特許第5709142号(P5709142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5709142多層フィルムおよび多層フィルムから形成されたバッグ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5709142
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】多層フィルムおよび多層フィルムから形成されたバッグ
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20150409BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20150409BHJP
   A61J 1/10 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
   B32B27/32 E
   B65D65/40 D
   A61J1/00 331A
【請求項の数】9
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2012-518395(P2012-518395)
(86)(22)【出願日】2011年5月31日
(86)【国際出願番号】JP2011062465
(87)【国際公開番号】WO2011152387
(87)【国際公開日】20111208
【審査請求日】2014年3月11日
(31)【優先権主張番号】特願2010-125284(P2010-125284)
(32)【優先日】2010年5月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000149435
【氏名又は名称】株式会社大塚製薬工場
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 康一
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】永田 泰士
(72)【発明者】
【氏名】梶原 康幸
【審査官】 宮澤 尚之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−021504(JP,A)
【文献】 特開2000−177077(JP,A)
【文献】 特開平06−286087(JP,A)
【文献】 特開2009−298142(JP,A)
【文献】 特開2008−221533(JP,A)
【文献】 特開2004−358683(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/102733(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
A61J 1/10
B65D 65/02、65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部層(A)、1つ以上の中間層(B)、および下部層(C)がこの順で積層されてなる多層フィルムであって、
前記中間層(B)が、下記組成物(b1)または組成物(b2)からなり、
前記上部層(A)および前記下部層(C)が、それぞれ独立に、エチレン重合体および/またはプロピレン重合体を含んでなることを特徴とする多層フィルム。
組成物(b1):示差走査熱量測定による融点が140〜165℃の範囲にあり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃,2.16kg荷重)が0.1〜20g/10minの範囲にあるプロピレン重合体(p1)と、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布が1.0〜3.5の範囲にあり、示差走査熱量測定で測定した融点が90〜125℃の範囲にあるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)と、
エチレン系エラストマー30重量%〜60重量%(但し、プロピレン重合体(p1)、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)およびエチレン系エラストマーの配合量の和は100重量%である)とを含む組成物
(但し、中間層(B)が組成物(b1)の場合、多層フィルム全体の、示差走査熱量測定による融点が140〜165℃の範囲にあり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃,2.16kg荷重)が0.1〜20g/10minの範囲にあるプロピレン重合体と、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布が1.0〜3.5の範囲にあり、示差走査熱量測定で測定した融点が90〜125℃の範囲にあるプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体との配合量の和に対する多層フィルム全体の、示差走査熱量測定による融点が140〜165℃の範囲にあり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃,2.16kg荷重)が0.1〜20g/10minの範囲にあるプロピレン重合体の配合量の比が、0.1〜0.35である)
組成物(b2):示差走査熱量測定で測定した融点が125〜145℃の範囲にあるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r2)20〜55重量%と、
エチレン系エラストマー35〜60重量%と、
密度が0.950〜0.970g/cm3の範囲にあり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,190℃,2.16kg荷重)が0.1〜20g/10minの範囲にあるエチレン重合体(e1)6〜25重量%(但し、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r2)、エチレン系エラストマーおよびエチレン重合体(e1)の配合量の和は100重量%である)と
を含む組成物
【請求項2】
前記組成物(b1)が、下記組成物(b1')であることを特徴とする請求項1に記載の多層フィルム。
組成物(b1'):示差走査熱量測定による融点が140〜165℃の範囲にあり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃,2.16kg荷重)が0.1〜20g/10minの範囲にあるプロピレン重合体(p1)3〜20重量%と、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布が1.0〜3.5の範囲にあり、示差走査熱量測定で測定した融点が90〜125℃の範囲にあるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)25〜65重量%と、
プロピレン系エラストマー0〜25重量%と、
エチレン系エラストマー30〜60重量%と、
密度が0.950〜0.970g/cm3の範囲にあり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,190℃,2.16kg荷重)が0.1〜20g/10minの範囲にあるエチレン重合体(e1)0〜15重量%(但し、プロピレン重合体(p1)、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)、プロピレン系エラストマー、エチレン系エラストマーおよびエチレン重合体(e1)の配合量の和は100重量%である)と
を含む組成物
【請求項3】
前記上部層(A)が、下記組成物(a1)または下記プロピレン重合体(p1)を含んでなることを特徴とする請求項1または2に記載の多層フィルム。
組成物(a1):示差走査熱量測定による融点が140〜165℃の範囲にあり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃,2.16kg荷重)が0.1〜20g/10minの範囲にあるプロピレン重合体(p1)5〜55重量%と、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布が1.0〜3.5の範囲にあり、示差走査熱量測定で測定した融点が90〜125℃の範囲にあるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)45〜95重量%(但し、プロピレン重合体(p1)とプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)の配合量の和は100重量%である)と
を含む組成物
プロピレン重合体(p1):示差走査熱量測定による融点が140〜165℃の範囲にあり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃,2.16kg荷重)が0.1〜20g/10minの範囲にあるプロピレン重合体
【請求項4】
前記下部層(C)が、下記組成物(c1)または下記組成物(c2)からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層フィルム。
組成物(c1):示差走査熱量測定による融点が140〜165℃の範囲にあり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃,2.16kg荷重)が0.1〜20g/10minの範囲にあるプロピレン重合体(p1)5〜30重量%と、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布が1.0〜3.5の範囲にあり、示差走査熱量測定で測定した融点が90〜125℃の範囲にあるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)45〜70重量%と、
エチレン系エラストマー20〜50重量%(但し、プロピレン重合体(p1)、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)およびエチレン系エラストマーの配合量の和は100重量%である)と
を含む組成物
組成物(c2):密度が0.916〜0.940g/cm3の範囲にある直鎖状ポリエチレン25〜60重量%と、
密度が0.950〜0.970g/cm3の範囲にある高密度ポリエチレン10〜30重量%と、
