特許第5709096号(P5709096)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5709096
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/12 20060101AFI20150409BHJP
【FI】
   F16L37/12
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2009-263267(P2009-263267)
(22)【出願日】2009年11月18日
(65)【公開番号】特開2011-106596(P2011-106596A)
(43)【公開日】2011年6月2日
【審査請求日】2012年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(72)【発明者】
【氏名】古屋 正芳
(72)【発明者】
【氏名】高梨 暁人
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−267073(JP,A)
【文献】 特表2004−514851(JP,A)
【文献】 特表2005−525517(JP,A)
【文献】 特開2000−146046(JP,A)
【文献】 特開2006−150366(JP,A)
【文献】 実開平3−96490(JP,U)
【文献】 特開2008−101786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブの挿入されるボディと、該ボディの内部に設けられ、前記チューブの外周面に係合することにより該チューブを前記ボディに保持するチャックと、前記チャックを軸線方向に沿って案内するガイド部材と、前記ボディの内部に設けられ、該ボディと前記チューブとの間の気密を保持するパッキンと、前記チューブを取り外す際に前記チャックを該チューブから離脱させるリリース部材とを備える管継手において、
前記パッキンは、環状に形成される本体部と、
前記本体部に対して半径内方向に突出し、前記チューブの外周面に当接するシール部と、
を備え、
前記ボディの軸線方向に沿った前記シール部の幅寸法が、前記本体部の幅寸法に対して小さく設定されると共に、前記チャックは、一端部に形成され前記チューブに刺入される爪部と、他端部側に形成され半径外方向に向かって折曲された係止部とを有し、前記係止部が前記ガイド部材に係合され、前記爪部が前記シール部に対して非接触に配置され
前記ガイド部材には、前記パッキン側となる一端部に形成され、半径内方向に縮径し、且つ、先端が他端部側に向かって折り返されたフロントエンド部と、他端部側に形成され半径内方向に向かって断面円形状に折曲されたリアエンド部とが形成されることを特徴とする管継手。
【請求項2】
請求項1記載の管継手において、
前記シール部は、前記本体部から内周側に向かって先細状となる断面形状で形成されることを特徴とする管継手。
【請求項3】
請求項1又は2記載の管継手において、
前記シール部は、断面三角形状に形成されることを特徴とする管継手。
【請求項4】
請求項3記載の管継手において、
前記シール部は、断面形状を構成する一方の傾斜面と他方の傾斜面とが交差する交点を基準とした80°〜100°の範囲内となる傾斜角度で形成されることを特徴とする管継手。
【請求項5】
請求項3記載の管継手において、
前記シール部は、断面形状を構成する一方の傾斜面と他方の傾斜面とが交差する交点を基準とした90°の傾斜角度で形成されることを特徴とする管継手。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の管継手において、
前記パッキンは、前記チューブの外周面に刺入されるチャックの爪部に隣接して配置されることを特徴とする管継手。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の管継手において、
前記フロントエンド部は、その端部が半径外方向に向かって折曲され、前記ボディの内周面に形成された溝部に挿入されることを特徴とする管継手。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の管継手において、
