(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
道路の舗装材料であるアスファルトやコンクリートを敷き均しするに際し、予め基準ラインを設定し、その基準ラインに沿って敷き均し面を所定の高さ方向位置に調節できる舗装材料の敷き均し方法において、
敷き均しを行う敷き均し機器(2)と、その敷き均し機器(2)の高さ方向位置を変更するための高さ位置変更装置(4)と、前記基準ライン(SL)を撮影するカメラ(8)と、そのカメラ(8)で撮影された映像データを解析して基準ライン(SL)の高さ方向位置の実測値を決定する処理ユニット(9)と、その処理ユニット(9)で求めた基準ライン(SL)の高さ方向位置の実測値と目標値とから前記高さ位置変更装置(4)を制御する制御装置(5)、とを有する敷き均し機械を用い、
敷き均しをする道路の縁部に存在する壁面に連続した直線の基準ライン(SL)を描き、
連続した直線の基準ラインを前記カメラ(8)で撮影し(S1)、
制御サイクル毎に、連続した直線の基準ライン(SL)とカメラ(8)との距離を取得し(S2)、
前記カメラ(8)で撮影した画像データを前記処理ユニット(9)に送り、基準ライン(SL)をカメラ(8)で撮影した各フレーム(F)について各ピクセル毎のR値、B値、G値を用いて、前記基準ライン(SL)の高さ方向位置の実測値を決定し(S3)、
前記取得された基準ライン(SL)の高さ方向位置の実測値と基準ライン(SL)の高さ方向位置の目標値とを比較し、そして目標値と実測値との差分を求め(S4)、
その差分に基づいて前記高さ位置変更装置(4)を制御することを特徴とする舗装材料の敷き均し方法。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
最初に、
図1〜
図6を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
ここで、第1実施形態は、道路の舗装材料の敷き均し機械(アスファルトフィニッシャ)であって、浮動スクリード方式を採用している機械に対して、本発明を適用している。
第1実施形態では、垂直方向位置(高さ方向位置:レベル)を決定するべきラインは蛍光ピンク色をしている。そして、垂直方向位置(高さ方向位置:レベル)を決定するべきラインの高さを測定する制御の原理として、
図6で示す様なヒストグラムの特徴を利用している。
【0031】
図1において、第1実施形態に係るアスファルトフィニッシャは全体が符号101で示されており、走行車両の後部に設けられている。
図1のアスファルトフィニッシャ101は、浮動スクリード方式となっている。浮動スクリード方式とすることにより、走行面の凸凹の影響を受け難く、任意の敷き均し厚が得られるためである。
図1において、アスファルトフィニッシャ101は、車両本体1と、スクリード2と、スクリード2を車両本体1に支持するサイドアーム3と、スクリード2の高さを変動するレベリングシリンダ4と、レベリングシリンダ4の作動を制御するシリンダコントロールユニット5と、取付ブラケット6で車両本体1に固定されたカメラ8と、カメラ8で撮影したデータを処理する処理ユニット9とを有している。そして、シリンダコントロールユニット5と処理ユニット9とは、情報伝達可能に構成されている。
【0032】
図1において、舗装材料であるアスファルトAは、ダンプトラック200からアスファルトフィニッシャ101内に供給される。
供給されたアスファルトAは、アスファルトフィニッシャ101内に設けられた図示しないコンベア装置により、スクリード2前方(
図1では左方)で道路上に供給され、スクリード2により敷き均される。
図1において、符号αは、スクリード2の下面2bがアスファルト表面Faと形成する作業角(アタックアングル)である。
【0033】
アスファルトの敷き均し面の高さは、
図1において符号SLで示すラインを基準にして決定されている。換言すれば、アスファルトの敷き均し面は、ラインSLから一定距離を隔てるように決定されている。
アスファルトを敷き均すべき路面の縁部には、例えば、
図1では図示しない壁面が存在し、当該図示しない壁面に基準ラインSLが描かれている。
図では明示されてはいないが、ラインSLは蛍光ピンク色であり、図示しない壁面上に、各種筆記具や専用の線引き機器によって描かれている。
なお、
図1において、基準ラインSLを描いた壁面を表示していないのは、図面の簡略化のためである。
【0034】
図4〜
図6を参照して後述するように、カメラ8で撮影されたラインSLのデータに基づいて、処理ユニット9において、ラインSLの高さ方向位置(垂直方向位置)の実測値を求めることが出来る。
シリンダコントロールユニット5は、情報的に接続されている処理ユニット9に対して、ラインSLの高さ方向位置の実測値を要求する信号を出力する。ラインSLの高さ方向位置の実測値は、スクリード2の高さの制御に必要なデータだからである。
【0035】
シリンダコントロールユニット5から処理ユニット9に対して(ラインSLの高さ方向位置の)実測値を要求する信号が出力されたならば、処理ユニット9から、シリンダコントロールユニット5に対して、ラインSLの高さ方向位置の実測値のデータが出力される。
ラインSLの高さ方向位置の実測値を受信したシリンダコントロールユニット5は、ラインSLの目標値と、処理ユニット9から出力されたラインSLの高さ方向位置の実測値との偏差を求め、当該偏差が縮小するように、レベリングシリンダ4を伸縮制御する。
【0036】
図1で示す様な浮動スクリード2において、例えば、車両本体1がマンホール等の段差(凸部)を通過する場合等、アスファルト敷き均し厚さを薄く(少なく)するべき場合には、作業角αを小さくする。
一方、アスファルト敷き均し厚さを厚く(多く)するべき場合には、作業角αを大きくする。
そして、作業角αを増減するために、レベリングシリンダ4を伸縮制御する。すなわち、アスファルト敷き均し厚さを薄く(少なく)するべき場合には、カメラ8の位置が低くなる様にレベリングシリンダ4を伸長し、アスファルト敷き均し厚さを厚く(多く)するべき場合には、カメラ8の位置が高くなる様にレベリングシリンダ4を収縮させる。
【0037】
換言すれば、第1実施形態が適用されるアスファルトフィニッシャ101では、レベリングシリンダ4の収縮を制御して、アスファルトを敷き均すべき路面の凹凸とは無関係に、アスファルト敷き均し面が基準ラインSLと平行となり、且つ、基準ラインSLと一定の高さ方向寸法を隔てる様に、アスファルトが敷き均される。
ここで、レベリングシリンダ4を伸縮して作業角αを増減すること、作業角αを増減してアスファルト敷き均し厚さを増減することについては、既存のアスファルトフィニッシャも同様である。しかし、第1実施形態は、基準ラインSLの実測値を求める構成において、従来技術とは大きく異なっているのである。
【0038】
図2を参照して、係るレベリングシリンダ4の伸縮制御について説明する。
上述した様に、アスファルトを敷き均すべき路面の縁部には、図示しない壁面が存在し、当該壁面に、基準ラインSLが描かれている。
図2において、先ず、ステップS1では、基準ラインSL(或いは、基準ラインSLが描かれている図示しない壁面)が、カメラ8により撮影される。
その際に、基準ラインSL(或いは、基準ラインSLが描かれている図示しない壁面)とカメラ8との距離が取得される(ステップS2)。
ここで、基準ラインSLとカメラ8との距離は、公知の技術を用いて計測することが可能であり、例えば、赤外線の反射を利用して求められる。その際には、いわゆる「PSDセンサ」を用いても良い。
【0039】
ステップS1において、カメラ8が基準ラインSLを撮影したならば、その撮影した画像データは、1フレーム(例えば、640ピクセル×480ピクセル)毎に、所定のプロトコルに従って、処理ユニット9へ送られる(
図5参照)。
処理ユニット9では、カメラ8で撮影された画像データに基づいて、基準ラインSLの高さの実測値を取得する(ステップS3)。
基準ラインSLの高さ方向位置の実測値のデータを取得する詳細については、
図3〜
図6を参照して後述する。
【0040】
