特許第5709281号(P5709281)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5709281
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】気体軸受スピンドル
(51)【国際特許分類】
   F16C 32/06 20060101AFI20150409BHJP
【FI】
   F16C32/06 Z
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-71416(P2013-71416)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-194264(P2014-194264A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2013年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】399055432
【氏名又は名称】ABB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100113354
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 総
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】原 正雄
(72)【発明者】
【氏名】松本 知博
(72)【発明者】
【氏名】太田 昇
【審査官】 堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−113439(JP,A)
【文献】 特開2010−138967(JP,A)
【文献】 特開2007−170534(JP,A)
【文献】 特開2000−027969(JP,A)
【文献】 特開平09−072338(JP,A)
【文献】 特開平07−317768(JP,A)
【文献】 実開平05−058948(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 32/00−32/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸の一端側に固定された羽根車と、
前記回転軸を支持する第一ラジアル軸受と、
前記回転軸を支持し、前記第一ラジアル軸受とは前記回転軸の長手方向の位置が異なる第二ラジアル軸受と、
前記第一ラジアル軸受および前記第二ラジアル軸受を保持するハウジングと、
を備え、
前記ハウジングには、
前記第一ラジアル軸受および前記第二ラジアル軸受と前記回転軸との間の気体を、前記第一ラジアル軸受および前記第二ラジアル軸受の間から排気するラジアル軸受間排気路が設けられており、
前記羽根車が有する羽根にあてた気体を排出する駆動気体用排気路に、前記ラジアル軸受間排気路が、前記ハウジングにおいて直接に接続されている、
気体軸受スピンドル。
【請求項2】
請求項1に記載の気体軸受スピンドルであって、
前記駆動気体用排気路が、
前記羽根車からの排気を直接受ける羽根車排気路と、
前記羽根車排気路からの排気を前記ハウジングの外部に導く排気導出路と、
を有し、
前記ラジアル軸受間排気路が、前記羽根車排気路に直接に接続されている、
気体軸受スピンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体軸受スピンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、羽根車に空気を吹き付けて回転させる気体軸受スピンドルが知られている。羽根車は回転軸の端部に固定されており、羽根車の回転に伴って回転軸も回転する(例えば、特許文献1、2を参照)。
【0003】
回転軸は、気体軸受であるラジアル軸受により支持されている。このラジアル軸受と回転軸との間のすき間には気体が供給されている。供給された気体は、回転軸の先端の方に向かい、気体軸受スピンドルから排気される。なお、回転軸の先端には、工具(例えば、回転霧化頭など)が取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−170534号公報
【特許文献2】特開2007−57069号公報
【特許文献3】特開平10−115320号公報
【特許文献4】特開2002−295470号公報
【特許文献5】特開2006−300024号公報