密度が0.900〜0.910g/cm3の範囲にある、シングルサイト触媒で重合された直鎖状ポリエチレン20〜45重量%(但し、直鎖状ポリエチレン、高密度ポリエチレンおよびシングルサイト触媒で重合された直鎖状ポリエチレンの配合量の和は100重量%である)と
を含む組成物
【請求項5】
前記上部層(A)、前記中間層(B)、中間層(B−1)、前記中間層(B)および前記下部層(C)がこの順で積層されてなる多層フィルムであって、
前記中間層(B−1)が、下記組成物(b−11)または下記組成物(b−12)からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の多層フィルム。
組成物(b−11):示差走査熱量測定による融点が140〜165℃の範囲にあり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃,2.16kg荷重)が0.1〜20g/10minの範囲にあるプロピレン重合体(p1)5〜35重量%と、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布が1.0〜3.5の範囲にあり、示差走査熱量測定で測定した融点が90〜125℃の範囲にあるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)50〜90重量%と、
エチレン系エラストマー5〜45重量%(但し、プロピレン重合体(p1)、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)およびエチレン系エラストマーの配合量の和は100重量%である)と、
を含む組成物
組成物(b−12):示差走査熱量測定で測定した融点が125〜145℃の範囲にあるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r2)60〜90重量%と、
エチレン系エラストマー10〜40重量%(但し、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r2)およびエチレン系エラストマーの配合量の和は100重量%である)と
を含む組成物
【請求項6】
上部層(A)、中間層(B)および下部層(C)がこの順で積層されてなる多層フィルムであって、
前記上部層(A)が前記組成物(a1)からなり、
前記中間層(B)が前記組成物(b1')からなり、
前記下部層(C)が前記組成物(c1)からなる
ことを特徴とする請求項4に記載の多層フィルム。
【請求項7】
上部層(A)、中間層(B)、中間層(B−1)、中間層(B)および下部層(C)がこの順で積層されてなる多層フィルムであって、
前記上部層(A)が前記組成物(a1)からなり、該組成物(a1)は前記プロピレン重合体(p1)15〜35重量%と前記プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)65〜85重量%とを含み、
前記中間層(B)が前記組成物(b1')からなり、
前記中間層(B−1)が前記組成物(b−11)からなり、
前記下部層(C)が前記組成物(c2)からなる
ことを特徴とする請求項5に記載の多層フィルム。
【請求項8】
上部層(A)、中間層(B)、中間層(B−1)、中間層(B)および下部層(C)がこの順で積層されてなる多層フィルムであって、
前記上部層(A)が、前記プロピレン重合体(p1)を含んでなり、
前記中間層(B)が、前記組成物(b2)からなり、
前記中間層(B−1)が、前記組成物(b−12)からなり、
前記下部層(C)が、前記組成物(c2)からなる
ことを特徴とする請求項5に記載の多層フィルム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の多層フィルムから形成され、収容物に接する面に前記下部層(C)が配置されたバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層フィルムおよびその多層フィルムから形成されたバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、輸液などの薬液を収容するための容器としては、柔軟なプラスチックフィルムからなる薬液バッグが主流である。この種の薬液バッグは、取扱いやすく、廃棄が容易であるという利点を有している。そして、この種の薬液バッグは、薬液と直接に接触するものであることから、安全性が確立されているポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンで形成されたものが汎用されている。
【0003】
特許文献1には、密度0.920〜0.930g/cm3のメタロセン触媒を使用して重合される線状低密度ポリエチレンまたはエチレン−α−オレフィン共重合体により形成される外層と、密度0.890〜0.920g/cm3のメタロセン触媒を使用して重合される線状低密度ポリエチレンまたはエチレン−α−オレフィン共重合体と、密度0.920〜0.930g/cm3のメタロセン触媒を使用して重合される線状低密度ポリエチレンまたはエチレン−α−オレフィン共重合体と、密度0.910〜0.930g/cm3のチーグラー・ナッタ触媒により重合される線状低密度ポリエチレンまたはエチレン−α−オレフィン共重合体とからなる重合体組成物により形成される内層との積層体からなる医療用容器が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、密度0.928g/cm3以上のメタロセン触媒系直鎖状ポリエチレン45〜75重量%と、高圧法低密度ポリエチレン5〜35重量%と、密度0.91g/cm3以下のメタロセン触媒系直鎖状ポリエチレン15〜45重量%とを含む重合体組成物から形成される耐熱性シートと、この耐熱性シートを用いて形成された輸液バッグとが開示されている。
【0005】
特許文献3には、プロピレン−α−オレフィンランダムコポリマーとプロピレンホモポリマーとの混合物からなるシール層と、このシール層の表面に形成され、プロピレン・α−オレフィンランダムコポリマーなどとエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーとの混合物からなる第1柔軟層と、この第1柔軟層の表面に形成され、プロピレンホモポリマー、ポリ環状オレフィンなどからなる補強層と、この補強層の表面に形成され、上記第1柔軟層と同様の混合物からなる第2柔軟層と、この第2柔軟層の表面に形成され、プロピレンホモポリマー、プロピレン・α−オレフィンランダムコポリマーなどからなる最外層とを備える5層構造のプラスチックフィルムと、このプラスチックフィルムを用いて形成された容器とが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−238975号公報
【特許文献2】特開2001−172441号公報
【特許文献3】特開2006−21504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
輸液などの薬液には、通常、薬液バッグに収容、密封された状態で、高圧蒸気滅菌、熱水シャワー滅菌などの加熱滅菌処理が施される。これら加熱滅菌処理の温度条件は、一般に、105〜110℃程度であるが、薬液の種類、用法、使用環境などにより、118〜121℃の高温条件下での滅菌処理が必要になる場合もある。
【0008】
しかしながら、薬液バッグが一般的なポリエチレンで作製されている場合には、薬液バッグの耐熱性が低くなる傾向があり、高温条件下の滅菌処理によって薬液バッグの変形、破損、透明性の低下といった不具合が生じる。
【0009】
しかも、このような不具合は、特許文献1および2に記載の薬液バッグ(医療用容器、輸液バッグ)のように、ポリエチレンとして、メタロセン触媒で重合された直鎖状低密度ポリエチレンを使用した場合であっても、十分な解決を図ることができない。それゆえ、これら特許文献1および2に記載の容器は、118〜121℃での滅菌処理に供することができない。
【0010】
また、薬液バッグが一般的なポリプロピレンで形成されている場合には、薬液バッグの柔軟性が低下する傾向があるため、低温での衝撃強度が劣り、低温状態でのバッグの搬送中に受ける衝撃によりバッグが破損する場合がある。
【0011】
特許文献3に記載のバッグは、柔軟性および低温での耐衝撃性の点で、改良の余地があった。
【0012】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、柔軟性、透明性、低温での衝撃強度などの基本的な性能を維持しながら、118〜121℃での滅菌処理に耐え得る優れた耐熱性を備え、かかる滅菌処理後に柔軟性や透明性を維持することができる多層フィルムと、そのフィルムで形成したバッグ、特に薬液を収容するバックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の多層フィルムは、上部層(A)、1つ以上の中間層(B)、および下部層(C)がこの順で積層されてなり、
前記中間層(B)が、下記組成物(b1)または組成物(b2)からなり、
前記上部層(A)および前記下部層(C)が、それぞれ独立に、エチレン重合体および/またはプロピレン重合体を含んでなることを特徴としている。
【0014】
組成物(b1):示差走査熱量測定による融点が140〜165℃の範囲にあり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃,2.16kg荷重)が0.1〜20g/10minの範囲にあるプロピレン重合体(p1)と、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布が1.0〜3.5の範囲にあり、示差走査熱量測定で測定した融点が90〜125℃の範囲にあるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)と、
エチレン系エラストマー30重量%〜60重量%(但し、プロピレン重合体(p1)、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)およびエチレン系エラストマーの配合量の和は100重量%である)とを含む組成物
(但し、中間層(B)が組成物(b1)の場合、多層フィルム全体の前記プロピレン重合体(p1)と前記プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(r1)との配合量の和に対する多層フィルム全体の前記プロピレン重合体(p1)の配合量の比が、0.1〜0.35である)
【0015】
