特許第5709118号(P5709118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5709118緊急時の脱出を可能にするエレベーターの構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5709118
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】緊急時の脱出を可能にするエレベーターの構造
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20150409BHJP
【FI】
   B66B5/00 A
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-161886(P2014-161886)
(22)【出願日】2014年7月22日
【審査請求日】2014年9月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000203896
【氏名又は名称】太田 良三
(72)【発明者】
【氏名】太田 良三
【審査官】 大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−184042(JP,A)
【文献】 実開昭51−001958(JP,U)
【文献】 特許第2582087(JP,B2)
【文献】 特開2003−026378(JP,A)
【文献】 特開2003−146560(JP,A)
【文献】 特開2001−253664(JP,A)
【文献】 特開平05−132153(JP,A)
【文献】 特公昭61−015034(JP,B2)
【文献】 実開昭50−054767(JP,U)
【文献】 実公昭42−016762(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地震、故障又は停電により昇降中のエレベーターが停止し運行不可能な状態になったとき、エレベーターの籠(2)を巻上用ワイヤーロープ(1)の取付部(a)と乗客用の室部(5)との2部に分離しうる構造とし、この室部に乗合せた乗客が室部の扉(7)を手動に切換えてこれを開き、この室の床面(6)が建物の床面(10)とほぼ面一になるまで室部(5)を降下させた後、建物の扉(11)も手動に切換えて、これを開いて建物の床面に脱出させるようにする、この室部(5)を巻上用ワイヤーロープの取付部(3)より分離し、降下させる構造としては、巻上用ワイヤーロープ取付部の両端部(4)に油圧シリンダー(13)を固定し、この内部に組込んだ長軸のピストン(18)の下端を室部床の突出部(9)に取付け、ピストンより下方の油圧シリンダーの油圧によりピストン(18)を押上げて、室部が常時吊上げられた状態になるよう維持しておき、このエレベーターが昇降不可能になったとき、室部内の乗客は操作の指示書により、先ず室部内のハンドル(22)を手前に引いて、その突起(23)を油圧シリンダー(13)下部の噛合い爪(14)より外した後、ストップバルブ(24)を開くことにより室部をその自重により徐々に降下させる、この簡単な操作により室部の床面を建物の床面にほぼ面一になるよう停止できる、このストップバルブ(24)を開く動作によりシリンダー内の高圧の作動油は、ピストン頭部下の孔(19)よりピストン軸内の長尺の通路(20)、ピストン下部取付部の孔(21)及び油圧配管(25)を通して油タンク(26)に逃がされて、ピストン(18)は降下しこれを取付けた室部(5)が降下することにより、緊急時建物床面へ脱出を可能にするエレベーターの構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
エレベーターの昇降が不可能になったとき、これより乗客の脱出を可能にするものである。
【背景技術】
【0002】
地震、故障等により昇降中のエレベーターが停止したとき、このエレベーターの異常有無を点検後、通電し稼動しなければならない、この間乗客の脱出は困難な状況になる、これに対し有効な対策が現在要望されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は多層階の建物内を上下に運行するエレベーターにおいて、地震、故障などで運転不能になって停止したとき、エレベーターの籠の扉を開けても建物の梁及び壁にさえぎられているので、建物の床面上に脱出することが不可能になることが多い、しかもエレベーターの運転再開はエレベーターの点検が終わるまで不可能であって、乗客は長時間籠内に閉じ込められることになる、このため本発明は巻上機の運転によりエレベーターの籠の昇降、移動を行わずして、乗客自身の簡単操作により建物の床の位置に籠の床面をほぼ面一になるように近づけて、乗客を安全に脱出させようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
地震、故障又は停電により昇降中のエレベーターが停止し運行不可能な状態になったとき、エレベーターの籠2を巻上用ワイヤーロープ1の取付部3と乗客用の室部5との2部に分離しうる構造とし、この室部に乗合せた乗客が室部の扉7を手動に切換えてこれを開き、この室の床面6が建物の床面10とほぼ面一になるまで室部5を降下させた後、建物の扉(11)も手動に切換えて、これを開いて建物の床面に脱出させるようにする。
【0005】
この室部5を巻上用ワイヤーロープの取付部3より分離し、降下させる構造としては、巻上用ワイヤーロープ取付部の両端部4に油圧シリンダー13を固定し、この内部に組込んだ長軸のピストン18の下端を室部床の突出部9に取付け、ピストンより下方の油圧シリンダーの油圧によりピストン18を押上げて、室部が常時吊上げられた状態になるよう維持しておく。
【0006】
