特許第5709256号(P5709256)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ タキロン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5709256-既設床シートの接着性検査方法 図000002
  • 特許5709256-既設床シートの接着性検査方法 図000003
  • 特許5709256-既設床シートの接着性検査方法 図000004
  • 特許5709256-既設床シートの接着性検査方法 図000005
  • 特許5709256-既設床シートの接着性検査方法 図000006
  • 特許5709256-既設床シートの接着性検査方法 図000007
  • 特許5709256-既設床シートの接着性検査方法 図000008
  • 特許5709256-既設床シートの接着性検査方法 図000009
  • 特許5709256-既設床シートの接着性検査方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5709256
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】既設床シートの接着性検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 19/04 20060101AFI20150409BHJP
【FI】
   G01N19/04 D
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-93858(P2011-93858)
(22)【出願日】2011年4月20日
(65)【公開番号】特開2012-225779(P2012-225779A)
(43)【公開日】2012年11月15日
【審査請求日】2014年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090608
【弁理士】
【氏名又は名称】河▲崎▼ 眞樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 覚
(72)【発明者】
【氏名】増井 亮
【審査官】 清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−063363(JP,A)
【文献】 特開2008−057111(JP,A)
【文献】 特開2004−019309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 19/00−19/04
E04F 15/00−15/22
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下地に接着剤で接着された既設床シートの一部を剥離して床下地との接着性を評価し、剥離部分を補修する方法であって、次のステップ(1)〜(5)を含むことを特徴とする既設床シートの接着性検査方法。
既設床シートに切込みを設け、この切込みに沿って既設床シートの一部を剥離して床下地との接着性を評価するステップ(1)、
既設床シートの一部を剥離、除去したあとの開口部に露出した床下地に補修接着剤を塗布するステップ(2)、
既設床シートの上記開口部に補修床シートを嵌合するステップ(3)、
補修床シートを圧着して補修接着剤を補修床シートの周縁と既設床シートの上記開口部の周縁との隙間に湧出させるステップ(4)、
湧出させた補修接着剤を均すステップ(5)。
【請求項2】
前記ステップ(3)において、既設床シートの前記開口部の周縁と補修床シートの周縁との隙間に、補修床シートの位置決めを行う位置決め材を部分的に挿着し、前記ステップ(4)の後に位置決め材を除去することを特徴とする、請求項1に記載の既設床シートの接着性検査方法。
【請求項3】
前記ステップ(4)において補修床シートを圧着する前に、既設床シートの前記開口部の周縁と補修床シートの周縁にマスキングを施し、更にマスキングを施した部分を汚れ防止シートで被覆することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の既設床シートの接着性検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は既設床シートの接着性検査方法に関し、更に詳しくは、床下地に接着剤で接着された既設床シートの一部を剥離して床下地との接着性を評価し、剥離部分から水が浸入しないように補修する接着性検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