組成物(b2):示差走査熱量測定で測定した融点が125〜145℃の範囲にあるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r2)20〜55重量%と、
エチレン系エラストマー35〜60重量%と、
密度が0.950〜0.970g/cm3の範囲にあり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,190℃,2.16kg荷重)が0.1〜20g/10minの範囲にあるエチレン重合体(e1)6〜25重量%(但し、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r2)、エチレン系エラストマーおよびエチレン重合体(e1)の配合量の和は100重量%である)と
を含む組成物
【0016】
前記組成物(b1)としては、下記組成物(b1’)が好ましい。
組成物(b1’):示差走査熱量測定による融点が140〜165℃の範囲にあり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃,2.16kg荷重)が0.1〜20g/10minの範囲にあるプロピレン重合体(p1)3〜20重量%と、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布が1.0〜3.5の範囲にあり、示差走査熱量測定で測定した融点が90〜125℃の範囲にあるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)25〜65重量%と、
プロピレン系エラストマー0〜25重量%と、
エチレン系エラストマー30〜60重量%と、
密度が0.950〜0.970g/cm3の範囲にあり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,190℃,2.16kg荷重)が0.1〜20g/10minの範囲にあるエチレン重合体(e1)0〜15重量%(但し、プロピレン重合体(p1)、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)、プロピレン系エラストマー、エチレン系エラストマーおよびエチレン重合体(e1)の配合量の和は100重量%である)と
を含む組成物
【0017】
前記上部層(A)は、好ましくは下記組成物(a1)または下記プロピレン重合体(p1)を含んでなる。
組成物(a1):示差走査熱量測定による融点が140〜165℃の範囲にあり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃,2.16kg荷重)が0.1〜20g/10minの範囲にあるプロピレン重合体(p1)5〜55重量%と、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布が1.0〜3.5の範囲にあり、示差走査熱量測定で測定した融点が90〜125℃の範囲にあるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)45〜95重量%(但し、プロピレン重合体(p1)とプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)の配合量の和は100重量%である)と
を含む組成物
【0018】
プロピレン重合体(p1):示差走査熱量測定による融点が140〜165℃の範囲にあり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃,2.16kg荷重)が0.1〜20g/10minの範囲にあるプロピレン重合体
【0019】
前記下部層(C)は、好ましくは下記組成物(c1)または下記組成物(c2)からなる。
組成物(c1):示差走査熱量測定による融点が140〜165℃の範囲にあり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃,2.16kg荷重)が0.1〜20g/10minの範囲にあるプロピレン重合体(p1)5〜30重量%と、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布が1.0〜3.5の範囲にあり、示差走査熱量測定で測定した融点が90〜125℃の範囲にあるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)45〜70重量%と、
エチレン系エラストマー20〜50重量%(但し、プロピレン重合体(p1)、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)およびエチレン系エラストマーの配合量の和は100重量%である)と
を含む組成物
【0020】
組成物(c2):密度が0.916〜0.940g/cm3の範囲にある直鎖状ポリエチレン25〜60重量%と、
密度が0.950〜0.970g/cm3の範囲にある高密度ポリエチレン10〜30重量%と、
密度が0.900〜0.910g/cm3の範囲にある、シングルサイト触媒で重合された直鎖状ポリエチレン20〜45重量%(但し、直鎖状ポリエチレン、高密度ポリエチレンおよびシングルサイト触媒で重合された直鎖状ポリエチレンの配合量の和は100重量%である)と
を含む組成物
【0021】
本発明の多層フィルムとしては、前記上部層(A)、前記中間層(B)、中間層(B−1)、前記中間層(B)および前記下部層(C)がこの順で積層されてなり、
前記中間層(B−1)が、下記組成物(b−11)または下記組成物(b−12)からなる多層フィルムが挙げられる。
【0022】
組成物(b−11):示差走査熱量測定による融点が140〜165℃の範囲にあり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃,2.16kg荷重)が0.1〜20g/10minの範囲にあるプロピレン重合体(p1)5〜35重量%と、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布が1.0〜3.5の範囲にあり、示差走査熱量測定で測定した融点が90〜125℃の範囲にあるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)50〜90重量%と、
エチレン系エラストマー5〜45重量%(但し、プロピレン重合体(p1)、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)およびエチレン系エラストマーの配合量の和は100重量%である。)と、
を含む組成物
【0023】
組成物(b−12):示差走査熱量測定で測定した融点が125〜145℃の範囲にあるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r2)60〜90重量%と、
エチレン系エラストマー10〜40重量%(但し、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r2)およびエチレン系エラストマーの配合量の和は100重量%である。)と
を含む組成物
【0024】
本発明の多層フィルムとしては、上部層(A)、中間層(B)および下部層(C)がこの順で積層され、
前記上部層(A)が前記組成物(a1)からなり、
前記中間層(B)が前記組成物(b1’)からなり、
前記下部層(C)が前記組成物(c1)からなる
多層フィルムが好ましい。
【0025】
本発明の多層フィルムとしては、上部層(A)、中間層(B)、中間層(B−1)、中間層(B)および下部層(C)がこの順で積層され、
前記上部層(A)が前記組成物(a1)からなり、該組成物(a1)は前記プロピレン重合体(p1)15〜35重量%と前記プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)65〜85重量%とを含み、
前記中間層(B)が前記組成物(b1’)からなり、
前記中間層(B−1)が前記組成物(b−11)からなり、
前記下部層(C)が前記組成物(c2)からなる
多層フィルムが好ましい。
【0026】
本発明の多層フィルムとしては、上部層(A)、中間層(B)、中間層(B−1)、中間層(B)および下部層(C)がこの順で積層され、
前記上部層(A)が、前記プロピレン重合体(p1)を含んでなり、
前記中間層(B)が、前記組成物(b2)からなり、
前記中間層(B−1)が、前記組成物(b−12)からなり、
前記下部層(C)が、前記組成物(c2)からなる
多層フィルムが好ましい。
【0027】
本発明のバッグは、前記多層フィルムから形成され、収容物に接する面に前記下部層(C)が配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明の多層フィルムは、透明性、耐熱性、柔軟性、機械的強度および低温耐衝撃性に優れる。
【0029】
このため、該多層フィルムから得られるバッグは、透明性、柔軟性、耐熱性、機械的強度および低温衝撃性などの特性に優れている。特に本発明のバッグは、耐熱性に優れていることから、高温(121℃)での滅菌処理が可能であり、高温での滅菌処理後においても、しわや透明性の低下が起こりにくく、適度な柔軟性や良好な透明性を維持することができるため、薬液バッグとして好適に用いられる。さらに、本発明のバッグは、特に低温耐衝撃性に優れるため、低温環境での使用や、低温環境での輸送に十分耐えうるため、薬液バッグとして好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
≪多層フィルム≫
本発明の多層フィルムは、上部層(A)、1つ以上の中間層(B)、および下部層(C)がこの順で積層されてなる。この多層フィルムとして、より具体的には、上部層(A)、中間層(B)および下部層(C)がこの順で積層されてなる多層フィルム(X)、ならびに、上部層(A)、中間層(B)、中間層(B−1)、中間層(B)および下部層(C)がこの順で積層されてなる多層フィルム(Y)が挙げられる。
【0031】
多層フィルムの厚みは、例えば、160〜300μmであり、薬液バッグ等のバッグに用いる場合であれば好ましくは180〜260μmである。
【0032】
[上部層(A)]
前記上部層(A)は、エチレン重合体および/またはプロピレン重合体を含んでなり、好ましくは、下記組成物(a1)またはプロピレン重合体(p1)を含んでなる。
【0033】
上部層(A)は、特に、多層フィルムの耐熱性に寄与する。
【0034】
