【実施例】
【0025】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0026】
図において、符号1は太陽光発電装置である。この太陽光発電装置1は、地面側や構造物など固定側に対し、ほぼ水平方向に張設される膜体2と、この膜体2に沿って設けられる矩形板状で複数枚の可撓性太陽電池3と、上記膜体2に複数貫設され、上記太陽電池3をそれぞれ出し入れ可能に挿入させる開口4と、上記太陽電池3の裏面(下面)側からこの太陽電池3と上記開口4とを覆って上記膜体2の裏面(下面)に溶着Wにより固着される裏面カバー体5と、上記太陽電池3の表面(上面)側からこの太陽電池3と上記開口4とを覆って上記膜体2の表面(上面)に溶着Wにより固着される表面カバー体6とを備えている。
【0027】
また、上記太陽光発電装置1は、上記太陽電池3の裏面に突設されると共に上記裏面カバー体5に形成された貫通孔7を貫通し、上記太陽電池3で生じた電力を取り出す端子ボックス8と、この端子ボックス8に電線9により電気的に接続されて上記太陽電池3からの電力を入力するバッテリなど電気機器10とを備えている。
【0028】
上記太陽電池3と開口4とは共に矩形の相似形状で、上記太陽電池3の寸法は開口4の寸法よりもわずかに小さくされている。このため、上記開口4に挿入された太陽電池3は、膜体2の面方向で遊嵌状とされ、つまり、多少のがたつきが可能とされている。また、上記膜体2と太陽電池3との各厚さ寸法は互いにほぼ同じとされている。図例では、上記膜体2の厚さよりも太陽電池3の厚さがわずかに小さくされているが、大きくしてもよく、互いに同じ寸法にしてもよい。なお、特に、膜体2の厚さと太陽電池3の厚さとを同じ寸法にし、もしくは、上記膜体2の厚さよりも太陽電池3の厚さを小さくすることが好ましい。
【0029】
上記裏面カバー体5と表面カバー体6とは上記各開口4に対しそれぞれ個別に設けられ、上記開口4と相似形状で、互いに同形同大とされている。また、上記裏面カバー体5と表面カバー体6とは上記膜体2の裏、表面に対しそれぞれ個別に固着されているが、それぞれ脱着可能に固着させてもよい。表面カバー体6は上記膜体2よりも厚さが小さくされている
。
【0030】
上記膜体2は、ケナフ繊維等の天然繊維、ポリエステル繊維等の合成繊維、もしくはガラス繊維等の無機繊維等により形成される縦糸2aおよび横糸2bを有した織物である基材2a,2bと、この基材2a,2bの各外面に被覆されるポリ塩化ビニル(PVC)など熱可塑性樹脂製の表面材(コーティング材)2cとを備えている。上記PVCの融点はほぼ180℃である。
【0031】
なお、上記膜体2の表面材2cは、少なくとも熱により溶着Wする部分の表面がポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂であればよく、その他の部分の最表面には、汚れ防止のための光触媒層を設けていてもよい。
【0032】
上記裏面カバー体5は上記膜体2と同じ材料で、同じ構成、かつ、同じ厚さ寸法となるよう形成されており、縦糸5aおよび横糸5bを有した基材5a,5bと、この基材5a,5bの各外面に被覆される表面材5cとを備えている。
【0033】
上記表面カバー体6は、2フッ化系のフッ素樹脂、もしくは2種以上のフッ素系樹脂を混合した樹脂製のフィルムである。これらフッ素系樹脂の融点は200℃以下であって、この融点は、前記したPVCの融点と近似している。また、上記表面カバー体6の厚さは、100μm以下が好ましいが、本実施例では、20〜40μmである。
【0034】
上記表面カバー体6にフッ素系樹脂を使用した場合は、その厚さを薄くしたとしても耐久性があるため、PVC等他の材料に比べ長期間透明性が保たれると共に、高価であるフッ素系樹脂の使用量を低減させることができ、コストを低減させる事も可能となる。
【0035】
また、上記膜体2の表面材2cの樹脂をポリ塩化ビニル(PVC)とし、表面カバー体6を2フッ化系のフッ素樹脂、もしくは2種以上のフッ素系樹脂を混合した樹脂としてもよい。
【0036】
ここで、上記2フッ化系のフッ素樹脂としては、例えば、融点が151〜178℃であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)がある。また、2種以上のフッ素系樹脂を混合した樹脂としては、例えば、融点が115〜180℃であるTHV(テトラフルオロエチレン
ヘキサフルオロピレン ビニリデンフルオライド)等がある。また、上記したそれぞれのフッ素系樹脂は融点が比較的低いものであり、融点が200℃以下、より好ましくは融点が180℃以下のフッ素系樹脂を用いることができる。そして、上記したように表面カバー体6をフッ素系樹脂にすれば、この樹脂は、膜体2の表面材2cであるPVCの融点180℃程度に近くなり、前記した膜体2および表面カバー体6同士の熱による溶着Wが容易、かつ、精度よくできる。