【特許文献6】特開2003−301841号公報
【特許文献7】特開2002−39181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、回転軸の先端からの排気は、回転軸の先端に取り付けられた工具の性能の発揮を妨げることがある。例えば、工具が回転霧化頭である場合、塗料の微粒化が不十分になり、ひいては塗装不良となるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、気体軸受であるラジアル軸受と回転軸との間のすき間に供給された気体の、回転軸の先端への排気を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる気体軸受スピンドルは、回転軸と、前記回転軸を支持する第一ラジアル軸受と、前記回転軸を支持し、前記第一ラジアル軸受とは前記回転軸の長手方向の位置が異なる第二ラジアル軸受と、前記第一ラジアル軸受および前記第二ラジアル軸受を保持するハウジングと、を備え、前記ハウジングには、前記第一ラジアル軸受および前記第二ラジアル軸受と前記回転軸との間の気体を、前記第一ラジアル軸受および前記第二ラジアル軸受の間から排気するラジアル軸受間排気路が設けられているように構成される。
【0008】
上記のように構成された気体軸受スピンドルによれば、回転軸が有る。第一ラジアル軸受が、前記回転軸を支持する。第二ラジアル軸受が、前記回転軸を支持し、前記第一ラジアル軸受とは前記回転軸の長手方向の位置が異なる。ハウジングが、前記第一ラジアル軸受および前記第二ラジアル軸受を保持する。前記ハウジングには、前記第一ラジアル軸受および前記第二ラジアル軸受と前記回転軸との間の気体を、前記第一ラジアル軸受および前記第二ラジアル軸受の間から排気するラジアル軸受間排気路が設けられている。
【0009】
なお、本発明にかかる気体軸受スピンドルは、前記回転軸の一端側に固定された羽根車を備え、前記羽根車が有する羽根にあてた気体を排出する駆動気体用排気路に、前記ラジアル軸受間排気路が接続されているようにしてもよい。
【0010】
なお、本発明にかかる気体軸受スピンドルは、前記駆動気体用排気路が、前記羽根車からの排気を直接受ける羽根車排気路と、前記羽根車排気路からの排気を前記ハウジングの外部に導く排気導出路とを有し、前記ラジアル軸受間排気路が、前記羽根車排気路に接続されているようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態にかかる気体軸受スピンドル1の正面断面図である。
図2】本発明の実施形態にかかる気体軸受スピンドル1の駆動用の給排気および軸受用の給排気の流れを示す図である。
図3図1のIII−III断面図である。
図4】本発明の実施形態の変形例にかかる気体軸受スピンドル1の正面断面図である。
図5】本発明の実施形態の変形例にかかる気体軸受スピンドル1の駆動用の給排気および軸受用の給排気の流れを示す図である。
図6図4のVI−VI断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態にかかる気体軸受スピンドル1の正面断面図である。図2は、本発明の実施形態にかかる気体軸受スピンドル1の駆動用の給排気および軸受用の給排気の流れを示す図である。図3は、図1のIII−III断面図である。
【0014】
気体軸受スピンドル1は、回転体10、ハウンジング20、第一ラジアル軸受30、第二ラジアル/スラスト軸受40、スラスト軸受50、羽根車カバー60を備える。気体軸受スピンドル1は、例えば、静電塗装装置に用いられる。ただし、この用途は単なる一例であり、気体軸受スピンドル1の用途を静電塗装装置に限定するものではない。以後、気体軸受スピンドル1を静電塗装装置に用いた例について説明する。
【0015】
回転体10は、回転軸11、羽根車12、空洞14、工具取付部16を有する。
【0016】
回転軸11は、その内部に空洞14を有し、回転軸11の長手方向に延伸する直線A−Aを回転中心として回転する回転軸である。
【0017】
羽根車12は、回転軸11の一端側(図1においては左端側)に固定された羽根車である。羽根車12は、羽根12a、対向面12bを有する。羽根12aには、図示省略したエアコンプレッサから駆動用給気路62を介して流入した気体があたる(図2参照)。羽根12aに気体があたることにより、羽根車12が回転する。対向面12bは、羽根車12の面であり、第二ラジアル/スラスト軸受40と向かい合う面である。なお、気体は、例えば空気である。
【0018】
