロックされてしまい、サーマルリレーにより供給電力が遮断されたこと、すなわち故障が発生したという事実を把握することが出来るので、当該故障に対して必要な処置をして、給油作業を復旧すること、或いは、復旧に寄与することが出来る。
この際に、例えば、停止用ボタン等により給油モータ4を駆動しないための措置を実行するので、サーマルリレーによる供給電力遮断が解除された際に、給油モータ4及び給油ポンプ3が駆動してしまうことはない。
【0032】
ステップST13で給油ポンプ3が回転していれば(ステップST13が「N」)、
検出器14の
検出信号を受けて給油モータ4の回転数を演算する(ST15)。
給油ポンプ3のプーリー22が回転していると、検出器13が断続的に被検出器27を検出し、その旨の検出信号が制御装置15へ伝達される。当該検出信号に基いて、制御装置15において、プーリー22及び給油ポンプ3の回転数を演算することが出来る。
【0033】
給油モータ4の回転数を演算したならば、ステップST16に進み、プーリー22の理論回転数を演算する。
ここで、ステップST15で求めた給油モータ4の回転数をNm、プーリー22、23の径比による減速比をS(例えば、1.5)とすれば、給油ポンプ3のプーリー22の理論回転数Npcは Npc=Nm/S なる数式で求まる。
【0034】
次に、ステップST17において、プーリー22、23及びベルト24による伝達率を演算する。
ステップST12で求めた給油ポンプ3或いはプーリー22の実際の回転数をNpとすれば、ステップS16で求めたプーリー22の理論回転数Npcとプーリー22の実際の回転数Npより、プーリー22、23及びベルト24による伝達率εは、 ε=Np/Npc=Np・S/Nm なる数式で求まる。
なお、
図7では、ステップST17において、プーリー22、23及びベルト24による伝達率εを、「ベルト伝達率」と標記している。
【0035】
伝達率εが演算されたならば、ステップST18において、プーリー22、23及びベルト24による伝達率εをしきい値(
図7のステップST18では「一定値」と標記している)と比較する。
この「しきい値」については、ベルト24の仕様、給油装置の設計条件、使用状況、その他の条件に基いて、ケース・バイ・ケースで決定される。図示の実施形態では、例えば、0.85に設定されている。
【0036】
伝達率εがしきい値よりも小さい値であれば(ステップST18が「Y」)、何らかの原因でベルト24が緩み、ベルト24がスリップしており、給油ノズル10からの吐出量が低減して給油時間が長時間化してしまう状態にあると判断して、報知器17を作動し、給油モータ4を停止する(ステップST19)。
報知器17を作動すれば、給油作業を行なっている作業者は、ポンプ装置1に何等かの不具合が発生していることを把握すること出来る。そのため、当該給油作業の終了後、ポンプ装置1が完全に故障する以前の段階で、例えば、ベルト24を交換する等の処置を講じることが出来る。その結果、給油作業の安全性が保証される。
また、給油モータ4を停止することにより、重大な故障が発生する以前の段階で給油を停止して、重大な異常事態の発生を未然に防止することが出来る。
【0037】
ステップST18において、伝達率εがしきい値以上の値であれば(ステップST18が「N」)、ベルト24は緩んでおらず、プーリー22、23に対してベルト24はスリップしておらず、給油ノズル10からの吐出量も低減していないと判断する。
そして、ステップST11に戻り(リターン)、ステップST11以下の制御を繰り返す。
【0038】
ステップST15〜ST19の制御について、具体的な数値を例示して説明する。
例えば、ステップST15で検出器14の検知信号から演算される給油モータ4の回転数Nmが1500rpmであり、プーリー22、23の径比に基づく減速比Sが1.5であれば、ステップST16において、給油ポンプ3のプーリー22の理論回転数Npcは、1500÷1.5=1000rpmである。
ステップST12で検出器13の検出信号から演算される給油ポンプ3のプーリー22の実際の回転数Npを950rpmとすれば、プーリー22、23及びベルト24による伝達率εは 950÷1000=0.95 となる。
【0039】
伝達率εの「しきい値」を、例えば0.85とすれば、上述した例(伝達率ε=0.95)は「しきい値」以上であるので、ベルト24は緩んでおらず、ベルト24はスリップしておらず、給油ノズル10からの吐出量も低減してはいないと判断され、報知器17は作動しない。
一方、伝達率εが0.85よりも小さい場合には、何らかの原因でベルト24が緩み、ベルト24がスリップして摩擦熱が発生している可能性が高く、給油ノズル10からの吐出量が低減し、給油時間が長時間化していると判断し、報知器17を作動して、給油モータを停止する。
【0040】
上述した図示の実施形態によれば、給液作業中に、第1段階として、給油ポンプ3が駆動しているか、或いは、停止しているかを判断する(ステップST11〜ST14)。
給油ポンプ3が駆動している場合(ステップST13が「N」)には、第2段階として、ベルト24が緩んでいるか否かを判断する(ステップST15〜ST19)。
例えば貯油タンク7内が錆等のゴミにより汚れ、このゴミが油と共に給油ポンプ3へ送られて給油ポンプ3がロックされると、その旨が第1段階の制御で検出される。
【0041】
給油ポンプ3がロックされていなくとも、ベルト24が緩むと、駆動力の伝達効率εが低下すると共に、プーリー22、23に対してベルト24がスリップして、摩擦熱が発生して加熱する場合が存在する。
それに対して、図示の実施形態では、ベルト24が緩んでいるか否かが第2段階でチェックされ、ベルト24が緩んで伝達効率εが低下すると、その旨が報知器17により報知される。
そのため、ベルト24が緩み、駆動力の伝達効率εが低下した状態で給油モータ4及び給油ポンプ3を駆動して、プーリー22、23に対してベルト24がスリップして、摩擦熱が発生して加熱してしまうことが防止される。また、駆動力の伝達効率εが低下した状態で給油を行なうことにより、給油ノズル10からの吐出量が低減して、給油時間が長時間化してしまうことも防止される。
この様に、図示の実施形態によれば、給油ポンプ3の異常を二段構えでチェックしているので、給油ポンプ3の異常を早期に発見することができて、給油作業の安全性及び作業効率の向上に役立つ。
【0042】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない旨を付記する。