【実施例】
【0012】
以下、本発明を図に示す実施例に基づいて説明する。
図1は本発明による電力送出システムの概略構成を説明する構成説明図である。
図1において、符号1はエネルギー源を示す。ここで、本実施例は、エネルギー源1・・・が3系統ある例を示しているが、エネルギー源1・・・は1系統以上であれば、本システムの構成は可能である(エネルギー源1が1系統のみの場合は、電源の合成を行う必要がないので普通の電源と同等である)。
【0013】
ここで、エネルギー源1は、各種発電装置、特に自然エネルギーを使用した発電装置(太陽光発電、風力発電、水力発電などの発電機)を表したものであるが、これに限定されるものではなく、直流に変換できるのであれば、前述したエネルギー源1・・・以外すべてのエネルギー源1・・・が使用可能である。
従って、商用電源を直流に整流してエネルギー源1として用いてもかまわない。また、バッテリーを
図1におけるエネルギー源1として使うことも可能である。バッテリーを使うことで、深夜電力にて充電し、電力の不足する、あるいは電気料金のあがる日中にバッテリーに蓄えた電力を供給するエネルギーシフトが可能となる。
【0014】
符号2は電力優先取り出し装置であり、該電力優先取り出し装置2は、エネルギー源1・・・から電力を受け取り、コントローラー3からの制御信号4に従って、エネルギー源1・・・から負荷5へ適切な量の電力をコストパフォーマンスよく送り出すための装置である。そして、各エネルギー源1・・・から負荷5へ送出される電力の出力量は、コントローラー3からの制御信号4によって制御されて決定される。その詳細は後述する。
【0015】
ここで、コントローラー3は、制御信号4を生成するための回路であり、また、過電圧になった場合に前記制御信号4を制限する処理をも行うもので、マイクロコンピューター、マイクロコントローラー等や、コンパレータや発振回路などを組み合わせた電子回路などで構成することができる。
制御信号4としては、例えばPWM(pulse
width modulation、パルス幅変調)によるパルスを使用することができ、この場合、パルス幅の比によって出力量を表すことができる。
すなわち、
図2から理解されるように、1周期の時間Tにおいて、制御信号4が「1」となっている時間t
onと、「0」となっている時間t
offの比によって、送り出す電力量を決めることができるのである。
【0016】
なお、電圧検出装置6は、負荷5へ供給される電力の電圧を監視するもの(電圧計)であり、エネルギー源1・・・からの電力の供給が大きく、負荷5が少ない場合、また、後述の、電力優先取り出し装置2のひとつを省略する手法においては、出力電圧が上昇する場合があり、許容される電圧上限を超えないように監視している。
そして、出力電圧が、許容される電圧上限(電源の規格、または負荷の条件などによる)を超えた場合(過電圧検出時)に、制御信号4によって、エネルギー源1から供給される電力を減少させることになる。
【0017】
次に電力優先取り出し装置2の構成につき説明すると、
図3に示す様に、電力優先取り出し装置2は、例えば、PWMによる昇圧型チョッパ制御回路を搭載した装置によって構成することができる。
図3において、Lはインダクタンス(コイル)であり、Dはダイオードを示す。なお、このダイオードDのかわりに整流作用をもつものを使用することもできる。すなわち、逆方向に電流を流さないようにスイッチ(FETやIGBTのように高速に動作する半導体スイッチなどの、外部信号によって制御可能なスイッチ)を制御することで代用してもかまわない。
【0018】
ここで、1パルス中において「1」となっている時間t
onと「0」となっている時間t
offとの比を調整した制御信号4を生成し、該制御信号4に従ってスイッチSWをON/OFFすることで、出力側に送り出すエネルギーを調整するのである。
【0019】
まず、
図4に示す様に、スイッチSWをONにすると、V
onは0Vとなり、入力からの電流はI
onの向きに流れる。
一般に、インダクタンスLに流れる電流Iが変化すると、誘導起電力Eが発生し、これは次式で表される。
…式1
【0020】
スイッチSWがONになったとき、インダクタンスLにかかる電圧はV
inとなり、このときLを流れる電流をI
onとすると、式1より、
…式2