前記リアエンド部の内周側には、前記リリース部材の外周面が摺接することで、前記リリース部材の軸線方向に沿った変位を案内可能であることを特徴とする管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、流体を導入・導出するチューブを接続するための管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シリンダ等の流体圧機器に流体チューブを接続するために管継手が使用されている。この管継手は、筒状の継手本体部を備え、その内部には、リング状のシール部材が装着されると共に、前記シール部材に隣接し、前記継手本体部の内部に挿入された流路管を係止するための係止爪が設けられている。そして、継手本体部の一端部側から流路管を挿入した際、その外周面に断面略矩形状のシール部材が当接して該流路管の外周側を通じた流体の漏れを防止すると共に、前記係止爪が前記流路管の外周面に食い込んで抜け止めされる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−140697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の管継手では、継手本体部の他端部側から流体を供給して他端部側に接続された流路管へと流通させる際、前記シール部材が前記流体によって係止爪側へと押圧され、該係止爪を押圧することによって流路管への食い込み深さが深くなる。そのため、流体の供給を停止させ、継手本体部から流路管を取り外す際、係止爪の過度な食い込みによって前記流路管を離脱させることが困難な場合がある。
【0005】
また、継手本体部に対して流路管を装着する際、シール部材が該流路管によって押圧されて変形及び移動することがあるが、この場合に、前記流路管との接触部分が移動するスペースがないため、該接触部分の変形が阻害され、その結果、流路管が挿入される際の抵抗となってしまう。
【0006】
さらに、継手本体部に対して流路管が装着された状態において、前記継手本体部内を流れる流体によってシール部材が押圧され移動してしまうことにより、流路管の外周面に対する前記シール部材の接触面積が減少し、そのシール性が低下してしまうことが懸念される。
【0007】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、チューブをボディに対して装着又は離脱させる際の作業性を向上させると共に、シール性の向上を図ることが可能な管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、チューブの挿入されるボディと、該ボディの内部に設けられ、前記チューブの外周面に係合することにより該チューブを前記ボディに保持するチャックと、前記チャックを軸線方向に沿って案内するガイド部材と、前記ボディの内部に設けられ、該ボディと前記チューブとの間の気密を保持するパッキンと、前記チューブを取り外す際に前記チャックを該チューブから離脱させるリリース部材とを備える管継手において、
前記パッキンは、環状に形成される本体部と、
前記本体部に対して半径内方向に突出し、前記チューブの外周面に当接するシール部と、
を備え、
前記ボディの軸線方向に沿った前記シール部の幅寸法が、前記本体部の幅寸法に対して小さく設定されると共に、前記チャックは、一端部に形成され前記チューブに刺入される爪部と、他端部側に形成され半径外方向に向かって折曲された係止部とを有し、前記係止部が前記ガイド部材に係合され、前記爪部が前記シール部に対して非接触に配置され
前記ガイド部材には、前記パッキン側となる一端部に形成され、半径内方向に縮径し、且つ、先端が他端部側に向かって折り返されたフロントエンド部と、他端部側に形成され半径内方向に向かって断面円形状に折曲されたリアエンド部とが形成されることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、管継手を構成するボディの内部に、環状に形成された本体部と、該本体部に対して半径内方向に突出して前記チューブの外周面に当接するシール部とを備えたパッキンが設けられ、前記シール部の幅寸法が、前記ボディの軸線方向に沿った前記本体部の幅寸法に対して小さく設定されている。
【0010】