前記エチレン重合体は、該重合体中の主要構成単位がエチレンから誘導される構成単位(以下「エチレン単位」という。)である重合体である。前記エチレン重合体としては、好ましくは、エチレンホモポリマー、および少量たとえば10モル%以下、好ましくは5モル%以下の炭素数3〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位を含むエチレン・α−オレフィンランダム共重合体が挙げられる。
【0035】
前記プロピレン重合体は、該重合体中の主要構成単位がプロピレンから誘導される構成単位(以下「プロピレン単位」という。)である重合体である。前記プロピレン重合体としては、プロピレンホモポリマー、および少量たとえば10モル%以下、好ましくは5モル%以下の炭素数2または4〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位を含むプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体が挙げられ、さらに好ましくは、後述するプロピレン重合体(p1)が挙げられる。
【0036】
{組成物(a1)}
組成物(a1)は、示差走査熱量測定による融点が140〜165℃の範囲にあり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃,2.16kg荷重)が0.1〜20g/10minの範囲にあるプロピレン重合体(p1)5〜55重量%、好ましくは15〜50重量%、さらに好ましくは20〜45重量%と、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布が1.0〜3.5の範囲にあり、示差走査熱量測定で測定した融点が90〜125℃の範囲にあるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)45〜95重量%、好ましくは55〜85重量%、さらに好ましくは60〜80重量%(但し、プロピレン重合体(p1)とプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)の配合量の和は100重量%である)と
を含む組成物である。
【0037】
前記上部層(A)が組成物(a1)からなると、本発明の多層フィルムは、特に、耐熱性、透明性および低温耐衝撃性等に優れる。
【0038】
前記プロピレン重合体(p1)は、示差走査熱量測定による融点が140〜165℃、好ましくは145〜165℃、さらに好ましくは155〜165℃の範囲にあり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃,2.16kg荷重)は0.1〜20g/10min、好ましくは1〜10g/10min、さらに好ましくは2〜5g/10minの範囲にある。
【0039】
前記プロピレン重合体(p1)は、好ましくはプロピレンホモポリマー、または少量(たとえば10モル%以下、好ましくは5モル%以下)の炭素数2または4〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位を含むプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体であり、より好ましくはプロピレンホモポリマーである。
【0040】
このようなプロピレン重合体(p1)は、特に制限されないが、例えばチーグラー・ナッタ触媒を用いて製造することができる。
【0041】
このプロピレン重合体(p1)は、1種単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0042】
前記プロピレン重合体(p1)としては、従来公知のプロピレン重合体を用いることができ、市販品であればJ103WA、(株)プライムポリマー製などが挙げられる。
【0043】
前記プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)は、GPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn、ポリスチレン換算、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)が1.0〜3.5、好ましくは1.0〜3.0、さらに好ましくは2.0〜3.0の範囲にあり、示差走査熱量測定で測定した融点が90〜125℃、好ましくは100〜120℃の範囲にある。
【0044】
また、前記プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)のメルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃,2.16kg荷重)は、通常、0.1〜20g/10分、好ましくは1〜15g/10分、さらに好ましくは1〜8g/10分である。
【0045】
前記プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)は、プロピレンと炭素数が2または4〜20のα−オレフィンとの共重合体からなる。炭素数が2または4〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1− ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンおよび1−エイコセンなどが挙げられ、中でもエチレンおよび1−ブテンが好ましい。これらのα−オレフィンは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
前記プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)は、プロピレン単位を50〜89モル%、好ましくは50〜80モル%、更に好ましくは50〜75モル%含み、α−オレフィン単位を1〜10モル%、好ましくは2〜8モル%、更に好ましくは3〜5モル%含むことが望ましい。
【0047】
このようなプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)としては、メタロセン触媒で重合されたプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体が好ましく、具体的には、結晶性プロピレン・エチレン共重合体、結晶性プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、結晶性プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−オクテン共重合体およびプロピレン・1−ヘキセン共重合体などが挙げられ、中でも、結晶性プロピレン・エチレン共重合体および結晶性プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体が好ましい。
【0048】
前記プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)は、メタロセン触媒を用いて、従来公知のプロピレン(共)重合体の製造方法により製造することができる。メタロセン触媒で重合することにより、分子量分布の小さいプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を容易に得ることができる。
【0049】
メタロセン触媒としては、ジメチルシリレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド等のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物(いわゆるメタロセン化合物);メチルアルモキサン等の有機アルミニウムオキシ化合物;N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のホウ素化合物;ペンタフルオロフェノールと有機金属化合物との反応物またはイオン交換性層状珪酸塩等のメタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒と、必要に応じて使用するトリエチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物とからなる触媒;など、公知のメタロセン触媒が挙げられる。
【0050】
なお、前記プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)は、公知のチーグラー・ナッタ触媒を用いて製造することもできるが、この場合、分子量分布を3.5以下とするために、公知のチーグラー・ナッタ触媒を用いて製造したプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を有機過酸化物存在下で熱分解させること等の工程が必要となる。
【0051】
このプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)は、1種単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0052】
プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)としては、従来公知のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を用いることができる。
【0053】
組成物(a1)は、前記各成分を前記のような配合量で種々公知の方法、例えば、多段重合法、ヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラブレンダー等で混合する方法、あるいは混合後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法を採用して調製することができる。
【0054】
本発明の多層フィルムを薬液バッグ等のバッグに用いる場合には、各層には添加剤は配合されないことが好ましいが、他の用途であれば、組成物(a1)には、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤および酸化防止剤等の添加剤が必要に応じて配合されていてもよい。
【0055】
{プロピレン重合体(p1)}
プロピレン重合体(p1)は、 示差走査熱量測定による融点が140〜165℃の範囲にあり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃,2.16kg荷重)が0.1〜20g/10minの範囲にあるプロピレン重合体であり、その詳細は上述のとおりである。
【0056】
前記上部層(A)が、組成物(a1)からなると、本発明の多層フィルムは特に、耐熱性および機械的強度等に優れる。