ステップS4では、ステップS3で取得された基準ラインSLの高さ方向位置の実測値と、基準ラインSLの高さ方向位置の目標値とを比較する。そして、基準ラインSLの高さ方向位置における偏差(目標値と実測値との差分)を求める。
ステップS4で求められた偏差に基づいて、ステップS5では、レベリングシリンダ4の伸縮制御を行なう。
【0041】
基準ラインSLの高さ方向位置の実測値が目標値よりも高い位置にある場合には、基準ラインSLの高さ方向位置を低くするため、アスファルト敷き均し厚さを薄く(少なく)する(作業角αを小さくする)様に、偏差に対応してレベリングシリンダ4を伸長する。
一方、基準ラインSLの高さ方向位置の実測値が目標値よりも低い位置にある場合には、基準ラインSLの高さ方向位置を高くするため、アスファルト敷き均し厚さを厚く(多く)する(作業角αを大きくする)様に、偏差に対応してレベリングシリンダ4を収縮させる。
【0042】
なお、基準ラインSLの高さ方向位置における偏差とレベリングシリンダ4の伸縮量との関係は、ケース・バイ・ケースで定められる。
換言すれば、基準ラインSLの高さ方向位置における偏差とレベリングシリンダ伸縮量との関係は、アスファルトの敷き均しに先立って決定しておくべきである。
【0043】
ステップS6では、アスファルト敷き均し作業が終了したか否かを判断する。作業が終了したならば(ステップS6がYes)、制御を終了する。
一方、作業を続行するのであれば(ステップS6がNo)、ステップS7に進み、所定の制御サイクルが経過するまで制御を待機する(ステップS7のループ)。そして、所定の制御サイクルが経過したならば(ステップS7がYes)、ステップS1に戻り、ステップS1以下を繰り返す。
ここで、所定の制御サイクルとは、カメラ9による撮影のインターバルであり、例えば、1/30秒である。
なお、
図1、
図2では、いわゆる「浮動スクリード方式」のアスファルトフィニッシャ101について図説している。
【0044】
図示はされていないが、カメラ8の周囲に補助照明として、例えば複数のLEDライトを配置することが出来る。
係る補助照明を配置すれば、基準ラインSLが描かれた壁面(図示せず)に暗い部分(影)が出来たとしても、当該影の部分を補助照明で照射することにより、カメラ8は基準ラインSLを明瞭に撮影することが出来る。
それにより、
図3〜
図6で後述する態様や、第3実施形態〜第5実施形態においても、暗い部分に存在する基準ラインSLの高さ方向位置の実測値を、容易且つ正確に求めることが可能になる。
【0045】
次に、
図3〜
図6を参照して、カメラ8で撮影したデータから、ピンク蛍光色に彩色されているラインSLの高さ方向位置の実測値を求める態様(
図2のステップS3の処理)を説明する。
図3において、全体を符号9で示す処理ユニット(
図3において、破線で示すブロック)は、演算ブロック11、総和ブロック12、平均化ブロック13、比較ブロック14、記憶手段15、決定ブロック16、移動平均ブロック17、距離決定ブロック18、距離補正ブロック19、高さ情報信号発生ブロック20およびインターフェース21を備えている。
なお、
図3のカメラ8と演算ブロック11との間にも図示しないインターフェースが設けられているが、簡略化のため、当該インターフェースの図示は省略してある。
【0046】
図5をも参照して説明すると、演算ブロック11は、カメラ8で撮影された各フレームFについて、フレームFの横方向の1本のライン(例えば、
図5のL1〜L480)における各ピクセル(画素P)毎に、R値(当該ピクセルにおける赤色の値)、G値(当該ピクセルにおける緑色の値)、B値(当該ピクセルにおける青色の値)を読み取り、各ピクセル(画素P)毎に「(R−G)+(B−G)」(後述する式1)の結果(値)を演算する。
演算ブロック11で、「(R−G)+(B−G)」の演算を行う理由については、
図4を参照して、後述する。
ここで、前記横方向の1本のラインについて、図示の例では、640ピクセルずつ存在する。
【0047】
総和ブロック12は、横方向の1本のライン(
図5のL1〜L480)について、演算ブロック11で求めた各ピクセル(画素P)毎の「(R−G)+(B−G)」(式1)の値を積算して、当該横方向の1本のラインにおける全ピクセルの「(R−G)+(B−G)」値の総和を演算する。
平均化ブロック13は、総和ブロック12で求めた総和を横方向の1本のラインにおけるピクセル数(画素数:640)で除算して、「(R−G)+(B−G)」の各ピクセル毎の平均値を演算する。
ここで、平均化ブロック13は、省略することが可能である。
【0048】
比較ブロック14は、その時点で比較判断の対象となっている横方向の1本のライン(現ライン)の「(R−G)+(B−G)」の総和と、記憶された以前の(現ラインよりも以前に比較判断された)ラインの「(R−G)+(B−G)」の総和とを比較する。
或いは、比較ブロック14は、現ラインの「(R−G)+(B−G)」の総和の平均値と、記憶された以前の(現ラインの直近の)ラインの「(R−G)+(B−G)」の総和の平均値とを比較する。
比較ブロック14は、現ラインにおける「(R−G)+(B−G)」の総和或いは平均値が、以前に比較判断されたラインにおける総和或いは平均値よりも大きな場合は、当該現ラインの「(R−G)+(B−G)」の総和或いは平均値及び現ラインのライン番号を記憶手段15(例えば、メモリ装置やデータベース)に送る。
【0049】
記憶手段15では、比較ブロック14から送られたデータ、すなわち現ラインの「(R−G)+(B−G)」の総和或いは平均値及び現ラインのライン番号を記憶する。その際に、現ラインの「(R−G)+(B−G)」の総和或いは平均値及び現ラインのライン番号は、以前に比較判断されたラインにおける「(R−G)+(B−G)」の総和或いは平均値及びライン番号に上書きされ、以って、比較判断されたラインにおける「(R−G)+(B−G)」の総和或いは平均値のデータと、ライン番号のデータとが更新される。
【0050】
決定ブロック16は、フレーム信号を受信して、処理中のフレームFにおける処理終了の判定を行う。そして、撮影されたフレームF全体にわたって演算が終了したならば、換言すれば、横方向の全てのライン(L1〜L480)について比較ブロック14で比較判断が行なわれたならば、「(R−G)+(B−G)」の総和或いは平均値が最大となった横方向の1本ラインにおける位置或いは高さを特定(決定)する。具体的には、「(R−G)+(B−G)」の総和或いは平均値が最大となった横方向の1本ラインのライン番号(L1〜L480の何れか1つ)を決定する。
決定された横方向の1本ラインのライン番号は、「(R−G)+(B−G)」の総和或いは平均値が最大となった横方向の1本ラインの高さ方向位置と直接対応しており、当該ライン番号を決定すれば、基準ラインSLの高さ方向位置の実測値が決定される。
なお、フレームFにおける「(R−G)+(B−G)」の総和或いは平均値の最大値は、
図6で示すヒストグラムにおけるピーク値に相当する。
【0051】
移動平均ブロック17は、その時点で処理されているフレームF(現フレームF)における基準ラインSLの高さ方向位置の実測値と、先行するフレームF、すなわち、既に撮影されて処理がされたフレームFにおける基準ラインSLの高さ方向位置の実測値との移動平均値を求める。すなわち、移動平均ブロック17は、複数のフレームにおける基準ラインSLの高さ方向位置の実測値の移動平均値を求めている。
移動平均ブロック17で基準ラインSLの高さ方向位置の実測値の移動平均値を求めることにより、例えば、壁面に描かれた基準ラインSLが途中で途切れたとしても、基準ラインSLが途切れる直前に撮影されたフレームFにおける解析結果と、基準ラインSLが存在しているフレームの解析結果とを平均化して、その平均値を以って、基準ラインSLが途切れている領域における基準ラインSLの高さ方向位置の実測値に決定することが可能となる。
【0052】
距離決定ブロック18は、カメラ8と基準線SLが引かれた壁との間の距離を、例えば赤外線の反射を利用して算出する。この距離決定ブロック18としては、公知・市販の装置を適用することが可能である。