従って、シール部が、本体部に対して幅狭状に形成されているため、従来の管継手に適用され本体部とシール部とが同一の幅寸法で形成されたパッキンと比較し、前記チューブの外周面に対するシール部の接触面積が小さくなる。その結果、ボディに対してチューブを装着する際、シール部との接触抵抗が軽減され、前記チューブを前記ボディに対して円滑に装着することができる。また、従来のパッキンと比較し、パッキンの剛性が低くなるため、ボディに対してチューブを装着する際に、シール部を好適に変形させ、しかも、変形した前記シール部を該シール部の側方の空間部分へと導くことができる。その結果、ボディに対してチューブを装着する際、該チューブによって押圧されたシール部を好適にチューブから離間する方向へと移動させることができるため、前記シール部が前記チューブの移動を妨げることがなく、前記チューブを容易に装着することができる。
【0011】
さらに、従来のパッキンと比較し、チューブの外周面とシール部との接触面積が小さいため、前記シール部から前記チューブに対して付与される押圧力が増加することとなり、その結果として、前記チューブに対するシール性を高めることができる。
【0012】
さらにまた、ボディからチューブを離脱させるために、リリース部材によってチャックを前記チューブから離間させる方向へと押圧し、該チャックによる前記チューブの係止状態を解除する際、前記チューブから離間した前記チャックを、パッキンを構成する本体部とシール部との間に設けられた空間部分へと移動させることができるため、前記チャックとパッキンとの接触を回避することができる。その結果、チューブをボディから離脱させる際に、チャックとパッキンとが接触して該チャックによるチューブの係止状態を解除できないという不具合が回避され、常に前記チューブをボディから確実に取り外すことが可能となり、しかも、その際の操作力が軽減されるため簡便に取り外すことができる。
【0013】
またさらに、シール部は、本体部から内周側に向かって先細状となる断面形状で形成することにより、前記シール部とチューブとの接触面積を好適に小さくすることができるため、前記チューブを挿入又は離脱させる際の接触抵抗を軽減することができ、しかも、前記シール部から前記チューブへと付与される押圧力をさらに増加させることができるため、シール性のさらなる向上を図ることができる。
【0014】
また、シール部を、断面三角形状で形成するとよい。
【0015】
さらに、シール部を、断面形状を構成する一方の傾斜面と他方の傾斜面とが交差する交点を基準とした80°〜100°の範囲内となる傾斜角度で形成することにより、チューブをボディに対して挿入又は離脱させる際の操作力と、パッキンによるシール性とを好適にバランスさせることができる。
【0016】
また、シール部を、断面形状を構成する一方の傾斜面と他方の傾斜面とが交差する交点を基準とした90°の傾斜角度で形成することにより、チューブをボディに対して挿入又は離脱させる際の操作力と、パッキンによるシール性とを最適なバランスとすることができる。
【0017】
さらに、パッキンを、チューブの外周面に刺入されるチャックの爪部に隣接して配置することにより、リリース部材によってチャックの爪部による前記チューブの係止状態が解除された場合に、前記爪部が、本体部とシール部との間の空間部分に好適に収容することができる。その結果、爪部をチューブの外周面に対して確実に離間させることができ、前記爪部がチューブを離脱させる際の妨げとなることがなく、前記チューブを確実且つ容易にボディから取り外すことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0019】
すなわち、管継手を構成するボディの内部に、環状に形成された本体部と、該本体部に対して半径内方向に突出して前記チューブの外周面に当接するシール部とを備えたパッキンを設け、前記シール部の幅寸法を前記ボディの軸線方向に沿った前記本体部の幅寸法に対して小さく設定することにより、前記チューブの外周面に対するシール部の接触面積が小さくなり、その結果、ボディに対してチューブを装着する際にシール部との接触抵抗が軽減されるため、前記チューブを前記ボディに対して円滑に装着することができる。また、従来の管継手に用いられるパッキンと比較し、チューブの外周面とシール部との接触面積が小さいため、前記シール部から前記チューブに対して付与される押圧力が増加し、それに伴って、前記チューブに対するシール性を高めることができる。
【0020】