となり、I
onについて変形すると
…式3
両辺を時間tで積分すると
…式4
となる。ただし、I
0はt=0のときのI
onの値である。
【0021】
そして、tとI
onの関係をグラフにすると
図5のようになる。
なお、スイッチSWをONにする時間は十分に短く、この時間内ではインダクタンスLが飽和しないものとする。
【0022】
次に、
図6に示す様に、スイッチSWがOFFになったとする。
このとき、電流は出力方向に流れるが、十分な大きさのコンデンサCが存在し、コンデンサCの電圧がV
outであった場合、電圧はV
outに制限される。
【0023】
出力電圧がV
outなので、インダクタンスLの両端の電圧はV
in - V
outとなる。したがって、式1より、インダクタンスLに流れる電流I
offとの関係は次の微分方程式で表現される。
…式5
【0024】
変形すると、
…式6
となり、両辺を時間tで積分すると
…式7
となる。I
1は積分定数であり、t=0のときの電流I
offの値である。
【0025】
式7で示す「I
off」をグラフにすると
図7のようになる。
Lの性質により、電流値は連続になるので、スイッチSWをOFFにした瞬間の電流値は、スイッチSWをOFFにする直前の電流値に等しい。
【0026】
しかして、以上のことから、スイッチSWをONにして、OFFにするまでのサイクルをグラフにすると、
図8のように構成される。なお、
図8では、最初の電流値I
0から、t
0時間後にスイッチSWがOFFになったものとしており、また、OFFになる瞬間の電流値は式4より
であり、この瞬間を式7のt=0と考えると、この電流値はI
1に等しいので、
…式A
この状態からt
1時間経過したときの電流値をI
2とすると、I
2は、式7より
となる。スイッチSWのON/OFFを繰り返す場合、このI
2が次のサイクルの電流の初期値となる。
【0027】
ここで、1サイクルにおいて電流の変化を見てみると、
…式B
となっている。
【0028】
スイッチSWのON/OFFを繰り返すと、インダクタンスLを流れる電流は
図9のように表される。
この
図9では、時刻0のときの電流値を0としており、時刻t
0の電流値をI
A、時刻t
0+ t
1の電流値をI
Bとすると、
となる。
【0029】
このうち、ダイオードDを通って出力側に流れる電流は
図10のように表すことが出来る。
出力に供給される電力Pは、1周期の平均について考えると、
…式9
となる。電流は、サイクルを繰り返すごとに式Bで示されるだけ変化するので、電力もその量に比例して変化することがわかる。
【0030】
式Bにおいて、
のときは、
図11に示す折れ線のように構成され、電流は毎サイクルで変化しないことがわかる。
また、
のときは、
図12に示す折れ線のように構成され、電流はサイクル毎に減少することがわかる。
なお、この状態が続くと、電流値が負になる計算になるが、Dには逆電流は流れないので、実際には0となり、次のサイクルでは電流0からスタートすることとなる(式4においてI
0=0となる。
図13参照)。
【0031】
以上のことから、V
inおよびV
outが一定であるなら、出力への電流の増減をt
0およびt
1の比によって制御することができる。これはすなわち、t
0およびt
1の比によって出力へ供給される電力の増減を制御できることが理解できるのである。
なお、前述したように、t
0およびt
1は、スイッチSWのONの時間およびOFFの時間を示すものであり、これらスイッチSWのONの時間およびOFFの時間の比の制御は、コントローラー3(マイコン等)からの制御信号4によって制御するものとしてある。
【0032】
ここで、
図14に示す様に、複数の電力優先取り出し装置2・・・の出力を並列に接続することができる。
一般の定電圧電源回路では、電圧によってフィードバックがかかるため、複数の電源の出力を直結すると、複数の電源のフィードバックが衝突し、動作が不安定となってしまう。 しかしながら、本発明では、電圧を制御するわけではないので、複数の電力優先取り出し装置2・・・を接続しても電力制御には影響しない。
【0033】
また、