【0057】
前記プロピレン重合体(p1)には、前記組成物(a1)に配合され得る添加剤と同様の添加剤を配合してもよい。
【0058】
上部層(A)の厚みは、特に制限されないが、多層フィルムの総厚さの5〜20%であることが好ましく、本発明の多層フィルムを薬液バッグ等のバッグに用いる場合であれば好ましくは10〜40μm、さらに好ましくは15〜35μmである。上部層(A)の厚みがこのような範囲にあれば、前記上部層(A)の有する性質が充分に生かされた多層フィルムを得ることができる。
【0059】
[中間層(B)]
前記中間層(B)は、下記組成物(b1)または組成物(b2)からなり、本発明の多層フィルム中に1つ以上含まれ、好ましくは1つまたは2つ含まれる。
【0060】
中間層(B)は、特に、多層フィルムの透明性、柔軟性および耐衝撃性等に寄与し、更に、層間の接着性の向上にも寄与する。
【0061】
{組成物(b1)}
前記組成物(b1)は、前記プロピレン重合体(p1)、前記プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)およびエチレン系エラストマー30重量%〜60重量%(但し、プロピレン重合体(p1)、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)およびエチレン系エラストマーの配合量の和は100重量%である)を含む組成物である。
【0062】
但し、中間層(B)が組成物(b1)からなる場合、多層フィルム全体の、示差走査熱量測定による融点が140〜165℃の範囲にあり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃,2.16kg荷重)が0.1〜20g/10minの範囲にあるプロピレン重合体と、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布が1.0〜3.5の範囲にあり、示差走査熱量測定で測定した融点が90〜125℃の範囲にあるプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体との配合量の和に対する多層フィルム全体の、示差走査熱量測定による融点が140〜165℃の範囲にあり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃,2.16kg荷重)が0.1〜20g/10minの範囲にあるプロピレン重合体の配合量の比が、0.1〜0.35、好ましくは0.1〜0.33、さらに好ましくは0.2〜0.32である。
【0063】
前記中間層(B)が、組成物(b1)からなると、本発明の多層フィルムは、特に、耐熱性および透明性等に優れ、透明性および低温耐衝撃性にバランス良く優れる。
【0064】
前記プロピレン重合体(p1)および前記プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)の詳細は、上述のとおりであるが、前記プロピレン重合体(p1)としては、そのMFRが0.1〜10g/10分である重合体を用いることが好ましい。
【0065】
前記エチレン系エラストマーの詳細は、後述のとおりである。
【0066】
前記組成物(b1)の調製方法は、前記組成物(a1)と同様であり、前記組成物(b1)には、前記組成物(a1)に配合され得る添加剤と同様の添加剤を配合してもよい。
【0067】
{組成物(b1’)}
前記組成物(b1)としては、下記組成物(b1’)が好ましい。
【0068】
組成物(b1’)は、前記プロピレン重合体(p1)3〜20重量%、好ましくは5〜18重量%、さらに好ましくは6〜15重量%と、
前記プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)25〜65重量%、好ましくは25〜60重量%、さらに好ましくは30〜55重量%と、
プロピレン系エラストマー0〜25重量%、好ましくは3〜15重量%、さらに好ましくは5〜10重量%と、
エチレン系エラストマー30〜60重量%、好ましくは35〜55重量%、さらに好ましくは35〜50重量%と、
密度が0.950〜0.970g/cm3の範囲にあり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,190℃,2.16kg荷重)が0.1〜20g/10minの範囲にあるエチレン重合体(e1)0〜15重量%、好ましくは5〜15重量%、さらに好ましくは10〜15重量%(但し、プロピレン重合体(p1)、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)、プロピレン系エラストマー、エチレン系エラストマーおよびエチレン重合体(e1)の配合量の和は100重量%である)と
を含む組成物である。
【0069】
前記中間層(B)が、組成物(b1’)からなると、本発明の多層フィルムは、特に、耐熱性透明性および層間接着性等に優れ、透明性および低温耐衝撃性にバランス良く優れる。
【0070】
前記プロピレン重合体(p1)および前記プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)の詳細は、上述のとおりである。
【0071】
前記プロピレン系エラストマーは、プロピレンを主成分とするプロピレン・α−オレフィン共重合体であり、プロピレン単位を50〜89モル%、好ましくは50〜80モル%、更に好ましくは50〜75モル%含み、エチレン単位を10〜25モル%、好ましくは10〜23モル%、更に好ましくは12〜23モル%含み、および必要に応じて炭素数4〜20のα−オレフィン単位を0〜30モル%、好ましくは、0〜25モル%、更に好ましくは、0〜20モル%含んでなることが望ましい。
【0072】
前記α−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1− ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンおよび1−エイコセンなどの炭素数4〜20のα−オレフィンが挙げられる。これらα−オレフィンは、単独で用いてもよく、または2種以上を混合して用いてもよい。また、α−オレフィンは、上記例示のなかでも、好ましくは、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテンおよび1−オクテンであり、さらに好ましくは、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンおよび4−メチル−1−ペンテンであり、特に好ましくは、1−ブテンである。
【0073】
このようなプロピレン系エラストマーは、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が、通常0.01〜10dl/g、好ましくは0.05〜10dl/gの範囲にあることが望ましい。
【0074】
このプロピレン系エラストマーは、JIS K6301に準拠して、JIS3号ダンベルを用い、スパン間:30mm、引っ張り速度:30mm/minで23℃にて測定した、100%歪での応力(M100)が、4Ma以下、好ましくは3Ma以下、更に好ましくは2Ma以下である。
【0075】
このプロピレン系エラストマーは、X線回折で測定した結晶化度が20%以下、好ましくは0〜15%である。また、このプロピレン系エラストマーは単一のガラス転移温度を有し、示差走査熱量計(DSC)によって測定したガラス転移温度Tgが、通常−10℃以下、好ましくは−15℃以下の範囲にあることが望ましい。
【0076】
またGPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn、ポリスチレン換算、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)は4.0以下、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下であることが望ましい。
【0077】
前記プロピレン系エラストマーは、その100重量部に対して、通常1〜100重量部、好ましくは5〜80重量部が極性モノマーによりグラフト変性されていてもよい。この極性モノマーとしては、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸あるいはその誘導体、ビニルエステル化合物および塩化ビニルなどが挙げられる。
【0078】
前記プロピレン系エラストマーは、前記メタロセン触媒を用いて製造することもできるが、これに限定されるものではない。
【0079】
このプロピレン系エラストマーは、1種単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0080】
プロピレン系エラストマーとしては、従来公知のプロピレン系エラストマーを用いることができ、市販品であれば、XM−7070(三井化学(株)製)などが挙げられる。
【0081】
前記エチレン系エラストマーとしては、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体が好ましく用いられる。
【0082】
このエチレン・α−オレフィンランダム共重合体は、好ましくは通常エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとの共重合体、好ましくはエチレンと炭素原子数3〜10のα−オレフィンとの共重合体である。このエチレン・α−オレフィンランダム共重合体は、好ましくは下記(x)および(y)を満たす。
(x):密度(ASTM 1505、温度23℃)が0.850〜0.910g/cm3、好ましくは0.860〜0.905g/cm3、より好ましくは0.865〜0.895g/cm3である。
(y):メルトフローレート(MFR、温度190℃、2.16kg荷重下)が0.1〜150g/10分、好ましくは0.3〜100g/10分である。
【0083】
前記エチレン・α−オレフィンランダム共重合体は、X線回折法により測定される結晶化度が通常40%以下、好ましくは0〜39%、さらに好ましくは0〜35%である。
【0084】
コモノマーとして使用される炭素原子数3〜20のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンが挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。
【0085】
前記共重合体中のα−オレフィン含量としては、通常3〜39モル%、好ましくは5〜30モル%、より好ましくは5〜25モル%である。
【0086】
