(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[触媒]
本発明は、遷移金属化合物を担持させる担体として、固体超強酸を使用することを特徴とする。固体超強酸とは、その酸性度が100%硫酸よりも強い酸強度を有する酸として定義され(田部浩三、野依良治共著:「超強酸・超強塩基」(1980)、講談社)、ハメットの酸度関数(H
0)が−11.93よりも小さな酸である。
【0012】
固体超強酸としては、液体超強酸(例えば、SbF
5、BF
3、BF−SbF
5、FSO
3H−SbF
5、TaF
5等)を固体上(例えば、Al
2O
3、SiO
2,ゼオライト、SiO
2−Al
2O
3、ポリマー、グラファイト、金属など)に担持する方法による固定化液体超強酸;AlCl
3若しくはAlBr
3とCuSO
4、CuCl
2、Ti
2(SO
4)
3、又はTiCl
3とを摩砕混合によって調整された二元金属塩;硫酸イオンを金属酸化物(例えば、Fe
2O
3、TiO
2、ZrO
2、HfO
2、SnO
2、Al
2O
3、SiO
2等)に吸着させ焼成して担持結合させた硫酸化金属酸化物;前記硫酸化金属酸化物にIr,Pt等の貴金属を添加した貴金属/硫酸化金属酸化物;WO
3、MoO
3、B
2O
3等を金属酸化物(例えば、ZrO
2、SnO
2、TiO
2、Fe
2O
3等)に吸着させて、高温で焼成した金属酸化物超強酸;超強酸性イオン交換樹脂(−CF
2、CF
2、SO
3H等の超強酸基を有する非多孔質又は多孔質イオン交換樹脂、例えばフッ素化スルホン酸系樹脂「ナフィオンNR50」(アルドリッチ社製)、「ナフィオンH」(デュポン社製)等);ヘテロポリ酸(P、Mo、V、W、Si等の元素を含有するポリ酸等)等が挙げられる。
【0013】
本発明において用いられる固体超強酸としては、硫酸化金属酸化物、貴金属/硫酸化金属酸化物、金属酸化物超強酸が好ましく、特に、硫酸化金属酸化物、貴金属/硫酸化金属酸化物が好ましい。硫酸化金属酸化物、貴金属/硫酸化金属酸化物は、特に酸強度が高く、ハメットの酸度関数(H
0)が−16よりも小さいため、より効果的に遷移金属化合物を担持することができる。硫酸化金属酸化物としては、硫酸化ジルコニア、硫酸化スズ、硫酸化ハフニウム等が好ましく、貴金属/硫酸化金属酸化物としては、Pt/硫酸化ジルコニア、Ir/硫酸化ジルコニア、Pd/硫酸化ジルコニア等が好ましい。なかでも、工業的に入手が容易である硫酸化ジルコニアを好適に使用することができる。
【0014】
硫酸化金属酸化物、及び貴金属/硫酸化金属酸化物の担持物の担体への担持方法は特に限定されることがなく、周知慣用の方法を使用することができる。
【0015】
また、担体の形状や粒径は特に限定されることがなく、ペレット状、粉末状、その他の固体触媒として通常使用される形状等、触媒の回収作業に用いる装置に適合する適切な形状、粒径を選択して使用することができる。
【0016】
固体超強酸に担持させる遷移金属化合物を構成する金属元素としては、特に限定されないが、周期表3〜12族の金属元素を用いる場合が多い。例えば、前記金属元素として、周期表3族元素(Sc、ランタノイド元素、アクチノイド元素など)、4族元素(Ti、Zr、Hfなど)、5族元素(Vなど)、6族元素(Cr、Mo、Wなど)、7族元素(Mnなど)、8族元素(Fe、Ruなど)、9族元素(Co、Rhなど)、10族元素(Ni、Pd、Ptなど)、11族元素(Cuなど)、12族元素(Znなど)などが挙げられる。好ましい金属元素には、周期表5〜11族元素が含まれ、例えば、5族〜9族元素(Co、Mn、Fe、V、Moなど)が挙げられる。金属元素の原子価は特に制限されず、例えば0〜6価程度である。
【0017】
遷移金属化合物としては、前記金属元素の単体、水酸化物、酸化物(複合酸化物を含む)、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、オキソ酸塩(例えば、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩など)、イソポリ酸の塩、ヘテロポリ酸の塩などの無機化合物;有機酸塩(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、青酸塩、ナフテン酸塩、ステアリン酸塩;メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、オクタンスルホン酸塩、ドデカンスルホン酸塩などのアルキルスルホン酸塩(例えば、C
6-18アルキルスルホン酸塩);ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、デシルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩などのアルキル基で置換されていてもよいアリールスルホン酸塩(例えば、C
6-18アルキル−アリールスルホン酸塩);錯体などの有機化合物が挙げられる。前記錯体を構成する配位子としては、OH(ヒドロキソ)、アルコキシ(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなど)、アシル(アセチル、プロピオニルなど)、アルコキシカルボニル(メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなど)、アセチルアセトナト、シクロペンタジエニル基、ハロゲン原子(塩素、臭素など)、CO、CN、酸素原子、H
2O(アコ)、ホスフィン(トリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィンなど)のリン化合物、NH
3(アンミン)、NO、NO
2(ニトロ)、NO
3(ニトラト)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェナントロリンなどの窒素含有化合物などが挙げられる。
【0018】
遷移金属化合物の具体例としては、例えば、コバルト化合物を例にとると、水酸化コバルト、酸化コバルト、塩化コバルト、臭化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、リン酸コバルトなどの無機化合物;酢酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルトなどの有機酸塩;コバルトアセチルアセトナトなどの錯体等の2価又は3価のコバルト化合物などが挙げられる。また、マンガン化合物の例としては、水酸化マンガン、酸化マンガン、塩化マンガン、硫酸マンガンなどの無機化合物;マンガンアセチルアセトナトなどの錯体等の2〜5価のマンガン化合物などが挙げられる。他の遷移金属元素の化合物としては、前記コバルト又はマンガン化合物に対応する化合物などが例示される。遷移金属化合物は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。また、価数の異なる複数の遷移金属化合物(例えば、2価の金属化合物と3価の金属化合物)を組み合わせて用いるのも好ましい。本発明における遷移金属化合物としては、遷移金属として、Co、Mn、Fe、Zr、Ce、V、Moを有する化合物が好ましく、なかでも、コバルト化合物、マンガン化合物(特にコバルト化合物、マンガン化合物の有機酸塩)が好ましく、特に、コバルト化合物とマンガン化合物とを組み合わせて使用することが、触媒の活性低下を抑制することができる点で好ましい。
【0019】
遷移金属化合物を固体超強酸に担持させる方法としては、慣用の方法、例えば、含浸法、焼成法、沈殿法、イオン交換法などにより行うことができる。遷移金属化合物の担持量としては、固体超強酸に対して、例えば遷移金属化合物中の金属原子換算で0.001〜20重量%程度、好ましくは0.01〜20重量%程度、特に0.1〜10重量%程度である。
【0020】
また、本発明の含酸素有機化合物の製造方法においては、上記固体超強酸に担持させた遷移金属化合物とともに、上記式(1)で表される骨格を環の構成要素として含む窒素原子含有環状化合物を触媒として使用することを特徴とする。上記式(1)で表される骨格を環の構成要素として含む窒素原子含有環状化合物を併用することにより、反応の進行を促進することができる。
【0021】
式(1)において、窒素原子とXとの結合は単結合又は二重結合である。Xは−OR基(Rは水素原子又はヒドロキシル基の保護基を示す)を示す。前記窒素原子含有環状化合物は、分子中に、式(1)で表される骨格を複数個有していてもよい。また、この窒素原子含有環状化合物は、前記Xが−OR基であり且つRがヒドロキシル基の保護基である場合、式(1)で表される骨格(但し、Xが−OR基である)のうちRを除く部分が複数個、Rを介して結合していてもよい。
【0022】
式(1)中、Rで示されるヒドロキシル基の保護基としては、有機合成の分野で慣用のヒドロキシル基の保護基を用いることができる。このような保護基として、例えば、アルキル基(例えば、メチル、t−ブチル基などのC
1-4アルキル基など)、アルケニル基(例えば、アリル基など)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基など)、アリール基(例えば、2,4−ジニトロフェニル基など)、アラルキル基(例えば、ベンジル、2,6−ジクロロベンジル、3−ブロモベンジル、2−ニトロベンジル、トリフェニルメチル基など);置換メチル基(例えば、メトキシメチル、メチルチオメチル、ベンジルオキシメチル、t−ブトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル、2,2,2−トリクロロエトキシメチル、ビス(2−クロロエトキシ)メチル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル基など)、置換エチル基(例えば、1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル、1−イソプロポキシエチル、2,2,2−トリクロロエチル、2−メトキシエチル基など)、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、1−ヒドロキシアルキル基(例えば、1−ヒドロキシエチル、1−ヒドロキシヘキシル、1−ヒドロキシデシル、1−ヒドロキシヘキサデシル、1−ヒドロキシ−1−フェニルメチル基など)等のヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール基を形成可能な基など;アシル基(例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル基などのC