さらに、ボディからチューブを離脱させるために、リリース部材によってチャックを前記チューブから離間させる方向へと押圧し、該チャックによる前記チューブの係止状態を解除する際、前記チューブから離間した前記チャックを、パッキンを構成する本体部とシール部との間に設けられた空間部分へと移動させることができるため、前記チャックとパッキンとの接触を回避することができる。その結果、チューブをボディから離脱させる際に、チャックによる前記チューブの係止状態を確実に解除し、前記チューブを前記ボディから確実且つ容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る管継手の全体縦断面図である。
図2図1に示す管継手の分解斜視図である。
図3図1の管継手におけるパッキン近傍を示す拡大断面図である。
図4図1の管継手に対して流体用チューブが挿入され係止された状態を示す拡大断面図である。
図5】ボディの他端部側から流体用チューブを挿入する際のパッキン近傍を示す拡大断面図である。
図6】リリースブッシュによって流体用チューブの係止状態を解除する際のパッキン近傍を示す拡大断面図である。
図7】本発明の第2の実施の形態に係る管継手の全体縦断面図である。
図8図7に示す管継手の分解斜視図である。
図9図7の管継手に対して流体用チューブが挿入されて係止された状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る管継手について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0023】
図1において、参照符号10は、本発明の第1の実施の形態に係る管継手を示す。
【0024】
この管継手10は、図1図4に示されるように、樹脂製材料から略L字状に屈曲された筒状のボディ12を備え、前記ボディ12の内部には、該ボディ12に沿って流体の流通する流体通路14が形成されている。そして、流体通路14は、ボディ12の一端部12a及び他端部12b側において開口し、外部と連通している。
【0025】
このボディ12の一端部12aには、管継手10を他の装置Sに接続する際に用いられるアダプタ16が嵌合され、一方、前記ボディ12の他端部12bには、流体用チューブ(チューブ)18の挿入される開口部20と、該開口部20と流体通路14とを接続する接続通路22とが形成されている。なお、上述したボディ12は、樹脂製材料から形成される場合に限定されるものではなく、例えば、ステンレス等の金属製材料によって形成してもよい。
【0026】
この開口部20は、略同一直径で形成され、該開口部20に対して半径内方向に縮径した接続通路22に接続されて連通している。また、接続通路22は、該接続通路22に対してさらに縮径した流体通路14と連通している。この開口部20と接続通路22との境界部24aが段付状に形成され、前記接続通路22と流体通路14との境界部24bも同様に段付状に形成されている。そして、流体用チューブ18は、ボディ12の他端部12bから開口部20を経て接続通路22へと挿入され、該接続通路22と流体通路14との境界部24bに当接して係止される。
【0027】
なお、流体通路14は、ボディ12の一端部12aと他端部12bとの途中が、該ボディ12の形状に対応して略L字状に屈曲するように延在している。
【0028】
一方、開口部20には、環状のパッキン26と、ボディ12に挿入された流体用チューブ18を係止するチャック28と、前記開口部20の内周面に係合されるガイド30と、前記ガイド30に沿って変位自在なリリースブッシュ(リリース部材)32とが設けられる。
【0029】
なお、ボディ12における一端部12a側の外周面は、アダプタ16の装着される部位が、半径内方向に窪んで形成される。そして、アダプタ16が挿入された際、その内周面から半径内方向に突出した突起部16aが前記一端部12aの外周面に食い込むことによって該アダプタ16が固定される。また、アダプタ16の下面には、環状のシール部材33が装着され、他の装置Sの上面に当接することによって前記アダプタ16と他の装置Sとの間を通じて流体が外部に漏出することが阻止される。
【0030】
さらに、アダプタ16の内周面には、環状溝を介してOリング35が装着され、該Oリング35がボディ12における一端部12aの外周面に当接することにより、前記アダプタ16と前記ボディ12との間を通じて流体の漏出が確実に防止される。
【0031】