また、必要に応じて、他のコノモマー、例えば、1,6−ヘキサジエン、1,8−オクタジエン等のジエン類、シクロペンテン等の環状オレフィン類などを少量含有してもよい。
【0087】
前記共重合体の分子構造は、直鎖状であってもよく、長鎖または短鎖の側鎖を有する分岐状であってもよい。
【0088】
また、複数の異なるエチレン・α−オレフィンランダム共重合体を混合して使用することも可能である。
【0089】
このようなエチレン・α−オレフィンランダム共重合体を得る方法については特に制限はないが、バナジウム系触媒、チタン系触媒またはメタロセン系触媒などを用いる従来公知の方法により製造する方法が挙げられる。特に、メタロセン触媒を用いて製造された共重合体は通常、分子量分布(Mw/Mn)が3以下であり、本発明に好ましく利用できる。
【0090】
このエチレン系エラストマーは、1種単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
【0091】
エチレン系エラストマーとしては、従来公知のエチレン系エラストマーを用いることができ、市販品であれば、タフマー(登録商標)A0585X(三井化学(株)製)などが挙げられる。
【0092】
前記エチレン重合体(e1)は、密度が0.950〜0.970g/cm3、好ましくは0.953〜0.968g/cm3、さらに好ましくは0.955〜0.965g/cm3の範囲にあり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,190℃,2.16kg荷重)が0.1〜20g/10min、好ましくは1〜18g/10min、さらに好ましくは3〜17g/10minの範囲にある。
【0093】
前記エチレン重合体(e1)は、好ましくはエチレンホモポリマー、または少量(たとえば10モル%以下、好ましくは5モル%以下)の炭素数3〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位を含むエチレン・α−オレフィンランダム共重合体であり、より好ましくはエチレンホモポリマーである。
【0094】
このエチレン重合体(e1)は、1種単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
【0095】
エチレン重合体(e1)としては、従来公知のエチレン重合体を用いることができる。
【0096】
前記組成物(b1’)の調製方法は、前記組成物(a1)と同様であり、前記組成物(b1’)には、前記組成物(a1)に配合され得る添加剤と同様の添加剤を配合してもよい。
【0097】
{組成物(b2)}
組成物(b2)は、示差走査熱量測定で測定した融点が125〜145℃の範囲にあるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r2)20〜55重量%、好ましくは30〜50重量%、さらに好ましくは35〜45重量%と、
エチレン系エラストマー35〜60重量%、好ましくは40〜60重量%、さらに好ましくは45〜55重量%と、
前記エチレン重合体(e1)6〜25重量%、好ましくは6〜20重量%、さらに好ましくは7〜15重量%(但し、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r2)、エチレン系エラストマーおよびエチレン重合体(e1)の配合量の和は100重量%である)と
を含む組成物である。
【0098】
前記中間層(B)が、組成物(b2)からなると、本発明の多層フィルムは、特に、低温耐衝撃性等に優れる。
【0099】
前記プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r2)は、プロピレンと炭素数が2または4〜20のα−オレフィンとの共重合体からなる。炭素数が2または4〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1− ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンおよび1−エイコセンなどが挙げられ、なかでもエチレンおよび1−ブテンが好ましい。これらのα−オレフィンは、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0100】
前記プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r2)は、プロピレン単位を75〜99モル%、好ましくは80〜97モル%、更に好ましくは85〜95モル%含み、α−オレフィン単位を1〜25モル%、好ましくは3〜20モル%、更に好ましくは5〜15モル%含むことが望ましい。
【0101】
このようなプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r2)としては、具体的には、結晶性プロピレン・エチレン共重合体、結晶性プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、結晶性プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−オクテン共重合体およびプロピレン・1−ヘキセン共重合体などが挙げられ、なかでも、結晶性プロピレン・エチレン共重合体および結晶性プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体が好ましい。
【0102】
前記プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r2)は、チーグラー・ナッタ触媒を用いて、従来公知のプロピレン(共)重合体の製造方法により製造することができる。
【0103】
このプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r2)は、1種単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
【0104】
プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r2)としては、従来公知のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を用いることができる。
【0105】
前記エチレン系エラストマーおよび前記エチレン重合体(e1)の詳細は、上述のとおりである。
【0106】
前記組成物(b2)の調製方法は、前記組成物(a1)と同様であり、前記組成物(b2)には、前記組成物(a1)に配合され得る添加剤と同様の添加剤を配合してもよい。
【0107】
中間層(B)の厚みは、特に制限されないが、多層フィルム(X)に用いられる場合には、多層フィルム(X)の総厚さの60〜90%であることが好ましく、本発明の多層フィルムを薬液バッグ等のバッグに用いる場合であれば好ましくは140〜220μm、さらに好ましくは160〜220μmであり、多層フィルム(Y)に用いられる場合には、中間層(B)の一層当り、多層フィルム(Y)の総厚さの30〜40%であることが好ましく、本発明の多層フィルムを薬液バッグ等のバッグに用いる場合であれば好ましくは70〜110μm、さらに好ましくは80〜110μmである。
【0108】
中間層(B)の厚みがこのような範囲にあれば、前記中間層(B)の有する性質が充分に生かされた多層フィルムを得ることができる。
【0109】
[中間層(B−1)]
前記中間層(B−1)は、下記組成物(b−11)または組成物(b−12)を含んでなる。
【0110】
中間層(B−1)は、特に、多層フィルムの機械的強度に寄与する。
【0111】
{組成物(b−11)}
組成物(b−11)は、前記プロピレン重合体(p1)5〜35重量%、好ましくは5〜30重量%、さらに好ましくは10〜25重量%と、
前記プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)50〜90重量%、好ましくは55〜80重量%、さらに好ましくは55〜75重量%と、
前記エチレン系エラストマー5〜45重量%、好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは10〜30重量%(但し、プロピレン重合体(p1)、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)およびエチレン系エラストマーの配合量の和は100重量%である)と、
を含む組成物である。
【0112】
前記中間層(B−1)が、組成物(b−11)からなると、本発明の多層フィルムは特に、機械的強度等に優れる。
【0113】
前記プロピレン重合体(p1)、前記プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)および前記エチレン系エラストマーの詳細は、上述のとおりである。
【0114】
前記組成物(b−11)の調製方法は、前記組成物(a1)と同様であり、前記組成物(b−11)には、前記組成物(a1)に配合され得る添加剤と同様の添加剤を配合してもよい。
【0115】
{組成物(b−12)}
組成物(b−12)は、前記プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r2)60〜90重量%、好ましくは70〜90重量%と、
前記エチレン系エラストマー10〜40重量%、好ましくは10〜35重量%、さらに好ましくは10〜30重量%(但し、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r2)およびエチレン系エラストマーの配合量の和は100重量%である)と
を含む組成物である。
【0116】
前記中間層(B−1)が、組成物(b−12)からなると、本発明の多層フィルムは特に、機械的強度等に優れる。
【0117】
前記プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r2)および前記エチレン系エラストマーの詳細は、上述のとおりである。
【0118】
前記組成物(b−12)の調製方法は、前記組成物(a1)と同様であり、前記組成物(b−12)には、前記組成物(a1)に配合され得る添加剤と同様の添加剤を配合してもよい。
【0119】
中間層(B−1)の厚みは、特に制限されないが、多層フィルムの総厚さの5〜20%であることが好ましく、本発明の多層フィルムを薬液バッグ等のバッグに用いる場合であれば好ましくは5〜35μm、さらに好ましくは10〜30μmである。中間層(B−1)の厚みがこのような範囲にあれば、前記 中間層(B−1)の有する性質が充分に生かされた多層フィルムを得ることができる。
