特許第5709221号(P5709221)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ CKD株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5709221-積層装置 図000002
  • 特許5709221-積層装置 図000003
  • 特許5709221-積層装置 図000004
  • 特許5709221-積層装置 図000005
  • 特許5709221-積層装置 図000006
  • 特許5709221-積層装置 図000007
  • 特許5709221-積層装置 図000008
  • 特許5709221-積層装置 図000009
  • 特許5709221-積層装置 図000010
  • 特許5709221-積層装置 図000011
  • 特許5709221-積層装置 図000012
  • 特許5709221-積層装置 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5709221
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】積層装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20150409BHJP
【FI】
   H01M10/04 Z
【請求項の数】4
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-226760(P2012-226760)
(22)【出願日】2012年10月12日
(65)【公開番号】特開2014-78464(P2014-78464A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2014年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 史朗
(72)【発明者】
【氏名】青木 寛哉
(72)【発明者】
【氏名】大山 剛
(72)【発明者】
【氏名】坂井田 憲彦
【審査官】 竹口 泰裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−212018(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/137918(WO,A1)
【文献】 特開2009−032544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00−10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質の塗布された矩形シート状の正極箔と、負極活物質の塗布された矩形シート状の負極箔とを、絶縁性素材よりなる矩形シート状のセパレータを介して交互に積層してなる積層体を製造するための積層装置であって、
所定の吸着手段により順次、前記正極箔、負極箔又はセパレータを吸着して所定の積層位置へと搬送し、当該積層位置にて前記正極箔、負極箔又はセパレータを載置し積層していく搬送手段と、
前記積層位置に積層される積層体の四隅に対応して設けられると共に、前記搬送手段により前記積層位置へと搬送され載置された前記正極箔の四隅、又は、前記正極箔の下側に積層されるよう、前記搬送手段により前記積層位置へと搬送され載置された前記セパレータの四隅を上から押さえるための4つの第1押さえ部材と、
水平方向における前記第1押さえ部材の位置を、少なくとも前記正極箔又は前記セパレータから外方へ退避した退避位置と、前記正極箔又は前記セパレータの四隅に対応した押さえ位置とに変位可能な第1水平方向変位手段と、
上下方向における前記第1押さえ部材の位置を、少なくとも前記正極箔又は前記セパレータから上方へ離間した離間位置と、前記正極箔又は前記セパレータに当接可能な当接位置とに変位可能な第1上下方向変位手段と、
前記積層位置に積層される積層体の四隅に対応して設けられると共に、前記搬送手段により前記積層位置へと搬送され載置された前記負極箔の四隅、又は、前記負極箔の下側に積層されるよう、前記搬送手段により前記積層位置へと搬送され載置された前記セパレータの四隅を上から押さえるための4つの第2押さえ部材と、
水平方向における前記第2押さえ部材の位置を、少なくとも前記負極箔又は前記セパレータから外方へ退避した退避位置と、前記負極箔又は前記セパレータの四隅に対応した押さえ位置とに変位可能な第2水平方向変位手段と、
上下方向における前記第2押さえ部材の位置を、少なくとも前記負極箔又は前記セパレータから上方へ離間した離間位置と、前記負極箔又は前記セパレータに当接可能な当接位置とに変位可能な第2上下方向変位手段とを備え、
前記搬送手段により新たに前記積層位置へ前記正極箔、負極箔又はセパレータを搬送し載置する際には、当該新たに載置した前記正極箔、負極箔又はセパレータを当該搬送手段により押さえた状態で、その下に既に載置された前記正極箔、負極箔又はセパレータの四隅を押さえている前記4つの第1押さえ部材又は前記4つの第2押さえ部材を退避させた後、前記新たに載置した前記正極箔、負極箔又はセパレータの四隅を、これに対応する前記4つの第1押さえ部材又は前記4つの第2押さえ部材により押さえるよう構成されていることを特徴とする積層装置。
【請求項2】
前記第1押さえ部材及び第2押さえ部材が、前記退避位置から前記押さえ位置へ移動する際の高さが、
当該第1押さえ部材及び第2押さえ部材が、前記押さえ位置から前記退避位置へ戻る際の高さよりも高くなるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の積層装置。
【請求項3】
前記正極箔又は負極箔を押さえていた前記第1押さえ部材又は第2押さえ部材が、前記押さえ位置から前記退避位置へ移動する際の上昇量を、
前記セパレータを押さえていた前記第1押さえ部材又は第2押さえ部材が、前記押さえ位置から前記退避位置へ移動する際の上昇量よりも大きく設定したことを特徴とする請求項1又は2に記載の積層装置。
【請求項4】
前記第1押さえ部材及び第2押さえ部材は、直進動作を行うように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の積層装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば積層電池の製造過程等において用いられる積層装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層電池等を構成する積層体は、正極活物質の塗布された矩形シート状の正極箔と、負極活物質の塗布された矩形シート状の負極箔とが、絶縁性素材よりなる矩形シート状のセパレータを介して交互に積層されて形成されている。
【0003】
かかる積層体を製造するに際しては、一般に正極箔、負極箔、セパレータなどのシート体を所定の搬送装置を用いて順次、所定の積層位置へ搬送し載置していく方法などが採用される。