距離補正ブロック19には、距離決定ブロック18で求めたカメラ8と壁との距離データが入力される。そして距離補正ブロック19は、カメラ8と壁との距離データに基づいて、決定ブロック16で決定された基準ラインSLの高さ方向位置の実測値を補正する機能を有している。カメラ8と壁との距離が異なれば、撮影されたフレームを処理して求められた基準ラインSLの高さ方向位置の実測値も異なってしまうからである。
【0053】
高さ情報信号発生ブロック20は、シリンダコントロールユニット5からの高さ情報要求信号に応答して、距離補正ブロック20で決定した正確な高さ情報を、インターフェース21を介してシリンダコントロールユニット5に対して出力する。
なお、
図3で示す各ブロック間におけるデータの授受については、
図4を参照して後述する。
【0054】
次に、
図4により、
図5、
図6をも参照しつつ、基準ラインSLの高さ方向位置の測定値を決定する制御について、説明する。
図4において、ステップS11で、カメラ8で1フレームFを撮影する。カメラ8で撮影したフレームFが、
図5で模式的に示されている。
カメラ8でフレームFを撮影したならば、
図4のステップS12に進む。
【0055】
図5で示すフレームFにおいて、符号SLは、その位置を把握して高さ方向位置(垂直方向位置)を決定するべき蛍光ピンク色のラインを示している。
図5では、フレームF中に、横方向のラインL1、L2、L3〜L480が示されている。
ここで、横方向のラインL1、L2、L3〜L480は、フレームFに撮影されているものではない。ラインL1、L2、L3〜L480は、第1実施形態において、フレームFのデータを処理して、基準ラインSLの高さ方向位置の実測値を決定する制御を、
図5を参照して説明し易くするための仮想線である。
【0056】
図5を参照して説明すると、
図4のステップS12では、先ず、フレームFの最上方における横方向のラインL1を特定する。そして、最上方のラインL1に存在するピクセルPについて、ヒストグラム作成のための処理(後述の式1による演算)を実行する。
そして、ステップS13に進む。
【0057】
ここで第1実施形態では、カメラ8のデータ送信プロトコルは、フレームFの上方のラインL1の左端に位置するピクセルP(L1、1)から処理ユニット9へ送信を開始して、
図5の下方のラインL480の右端に位置するピクセルP(L480、640)に至るまで、すなわち、フレームFの上方左端から下方右端へ向かって、順次、フレームFの画像データを送信している。
そして、
図4で示す制御は、カメラ8から送信されたデータ毎に処理を進行しているので、カメラ8からのデータ送信が、フレームFの上側から下側の順に行われていれば、画像データの処理もフレームFの上側から下側の順に進行する。
【0058】
しかし、カメラ8のデータ送信プロトコルによっては、フレームFの下方の画像データから、上方の画像データの順に、処理ユニット9へ画像データを送信する場合もある。
その場合には、
図4で示す制御では、フレームFの下側から上側に向かって画像データの処理が進行する。
図4のステップS12において、「最上方(最下方)」と記載されているのは、第1実施形態の説明としては、フレームFの上から下に向かって処理を進めるが、下から上に処理を行う場合も有り得る旨を表現している。
【0059】
図5で示すフレームFでは、横方向は640ピクセル、縦方向は480ピクセル、合計で640×480=307200ピクセルから構成されている。しかし、フレームFの画素数(ピクセル数)は、これに限定されるものではない。
【0060】
図4のステップS13では、フレームFの最上方のラインL1において、左端に位置しているピクセルP(L1,1)が特定される。そして、当該ピクセルP(L1,1)から処理を開始するべく、ステップS14に進む。
第1実施形態では、上述した様に、カメラ8のデータ送信プロトコルは、フレームFの上方左端から下方右端へ向かって、順次、フレームFの画像データを送信している。そのため、
図4で示す制御では、カメラ8から送信される順に画像データを処理しており、フレームFの左側から右側に向かって画像データの処理が進行する。
すなわち、
図4で示す制御では、
図5においてフレームFの左端に位置するピクセルから処理を開始して、右端に位置するピクセルに至るまで、すなわち、フレームFの左側から右側へ向かって、処理を進行させる。
【0061】
しかし、カメラ8のデータ送信プロトコルによっては、フレームFの右側の画像データから、左側の画像データの順に、処理ユニット9へ画像データを送信する場合もある。
その場合には、
図4で示す制御は、フレームFの右側から左側に向かって画像データの処理が進行する。
図4のステップS13において、「左端(右端)」と記載されているのは、第1実施形態の説明としては、フレームFの左側から右側に向かって処理を進めるが、カメラ8のプロトコルによっては、フレームFの右側から左側に処理を進めることも有り得ることを表現している。
【0062】
図4のステップS14では、ステップS13で特定されたピクセルP(L1,1)について、そのR値(当該ピクセルにおける赤色の値)、G値(当該ピクセルにおける緑色の値)、B値(当該ピクセルにおける青色の値)を用いて、演算ブロック11により、下式1の計算を行う。
(R−G)+(B−G) ・・・ (1)
検出するべきラインSLは蛍光ピンク色であり、発明者の研究により、蛍光ピンク色は特徴として、R値、B値が大きく(高く)、G値が小さい(低い)。式1を用いてヒストグラム(
図6参照)を作成すると、係る特徴が際立つ。
ここで、基準ラインSLを蛍光ピンク色以外の色彩であっても、上述したのとは異なる特徴があり、係る特徴によりヒストグラムにおいて明瞭なピークが観察できるのであれば、基準ラインSLは蛍光ピンク色以外の色彩であっても良く、その場合、演算ブロック11において、式1とは異なる演算(当該蛍光ピンク色以外の色彩のヒストグラム上の特徴が明瞭になるような数式)を実行する。
【0063】
式1の結果は、
図6のヒストグラムの縦軸の値となる。そして、
図6のヒストグラムを参照すれば明らかな様に、蛍光ピンク色の基準ラインSLの領域では、その他の領域に比較して、ピークが明確に現れている。
換言すれば、
図6のヒストグラムでは、R値、B値が大きく(高く)、G値が小さい(低い)という蛍光ピンク色の特徴が明瞭なピークとなって表現されており、当該特徴を際立たせている。そして、
図6のヒストグラムでは、基準ラインSLの位置が、ピークの位置或いは式1の演算結果の最大値として、明確に把握することが出来る。
そのため、演算ブロック11では式1の演算を行っている。
ステップS14の演算結果(式1の演算結果)は、総和ブロック12に送られる。
【0064】
式1の演算を行ったならば、ステップS15に進み、横方向の1つのラインにおける全てのピクセルPについて、式1で示す演算を行ったか否かが判断される。
ステップS15で判断するのが上述したラインL1であれば、ピクセル(L1、640)について、式1で示す演算を行ったか否かを判断する。例えば、ピクセルP(L1,1)、P(L1,2)、P(L1,3)について式1の演算を行った直後にステップS15の判断を行うと、「No」と判断される。
【0065】
ステップS15では「No」と判断された場合には、ステップS16に進み、1つ右側のピクセルPが指定される。
例えば、ステップS15で判断されたのがピクセルP(L1,1)であれば、ステップS16では、ピクセルP(L1,2)が処理(ステップS14)の対象になる。
そして、ステップS14〜S16を繰り返し、ラインL1の各ピクセルPについて、演算ブロック11で式1の演算が行われ、演算結果は総和ブロック12に送られる。
【0066】
ステップS14〜S16を繰り返し、ラインL1の右端のピクセル(L1,640)について、式1で示す演算が行なわれたならば、ステップS15では「Yes」と判断される。
ステップS15で「Yes」と判断されるとステップS17に進み、総和ブロック12において、ラインL1の全てのピクセルPにおける式1の演算結果の総和が演算される。
そしてステップS18において、平均化ブロック13により、ステップS17で求めた式1の演算結果の総和から、ラインL1の各ピクセルPの平均値を求める。
【0067】