【0037】
更に、上記表面カバー体6には、近赤外線カット機能を持たせる事が好ましい。例えば、スズ−アンチモン系酸化剤や、インジウム−スズ系酸化剤等を表面カバー体6に使用するフッ素系樹脂に必要量混合する事によって近赤外線をカットすることが可能となる。これにより、太陽電池3の温度上昇を防ぎ、発電効果の低下を防止する事が可能となる。
【0038】
なお、上記表面カバー体6についても、上記膜体2や裏面カバー体5と同様に、少なくとも熱による溶着Wをしない部分の最表面には、汚れ防止のための光触媒層を設けていてもよい。
【0039】
また、上記溶着Wは、高周波溶着、熱風溶着、および熱コテ式溶着などにより達成可能である。上記溶着Wは、開口4内への雨水の浸入の防止のため、連続的になされる。なお、上記膜体2への裏面カバー体5や表面カバー体6の固着は、上記した溶着Wに代えて、接着や縫着によってもよい。
【0040】
上記構成によれば、膜体2に貫設され、太陽電池3を挿入させる開口4と、上記太陽電池3の裏面側からこの太陽電池3と上記開口4とを覆って上記膜体2の裏面に固着される裏面カバー体5と、上記太陽電池3の表面側からこの太陽電池3と上記開口4とを覆って上記膜体2の表面に固着される透明な表面カバー体6とを備えている。
【0041】
このため、上記膜体2の表面では、上記表面カバー体6がその厚さ分だけ突出するよう、突出寸法を抑制できることから、太陽光発電装置1の表面を全体的に平滑にすることができる。
【0042】
よって、第1に、この太陽光発電装置1の外観上の見栄えの向上が達成される。また、太陽光発電装置1の表面への雨水の滞留が防止されて、このような雨水の滞留による汚れの発生が防止され、この点でも、太陽光発電装置1の見栄えの向上が達成される。また、第2に、太陽光発電装置1の表面に与えられる風圧を軽減することができ、その分、上記膜体2の強度を低く抑制できることから、この膜体2の厚さを薄くして、太陽光発電装置1を、より軽量にすることができる。
【0043】
上記の場合、膜体2の厚さを太陽電池3の厚さよりも少し小さくするなどして、上記太陽電池3の裏、表面に裏面カバー体5および表面カバー体6を圧接させてもよく、このようにすれば、上記太陽電池3が開口4内でがたつくことが防止される。
【0044】
また、前記したように、膜体2と太陽電池3との各厚さを互いにほぼ同じにしている。
【0045】
このため、上記太陽電池3と開口4とを覆って上記膜体2に固着される表面カバー体6が、上記太陽電池3に押されて上記膜体2の厚さ方向の外方に盛り上がったり、これとは逆に、上記表面カバー体6の表面(上面)に凹みが生じたりすることが防止される。よって、上記太陽光発電装置1の表面を、より平滑にすることができる。
【0046】
また、前記したように、上記膜体2の表面における上記開口4の開口縁部に上記表面カバー体6を溶着Wしている。
【0047】
このため、上記太陽光発電装置1の外部から上記開口4の内部への雨水の侵入は、より確実に防止されて、太陽電池3の防水性が向上し、これは太陽光発電装置1の寿命上、有益である。
【0048】
また、前記したように、上記膜体2に上記開口4を複数形成し、上記裏面カバー体5と表面カバー体6とのうち、少なくともいずれか一方のカバー体を上記各開口4に対し個別に設けている。
【0049】
このため、上記各開口4毎に、上記膜体2から裏面カバー体5、および/もしくは表面カバー体6を脱着させることができる。よって、上記各開口4毎に太陽電池3を新しいものに交換することができるなど、太陽光発電装置1の保守点検作業が容易にできる。
【0050】
また、前記したように、膜体2と裏面カバー体5との各材料を互いに同じにしている。
【0051】
このため、上記膜体2が、膜体2の展張時に付与される張力によって伸縮した場合や、何らかの外力で撓んだ場合、この膜体2の伸縮や変形に対し上記裏面カバー体5は円滑に追従する。よって、上記したように膜体2の伸縮時や撓んだ場合でも、この膜体2から上記裏面カバー体5が剥がれることは防止され、これは太陽光発電装置1の寿命上有益である。
【0052】
更に好ましくは、膜材2の基材2a,2bと裏面カバー体5の基材5a,5bとの各繊維織物の織方向を同一にすることが好ましい。これにより膜体2の展張時に、この膜体2に付与される張力を適切に管理することができ、皺や破れを防止することが可能となる。
【0053】
なお、以上は図示の例によるが、膜体2は太陽光発電装置1の専用として設けられるものであってもよく、構造物の屋根など、構造物の一部により構成されるものであってもよい。また、上記膜体2は、各太陽電池3が太陽に向かうよう傾斜していてもよい。
【0054】
また、上記太陽電池3、開口4、裏面カバー体5、および表面カバー体6は円形状、長円形状、もしくは楕円形状であってもよく、互いに形状が相違していてもよい。