【0004】
また、シート体を積層(載置)するに際しては、当該シート体が位置ずれを起こさないよう、その縁部が押さえ爪等で押さえつけられる(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−32544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、同一の押さえ爪により、正極箔と負極箔とを区別なく押さえる構成では、押さえ爪が一方の電極箔(例えば正極箔)を押さえた際に付着した活物質(例えば正極活物質)が、他方の電極箔(例えば負極箔)を押さえる際に当該他方の電極箔に付着するおそれがある。
【0007】
また、特許文献1のように、シート体の四隅のうち、対角となる2箇所だけを押さえる構成では、例えば押さえていない箇所がめくれ、折れ曲がった状態で、次のシート体が積層されてしまうおそれがある。
【0008】
上述したような各種不具合が発生した場合には、短絡の原因となるなど、製品品質の低下を招くおそれがある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、製品品質の低下抑制等を図ることのできる積層装置を提供することを主たる目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0011】
手段1.正極活物質の塗布された矩形シート状の正極箔と、負極活物質の塗布された矩形シート状の負極箔とを、絶縁性素材よりなる矩形シート状のセパレータを介して交互に積層してなる積層体を製造するための積層装置であって、
所定の吸着手段により順次、前記正極箔、負極箔又はセパレータを吸着して所定の積層位置へと搬送し、当該積層位置にて前記正極箔、負極箔又はセパレータを載置し積層していく搬送手段と、
前記積層位置に積層される積層体の四隅に対応して設けられると共に、前記搬送手段により前記積層位置へと搬送され載置された前記正極箔の四隅、又は、前記正極箔の下側に積層されるよう、前記搬送手段により前記積層位置へと搬送され載置された前記セパレータの四隅を上から押さえるための4つの第1押さえ部材と、
水平方向における前記第1押さえ部材の位置を、少なくとも前記正極箔又は前記セパレータから外方へ退避した退避位置と、前記正極箔又は前記セパレータの四隅に対応した押さえ位置とに変位可能な第1水平方向変位手段と、
上下方向における前記第1押さえ部材の位置を、少なくとも前記正極箔又は前記セパレータから上方へ離間した離間位置と、前記正極箔又は前記セパレータに当接可能な当接位置とに変位可能な第1上下方向変位手段と、
前記積層位置に積層される積層体の四隅に対応して設けられると共に、前記搬送手段により前記積層位置へと搬送され載置された前記負極箔の四隅、又は、前記負極箔の下側に積層されるよう、前記搬送手段により前記積層位置へと搬送され載置された前記セパレータの四隅を上から押さえるための4つの第2押さえ部材と、
水平方向における前記第2押さえ部材の位置を、少なくとも前記負極箔又は前記セパレータから外方へ退避した退避位置と、前記負極箔又は前記セパレータの四隅に対応した押さえ位置とに変位可能な第2水平方向変位手段と、
上下方向における前記第2押さえ部材の位置を、少なくとも前記負極箔又は前記セパレータから上方へ離間した離間位置と、前記負極箔又は前記セパレータに当接可能な当接位置とに変位可能な第2上下方向変位手段とを備え、
前記搬送手段により新たに前記積層位置へ前記正極箔、負極箔又はセパレータを搬送し載置する際には、当該新たに載置した前記正極箔、負極箔又はセパレータを当該搬送手段により押さえた状態で、その下に既に載置された前記正極箔、負極箔又はセパレータの四隅を押さえている前記4つの第1押さえ部材又は前記4つの第2押さえ部材を退避させた後、前記新たに載置した前記正極箔、負極箔又はセパレータの四隅を、これに対応する前記4つの第1押さえ部材又は前記4つの第2押さえ部材により押さえるよう構成されていることを特徴とする積層装置。
【0012】
上記手段1によれば、正極箔、負極箔、セパレータなどのシート体を積層位置へ搬送し押さえつける搬送手段を備えると共に、正極箔及びその下側に積層されるセパレータを押さえるための押さえ部材(第1押さえ部材)と、負極箔及びその下側に積層されるセパレータを押さえるための押さえ部材(第2押さえ部材)とを別々に備えることによって、以下のような手順で積層工程を進めることができる。
【0013】
例えば積層位置に積層されている積層途中の積層体の上面に新たに正極箔を載置する際には、既にその下に載置されたセパレータの四隅を4つの第1押さえ部材により押さえた状態のまま、搬送手段により搬送してきた正極箔を前記セパレータの上に載置する。
【0014】
続いて、載置した正極箔を搬送手段により押さえた状態で、前記セパレータの四隅を押さえている4つの第1押さえ部材を一旦退避させた後、再度、4つの第1押さえ部材により正極箔の四隅を押さえる。その後、搬送手段を離間させる。
【0015】
次に、正極箔の四隅を4つの第1押さえ部材により押さえた状態のまま、搬送手段により新たに搬送してきたセパレータを前記正極箔の上に載置する。
【0016】
続いて、載置したセパレータを搬送手段により押さえた状態で、前記正極箔の四隅を押さえている4つの第1押さえ部材を退避させた後、4つの第2押さえ部材によりセパレータの四隅を押さえる。その後、搬送手段を離間させる。
【0017】
次に、セパレータの四隅を4つの第2押さえ部材により押さえた状態のまま、搬送手段により搬送してきた負極箔を前記セパレータの上に載置する。
【0018】
続いて、載置した負極箔を搬送手段により押さえた状態で、前記セパレータの四隅を押さえている4つの第2押さえ部材を一旦退避させた後、再度、4つの第2押さえ部材により負極箔の四隅を押さえる。
【0019】
このような構成とすることにより、本手段によれば、第1押さえ部材(又は第2押さえ部材)が正極箔(又は負極箔)を押さえた際に付着した正極活物質(又は負極活物質)が、負極箔(又は正極箔)を押さえる際に当該負極箔(又は正極箔)に付着するおそれがない。
【0020】
また、正極箔、負極箔、セパレータなどのシート体の四隅すべてを押さえる構成となっているため、シート体の四隅のうちいずれかがめくれ、折れ曲がった状態で、次のシート体が積層されてしまうといった不具合の発生を抑制することができる。
【0021】
結果として、製品品質の低下抑制を図ることができる。
【0022】
尚、上記不具合の発生を抑制するため、仮に正極箔等用の押さえ部材と、負極箔等用の押さえ部材とを別々に設けると共に、搬送手段によりシート体を押さえることなく、押さえ部材の切換えを行おうとした場合には、正極箔等用に2組、計8つの押さえ部材と、負極箔等用に2組、計8つの押さえ部材とをそれぞれ備える必要が生じ、合計16個の押さえ部材を制御しなければならず、装置が複雑化するおそれがある。
【0023】