ステップS17で横方向のライン(L1〜L480)の全域における式1の演算結果の総和を求め、ステップS18で式1の演算結果の平均値を求めるのは、光や細かい振動の影響、各種ノイズの影響等により異常値が生じた場合に、その影響を、最小限に留めるためである。
すなわち、総和或いは平均値を求めることにより、幾つかのピクセルPに光や細かい振動が作用し、各種ノイズが発生したとしても、係るノイズの影響(或いは、その結果として生じた式1の演算結果の異常値の影響)は、横方向のラインにおける640個のピクセルPにより、吸収されるのである。
【0068】
ここで、ステップS18を省略することが可能である。
ステップS18を省略する場合、
図3において上述した通り、平均化ブロック13も省略可能である。
式1の演算結果の総和を求めれば、ノイズ等に起因して発生した式1の演算結果の異常値の影響を緩和することが出来るからである。
【0069】
次に、ステップS19において、ステップS17で求められた式1の演算結果の総和、或いはステップS18で求めた式1の演算結果の平均値が、先行するライン(既に、ステップS14〜S21の処理が行われたライン)における総和或いは平均値よりも大きいか否かを判断する。
その時点で判断の対象となっている横方向の1本のライン(現ライン)における当該総和或いは平均値が先行するラインよりも大きい場合(ステップS19がYes)には、ステップS20に進む。
なお、ラインL1についてステップS19の判断を行う場合には、先行するラインが存在しないので、ステップS19では「Yes」と判断される。
【0070】
ステップS20では、当該ステップS19が「Yes」と判断されたライン(総和或いは平均値が先行するラインよりも大きい現ライン)の式1の演算結果の総和或いは平均値と、当該ライン(現ライン)のライン番号が、記憶手段15で記憶される。
換言すれば、ステップS19では、式1の演算結果の総和或いは平均値が、(当該フレームFにおいて)それまでで最大となる横方向の1本のラインのみが「Yes」と判定され、当該最大となる式1の演算結果の総和或いは平均値と、当該最大となる横方向の1本のラインにおけるライン番号が、記憶手段15に上書きされる。
【0071】
図3において、記憶手段15で「ピーク値」と表現されているのは、ステップS20で記憶される式1の演算結果の総和或いは平均値であり、(当該フレームFにおいて)それまでで最大となる横方向の1本のラインにおける式1の演算結果の総和或いは平均値である。
フレームFの全域(ラインL1〜L480の全て)についてステップS19の判断を行った場合に、ステップS20で記憶される式1の演算結果の総和或いは平均値は、フレームFにおける式1の演算結果の総和或いは平均値の最大値であり、当該最大値と、その最大値のラインのライン番号のみが、記憶手段15に記憶される。
【0072】
すなわち、ステップS14に関連して上述した通り、蛍光ピンク色の検出するべきラインSLに相当する位置のピクセルP(或いは横方向のライン)は、R値、B値が大きく、G値が小さいので、当然、式1の演算結果は大きくなる。
フレームFの全域についてステップS14〜S20の処理が終了したならば、ラインSL(或いはその中央)に相当する垂直方向位置のライン或いはピクセルPでは、式1の演算結果の総和或いは平均値はフレームF中で最大となり、ステップS20で記憶される。そして、蛍光ピンク色のラインSL(或いはその中央)に相当する横方向の1本のライン(ラインL1〜L480の何れか)の番号も、ステップS20で記憶される。
【0073】
ここで、ラインの番号は、ラインの高さ方向位置と一対一で対応しており、当該ラインの番号から、フレームFにおける高さ方向位置が直ちに求まる。
すなわち、フレームFの全域において、ステップS14〜S20の処理を完了した後に、記憶手段15に記憶されている式1の演算結果の総和或いは平均値は、当該フレームFにおける式1の演算結果の総和或いは平均値の最大値であり、
図6のヒストグラムにおけるピークに相当する。そして、係る最大値或いはピークの高さ方向位置が、当該フレームFにおける蛍光ピンク色の基準ラインSLの高さ方向位置の実測値である。そして、当該最大値或いはピークの高さ方向位置は、当該最大値に係る横方向の1本のラインのライン番号と対応している。
当該最大値に係る横方向の1本のラインのライン番号は、記憶手段15で記憶されており、当該ライン番号により、最大値或いはピークの高さ方向位置が決まり、当該フレームFにおける蛍光ピンク色の基準ラインSLの高さ方向位置の実測値が決定されるのである。
【0074】
ステップS19において、現ラインにおける式1の演算結果の総和或いは平均値が先行するライン以下であれば、当該総和或いは平均値とライン番号を記憶手段に記憶されずに(ステップS20をバイパスして)、ステップS21に進む。
ステップS21では、フレームFの全域(横方向のラインに着目すれば、フレームFの縦方向の全域)について、ステップS14〜S20の処理を完了したか否かを判断する。
例えば、ラインL1について処理している場合には、ステップS21は「No」と判断される。その場合には、ステップS22に進む。
【0075】
ステップS22では、一つ下側のラインを特定して、ステップS13以降を繰り返す。例えば、ラインL1の処理でステップS21が「No」と判断された場合には、ステップS22では、その下側のラインL2が指定される。
そしてステップS13に戻り、ラインL12の左端のピクセルP(L2,1)が指定される。
【0076】
ステップS13〜S22を繰り返し、フレームFの最下方のラインL480について、上述した処理が完了したならば、ステップS21では「Yes」と判断される。
ステップS21では「Yes」と判断されたならば、ステップS23に進み、記憶手段15に記憶されたライン番号(式1の演算結果の総和或いは平均値が最大である横方向の1本のラインにおけるライン番号:L1〜L480の何れか1本のライン番号)から、フレームFにおける基準ラインSLの高さ方向位置の実測値を求める。
【0077】
上述した通り、蛍光ピンク色のラインSLは、R値、B値が大きく、G値が小さいので、式1の演算結果も大きくなり、フレームFの全域についてステップS14〜S20の処理が終了したならば、ラインSLに相当する高さ方向位置のラインは、式1の演算結果の総和或いは平均値はフレームF中で最大となり、蛍光ピンク色のラインSLに相当する横方向の1本のライン(ラインL1〜L480の何れか)の番号が、記憶手段15に記憶されている(ステップS20)。
そして、ラインの番号は高さ方向位置と一対一で対応しており、記憶手段15に記憶されたラインの番号から、蛍光ピンク色のラインSLの高さ方向位置の実測値が直ちに求まる。
【0078】
次に、ステップS24では、ステップS23で実測値を求める以前のフレーム、すなわち、以前にカメラ8で撮影され、ラインSLの高さ方向位置が求められたフレームF(先行するフレーム)における蛍光ピンク色のラインSLの高さ方向位置の実測値を複数用意して、移動平均ブロック17により、ステップS23で求められた高さ方向位置の実測値との平均値(移動平均法による平均値)を演算する。
ステップS23で求められた高さ方向位置の実測値が、ノイズ、各種誤差、その他により、当該フレームにおけるラインSLの高さ方向位置の実測値が誤差を含んでいる場合に、当該誤差の悪影響を最小限にするためである。
上述した様に、例えば壁面に描かれた基準ラインSLが途中で途切れたとしても、基準ラインSLが途切れる直前に撮影されたフレームFにおける解析結果と、基準ラインSLが存在しているフレームの解析結果とを平均化して、その平均値を以って、基準ラインSLが途切れている領域における基準ラインSLの高さ方向位置の実測値に決定することが出来る。
そして、ステップS25に進む。
【0079】
ステップS25では、ピンク蛍光色のラインSLとカメラ8との距離(ピンク蛍光色が描かれた壁面とカメラ8との距離:距離決定ブロック18で決定)に基づいて、蛍光ピンク色のラインSLの高さ方向位置の実測値を補正する。
これにより、当該フレームFにおけるラインSLの高さ方向位置の実測値が確定する(ステップS26)。
【0080】
図1〜