空洞14は、回転軸11の内部に設けられた、回転軸11を貫通する空洞である。電極(図示省略)により帯電された静電塗装用の塗料が、空洞14の内部を経由して、回転軸11の後方(図1においては左端側)から先端(図1においては右端側)に至る。
【0019】
工具取付部16は、図示省略した工具(例えば、塗料を霧状にするための回転霧化頭)を回転軸11に取り付けるための部分である。なお、工具が、回転軸11の他端側(図1においては右端側)に固定された被回転体、すなわち回転軸11の回転にともなって回転する物体である。
【0020】
ハウンジング20は、第一ラジアル軸受30および第二ラジアル/スラスト軸受40を保持する。ハウンジング20は、外周側給気路21、第一ラジアル軸受用給気路21a、遠方給気路21b、羽根車排気路22、ラジアル軸受間排気路23、排気導出路24を有する。
【0021】
なお、外周側給気路21、遠方給気路21b、ラジアル軸受内給気路(延伸給気路)42aおよび環状給気路28が、対向面12bに向かって気体を供給する対向面給気路を構成する。なお、気体は、例えば空気である。
【0022】
外周側給気路21は、ハウジング20において、羽根車排気路22よりも外周側に設けられている。外周側給気路21は、回転軸11の長手方向(A−A方向)と平行に設けられている。
【0023】
第一ラジアル軸受用給気路21aは、第一ラジアル軸受30に気体を供給する給気路であり、遠方給気路21bから分岐している。
【0024】
遠方給気路21bは、外周側給気路21および第二ラジアル/スラスト軸受40に接続する給気路である。遠方給気路21bは、ハウジング20に設けられ、羽根車12から見て羽根車排気路22よりも遠方に設けられている。
【0025】
羽根車排気路22は、羽根車12が有する羽根12aにあたって、羽根車12から排出された排気を直接受ける排気路である。羽根車12が有する羽根12aには、上述のように、気体があたるが、この気体が羽根車12から排出されたものを排気という。
【0026】
なお、羽根車排気路22および排気導出路24が、羽根車12が有する羽根12aにあてた気体を排出する駆動気体用排気路を構成する。
【0027】
ラジアル軸受間排気路23は、駆動気体用排気路に接続されている排気路である。ラジアル軸受間排気路23は、第一ラジアル軸受30および第二ラジアル/スラスト軸受40と回転軸11との間の気体(すなわち、第一ラジアル軸受30および回転軸11の間の気体と、第二ラジアル/スラスト軸受40および回転軸11の間の気体)を、第一ラジアル軸受30および第二ラジアル/スラスト軸受40の間から排気する。ラジアル軸受間排気路23は、羽根車排気路22に接続されている。
【0028】
排気導出路24は、羽根車排気路22からの排気をハウジング20の外部に導く排気路である。
【0029】
環状給気路28は、ハウジング20に設けられている。
【0030】
第一ラジアル軸受30は、内筒31、外筒32、前方リング(弾性部材)34a、後方リング(弾性部材)34b、リング(弾性部材)34c、前方絞り38a、後方絞り38bを有する。第一ラジアル軸受30は、回転軸11を支持する。
【0031】
内筒31は、例えば焼結材(黒鉛など)からなり、回転軸11を包囲する筒状部材である。なお、回転軸11は、内筒31の内部において、回転することができる。
【0032】
外筒32は、例えば金属からなり、内筒31を包囲する筒状部材である。内筒31が、外筒32に焼きばめなどにより固定されている。
【0033】
第一ラジアル軸受30は、前方リング34a、後方リング34bおよびリング34cを介して、ハウジング20により保持されている。前方リング34a、後方リング34bおよびリング34cは、外筒32とハウンジグ20との間に配置されている。なお、前方リング34a、後方リング34bおよびリング34cは、弾性部材かつ環状部材である。
【0034】
前方リング34aは、第一ラジアル軸受30の前方(図1においては右側)に配置され、外筒32を包囲している。後方リング34bは、第一ラジアル軸受30の後方(図1においては左側)に配置され、外筒32を包囲している。リング34cは、第一ラジアル軸受30の前方端面に接している。
【0035】
前方絞り38aは、第一ラジアル軸受30の前方(図1においては右側)に設けられ、第一ラジアル軸受用給気路21aから供給された気体を、内筒31と回転軸11との間に導入する。
【0036】
後方絞り38bは、第一ラジアル軸受30の後方(図1においては左側)に設けられ、第一ラジアル軸受用給気路21aから供給された気体を、内筒31と回転軸11との間に導入する。