1-20脂肪族アシル基等の脂肪族飽和又は不飽和アシル基;アセトアセチル基;シクロペンタンカルボニル、シクロヘキサンカルボニル基などのシクロアルカンカルボニル基等の脂環式アシル基;ベンゾイル、ナフトイル基などの芳香族アシル基など)、スルホニル基(メタンスルホニル、エタンスルホニル、トリフルオロメタンスルホニル、ベンゼンスルホニル、p−トルエンスルホニル、ナフタレンスルホニル基など)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル基などのC
1-4アルコキシ−カルボニル基など)、アラルキルオキシカルボニル基(例えば、ベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基など)、置換又は無置換カルバモイル基(例えば、カルバモイル、メチルカルバモイル、フェニルカルバモイル基など)、無機酸(硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸など)からOH基を除した基、ジアルキルホスフィノチオイル基(例えば、ジメチルホスフィノチオイル基など)、ジアリールホスフィノチオイル基(例えば、ジフェニルホスフィノチオイル基など)、置換シリル基(例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、トリベンジルシリル、トリフェニルシリル基など)などが挙げられる。
【0023】
また、Xが−OR基である場合において、式(1)で表される骨格のうちRを除く部分が複数個、Rを介して結合する場合、該Rとして、例えば、オキサリル、マロニル、スクシニル、グルタリル、フタロイル、イソフタロイル、テレフタロイル基などのポリカルボン酸アシル基;カルボニル基;メチレン、エチリデン、イソプロピリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、ベンジリデン基などの多価の炭化水素基(特に、2つのヒドロキシル基とアセタール結合を形成する基)などが挙げられる。
【0024】
好ましいRには、例えば、水素原子;ヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール基を形成可能な基;カルボン酸、スルホン酸、炭酸、カルバミン酸、硫酸、リン酸、ホウ酸などの酸からOH基を除した基(アシル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基等)などの加水分解により脱離可能な加水分解性保護基が好ましい。Rとしては特に水素原子が好ましい。
【0025】
前記式(1)で表される骨格を環の構成要素として含む窒素原子含有環状化合物には、
下記式(2)
【化2】
[式中、nは0又は1を示す。Xは−OR基(Rは水素原子又はヒドロキシル基の保護基を示す)を示す。R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、アシル基又はアシルオキシ基を示し、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6のうち少なくとも2つが互いに結合して、環状イミド骨格を構成する炭素原子又は炭素−炭素結合と共に、二重結合、又は芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成してもよい。前記R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、又はR
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6のうち少なくとも2つが互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若しくは非芳香族性の環には、下記式(a)
【化3】
(式中、n、Xは前記に同じ)
で表されるN−置換環状イミド基がさらに1又は2個以上形成されていてもよい]
で表される環状イミド系化合物が含まれる。
【0026】
式(2)で表される環状イミド系化合物において、置換基R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6のうちハロゲン原子には、ヨウ素、臭素、塩素およびフッ素原子が含まれる。アルキル基には、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ヘキシル、デシル、ドデシル基などの炭素数1〜30(特に、炭素数1〜20程度)の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が含まれる。
【0027】
アリール基には、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル基などが含まれ、シクロアルキル基には、シクロペンチル、シクロヘキシル基などが含まれる。アルコキシ基には、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、t−ブトキシ、ヘキシルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ基などの炭素数1〜30(特に、炭素数1〜20程度)のアルコキシ基が含まれる。
【0028】
置換オキシカルボニル基には、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル、デシルオキシカルボニル基などのC
1-30アルコキシ−カルボニル基(特に、C
1-20アルコキシ−カルボニル基);シクロペンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル基などのシクロアルキルオキシカルボニル基(特に、3〜20員シクロアルキルオキシカルボニル基);フェニルオキシカルボニル基などのアリールオキシカルボニル基(特に、C
6-20アリールオキシ−カルボニル基);ベンジルオキシカルボニル基などのアラルキルオキシカルボニル基(特に、C
7-21アラルキルオキシ−カルボニル基)などが挙げられる。
【0029】
アシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、デカノイル、ラウロイル基などのC
1-30脂肪族アシル基(特に、C
1-20脂肪族アシル基)等の脂肪族飽和又は不飽和アシル基;アセトアセチル基;シクロペンタンカルボニル、シクロヘキサンカルボニル基などのシクロアルカンカルボニル基等の脂環式アシル基;ベンゾイル基などの芳香族アシル基などが例示できる。
【0030】
アシルオキシ基としては、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、イソブチリルオキシ、バレリルオキシ、ピバロイルオキシ、デカノイルオキシ、ラウロイルオキシ基などのC
1-30脂肪族アシルオキシ基(特に、C
1-20脂肪族アシルオキシ基)等の脂肪族飽和又は不飽和アシルオキシ基;アセトアセチルオキシ基;シクロペンタンカルボニルオキシ、シクロヘキサンカルボニルオキシ基などのシクロアルカンカルボニルオキシ基等の脂環式アシルオキシ基;ベンゾイルオキシ基などの芳香族アシルオキシ基などが例示できる。
【0031】
前記置換基R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、同一又は異なっていてもよい。また、前記式(2)において、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6のうち少なくとも2つが互いに結合して、環状イミド骨格を構成する炭素原子又は炭素−炭素結合と共に、二重結合、または芳香族性又は非芳香族性の環を形成してもよい。好ましい芳香族性又は非芳香族性環は5〜12員環、特に6〜10員環程度であり、複素環又は縮合複素環であってもよいが、炭化水素環である場合が多い。このような環には、例えば、脂環式環(シクロヘキサン環などの置換基を有していてもよいシクロアルカン環、シクロヘキセン環などの置換基を有していてもよいシクロアルケン環など)、橋かけ環(5−ノルボルネン環などの置換基を有していてもよい橋かけ式炭化水素環など)、ベンゼン環、ナフタレン環などの置換基を有していてもよい芳香族環(縮合環を含む)が含まれる。前記環は芳香族環で構成される場合が多い。前記環は、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよい。
【0032】
前記R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、又はR
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6のうち少なくとも2つが互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若しくは非芳香族性の環には、前記式(a)で表される環状イミド基がさらに1又は2個以上形成されていてもよい。例えば、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5又はR
6が炭素数2以上のアルキル基である場合、このアルキル基を構成する隣接する2つの炭素原子を含んで前記環状イミド基が形成されていてもよい。また、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6のうち少なくとも2つが互いに結合して、環状イミド骨格を構成する炭素−炭素結合と共に二重結合を形成する場合、該二重結合を含んで前記環状イミド基が形成されていてもよい。さらに、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6のうち少なくとも2つが互いに結合して、環状イミド骨格を構成する炭素原子又は炭素−炭素結合と共に、芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成する場合、該環を構成する隣接する2つの炭素原子を含んで前記環状イミド基が形成されていてもよい。
【0033】
好ましい環状イミド系化合物には、下記式で表される化合物が含まれる。