図6の第1実施形態によれば、アスファルトフィニッシャ101により敷き均し作業を行うべき道路の壁面近傍に存在する壁面(
図1では図示せず)に描かれた蛍光ピンク色の基準ラインSLをカメラ8で撮影して、基準ラインSLの高さ方向位置の実測値を決定し、当該実測値と基準ラインSLの高さ方向位置の目標値との偏差を減少する様に、アスファルトフィニッシャ101のレベリングシリンダ4の伸縮制御を行なっている。
レベリングシリンダ4の伸縮制御により、当該基準ラインSLの高さ方向位置の目標値と実測値との偏差を減少することによって、アスファルト敷き均し面を所望のレベルに調節することが出来る。
【0081】
ここで、第1実施形態の実施に際しては、従来技術におけるワイヤと接触しているか否かを検出するセンサ(グレードコントローラ)部分を、カメラ8と処理ユニット9に変更すれば良いので、既存のアスファルトフィニッシャに大幅な変更を加える必要が無い。
すなわち第1実施形態は、導入コストを高騰させること無く、実施することが可能である。
【0082】
第1実施形態において、蛍光ピンク色の基準ラインSLを描くべき壁は、建造物の外壁に限られるものではない。例えば、アスファルトの敷き均し作業を行うべき道路に沿って板状部材を連続して配置して、当該「壁」に代えることが出来る。そして第1実施形態における基準ラインSLは、係る板状部材に蛍光ピンク色のチョーク等で描けば良い。
そのため、第1実施形態における基準ラインSLは、従来技術におけるワイヤの張設に比較して、遥かに容易に設置(セット)或いは描画することが出来るので、その分だけ、従来技術に比較してアスファルトの敷き均し作業のコストを低減することが可能になる。
【0083】
また第1実施形態では、基準ラインSLは蛍光ピンク色であり、そのヒストグラムを作成するため式1を用いることにより、R値、B値が大きく、G値が小さいという蛍光ピンク色の特徴が際立ち、基準ラインSLのピクセルPと、その他の領域のピクセルPとが容易且つ正確に判別することが出来る。
その結果、蛍光ピンク色の基準ラインSLを採用し、上述した式1「(R−G)+(B−G)」を用いて、ヒストグラム(
図6参照)上の特徴を利用して基準ラインSLの高さ方向位置を決定している第1実施形態では、基準ラインSLが描かれている壁面に太陽光が照射し、或いは照明が強烈に照射されて、当該壁面の(カメラ8による)撮影範囲に明るい部分と暗い部分(影の部分)とが出来てしまっても、基準ラインSLを正確に認識することが可能である。
【0084】
また、上述した光の影響に加えて、アスファルトフィニッシャ101による敷き均し作業に際しては、常時振動の影響や、各種ノイズの影響が存在するが、第1実施形態では、フレームの横方向のラインL1〜L480において、640個のピクセルPにおいて、式1(
図6のヒストグラムを求めるための式)により求められた数値の総和或いは平均に基づいて判断をしているため、ノイズの影響を最小限にすることが出来る。
【0085】
さらに、第1実施形態では、撮影された複数のフレームFの平均値により基準ラインSLの高さ方向位置を求めている。
そのため、壁面に描かれた基準ラインSLが途中で途切れた(消された)としても、基準ラインSLが途切れる(消える)直前に撮影されたフレームFにおける解析結果(基準ラインSLの高さ方向位置の実測値)と、基準ラインSLが存在している直後の領域を撮影したフレームFの解析結果とを平均化(例えば移動平均による平均化)して、その平均値を以って、基準ラインSLが途切れている(消えている)領域における基準ラインSLの高さ方向位置の実測値に決定することが出来る。
【0086】
次に、
図7、
図8を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。
ここで、第2実施形態は、建造物の床面の仕上げ作業等に用いられるコンクリートフィニッシャについて、本発明を適用した実施形態である。
第2実施形態において、コンクリートの仕上面のレベルを調節する基準となるラインSLは蛍光ピンク色であり、
図7、
図8では図示しない壁面に描かれている。その点で、第1実施形態と同様である。
【0087】
図7において、全体を符号102で示すコンクリートフィニッシャは、4本の脚部40(
図4では2本の脚部のみを示す)とスクリード2Aとを有しており、各脚部40の下端には走行装置7が設けられている。
また、各脚部40の上端には、脚部を伸縮するためのアクチュエータ(脚部伸縮用アクチュエータ)4Aが設けられている。
図示しないコンクリートミキサ車からベルトコンベアBCによりコンクリートフィニッシャ102の前方に供給される。供給されたコンクリートは、オーガにより広げられる。
コンクリートフィニッシャ102のアクチュエータ4Aを伸長すると、スクリード2Aの下縁部2bが上昇して、コンクリート敷き均し厚さが増加する。一方、アクチュエータ4Aを収縮すると、スクリード2Aの下縁部2bが下降して、コンクリート敷き均し厚さが減少する。
【0088】
図8で詳細を示すように、コンクリートフィニッシャ102にはカメラ8が設けられており、カメラ8は、図示しない壁面に描かれた蛍光ピンク色の基準ラインSLを撮影するように構成されている。
カメラ8は取付ブラケット6により脚部40に取り付けられており、例えばアクチュエータ4A(
図7参照)を伸長するとカメラ8の位置は上昇し、アクチュエータ4Aを収縮するとカメラ8の位置は下降する。
【0089】
カメラ8で撮影された基準ラインSLの映像データは、情報伝達ライン89を介して処理ユニット9に送られ、処理ユニット9では基準ラインSLの映像データから基準ラインSLの高さ方向位置の実測値を決定し、当該実測値(基準ラインSLの高さ方向位置の実測値)はアクチュエータコントロールユニット5に送られる。
アクチュエータコントロールユニット5は、処理ユニット9で決定された基準ラインSLの高さ方向位置の実測値に応答して、脚部伸縮用アクチュエータ4Aの伸縮を制御する。
すなわち、アクチュエータコントロールユニット5は、基準ラインSLの高さ方向位置の目標値と実測値(基準ラインSLの高さ方向位置の実測値)との偏差を演算して、当該実測値を目標値にするべく(或いは、当該偏差を減少するべく)、脚部伸縮用アクチュエータ4Aの伸縮量を制御する。
【0090】
図7、
図8の第2実施形態におけるその他の構成、制御の態様、作用効果については、第1実施形態と同様である。
【0091】
次に、
図9、
図10を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。ただし、第3実施形態の説明に際して、
図5も参照することがある。
第3実施形態は、第1実施形態及び第2実施形態とは、基準ラインSLの高さ方向位置の実測値を決定する制御の態様が異なっている。
【0092】
第1実施形態及び第2実施形態では、基準ラインSLの高さ方向位置の実測値を決定するに際しては、蛍光ピンク色の基準ラインSLにおけるヒストグラムのピークに相当するパラメータ(前記総和または平均値の最大値)を決定し、以って、基準ラインSLの高さ方向位置を決定している。
これに対して第3実施形態では、R値、G値、B値の合計としきい値とを比較することにより、基準ラインSLの高さ方向位置を決定している。
換言すれば、第3実施形態ではヒストグラムのピークに相当するパラメータ(前記総和または平均値の最大値)を決定しておらず、第1実施形態で説明した式1に係る演算は行なわれず、基準ラインSLも蛍光ピンク色にする必要がない。
なお、図示の第3実施形態では、基準ラインSLは白色である。ただし、基準ラインSLをその他の色にすることは可能である。
【0093】
図9、
図10の第3実施形態は、
図1で示す様なアスファルトフィニッシャ101、
図7で示す様なコンクリートフィニッシャ102の何れについても実施可能である。
【0094】
図9は、第3実施形態における処理ユニット9Aの構造を示しており、処理ユニット9Aにより、カメラ8で撮影された基準ラインSLの映像データから、基準ラインSLの高さ方向位置の実測値が決定される。