図14から理解できるように、出力のコンデンサCは共有することができる。コンデンサCの両端の電圧が一定であると仮定すると、それぞれの電力優先取り出し装置2、2は独立して前述のように考えることができ、それぞれのスイッチSW1およびスイッチSW2のON/OFF時間を調整することで、それぞれの入力から任意の電力量を供給することが可能となる。
【0034】
ところで、電力優先取り出し装置2には、電流が逆流しないよう、いわゆる逆流防止ダイオードが設けられているのが常である。例えば
図3や
図14の如くである。しかしながら、前記ダイオードDには、順方向電圧降下があり、大電流を流した場合、それによる損失も大きくなる。例えば、順方向電圧降下が1Vのダイオードに10Aの電流を流すと、10Wの電力が失われることになる。
【0035】
そこで、この順方向電圧による損失を防ぐために、FETなどのように、ON抵抗の低いスイッチング素子を使うことができる。例えば、ON抵抗が10mΩのFETを使った場合、10A流したときに失われる電力はわずか1Wとなる。
【0036】
図3,
図4におけるダイオードDの代わりに、逆流防止できるスイッチ素子を使うことができる。スイッチ素子を使うと、
図3,
図4のダイオードDの回路は
図15のようになる。
図15において、スイッチSWをONにしている間はスイッチSW−DをOFFにし、スイッチSWをOFFにしている間スイッチSW−DをONにすることで、ダイオードと同等の動作をさせることが出来る。そして、ダイオードのような順方向電圧は生じないため、損失を少なくすることが出来る。(スイッチにおける抵抗分およびON/OFFのタイミングによる損失が発生するが、ダイオードによる損失からみればきわめて少ない。)
なお、
図14におけるダイオードD1、D2についても逆流防止出来るスイッチ素子に変更できることは言うまでもない。
【0037】
ここで、スイッチSWとスイッチSW−DのON・OFFのタイミングは、
図16のようになる。
SWをOFFに、SW−DをONにしたとき、電流I
offは下記の式で表されるが、
(ただし、SWをOFFにした時点での電流をI
1とする)
V
in<V
outの場合、I
1が小さくなると、一定時間(
となる時間)後、電流I
off<0とな
り、逆電流が流れてしまうことになる(
図17)。
これを防ぐためには、I=0となる時点(
となる時点)でSW−DをOFFにすればよい(
図18)。
【0038】
次に、本発明による電力送出システムの具体例につき、さらに、具体的数値を挙げ、
図19〜
図20を参照して説明する。
【0039】
インダクタンスLを10mH、入力電圧V
in=80V、出力電圧V
out=100Vとする。
スイッチSWをONにしたとき(
図19)、Lの両端の電圧は、80Vとなる。
このときの電流は、式4より
…式10
となる。
【0040】
時間t=t
0になったときにスイッチSWがOFFになったとする(
図20参照)。
このときの電流は、式7より
…式11
となる。
【0041】
そして、100μ秒毎にスイッチSWでON/OFFを切り替えたとすると、インダクタンスLを流れる電流は、
図21で表される。
このとき、負荷に供給される電力は、
図22で表される。
【0042】
この例では、サイクル毎に電流が増大するのがわかる。すなわち、負荷側(出力側)に送出する電力が増大することが理解できる。
すなわち、出力に供給される電力は、1サイクル(200us毎に)0.6A×100V=60W増加することが理解できるのである。
【0043】
なお、負荷電圧が変化しない場合、上記の状態、すなわち
図20のスイッチSWのON/OFF時間の比率の状態では出力に供給される電力は上昇し続けることになる。
従って、上記上昇をストップさせ、一定の電力供給状態としたい場合には、スイッチSWのON/OFF時間を調整することになる。例えば、スイッチSWのON/OFF時間を調整し、OFFの時間を長くするとの調整を行うのである。当該調整を行うことにより、上記上昇をストップさせ、一定の電力供給状態とすることが出来る。
【0044】
具体的には、スイッチSWを、20μ秒だけONに、180μ秒だけOFFにした場合は、
図23に示す様になり、出力に供給される電流は、
図24に示されるように変化する。
このとき、出力電流はサイクル毎に変化せず、一定の電力を出力する。また、ON時間の比をさらに小さくすると、出力電流がサイクル毎に減少するように制御出来る。
【0045】