【0037】
前方絞り38aおよび後方絞り38bによって内筒31と回転軸11との間に導入された気体により、内筒31と回転軸11との間に気体潤滑が実現する。
【0038】
第二ラジアル/スラスト軸受40は、筒状部41、ラジアル軸受内給気路42a、前方絞り44a、後方絞り44b、羽根車側絞り44c、対向面排気路46を有する。第二ラジアル/スラスト軸受40は、回転軸11を支持する。第二ラジアル/スラスト軸受40は、第一ラジアル軸受30とは回転軸11の長手方向(A−A方向)の位置が異なる。
【0039】
本実施形態においては、回転軸11の羽根車12から遠い側(図1においては右側)に、第一ラジアル軸受30が配置され、回転軸11の羽根車12から近い側(図1においては左側)に、第二ラジアル/スラスト軸受40が配置されている。すなわち、第一ラジアル軸受30は、第二ラジアル/スラスト軸受40よりも、羽根車12から遠い側に配置されている。
【0040】
第二ラジアル/スラスト軸受40は、羽根車12から見て、羽根車排気路22よりも遠方に延在している。例えば、本実施形態においては、第二ラジアル/スラスト軸受40は、羽根車排気路22よりも、羽根車12から見て、Xだけ突き出ている(遠方に延在している)。
【0041】
筒状部41は、回転軸11を包囲する筒状部材である。なお、回転軸11は、筒状部41の内部において、回転することができる。筒状部41は、ハウジング20により包囲されている。第二ラジアル/スラスト軸受40は、ハウジング20に固定されている。例えば、第二ラジアル/スラスト軸受40の筒状部41をハウジング20に焼ばめすることで、第二ラジアル/スラスト軸受40をハウジング20に固定することができる。
【0042】
ただし、焼ばめに限らず、例えば、第二ラジアル/スラスト軸受40の筒状部41をハウジング20に圧入または接着しても、第二ラジアル/スラスト軸受40をハウジング20に固定することができる。
【0043】
なお、回転軸11の長手方向(A−A方向)における、第二ラジアル/スラスト軸受40(の筒状部41)の長さX1(ただし、ラジアル軸受として機能しないほど回転軸11から離れている部分を除く)と、第一ラジアル軸受30(の内筒31)の長さとの比は、例えば、50:50とすることが好ましい。
【0044】
回転軸11の長手方向(A−A方向)における、第二ラジアル/スラスト軸受40の長さに対する第一ラジアル軸受30の長さの比(すなわち、回転軸11の長手方向(A−A方向)における、(第一ラジアル軸受30の長さ)/(第二ラジアル/スラスト軸受40の長さ))を大きくした場合(例えば、70/30)、回転体10の1次共振速度が低下する。このため、1次共振速度の約2倍の回転速度で生じる自励振動(ホワール現象)が、気体軸受スピンドル1を使用する際の回転軸11の回転速度(例えば、90krpm以下)において発生してしまうおそれがある。
【0045】
そこで、気体軸受スピンドル1を使用する際(例えば、回転霧化頭により塗料を霧状にする際)の回転軸11の回転速度においてホワール現象が発生しない程度に、回転軸11の長手方向(A−A方向)における、第二ラジアル/スラスト軸受40の長さに対する第一ラジアル軸受30の長さの比を、小さくすることが好ましい(例えば、上記のように、50/50とする)。
【0046】
ラジアル軸受内給気路(延伸給気路)42aは、第二ラジアル/スラスト軸受40の内部に設けられた給気路である。ラジアル軸受内給気路42aは、(環状給気路28を介して)遠方給気路21bと、対向面12bに向かい合う羽根車側絞り44cとに接続している。
【0047】
ラジアル軸受内給気路は、延伸給気路42aを有する。延伸給気路42aは、遠方給気路21bに(環状給気路28を介して)接続し、第二ラジアル/スラスト軸受40内を回転軸11の長手方向(A−A方向)に延伸している(図1参照)。環状給気路28は、延伸給気路42aおよび遠方給気路21bに接続し、回転軸11を取り巻いている(図3参照)。なお、図3において、延伸給気路42aは、環状給気路28よりも回転軸11に近い部分に配置されていることになる(図示省略)。
【0048】
前方絞り44aは、第二ラジアル/スラスト軸受40の前方(図1においては右側)に設けられ、ラジアル軸受内給気路42aおよび環状給気路28から供給された気体を、筒状部41と回転軸11との間に導入する。
【0049】
後方絞り44bは、第二ラジアル/スラスト軸受40の後方(図1においては左側)に設けられ、ラジアル軸受内給気路42aおよび環状給気路28から供給された気体を、筒状部41と回転軸11との間に導入する。