【化4】
(式中、R
11〜R
16は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、アシル基又はアシルオキシ基を示す。R
17〜R
26は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子を示す。R
17〜R
26は、隣接する基同士が結合して、式(3c)、(3d)、(3e)、(3f)、(3h)又は(3i)中に示される5員又は6員のN−置換環状イミド骨格を形成していてもよい。式(3f)中、Aはメチレン基又は酸素原子を示す。Xは前記に同じ)
【0034】
置換基R
11〜R
16におけるハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基としては、前記R
1〜R
6における対応する基と同様のものが例示される。
【0035】
置換基R
17〜R
26において、アルキル基には、前記例示のアルキル基と同様のアルキル基、特に炭素数1〜6程度のアルキル基が含まれ、ハロアルキル基には、トリフルオロメチル基などの炭素数1〜4程度のハロアルキル基、アルコキシ基には、前記と同様のアルコキシ基、特に炭素数1〜4程度の低級アルコキシ基、置換オキシカルボニル基には、前記と同様の置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基など)が含まれる。また、アシル基としては前記と同様のアシル基(脂肪族飽和又は不飽和アシル基、アセトアセチル基、脂環式アシル基、芳香族アシル基等)などが例示され、アシルオキシ基としては前記と同様のアシルオキシ基(脂肪族飽和又は不飽和アシルオキシ基、アセトアセチルオキシ基、脂環式アシルオキシ基、芳香族アシルオキシ基等)などが例示される。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素原子が例示できる。置換基R
17〜R
26は、通常、水素原子、炭素数1〜4程度の低級アルキル基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、ニトロ基、ハロゲン原子である場合が多い。
【0036】
好ましいイミド化合物のうち5員のN−置換環状イミド骨格を有する化合物の代表的な例として、例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシ−α−メチルコハク酸イミド、N−ヒドロキシ−α,α−ジメチルコハク酸イミド、N−ヒドロキシ−α,β−ジメチルコハク酸イミド、N−ヒドロキシ−α,α,β,β−テトラメチルコハク酸イミド、N−ヒドロキシマレイン酸イミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタル酸イミド、N,N′−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸ジイミド、N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラブロモフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタル酸イミド、N−ヒドロキシヘット酸イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミド、N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシピロメリット酸ジイミド、N,N′−ジヒドロキシナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、α,β−ジアセトキシ−N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシ−α,β−ビス(プロピオニルオキシ)コハク酸イミド、N−ヒドロキシ−α,β−ビス(バレリルオキシ)コハク酸イミド、N−ヒドロキシ−α,β−ビス(ラウロイルオキシ)コハク酸イミド、α,β−ビス(ベンゾイルオキシ)−N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシ−4−メトキシカルボニルフタル酸イミド、4−クロロ−N−ヒドロキシフタル酸イミド、4−エトキシカルボニル−N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシ−4−ペンチルオキシカルボニルフタル酸イミド、4−ドデシルオキシ−N−ヒドロキシカルボニルフタル酸イミド、N−ヒドロキシ−4−フェノキシカルボニルフタル酸イミド、N−ヒドロキシ−4,5−ビス(メトキシカルボニル)フタル酸イミド、4,5−ビス(エトキシカルボニル)−N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシ−4,5−ビス(ペンチルオキシカルボニル)フタル酸イミド、4,5−ビス(ドデシルオキシカルボニル)−N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシ−4,5−ビス(フェノキシカルボニル)フタル酸イミドなどの式(4)におけるXが−OR基で且つRが水素原子である化合物;これらの化合物に対応する、Rがアセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等のアシル基である化合物;N−メトキシメチルオキシフタル酸イミド、N−(2−メトキシエトキシメチルオキシ)フタル酸イミド、N−テトラヒドロピラニルオキシフタル酸イミドなどの式(4)におけるXが−OR基で且つRがヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール結合を形成可能な基である化合物;N−メタンスルホニルオキシフタル酸イミド、N−(p−トルエンスルホニルオキシ)フタル酸イミドなどの式(4)におけるXが−OR基で且つRがスルホニル基である化合物;N−ヒドロキシフタル酸イミドの硫酸エステル、硝酸エステル、リン酸エステル又はホウ酸エステルなどの式(4)におけるXが−OR基で且つRが無機酸からOH基を除した基である化合物などが挙げられる。
【0037】
好ましいイミド化合物のうち6員のN−置換環状イミド骨格を有する化合物の代表的な例として、例えば、N−ヒドロキシグルタルイミド、N−ヒドロキシ−α,α−ジメチルグルタルイミド、N−ヒドロキシ−β,β−ジメチルグルタルイミド、N−ヒドロキシ−1,8−デカリンジカルボン酸イミド、N,N′−ジヒドロキシ−1,8;4,5−デカリンテトラカルボン酸ジイミド、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド(N−ヒドロキシナフタル酸イミド)、N,N′−ジヒドロキシ−1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドなどの式(4)におけるXが−OR基で且つRが水素原子である化合物;これらの化合物に対応する、Rがアセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等のアシル基である化合物;N−メトキシメチルオキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド、N,N′−ビス(メトキシメチルオキシ)−1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドなどの式(4)におけるXが−OR基で且つRがヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール結合を形成可能な基である化合物;N−メタンスルホニルオキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド、N,N′−ビス(メタンスルホニルオキシ)−1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドなどの式(4)におけるXが−OR基で且つRがスルホニル基である化合物;N−ヒドロキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド又はN,N′−ジヒドロキシ−1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドの硫酸エステル、硝酸エステル、リン酸エステル又はホウ酸エステルなどの式(4)におけるXが−OR基で且つRが無機酸からOH基を除した基である化合物などが挙げられる。
【0038】
前記式(1)で表される骨格を環の構成要素として含む窒素原子含有環状化合物には、上記環状イミド系化合物の他に、環状アシルウレア骨格[−C(=O)−N−C(=O)−N−]を有する環状アシルウレア系化合物が含まれる。環状アシルウレア系化合物の代表的な例として、下記式(4)
【化5】
(式中、R
a、R
dは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、又はアシル基を示し、R
b、R
cは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、アシル基又はアシルオキシ基を示す。R
a、R
b、R
c、R
dのうち少なくとも2つが互いに結合して、式中の環を構成する原子とともに二重結合、又は芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成してもよく、R
bとR
cは一体となってオキソ基を形成してもよい。Rは前記に同じ)
で表されるヒドロ−1−ヒドロキシ(又は1−置換オキシ)−1,3,5−トリアジン−2,6−ジオン化合物が挙げられる。
【0039】
式(4)中、R
a、R
dにおけるアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アシル基としては、上記R
1〜R
6におけるアルキル基等と同様のものが例示される。ヒドロキシル基の保護基としては、前記のものが挙げられる。
【0040】
カルボキシル基の保護基としては、有機合成の分野で慣用の保護基、例えば、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシなどのC
1-6アルコキシ基など)、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基など)アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基など)、トリアルキルシリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ基など)、置換基を有していてもよいアミノ基(例えば、アミノ基;メチルアミノ基、ジメチルアミノ基などのモノ又はジC
1-6アルキルアミノ基など)などが挙げられる。
【0041】
R
b、R
cにおけるハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基としては、上記R
1〜R
6におけるアルキル基等と同様のものが例示される。
【0042】
式(4)において、R
a、R
b、R
c、R
dのうち少なくとも2つが互いに結合して、式中に示される環を構成する原子(炭素原子及び/又は窒素原子)とともに二重結合、又は芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成してもよく、R
b、R
cは一体となってオキソ基を形成してもよい。好ましい芳香族性又は非芳香族性環としては前記と同様のものが例示される。
【0043】
式(4)で表される化合物のなかでも、下記式(4a)で表されるイソシアヌル酸誘導体が好ましい。
【化6】
[式中、R、R′、R″は、同一又は異なって、水素原子又はヒドロキシル基の保護基を示す]
【0044】
環状アシルウレア系化合物に含まれる代表的な化合物の例として、例えば、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリヒドロキシ−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン(=1,3,5−トリヒドロキシイソシアヌル酸)、1,3,5−トリアセトキシ−ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(メトキシメチルオキシ)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン、ヘキサヒドロ−1−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジン−2,6−ジオン、ヘキサヒドロ−1−ヒドロキシ−3,5−ジメチル−1,3,5−トリアジン−2,6−ジオン、1−アセトキシ−ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン−2,6−ジオン、1−アセトキシ−ヘキサヒドロ−3,5−ジメチル−1,3,5−トリアジン−2,6−ジオンなどが挙げられる。
【0045】
前記窒素原子含有環状化合物のうち、Xが−OR基で且つRが水素原子である化合物(N−ヒドロキシ環状化合物)は、公知の方法に準じて、又は公知の方法の組み合わせにより製造することができる。また、前記窒素原子含有環状化合物のうち、Xが−OR基で且つRがヒドロキシル基の保護基である化合物は、対応するRが水素原子である化合物(N−ヒドロキシ環状化合物)に、慣用の保護基導入反応を利用して、所望の保護基を導入することにより調製することができる。
【0046】
具体的には、前記環状イミド系化合物のうち、Xが−OR基で且つRが水素原子である化合物(N−ヒドロキシ環状イミド化合物)は、慣用のイミド化反応、例えば、対応する酸無水物とヒドロキシルアミンとを反応させ、酸無水物基の開環及び閉環を経てイミド化する方法により得ることができる。また、例えば、N−アセトキシフタルイミドは、N−ヒドロキシフタルイミドに無水酢酸を反応させたり、塩基の存在下でアセチルハライドを反応させることにより得ることができる。また、これ以外の方法で製造することも可能である。
【0047】
前記環状アシルウレア系化合物のうち、例えば、1,3,5−トリアセトキシ−ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン(=1,3,5−トリアセトキシイソシアヌル酸)は、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリヒドロキシ−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン(=1,3,5−トリヒドロキシイソシアヌル酸)に無水酢酸を反応させたり、塩基の存在下でアセチルハライドを反応させることにより得ることができる。
【0048】
特に触媒として好ましい環状イミド系化合物は、脂肪族多価カルボン酸無水物(環状無水物)又は芳香族多価カルボン酸無水物(環状無水物)から誘導されるN−ヒドロキシ環状イミド化合物(例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシフタルイミド、N,N′−ジヒドロキシピロメリット酸ジイミド、N−ヒドロキシグルタルイミド、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド、N,N′−ジヒドロキシ1,8:4,5−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドなど);及び該N−ヒドロキシ環状イミド化合物のヒドロキシル基に保護基を導入することにより得られる化合物;環状アシルウレア系化合物などが含まれる。
【0049】
式(1)で表される骨格を環の構成要素として含む窒素原子含有環状化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。前記窒素原子含有環状化合物は反応系内で生成させてもよい。また、前記窒素原子含有環状化合物は担体に担持した形態で用いてもよい。担体としては、活性炭、ゼオライト、シリカ、シリカ−アルミナ、ベントナイトなどの多孔質担体を用いる場合が多い。窒素原子含有環状化合物の担体への担持量は、担体100重量部に対して、例えば0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部、さらに好ましくは1〜20重量部程度である。
【0050】
また、本発明では、系内に、ラジカル発生剤(ラジカル開始剤等)やラジカル反応促進剤を存在させてもよい。このような成分として、例えば、ハロゲン(塩素、臭素など)、過酸(過酢酸、m−クロロ過安息香酸など)、過酸化物(過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)等のヒドロペルオキシドなど)、アゾ系化合物(アゾビスイソブチロニトリルなど)、アセトフェノン類、環状アミン−N−オキシル化合物、硝酸又は亜硝酸若しくはそれらの塩、二酸化窒素、ベンズアルデヒド等のアルデヒド(目的化合物が芳香族カルボン酸又は芳香族カルボン酸無水物である場合には、該酸化物に対応するアルデヒドなど)などが挙げられる。これらの成分を系内に存在させると、反応が促進される場合がある。前記成分の使用量は、前記式(1)で表される骨格を環の構成要素として含む窒素原子含有環状化合物1モルに対して、例えば0.0001〜1.0モル、好ましくは0.001〜0.7モル程度である。
【0051】
[有機化合物の酸化方法]
本発明の有機化合物の酸化方法では、前記触媒の存在下、液相にて有機化合物を分子状酸素により酸化して含酸素有機化合物を得る。
【0052】
反応原料(基質)として用いる有機化合物としては、上記触媒の存在下、酸素により酸化可能な化合物であれば特に限定されない。基質としては、安定なラジカルを生成しうる化合物(A)が好ましい。このような化合物の代表的な例として、(A1)ヘテロ原子の隣接位に炭素−水素結合を有するヘテロ原子含有化合物、(A2)炭素−ヘテロ原子二重結合を有する化合物、(A3)メチン炭素原子を有する化合物、(A4)不飽和結合の隣接位に炭素−水素結合を有する化合物、(A5)非芳香族性環状炭化水素、(A6)共役化合物、(A7)芳香族化合物、(A8)直鎖状アルカン、及び(A9)オレフィン類などが挙げられる。
【0053】
これらの化合物は、反応を阻害しない範囲で種々の置換基を有していてもよい。置換基として、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、メルカプト基、オキソ基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基など)、置換チオ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、スルホ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環基などが挙げられる。
【0054】
ヘテロ原子の隣接位に炭素−水素結合を有するヘテロ原子含有化合物(A1)としては、(A1-1)第1級若しくは第2級アルコール又は第1級若しくは第2級チオール、(A1-2)酸素原子の隣接位に炭素−水素結合を有するエーテル又は硫黄原子の隣接位に炭素−水素結合を有するスルフィド、(A1-3)酸素原子の隣接位に炭素−水素結合を有するアセタール(ヘミアセタールも含む)又は硫黄原子の隣接位に炭素−水素結合を有するチオアセタール(チオヘミアセタールも含む)などが例示できる。
【0055】
前記(A1-1)における第1級若しくは第2級アルコールには、広範囲のアルコールが含まれる。アルコールは、1価、2価又は多価アルコールの何れであってもよい。
【0056】
代表的な第1級アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−オクタノール、1−デカノール、2−ブテン−1−オール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ペンタエリスリトールなどの炭素数1〜30(好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜15)程度の飽和又は不飽和脂肪族第1級アルコール;シクロペンチルメチルアルコール、シクロヘキシルメチルアルコール、2−シクロヘキシルエチルアルコールなどの飽和又は不飽和脂環式第1級アルコール;ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、3−フェニルプロピルアルコール、桂皮アルコールなどの芳香族第1級アルコール;2−ヒドロキシメチルピリジンなどの複素環式アルコールが挙げられる。
【0057】