前記の実施例では、いわゆる昇圧型のチョッパ制御回路(ブーストコンバータ)を使用した具体例を示したが、いわゆる降圧型のチョッパ制御回路(バックコンバータ)、フライバック方式のチョッパ制御回路でも同様に電力優先取り出しが出来る様に電力制御を行うことが可能である。
【0046】
当該実施例につき
図25を参照して説明する。
図25に、降圧チョッパ制御回路(バックコンバータ)を使用した例を示す。
ここで、
図25において、コンデンサC1とコンデンサC2は共有してひとつのコンデンサを使用してもかまわない(
図26)。また、出力回路によっては省略してもかまわない。
【0047】
降圧型のチョッパ制御回路(バックコンバータ)により、電力優先取り出しが出来る様に電力制御した例を
図25に示すと、SW1およびSW2は、外部信号で高速にスイッチできるスイッチ装置であり、FETやトランジスタ、IGBTなどを使うことができる。このスイッチ装置SW1およびSW2のON/OFFの切り替え速度およびON/OFFの時間の比率により、出力(負荷5)に供給される電力を制御することができる。
【0048】
まず、上側の回路(SW1〜D1〜L1〜C1側)について説明する。
入力電圧がV
inであり、出力電圧がV
outになっていたとすると、SW1をONにしたとき、L1にかかる電圧は、V
in-V
outとなる。
【0049】
式1より、このときの電流I
onとの関係は、
…式20
となり、I
onについて変形すると
…式21
両辺を時間tで積分すると
…式22
となる。I
0は積分定数であり、t=0のときの電流I
onの値である。
【0050】
次に、t
0時間経過後にSWがOFFになったとする。
このときL1にかかる電圧は0-V
outであり、同様にして、SW1をOFFにしたときの電流I
offについて求めると、
…式23
となる。なお、I
1は積分定数であり、t=0のときの電流I
offの値である。
これをグラフにすると、
図27のようになる。
【0051】
以上のことから、SW1をONにして、OFFにするまでのサイクルをグラフにすると、
図28のようになる。
SW1のON/OFFを繰り返すと、このサイクルが繰り返され、Lを流れる電流は
図29のようになる。(SWがONの時間をt
0、SWがOFFの時間をt
1とする)。
この電流が出力に供給されることになる。
【0052】
1周期について出力に供給される電力の平均Pは次のようになる。
…式24
なお、
…式25
…式26
である。
【0053】
ここで、I
0= I
2のとき、出力電流平均は各サイクルにおいて変化せず、I
0<I
2のときは出力電流はサイクル毎に増加し、I
0>I
2のときは出力電流はサイクル毎に減少することになる。
【0054】
I
0= I
2のとき
…式27
整理すると、
…式28
となる(
図30参照)。
【0055】
I
0<I
2のときは
変形して
したがって
…式31
グラフにすると
図31のようになり、出力電流が増加していくのがわかる。
【0056】
同様にして、I
0>I
2のとき
…式32
グラフにすると
図32のようになり、出力電流が減少していくのがわかる。
【0057】
式28、式31、式32から、あるV
inおよびV
outがあたえられたとき、t
0とt
1の比によって、出力に流れる電流の増減を決定できることがわかる。
ただし、V
in>V
outのとき、式32を満たす、すなわち出力電流がサイクル毎に減少する状態においても、電流がマイナスになることはない。あるサイクルで電流が0に達すると、それ以降のサイクルのスタートの電流値は0からとなる。この場合のグラフは
図33のようになる。
【0058】
降圧型のチョッパ制御回路による電力優先取り出し装置においても、昇圧型のチョッパ制御回路による場合と同様に、逆流防止用のダイオードを省略することができる(
図34)。
ただし、入力は、自然エネルギー(太陽光パネルや発電機など)であり、発電量が少ないときには、出力電圧を下回る場合がある。すなわち、V
in<V
outとなる場合もありえる。例えば、
図34においてV
in<V
outとなった場合は、SW1をONにしないようにすることで、逆流を防ぐことができる。
【0059】
