(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の本発明に係る実施形態では、必要な場合に複数のセクションなどに分けて説明するが、原則、それらはお互いに無関係ではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細などの関係にある。このため、全図において、同一の機能を備える部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0016】
また、構成要素の数(個数、数値、量、範囲などを含む)については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。また、構成要素などの形状に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。
【0017】
まず、本実施形態におけるカードディスペンサ10の構成について、
図1〜
図3を参照して説明する。
図1〜
図3はそれぞれカードディスペンサ10の側面図、正面図、上面図である。なお、
図1〜
図3では、説明を明解にするために、一部を透視したり、省略したりしている。
【0018】
カードディスペンサ10は、表裏面を有する対象カード11(使用カードともいう)が通過するゲート隙間16(
図9参照)の間隔を調整するゲート調整部15を備えている。また、カードディスペンサ10は、対象カード11をストックするストッカ部12と、対象カード11の有無を検知する検知部13と、対象カード11を搬送する搬送部14とを備えている。このカードディスペンサ10は、取り出し対象である対象カード11として、プリペイドカードやポイントカードなどに利用される磁気カードやICカード、単に印字されたカードその他のカードに対応することができる。なお、このようなカードは、一般に、平面視矩形状をしている。
【0019】
ストッカ部12は、対象カード11を複数枚積層させた束11A(以下、カード束という)でストックできるものである。ストッカ部12は、カード束11Aを収納するために、直方体形状の空間が確保された内部20を備える筐体で構成されている。ストッカ部12の筐体は、板部材を加工して構成された側面板21、21、前面板22、背面板23、底面板24が組み付けられている。なお、このストッカ部12の筐体は、カードディスペンサ10の筐体でもある。
【0020】
ストッカ部12の上側では、内部20に通ずる開口部が設けられている。また、ストッカ部12の下側では、数枚の対象カード11の厚み分の空間を確保するように、底面板24の面24a(以下、第1基準面という)と前面板22の下側端部とが離隔して設けられている。このような離隔による空間は、ストッカ部12の筐体に設けられ、間隔が固定された固定隙間25(ストッカ投出口)である。なお、カードディスペンサ10では、固定隙間25を通過する対象カード11が一枚ずつ出るように(二枚以上出ないように)、ゲート調整部15によって、ゲート隙間16を調整している。
【0021】
ストッカ部12では、内部20の開口部からカード束11Aを収納することができる。具体的には、カード束11Aが、底面板24の第1基準面24a上に載せられる。例えば、カード束11Aは、各対象カード11の表面を上側、裏面を下側のように揃えて積層してもよいし、ある対象カード11の表面が上側で別の対象カード11の表面が下側で混在させて積層してもよい。
【0022】
このカード束11A(最上位の対象カード11)上には、加圧部30が載せられる。この加圧部30は、例えば、平面視矩形状をした金属製の重石板である。重石板の加圧部30は、自重によってカード束11Aを底面板24の第1基準面24aへ押し付けている。
【0023】
検知部13は、ストッカ部12内に対象カード11が有るか無いかを検知できるものである。この検知部13は、例えば、ストッカ部12の下方に設けることができる。この検知部13は、発光部と受光部とを備えている。なお、検知部13が、受光、発光できるように、ストッカ部12の底面板24には、開口部24b(
図3参照)が設けられる。
【0024】