代表的な第2級アルコールとしては、2−プロパノール、s−ブチルアルコール、2−ペンタノール、2−オクタノール、2−ペンテン−4−オール、1,2−プロパンジオール、2,3−ブタンジオールや2,3−ペンタンジオールなどのビシナルジオール類などの炭素数3〜30(好ましくは3〜20、さらに好ましくは3〜15)程度の飽和又は不飽和脂肪族第2級アルコール;1−シクロペンチルエタノール、1−シクロヘキシルエタノールなどの、ヒドロキシル基の結合した炭素原子に脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素(シクロアルキル基など)とが結合している第2級アルコール;シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロオクタノール、シクロドデカノール、2−シクロヘキセン−1−オール、2−アダマンタノール、橋頭位にヒドロキシル基を1〜4個有する2−アダマンタノール、アダマンタン環にオキソ基を有する2−アダマンタノールなどの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜15員、特に5〜8員)程度の飽和又は不飽和脂環式第2級アルコール(橋かけ環式第2級アルコールを含む);1−フェニルエタノールなどの芳香族第2級アルコール;1−(2−ピリジル)エタノールなどの複素環式第2級アルコールなどが含まれる。
【0058】
さらに、代表的なアルコールには、1−アダマンタンメタノール、α−メチル−1−アダマンタンメタノール、3−ヒドロキシ−α−メチル−1−アダマンタンメタノール、3−カルボキシ−α−メチル−1−アダマンタンメタノール、α−メチル−3a−パーヒドロインデンメタノール、α−メチル−4a−デカリンメタノール、α−メチル−4a−パーヒドロフルオレンメタノール、α−メチル−2−トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカンメタノール、α−メチル−1−ノルボルナンメタノールなどの橋かけ環炭化水素基を有するアルコール(ヒドロキシル基が結合している炭素原子に橋かけ環炭化水素基が結合している化合物など)も含まれる。
【0059】
好ましいアルコールには、第2級アルコール(例えば、2−プロパノール、s−ブチルアルコールなどの脂肪族第2級アルコール;1−シクロヘキシルエタノールなどのヒドロキシル基の結合した炭素原子に脂肪族炭化水素基(例えば、C1−4アルキル基、C6−14アリール基など)と非芳香族性炭素環式基(例えば、C3−15シクロアルキル基又はシクロアルケニル基など)とが結合している第2級アルコール;シクロペンタノール、シクロヘキサノール、2−アダマンタノールなどの3〜15員程度の脂環式第2級アルコール;1−フェニルエタノールなどの芳香族第2級アルコール)、及び前記橋かけ環炭化水素基を有するアルコールが含まれる。
【0060】
前記(A1-1)における第1級若しくは第2級チオールとしては、前記第1級若しくは第2級アルコールに対応するチオールが挙げられる。
【0061】
前記(A1-2)における酸素原子の隣接位に炭素−水素結合を有するエーテルとしては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジアリルエーテルなどの脂肪族エーテル類;アニソール、フェネトール、ジベンジルエーテル、フェニルベンジルエーテル等の芳香族エーテル類;ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ピラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、モルホリン、クロマン、イソクロマンなどの環状エーテル類(芳香環又は非芳香環が縮合していてもよい)などが挙げられる。
【0062】
前記(A1-2)における硫黄原子の隣接位に炭素−水素結合を有するスルフィドとしては、前記酸素原子の隣接位に炭素−水素結合を有するエーテルに対応するスルフィドが挙げられる。
【0063】
前記(A1-3)における酸素原子の隣接位に炭素−水素結合を有するアセタールとしては、例えば、アルデヒドとアルコールや酸無水物などから誘導されるアセタールが挙げられ、該アセタールには環状アセタール及び非環状アセタールが含まれる。前記アルデヒドとして、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒドなどの脂肪族アルデヒド;シクロペンタンカルバルデヒド、シクロヘキサンカルバルデヒドなどの脂環式アルデヒド;ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒドなどの芳香族アルデヒドなどが挙げられる。また、前記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、ベンジルアルコールなどの一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジブロモ−1,3−プロパンジオールなどの二価アルコールなどが挙げられる。代表的なアセタールとして、1,3−ジオキソラン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、2−エチル−1,3−ジオキソランなどの1,3−ジオキソラン化合物;2−メチル−1,3−ジオキサンなどの1,3−ジオキサン化合物;アセトアルデヒドジメチルアセタールなどのジアルキルアセタール化合物などが例示される。
【0064】
前記(A1-3)における硫黄原子の隣接位に炭素−水素結合を有するチオアセタールとしては、前記酸素原子の隣接位に炭素−水素結合を有するアセタールに対応するチオアセタールが挙げられる。
【0065】
前記炭素−ヘテロ原子二重結合を有する化合物(A2)としては、(A2-1)カルボニル基含有化合物、(A2-2)チオカルボニル基含有化合物、(A2-3)イミン類などが挙げられる。カルボニル基含有化合物(A2-1)には、ケトン及びアルデヒドが含まれ、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、3−ペンタノン、メチルビニルケトン、メチルシクロヘキシルケトン、アセトフェノンなどの鎖状ケトン類;シクロペンタノン、シクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン、イソホロン、シクロデカノン、シクロドデカノン、1,4−シクロオクタンジオン、2,2−ビス(4−オキソシクロヘキシル)プロパン、2−アダマンタノンなどの環状ケトン類;ビアセチル(2,3−ブタンジオン)、ビベンゾイル(ベンジル)、アセチルベンゾイル、シクロヘキサン−1,2−ジオンなどの1,2−ジカルボニル化合物(α−ジケトン類など);アセトイン、ベンゾインなどのα−ケトアルコール類;アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブタナール、ヘキサナール、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジピンアルデヒドなどの脂肪族アルデヒド;シクロヘキシルアルデヒド、シトラール、シトロネラールなどの脂環式アルデヒド;ベンズアルデヒド、カルボキシベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、サリチルアルデヒド、アニスアルデヒド、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどの芳香族アルデヒド;フルフラール、ニコチンアルデヒドなどの複素環アルデヒドなどが挙げられる。
【0066】
チオカルボニル基含有化合物(A2-2)としては、前記カルボニル基含有化合物(A2-1)に対応するチオカルボニル基含有化合物が挙げられる。
【0067】
イミン類(A2-3)には、前記カルボニル基含有化合物(A2-1)と、アンモニア又はアミン類(例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ベンジルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリンなどのアミン;ヒドロキシルアミン、O−メチルヒドロキシルアミンなどのヒドロキシルアミン類;ヒドラジン、メチルヒドラジン、フェニルヒドラジンなどのヒドラジン類など)とから誘導されるイミン類(オキシムやヒドラゾンも含む)が含まれる。
【0068】
前記メチン炭素原子を有する化合物(A3)には、(A3-1)環の構成単位としてメチン基(すなわち、メチン炭素−水素結合)を含む環状化合物、(A3-2)メチン炭素原子を有する鎖状化合物が含まれる。
【0069】
環状化合物(A3-1)には、(A3-1a)少なくとも1つのメチン基を有する橋かけ環式化合物、(A3-1b)環に炭化水素基が結合した非芳香族性環状化合物(脂環式炭化水素など)などが含まれる。なお、前記橋かけ環式化合物には、2つの環が2個の炭素原子を共有している化合物、例えば、縮合多環式芳香族炭化水素類の水素添加生成物なども含まれる。
【0070】
橋かけ環式化合物(A3-1a)としては、例えば、デカリン、ビシクロ[2.2.0]ヘキサン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、ビシクロ[4.3.2]ウンデカン、ビシクロ[3.3.3]ウンデカン、ツジョン、カラン、ピナン、ピネン、ボルナン、ボルニレン、ノルボルナン、ノルボルネン、カンファー、ショウノウ酸、カンフェン、トリシクレン、トリシクロ[5.2.1.0
3,8]デカン、トリシクロ[4.2.1.1
2,5]デカン、エキソトリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン、エンドトリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン、トリシクロ[4.3.1.1
2,5]ウンデカン、トリシクロ[4.2.2.1
2,5]ウンデカン、エンドトリシクロ[5.2.2.0
2,6]ウンデカン、アダマンタン、1−アダマンタノール、1−クロロアダマンタン、1−メチルアダマンタン、1,3−ジメチルアダマンタン、1−メトキシアダマンタン、1−カルボキシアダマンタン、1−メトキシカルボニルアダマンタン、1−ニトロアダマンタン、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカン、ペルヒドロアントラセン、ペルヒドロアセナフテン、ペルヒドロフェナントレン、ペルヒドロフェナレン、ペルヒドロインデン、キヌクリジンなどの2〜4環式の橋かけ環式炭化水素又は橋かけ複素環化合物及びそれらの誘導体などが挙げられる。これらの橋かけ環式化合物は、橋頭位(2環が2個の原子を共有している場合には接合部位に相当)にメチン炭素原子を有する。