ただし、SW1およびSW2に、FETのようなスイッチ素子を使う場合は、寄生ダイオードにより逆方向に電流が流れてしまう。そのため、この場合には逆流防止用のダイオードあるいはスイッチング回路を入れる(
図35のD3,D4)。なお、このダイオード(あるいはスイッチング回路)の位置は、SW1〜L1〜出力のライン内(あるいはSW2〜L2〜出力のライン内)であればどこに取り付けてもかまわない。方向を逆にすれば、下側に取り付けてもかまわない。
【0060】
ここまでは、2系統の合成を示しているが、3系統以上の合成についても同様に行うことができる。
【0061】
なお、前述したように、昇圧型のチョッパ制御回路(ブーストコンバータ)による電力優先取り出し装置2は、発電側の電圧が負荷側の電圧よりも低い場合に使用することができ(
図36(A))、降圧型のチョッパ制御回路(バックコンバータ)による電力優先取り出し装置2は、発電側の電圧が負荷側の電圧よりも高い場合に使用することができるものである(
図36(B))。
【0062】
例えば、エネルギー源1(発電機)の出力が、電圧は低いが大きな電流が流せるようなものであった場合は、昇圧型のチョッパ制御回路による電力優先取り出し装置2が適しており、逆に、エネルギー源1(発電機)の出力が主に高い電圧で電力を供給するような場合には、降圧型のチョッパ制御回路による電力優先取り出し装置2が適していると言える。
【0063】
そして、自然エネルギーは発電の変動が大きいため、負荷側の電圧よりも高いのか低いのか一概に決められない場合もありうるが、このような場合には、昇圧型のチョッパ制御回路の電力優先取り出し装置2と降圧型のチョッパ制御回路による電力優先取り出し装置2とを組み合わせて使用することも可能である(構成例を
図36(C)に示す)。
【0064】
次に、
図37にフライバック方式のチョッパ制御回路を使用した例を示す。これも
図25、
図26と同様に、コンデンサC1とコンデンサC2は共有してひとつのコンデンサC1として使用してもかまわない。また、出力回路によっては省略してもかまわない。
【0065】
フライバック方式のチョッパ制御回路による電力優先取り出し装置2の場合においても、動作は昇圧型のチョッパ制御回路と同様である。
SW1をONにすると、式1のように(ただし、LのかわりにT1に)電流が流れ、誘導起電力が発生する。昇圧型のチョッパ制御回路の場合は、Lから直接電流を取り出していたが、フライバック方式のチョッパ制御回路の場合は、T1の二次側から電流を取り出していることのみ異なっている。
【0066】
なお、ダイオードD1およびダイオードD2は、逆流防止ダイオードであるが、かわりにスイッチング素子(FETのような半導体スイッチなど、外部信号で高速にON/OFF制御できるもの)を使うこともできる。
また、当該フライバック方式のチョッパ制御回路による電力優先取り出し装置2については、負荷側の電圧が発電側の電圧よりも高い場合にも低い場合にも使うことができる。
【0067】
前述の実施例では、インダクタLを使用した電力優先取り出し装置2について説明したが、同様の動作は、キャパシタ30を使って実現することも可能であり、当該例につき
図38を示して説明する。
【0068】
この構成では、効率の面ではインダクタLを使用した回路に劣るものの、インダクタを使用しないので、インダクタLのスイッチングにより発生する種類のノイズが発生しないなどの利点がある。
【0069】
すなわち、ノイズに弱い機器などに電力を送出する場合、本実施例によるキャパシタ30を使用した電力優先取り出し装置2によれば、前記ノイズに弱い機器へのノイズの影響を軽減することが出来、動作を安定させることが出来るのである。
【0070】
ここで、キャパシタ(符号30)の容量をC(F)とし、電源の電圧はVin、電力系統の電圧はVoutとする。
スイッチをA側に入れると、キャパシタ(符号30)はV
inの電圧に充電され、C×V
in(クーロン)だけの電荷が蓄えられる。スイッチをB側に入れると、出力側の電圧はV
outなので、電位差(V
out-V
in)分の電荷、すなわち、C×(V
out-V
in)(クーロン)だけの電荷が、電力系統に供給されることになる。
【0071】
この場合、スイッチをA側・B側に切り替える回数、および入力と出力の電位差によって、電力系統に供給される電力が決定される。