【0050】
前方絞り44aおよび後方絞り44bにより、筒状部41と回転軸11との間に導入された気体により、筒状部41と回転軸11との間に気体潤滑が実現する。これにより、第二ラジアル/スラスト軸受40は、回転軸11を支える軸受として機能する。
【0051】
羽根車側絞り44cは、対向面12bと向かい合う第二ラジアル/スラスト軸受40の面に開口し、ラジアル軸受内給気路42aおよび環状給気路28から供給された気体を、対向面12bと第二ラジアル/スラスト軸受40との間に導入する。
【0052】
羽根車側絞り44cによって筒状部41と対向面12bとの間に導入された気体により、筒状部41と対向面12bとの間に気体潤滑が実現する。これにより、第二ラジアル/スラスト軸受40は、羽根車12の回転軸方向(A−A方向)の力を受ける軸受としても機能する。
【0053】
対向面排気路46は、筒状部41に設けられ、対向面12bと第二ラジアル/スラスト軸受40との間の気体を、羽根車排気路22に排気する排気路である。
【0054】
スラスト軸受50は、羽根車12の後方(図1においては左側)に配置され、羽根車12の回転軸方向(A−A方向)の力を受ける軸受である。スラスト軸受50は、絞り54a、54bを有する。
【0055】
絞り54a、54bは、スラスト軸受50と羽根車12との間に気体を導入する。絞り54a、54bによってスラスト軸受50と羽根車12との間に導入された気体により、スラスト軸受50と羽根車12との間に気体潤滑が実現する。
【0056】
羽根車カバー60は、軸受用給気路61、ラジアル軸受に向かう給気路61a、スラスト軸受に向かう給気路61b、駆動用給気路62、駆動用排気路64を有する。
【0057】
軸受用給気路61は、図示省略したエアコンプレッサから気体を受け、第一ラジアル軸受30、第二ラジアル/スラスト軸受40およびスラスト軸受50に向けて、気体を供給する給気路である。軸受用給気路61は、回転軸11の長手方向(A−A方向)と平行に設けられている。軸受用給気路61は、ラジアル軸受に向かう給気路61aとスラスト軸受に向かう給気路61bとに分岐する。なお、気体は、例えば空気である。
【0058】
ラジアル軸受に向かう給気路61aは、外周側給気路21に接続し、外周側給気路21に気体を供給する給気路である。
【0059】
スラスト軸受に向かう給気路61bは、絞り54aおよび絞り54bに接続し、スラスト軸受50と羽根車12との間に気体を供給する給気路である。
【0060】
駆動用給気路62は、図示省略したエアコンプレッサから気体を受け、羽根車12の羽根12aに導く給気路である。
【0061】
駆動用排気路64は、排気導出路24からの排気を受け、外部に排出する排気路である。
【0062】
次に、本発明の実施形態の動作を説明する。
【0063】
まず、気体が、図示省略したエアコンプレッサから、駆動用給気路62に与えられる。気体は、駆動用給気路62により、羽根車12の羽根12aにあたる。羽根12aに気体があたることにより、羽根車12が回転する。羽根車12の回転にともない、回転軸11が回転する。回転軸11の回転にともない、回転軸11の工具取付部16に取り付けられた工具(例えば、回転霧化頭)が回転する。
【0064】
一方、静電塗装用の塗料が、空洞14の内部を経由して、回転軸11の後方(図1においては左端側)から先端(図1においては右端側)に至る。
【0065】
これにより、回転軸11の先端に至った塗料が、回転霧化頭により微粒化し霧状となる。
【0066】
なお、羽根車12が有する羽根12aにあたった気体は、羽根車12から排出され、排気となる。この排気は、羽根車排気路22に導かれる。羽根車排気路22からの排気は、排気導出路24により、ハウジング20の外部(ここでは、駆動用排気路64)に導かれる。駆動用排気路64は、排気導出路24からの排気を受け、外部に排出する。
【0067】
また、気体が、図示省略したエアコンプレッサから、軸受用給気路61に与えられる。軸受用給気路61に与えられた気体は、ラジアル軸受に向かう給気路61aおよびスラスト軸受に向かう給気路61bに分岐する。
【0068】
気体は、スラスト軸受に向かう給気路61bを経由して、絞り54aおよび絞り54bから、スラスト軸受50と羽根車12との間に導入される。この気体により、スラスト軸受50と羽根車12との間に気体潤滑が実現し、しかもスラスト軸受50が、羽根車12の回転軸方向(A−A方向)の力を受ける軸受として機能する。
【0069】