パッキン26は、図3に示されるように、例えば、ゴム等の弾性材料から断面略T字状に形成され、開口部20内において流体通路14との境界部24aに当接するように配置される。このパッキン26は、断面長方形状に形成される本体部34と、該本体部34の外周面に形成され、開口部20の内周面に当接する膨出部36と、前記本体部34の内周面から突出し、流体用チューブ18の外周面に摺接するシール部38とを含む。
【0032】
本体部34は、その一側面が境界部24aに当接し、他側面がボディ12の他端部12b側(矢印A方向)となるように配置されると共に、その内周面及び外周面が、開口部20の内周面と略平行となるように設けられる。
【0033】
膨出部36は、断面略半円状に形成され、本体部34の外周面に対して所定高さで半径外方向に突出すると共に、前記外周面に沿って環状に形成される。また、膨出部36は、本体部34の幅方向(矢印A、B方向)に沿った略中央部に形成される。そして、膨出部36が、開口部20の内周面に当接しているため、本体部34の外周面が前記内周面に対して所定間隔離間している。
【0034】
シール部38は、図3に示されるように、断面略三角形状に形成され、本体部34の内周面に対して所定高さで半径内方向に突出している。このシール部38は、その先端部が断面円形状に形成されると共に、環状に形成された本体部34の内周面に沿って環状に形成される。このシール部38は、本体部34の幅方向(矢印A、B方向)に沿った略中央部に形成される。すなわち、シール部38の幅寸法W1は、本体部34の幅寸法W2に対して小さく設定される(W1<W2)。換言すれば、パッキン26において、シール部38は本体部34に対して幅狭状に形成される。これにより、パッキン26の近傍には、本体部34の内周側とシール部38の両側部側とにそれぞれ臨む空間E(図4参照)が画成される。
【0035】
また、シール部38は、パッキン26において膨出部36と半径方向に略一直線上となるように配置される。
【0036】
このシール部38は、その2つの傾斜面38a、38bから内周側に向かってそれぞれ仮想線を延長し、互いに交差した交点Pを基点とした傾斜角度θが、例えば、80°〜100°の範囲内となるように形成される(80°≦θ≦100°)。さらに、この傾斜角度θを、90°に設定すると最適である(θ=90°)。
【0037】
なお、このパッキン26は、上述したように弾性材料から形成される場合に限定されるものではなく、例えば、樹脂製材料から形成するようにしてもよい。すなわち、パッキン26が、開口部20の内周面及び流体用チューブ18の外周面に当接した際に、ボディ12と前記流体用チューブ18との間を通じた流体の漏出を防止できる材質であればよい。
【0038】
チャック28は、例えば、薄板材をプレス加工することにより略円筒状に形成され、その一端部に形成され半径内方向に向かって傾斜した爪部40と、他端部に形成され半径外方向に向かって折曲された係止部42とを備える。また、チャック28の一端部側には、他端部側(矢印A方向)に向かって所定長さで切り欠かれた第1スリット44が形成され、該第1スリット44は、チャック28の周方向に沿って等間隔で複数(例えば、4本)設けられる。
【0039】
一方、チャック28の他端部側には、一端部側(矢印B方向)に向かって所定長さで切り欠かれた第2スリット46が形成され、該第2スリット46は、チャック28の周方向に沿って等間隔で複数(例えば、4本)設けられる。
【0040】
すなわち、第1スリット44と第2スリット46とが、チャック28の周方向に沿って互い違いとなるように交互に設けられている。
【0041】
そして、チャック28の一端部は、第1スリット44を介して半径内方向に縮径自在となり、一方、前記チャック28の他端部は、第2スリット46を介して半径内方向に縮径自在となる。これにより、チャック28を構成する爪部40及び係止部42が、弾性的に拡径および縮径自在に形成される。
【0042】
爪部40の先端は、刃状に形成され、流体用チューブ18の外周面に刺入可能に形成されている。
【0043】
ガイド30は、上述したチャック28と同様に、例えば、薄板材をプレス加工することにより略円筒状に形成され、開口部20の内周面に当接するように配置される。このガイド30の一端部は、開口部20内においてパッキン26側(矢印B方向)となるように配置され、半径内方向に若干だけ縮径し、且つ、先端で他端部側(矢印A方向)に向かって折り返されたフロントエンド部48が形成される。また、ガイド30の他端部は、開口部20の端部に配置され、半径内方向に向かって断面円形状に折曲されたリアエンド部50が形成される。