これに対し、本手段1によれば、搬送手段によりシート体を押さえた状態で、4つの押さえ部材(第1押さえ部材又は第2押さえ部材)の切換えを行うことができる構成となっているため、装置の簡素化を図ることができる。
【0024】
さらに、本手段1では、正極箔を押さえる押さえ部材と、その下側に積層されるセパレータを押さえる押さえ部材とを同一の第1押さえ部材とすることが可能となると共に、負極箔を押さえる押さえ部材と、その下側に積層されるセパレータを押さえる押さえ部材とを同一の第2押さえ部材とすることが可能となるため、セパレータ用に別途の押さえ部材を設ける必要がなく、さらなる装置の簡素化を図ることができる。
【0025】
また、仮にシート体を搬送手段により押さえることなく、押さえ部材の切換えを行おうとした場合には、例えばシート体の四隅においてそれぞれ、第1の押さえ部材により所定のシート体(例えば正極箔)を押さえた状態で、さらにその上に別のシート体(例えばセパレータ)を重ね、当該シート体を第2の押さえ部材により押さえた状態とし、その後、第1の押さえ部材を退避させるといったように、2種類の押さえ部材(第1の押さえ部材及び第2の押さえ部材)により同時に押さえた状態となるため、シート体に皺が発生するおそれがある。また、シート体が浮いた状態で、別の押さえ部材が近づいてくると、シート体の縁がめくれ、折れ曲がるおそれがある。結果として、製品品質が低下するおそれがある。
【0026】
これに対し、本手段1では、搬送手段によりシート体を押さえた状態で、4つの押さえ部材(第1押さえ部材又は第2押さえ部材)の切換えを行う構成となっている。すなわち、シート体の四隅すべてを同時に解放し、当該シート体を一旦平らにした後、当該シート体を押さえる構成となっているため、皺や折れ曲がりなどの発生を抑制することができる。
【0027】
加えて、搬送手段によりシート体をより広い範囲で均一に押えつけることが可能となるため、上記作用効果をさらに高めると共に、シート体の位置ずれ等も発生しにくくなる。
【0028】
尚、本手段における「四隅」とは、厳密にシート体の2辺が交わる「コーナー部」のみを意味するものではなく、「コーナー部の近傍」や「4箇所」などの概念を含むものである。従って、シート体の各コーナー部からやや離れている4箇所を押さえる構成であっても、少なくとも4つの押さえ部材により4箇所を同時に押さえられる構成となっていればよい。かかる構成においても、「コーナー部」を押さえた場合と同様の作用効果が得られる。
【0029】
手段2.前記第1押さえ部材及び第2押さえ部材が、前記退避位置から前記押さえ位置へ移動する際の高さが、
当該第1押さえ部材及び第2押さえ部材が、前記押さえ位置から前記退避位置へ戻る際の高さよりも高くなるように設定されていることを特徴とする手段1に記載の積層装置。
【0030】
例えば第1押さえ部材と第2押さえ部材の切換え等を行う際、仮に退避位置へ退避する押さえ部材と、押さえ位置へ近づいてくる押さえ部材とが同じ高さで動作する場合、又は、退避位置へ退避する押さえ部材の方が、押さえ位置へ近づいてくる押さえ部材よりも高い位置で動作する場合には、浮き上がったシート体の縁に、押さえ位置へ近づいてくる押さえ部材が引っかかり、シート体の縁がめくれ、折れ曲がるおそれがある。結果として、製品品質が低下するおそれがある。
【0031】
これに対し、本手段2によれば、押さえ部材がシート体を引っ掛けるおそれが低減される。結果として、シート体の折れ曲がりを抑制し、製品品質の向上を図ることができる。
【0032】
手段3.前記正極箔又は負極箔を押さえていた前記第1押さえ部材又は第2押さえ部材が、前記押さえ位置から前記退避位置へ移動する際の上昇量を、
前記セパレータを押さえていた前記第1押さえ部材又は第2押さえ部材が、前記押さえ位置から前記退避位置へ移動する際の上昇量よりも大きく設定したことを特徴とする手段1又は2に記載の積層装置。
【0033】
押さえ部材と電極箔(正極箔又は負極箔)との擦れを可能な限り少なくする観点から見れば、セパレータを押さえていた押さえ部材が退避する時には、その上に電極箔が載っていることから可能な限り低い位置を移動する方が好ましい一方、電極箔を押さえていた押さえ部材が退避する時には、その下に電極箔があることから可能な限り高い位置を移動する方が好ましい。
【0034】
この点、上記手段3のようにすれば、押さえ部材により電極箔が擦られ、ダメージを受けるおそれを低減することができる。結果として、製品品質の向上を図ることができる。
【0035】
手段4.前記第1押さえ部材及び第2押さえ部材は、直進動作を行うように構成されていることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の積層装置。
【0036】
仮に押さえ部材が旋回動作をして、押さえ位置と退避位置とに変位する構成とした場合には、押さえ部材の切換えを行う際に、当該押さえ部材により電極箔が擦られる面積が大きくなるおそれがある。
【0037】
これに対し、本手段4では、押さえ部材が直進動作を行うことにより、押さえ部材によって電極箔が擦られる面積が少なくなり、電極箔に与えるダメージを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】積層体の構成を説明するための斜視図である。
図2】積層装置の概略構成を説明するための平面図である。
図3】積層台及び保持機構を示す平面図である。
図4】保持部材等の側面図である。
図5】保持部材等の背面図である。
図6】(a)は、負極用押さえ爪によりシート体を押さえた状態を示す保持機構の平面図であり、(b)は、正極用押さえ爪によりシート体を押さえた状態を示す保持機構の平面図である。
図7】(a)は、吸着部によりシート体が吸着搬送された状態を示す模式図であり、(b)は、シート体を載置した状態を示す模式図であり、(c)は、シート体を押さえ爪で押さえた状態を示す模式図である。
図8】別の実施形態に係る押さえ爪の構成を説明するための平面模式図である。
図9】別の実施形態に係る押さえ爪の構成を説明するための平面模式図である。
図10】別の実施形態に係る押さえ爪の構成を説明するための平面模式図である。
図11】別の実施形態に係る押さえ爪の構成を説明するための平面模式図である。
図12】別の実施形態に係る押さえ爪の構成を説明するための平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、リチウムイオン二次電池等の積層電池を構成する積層体4は、セパレータ2、負極箔1、セパレータ2、正極箔3がこの順序で、下から順に繰り返し積み上げられることで形成されている。
【0040】
負極箔1及び正極箔3は、矩形状の金属箔よりなる極箔本体1A,3Aの表裏両面に活物質1B,3Bが塗布形成されることにより構成されており、活物質1B,3Bが塗布形成されてなる塗工部と、極箔本体1A,3Aが露出してなる未塗工部とを有している。
【0041】