【0071】
環に炭化水素基が結合した非芳香族性環状化合物(A3-1b)としては、1−メチルシクロペンタン、1−メチルシクロヘキサン、リモネン、メンテン、メントール、カルボメントン、メントンなどの、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)程度の炭化水素基(例えば、アルキル基など)が環に結合した3〜15員程度の脂環式炭化水素及びその誘導体などが挙げられる。環に炭化水素基が結合した非芳香族性環状化合物(A3-1b)は、環と前記炭化水素基との結合部位にメチン炭素原子を有する。
【0072】
メチン炭素原子を有する鎖状化合物(A3-2)としては、第3級炭素原子を有する鎖状炭化水素類、例えば、イソブタン、イソペンタン、イソヘキサン、3−メチルペンタン、2,3−ジメチルブタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、3−メチルオクタンなどの炭素数4〜20(好ましくは、4〜10)程度の脂肪族炭化水素類およびその誘導体などが例示できる。
【0073】
前記不飽和結合の隣接位に炭素−水素結合を有する化合物(A4)としては、(A4-1)芳香族性環の隣接位(いわゆるベンジル位)にメチル基又はメチレン基を有する芳香族化合物、(A4-2)不飽和結合(例えば、炭素−炭素不飽和結合、炭素−酸素二重結合など)の隣接位にメチル基又はメチレン基を有する非芳香族性化合物などが挙げられる。
【0074】
前記芳香族性化合物(A4-1)において、芳香族性環は、芳香族炭化水素環、芳香族性複素環の何れであってもよい。芳香族炭化水素環には、ベンゼン環、縮合炭素環(例えば、ナフタレン、アズレン、インダセン、アントラセン、フェナントレン、トリフェニレン、ピレンなどの2〜10個の4〜7員炭素環が縮合した縮合炭素環など)などが含まれる。芳香族性複素環としては、例えば、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、フラン、オキサゾール、イソオキサゾールなどの5員環、4−オキソ−4H−ピランなどの6員環、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、4−オキソ−4H−クロメンなどの縮合環など)、ヘテロ原子としてイオウ原子を含む複素環(例えば、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾールなどの5員環、4−オキソ−4H−チオピランなどの6員環、ベンゾチオフェンなどの縮合環など)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾールなどの5員環、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンなどの6員環、インドール、キノリン、アクリジン、ナフチリジン、キナゾリン、プリンなどの縮合環など)などが挙げられる。
【0075】
なお、芳香族性環の隣接位のメチレン基は、前記芳香族性環に縮合した非芳香族性環を構成するメチレン基であってもよい。また、前記(A4-1)において、芳香族性環と隣接する位置にメチル基とメチレン基の両方の基が存在していてもよい。
【0076】
芳香族性環の隣接位にメチル基を有する芳香族化合物としては、例えば、芳香環に1〜6個程度のメチル基が置換した芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、o−t−ブチルトルエン、m−t−ブチルトルエン、p−t−ブチルトルエン、1−エチル−4−メチルベンゼン、1−エチル−3−メチルベンゼン、1−イソプロピル−4−メチルベンゼン、1−t−ブチル−4−メチルベンゼン、1−メトキシ−4−メチルベンゼン、メシチレン、プソイドクメン、デュレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、メチルアントラセン、4,4′−ジメチルビフェニル、トルアルデヒド、ジメチルベンズアルデヒド、トリメチルベンズアルデヒド、トルイル酸、トリメチル安息香酸、ジメチル安息香酸など)、複素環に1〜6個程度のメチル基が置換した複素環化合物(例えば、2−メチルフラン、3−メチルフラン、3−メチルチオフェン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、4−メチルインドール、2−メチルキノリン、3−メチルキノリンなど)などが例示できる。
【0077】
芳香族性環の隣接位にメチレン基を有する芳香族化合物としては、例えば、炭素数2以上のアルキル基又は置換アルキル基を有する芳香族炭化水素類(例えば、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、1,4−ジエチルベンゼン、ジフェニルメタンなど)、炭素数2以上のアルキル基又は置換アルキル基を有する芳香族性複素環化合物(例えば、2−エチルフラン、3−プロピルチオフェン、4−エチルピリジン、4−ブチルキノリンなど)、芳香族性環に非芳香族性環が縮合した化合物であって、該非芳香族性環のうち芳香族性環に隣接する部位にメチレン基を有する化合物(ジヒドロナフタレン、インデン、インダン、テトラリン、フルオレン、アセナフテン、フェナレン、インダノン、キサンテン等)などが例示できる。
【0078】
不飽和結合の隣接位にメチル基又はメチレン基を有する非芳香族性化合物(A4-2)には、例えば、(A4-2a)いわゆるアリル位にメチル基又はメチレン基を有する鎖状不飽和炭化水素類、(A4-2b)カルボニル基の隣接位にメチル基又はメチレン基を有する化合物が例示できる。
【0079】
前記鎖状不飽和炭化水素類(A4-2a)としては、例えば、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、1,5−ヘキサジエン、1−オクテン、3−オクテン、ウンデカトリエンなどの炭素数3〜20程度の鎖状不飽和炭化水素類が例示できる。前記化合物(A4-2b)には、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、3−ペンタノン、アセトフェノンなどの鎖状ケトン類;シクロヘキサノンなどの環状ケトン類)、カルボン酸又はその誘導体(例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、フェニル酢酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、及びこれらのエステルなど)などが含まれる。
【0080】
前記非芳香族性環状炭化水素(A5)には、(A5-1)シクロアルカン類及び(A5-2)シクロアルケン類が含まれる。
【0081】
シクロアルカン類(A5-1)としては、3〜30員のシクロアルカン環を有する化合物、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロドデカン、シクロテトラデカン、シクロヘキサデカン、シクロテトラコサン、シクロトリアコンタン、及びこれらの誘導体などが例示できる。好ましいシクロアルカン環には、5〜30員、特に5〜20員のシクロアルカン環が含まれる。
【0082】
シクロアルケン類(A5-2)には、3〜30員のシクロアルケン環を有する化合物、例えば、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロヘキセン、1−メチル−シクロヘキセン、イソホロン、シクロヘプテン、シクロドデカエンなどのほか、シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエンなどのシクロアルカジエン類、シクロオクタトリエンなどのシクロアルカトリエン類、及びこれらの誘導体などが含まれる。好ましいシクロアルケン類には、3〜20員環、特に3〜12員環を有する化合物が含まれる。
【0083】
前記共役化合物(A6)には、共役ジエン類(A6-1)、α,β−不飽和ニトリル(A6-2)、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体(例えば、エステル、アミド、酸無水物等)(A6-3)などが挙げられる。
【0084】
共役ジエン類(A6-1)としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、2−クロロブタジエン、2−エチルブタジエンなどが挙げられる。なお、共役ジエン類(A6-1)には、二重結合と三重結合とが共役している化合物、例えば、ビニルアセチレンなども含めるものとする。
【0085】
α,β−不飽和ニトリル(A6-2)としては、例えば、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体(A6-3)としては、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなど(メタ)アクリルアミド誘導体などが挙げられる。
【0086】
前記芳香族炭化水素(A7)としては、ベンゼン、ナフタレン、アセナフチレン、フェナントレン、アントラセン、ナフタセンなどの、少なくともベンゼン環を1つ有する芳香族化合物、好ましくは少なくともベンゼン環が複数個(例えば、2〜10個)縮合している縮合多環式芳香族化合物などが挙げられる。これらの芳香族炭化水素は、1又は2以上の置換基を有していてもよい。置換基を有する芳香族炭化水素の具体例として、例えば、2−クロロナフタレン、2−メトキシナフタレン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、1−ブロモアントラセン、2−メチルアントラセン、2−t−ブチルアントラセン、2−カルボキシアントラセン、2−エトキシカルボニルアントラセン、2−シアノアントラセン、2−ニトロアントラセン、2−メチルペンタレンなどが挙げられる。また、前記ベンゼン環には、非芳香族性炭素環、芳香族性複素環、又は非芳香族性複素環が縮合していてもよい。
【0087】