図9において、処理ユニット9Aは、演算ブロック11A、総和ブロック12、平均化ブロック13、比較ブロック14A、記憶手段15A、平均値ブロック22、決定ブロック16、移動平均ブロック17、距離決定ブロック18、距離補正ブロック19、高さ情報信号発生ブロック20、インターフェース21を備えている。
なお、
図3のカメラ8と演算ブロック11Aとの間にも図示しないインターフェースが設けられているが、簡略化のため、当該インターフェースの図示は省略してある。
【0095】
第3実施形態では、基準ラインSLは、例えば、白色のラインである。
演算ブロック11Aは、カメラ8で撮影された各フレームFについて、フレームFにおける横方向の1本のライン(
図6のL1〜L480の何れか1本のライン)における各ピクセル(画素P)毎に、R値(当該ピクセルにおける赤色の値)、G値(当該ピクセルにおける緑色の値)、B値(当該ピクセルにおける青色の値)を合算する機能を有している。
【0096】
比較ブロック14Aは、現ラインのR値、G値、B値の総和(或いは、ピクセル毎の平均値)としきい値とを比較する。
R値、G値、B値の総和(或いは平均値)がしきい値よりも大きな場合は、当該総和(或いは平均値)を有する横方向の1本のライン(当該総和或いは平均値に対応するライン)におけるライン番号を、記憶手段15Aに記憶する。すなわち、記憶手段15Aには、R値、G値、B値の総和(或いは平均値)がしきい値よりも大きなラインのライン番号が記憶される。
【0097】
平均値ブロック22は、フレームFの処理が完了した時点で、決定ブロック16からの信号(フレーム信号:後述)を受信したならば、R値、G値、B値の総和(或いは平均値)がしきい値よりも大きなラインのライン番号を記憶手段15Aから取得する。
そして、取得した(R値、G値、B値の総和或いは平均値がしきい値よりも大きなラインの)ライン番号から、当該ライン番号の平均値を演算して、演算されたライン番号の平均値を決定ブロック16に送信する。
【0098】
決定ブロック16は、フレームFの処理が完了した旨の信号(フレーム信号)を受けると、平均値ブロック22に対して、R値、G値、B値の総和或いは平均値がしきい値よりも大きなラインにおけるライン番号の平均値を要求する。
平均値ブロック22から当該平均値が送信されたならば、当該平均値に対応する高さ方向位置を決定する(ライン番号の平均値に相当する位置あるいは高さを決定)。
ここで、上述したように、ライン番号は高さ方向位置と直接対応しており、ライン番号の平均値も高さ方向位置と直接対応している。そのため、ライン番号の平均値が求まれば、その高さ方向位置も求められるのである。
【0099】
処理ユニット9Aにおいて、総和ブロック12、平均化ブロック13、移動平均ブロック17、距離決定ブロック18、距離補正ブロック19、高さ情報信号発生ブロック20、インターフェース21については、第1実施形態の処理ユニット9におけるブロック(構成要素)と同様な機能を有しているので、これらのブロックに関する説明は省略する。
【0100】
次に、
図10に基づき、
図5をも参照して、第3実施形態において基準ラインSLの高さ方向位置を決定する制御について説明する。
上述したように、基準ラインSLの高さ方向は、
図5の上下方向である。そして、
図10における「横方向の1本のライン」は、
図5におけるラインL1〜L480の何れかである。
【0101】
図10のステップS31において、先ず、カメラ8で1フレームFを撮影する。撮影が完了したなら、ステップS32において、フレームFの最上方における横方向の1本のラインL1を指定する。ステップS33に進み、演算ブロック11Aによって、横方向のラインL1の各ピクセルP(L1、1)〜P(L1、480)において、R値、G値、B値の合計を演算する。
【0102】
次のステップS34では、総和ブロック12によって、各ピクセルのR値、G値、B値の合計値について、横ラインの1本のラインにおける総和を求める。
ステップS35では、平均化ブロック13によって、総和ブロック12で求めた総和(横方向の1本のラインにおける全てのピクセルにおけるR値、G値、B値の合計値の総和)を、当該ラインのピクセル毎の平均値を求める。ただし、このステップS36と平均化ブロック13は、省略することが可能である。その意味で、例えばステップS36等では、「総和(平均)」と記載されている。
【0103】
ステップS34について総和を求め、選択的ではあるがステップS35で平均値を求めるのは、単独のピクセルについて、ノイズ等に起因して、R値、G値、B値の合計に異常が生じた場合に、係る異常の影響を最小限に抑えるためである。
【0104】
ステップS36では、横方向の1本のラインにおける全てのピクセルのR値、G値、B値の合計値の総和(或いは、横方向の1本のラインにおける各ピクセル毎のR値、G値、B値の合計における平均値)が、しきい値を超えたか否かを判断する。
R値、G値、B値の合計値の総和(或いは、平均値)が、しきい値を超えた場合(ステップS36がYes)は、横方向の1本のラインが、白色の基準ラインSLに相当する位置にあると認識する。そしてステップS37に進む。
【0105】
ここで、白色の基準ラインSLであれば、横方向の1本のラインにおける全てのピクセルのR値、G値、B値の合計値の総和(或いは、平均値)は、しきい値よりも大きくなる。
一方、白線の基準ラインSL以外であれば、横方向の1本のラインにおける全てのピクセルのR値、G値、B値の合計値の総和(或いは、平均値)は、しきい値以下となる。
その様なしきい値の設定に際しては、各施工現場の状況、施工した時点における天候、基準ラインSLが描かれている壁面(図示せず)の状態、その他の条件により、ケース・バイ・ケースで試される。
【0106】
ステップS37では、記憶手段15Aによって、R値、G値、B値の合計値の総和(或いは、平均値)がしきい値を超えている横方向の1本のラインにおけるライン番号を記憶する。そして、ステップS38に進む。
横方向の1本のラインにおけるライン番号は、当該ラインの高さ方向位置に対応している。そのため、横方向の1本のラインにおけるライン番号を記憶することは、当該横方向の1本のラインにおける高さ方向位置を記憶するのと同等である。
ステップS36において、R値、G値、B値の合計値の総和(或いは、平均値)がしきい値以下であれば、ステップS37をバイパスして、ステップS38に進む。すなわち、R値、G値、B値の合計値の総和(或いは、平均値)がしきい値以下であれば、その横方向の1本のラインにおけるライン番号は、記憶手段15Aに記憶されない。
【0107】
ステップS38では、フレームF(
図5参照)の縦方向の全域、すなわちラインL1〜L480の全てについて、ステップS33〜S36の処理が完了したか否かを判断する。
ラインL1〜L480の全てにおいて、ステップS33〜S36の処理が完了していれば(ステップS38がYes)、ステップS40に進む。一方、ラインL1〜L480の全ての処理を終えていないならば(ステップS38がNo)、その時点でステップS33〜S36の処理が完了したラインの1つ下のライン(下側に隣接するライン)に処理を進行せしめ(ステップS39)、ステップS33〜S36を繰り返す。
【0108】
ラインL1〜L480の全てにおいてステップS33〜S36の処理が完了し(ステップS38がYes)、ステップS40に進んだならば、平均値ブロック22によって、ステップS37で記憶されたライン番号の値、すなわち、R値、G値、B値の合計値の総和(平均)がしきい値を超えている横方向のラインについて、そのライン番号の平均値を求める。そして、ステップS40に進む。
【0109】
ステップS37で上述した様に、横方向のライン(
図5のラインL1〜L480)のライン番号は、当該ラインの高さ方向位置と対応している。
従って、ステップS40でしきい値を超えていると判断された横方向のライン(L1〜L480でしきい値を超えているライン)のライン番号の平均値を求めることは、ステップS36でしきい値を超えていると判断された横方向のライン(ラインL1〜L480で、基準ラインSLに対応するライン)の高さ方向位置の平均値、すなわち、基準ラインSLの高さ方向における中心の高さ方向位置を求めることに相当する。
【0110】