検知部13の発光部は、カード束11Aの最下位の対象カード11へ発光する。そして、検知部13の受光部は、その対象カード11からの反射を受光する。すなわち、検知部13は、対象カード11からの反射の有無を、対象カード11の有無として検知することができる。
【0025】
搬送部14は、ストッカ部12内の対象カード11をその外へ搬送できるものである。この搬送部14は、例えば、ストッカ部12の下方に設けることができる。この搬送部14は、例えば、ローラ部31と、図示しないモータ部とを備えている。なお、搬送部14のローラ部31が、最下位の対象カード11と接することができるように、ストッカ部12の底面板24には、開口部24c(
図3参照)が設けられる。
【0026】
ローラ部31は、カードディスペンサ10の筐体に回転可能に軸支されており、モータ部により駆動伝達部を介して回転(
図1では時計回り)する。カード束11Aの最下位の対象カード11には、加圧部30とローラ部31との間で生じる摩擦力が作用し、ローラ部31の回転により、搬送面となる第1基準面24a上で固定隙間25(前面板22)側へ水平に搬送されていく。すなわち、搬送部14は、ローラ部31と接するカード束11Aの最下位の対象カード11を搬送することができる。
【0027】
なお、カードディスペンサ10は、固定隙間25の前方に、ストッカ部12から取り出されて第1基準面24a(搬送面)上を搬送されてきた対象カード11を挟んで投出できる一対の挟圧ローラ部33、33を備えている。この一対の挟圧ローラ部33、33は、対象カード11の前方への搬送距離を確保し、対象カード11とカードディスペンサ10の切り離しを補助している。また、一対の挟圧ローラ部33、33により、搬送されてきた対象カード11の先端のバタツキを防止することもできる。
【0028】
ゲート調整部15は、ストッカ部12に設けられた固定隙間25を通過する対象カード11に対して、その通行を規制すべくゲート隙間16の間隔の調整を行うものである。このゲート調整部15は、ストッカ部12の前方に設けることができる。ここで、
図4〜
図7を参照して、ゲート調整部15について詳細に説明する。
図4〜
図7はそれぞれゲート調整部15の斜視図、一部を透視した斜視図、一部を切断した斜視図、ダミーカード40を収納した斜視図である。なお、表裏面を有するダミーカード40は、対象カード11と厚さ、硬さなどが同じのダミーであるが、例えば、対象カード11そのものを適用することもできる。
【0029】
ゲート調整部15は、ゲート部41と、変換部42と、荷重部43と、枠部44と、一対のゲート用シャフト部45、45と、回転用シャフト部46とを備えている。
【0030】
ゲート部41は、固定隙間25の前方において、取り出し対象の対象カード11の通行を規制するものであって、対象カード11の搬送面である第1基準面24aの垂直方向に往復動作するものである。また、変換部42は、回転中心(回転軸が回転用シャフト
部46)を有しており、この回転中心で回転動作するものである。また、荷重部43は、第1基準面24aに対してゲート部41を荷重するものである。また、枠部44は、ゲート部41、変換部42、荷重部43などが組み付けられ、ダミーカード40が収納されるものである。また、一対のゲート用シャフト部45、45は、ゲート部41の往復動作の範囲を構成するものである。そして、回転用シャフト部46は、変換部42の回転軸(回転中心)を構成するものである。これらゲート調整部15の構成部について、以下に具体的に説明する。
【0031】
ゲート調整部15を構成する枠部44は、例えば、板部材を加工してなる。すなわち、枠部44は、平板部44aの下部で平板部44aの垂直方向に折り曲げられ、ダミーカード40を支持するダミー用支持部44bを備えている。また、枠部44は、平板部44aの両側部で平板部44aの垂直方向に折り曲げられ、一対のゲート用シャフト部45、45、回転用シャフト部46が組み付けられるシャフト用組付部44cを備えている。そして、枠部44は、各シャフト用組付部44cの垂直方向(平板板44aと平行した方向となる)に折り曲げられ、ストッカ部12の前面板22に組み付けられるストッカ用組付部44dを備えている。