気体は、ラジアル軸受に向かう給気路61aを経由して、さらに、外周側給気路21に与えられる。外周側給気路21に与えられた気体は、第一ラジアル軸受用給気路21aおよび遠方給気路21bに分岐する。
【0070】
第一ラジアル軸受用給気路21aに与えられた気体は、絞り38a、38bから、内筒31と回転軸11との間に導入される。この気体により、内筒31と回転軸11との間に気体潤滑が実現し、しかも第一ラジアル軸受30が、回転軸11を支持する軸受として機能する。
【0071】
さらに、第一ラジアル軸受30は、いずれも弾性部材である前方リング34a、後方リング34bおよびリング34cを介して、ハウジング20により保持されている。このような弾性部材による支持により、回転軸11が振れ回りを生じた場合にも、それに応じて内筒31の姿勢(A−A方向に対する傾き)が変化する。これにより、第一ラジアル軸受30と回転軸11との接触による焼き付きを回避し得る。
【0072】
一方、遠方給気路21bに与えられた気体は、ラジアル軸受内給気路42aを経由して、前方絞り44aおよび後方絞り44bから、筒状部41と回転軸11との間に導入される。この気体により、筒状部41と回転軸11との間に気体潤滑が実現し、しかも第二ラジアル/スラスト軸受40が、回転軸11を支持する軸受として機能する。
【0073】
また、遠方給気路21bに与えられた気体は、ラジアル軸受内給気路42aおよび環状給気路28を経由して、羽根車側絞り44cから、対向面12bと第二ラジアル/スラスト軸受40との間に導入される。この気体により、対向面12bと第二ラジアル/スラスト軸受40との間に気体潤滑が実現し、しかも第二ラジアル/スラスト軸受40が、羽根車12の回転軸方向(A−A方向)の力を受ける軸受としても機能する。
【0074】
さらに、第二ラジアル/スラスト軸受40は、ハウジング20に焼ばめ等により固定されている。これにより、第二ラジアル/スラスト軸受40の支持剛性が大きくなる。
【0075】
対向面12bと第二ラジアル/スラスト軸受40との間の気体は、筒状部41に設けられた対向面排気路46により、羽根車排気路22へと排気される(羽根車排気路22へ直接排気される気体もある)。
【0076】
第一ラジアル軸受30(の内筒31)および回転軸11の間の気体と、第二ラジアル/スラスト軸受40(の筒状部41)および回転軸11の間の気体とは、第一ラジアル軸受30および第二ラジアル/スラスト軸受40の間から、ラジアル軸受間排気路23を経由して、羽根車排気路22へと排気される。
【0077】
本発明の実施形態によれば、遠方給気路21bが羽根車12から見て羽根車排気路22よりも遠方に設けられている。このため、羽根車排気路22のスペースを削減することなく、遠方給気路21b(ひいては対向面給気路)のスペースを確保することができる。図3を参照して、羽根車排気路22は分断されていない連続した環状であり、羽根車排気路22のスペースは充分に確保できている。
【0078】
しかも、環状給気路28(図3参照)をハウンジング20に設けたことで、環状給気路28に接続するラジアル軸受内給気路(延伸給気路)42aおよび羽根車側絞り44cを多数設けることができる(例えば、図3を参照して、8個)。羽根車側絞り44cを多数設けても、特に羽根車排気路22のスペースを削減する必要は無い。よって、羽根車側絞り44cを多数設けることで、羽根車12の回転軸11方向(A−A方向)の力を受ける軸受(第二ラジアル/スラスト軸受40)の支持剛性を充分に大きくすることができる。
【0079】
さらに、対向面12bと第二ラジアル/スラスト軸受40との間の気体を、筒状部41に対向面排気路46を設けることにより、羽根車排気路22に排気できる。
【0080】
しかも、回転軸11を支持する軸受が、第二ラジアル/スラスト軸受40と第一ラジアル軸受30との二つある場合に、第二ラジアル/スラスト軸受40が、羽根車排気路22よりも、羽根車12から見て、Xだけ突き出ている(遠方に延在している)。このため、遠方給気路21bを羽根車12から見て羽根車排気路22よりも遠方に設けるためには、第二ラジアル/スラスト軸受40のXだけ突き出した部分から、単に回転軸11の長手方向(A−A方向)に垂直な方向に遠方給気路21bを設ければよいので、遠方給気路21bを容易に設けることができる。
【0081】
また、本発明の実施形態によれば、弾性部材(前方リング34a、後方リング34bおよびリング34c)を介してハウジング20により保持された第一ラジアル軸受30により、第一ラジアル軸受30と回転軸11との焼き付きを回避しながら、ハウジング20に焼ばめ等により固定された第二ラジアル/スラスト軸受40により、支持剛性を大きくすることができる。