前記直鎖状アルカン(A8)としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン等の炭素数1〜30程度(好ましくは炭素数1〜20程度)の直鎖状アルカンが挙げられる。
【0088】
前記オレフィン類(A9)としては、置換基(例えば、ヒドロキシル基、アシルオキシ基等の前記例示の置換基など)を有していてもよいα−オレフィン及び内部オレフィンの何れであってもよく、ジエンなどの炭素−炭素二重結合を複数個有するオレフィン類も含まれる。例えば、オレフィン類(A9)として、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、1−アセトキシ−3,7−ジメチル−2,6−オクタジエン、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、3−ビニルピリジン、3−ビニルチオフェンなどの鎖状オレフィン類;シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロデセン、シクロドデセン、1,4−シクロヘキサジエン、リモネン、1−p−メンテン、3−p−メンテン、カルベオール、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、ビシクロ[3.2.1]オクタ−2−エン、α−ピネン、2−ボルネンなどの環状オレフィン類などが挙げられる。
【0089】
上記のラジカルを生成可能な化合物(A)は単独で用いてもよく、同種又は異種のものを2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの化合物を2種以上、特に異種の化合物を2種以上併用すると、一方の基質が他方の基質の共反応剤(共酸化剤など)として機能し、反応速度が著しく向上することがある。
【0090】
本発明において、基質としては、メチン炭素原子を有する炭化水素(アダマンタン等のメチン基を有する橋かけ環式化合物など)、芳香族性環の隣接位にメチル基又はメチレン基を有する芳香族炭化水素(トルエン、キシレン等)、非芳香族性環状炭化水素(シクロヘキサン等のシクロアルカンなど)などの炭化水素類が特に好ましい。本発明によれば、これらの炭化水素類から、ヒドロペルオキシド、アルコール、カルボニル化合物、カルボン酸等を高い収率で、工業的に効率よく製造することができる。
【0091】
酸化剤としては分子状酸素を用いることができる。酸素は系内で発生させてもよい。分子状酸素は、特に制限されず、純粋な酸素を用いてもよく、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガスで希釈した酸素や、常圧又は加圧(1〜100気圧)の空気を使用してもよい。分子状酸素の使用量は、基質の種類に応じて適宜選択できるが、通常、基質1モルに対して、0.5モル以上(例えば、1モル以上)、好ましくは1〜100モル、さらに好ましくは2〜50モル程度である。基質に対して過剰モルの分子状酸素を使用する場合が多い。
【0092】
固体超強酸に担持された遷移金属化合物の使用量としては、例えば、遷移金属化合物中の金属原子換算で基質に対して0.0001〜50モル%程度であり、なかでも0.0001〜5モル%程度がより好ましい。
【0093】
窒素原子含有環状化合物の使用量としては、例えば、基質に対して0.0001〜50モル%程度であり、なかでも0.01〜20モル%程度がより好ましい。
【0094】
本発明における酸化反応は、液相で行われ、溶媒を使用してもよく、使用しなくともよい。溶媒を使用する場合、溶媒としては、例えば、酢酸、プロピオン酸などの有機酸;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ニトロベンゼン、ニトロメタン、ニトロエタンなどのニトロ化合物;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;これらの混合溶媒など挙げられる。これらのなかでも、溶媒としては酢酸、酢酸エチルが好ましく、特に酢酸が好ましい。また、溶媒の使用量としては、例えば、基質の濃度が0.01〜80重量%程度となる範囲内で使用することが好ましい。
【0095】
本発明の方法は温和な条件において円滑に反応が進行するという特徴を有する。反応温度は、基質の種類や目的生成物の種類などに応じて適当に選択でき、例えば、10〜200℃、好ましくは50〜180℃程度、特に好ましくは75〜150℃程度である。反応は、常圧又は加圧下で行うことができ、加圧下で反応させる場合には、通常、0.1〜10MPa(例えば、0.15〜8MPa、特に0.5〜8MPa)程度である。反応時間は、反応温度及び圧力に応じて、例えば、10分〜48時間程度の範囲から適当に選択できる。
【0096】
反応は、酸素の存在下又は酸素の流通下、回分式、半回分式、連続式などの慣用の方法により行うことができる。反応は流動床式又は固定床式で行うのが好ましい。
【0097】
反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0098】
[遷移金属化合物の回収及び再利用]
反応終了後、反応に使用した固体超強酸に担持された遷移金属化合物は、例えば、反応液から濾過、遠心分離などの物理的な分離手法により容易に回収することができる。回収された固体超強酸に担持された遷移金属化合物はそのままで、又は洗浄、乾燥処理を施した後、再利用される。洗浄処理は、例えば、酢酸エチル等の適宜な溶媒により数回(例えば2〜3回)洗浄する方法により行うことができる。
【0099】
本発明における遷移金属化合物は、固体超強酸に担持された状態で使用されるため、有機合成反応においても遷移金属化合物が反応溶液中に溶出しにくく、固体超強酸を回収することで、効率的に遷移金属化合物を回収することができる。また、回収された遷移金属化合物は、未使用の遷移金属化合物と比べ、ほぼ同等の触媒能を示すことができ、使用−回収を複数回繰り返しても、例えば10回程度使用−再生を繰り返しても、その触媒能の低下を著しく抑制することができる。そのため、本発明に係る含酸素有機化合物の製造方法によれば、含酸素有機化合物の製造コストの多くの割合を占める遷移金属化合物を回収し、繰り返し利用することができるため、製造コストを大幅に削減することができ、化学産業上有用な含酸素有機化合物を安価に提供することができる。
【実施例】
【0100】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、反応生成物の分析は、ガスクロマトグラフィー及び高速液体クロマトグラフィー等により行った。
【0101】
調製例1
酢酸コバルト(II)四水和物250mgを酢酸10mLに溶解し、続いて硫酸化ジルコニア(和光純薬工業製、ペレット状)2.5gを懸濁し、100℃で16時間攪拌した。攪拌中に粉砕して粉末状になった担体を除去し、残存する淡紫色を呈したペレットを回収し、酢酸、エーテルで洗浄することにより触媒Aを得た。得られた触媒Aを濃硝酸に浸漬して触媒Aに担持されたコバルト金属を溶出し、コバルト金属が溶出した濃硝酸溶液を原子吸光法により分析したところ、触媒Aのコバルト金属の担持量は1.6重量%であった。
【0102】
調製例2
酢酸コバルト(II)四水和物250mg、酢酸マンガン(II)四水和物250mgとを酢酸10mLに溶解し、続いて硫酸化ジルコニア(和光純薬工業製、ペレット状)2.5gを懸濁し、100℃で16時間攪拌した。攪拌中に粉砕して粉末状になった担体を除去し、残存する紫色を呈したペレットを回収し、酢酸、エーテルで洗浄することにより触媒Bを得た。得られた触媒Bを濃硝酸に浸漬して触媒Bに担持されたコバルト金属及びマンガン金属を溶出し、コバルト金属及びマンガン金属が溶出した濃硝酸溶液を原子吸光法により分析したところ、触媒Bのコバルト金属の担持量は1.3重量%、マンガン金属の担持量は1.3重量%であった。
【0103】
調製例3
酢酸コバルト(II)四水和物250mgを酢酸10mLに溶解し、続いて硫酸化ジルコニア(和光純薬工業製、ペレット状)2.5gを懸濁し、100℃で16時間攪拌した。攪拌中に粉砕して粉末状になった担体を除去し、残存する淡紫色を呈したペレットを回収した。
ジルコニウム(IV)(オキソ)ビス(アセチルアセトナート)158mgを酢酸5mLに溶解し、回収されたペレット1.33gを懸濁して、100℃で14時間撹拌した。攪拌中に粉砕して粉末状になった担体を除去し、残存するペレットを回収し、酢酸、エーテルで洗浄することにより触媒Cを得た。得られた触媒Cを濃硝酸に浸漬して触媒Cに担持されたコバルト金属を溶出し、コバルト金属が溶出した濃硝酸溶液を原子吸光法により分析したところ、触媒Cのコバルト金属の担持量は1.6重量%であった。
【0104】
実施例1
p−t−ブチルトルエン300mgを酢酸3mLに溶解し、触媒A150mgとN−ヒドロキシフタルイミド33mgとを加えて、酸素雰囲気下に100℃で6時間攪拌した。反応溶液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、p−t−ブチルトルエンの転化率は82.2%であり、p−t−ブチル安息香酸が収率66.5%、p−t−ブチルベンズアルデヒドが収率3.8%で得られた。触媒Aを濾過により反応液から分離し、酢酸エチルで2回洗浄した後、室温(25℃)で減圧乾燥し、触媒A1を得た。触媒A1をろ別した後の反応液中のコバルトイオンの濃度を原子吸光法により測定したところ、24ppmであった。
【0105】
実施例2
触媒Aの代わりに実施例1で得られた触媒A1を使用した以外は実施例1と同様にしたところ、p−t−ブチルトルエンの転化率は85.1%であり、p−t−ブチル安息香酸が収率65.9%、p−t−ブチルベンズアルデヒドが収率3.4%で得られた。
実施例1と同様にして、触媒A1を回収し、触媒A2を得た。
【0106】
実施例3
触媒Aの代わりに実施例2で得られた触媒A2を使用した以外は実施例1と同様にしたところ、p−t−ブチルトルエンの転化率は82.4%であり、p−t−ブチル安息香酸が収率63.3%、p−t−ブチルベンズアルデヒドが収率3.6%で得られた。
実施例1と同様にして、触媒A2を回収し、触媒A3を得た。
【0107】
実施例4
触媒Aの代わりに実施例3で得られた触媒A3を使用した以外は実施例1と同様にしたところ、p−t−ブチルトルエンの転化率は81.5%であり、p−t−ブチル安息香酸が収率59.2%、p−t−ブチルベンズアルデヒドが収率4.2%で得られた。
実施例1と同様にして、触媒A3を回収し、触媒A4を得た。