【0120】
[下部層(C)]
前記下部層(C)は、エチレン重合体および/またはプロピレン重合体を含んでなり、好ましくは、下記組成物(c1)または下記組成物(c2)からなる。
【0121】
下部層(C)は、特に、多層フィルムの低温耐衝撃性に寄与する。
【0122】
前記エチレン重合体は、該重合体中の主要構成単位がエチレン単位である重合体である。前記エチレン重合体としては、好ましくは、エチレンホモポリマー、および少量たとえば10モル%以下、好ましくは5モル%以下の炭素数3〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位を含むエチレン・α−オレフィンランダム共重合体が挙げられる。
【0123】
前記プロピレン重合体は、該重合体中の主要構成単位がプロピレン単位である重合体である。前記プロピレン重合体としては、プロピレンホモポリマー、および少量たとえば10モル%以下、好ましくは5モル%以下の炭素数2または4〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位を含むプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体が挙げられる。
【0124】
{組成物(c1)}
組成物(c1)は、前記プロピレン重合体(p1)5〜30重量%、好ましくは5〜25重量%、さらに好ましくは10〜20重量%と、
前記プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)45〜70重量%と、
前記エチレン系エラストマー20〜50重量%、好ましくは20〜45重量%、さらに好ましくは25〜40重量%(但し、プロピレン重合体(p1)、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)およびエチレン系エラストマーの配合量の和は100重量%である)と
を含む組成物である。
【0125】
前記下部層(C)が、組成物(c1)からなると、本発明の多層フィルムは特に、耐熱性および透明性等に優れる。
【0126】
前記プロピレン重合体(p1)、前記プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(r1)および前記エチレン系エラストマーの詳細は、上述のとおりである。
【0127】
前記組成物(c1)の調製方法は、前記組成物(a1)と同様であり、前記組成物(c1)には、前記組成物(a1)に配合され得る添加剤と同様の添加剤を配合してもよい。
【0128】
{組成物(c2)}
組成物(c2)は、密度が0.916〜0.940g/cm3の範囲にある直鎖状ポリエチレン25〜60重量%、好ましくは25〜50重量%と、
密度が0.950〜0.970g/cm3の範囲にある高密度ポリエチレン10〜30重量%、好ましくは13〜28重量%、さらに好ましくは15〜25重量%と、
密度が0.900〜0.910g/cm3の範囲にある、シングルサイト触媒で重合された直鎖状ポリエチレン20〜45重量%、好ましくは25〜45重量%、さらに好ましくは30〜45重量%(但し、直鎖状ポリエチレン、高密度ポリエチレンおよびシングルサイト触媒で重合された直鎖状ポリエチレンの配合量の和は100重量%である)と
を含む組成物である。
【0129】
前記下部層(C)が、組成物(c2)を含んでなると、本発明の多層フィルムは特に、低温耐衝撃性等に優れる。
【0130】
前記直鎖状ポリエチレンは、密度が0.916〜0.940g/cm3、好ましくは0.918〜0.940g/cm3、さらに好ましくは0.920〜0.940g/cm3の範囲にある。
【0131】
このような直鎖状ポリエチレンとしては、例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体が挙げられる。
【0132】
エチレン−α−オレフィン共重合体におけるα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセンおよび1−ドデセンなどの炭素数3〜12のα−オレフィンが挙げられる。これらα−オレフィンは、1種単独で用いてもよく、または2種以上を混合して用いてもよい。また、α−オレフィンは、上記例示のなかでも、好ましくは、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテンであり、さらに好ましくは、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンである。エチレン−α−オレフィン共重合体中のα−オレフィンの含有割合は、エチレン−α−オレフィン共重合体に要求される密度に合わせて適宜設定される。
【0133】
このような直鎖状ポリエチレンは、チーグラー・ナッタ型重合触媒等のオレフィン立体規則性重合触媒を用い、エチレンとα−オレフィンとを共重合することによって製造することができる。
【0134】
この直鎖状ポリエチレンは、1種単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0135】
直鎖状ポリエチレンとしては、従来公知の直鎖状ポリエチレンを用いることができる。
【0136】
前記高密度ポリエチレンは、密度が0.950〜0.970g/cm3、好ましくは0.953〜0.968g/cm3、さらに好ましくは0.955〜0.965g/cm3の範囲にある。
【0137】
このような高密度ポリエチレンは、既知のチーグラー・ナッタ型重合触媒を用い、エチレンとα−オレフィンとを共重合することによって製造することができる。
【0138】
この高密度ポリエチレンは、1種単独でも2種以上の混合物であってもよい。
【0139】
高密度ポリエチレンとしては、従来公知の高密度ポリエチレンを用いることができる。また、高密度ポリエチレンは、前記エチレン重合体(e1)と同じ化合物であってもよい。
【0140】
前記シングルサイト触媒で重合された直鎖状ポリエチレンは、密度が0.900〜0.910g/cm3、好ましくは0.901〜0.909g/cm3、さらに好ましくは0.902〜0.908g/cm3の範囲にある。
【0141】
このようなシングルサイト触媒で重合された直鎖状ポリエチレンは、具体的には、前記と同様のメタロセン触媒等のシングルサイト触媒を用い、エチレンとα−オレフィンとを共重合することによって製造することができる。
【0142】
このシングルサイト触媒で重合された直鎖状ポリエチレンは、1種単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0143】
シングルサイト触媒で重合された直鎖状ポリエチレンとしては、従来公知のシングルサイト触媒で重合された直鎖状ポリエチレンを用いることができる。
【0144】
前記組成物(c2)の調製方法は、前記組成物(a1)と同様であり、前記組成物(c2)には、前記組成物(a1)に配合され得る添加剤と同様の添加剤を配合してもよい。
【0145】
下部層(C)の厚みは、特に制限されないが、多層フィルムの総厚さの5〜20%であることが好ましく、本発明の多層フィルムを薬液バッグ等のバッグに用いる場合であれば好ましくは10〜40μm、さらに好ましくは15〜35μmである。下部層(C)の厚みがこのような範囲にあれば、前記下部層(C)の有する性質が充分に生かされた多層フィルムを得ることができる。
【0146】
本願の多層フィルムは、各層の材料として上記の材料を用いる点を除けば従来公知の方法、例えば、水冷式または空冷式共押出しインフレーション法、共押出しTダイ法、ドライラミネーション法および押出しラミネーション法により製造することができる。これらの方法の中でも、とりわけ、透明性、製造時の経済性および多層フィルムの衛生性などの観点から、水冷共押出しインフレーション法および共押出しTダイ法が好ましい。
【0147】
上記のいずれの方法においても、多層フィルムの製造は、各層を形成する樹脂が溶融する温度以上で実施する必要があるが、製造温度が高過ぎると、樹脂の一部が熱分解して、分解生成物による性能の低下を生じるおそれがある。それゆえ、上記多層フィルムの製造温度は、これに限定されないが、好ましくは、150〜250℃、より好ましくは、170〜200℃である。
【0148】
≪バッグ≫
本発明のバッグは、前記多層フィルムから形成され、収容物に接する面に前記下部層(C)が配置されたことを特徴とする。前記の多層フィルムは、透明性、柔軟性、耐熱性、機械的強度および低温衝撃性などの特性に優れている。そのため、該多層フィルムから得られるバッグは、透明性、柔軟性、耐熱性、機械的強度および低温衝撃性などの特性に優れている。特に本発明のバッグは、耐熱性に優れていることから、高温(121℃)での滅菌処理が可能であり、高温での滅菌処理後においても、しわの発生や透明性の低下が起こりにくく、適度な柔軟性や良好な透明性を維持することができるため、薬液バッグとして好適に用いられる。さらに、本発明のバッグは、低温耐衝撃性に優れるため、低温環境での使用や、低温環境での輸送に十分耐えうる。
【0149】
前記バッグは、2枚の本発明の多層フィルムの下部層(C)同士を重ね合わせ、その周縁部を加熱圧着することによって製造することができる。
【0150】
また、例えば、多層フィルムを、その下部層(C)が収容物に接する面となるように、インフレーション法によって袋状に形成し、こうして得られた袋状の本発明の多層フィルムの周縁部を加熱圧着することによっても形成することができる。
【0151】
加熱圧着の条件は、特に限定されないが、例えば、総厚さ180〜280μmの多層フィルムを用いる場合、温度は、好ましくは、130〜200℃、さらに好ましくは、150〜180℃であり、圧力は、好ましくは、0.1〜0.8MPa、さらに好ましくは、0.15〜0.5MPaである。さらに、この場合において、加圧時間は、好ましくは、1〜5秒、さらに好ましくは、1.5〜3秒である。
【0152】
なお、バッグ内部に収容されている薬液を、バッグ外部へ流出させ、または、バッグ外部からバッグ内部へと薬液を流入させるための部材として、筒状部材が配置されていてもよい。
【0153】
バッグを滅菌する方法は、従来行われている方法でよく、例えば、バッグ内部に薬液、その他の収容物を収容し、密閉した後に、バッグを滅菌処理する。
【0154】
滅菌処理方法は、特に限定されず、例えば、高圧蒸気滅菌、熱水シャワー滅菌等の、公知の加熱滅菌方法を採用することができる。
【0155】
これら加熱滅菌処理における滅菌処理温度は、一般に、105〜110℃程度であるが、薬液の種類、用法、使用環境などに合わせて、滅菌処理温度を118〜121℃に設定することもできる。