【0032】
枠部44の上部では、枠部44の内部に通ずる開口部が設けられている。枠部44では、その開口部からダミーカード40を収納することができる。具体的には、ダミーカード40が、平板板部44aの面44e(以下、第2基準面という)上に載せられるように、変換部42と平板部44aとの間を通過し、ダミー用支持部44bと当接した位置において、枠部44内に収納される(
図7参照)。すなわち、ダミーカード40は、変換部42と第2基準面44eとの間で挟み込まれる。このため、枠部44の平板部44aは、ダミーカード40を挟み込むための板部となっている。
【0033】
ゲート調整部15を構成するゲート部41は、例えば、板部材を加工してなる。すなわち、ゲート部41は、平板部41aの下部で平板部41aの面内方向に突起し、第1基準面24aと当接するゲート先端部41bを備えている。このゲート先端部41bは、固定隙間25側から徐々に肉薄となるようなテーパ部41btを備えている。このテーパ部41btを設けることで、カードディスペンサ10から対象カード11を取り出す際に、ゲート部41で対象カード11が詰まるのを防止することができる。また、このテーパ部41btは、先端側が上反りした対象カード11をゲート隙間16(固定隙間25)に導き入れる働きもある。
【0034】
また、ゲート部41は、平板部41aの中央部で平板部41aの垂直方向に折り曲げられ、変換部42と接する接部41cを備えている。また、ゲート部41は、平板部41aの上部で平板部41aの垂直方向に折り曲げられ、荷重部43が組み付けられる荷重用組付部41dを備えている。そして、ゲート部41は、平板部41aの両側部で平板部41の垂直方向に折り曲げられ、ゲート用シャフト部45が長穴部41fで貫通して設けられるシャフト用貫通部41eを備えている。
【0035】
ゲート調整部15を構成する変換部42は、例えば、板部材を加工してなる。すなわち、変換部42は、平板部42aの両側部で平板部42aの垂直方向に折り曲げられ、回転用シャフト部46が組み付けられるシャフト用貫通部42bを備えている。
【0036】
このシャフト用貫通部42bには、ゲート部41の接部41cと接し、この接部41
cを介して第1基準面24aに対して垂直方向にゲート部41を支持する支持部42cが設けられている。また、シャフト用貫通部42bには、枠部44の平板部44aの第2基準面44eに対してダミーカード40を支持し、これにより第2基準面44eに対して変位する変位部42dが設けられている。このように、シャフト用貫通部42bでは、支持部42cと変位部42dとが一体に構成されている。そして、シャフト用貫通部42bには、回転用シャフト
部46が貫通する貫通穴42eが設けられている。
【0037】
ゲート調整部15を構成する一対のゲート用シャフト部45、45は、例えば、棒部材を加工してなる。ゲート用シャフト部45の両端部が、枠部44のシャフト用組付部44cに組み付けられる。また、ゲート用シャフト部45の中途部が、ゲート部41のシャフト用貫通部41eに設けられた長穴部41fに貫通している。
【0038】
この長穴部41fは、ゲート部41が往復動作する方向の上下2箇所のシャフト用貫通部41eに、その方向に伸びて設けられている。このため、ゲート部41が、長穴部41fの長さ内で往復動作することができる。また、往復動作する方向の上下のそれぞれにゲート用シャフト部45、45(45A、45B)を設けることで、ゲート部41が往復動作する際に、ゲート部41が傾くのを防止することができる。
【0039】
ゲート調整部15を構成する回転用シャフト部46は、例えば、棒部材を加工してなる。回転用シャフト部46の両端部が、枠部44のシャフト用組付部44cに組み付けられている。また、回転用シャフト部46の中途部が、変換部42の貫通穴42eに貫通している。このため、変換部42が、回転用シャフト部46を回転軸として自在に回転動作することができる。なお、枠部44内において、変換部42は、他の部材(ゲート部41など)によって一回転するのを妨げられ、所定の角度の範囲内で回転動作する。
【0040】