【0044】
フロントエンド部48は、その端部が半径外方向に向かって折曲され、ボディ12の内周面に形成された溝部52(図5参照)に挿入される。これにより、ガイド30は、ボディ12の開口部20に挿入された際、該開口部20の内周面に密着すると共に、フロントエンド部48の端部が溝部52に係合されることによって軸線方向(矢印A、B方向)に沿った変位が規制された状態で固定される。
【0045】
また、フロントエンド部48の内周側には、チャック28が設けられ、該チャック28の係止部42が、前記フロントエンド部48の端部に当接することによって前記チャック28のパッキン26側(矢印B方向)への変位が規制される。
【0046】
一方、リアエンド部50は、ボディ12の他端部12bと略同一位置となるように配置され、その内周側には、リリースブッシュ32の外周面が摺接する。すなわち、ガイド30を構成するリアエンド部50は、リリースブッシュ32の軸線方向に沿った変位を案内可能な案内手段として機能する。
【0047】
このように、ガイド30は、チャック28の軸線方向(矢印A、B方向)に沿った変位を規制すると共に、リリースブッシュ32を軸線方向に沿って案内している。
【0048】
リリースブッシュ32は、例えば、樹脂製材料から円筒状に形成され、その一端部側が、開口部20においてガイド30及びチャック28の内周側に挿入される。この一端部には、半径外方向に膨出し、先端側に向かって徐々に縮径するテーパ部54が形成され、該テーパ部54は、チャック28における爪部40に臨むように設けられる。
【0049】
また、リリースブッシュ32の他端部には、半径外方向に拡径したフランジ部56が形成され、前記フランジ部56の外周径が、開口部20より大きく形成される。
【0050】
さらに、リリースブッシュ32の内部には、軸線方向(矢印A、B方向)に沿って貫通し、流体用チューブ18の挿通される貫通孔58が形成される。この貫通孔58の内周径は、流体用チューブ18の外周径に対して若干だけ大きく形成され、略一定径に形成される。
【0051】
本発明の第1の実施の形態に係る管継手10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。なお、管継手10は、その一端部がアダプタ16を介して他の装置S(図1参照)に予め螺合されて固定されている状態とする。
【0052】
図1に示される管継手10に流体用チューブ18が装着されていない非装着状態において、図示しない流体圧機器等に接続された流体用チューブ18を開口部20からリリースブッシュ32の貫通孔58に沿って挿入し(図4参照)、前記流体用チューブ18の端面を前記ボディ12の境界部24bに当接させる。
【0053】
この際、図5に示されるように、流体用チューブ18の挿入力によってパッキン26がボディ12の一端部12a側(矢印B方向)に向かって押圧されるため、前記パッキン26は、膨出部36を支点として該流体用チューブ18に摺接したシール部38が境界部24a側(矢印B方向)に向かって接近するように強制的に押圧される。
【0054】
パッキン26は、従来の管継手に用いられるパッキンと比較し、本体部34の内周側とシール部38の側方との間が肉抜きされているため、該パッキン26の剛性が低く、しかも、前記シール部38と境界部24aとの間に設けられた空間Eに、変形した前記シール部38を好適に移動させることができる。
【0055】
その結果、流体用チューブ18をボディ12に対して挿入する際、該流体用チューブ18との接触によって変形したシール部38が移動可能なり、前記流体用チューブ18の挿入を妨げることがないため、前記流体用チューブ18を円滑に挿入することができる。
【0056】
また、流体用チューブ18がパッキン26の内部に挿通されることによって該パッキン26が半径外方向へと押圧され、膨出部36が開口部20の内周面に対して押圧され変形する。これにより、ボディ12とパッキン26との間の気密が確実に保持される。同時に、パッキン26は、断面三角形状に形成されたシール部38が流体用チューブ18の外周面に摺接し、且つ、前記流体用チューブ18からの押圧力によって前記シール部38が押し潰されるように変形しているため、前記パッキン26と流体用チューブ18との間における気密が確実に保持される。
【0057】