次にこのエレベーターが昇降不可能になったとき、室部内の乗客は操作の指示書により、先ず室部内のハンドル22を手前に引いて、その突起23を油圧シリンダー13下部の噛合い爪14より外した後、ストップバルブ24を開くことにより室部をその自重により徐々に降下させることができる。
【0007】
このとき巻上用ワイヤーの取付部3の両端4に取付けた2本の油圧シリンダー13の外側にシリンダーの全長にわたりラック歯15を形成して、これに各々ピニオン16を噛み合せる、そしてこの2個のピニオンを一本の長軸17で連結することにより両端の油圧シリンダーは同速で降下することになる、従って室部は傾くことなく水平に降下する。
このような構造になっているので乗客は上記の簡単な操作により、室部の床面を建物の床面にほぼ面一になるように停止することが出来る。
【0008】
上記のようにしてストップバルブ24を開くことによりシリンダー内の高圧の作動油はピストン頭部下の孔19よりピストン軸内の長尺の通路20、ピストン下部取付部の孔21及び油圧配管25を通して油タンク26に逃がされて、ピストン18は降下しこれを取付けた室部5が降下することにより、緊急時建物床面へ脱出することが可能になる。
【発明の効果】
【0009】
本発明により昇降不可能になったエレベーターの籠内より乗客の操作により安全に脱出が可能になる、特に大人数の乗客が数多く乗り込んでいたとき、短時間に脱出できる効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態の一例としてエレベーターの乗客用の下部室部巻上用ワイヤーロープ取付部が結合しているときの側断面説明図
図2図1の状態の後、下部室部を巻上用ワイヤーロープの取付部より降下し懸垂したときの側断面図説明図
図3】本発明の実施形態の一例として下部室部を巻上用のワイヤー取付部より油圧シリンダーにより懸垂する構造の側断面図
図4図3の平面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
地震、故障又は停電により昇降中のエレベーターが停止し運行不可能な状態になったとき、エレベーターの籠2を巻上用ワイヤーロープ1の取付部3と乗客用の室部5との2部に分離しうる構造とし、この室部に乗合せた乗客が室部の扉7に取付けた手動切換えつまみ8を廻して扉を開き、この下部室部の床面6が建物の床面10とほぼ面一になるまで室部5を降下させた後、建物の扉11に取付けた手動切換えつまみ12を廻してこの扉を開いて建物の床面に脱出する。
【0012】
室部5を巻上用ワイヤーロープの取付部3より分離し、降下させる構造としては、巻上用ワイヤーロープ取付部の両端部4に油圧シリンダー13を固定し、この内部に組込んだ長軸のピストン18の下端を室部床の突出部9に取付け、ピストンより下方の油圧シリンダーの油圧によりピストン18を押上げて、室部が常時吊上げられた状態になるよう維持しておく。
【0013】
次にエレベーターが昇降不可能になったとき、室部内の乗客は操作の指示書により、先ず室部内のハンドル22を手前に引いて、その突起23を油圧シリンダー13下部の噛合い爪14より外した後、ストップバルブ24を開くことにより室部をその自重により徐々に降下させることができる。
【0014】
上記のようにしてストップバルブ24を開くことによりシリンダー内の高圧の作動油は、ピストン頭部下の孔19よりピストン軸内の長尺の通路20、ピストン下部取付部の孔21及び油圧配管25を通して油タンク26に逃がされて、ピストン18は降下しこれを取付けた室部5が降下する、そして室部の床面が建物の床面にほぼ一致するとストップバルブを閉じて室部を停止させる。
【0015】
降下した下部室部5を引上げて元の位置にもどすためには別の油圧管路25を通じてギアーポンプ27等に上の油タンク26の油をシリンダー内に圧送して室部を巻上用ワイヤーロープの取付部まで持ち上げて室部内のハンドルの突起23をシリンダーの噛合い爪14に結合させる、この結合を確認した後でなければエレベーターの巻上を開始してはならない。
【符号の説明】
【0016】
1・・・巻上機のワイヤーロープ 2・・・エレベーターの籠
3・・・巻上用ワイヤーロープの取付部
4・・・巻上用ワイヤーロープ取付部の両端部
5・・・室部 6・・・室部の床面
7・・・室部の扉 8・・・室部扉の手動切換えつまみ
9・・・室部床の突出部 10・・・建物の床面
11・・・建物の扉 12・・・建物扉手動切換えつまみ
13・・・油圧シリンダー 14・・・油圧シリンダーの噛合い爪
15・・・油圧シリンダー外側のラック歯 16・・・ピニオン
17・・・ピニオン用長軸 18・・・長軸のピストン
19・・・ピストン頭部下の孔 20・・・ピストン軸内の長尺の通路
21・・・ピストン下部取付部の孔 22・・・ハンドル
23・・・ハンドルの突起 24・・・ストップバルブ
25・・・油圧配管 26・・・油タンク
27・・・ギアーポンプ 28・・・チェックバルブ
【要約】      (修正有)
【課題】エレベーターの昇降が不可能になったとき、乗客の脱出を可能にする装置を提供する。
【解決手段】地震、故障又は停電により昇降中のエレベーターが停止し運行不可能な状態になったとき、エレベーターの籠2を巻上用ワイヤーロープ1の取付部3と乗客用の室部5とに分離し、この室部の乗客が室部の扉7を手動で開き、この室の床面6が建物の床面10と面一になるまで室部5を降下させた後、建物の扉11も手動で開いて建物に脱出する、この室部5の降下方法としては、巻上用ワイヤーロープ取付部上に設置された油圧シリンダー13内のピストン下の圧力を逃がして室部5を降下させる、又長尺の角ねじ棒29を回転して室部5を降下させる、及び巻上用ワイヤーロープ取付部3上に設置された小型巻上機38で、ワイヤーロープ39を巻戻して室部5を降下させる方法がある。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4