具体的に、負極箔1の極箔本体1Aは、例えば銅により構成され、正極箔3の極箔本体3Aは、例えばアルミニウムにより構成されている。また、負極箔1の表裏両面には、負極活物質として、例えばケイ素等を含有する粒子が塗布され、正極箔3の裏表両面には、正極活物質として、例えばコバルト酸リチウム等を含有する粒子が塗布されている。
【0042】
以下、特に正・負を区別する必要のないときには、負極箔1、正極箔3を総称して「電極箔1,3」と称することもある。同様に、電極箔1,3と、セパレータ2とを区別する必要のないときには、電極箔1,3、セパレータ2を総称して「シート体」と称することもある。
【0043】
セパレータ2は、絶縁性を有する矩形シート状の多孔質樹脂フィルムにより構成されており、負極箔1及び正極箔3の平面矩形状の塗工部(活物質1B,3B)よりも一回り大きい矩形状をなしている。
【0044】
適正な積層状態において、負極箔1及び正極箔3の塗工部は、セパレータ2によって完全に覆われ、はみ出しておらず、負極箔1及び正極箔3の未塗工部のみが、それぞれ異なる位置においてセパレータ2からはみ出すようにして突出している。当該各未塗工部は、負極タブ、正極タブに相当するものであり、積層電池の内部で電極端子の負極及び正極に対しそれぞれ電気的に接続される領域となる。
【0045】
図2は、積層装置(積層電池の製造装置)10の主要部分を示す概略構成図(平面図)である。同図に示すように、積層装置10は、セパレータ供給ステージ11、電極箔供給ステージ12、及び、積層ステージ13を備えている。
【0046】
セパレータ供給ステージ11上には、積層の都度、図示しないセパレータ供給手段によって、所定のパレット50に蓄積されている上記セパレータ2が1枚ずつ供給される。
【0047】
また、電極箔供給ステージ12上には、積層の都度、図示しない電極箔供給手段によって、所定のパレット60,61に蓄積されている負極箔1又は正極箔3が、交互に1枚ずつ供給される。
【0048】
積層装置10は、セパレータ供給ステージ11又は電極箔供給ステージ12から、積層ステージ13へ、セパレータ2又は電極箔1,3を搬送する搬送手段としての搬送装置14を備えている。
【0049】
搬送装置14は、上記各ステージ11〜13の上方を通るように設けられたガイドレール15と、当該ガイドレール15に垂下状態で支持された搬送アーム16と、当該搬送アーム16の下端に設けられた吸着手段としての吸着部17とを備えている。
【0050】
搬送アーム16は、図示しないモータ等の駆動手段によりガイドレール15に沿って移動可能に設けられていると共に、シリンダ等の駆動手段の作動により上下方向(図2では紙面奥行方向)に伸縮可能となっている。
【0051】
搬送アーム16がガイドレール15に沿って移動することにより、吸着部17もまた、ガイドレール15に沿って移動し、搬送アーム16が伸縮することにより、吸着部17が上下動するようになっている。
【0052】
吸着部17は、搬送アーム16の下端に固定されたベース部18と、当該ベース部18の下側に設けられた多孔質体からなる吸着板19とを有している(図7参照)。
【0053】
ベース部18の内部には、吸着板19に連通する吸引経路(図示略)が形成されている。また、ベース部18の外部には、前記吸引経路に連通するバキュームホース20が接続されている。バキュームホース20の他端側には、図示しないバキュームポンプが接続されている。そして、バキュームポンプが図示しない制御装置によってオンオフ制御されることにより、吸着部17(吸着板19)における吸着及び吸着解除を切替可能となっている。
【0054】
バキュームポンプがオン状態となると、バキュームホース20及び前記吸引経路を介して吸着板19から吸引が行われ、吸着板19の下面(吸着面)にセパレータ2又は電極箔1,3が吸着される〔図7(a)参照〕。
【0055】
一方、積層ステージ13上には、電極箔1,3及びセパレータ2を積層していく積層位置において、これらを載置し積層していくための積層台29が設けられている(図2,3等参照)。
【0056】
積層台29は、電極箔1,3及びセパレータ2よりも一回り大きな平面視略矩形状をなし、電極箔1,3及びセパレータ2は、自身の各辺が、積層台29の各辺に対し略平行するように載置される。
【0057】
尚、上述したように、電極箔1,3及びセパレータ2は、それぞれ大きさが異なり、適正な積層状態においても、電極箔1,3の未塗工部がセパレータ2からはみ出し、完全にはその周囲が一致しないように構成されているが、便宜上、図1を除く、その他の図面においては、電極箔1,3及びセパレータ2を同一矩形状で図示している。
【0058】
また、積層台29の周囲には、当該積層台29に積層された積層体4(電極箔1,3及びセパレータ2)を保持するための保持機構30が設けられている。
【0059】
図3等に示すように、保持機構30は、積層台29(積層体4)の四隅のコーナー部に対応して設けられた4つの保持部材31と、当該4つの保持部材31を連動させる連動駆動機構32とを備えている。連動駆動機構32が本実施形態における第1水平方向変位手段及び第2水平方向変位手段を構成する。
【0060】
ここで、まず連動駆動機構32の構成について詳しく説明する。連動駆動機構32は、積層台29の周囲において、当該積層台29を取り囲むように所定間隔をあけて配置された8つのプーリ33と、当該8つのプーリ33に対し八角形状に掛けられた環状のタイミングベルト34とを備えている。
【0061】
各プーリ33は、それぞれ上下方向(図3では紙面奥行方向)に沿った回転軸を有し、水平方向に回転可能に設けられている。8つのプーリ33のうち、少なくとも1つは、サーボモータ等の図示しない回転駆動手段に連結され、当該回転駆動手段により回転駆動制御される駆動プーリとなっており、残りは、タイミングベルト34を介して前記駆動プーリに従動する従動プーリとなっている。そして、駆動プーリ33が回転することにより、タイミングベルト34は、自身の長手方向に沿って往復動可能となる。
【0062】
タイミングベルト34には、上記4つの保持部材31がそれぞれ連結されており、タイミングベルト34の動作に連動して、4つの保持部材31がそれぞれタイミングベルト34の長手方向に沿って往復動可能となる。尚、本実施形態では、各保持部材31の往復動方向が、平面視において、積層台29(積層体4)の各辺に対しそれぞれ45°傾いた方向に設定されている。
【0063】
次に各保持部材31の構成について詳しく説明する。各保持部材31は、積層台29(積層体4)の各コーナー部に対向するように設けられた本体部40と、当該本体部40の背面側において、タイミングベルト34と連結された連結部41と、本体部40の上部に設けられた一対の押さえ爪42A,42Bとを備えている。
【0064】
各押さえ爪42A,42Bは、本体部40から積層台29側へ水平方向に沿って突出形成された平板状をなし、それぞれ積層体4の四隅のコーナー部を上から押さえられるように構成されている。
【0065】
本実施形態では、積層体4の最上面(積層開始時には積層台29上)に載置されたシート体の種類に応じて、積層体4を押さえる押さえ爪42A,42Bの種類が切換わる構成となっている。