さらに、パッキン26のシール部38は、流体用チューブ18の外周面に対する接触面積が、従来の管継手に用いられているパッキンと比較して小さくなるため、前記流体用チューブ18をシール部38に摺接させながら挿入する際の抵抗が軽減されると共に、前記接触面積の低減に伴って、前記外周面に対する接触部位の押圧力が増加するため、そのシール性が高まることとなる。
【0058】
一方、チャック28は、その一端部が、流体用チューブ18によって半径外方向に押し広げられ、爪部40が前記流体用チューブ18の外周面に当接している。その後、流体用チューブ18を、ボディ12の他端部12bから離間させる方向(矢印A方向)に向かって若干だけ引張すると、前記外周面に当接した爪部40が、該流体用チューブ18の引張作用下に前記外周面に刺入される。これにより、流体用チューブ18は、その外周面に刺入されたチャック28の爪部40によって管継手10のボディ12に確実に係止された状態となる(図4参照)。
【0059】
そして、ボディ12の一端部12aに接続された他の装置Sを通じて該ボディ12に対して流体を供給することにより、流体通路14に沿ってボディ12の他端部12b側へと流体が流通し、接続通路22へと流通した流体が流体用チューブ18の内部を通じて前記ボディ12の外部へと流通する。この際、パッキン26が、膨出部36を介してボディ12の開口部20に当接し、シール部38を介して流体用チューブ18の外周面に当接しているため、前記ボディ12と流体用チューブ18との間を通じて流体が漏出することが確実に防止される。
【0060】
一方、上述した流体用チューブ18を管継手10から離脱させる場合には、リリースブッシュ32のフランジ部56をボディ12側(矢印B方向)に向かって押圧し、該リリースブッシュ32を変位させることにより、テーパ部54がチャック28の爪部40を押圧して該爪部40を流体用チューブ18の外周面から離脱させる方向に移動させる。すなわち、爪部40は、流体用チューブ18の外周面から離間するように半径外方向に押し上げられる。
【0061】
この際、爪部40に隣接したパッキン26は、本体部34に対してシール部38のみが内周面側に突出した形状であるため、前記爪部40が半径外方向に移動する際に前記パッキン26との接触が回避される(図6参照)。詳細には、パッキン26は、本体部34の内周側とシール部38の側方との間が肉抜きされているため、この空間E内に爪部40が移動可能に配置することにより、前記爪部40によるパッキン26への押圧が抑制され、該爪部40が離脱される際の抵抗を確実に軽減することが可能となる。
【0062】
換言すれば、パッキン26は、リリースブッシュ32によって押圧されたチャック28の爪部40が半径外方向に移動した際に、該爪部40との接触を回避可能な逃げ部を有している。
【0063】
これにより、チャック28の他端部が、リリースブッシュ32によって強制的に半径外方向へと押し出され、流体用チューブ18の外周面に刺入された爪部40が、該流体用チューブ18の外周面から離間してチャック28による前記流体用チューブ18の係止状態が解除される。
【0064】
そして、流体用チューブ18をボディ12の他端部12bから離間させる方向(矢印A方向)に引張することにより、該流体用チューブ18が管継手10から取り外される。すなわち、リリースブッシュ32によってチャック28の爪部40を押圧して流体用チューブ18から離脱させる際、該爪部40に隣接したパッキン26と前記爪部40とが接触することがないため、前記爪部40を確実且つ容易に前記流体用チューブ18から離脱させることができる。
【0065】
その結果、チャック28がパッキン26と接触して爪部40の離脱が不完全であった従来の管継手と比較し、前記流体用チューブ18をボディ12から取り外す際の操作力が軽減され、簡便に取り外すことができる。
【0066】
次に、第2の実施の形態に係る管継手100を図7図9に示す。なお、上述した第1の実施の形態に係る管継手10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0067】
この第2の実施の形態に係る管継手100では、図7図9に示されるように、ボディ102が、例えば、金属製材料から形成されると共に、軸線方向に沿って一直線状に形成されている点で、第1の実施の形態に係る管継手10と相違している。
【0068】