【0108】
実施例5
触媒Aの代わりに実施例4で得られた触媒A4を使用した以外は実施例1と同様にしたところ、p−t−ブチルトルエンの転化率は82.4%であり、p−t−ブチル安息香酸が収率65.0%、p−t−ブチルベンズアルデヒドが収率3.8%で得られた。
実施例1と同様にして、触媒A4を回収し、触媒A5を得た。
【0109】
実施例6
触媒Aの代わりに実施例5で得られた触媒A5を使用した以外は実施例1と同様にしたところ、p−t−ブチルトルエンの転化率は77.6%であり、p−t−ブチル安息香酸が収率52.7%、p−t−ブチルベンズアルデヒドが収率4.5%で得られた。
実施例1と同様にして、触媒A5を回収し、触媒A6を得た。
【0110】
実施例7
触媒Aの代わりに実施例6で得られた触媒A6を使用した以外は実施例1と同様にしたところ、p−t−ブチルトルエンの転化率は75.6%であり、p−t−ブチル安息香酸が収率48.3%、p−t−ブチルベンズアルデヒドが収率4.3%で得られた。
実施例1と同様にして、触媒A6を回収し、触媒A7を得た。
【0111】
実施例8
触媒Aの代わりに実施例7で得られた触媒A7を使用した以外は実施例1と同様にしたところ、p−t−ブチルトルエンの転化率は76.6%であり、p−t−ブチル安息香酸が収率56.8%、p−t−ブチルベンズアルデヒドが収率4.7%で得られた。
実施例1と同様にして、触媒A7を回収し、触媒A8を得た。
【0112】
実施例9
触媒Aの代わりに実施例8で得られた触媒A8を使用した以外は実施例1と同様にしたところ、p−t−ブチルトルエンの転化率は75.8%であり、p−t−ブチル安息香酸が収率64.5%、p−t−ブチルベンズアルデヒドが収率5.3%で得られた。
実施例1と同様にして、触媒A8を回収し、触媒A9を得た。
【0113】
実施例10
触媒Aの代わりに実施例9で得られた触媒A9を使用した以外は実施例1と同様にしたところ、p−t−ブチルトルエンの転化率は75.5%であり、p−t−ブチル安息香酸が収率48.7%、p−t−ブチルベンズアルデヒドが収率4.8%で得られた。
実施例1と同様にして、触媒A9を回収し、触媒A10を得た。
【0114】
実施例11
p−t−ブチルトルエン300mgを酢酸3mLに溶解し、触媒B150mgとN−ヒドロキシフタルイミド33mgとを加えて、酸素雰囲気下に100℃で6時間攪拌した。反応溶液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、p−t−ブチルトルエンの転化率は76.5%であり、p−t−ブチル安息香酸が収率55.6%、p−t−ブチルベンズアルデヒドが収率4.0%で得られた。触媒Bを濾過により反応液から分離し、酢酸エチルで2回洗浄した後、室温(25℃)で減圧乾燥し、触媒B1を得た。触媒B1をろ別した後の反応液中のコバルトイオン及びマンガンイオンの濃度を原子吸光法により測定したところ、それぞれ21ppm、24ppmであった。
【0115】
実施例12
触媒Bの代わりに実施例11で得られた触媒B1を使用した以外は実施例11と同様にしたところ、p−t−ブチルトルエンの転化率は86.7%であり、p−t−ブチル安息香酸が収率76.1%、p−t−ブチルベンズアルデヒドが収率3.0%で得られた。
実施例11と同様にして、触媒B1を回収し、触媒B2を得た。
【0116】
実施例13
触媒Bの代わりに実施例12で得られた触媒B2を使用した以外は実施例11と同様にしたところ、p−t−ブチルトルエンの転化率は86.7%であり、p−t−ブチル安息香酸が収率61.4%、p−t−ブチルベンズアルデヒドが収率3.0%で得られた。
実施例11と同様にして、触媒B2を回収し、触媒B3を得た。
【0117】
実施例14
触媒Bの代わりに実施例13で得られた触媒B3を使用した以外は実施例11と同様にしたところ、p−t−ブチルトルエンの転化率は85.7%であり、p−t−ブチル安息香酸が収率61.8%、p−t−ブチルベンズアルデヒドが収率3.0%で得られた。
実施例11と同様にして、触媒B3を回収し、触媒B4を得た。
【0118】
実施例15
触媒Bの代わりに実施例14で得られた触媒B4を使用した以外は実施例11と同様にしたところ、p−t−ブチルトルエンの転化率は84.7%であり、p−t−ブチル安息香酸が収率70.1%、p−t−ブチルベンズアルデヒドが収率3.6%で得られた。
実施例11と同様にして、触媒B4を回収し、触媒B5を得た。
【0119】
実施例16
触媒Bの代わりに実施例15で得られた触媒B5を使用した以外は実施例11と同様にしたところ、p−t−ブチルトルエンの転化率は83.2%であり、p−t−ブチル安息香酸が収率75.6%、p−t−ブチルベンズアルデヒドが収率3.9%で得られた。
実施例11と同様にして、触媒B5を回収し、触媒B6を得た。
【0120】
実施例17
触媒Bの代わりに実施例16で得られた触媒B6を使用した以外は実施例11と同様にしたところ、p−t−ブチルトルエンの転化率は85.5%であり、p−t−ブチル安息香酸が収率60.5%、p−t−ブチルベンズアルデヒドが収率3.2%で得られた。
実施例11と同様にして、触媒B6を回収し、触媒B7を得た。
【0121】
実施例18
触媒Bの代わりに実施例17で得られた触媒B7を使用した以外は実施例11と同様にしたところ、p−t−ブチルトルエンの転化率は80.8%であり、p−t−ブチル安息香酸が収率68.2%、p−t−ブチルベンズアルデヒドが収率4.5%で得られた。
実施例11と同様にして、触媒B7を回収し、触媒B8を得た。
【0122】
実施例19
触媒Bの代わりに実施例18で得られた触媒B8を使用した以外は実施例11と同様にしたところ、p−t−ブチルトルエンの転化率は78.9%であり、p−t−ブチル安息香酸が収率53.9%、p−t−ブチルベンズアルデヒドが収率4.6%で得られた。
実施例11と同様にして、触媒B8を回収し、触媒B9を得た。
【0123】
実施例20
触媒Bの代わりに実施例19で得られた触媒B9を使用した以外は実施例11と同様にしたところ、p−t−ブチルトルエンの転化率は80.1%であり、p−t−ブチル安息香酸が収率55.7%、p−t−ブチルベンズアルデヒドが収率4.4%で得られた。
【0124】
比較例1
p−t−ブチルトルエン300mgを酢酸3mLに溶解し、硫酸化ジルコニアのペレット150mgとN−ヒドロキシフタルイミド33mgとを加えて、酸素雰囲気下に100℃で6時間攪拌した。反応溶液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、p−t−ブチルトルエンの転化率は0%であった。
【0125】
比較例2
p−t−ブチルトルエン300mgを酢酸3mLに溶解し、酢酸コバルト(II)四水和物10mgとN−ヒドロキシフタルイミド33mgとを加えて、酸素雰囲気下に100℃で6時間攪拌した。反応溶液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、p−t−ブチルトルエンの転化率は100%であり、p−t−ブチル安息香酸が収率93.5%で得られた。反応溶液中のコバルトイオンの濃度を原子吸光法により測定したところ、800ppmであった。
【0126】
実施例21
p−t−ブチルトルエン300mgを使用する代わりにアダマンタン286mgを使用した以外は実施例11と同様にしたところ、アダマンタンの転化率は98%であり、1−アダマンタノールが収率12.0%、2−アダマンタノンが収率8.0%、アダマンタン−1,3−ジオールが収率24%で得られた。
【0127】
実施例22
2−フェニルエタノール249mgを酢酸3mLに溶解し、触媒B(150mg)とN−ヒドロキシフタルイミド32mgとを加えて、常圧の酸素雰囲気下に70℃で4時間攪拌した。反応溶液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、2−フェニルエタノールの転化率は100%であり、アセトフェノンが収率100%で得られた。
触媒Bを濾過により反応液から分離し、酢酸エチルで2回洗浄した後、室温(25℃)で減圧乾燥し、触媒B10を得た。
【0128】
実施例23
1−ウンデカノール375mgを酢酸3mLに溶解し、実施例22で得られた触媒B10(150mg)とN−ヒドロキシフタルイミド32mgとを加えて、常圧の酸素雰囲気下に100℃で4時間攪拌した。反応溶液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、1−ウンデカノールの転化率は44%であり、ウンデカン酸が収率22%で得られた。
【0129】
実施例24
p−t−ブチルトルエン315mgを酢酸3mLに溶解し、触媒C(156mg)とヘキサヒドロ−1,3,5−トリヒドロキシ−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン(以下「THICA」と称する場合がある)42mgとを加えて、酸素雰囲気下に100℃で6時間攪拌した。反応溶液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、p−t−ブチルトルエンの転化率は99.7%であり、p−t−ブチル安息香酸が収率84.5%、p−t−ブチルベンズアルデヒドが収率1.4%で得られた。触媒Cを濾過により反応液から分離し、酢酸エチルで2回洗浄した後、室温(25℃)で減圧乾燥し、触媒C1を得た。
【0130】
実施例25
触媒Cの代わりに実施例24で得られた触媒C1を使用し、THICAを23mg使用した以外は実施例24と同様にしたところ、p−t−ブチルトルエンの転化率は15.5%であり、p−t−ブチル安息香酸が収率4.0%、p−t−ブチルベンズアルデヒドが収率8.0%で得られた。
実施例24と同様にして、触媒C1を回収し、触媒C2を得た。
【0131】
実施例26
触媒C1の代わりに実施例25で得られた触媒C2を使用した以外は実施例25と同様にしたところ、p−t−ブチルトルエンの転化率は44.8%であり、p−t−ブチル安息香酸が収率28.1%、p−t−ブチルベンズアルデヒドが収率10.0%で得られた。
実施例24と同様にして、触媒C2を回収し、触媒C3を得た。
【0132】
実施例27
触媒C1の代わりに実施例25で得られた触媒C3を使用し、反応時間を16時間とした以外は実施例25と同様にしたところ、p−t−ブチルトルエンの転化率は98.9%であり、p−t−ブチル安息香酸が収率84.3%、p−t−ブチルベンズアルデヒドが収率0.9%で得られた。