ゲート調整部15を構成する荷重部43は、ゲート部41(ゲート先端部41b)を常に第1基準面24a側へ押すように働くものである。すなわち、荷重部43が、第1基準面24aに対してゲート部41に荷重を加えている。
【0041】
この荷重部43は、引張コイルバネ47を備えている。この引張コイルバネ47の一端が、ゲート部41の荷重用組付部41dに組み付けられ、他端が、上側のゲート用シャフト部45Aの中途部に組み付けられている(
図5参照)。また、前述したように、ゲート用シャフト部45が、長穴部41fの長さ内で往復動作できるようにゲート部41に組み付けられ、また、ストッカ部12の前面板22で固定された枠部44に組み付けられている。
【0042】
このため、ダミーカード40が枠部44に収納されていない状態では、上側のゲート用シャフト部45Aが引張コイルバネ47によって引っ張られて長穴部41f内の上部と当接し、ゲート部41が枠部44から相対的に第1基準面24a側に下がる。この状態は、荷重部43に確実にゲート部41(ゲート先端部41b)が第1基準面24aに当接し、ゲート隙間16がない状態、すなわち対象カード11の通行(搬送)が止められた状態である。
【0043】
一方、ダミーカード40が枠部44に収納される状態では、第1基準面24aを基準として、変換部42が荷重部43からの荷重に抗してゲート部41を変位させる。
【0044】
次に、本実施形態におけるカードディスペンサ10の対象カード11の取り出し動作(特に、ゲート調整部15の動作)について、
図8〜
図11を参照して説明する。
図8および
図9はカードディスペンサ10の側面側から見たゲート調整部15の動作説明図である。また、
図10はカードディスペンサ10のゲート調整部15の変換部42の側面図である。そして、
図11は
図8および
図9に示すゲート調整部15の動作説明図である。この
図11中、実線および破線で示す変換部42が、それぞれ
図8および
図9に示す変換部42に対応したものとなっている。
【0045】
カードディスペンサ10は、ゲート部41の開閉をゲート調整部15で行い、第1基準面24aとゲート部41との間のゲート隙間16から、対象カード11を取り出せるものである。カードディスペンサ10では、対象カード11およびダミーカード40の厚さを同じ(厚さt)としているが、ゲート隙間16の間隔が、厚さtのa倍である、a×tとなるようにしている。後述するが、この倍率aは、変換部42の回転中心Oから支持部42cまでの距離OAと、回転中心Oから変位部42dまでの距離OBとの比から求められる。なお、距離OBが半径Lのとき、距離OAが半径a×Lとなる。
【0046】
前述したように、カードディスペンサ10は、ゲート部41を変位させてゲート隙間16の間隔を調整するゲート調整部15を備えている。そして、このゲート調整部15が、対象カード11のダミーカード40が収納される第2基準面44eからの変位を、ゲート部41の変位へ変換する変換部42を備えている。
【0047】
この変換部42は、第1基準面24aに対して垂直方向にゲート部41を支持する支持部42cと、第2基準面44eに対して変位する変位部42dとを備えて回転中心Oで回転するものである。この変換部42により、第2基準面44eに対する変位部42dの変位が、第1基準面24aに対する支持部42cの変位へ変換される。
【0048】
図8に示すように、ゲート調整部15内にダミーカード40が収納されていないゲート調整前の状態では、ゲート部41のゲート先端部41bが対象カード11の搬送面である第1基準面24aに当接している。また、ゲート調整前の状態では、変換部42の支持部42cがゲート部41の接部41cに当接し、変位部42dが枠部44の平板部44aの第2基準面44eに当接している。また、ゲート調整前の状態では、ストッカ部12内に対象カード11がストックされ、第1基準面24a上に載せられる。なお、対象カード11のストックは、ゲート調整後に行ってもよい。
【0049】
続いて、