ステップS40において、しきい値を超えていると判断された横方向のライン(L1〜L480でしきい値を超えているライン)について、平均値を求めることにより、基準ラインSLの高さ方向における中心の高さ方向位置を求めることに加えて、フィニッシャの振動、路面の凹凸、ノイズ、その他の理由により、横方向の1本のラインのR値、G値、B値の合計値に変動が生じた場合に、係る変動の影響を最小限に抑制することが出来る。
【0111】
ステップS41に進み、決定ブロック16は、ステップS40で平均化されたライン番号に相当する位置を、撮影された基準線SLの高さ方向位置の実測値と決定する。
次のステップS42では、先行するフレームFにおける基準ライン(白線)SLの高さの実測値との移動平均を演算する。このステップS42は、第1実施形態におけるステップS24(
図4)に対応している。
そして、ステップS43に進む。
【0112】
ステップS43では、基準ライン(白線)SLとカメラ8との距離(基準線SLが描かれた壁面とカメラ8との距離:距離決定ブロック18で決定)に基づいて、基準ラインSLの高さ方向位置の実測値を補正する。このステップS43は、第1実施形態におけるステップS25(
図4)に対応している。
そして、当該フレームFにおける基準ラインSLの高さ方向位置の実測値が決定される(ステップS44)。
【0113】
図9、
図10の第3実施形態においても、アスファルトフィニッシャ或いはコンクリートフィニッシャにより敷き均し作業を行うべき道路の壁面近傍に存在する壁面(図示せず)に描かれた基準ラインSLをカメラ8で撮影して、基準ラインSLの高さ方向位置の実測値を決定し、アスファルトフィニッシャのレベリングシリンダ4の伸縮制御や、コンクリートフィニッシャの脚部伸縮用アクチュエータ4Aの伸縮制御を行ない、当該基準ラインSLの目標値との偏差を補正し、以って、敷き均し面を所望のレベルに調節することが出来る。
【0114】
また、第1実施形態と同様に、既存のアスファルトフィニッシャやコンクリートフィニッシャに大幅な変更や改造を施すこと無く、第3実施形態を実施することが可能である。
図9、
図10の第3実施形態におけるその他の構成、制御の態様、作用効果については、第1実施形態、第2実施形態と同様である。
【0115】
次に、
図11、
図12を参照して、本発明の第4実施形態を説明する。第4実施形態の説明にあたって、
図5を参照することがある。
第4実施形態は、第1実施形態〜第3実施形態と、制御の態様が異なっている。
第4実施形態でも、第3実施形態と同様に、基準ラインSLは白色であり、第1実施形態及び第2実施形態の様な蛍光ピンク色の基準ラインSLは用いていない。
【0116】
第4実施形態では、高さ方向について隣接する横方向の2本のライン(
図5におけるラインL1〜L480において、
図5の上下方向について隣接している2本のライン:
図5におけるラインL1〜L480において、番号が連続している2本のライン)について、R値、B値、G値の合計における差異δが、しきい値を超えている場合に、基準ラインSLであると判断する。
図11、
図12の第4実施形態も、
図1で示す様なアスファルトフィニッシャ、
図7で示す様なコンクリートフィニッシャの何れについても実施可能である。
【0117】
図11は、カメラ8で撮影された基準ラインSLの映像データから、基準ラインSLの高さ方向位置の実測値を決定する処理ユニット9Bの構造を示している。
図11において、処理ユニット9Bは、演算ブロック11B、総和ブロック12、平均化ブロック13B、比較ブロック14B、記憶手段15B、決定ブロック16B、移動平均ブロック17、距離決定ブロック18、距離補正ブロック19、高さ情報信号発生ブロック20およびインターフェース21を備えている。
なお、
図11のカメラ8と演算ブロック11Bとの間にも図示しないインターフェースが設けられているが、簡略化のため、当該インターフェースの図示は省略してある。
【0118】
演算ブロック11Bは、演算ブロック11A(
図9)と同様に、各ピクセルにおけるR値、G値、B値の合計を演算する機能を有している。
しかし、演算ブロック11Aは横方向の1本のラインにおけるピクセルのR値、G値、B値の合計を演算しているのに対して、演算ブロック11Bは、高さ方向について隣接する横方向の2本のラインにおいて、下側のライン(現ライン)についてのみ、R値、G値、B値の合計を演算する様に構成されている。ただし、最上方の2本のライン(
図5のラインL1、L2)を処理するサイクルでは、ラインL1、L2の双方について、R値、G値、B値の合計を演算する。
最上方の2本のライン(
図5のラインL1、L2)を除けば、上方にある横方向の1本のライン(先行するライン)は先行するサイクルにおいて、下側のラインとしてR値、G値、B値の合計を演算されているので、その演算結果を記憶しておけば良いからである。
【0119】
或いは、演算ブロック11Bは、2本のライン、すなわち上方にある横方向の1本のライン(先行するライン)と、高さ方向の下方に隣接する横方向のライン(現ライン)の2本について、(対応するピクセル毎に)R値、G値、B値の合計を、全ての制御サイクルで、演算しても良い。
【0120】
平均化ブロック13Bは、機能そのものは、第1実施形態の平均化ブロック13と同様であるが、平均化したデータを比較手段14Bに伝送するだけではなく、現ラインにおける総和(或いは平均値)を、次のサイクルにおける「先行するラインの総和(或いは平均値)」として用いるために、記憶手段15Bに、送信して、記憶させている。
演算ブロック11Bに関して上述したように、現ラインにおける総和(或いは平均値)を記憶手段15Bで記憶して、後続するサイクルにおける先行するラインの総和(或いは平均値)として利用すれば、演算ブロック11Bは、常時、先行するラインと現ラインの2本のラインについて、R値、G値、B値の合計を演算しなくても済むからである。
第1実施形態と同様に、平均化ブロック13Bは省略することも可能である。平均化ブロック13Bを省略した場合は、記憶手段15Bに伝送するのは、現ラインにおける総和である。
【0121】
比較ブロック14Bは、先行するラインのR値、G値、B値の合計の総和或いはその平均値と、現ラインのR値、G値、B値の合計の総和或いはその平均値との差異の絶対値δを求め、この差異の絶対値δをしきい値と比較する。
決定ブロック16Bは、フレーム信号を受信して、処理中のフレームFにおける処理終了の判定を行う。そして、差異の絶対値δがしきい値を超える現ラインであって、ライン番号が最小の現ラインを、基準ラインSLとして決定する。それと共に、当該現ラインのライン番号を取得する。
【0122】
処理ユニット9Bにおいて、総和ブロック12、移動平均ブロック17、距離決定ブロック18、距離補正ブロック19、高さ情報信号発生ブロック20およびインターフェース21に関しては、第1実施形態及び第3実施形態と同様なので、詳細な説明は省略する。
【0123】
次に、
図12を参照して、第4実施形態において基準ラインSLの高さ方向(
図5の上下方向)位置を決定する制御について、説明する。
係る制御の説明に際しても、
図5を参照する場合がある。そして、
図12における「横方向の1本のライン」は、
図5におけるラインL1〜L480の何れかである。
【0124】
図12のステップS51において、先ず、カメラ8で1フレームFを撮影する。
撮影が完了したなら、ステップS52において、「先行するライン」と「現ライン」を定義する。
「先行するライン」は、例えば、
図5において、上下方向に隣接する2本の横方向のライン(ラインL1〜L480)の内、上方のライン(番号が小さい方のライン)である。そして、「現ライン」は、下方のライン(番号が大きい方のライン)である。
すなわち、
図5において、フレームFの最上段の先行するラインがラインL1であれば、現ラインはラインL2となる。
なお、フレームFの処理を下方から上方に向かって行う場合には、「先行するライン」は、上下方向に隣接する2本の横方向のライン(ラインL1〜L480)の内、下方のライン(番号が大きい方のライン)であり、「現ライン」は、上方のライン(番号が小さい方のライン)となる。
【0125】