床面の美観や意匠性を向上させると共に、床面に防滑性を付与し、また床下地が雨水や掃除水と接触して傷むことを防止する目的で、屋内外の床面(床下地)に合成樹脂やゴム製の長尺床シートを敷設することが広く行われている。
【0003】
床シートを敷設する際は、床シートを一液反応型ウレタン系接着剤等の接着剤によって床下地に接着するのが一般的であるが、床下地の種類や表面状態(濡れているか、汚れているかなど)、床下地の処理の良否、床シートの敷設・接着作業の良否によっては、床下地と床シートの接着性が低下し、床シートに浮きや膨れが生じる場合がある。このような既設床シートの浮きや膨れは、美観を損なうだけでなく、歩行者が躓いて怪我をする要因となり、危険であることから、改修の対象となる。また、既設床シートの浮きや膨れは床シートの破損に至りやすく、そのように既設床シートが破損すると、床下地に雨水や掃除水が浸入して建物自体の劣化を早めることにもなる。
【0004】
ところが、床下地と既設床シートの接着性の低下それ自体は、外観から判別できるものではなく、既設床シートに浮きや膨れといった外観ないし触感上認識できる不具合が現出して、はじめて把握できる性質のものであるため、既設床シートに浮きや膨れなどの不具合が発生することを未然に防止できないという問題があった。
【0005】
一方、本出願人は、下地面と下地表面層の密着力判定方法として、下地面を被覆する下地表面層に引張片を貼着し、引張片を離反方向に引張ることにより下地面と下地表面層の密着力を判定する方法において、引張片に判定基準に見合う力で引張ることにより破断する破断部を設け、下地面から下地表面層が剥離する前に引張片が破断することで下地面と下地表面層の密着力が適正と判定する密着力判定方法を提案した(特許文献1)。
【0006】
この密着力判定方法は、判定基準を熟知していなくても下地表面層の密着力が適正であるか否かを容易に判断できる便利な方法であるが、下地表面層の引張片を貼着した部分や下地表面層の剥離した部分を補修することまで考慮したものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−63363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情の下になされたもので、その解決しようとする課題は、既設床シートに浮きや膨れが発生する前に既設床シートの一部を剥離して床下地との接着性を評価し、剥離部分から水が浸入しないように簡便かつ体裁良く補修することができる既設床シートの接着性検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る既設床シートの接着性検査方法は、床下地に接着剤で接着された既設床シートの一部を剥離して床下地との接着性を評価し、剥離部分を補修する方法であって、次のステップ(1)〜(5)、即ち、
既設床シートに切込みを設け、この切込みに沿って既設床シートの一部を剥離して床下地との接着性を評価するステップ(1)と、
既設床シートの一部を剥離、除去したあとの開口部に露出した床下地に補修接着剤を塗布するステップ(2)と、
既設床シートの上記開口部に補修床シートを嵌合するステップ(3)と、
補修床シートを圧着して補修接着剤を補修床シートの周縁と既設床シートの上記開口部の周縁との隙間に湧出させるステップ(4)と、
湧出させた補修接着剤を均すステップ(5)と、
を含むことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の接着性検査方法では、前記ステップ(3)において、既設床シートの前記開口部の周縁と補修床シートの周縁との隙間に、補修床シートの位置決めを行う位置決め材を部分的に挿着し、前記ステップ(4)の後に位置決め材を除去することが好ましい。
【0011】
また、本発明の接着性検査方法では、前記ステップ(4)において補修床シートを圧着する前に、既設床シートの前記開口部の周縁と補修床シートの周縁にマスキングを施し、更にマスキングを施した部分を汚れ防止シートで被覆することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る既設床シートの接着性検査方法は、前記ステップ(1)によって、浮きや膨れが発生する前に既設床シートと床下地の接着性を容易に評価することができ、前記ステップ(2)〜(5)によって、既設床シートの一部を剥離、除去したあとの補修が必要な箇所を簡便かつ体裁良く補修することができる。特に、前記ステップ(4)のように、補修接着剤を補修床シートの周縁と既設床シートの開口部の周縁との隙間に湧出させると、補修床シートと既設床シートの開口部との周縁同士が補修接着剤で確実にシールすることができる。