図9に示すように、ゲート調整部15内にダミーカード40が表裏いずれか一方の面が第2基準面44eに接して収納されたゲート調整後の状態では、ゲート先端部41bが第1基準面24aから離隔し、ゲート隙間16が形成されている。また、ゲート調整後の状態では、支持部42cが接部41cに当接したまま、変位部42dが収納されたダミーカード40の表裏いずれか他方の面に当接して第2基準面44eとの間でダミーカード40を挟み込んでいる。
【0050】
具体的には、枠部44の上側から下側へ向かう方向(
図9中の下向きの太線矢印の方向)に、第2基準面44e上をスライドさせてダミーカード40をゲート調整部15内に進入させていく(収めていく)と、回転中心Oで時計回りの方向(
図9中の回転中心O周りの太線矢印の方向)に変換部42が回転していく。また、この変換部42が回転していくと、ゲート部41が第1基準面24aから離隔する方向(
図9中の上向きの太線矢印の方向)に移動していく。なお、支持部42cの第1円弧部42caが接部41cと接し、変位部42dの第2円弧部42dbがダミーカード40と接するので、変換部42の回転は、滑らかに行われる。
【0051】
そして、ダミーカード40は、変位部42dおよび第2基準面44eに接したまま進入されていき、ダミー用支持部44bに当接して停止する。このとき、ダミーカード40が第2基準面44eに沿って鉛直方向に起立するような状態(
図9参照)であっても、変位部42dによってダミーカード40を倒さずに支持することができる。
【0052】
このようにして、変換部42が、所定の角度θ(
図11参照)だけ回転して、第2基準面44eからの変位を、第1基準面24aからのゲート部41の変位へ変換する。すなわち、ゲート調整部15は、対象カード11のダミーカード40の厚みに応じて、ゲート隙間16の間隔が調整されて、ゲート部41を開く。なお、ゲート部41を閉じる(ゲート隙間16をなくす)ときは、ダミーカード40をケート調整部15内から取り出す動作によって、変換部42およびゲート部41が逆の動作をする。
【0053】
その後、
図9に示すように、ゲート部41が開いた状態で、搬送部14(
図1参照)を駆動させることで、対象カード11が、第1基準面24a上をスライドするように搬送され、カードディスペンサ10の前面の方向(
図9中の右向きの太線矢印の方向)へ取り出される。
【0054】
ところで、ゲート調整部15では、回転部42の支持部42cが、回転中心Oから第1距離OAの点Aを中心とする第1円弧部42caを備えている。また、変位部42dが、回転中心Oから第2距離OBの点Bを中心とする第2円弧部42dbを備えている。そして、第1円弧部42caおよび第2円弧部42dbの曲率を同じとしている。これによれば、第1円弧部42caおよび第2円弧部42dbの曲率半径ρa、ρb(
図10参照)が同じとなるため、ゲート調整部15内において、変換部42の回転移動の範囲(可動領域)を把握するのが容易となる。以下で、具体的に説明する。
【0055】
ゲート調整部15内にダミーカード40が収納されると、
図11に示すように、変換部42は、回転中心Oで所定の角度θだけ回転する。このとき、点AがA’へと移動し、また、点BがB’へと移動する。点BがB’へ移動することは、
図9で示したように、変位部42dが第2基準面44eの垂直方向(第1基準面24a面内方向)において、第2基準面44eから距離tだけ移動、すなわち変位することとなる。また、点AがA’へ移動することは、支持部42cが第1基準面24aの垂直方向(第2基準面44e面内方向)において、第1基準面24aから距離a×tだけ移動、すなわち変位することとなる。
【0056】
なお、曲率半径ρbに対して、曲率半径ρaがαだけ異なるとすると、変位部42dの第2基準面44eからの距離tに対して、支持部42cの第1基準面24aからの距離a×tに、αを考慮する必要がある。
【0057】
ここで、ダミーカード40が厚さtの場合、ゲート隙間16の間隔が厚さtのa倍となる原理について、
図12および
図13を参照して説明する。
図12および
図13はゲート調整部15の変換部42の説明図である。
【0058】