【0066】
より詳しくは、積層体4の最上面に載置されたシート体が正極箔3、又は、正極箔3の下側に積層されるセパレータ2である場合には、一対の押さえ爪42A,42Bのうち、保持部材31の左側に位置する押さえ爪42Aが使用される。以下、当該押さえ爪42Aを「正極用押さえ爪42A」という。正極用押さえ爪42Aが本実施形態における第1押さえ部材に相当する。
【0067】
一方、積層体4の最上面に載置されたシート体が負極箔3、又は、負極箔1の下側に積層されるセパレータ2である場合には、一対の押さえ爪42A,42Bのうち、保持部材31の右側に位置する押さえ爪42Bが使用される。以下、当該押さえ爪42Bを「負極用押さえ爪42B」という。負極用押さえ爪42Bが本実施形態における第2押さえ部材に相当する。
【0068】
また、図4,5に示すように、各保持部材31の下方位置には、それぞれ当該保持部材31を上下動させるための上下駆動機構45が設けられている。上下駆動機構45は、本実施形態における第1上下方向変位手段及び第2上下方向変位手段を構成する。
【0069】
本実施形態における上下駆動機構45は、中心から外れた位置に回転軸46が設けられた円盤状の偏心ローラ47と、回転軸46に接続され、偏心ローラ47を回転させるサーボモータ等の駆動手段(図示略)とにより構成されている。
【0070】
偏心ローラ47は、回転軸46が水平方向に沿うように配置されると共に、その周面が常時、保持部材31の本体部40の下面に当接した状態となっている。そして、回転軸46を介して偏心ローラ47を回転させることにより、これに当接した保持部材31が上下動する構成となっている。また、保持部材31が水平移動する際には、本体部40が偏心ローラ47上を摺動しつつ水平移動することとなる。
【0071】
上述した連動駆動機構32及び上下駆動機構45を駆動制御することにより、保持部材31を所定範囲内で、上下方向及び水平方向の任意の位置に移動させたり、任意の位置に保持することができる。
【0072】
これにより、水平方向における押さえ爪42A,42Bの位置が、積層体4から外方へ退避した退避位置(図3参照)と、積層体4の四隅のコーナー部を押さえる押さえ位置〔図6(a),(b)参照〕とに変位可能となると共に、上下方向における押さえ爪42A,42Bの位置が、積層体4から上方へ離間した離間位置〔図7(c)参照〕と、積層体4に当接可能な当接位置〔図7(a)〜(c)参照〕とに変位可能となる。尚、図4,5,7においては、積層台29に積層されたシート体の相互の間隔をあけ、積層体4を簡素化して図示している。
【0073】
次に、上記の積層装置10を用いた積層体4の積層手順について説明する。本実施形態では、セパレータ2を積層する第1セパレータ積層工程、その上に負極箔3を積層する負極箔積層工程、その上にセパレータ2を積層する第2セパレータ積層工程、その上に正極箔3を積層する正極箔積層工程をこの順序で、所定回数繰り返すことで、積層体4が製造される。
【0074】
第1セパレータ積層工程が開始されると、先ず搬送装置14の吸着部17がセパレータ供給ステージ11上へと案内される。ここで、吸着部17は、下降して、セパレータ供給ステージ11上に供給されたセパレータ2を吸着する。
【0075】
続いて、セパレータ2を吸着した吸着部17が、積層ステージ13の積層台29上へと案内される〔図7(a)参照〕。但し、図7では、既に積層台29上に複数のシート体が積層され、積層体4が存在する場合が図示されている。
【0076】
ここで、吸着部17は、セパレータ2を吸着した状態のまま下降して、当該セパレータ2を積層台29上へ載置する。そして、吸着部17は、セパレータ2を下方(積層台29)へ押さえ付けた状態で停止する。
【0077】
この際、保持機構30の各保持部材31(押さえ爪42A,42B)は退避位置に退避している(図3参照)。
【0078】
積層台29上にセパレータ2が載置されると、退避位置にある各保持部材31が上昇し、各押さえ爪42A,42Bの高さ位置が、載置されたセパレータ2の高さ位置よりも高い位置となる。
【0079】
続いて、各保持部材31を水平移動させ、各負極用押さえ爪42Bを退避位置からセパレータ2の各コーナー部の上方位置(以下、押さえ位置という)へと移動させる〔図6(a)参照〕。
【0080】
各負極用押さえ爪42Bが押さえ位置へ移動すると、ここで各保持部材31が下降する。これにより、各負極用押さえ爪42Bが、セパレータ2上方に離間した離間位置から、セパレータ2に当接可能な当接位置へと変位する。そして、セパレータ2の各コーナー部が各負極用押さえ爪42Bにより押さえられた状態となる〔図4,5、図7(c)参照〕。但し、図7と同様、図4,5では、既に積層台29上に複数のシート体が積層され、積層体4が存在する場合が図示されている。
【0081】
各負極用押さえ爪42Bによりセパレータ2の四隅が押さえられた状態となると、吸着部17による吸引を停止し、セパレータ2の吸着を解除する。そして、吸着部17が上昇し、負極箔積層工程へと移行する。
【0082】
尚、以下の各積層工程でも同様であるが、吸着部17による吸引停止(シート体の吸着解除)のタイミングは、上記タイミングによらず、吸着部17がシート体を下方へ押さえ付け、シート体が位置ズレ等を起こさない状態となった後であれば、いつでもよい。
【0083】
負極箔積層工程が開始されると、吸着部17が電極箔供給ステージ12上へと案内される。ここで、吸着部17は、下降して、電極箔供給ステージ12上に供給された負極箔1を吸着する。
【0084】
続いて、負極箔1を吸着した吸着部17が、積層ステージ13の積層台29上へと案内される〔図7(a)参照〕。
【0085】
ここで、吸着部17は、負極箔1を吸着した状態のまま下降して、当該負極箔1を上記セパレータ2上へ載置する。そして、吸着部17は、負極箔1を下方(セパレータ2)へ押さえ付けた状態で停止する。
【0086】
この際、セパレータ2の各コーナー部が各負極用押さえ爪42Bにより押さえられた状態が維持されており、吸着部17の周縁部より外方へはみ出した負極箔1のはみ出し部分は、セパレータ2を押さえている各負極用押さえ爪42Bの上に載った状態となる〔図7(b)参照〕。
【0087】
セパレータ2上に負極箔1が載置されると、各保持部材31は若干上昇すると共に、水平移動する。これにより、各負極用押さえ爪42Bは、セパレータ2から若干浮き上がった状態で、押さえ位置から退避位置へと一旦退避する。
【0088】
尚、以下の各積層工程でも同様であるが、押さえ爪42A,42Bが退避位置から押さえ位置へ移動する際の高さは、当該押さえ爪42A,42Bが押さえ位置から退避位置へ戻る際の高さよりも高くなるように設定されている。
【0089】
各負極用押さえ爪42Bが退避すると、負極箔1のはみ出し部分が真っ直ぐに延び、当該負極箔1は、波打つことなく平坦な状態となる。つまり、負極箔1全体が、上記セパレータ2と適正に重なり合った状態となる。
【0090】