ところで、通常の補修方法で行われる、補修床シートの周縁と既設床シートの開口部の周縁との間で形成された幅の狭い隙間にシール材を充填する作業は、当該隙間からの浸入水を防止する観点から、隙間のすべて(全周)に、切れ目なく、且つシール中に気泡(エア噛み)が含まれていたり、シールの表面にシール材の膜が張った状態でシール中に未充填部分(膜張り)が存在しないようにシール材を充填する必要があり、時間と慎重さが必要となるものであった。特に、エア噛みや膜張りの有無は、外観からは判別できないため、不具合が発生する頻度も高かった。
本発明の既設床シートの接着性検査方法は、上記した効果を奏すると共に、シールのエア噛みや膜張り現象が生じないため、雨水や掃除水が床下地に浸入しないように確実に補修することができる。
【0013】
また、前記ステップ(3)において、既設床シートの開口部の周縁と補修床シートの周縁との隙間に、補修床シートの位置決めを行う位置決め材を部分的に挿着すると、前記ステップ(4)において、補修床シートを圧着ロール等で圧着して補修接着剤を補修床シートの周縁と既設床シートの開口部の周縁との隙間に湧出させる際に、補修床シートが位置決めされて上記隙間が適正な幅に維持されるため、精度の高い上記隙間のシールが実現できることになる。
【0014】
また、前記ステップ(4)において、補修床シートを圧着する前に、既設床シートの開口部の周縁と補修床シートの周縁にマスキングを施し、更にマスキングを施した部分を汚れ防止シートで被覆すると、圧着ロール等で補修床シートを圧着する際に、既設床シートの開口部の周縁と補修床シートの周縁との隙間から湧出する補修接着剤によって圧着ロール等の圧着具が汚れたり、その汚れが既設床シートや補修床シートに転写されたりするのを防止できるので、美麗に補修できることになる。そして、汚れの付着を虞れるあまり、補修床シートの周縁が圧着不足になって接着不良が生じることも防止できることになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る既設床シートの接着性検査方法の説明図であって、既設床シートに切込みを形成しているところを示すものである。
図2】同接着性検査方法の説明図であって、切込みに沿って既設床シートの一部を剥離し、計測器で床下地との接着性を測定、評価しているところを示すものである。
図3】同接着性検査方法の説明図であって、既設床シートの一部を剥離、除去したあとの開口部の周縁をシーム液で処理しているところを示すものである。
図4】同接着性検査方法の説明図であって、既設床シートの開口部の周縁にマスキングを施したところを示すものである。
図5】同接着性検査方法の説明図であって、既設床シートの開口部に露出した床下地に補修接着剤を塗布しているところを示すものである。
図6】同接着性検査方法の説明図であって、既設床シートの開口部に補修床シートを嵌合しているところを示すものである。
図7】同接着性検査方法の説明図であって、汚れ防止シートを被せてその上から補修床シートを圧着ロールで圧着しているところを示すものである。
図8】同接着性検査方法の説明図であって、補修後の状態を示すものである。
図9】汚れ防止シートの上から補修床シートを圧着ロールで圧着しているところを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、本発明の一実施形態に係る既設床シートの接着性検査方法を詳細に説明する。
【0017】
本発明の接着性検査方法によれば、最初のステップ(1)において、図1に示すように、切込み用の型板1を既設床シートFSの所定箇所にテープ2で固定し、型板1に形成されたE形のガイド溝1aに沿ってカッター3で切込み4(図2を参照)を既設床シートFSに設けることにより、剥離すべき二つの矩形部5a,5a(図2を参照)を隣接させて形成する。切込み4の深さは既設床シートFSの厚みと同等であり、基本的に既設床シートFSが切り離される程度の深さであることが好ましい。また、剥離すべき矩形部5aの大きさは特に限定されないが、接着性の検査(接着力の測定)を正確に行うことができる大きさ、例えば、幅50mm程度、長さ250mm程度の矩形部5aとすることが好ましい。
【0018】
接着性検査の対象となる既設床シートFSは、床下地FBに接着剤で接着された合成樹脂(軟質塩化ビニル樹脂、オレフィン系樹脂など)やゴムからなる床シートであり、単層構造のものは勿論、表面層と裏面層を有するものや、表面層と中間層と裏面層を有するものや、層間又は裏面に不織布や織布を積層したもの等も対象になる。そして、床下地FBは、打設されたコンクリート製のものでも、木製のものでも、プレキャスト板や金属板からなるものでもよい。また、既設床シートFSを接着している接着剤は、一液反応型もしくは二液反応型のウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、変成シリコーン系接着剤などのいずれでもよく、これらの接着剤は、通常、床シートFSの敷設時に床下地FBに櫛目ゴテを用いて櫛目状に300〜400g/mの塗布量で塗布されている。