図12に示すように、変換部42が回転中心Oで所定の角度θだけ回転すると、点AがA’へと移動し、同じ半径a×Lの円周上の点A1がA1’へと移動する。また、変換部42が回転中心Oで所定の角度θだけ回転すると、点BがB’へと移動し、同じ半径Lの円周上の点B1がB1’へと移動する。そして、線OBの延長線上に点A1、線OB’の延長線上に点A1’があり、線OB1の延長線上に点A、線OB1’の延長線上に点A’がある。
【0059】
したがって、
図13に示すように、線OBの延長線上に点Aがあり、線OB’の延長線上に点A’があるように、変換することができる。ここでは、曲率半径ρaとρbについては、同じとしているので、考慮していない。
【0060】
これから、直角三角形ODBと、直角三角形OCAとは相似していることがわかる。回転中心Oから点Bまでの距離OBがLのとき、回転中心Oからの点Aまでの距離OAがa×Lとなる。言い換えると、距離OBと距離OAとを定めると、倍率aが定まる。この倍率aが、距離BDと距離ACとの倍率であるので、距離BDがtのとき、距離ACがa×tとなる。
【0061】
このように、カードディスペンサ10では、回転中心Oから支持部42cまでの距離OAと、回転中心Oから変位部42dまでの距離OBとの比が、
ゲート部41の変位と変位部42dの変位との比と同じとなる(例えば3:2)。これによれば、対象カード11のダミーカード40の厚さtに比例(例えばa=1.5)してゲート隙間16を調整することができる。
【0062】
また、カードディスペンサ10では、回転中心Oから支持部42cまでの距離OAが、回転中心Oから変位部42dまでの距離OBより長くしている。これによれば、対象カード11のダミーカード40の厚みに応じて、その厚み分の第2基準面44eからの変位よりも大きくゲート部41の変位と変換される。すなわち、対象カード11の厚みより広いゲート隙間16となる。したがって、対象カード11の表面に傷が付くのを防止することができる。
【0063】
また、カードディスペンサ10では、回転中心Oから支持部42cへの方向と、回転中心Oから変位部42dへの方向とがなす角度が、第1基準面24aと第2基準面44eとがなす角度と同じ(例えば90°)としている。これによれば、ゲート調整部15の設計が容易となる。具体的には、ゲート調整部15内において、変換部42の回転移動の範囲(可動領域)を把握するのが容易となり、また、ゲート調整部15内へ変換部42を組み付けるのが容易となる。
【0064】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、代表的なものの新規な特徴およびこれによって得られる作用、効果を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0065】
カードディスペンサ10は、第1基準面24aと、取り出し対象の対象カード11の通行を規制するゲート部41との間のゲート隙間16から、対象カード11を取り出せる。このカードディスペンサ10は、ゲート部41を変位させてゲート隙間16の間隔を調整するゲート調整部15を備える。ゲート調整部15では、対象カード11のダミーカード40が、該ダミーカード40の表裏いずれか一方の面で第2基準面44eに接して収納される。そして、ゲート調整部15が、収納されたダミーカード40の表裏いずれか他方の面に接し、第2基準面44eに対して変位する変位部42dと、第2基準面44eに対する変位部42dの変位を、ゲート部41の変位へ変換する変換部42とを備えることを特徴とする。
【0066】
これによれば、対象カード11のダミーカード40の厚みに応じて、ゲート隙間16の間隔が調整される。例えば、対象カード11をゲート調整部15内に収納する(具体的には、変換部42と第2基準面44eとの間でダミーカード40を挟み込む)だけで、ゲート隙間16の間隔を自動に調整することができる。また、種類の異なるカード(対象カード11)に対して、一台のディスペンサ10で対応することができる。また、出荷先で容易にゲート隙間16の間隔の調整を行うことができる。そして、種類の異なるカード間において、対象カード11の変更を自由に行うことができる。
【0067】
また、カードディスペンサ10では、変換部42が、変位部42dと一体に構成され、第1基準面24aに対して垂直方向にゲート部41を支持する支持部42cを備えて回転中心で回転することを特徴とする。