このように、負極箔1全体がセパレータ2と適正に重なり合った状態となると、退避位置にある各保持部材31が上昇し、各押さえ爪42A,42Bの高さ位置が、載置された負極箔1の高さ位置よりも高い位置となる。
【0091】
続いて、各保持部材31を水平移動させ、再度、各負極用押さえ爪42Bを退避位置から負極箔1の各コーナー部の上方位置(押さえ位置)へと移動させる〔図6(a)参照〕。
【0092】
各負極用押さえ爪42Bが押さえ位置へ移動すると、ここで各保持部材31が下降する。これにより、各負極用押さえ爪42Bが、負極箔1上方に離間した離間位置から、負極箔1に当接可能な当接位置へと変位する。そして、負極箔1の各コーナー部が各負極用押さえ爪42Bにより押さえられた状態となる〔図4,5、図7(c)参照〕。
【0093】
各負極用押さえ爪42Bにより負極箔1の四隅が押さえられた状態となると、吸着部17による吸引を停止し、負極箔1の吸着を解除する。そして、吸着部17が上昇し、第2セパレータ積層工程へと移行する。
【0094】
第2セパレータ積層工程が開始されると、吸着部17がセパレータ供給ステージ11上へと案内される。ここで、吸着部17は、下降して、セパレータ供給ステージ11上に供給されたセパレータ2を吸着する。
【0095】
続いて、セパレータ2を吸着した吸着部17が、積層ステージ13の積層台29上へと案内される〔図7(a)参照〕。
【0096】
ここで、吸着部17は、セパレータ2を吸着した状態のまま下降して、当該セパレータ2を上記負極箔1上へ載置する。そして、吸着部17は、セパレータ2を下方(負極箔1)へ押さえ付けた状態で停止する。
【0097】
この際、負極箔1の各コーナー部が各負極用押さえ爪42Bにより押さえられた状態が維持されており、吸着部17の周縁部より外方へはみ出したセパレータ2のはみ出し部分は、負極箔1を押さえている各負極用押さえ爪42Bの上に載った状態となる〔図7(b)参照〕。
【0098】
負極箔1上にセパレータ2が載置されると、各保持部材31は若干上昇すると共に、水平移動する。これにより、各負極用押さえ爪42Bは、負極箔1から若干浮き上がった状態で、押さえ位置から退避位置へと一旦退避する。
【0099】
尚、以下の各積層工程でも同様であるが、本実施形態では、電極箔1,3を押さえていた押さえ爪42A,42Bが、押さえ位置から退避位置へ移動する際の上昇量を、セパレータ2を押さえていた押さえ爪42A,42Bが、押さえ位置から退避位置へ移動する際の上昇量よりも大きく設定されている。
【0100】
各負極用押さえ爪42Bが退避すると、セパレータ2のはみ出し部分が真っ直ぐに延び、当該セパレータ2は、波打つことなく平坦な状態となる。つまり、セパレータ2全体が、上記負極箔1と適正に重なり合った状態となる。
【0101】
このように、セパレータ2全体が負極箔1と適正に重なり合った状態となると、退避位置にある各保持部材31が上昇し、各押さえ爪42A,42Bの高さ位置が、載置されたセパレータ2の高さ位置よりも高い位置となる。
【0102】
続いて、各保持部材31を水平移動させ、各正極用押さえ爪42Aを退避位置からセパレータ2の各コーナー部の上方位置(押さえ位置)へと移動させる〔図6(b)参照〕。
【0103】
各正極用押さえ爪42Aが押さえ位置へ移動すると、ここで各保持部材31が下降する。これにより、各正極用押さえ爪42Aが、セパレータ2上方に離間した離間位置から、セパレータ2に当接可能な当接位置へと変位する。そして、セパレータ2の各コーナー部が各正極用押さえ爪42Aにより押さえられた状態となる〔図4,5、図7(c)参照〕。
【0104】
各正極用押さえ爪42Aによりセパレータ2の四隅が押さえられた状態となると、吸着部17による吸引を停止し、セパレータ2の吸着を解除する。そして、吸着部17が上昇し、正極箔積層工程へと移行する。
【0105】
正極箔積層工程が開始されると、吸着部17が電極箔供給ステージ12上へと案内される。ここで、吸着部17は、下降して、電極箔供給ステージ12上に供給された正極箔3を吸着する。
【0106】
続いて、正極箔3を吸着した吸着部17が、積層ステージ13の積層台29上へと案内される〔図7(a)参照〕。
【0107】
ここで、吸着部17は、正極箔3を吸着した状態のまま下降して、当該正極箔3を上記セパレータ2上へ載置する。そして、吸着部17は、正極箔3を下方(セパレータ2)へ押さえ付けた状態で停止する。
【0108】
この際、セパレータ2の各コーナー部が各正極用押さえ爪42Aにより押さえられた状態が維持されており、吸着部17の周縁部より外方へはみ出した正極箔3のはみ出し部分は、セパレータ2を押さえている各正極用押さえ爪42Aの上に載った状態となる〔図7(b)参照〕。
【0109】
セパレータ2上に正極箔3が載置されると、各保持部材31は若干上昇すると共に、水平移動する。これにより、各正極用押さえ爪42Aは、セパレータ2から若干浮き上がった状態で、押さえ位置から退避位置へと一旦退避する。
【0110】
各正極用押さえ爪42Aが退避すると、正極箔3のはみ出し部分が真っ直ぐに延び、当該正極箔3は、波打つことなく平坦な状態となる。つまり、正極箔3全体が、上記セパレータ2と適正に重なり合った状態となる。
【0111】
このように、正極箔3全体がセパレータ2と適正に重なり合った状態となると、退避位置にある各保持部材31が上昇し、各押さえ爪42A,42Bの高さ位置が、載置された正極箔3の高さ位置よりも高い位置となる。
【0112】
続いて、各保持部材31を水平移動させ、再度、各正極用押さえ爪42Aを退避位置から正極箔3の各コーナー部の上方位置(押さえ位置)へと移動させる〔図6(a)参照〕。
【0113】
各正極用押さえ爪42Aが押さえ位置へ移動すると、ここで各保持部材31が下降する。これにより、各正極用押さえ爪42Aが、正極箔3上方に離間した離間位置から、正極箔3に当接可能な当接位置へと変位する。そして、正極箔3の各コーナー部が各正極用押さえ爪42Aにより押さえられた状態となる〔図4,5、図7(c)参照〕。
【0114】
各正極用押さえ爪42Aにより正極箔3の四隅が押さえられた状態となると、吸着部17による吸引を停止し、正極箔3の吸着を解除する。そして、吸着部17が上昇し、2順目の第1セパレータ積層工程へと移行する。
【0115】
2順目の第1セパレータ積層工程が開始されると、吸着部17がセパレータ供給ステージ11上へと案内される。ここで、吸着部17は、下降して、セパレータ供給ステージ11上に供給されたセパレータ2を吸着する。
【0116】
続いて、セパレータ2を吸着した吸着部17が、積層ステージ13の積層台29上へと案内される〔図7(a)参照〕。
【0117】
ここで、吸着部17は、セパレータ2を吸着した状態のまま下降して、当該セパレータ2を上記正極箔3上へ載置する。そして、吸着部17は、セパレータ2を下方(正極箔3)へ押さえ付けた状態で停止する。
【0118】