【0156】
なお、本発明において、融点は、示差走査熱量測定(DSC)で得られるDSC曲線の融解ピークの頂点の温度(ピークが複数ある場合は、その高さが一番高いピークの温度):融解ピーク温度Tpm(℃)をいう(以下同じ)。
【0157】
本発明における重合体の融点は、具体的には、以下の方法により測定された場合の融点である。
【0158】
まず、重合体のペレット約1gを調製する。なお、複数の重合体からなる混合物の融点を測定する場合、各重合体が適正な比率で混合された物を樹脂温度200℃に加熱して一軸押出し機で混練し、直径約2mmのストランド状に押出して水道水で冷却し、ペレット状にカッティングすることによりペレット状のサンプルを調製する。
【0159】
次いで、ペレット状サンプルを100μmのテフロン(登録商標)シートで挟み、シートで挟まれたペレット状サンプルを200℃の雰囲気で2分間放置後、10秒間200℃でプレスする。これにより溶けたサンプルを、0.1〜0.5mmの厚さになるように、水道水で冷却されている金属板を用いて直ぐに挟んで1分間冷却する。冷却後、当該サンプルをかみそりで切り出し、約5mgの測定試料を秤量する。
【0160】
切り出された測定試料をアルミパンに詰め、500℃/分の加熱速度で、30℃から200℃まで昇温し、200℃で10分間保持する。その後、10℃/分の速度で30℃まで降温し、30℃で1分保持した後、10℃/分の速度で、200℃まで昇温する際の吸熱曲線よりDSC融点を求める。
【0161】
本発明における重合体の密度は、具体的には、以下の方法により測定された場合の密度である。
【0162】
まず、試料の重合体または重合体の混合物を、190℃に設定されたメルトインデクサーに投入し、6分間保持し、MFRが1g/10min以上の場合は、荷重2.16kg、MFRが0.1〜1g/10minの場合は、荷重5kgでストランドを採取する。ストランドは、金属板の上に直接落とし急冷する。採取したストランドを沸騰水の中で30分アニールし、そのまま1時間かけて室温30℃まで冷却する。その後、ストランドを取り出し、2〜3mmの長さに切り出す。そして、切り出されたストランドを密度勾配管に投入し、1時間後のサンプル静止位置で密度を決定する。
【0163】
本発明における重合体の分子量分布(Mw/Mn、Mn:数平均分子量、Mw:重量平均分子量、ポリスチレン換算)は、具体的には、以下の条件で測定された場合の分子量分布である。
【0164】
測定装置としては、Waters社製ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC−2000型を用い、以下のようにして測定する。分離カラムは、TSKgel GNH6−HTを2本およびTSKgel GNH6−HTLを2本であり、カラムサイズはいずれも直径7.5mm、長さ300mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo−ジクロロベンゼンおよび酸化防止剤としてBHT0.025重量%を用い、1.0ml/分で移動させ、試料濃度は15mg/10mLとし、試料注入量は500マイクロリットルとし、検出器として示差屈折計を用いる。分子量がMw<1000およびMw>4×106については東ソー社製の標準ポリスチレンを用いて測定した値を採用し、1000≦Mw≦4×106についてはプレッシャーケミカル社製の標準ポリスチレンを用いて測定した値を採用する。
【実施例】
【0165】
本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
【0166】
下記の実施例および比較例における多層フィルムの形成材料について、その商品名と、性状などを以下に示す。
【0167】
・プロピレン重合体1:(株)プライムポリマー製 J103WA、融点Tm165℃、メルトフローレート4g/10分(230℃)、重合体(p1)
・プロピレン重合体2:(株)プライムポリマー製 J105、融点Tm165℃、メルトフローレート14g/10分(230℃)、重合体(p1)
【0168】
・プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体1:(株)プライムポリマー製 F327、融点Tm137℃
・プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体2:(株)プライムポリマー製 B242WC、融点Tm142℃、重合体(r2)
・プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体3:(株)プライムポリマー製 B205、融点Tm158℃
【0169】
ジフェニルメチレン(3−t−ブチルー5メチルシクロペンタジエニル)(2,7−ジーt−ブチルフルオレニル)ジルコニウムクロリドとメチルアルミノキサンを組み合わせたメタロセン触媒の存在下、公知の方法(たとえば特開2006−52313参照)でプロピレンとエチレンを共重合させて下記のプロピレンα−オレフィンランダム共重合体を得た。エチレンの使用量を変化させた以外は同様の方法でプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体4〜7を得た。
【0170】
・プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体4:融点Tm115℃、分子量分布2.7、MFR=9.4g/10分、重合体(r1)
・プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体5:融点Tm115℃、分子量分布2.7、MFR=2.9g/10分、重合体(r1)
・プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体6::融点Tm134℃、MFR=10g/10分
・プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体7::融点Tm129℃、MFR=3.4g/10分
【0171】
・エチレン重合体1:三井化学(株)製 4020B、密度0.937g/cm3、メルトフローレート2.0g/10分(230℃)
・エチレン重合体2:三井化学(株)製 1700J、密度0.967g/cm3、メルトフローレート15g/10分(230℃)
・エチレン重合体3:三井化学(株)製 SP0510B、密度0.905g/cm3、メルトフローレート1.5g/10分(230℃)
・エチレン重合体4:三井化学(株)製 2010BM、密度0.918g/cm3、メルトフローレート2.0g/10分(230℃)
・エチレン重合体5:三井化学(株)製 65150B、密度0.959g/cm3、メルトフローレート17g/10分(190℃)
・エチレン重合体6:宇部丸善ポリエチレン製 B128、密度0.928g/cm3、メルトフローレート1.0g/10分(190℃)
【0172】
・プロピレン系エラストマー:PN3050(三井化学(株)製)
・エチレン系エラストマー:A0585X(三井化学(株)製)
【0173】
<多層フィルムおよびバッグの製造>
[実施例1]
上部層、中間層および下部層がこの順で積層された総厚み240μmの多層フィルムを、水冷インフレ法により製造した。各層の形成材料を、下記の表1に示す。表1中の数値は、各層の構成材料の配合割合(重量%)を示す。
【0174】
次いで、得られた多層フィルム2枚を、それぞれの下部層が対向するように重ね合わせてその周縁部をシールすることにより、最大収容量を約500mLのバッグを製造した。シール条件は、160℃、2秒間とした。
【0175】
[実施例2〜9、比較例1〜3および参考例1,2]
多層フィルムの各層の形成材料および配合量を、下記の表1に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、多層フィルムおよびバッグを製造した。
【0176】
【表1】
【0177】
[実施例10]
上部層、中間層(B)、中間層(B−1)、中間層(B)および下部層がこの順で積層された総厚み240μmの多層フィルムを、水冷インフレ法により製造した。各層の形成材料を、下記の表に示す。表中の数値は、各層の構成材料の配合割合(重量%)を示す。
【0178】
次いで、得られた多層フィルム2枚を、それぞれの下部層が対向するように重ね合わせてその周縁部をシールすることにより、最大収容量を約500mLのバッグを製造した。シール条件は、160℃、2秒間とした。
【0179】
[実施例11〜14、比較例4および参考例4、6〜8]
多層フィルムの各層の形成材料および配合量を、下記の表2に示すとおりに変更したこと以外は、実施例10と同様にして、多層フィルムを製造した。
【0180】
【表2】
【0181】
<特性評価>
上記実施例1〜14、比較例1〜4および参考例1、2、4、6〜8で得られた多層フィルムおよびバッグについて、下記の特性を評価した。
【0182】
(1)透明性
上記実施例1〜14、比較例1〜4および参考例1、2、4、6〜8で得られたバッグを用意し、121℃、20分間の高圧蒸気滅菌処理を施した。
【0183】
次いで、高圧蒸気滅菌処理を施したバッグについて、バッグを形成する多層フィルムを切り取り、こうして得られた測定用サンプルについて、波長450nmにおける水中での光透過率を測定した。測定用サンプルは、3個のバッグから各6個(合計18個)作製した。測定結果は、測定用サンプル18個の測定値の平均値である。
【0184】
(2)落板強度
上記実施例1〜14、比較例1〜4および参考例1、2、4、6〜8で得られた多層フィルム各2枚を用い、それぞれ幅130mm、長さ250mmの四方袋(上記多層フィルムの四方に、シール幅5mmの周縁部を形成したもの。)をサンプルとして作製した。上記四方袋の内部には、約500mLの蒸留水を充填した。
【0186】
(3)低温耐衝撃性
上記実施例1〜14、比較例1〜4および参考例1、2、4、6〜8で得られた多層フィルムのそれぞれについて、前記多層フィルムから形成された薬液バッグ(500mL)を、0℃の氷水に5時間以上漬けておき、十分冷えた状態で取り出した。次いで、該バッグを鉄板の上に置き、その上から6.8kgの金属板(大きさ約37cm×37cm、厚さ0.5cm)を、金属板の面が該バッグの面に接触するように並行に落下させた。鉄板の落下位置を適宜変更して、バッグが破袋する金属板の高さ(落下高)を測ることにより、落板強度を測定した。
【0187】
上記評価項目についての評価結果を、表3,4に示す。
【0188】
【表3】
【0189】
【表4】