【0068】
これによれば、変換部42が、第2基準面44eに対する変位部42dの変位を、第1基準面24aに対する支持部42cの変位へ変換することができる。具板的には、対象カード11のダミーカード40の厚みに応じて、変換部42が回転し、ゲート隙間16の間隔が調整される単純な機構で構成することができる。また、変換部42を備えたカード調整部15が、単純な機構であるため、カードディスペンサ10の製造コストを低減することができる。
【0069】
また、カードディスペンサ10では、回転中心Oから支持部42cまでの距離が、回転中心Oから変位部42dまでの距離より長いことを特徴とする。
【0070】
これによれば、対象カード11のダミーカード40の厚みに応じて、その厚み分の第2基準面44eからの変位よりも大きくゲート部41の変位と変換される。すなわち、対象カード11の厚みより広いゲート隙間16となる。したがって、対象カード11の表面に傷が付くのを防止することができる。
【0071】
また、カードディスペンサ10では、回転中心Oから支持部42cへの方向と、回転中心Oから変位部42dへの方向とがなす角度が、第1基準面24aと第2基準面44eとがなす角度と同じ(例えば90°)であることを特徴とする。
【0072】
これによれば、ゲート調整部15の設計が容易となる。具体的には、ゲート調整部15内において、変換部42の回転移動の範囲(可動領域)を把握するのが容易となり、また、ゲート調整部15内へ変換部42を組み付けるのが容易となる。
【0073】
また、カードディスペンサ10では、回転中心Oから支持部42cまでの距離OAと、回転中心Oから変位部42dまでの距離OBとの比が、
ゲート部41の変位と変位部42dの変位との比と同じ(例えば3:2)であることを特徴とする。
【0074】
これによれば、対象カード11のダミーカード40の厚さに比例してゲート隙間16を調整することができる。
【0075】
また、カードディスペンサ10では、支持部42cが、回転中心Oから第1距離OAの点Aを中心とする第1円弧部42caを備えている。また、変位部42dが、回転中心Oから第2距離OBの点Bを中心とする第2円弧部42dbを備えている。そして、第1円弧部42caが、ゲート部41と接し、第2円弧部42dbが、ダミーカード40と接することを特徴とする。
【0076】
これによれば、変換部42の回転に合わせて第1円弧部42caがゲート部41と、第2円弧部42dbがダミーカード40と滑らかに接することができ、ゲート隙間の調整が容易となる。
【0077】
また、カードディスペンサ10では、第1円弧部42caおよび第2円弧部42dbの曲率が、同じであることを特徴とする。
【0078】
これによれば、ゲート調整部15の設計が容易となる。すなわち、第1円弧部42caおよび第2円弧部42dbの曲率半径が同じとなるため、ゲート調整部15内において、変換部42の回転移動の範囲(可動領域)を把握するのが容易となる。
【0079】
また、カードディスペンサ10では、ゲート調整部15が、第1基準面24aに対してゲート部41に荷重する荷重部43を備えることを特徴とする。
【0080】
これによれば、荷重部43により確実にゲート部41が第1基準面24aに当接し、すなわちゲート部41を閉じておく(ゲート隙間16をなくす)ことができる。また、第1基準面24aを基準として、ゲート部41の変位を定めることができる。
【0081】
さらに、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0082】
例えば、前記実施形態では、ゲート部を変位させてゲート隙間の間隔を調整するゲート調整部が、支持部と変位部とを一体に構成し、回転中心で回転する変換部を備えた場合について説明した。これに限らず、ゲート調整部が、例えば、ダミーカードが収納される第2基準面からの変位を検出し、その検出値を基にボールネジによりゲート部の変位を変換する変換部を備えることも考えられる。しかしながら、前記実施形態の方が、構造が簡単で、ゲート隙間の調整が容易となる。
【0083】