この際、正極箔3の各コーナー部が各正極用押さえ爪42Aにより押さえられた状態が維持されており、吸着部17の周縁部より外方へはみ出したセパレータ2のはみ出し部分は、正極箔3を押さえている各正極用押さえ爪42Aの上に載った状態となる〔図7(b)参照〕。
【0119】
正極箔3上にセパレータ2が載置されると、各保持部材31は若干上昇すると共に、水平移動する。これにより、各正極用押さえ爪42Aは、正極箔3から若干浮き上がった状態で、押さえ位置から退避位置へと一旦退避する。
【0120】
各正極用押さえ爪42Aが退避すると、セパレータ2のはみ出し部分が真っ直ぐに延び、当該セパレータ2は、波打つことなく平坦な状態となる。つまり、セパレータ2全体が、上記正極箔3と適正に重なり合った状態となる。
【0121】
このように、セパレータ2全体が正極箔3と適正に重なり合った状態となると、退避位置にある各保持部材31が上昇し、各押さえ爪42A,42Bの高さ位置が、載置されたセパレータ2の高さ位置よりも高い位置となる。
【0122】
続いて、各保持部材31を水平移動させ、各負極用押さえ爪42Bを退避位置からセパレータ2の各コーナー部の上方位置(押さえ位置)へと移動させる〔図6(b)参照〕。
【0123】
各負極用押さえ爪42Bが押さえ位置へ移動すると、ここで各保持部材31が下降する。これにより、各負極用押さえ爪42Bが、セパレータ2上方に離間した離間位置から、セパレータ2に当接可能な当接位置へと変位する。そして、セパレータ2の各コーナー部が各負極用押さえ爪42Bにより押さえられた状態となる〔図4,5、図7(c)参照〕。
【0124】
各負極用押さえ爪42Bによりセパレータ2の四隅が押さえられた状態となると、吸着部17による吸引を停止し、セパレータ2の吸着を解除する。そして、吸着部17が上昇し、再び、正極箔積層工程へと移行する。
【0125】
以降、上述したように、上記各種積層工程を所定回数繰り返すことで、下から順にセパレータ2、負極箔1、セパレータ2、正極箔3が繰り返し積み上げられた積層体4を得ることができる。
【0126】
以上詳述したように、本実施形態によれば、シート体を積層台29へ搬送し押さえつける搬送装置14(吸着部17)を備えると共に、正極箔3及びその下側に積層されるセパレータ2を押さえるための押さえ爪(正極用押さえ爪42A)と、負極箔1及びその下側に積層されるセパレータ2を押さえるための押さえ爪(負極用押さえ爪42B)とを別々に備えている。
【0127】
これにより、正極用押さえ爪42A(又は負極用押さえ爪42B)が正極箔3(又は負極箔1)を押さえた際に付着した正極活物質(又は負極活物質)が、負極箔1(又は正極箔3)を押さえる際に当該負極箔1(又は正極箔3)に付着するおそれがない。
【0128】
また、シート体の四隅すべてを押さえる構成となっているため、シート体の四隅のうちいずれかがめくれ、折れ曲がった状態で、次のシート体が積層されてしまうといった不具合の発生を抑制することができる。
【0129】
さらに、本実施形態では、吸着部17によりシート体を押さえた状態で、シート体の四隅すべてを同時に解放し、当該シート体を一旦平らにした後、当該シート体を押さえる構成となっているため、皺や折れ曲がりなどの発生を抑制することができる。
【0130】
加えて、吸着部17によりシート体をより広い範囲で均一に押えつけることが可能となるため、上記作用効果をさらに高めると共に、シート体の位置ずれ等も発生しにくくなる。
【0131】
さらに加えて、本実施形態では、押さえ爪42A,42Bが退避位置から押さえ位置へ移動する際の高さが、当該押さえ爪42A,42Bが押さえ位置から退避位置へ戻る際の高さよりも高くなるように設定されている。これにより、押さえ爪42A,42Bがシート体を引っ掛けるおそれが低減される。結果として、シート体の折れ曲がりを抑制することができる。
【0132】
また、本実施形態では、電極箔1,3を押さえていた押さえ爪42A,42Bが、押さえ位置から退避位置へ移動する際の上昇量を、セパレータ2を押さえていた押さえ爪42A,42Bが、押さえ位置から退避位置へ移動する際の上昇量よりも大きく設定されている。これにより、退避する押さえ爪42A,42Bにより電極箔1,3が擦られ、ダメージを受けるおそれを低減することができる。
【0133】
さらに、本実施形態では、各押さえ爪42A,42Bが直進動作を行うように構成されている。これにより、旋回動作を行う押さえ爪に比べ、電極箔1,3が擦られる面積が少なくなり、電極箔1,3に与えるダメージを軽減することができる。
【0134】
加えて、本実施形態では、各保持部材31の水平移動方向が、積層台29(積層体4)の各辺に対しそれぞれ45°傾いた方向に設定されている。これにより、押さえ爪42A,42Bに擦られる電極箔1,3の面積を極力少なくすることができる。
【0135】
結果として、製品品質の低下抑制を図ることができる。
【0136】
また、本実施形態では、吸着部17によりシート体を押さえた状態で、4つの押さえ爪42A,42Bの切換えを行うことができる構成となっているため、装置の簡素化を図ることができる。
【0137】
さらに、本実施形態では、正極箔3を押さえる押さえ爪と、その下側に積層されるセパレータ2を押さえる押さえ爪とを同一の正極用押さえ爪42Aとすることが可能となると共に、負極箔1を押さえる押さえ爪と、その下側に積層されるセパレータ2を押さえる押さえ爪とを同一の負極用押さえ爪42Bとすることが可能となるため、セパレータ2用に別途の押さえ爪を設ける必要がなく、さらなる装置の簡素化を図ることができる。
【0138】
尚、上述した実施形態の記載内容に限定されることなく、例えば次のように実施してもよい。
【0139】
(a)上記実施形態では、積層装置10により積層電池に係る積層体4が製造される構成となっているが、これに限らず、例えば積層装置10によって、リチウムイオンキャパシタや電解コンデンサ等に係る積層体を製造する構成としてもよい。
【0140】
(b)上記実施形態に係る積層体4は、セパレータ2、負極箔1、セパレータ2、正極箔3がこの順序で、下から順に繰り返し積み上げられるようにして積層形成されているが、勿論、積層順序はこれに限定されるものではない。例えば、セパレータ2、正極箔3、セパレータ2、負極箔1の順序で、下から順に繰り返し積み上げられるようにしてもよいし、負極箔1又は正極箔3が最下層に位置する構成としてもよい。
【0141】
(c)シート体としての電極箔1,3及びセパレータ2の材質や形状等は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、セパレータ2が多孔質樹脂フィルムにより構成されているが、絶縁性の不織布により構成してもよい。
【0142】
(d)搬送手段や吸着手段の構成は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、多孔質体からなる吸着板(多孔質吸着板)19を採用しているが、これに限らず、多孔式吸着板を採用してもよい。
【0143】