したがって、このスイッチのON/OFFを切り替えるための信号の周波数によって、電力の供給量を制御できるのである。
【0072】
なお、この回路では、V
in>V
outでなければならないが、
図39のような回路を使えば、2 V
in
> V
outの条件の範囲において、電力を供給できるようになる。
同様に、
図40のように構成することで、4V
in
> V
outの条件の範囲において電力を供給できるようになる。
【0073】
ところで、本発明による電力優先取り出し装置2を使用すると、太陽光発電などで発電された自然エネルギーによる電力を無駄なく、かつ余すことなく使用できることは既に述べたとおりである。
そして、そのエネルギーを利用する負荷側の電力が前記自然エネルギーによる電力だけでは不足してしまう場合には、その不足分についてだけ、例えば商用電源側の整流された直流電源を利用すればよい。
図41に例を示す。簡略化のため、商用電源を整流した直流電源と、太陽光発電(50W)の電力源の構成とする。
【0074】
ここで、太陽光発電から供給される電流をI
1、商用電源からの電流をI
AC、負荷に流れる電流をI
RLとすると、下記の式が成立する。
電力に置き換えると、下記のようになる。
ただし、太陽光発電から供給される電力をP
1、商用電源から供給される電力をP
AC、負荷へ供給される電力をP
RLとする。
【0075】
負荷が100Wで、夜間など太陽光発電による発電がない場合は、負荷への電力は、すべて商用電源から供給されることになる。
一方、太陽光発電から50Wの電力が供給される場合、
であり、P
ACは50Wとなる。
【0076】
このように、太陽光発電から供給された分を負荷電力から引いた分(不足分)のみが商用電源から供給されるのである。実際に行った実験からも同様の結果が得られた。
【0077】
次に、本発明の電力優先取り出し装置2を装備した太陽光発電機であるエネルギー源1から、天候により変化する前記自然エネルギーからの発電電力を、その時点における最大電力を取り出すべく開発した電力送出システムにつき説明する。
【0078】
太陽光発電は、天候の変化と負荷変動によって出力電圧が大きく変化する。
太陽電池は、無負荷のときに最大電圧(V
pvとする)となり、負荷がかかると電圧が低下する。
無負荷の時には電流は0であり、このとき電力は、V
pv×0=0なので、0である。また、太陽電池の出力を短絡すると、電流は最大となるが、電圧は0Vとなる。したがって、このときも取り出せる電力は0である。
【0079】
電圧0〜V
pvの間に、取り出せる電力が最大となる電圧があり(この電圧をV
pとする)、この太陽光発電から取り出せる電力と電圧の関係は
図42のように表すことができる。
曇天時など、日照量が少ない場合には、晴天時と比べて発電電力が減少するが、晴天時と 同様に、0〜V
pvの間に、取り出せる電力が最大となる電圧がある(
図42の下の曲線)。
【0080】
太陽光発電で最大の効率で電力を取り出すためには、一般的に、太陽光発電の出力を電力計で測定し、これが最大になるように負荷を調整する方法(たとえば山登り法など)が用いられる。
図41に示す構成例で説明すると、電力優先取り出し装置2の制御信号4によって太陽光発電の電力を変更できるので、制御信号4を調整して最大出力が得られるようにすることができる。
【0081】
一般に、電力を測定するためには、電圧と電流を測定する必要がある(
図43)。このときの電流と電圧の積が電力となる。
しかし、
図41のように、電力優先取り出し装置2を使ったシステムでは、出力電流I
1を見ることで、電力測定の代用とすることが可能であり、ソーラーパネルの電流と電圧を測定して積を計算する手間が不要となる(
図41では電流計の測定値のみをコントローラー3で測定している)。
【0082】
なぜなら、電力優先取り出し装置の出力における電圧は商用電源側の電圧(この例では141V)で決定されるため(商用電源には十分な容量があるとすると、負荷が増加しても電圧は下がらない)、電力Pは式Aに示すように、電流値I
1に比例した値となるからである(
図44)。
…式A
【0083】
従って、前記出力電流I
1を検出し、該出力電流I
1が最大値となっているときに、電力優先取り出し装置2の制御信号4を調整して太陽光発電機の電力最大出力が得られるようにするのである。