また、例えば、前記実施形態では、回転中心から支持部までの第1距離と、回転中心から変位部までの第2距離との比を3:2(このときの倍率a=1.5)とした場合について説明した。これに限らず、第1距離が、第2距離より長くすることもできる。特に、カードディスペンサが一枚の対象カードを取り出すためには、倍率をa=1.2〜1.5とすることが有効である。なお、倍率a=1.0の場合は、ゲート部の先端部によって対象カードの表面に傷が付いてしまい、倍率a=2.0以上の場合は、対象カードが2枚以上取り出されてしまうことが考えられる。
【0084】
また、例えば、前記実施形態では、カードディスペンサが一枚の対象カードを取り出すために、ゲート調整部が、一枚のダミーカードを収納した場合について説明した。これに限らず、カードディスペンサが一枚の対象カードを取り出すために、ゲート調整部が、二枚のダミーカードを重ねて収納することも考えられる。このときは、回転中心から支持部までの第1距離が、回転中心から変位部までの第2距離より短くなり、例えば、第1距離と第2距離との比を3:4(このときの倍率a=0.75)とすることができる。具体的には、対象カードおよびダミーカードの厚さを1mmとしたとき、二枚分のダミーカード厚2mmに対して、ゲート隙間が1.5mmとなり、対象カード一枚を取り出すことができる。
【0085】
また、例えば、前記実施形態では、回転中心から支持部への方向と、回転中心から変位部への方向とがなす第1角度が、第1基準面と第2基準面とがなす第2角度と同じ(90°)である場合について説明した。また、例えば、前記実施形態では、回転中心から支持部までの第1距離と、回転中心から変位部までの第2距離との第1比が、変位部の変位とゲート部の変位との第2比と同じである場合について説明した。これに限らず、第1角度と第2角度とを異ならせたり、第1比と第2比とを異ならせたりすることも考えられる。しかしながら、前記実施形態の方が、構造が簡単で、ゲート隙間の調整が容易となる。
【0086】
また、例えば、前記実施形態では、支持部が第1円弧部を備え、変位部が第2円弧部を備えた場合について説明した。これに限らず、支持部および変位部が回転して円弧を描く多角形部を備え、それぞれがゲート部、ダミーカードと接することも考えられる。しかしながら、前記実施形態の方が、変換部の回転に合わせて滑らかにゲート部、ダミーカードと接することができ、ゲート隙間の調整が容易となる。
【0087】
また、例えば、前記実施形態では、第1および第2円弧部の曲率が、同じである場合について説明した。これに限らず、第1および第2円弧部の曲率を異ならせることも考えられる。しかしながら、前記実施形態の方が、構造が簡単で、ゲート隙間の調整が容易となる。
【0088】
また、例えば、前記実施形態では、第1基準面(搬送面)に対して垂直方向にダミーカードを収納した場合について説明した。これに限らず、搬送面に対して鈍角をなす方向、言い換えると枠部の平板部が前面板から開く方向にダミーカードを収納することも考えられる。これによれば、ダミーカードの出し入れが容易で、ゲート隙間の調整が容易となる。
【0089】
また、例えば、前記実施形態では、ゲート調整部が、第1基準面に対してゲート部に荷重する荷重部を備えた場合について説明した。これに限らず、ゲート調整部が荷重部を備えず、第1基準面に対してゲート部の自重のみを作用させることも考えられる。しかしながら、前記実施形態の方が、荷重部により確実にゲート部を閉じておく(ゲート隙間をなくす)ことができる。
【0090】
また、例えば、前記実施形態では、第1基準面(搬送面)より上に積まれたカード束の最下位のカードから取り出しを行う上積み方式のカードディスペンサに適用した場合について説明した。これに限らず、搬送面より下に積まれたカード束の最上位のカードから取り出しを行う下積み方式のカードディスペンサにも適用することができる。
【0091】
また、例えば、前記実施形態では、搬送部として、ローラ部の回転により対象カードを搬送するローラ方式を適用した場合について説明した。これに限らず、対象カードをゲート隙間に押し込むように、対象カードの後ろ端部(搬送方向の上流側の端部)を押して搬送する押し込み方式も適用することができる。