また、上記実施形態では、各供給ステージ11,12に供給された各シート体を、1つの搬送装置14を用いて積層ステージ13へ搬送する構成となっているが、これに代えて、各シート体にそれぞれ対応した複数の搬送装置を用意し、各搬送装置を用いて、積層ステージ13に対し各シート体を交互に搬送し積層する構成としてもよい。かかる場合には、これら複数の搬送装置により、本実施形態における搬送手段が構成されることとなる。
【0144】
また、上記実施形態では、負極箔1及び正極箔3共通の電極箔供給ステージ12が設けられているが、これに限らず、それぞれ別の電極箔供給ステージ12が設けられる構成としてもよい。すなわち、負極箔供給ステージ及び正極箔供給ステージがそれぞれ別に設けられていてもよい。
【0145】
(e)保持機構30の構成は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、4つの保持部材31がタイミングベルト34により連動する構成となっているが、これに限らず、各保持部材31が個別に動作する構成としてもよい。
【0146】
また、上記実施形態では、各保持部材31の水平移動方向が、平面視において、積層体4の各辺に対しそれぞれ45°傾いた方向に設定されているが、各保持部材31の水平移動方向は、これに限定されるものではない。
【0147】
但し、正極用押さえ爪42A及び負極用押さえ爪42Bが一体形成された上記保持部材31の下では、少なくとも各保持部材31の水平移動方向が、積層体4の各辺に対し斜めに傾いている方が、各保持部材31の動作を簡素化する上では好ましい。
【0148】
(f)上記実施形態では、保持部材31が、水平方向変位手段としての連動駆動機構32により水平方向へ変位可能に構成されると共に、上下方向変位手段としての上下駆動機構45により上下方向へ変位可能に構成されている。これに限らず、例えば水平方向変位手段と上下方向変位手段を1つの駆動機構により具現化した構成としてもよい。これにより、保持部材31が水平方向へ移動しつつ、上下方向へも移動するといったように、水平面に対し斜めに移動可能な構成としてもよい。
【0149】
また、上記実施形態に係る上下駆動機構45は、偏心ローラ47により保持部材31を上下動する構成となっているが、これに限らず、例えば通常のローラの回転軸の位置を上下動することにより、保持部材31を上下動する構成としてもよい。
【0150】
(g)上記実施形態では、正極用押さえ爪42A及び負極用押さえ爪42Bが、保持部材31として一体形成された構成となっているが、これに限らず、正極用押さえ爪42Aと負極用押さえ爪42Bとがそれぞれ別体で設けられた構成としてもよい。
【0151】
例えば、図8に示すように、積層体4の四隅に対応して、独立して動作する正極用押さえ爪70A及び負極用押さえ爪70Bをそれぞれ4つずつ備えた構成としてもよい。
【0152】
図8に示す例では、積層体4の4辺のうち相対向する2辺に対応して、各押さえ爪70A,70Bがそれぞれ2つずつ配置されており、当該2辺と直交する方向(図8の左右方向)に沿って各押さえ爪70A,70Bが直線的に水平移動可能に構成されている。勿論、各押さえ爪70A,70Bは、それぞれ上下動可能(紙面奥行き方向)に動作可能に構成されている。かかる構成により、上記実施形態と同様の手順で、積層体4を製造することができる。
【0153】
(h)上記(g)のように、正極用押さえ爪、及び、負極用押さえ爪がそれぞれ別体で設けられた構成における各押さえ爪の動作形態は、図8に示した例のように、水平方向に直線的に変位するスライドタイプに限定されるものではない。
【0154】
例えば、図9図12に示すように、積層体4の四隅に対応して、水平方向へ旋回動作する旋回タイプの正極用押さえ爪80A及び負極用押さえ爪80Bをそれぞれ4つずつ備えた構成としてもよい。勿論、各押さえ爪80A,80Bは、上下動可能(紙面奥行き方向)に動作可能に構成されている。尚、図9図12においては、便宜上、積層体4の2箇所のコーナー部付近のみを図示している。
【0155】
図9に示した例では、積層体4のコーナー部で交わる2辺のうちの一方の辺に対応して正極用押さえ爪80Aを設けると共に、他方の辺に対応して負極用押さえ爪80Bを設けている。
【0156】
かかる構成によれば、上記実施形態と同様に、押さえ爪80A,80Bで押さえる箇所をほぼ同じ位置とできるため、シート体が押さえ爪80A,80Bにより擦られる箇所を極力少なくすることができる。
【0157】
また、図10,11に示した例では、正極用押さえ爪80A及び負極用押さえ爪80Bがシート体の同じ辺を押さえることができるよう、積層体4の4辺のうち相対向する2辺に対応して、それぞれ正極用押さえ爪80A及び負極用押さえ爪80Bを2組ずつ設けると共に、各押さえ爪80A,80Bの退避位置から押さえ位置までの旋回角度をそれぞれ90°又は180°に設定している。
【0158】
かかる構成によれば、正極用押さえ爪80A及び負極用押さえ爪80Bを連動させることも可能となり、制御の簡素化を図ることができる。また、図10に示した例では、保持機構30の幅(図10の左右方向の幅)を極力狭く抑えることができ、保持機構30の小型化を図ることができる。
【0159】
尚、押さえ爪80A,80Bを動かす駆動機構としては、モータやカム機構などが挙げられる。また、図11に示した例の旋回態様としては、図示したような往復動ではなく、一方向へ180°ずつ回転する態様とすることも可能となる(後述する図12の例に関しても同様)。
【0160】
また、図12に示した例では、正極用押さえ爪80Aを、積層体4の4辺のうち相対向する2辺に対応して、それぞれ2組ずつ設けると共に、負極用押さえ爪80Bを、積層体4の四隅のコーナー部に対応して設け、各押さえ爪80A,80Bの退避位置から押さえ位置までの旋回角度をそれぞれ180°に設定している。さらに、ここでは、押さえ位置に位置する押さえ爪80A,80Bの長手方向が、積層体4の各辺に対しそれぞれ45°傾いた方向に設定されている。これにより、退避する押さえ爪80A,80Bによって擦られる電極箔1,3の面積を極力少なくすることができる。
【0161】
尚、仮に1つの回動軸に対し正極用押さえ爪及び負極用押さえ爪の両者を一体形成し、これが旋回動作を行う構成とした場合には、押さえ爪の切換え等を行う際、退避位置へ退避する押さえ爪と、押さえ位置へ近づいてくる押さえ爪とが同じ高さで動作するようになるため、浮き上がったシート体の縁に、押さえ位置へ近づいてくる押さえ部材が引っかかり、シート体の縁がめくれ、折れ曲がるおそれがある。従って、旋回タイプの押さえ爪を採用する場合には、正極用押さえ爪と、負極用押さえ爪とを別体で設けることが好ましい。
【符号の説明】
【0162】
1…負極箔、2…セパレータ、3…正極箔、4…積層体、10…積層装置、13…積層ステージ、14…搬送装置、17…吸着部、19…吸着板、29…積層台、30…保持機構、31…保持部材、32…連動駆動機構、42A…正極用押さえ爪、42B…負極用押さえ爪、45…上下駆動機構。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12