【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0014】
手段1.床スラブに貫通孔を形成するにあたり、コンクリート打設前のデッキプレート上にスリーブを設置するスリーブ設置方法であって、
前記デッキプレートに取付孔を貫通形成する孔形成工程と、
下端部に係止部を設けた棒状部材で該棒状部材と前記係止部とのなす角度が60°以上70°以下となっていて前記棒状部材の中間位置には螺着される落下防止部を設けた前記棒状部材を用いて、前記デッキプレート上から前記取付孔に対し、前記係止部を差込み、当該係止部を前記デッキプレートの下面に係止させると共に前記棒状部材を前記デッキプレート上に立設させる棒状部材配置工程と、
前記棒状部材を取り囲むように前記デッキプレート上に前記スリーブを配置するスリーブ配置工程と、
前記スリーブ上に所定の蓋部材を被せつつ、当該蓋部材に形成された挿通孔に対し前記棒状部材を挿通させる蓋部材配置工程と、
前記蓋部材から突出した前記棒状部材の上部に所定の固定部材を
締付けにより取付け、前記蓋部材と前記デッキプレートとで前記スリーブを挟
みつつ前記係止部の先端部からの応力を前記デッキプレートの下面に作用させることで前記スリーブを固定する固定工程と
を備えたことを特徴とするスリーブ設置方法。
【0015】
上記手段1によれば、コンクリート打設前において、棒状部材の下端部に設けられた係止部をデッキプレート上から取付孔に差込み、当該係止部をデッキプレートの下面に係止させると共に棒状部材をデッキプレート上に立設させた後、その周囲にスリーブを配置し、当該スリーブに蓋部材を被せ、当該蓋部材から突出した棒状部材の上部に固定部材を取付け、蓋部材を介してスリーブをデッキプレートへ押し付けることにより、当該スリーブをデッキプレート上に固定する構成となっている。
【0016】
これにより、スリーブの設置作業と、それを塞ぐ蓋部材の設置作業とを同時に行うことができるため、コンクリート打設後に蓋部材を取付ける作業や、コンクリート打設前のデッキプレート上にスリーブや棒状部材等をビス止め固定する作業などを省略することができる。
【0017】
特にデッキプレート上に鉄筋を配筋した後、その隙間をぬってデッキプレート上にスリーブや棒状部材等をビス止め固定する作業は、非常に面倒で手間のかかる作業となる。これに対し、本手段では、鉄筋の隙間に手を差し込んで棒状部材のビス止め作業を行う必要もなく、より簡単に棒状部材の設置を行うことができる。
【0018】
また、デッキプレート上へのビス止め作業は、ボルト立設の取付板への、小さな長さ寸法であるビス差込を、配筋の隙間から行ったり、その状態での締結作業を行うため、作業者が座り込んで行う必要があり、多くのスリーブを設置する場合には、立ったり座ったりの連続作業が続くことに加え、座り込んだ状態での作業時間も長くなるため、作業者への負担が大きい。これに対し、本手段では、立ち姿勢のまま、スリーブや棒状部材等の設置作業を簡単に短時間で行うことができるため、作業者にかかる負担を軽減し、作業効率を向上させることができる。
【0019】
また、本手段では、スリーブや棒状部材等を設置するにあたり、デッキプレート上の1箇所に取付孔を形成するだけで良いため、複数箇所にビス止めを行う従来技術のように、その作業中にスリーブや棒状部材等の設置位置がずれてしまうおそれも少ない。
【0020】
また、スリーブや棒状部材等を固定するためのビスや取付台等を必要としないため、部品点数の削減を図ることができると共に、蓋部材や棒状部材等の取外しや再利用も行い易くなる。
【0021】
尚、デッキプレートに形成した取付孔に対し、デッキプレート下面側(階下側)から棒状部材等を差し込み立設する方法も考えられるが、かかる方法では、階下で足場を組んだ高所作業を要すると共に、作業員1人で実施ができない作業となるため、安全性や作業性が著しく低下するおそれがある。これに対し、本手段によれば、作業員1人でデッキプレート上面側(階上側)にて作業を行うことができる。
【0022】
結果として、本手段によれば、作業者の手間数の削減、工事時間の短縮、コスト削減等を図ることができる。
【0023】
また、係止部をデッキプレートの取付孔に差込みやすく、デッキプレート下面に安定して係止させることができる。
【0024】
手段2.前記棒状部材と前記係止部とのなす角度が70°となっていることを特徴とする手段1に記載のスリーブ設置方法。
【0025】
手段
3.床スラブに貫通孔を形成するにあたり、コンクリート打設前のデッキプレート上にスリーブを設置するためのスリーブ設置用治具であって、
前記デッキプレートに形成された取付孔に差込まれ、前記デッキプレート上に立設される棒状部材と、
前記棒状部材の下端部に設けられ、
前記棒状部材とのなす角度が60°以上70°以下となっている前記デッキプレートの下面に係止される係止部と、
前記棒状部材を挿通可能な挿通孔を有し、前記棒状部材を取り囲むように前記デッキプレート上に配置されたスリーブ上に被せられる蓋部材と、
前記蓋部材から突出した前記棒状部材の上部に
締付けにより取付けられ、前記蓋部材を介して前記スリーブを前記デッキプレートへ押圧固定する固定部材と
を備え
、
前記固定部材の締付けにより前記蓋部材と前記デッキプレートとで前記スリーブを挟みつつ前記係止部の先端部からの応力を前記デッキプレートの下面に作用させることで前記スリーブが固定されるよう構成されてなるスリーブ設置用治具。
【0026】
上記手段
3のスリーブ設置用治具を使用することにより、上記手段1のスリーブ設置方法を実施することができ、上記手段1と同様の作用効果が奏される。
【0027】
また、本手段のスリーブ設置用治具を使用することにより、径の異なる多様なスリーブに対応することができ、汎用性を高めることができる。
【0028】
手段4.前記棒状部材と前記係止部とのなす角度が70°となっていることを特徴とする手段3に記載のスリーブ設置用治具。
【0029】
手段5.前記棒状部材には、前記デッキプレートの取付孔からの自身の落下を防止するための落下防止部が設けられていることを特徴とする手段
3又は4
に記載のスリーブ設置用治具。
【0030】
上記手段5によれば、作業者が誤って手を離しても、落下防止部がデッキプレートの取付孔の縁に引っ掛かり、棒状部材が階下に落下するのを防止することができ、安全性を向上させることができる。
【0031】
手段6.前記蓋部材から突出した前記棒状部材の上端部に被せられるキャップ部材を備えたことを特徴とする手段
3乃至
5のいずれかに記載のスリーブ設置用治具。
【0032】
上記手段6によれば、作業者の安全性を高めると共に、棒状部材の上端部にコンクリートが付着し、蓋部材を取外せなくなる等の不具合を防止することができる。