次のステップS53では、先行するライン(例えばラインL1)、現ライン(例えばラインL2)の各々について、当該ラインにおける全ピクセルのR値、G値、B値の合計を演算し、引き続きステップS54で各ピクセルのR値、G値、B値の合計の総和を算定する。
すなわち、先行するラインの全ピクセルについてR値、G値、B値の合計及びその総和を求め、現ラインの全ピクセルについてもR値、G値、B値の合計及びその総和を求める。
ただし、
図5において、先行するラインがラインL2及びそれよりも下方のラインである制御サイクルの場合には、先行するサイクルにおいて、「現ライン」の全ピクセルにおけるR値、G値、B値の合計及びその総和が演算されている。そのため、当該合計及び総和を記憶手段15Bで記憶して、先行するサイクルにおける「現ライン」の合計及び総和として用いることが出来る。従って、先行するラインがラインL2及びそれよりも下方のラインのサイクルの場合には、「現ライン」についてのみ、R値、G値、B値の合計及びその総和を求めれば良い。
【0126】
ステップS55に進み、先行するラインの全ピクセルについてR値、G値、B値の合計を横方向ラインにおけるピクセルの数(図示の実施形態では、例えば、640ピクセル)で除算して、各ピクセルのR値、G値、B値の合計における平均値を求める。
同様に、現ラインについても、各ピクセルのR値、G値、B値の合計における平均値を求める。そしてステップS56に進む。
ただし、ステップS55は省略可能である。同様に、
図11の平均化ブロック13Bも省略可能である。そのため、後述するステップS56の差異の絶対値δの説明では、「総和、あるいは平均値」と併記されている。
【0127】
ステップS54について総和を求め、選択的ではあるがステップS55で平均値を求めるのは、第1実施形態及び第3実施形態と同様に、単独のピクセルについて、ノイズ等に起因して、R値、G値、B値に異常が生じた場合に、係る異常の影響を最小限に抑えるためである。
【0128】
ステップS56では、先行するラインのR値、G値、B値の合計の総和(或いは平均値)と、現ラインのR値、G値、B値の合計の総和(或いは平均値)との差異の絶対値δを求め、当該差異の絶対値δをしきい値と比較する。
当該差異の絶対値δがしきい値以下であれば(ステップS56がNo)、先行するラインと現ラインは、共に、壁面の基準ラインSL以外の領域に存在しているか、或いは、共に、壁面の基準ラインSLに相当していると判断して、ステップS58まで進む。
【0129】
一方、当該差異の絶対値δがしきい値よりも大きければ(ステップS56がYes)、決定ブロック16Bは、先行するラインと現ラインの何れか一方が基準ラインSLに相当し、他方が壁面の基準ラインSL以外の領域に相当している、と判断する。
この場合には、ステップS57に進み、差異の絶対値δがしきい値よりも大きく(ステップS56が「Yes」であり)、且つ、その時点でライン番号が最小の「現ライン」のライン番号を記憶する。換言すれば、ステップS56が「Yes」であって、最も上方に存在する現ラインのライン番号を記憶する。
【0130】
なお、処理がフレームの下方から上方に進行する場合には、ステップS57では、差異の絶対値δがしきい値よりも大きく(ステップS56が「Yes」であり)、且つ、その時点でライン番号が最大の「現ライン」のライン番号を記憶することにより、最も上方に存在する現ラインのライン番号を記憶することになる。
【0131】
基準ラインSLの幅(
図5の上下方向の幅)が、複数ピクセル分に相当する場合に、差異δの絶対値がしきい値よりも大きいケースとしては、
(1) 先行するラインは基準ラインSL以外の壁面であるが、現ラインが基準ラインSLに相当する場合(基準ラインSLの上縁)、
(2) 先行するラインは基準ラインSLに相当するが、現ラインは基準ラインSL以外の壁面に相当する場合(基準ラインSLの下縁)、
の2通りがある。
そして、
図11、
図12で示す第4実施形態では、基準ラインSLの高さ方向位置として、基準ラインSLの上縁、すなわち(1)の現ラインを選択している。
【0132】
もちろん、基準ラインSLの下縁、すなわち(2)の先行ラインを、基準ラインSLの高さ方向位置として選択することも可能である。
その場合には、ステップS57では、差異の絶対値δがしきい値よりも大きく、且つ、最も下方に存在する先行ラインのライン番号を記憶することになる。
【0133】
ステップS57では、基準ラインSLの高さ方向位置に相当するラインとして取得されたライン(基準ラインSLの上縁に相当する現ライン)のライン番号を、記憶手段15Bから取得している。
上述した通り、ライン番号は横方向の1本のライン(L1〜L480)の各々における高さ方向位置(
図5の上下方向位置)に対応しているので、ライン番号を求めれば、高さ方向位置が決定するからである。
【0134】
ステップS58に進み、ステップS51で撮影されたフレームにおける処理が完了したか否かを判断する。
上述した通り、第1実施形態〜第4実施形態では、
図5の最上方のラインL1から最下方のラインL480に向かって、処理を進行させている。そのため、現ラインが最下方のラインL480(
図5参照)であれば、フレームFにおける処理が完了することになる。
【0135】
フレームFにおける処理が完了していない場合(ステップS58がNo)には、ステップS59で、先行するライン及び現ラインを、
図5の上下方向に1ピクセル分(或いは、横方向のライン1本分)、下方に移動する。
すなわち、「現ライン」は次のサイクルでは「先行するライン」となる。そして、「現ライン」の下方に隣接するラインが、次のサイクルにおける「現ライン」になる。
一方、フレームFにおける処理が完了したならば(ステップS58がYes)、ステップS60に進む。
【0136】
ステップS57に関連して上述した様に、先行するラインは基準ラインSL以外の壁面であり、現ラインが基準ラインSLに相当する場合(基準ラインSLの上縁の場合)に、そのサイクルにおける「現ライン」が、基準ラインSLの高さ方向位置に相当する。
従って、ステップS60では、係る「現ライン」のライン番号から、基準ラインSLの高さ方向位置の実測値が決定される。
そして、ステップS61に進む。
【0137】
ステップS61では、先行するフレームFにおける基準ライン(白線)SLの高さの実測値との移動平均を演算する。係る処理は、第1実施形態(
図4のステップS24)、第2実施形態(
図10のステップS42)と同様である。
ステップS62では、基準ライン(白線)SLとカメラ8との距離(白線が描かれた壁面とカメラ8との距離:距離決定ブロック18で決定)に基づいて、基準ラインSLの高さ方向位置の実測値を補正する。この処理も、第1実施形態(
図4のステップS25)、第2実施形態(
図10のステップS43)と同様である。
そして、当該フレームFにおける基準ラインSLの高さ方向位置の実測値が決定される(ステップS63)。
【0138】
図11、
図12の第4実施形態においても、アスファルトフィニッシャ或いはコンクリートフィニッシャにより敷き均し作業を行うべき道路の壁面近傍に存在する壁面(図示せず)に描かれた基準ラインSLをカメラ8で撮影して、基準ラインSLの高さ方向位置の実測値を決定し、アスファルトフィニッシャのレベリングシリンダ4の伸縮制御や、コンクリートフィニッシャの脚部伸縮用アクチュエータ4Aの伸縮制御を行ない、当該基準ラインSLの目標値との偏差を補正し、以って、敷き均し面を所望のレベルに調節することが出来る。
【0139】
また、第1実施形態や第3実施形態と同様に、既存のアスファルトフィニッシャやコンクリートフィニッシャに大幅な変更や改造を施すこと無く、第4実施形態を実施することが可能である。
図11、
図12の第4実施形態におけるその他の構成、制御の態様、作用効果については、第1実施形態〜第3実施形態と同様である。
【0140】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない。
例えば、基準ラインSLの色について、第1実施形態及び第2実施形態では蛍光ピンク色であり、第3実施形態及び第4実施形態では白色であるが、基準ラインSLが描かれた壁面との区別がつくのであれば、その他の色彩であっても良い。