この管継手100は、ボディ102における一端部102aの外周面に、図示しない配管等の接続されるねじ部104が設けられると共に、他端部には、薄肉状に形成された加締部106が形成され、前記ボディ102の開口部20にガイド108が挿入された後、前記加締部106を図示しない加締治具等で半径内方向に変形させることによって該ガイド108が一体的に加締められる。
【0069】
また、ボディ102の軸線方向(矢印A、B方向)に沿った略中央部には、断面六角形状に形成され、例えば、図示しない工具を用いて管継手100を配管等に接続する際に用いられる締付ナット部110が形成される。
【0070】
ガイド108は、例えば、金属製材料から円筒状に形成され、ボディ102側(矢印B方向)となる一端部が、傾斜部を介して半径外方向に拡径し、前記ボディ102の他端部102bに加締められることによって固定される。一方、ガイド108の他端部は、ボディ102の開口部20から外部に突出するように設けられると共に、内周側に回り込むように折曲される。
【0071】
また、ガイド108の内周側には、筒状のリング体112が設けられ、その一端部が半径外方向に向かって折曲される。そして、リング体112の外縁部が、ボディ102における加締部106とガイド108の一端部との間に挟持されることによって固定される。そして、リング体112は、一端部から他端部に向かって徐々に縮径すると共にボディ102の軸線と略平行になる。
【0072】
このリング体112の内部には、チャック28が挿通され、その爪部40がボディ102の一端部102a側(矢印B方向)となるように設けられると共に、係止部42がリング体112の他端部側(矢印A方向)となるように設けられる。そして、半径外方向に折曲された係止部42が、リング体112の他端部に当接することにより、チャック28のボディ102の一端部102a側(矢印B方向)への変位が規制される。パッキン26は、チャック28に対してボディ102の一端部102a側(矢印A方向)に設けられている。
【0073】
一方、リリースブッシュ114は、例えば、薄板材をプレス加工することにより略円筒状に形成され、その一端部がボディ102の内部に挿入されると共に、他端部には、半径外方向に折曲されて拡径した鍔部116が形成される。この鍔部116は、ボディ102の外部に露呈するように設けられている。
【0074】
このように構成される第2の実施の形態では、金属製材料からなり、軸線方向(矢印A、B方向)に沿った一直線状のボディ102を有した管継手100において、本体部34と、該本体部34に対して内周側に断面三角形状に突出したシール部38と、前記本体部34の外周側に突出した膨出部36とを備えるパッキン26を用いることにより、流体用チューブ18をボディ102に挿入する際、従来の管継手に用いられたパッキンと比較し、シール部38と前記流体用チューブ18との接触面積を低減させているため、該流体用チューブ18をシール部38に摺接させながら挿入する際の抵抗が軽減されると共に、前記接触面積の低減に伴って前記外周面に対するシール部38からの押圧力が増加するため、そのシール性を高めることが可能となる。
【0075】
また、チャック28によってボディ102に係止された流体用チューブ18を取り外す際に、リリースブッシュ114を押圧して前記チャック28の爪部40を半径外方向へと移動させるが、パッキン26を断面T字状に形成しているため、前記爪部40と該爪部40に隣接したパッキン26との接触量が低減され、それに伴って、前記爪部40が前記流体用チューブ18から離脱される際の抵抗を確実に軽減して確実且つ容易に前記流体用チューブ18から離脱させることができる。その結果、チャック28がパッキン26と接触して爪部40の離脱が不完全となることが懸念された従来の管継手と比較し、前記流体用チューブ18をボディ102から取り外す際の操作力が軽減され、簡便に取り外すことが可能となる。
【0076】
なお、本発明に係る管継手は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0077】
10、100…管継手 12、102…ボディ
14…流体通路 18…流体用チューブ
20…開口部 26…パッキン
28…チャック 30、108…ガイド
32、114…リリースブッシュ 34…本体部
36…膨出部 38…シール部
40…爪部 42…係止部
54…テーパ部 56…フランジ部
58…貫通孔 112…リング体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9