【0019】
切込み4による矩形部5,5の形成が終わると、引き続きステップ(1)において、図2に示すように、計測器6から吊り下げられたロープ6a下端のチャック6bで矩形部5の一端部を保持し、計測器6を徐々に引き上げて矩形部5を上方に直角に曲げながら切込み4に沿って剥離させ、その途中で矩形部5の剥離が停止するときの耐剥離力、つまり矩形部5の床下地FBに対する接着力を計測器6で計測して、既設床シートFSと床下地FBの接着性の良否を評価する。このとき、矩形部5の一端部を予め1〜2cm程度剥がして切除しておくと、矩形部5のチャック作業がし易くなるので好ましい。
【0020】
一方の矩形部5を剥離して既設床シートFSの接着性の評価が終わると、他方の矩形部5も同様に剥離しながら接着力を計測して既設床シートFSの接着性を評価する。このように接着性の評価を二度行って両者の平均をとると、既設床シートFSの接着性の評価をより正確に行えるので好ましい。
【0021】
既設床シートFSの矩形部5の剥離による接着性の評価は、ポンチ等を用いて矩形部5の一端部に孔を形成し、この孔にバネ計りのフックを引っ掛けて行うようにしても勿論よい。
なお、図2において、7は、床下地FBに櫛目状に塗布されて既設床シートFSを接着していた接着剤の残痕である。
【0022】
接着性の評価が終わると、次のステップ(2)において、矩形部5,5を剥離、除去したあとの既設床シートFSの開口部8に露出した床下地FB表面の接着剤7の残痕(図2を参照)をコテ等で掻き取り、図3に示すように、開口部8に露出した床下地FBの表面を平滑にする。そして、既設床シートFSと同種の合成樹脂を溶解した溶剤9(シーム液)を、図3に一点鎖線で示すように開口部8の周縁に塗布し、前記のカッター3による切込み作業や接着剤7の残痕の掻き取り作業などで傷付いた既設床シートFSの開口部8の周縁を補修する。そして、図4に示すように開口部8の周縁をマスキングテープ10で被覆し、更にその周囲にテープ2を貼付けて、開口部8の周縁をマスキングする。マスキングテープ10は、建築の仕上げ工事に用いられる、テープ片面に粘着剤を塗布したマスキングテープを使用すればよい。
【0023】
開口部8の周縁のマスキングが終わると、引き続きステップ(2)において、図5に示すように、開口部8に露出した床下地FBの表面に補修接着剤11を供給し、ヘラ12などを用いて、開口部8に露出した床下地FBの表面全体に補修接着剤11を均一に塗布する。既設床シートFSを床下地FBに接着する接着剤7は、櫛目ゴテを用いて櫛目状に塗布されるが、補修接着剤11は補修床シート13を接着するものであり、後述するように補修床シート13を圧着するときに補修床シート13の周縁と開口部8の周縁との隙間17(図6を参照)に湧出させる必要があるため、櫛目状ではなく、均一(均一な層状)に塗布することが好ましい。このように均一に補修接着剤11を塗布することで、隙間17の全周から均一に補修接着剤11を湧出させることができるとともに、隙間17に湧出する補修接着剤11に空気が混入することを抑制し、シール部にエア噛みなどの不具合が発生することを防止できる。
【0024】
補修接着剤11としては、既設床シートFSの接着に用いる前述の接着剤7がいずれも使用可能であるが、そのなかでも、一液反応型ウレタン系接着剤若しくは一液反応型変成シリコーン系接着剤は、硬化反応後の柔軟性や伸縮追従性などに優れているので好適に用いられる。補修接着剤11の塗布量は特に限定されないが、500〜800g/m程度とするのが適当である。
【0025】
補修接着剤11の塗布が終わると、次のステップ(3)において、図6に示すように、補修床シート13を既設床シートFSの開口部8に嵌合する。補修床シート13としては、基本的に既設床シートFSと同材質の床シートであって、既設床シートFSの開口部8よりも一回り小さいもの、具体的には開口部8の周縁との間に0.5〜10mm程度(さらに好ましくは1〜5mm程度)の隙間17が形成される大きさの矩形の床シートが好ましく使用される。そのなかでも、雨水等の浸入防止性(水封性)や最終的な仕上げ作業性の観点から、開口部8の周縁との間に2mm程度の隙間17が形成される大きさの矩形の床シートが特に好ましく使用される。
【0026】
この補修床シート13の周縁には、図6に示すようにマスキングテープ10を貼り付け、次のステップ(4)で開口部8の周縁と補修床シート13の周縁との隙間17から湧出する補修接着剤11によって補修床シート13の周縁が汚れないように、マスキングすることが好ましい。
【0027】
また、次のステップ(4)で補修床シート13を圧着ロール14で圧着する際に、補修床シート13が移動して開口部8の周縁と補修床シート13の周縁との隙間17が広くなったり狭くなったりしないように、鉤形の位置決め材15を上記隙間17の四隅のコーナー部のうちの、少なくとも対角線上で対向する2つのコーナー部に挿着することが好ましい(図6では、四隅のコーナー部すべてに鉤形の位置決め材15を挿着している)。なお、鉤形の位置決め材15に代えて、小片状の位置決め材を上記隙間17の長辺中央部と端辺中央部に挿着しても勿論よい。
【0028】
既設床シートFSの開口部8への補修床シート13の嵌合が終わると、次のステップ(4)において、図7図9に示すように、マスキングを施した開口部8の周縁と補修床シート13の表面全体を汚れ防止シート16で被覆し、その上から圧着ロール14で補修床シート13を床下地FBに圧着すると同時に、その圧力によって補修接着剤11を補修床シート13の周縁と既設床シートFSの開口部8の周縁との隙間17に湧出させる。このように補修接着剤11を上記隙間17に湧出させると、補修床シート13と既設床シートFSの開口部8の周縁同士が補修接着剤11で確実にシールされ、シール部分にエア噛みや膜張りなどの不具合を生じることがなく、しかも、補修シート13が位置決め材15で位置決めされて上記隙間17が適正な幅(好ましくは5mm)に維持されるので、シールの精度が向上し、雨水や掃除水が床下地に浸入するのを確実に防止することが可能となる。
【0029】
また、補修床シート13の周縁と開口部8の周縁は、補修床シート13を圧着ロール14で圧着する前にマスキングテープ10でマスキングされており、更にその上から汚れ防止シート16で被覆されているため、補修床シート13の圧着時に上記隙間17から湧出する補修接着剤11によって圧着ロール14が汚れたり、その汚れが既設床シートFSや補修床シート13に転写されたりすることがなくなって、美麗に補修できるようになる。そして、汚れの付着を虞れるあまり、補修床シート13の周縁が圧着不足になって接着不良が生じることも防止できるようになる。
【0030】
汚れ防止シート16は、この実施形態では、マスキングした既設床シートFSの開口部8の周縁と補修床シート13の表面全体を被覆できる大きさのシートを用いているが、少なくとも、開口部8の周縁と補修床シート13の周縁を被覆できる大きさのシートであればよい。汚れ防止シート16の材質は特に限定されないが、透明な合成樹脂製の汚れ防止シート16は補修接着剤11の湧出の程度を目視で確認できるので、作業性や均一な湧出性を確保する観点から好ましく使用される。また、汚れ防止シート16の厚みも特に限定されないが、取扱い性や強度などを考慮すると、0.05〜0.5mm程度の厚さを有するフィルム状ないしシート状の汚れ防止シートを使用することが好ましい。
【0031】
補修床シート13を圧着して補修接着剤11を上記隙間17に湧出させるステップ(4)が終わると、汚れ防止シート16を剥して、位置決め材15を除去し、最後のステップ(5)において、上記隙間17から湧出した補修接着剤11をヘラ等で均して継目部分を仕上げ、図8に示すように補修床シート13の周縁や既設床シートFSの開口部8の周縁に貼付けられていたマスキングテープやテープを剥がして、補修作業を完了する。
【0032】
なお、この実施形態では、補修接着剤11を既設床シートFSの開口部8に露出した床下地FBに塗布する前に開口部8の周縁をマスキングテープ10でマスキングし、開口部8に補修床シート13を嵌合する前に補修床シート13の周縁をマスキングテープ10でマスキングしているが、これらのマスキングは、ステップ(4)で補修床シート13を圧着する前(汚れ防止シート16を被せて圧着する前)に行ってもよい。
【0033】
以上の説明から理解できるように、本発明に係る既設床シートの検査方法は、そのステップ(1)によって、浮きや膨れが発生する前に既設床シートFSと床下地FBの接着性を容易に評価することができ、更にステップ(2)〜(5)によって、既設床シートFSの矩形部5,5を剥離、除去したあとの補修が必要な開口部8を、雨水等が床下地FBに浸入しないように、体裁良く、簡便かつ確実に補修することができるので、極めて有効な検査方法であると言える。
【符号の説明】
【0034】
1 切込み用の型板
3 カッター
4 切込み
5 剥離すべき矩形部
6 計測器
6b 計測器のチャック
7 接着剤
8 既設床シートの開口部
10 マスキングテープ
11 補修接着剤
13 補修床シート
14 圧着ロール
15 位置決め材
16 汚れ防止シート
17 既設床シートの開口部の周縁と補修床シートの周縁との隙間
FS 既設床シート
FB 床下地
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9