【0082】
しかも、ラジアル軸受と回転軸11との焼き付きは、回転軸11の振れ回りが発生した場合に起こり得る。ここで、回転軸11の振れ回りは、回転軸11の先端(図1においては右端)に取り付けられた工具(図示省略)により生じる。そこで、回転軸11の振れ回りによる、回転中心A−Aからの変位は、工具に近い程(すなわち、羽根車12から遠い程)大きくなる。
【0083】
ここで、本発明の実施形態によれば、回転軸11の羽根車12から遠い側に、第一ラジアル軸受30(弾性支持)を配置して、比較的大きな回転軸11の回転中心A−Aからの変位に対応できるようにしている。さらに、回転軸11の羽根車12から近い側に、第二ラジアル/スラスト軸受40(固定支持)を配置して、支持剛性を大きくするようにしている(回転軸11の回転中心A−Aからの変位は小さいので、比較的対応の必要性が薄い)。
【0084】
さらに、本発明の実施形態によれば、気体軸受である第一ラジアル軸受30および第二ラジアル/スラスト軸受40と、回転軸11との間のすき間に供給された気体が、第一ラジアル軸受30および第二ラジアル/スラスト軸受40の間から、ラジアル軸受間排気路23を経由して、羽根車排気路22へと排気される。このため、第一ラジアル軸受30および第二ラジアル/スラスト軸受40と、回転軸11との間のすき間に供給された気体が、回転軸11の先端へ排気されることを抑制できる。
【0085】
なお、本発明の実施形態にかかる気体軸受スピンドル1には、色々な変形例が考えられる。例えば、変形例として、気体軸受スピンドル1が、羽根車カバー60を備えないで、ハウンジング20が羽根車12をカバーするようにし、さらに、塗装機ボディ70を備えるようにすることが考えられる。
【0086】
図4は、本発明の実施形態の変形例にかかる気体軸受スピンドル1の正面断面図である。図5は、本発明の実施形態の変形例にかかる気体軸受スピンドル1の駆動用の給排気および軸受用の給排気の流れを示す図である。図6は、図4のVI−VI断面図である。
【0087】
本発明の実施形態の変形例にかかる気体軸受スピンドル1は、回転体10、ハウンジング20、第一ラジアル軸受30、第二ラジアル/スラスト軸受40、スラスト軸受50、塗装機ボディ70を備える。回転体10、第一ラジアル軸受30、第二ラジアル/スラスト軸受40およびスラスト軸受50は、本発明の実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0088】
ハウンジング20は、羽根車12およびスラスト軸受50をカバーする。ハウンジング20の外周側給気路21からは、スラスト軸受に向かう給気路21cが分岐している。スラスト軸受に向かう給気路21cは、絞り54aおよび絞り54bに接続し、スラスト軸受50と羽根車12との間に気体を供給する給気路である。また、ハウンジング20は、駆動用給気路26を有する。駆動用給気路26は、駆動用給気路72から気体を受け、羽根車12の羽根12aに導く給気路である。
【0089】
塗装機ボディ70は、軸受用給気路71、駆動用給気路72、駆動用排気路74を有する。
【0090】
軸受用給気路71は、図示省略したエアコンプレッサから気体を受け、第一ラジアル軸受30、第二ラジアル/スラスト軸受40およびスラスト軸受50に向けて、気体を供給する給気路である。軸受用給気路71は、回転軸11の長手方向(A−A方向)と平行に設けられている。軸受用給気路71には、外周側給気路21が接続する。なお、気体は、例えば空気である。
【0091】
駆動用給気路72は、図示省略したエアコンプレッサから気体を受け、駆動用給気路26を介して、羽根車12の羽根12aに導く給気路である。
【0092】
駆動用排気路74は、排気導出路24からの排気を受け、外部に排出する排気路である。
【0093】
本発明の実施形態の変形例にかかる気体軸受スピンドル1の動作は、本発明の実施形態と同様であり説明を省略する。本発明の実施形態の変形例にかかる気体軸受スピンドル1によっても、本発明の実施形態と同様な効果を奏する。
【符号の説明】
【0094】
1 気体軸受スピンドル

10 回転体
11 回転軸
12 羽根車
12a 羽根
12b 対向面
14 空洞
16 工具取付部

20 ハウンジング
21 外周側給気路
21a 第一ラジアル軸受用給気路
21b 遠方給気路
21c スラスト軸受に向かう給気路
22 羽根車排気路
23 ラジアル軸受間排気路
24 排気導出路
26 駆動用給気路
28 環状給気路

30 第一ラジアル軸受
31 内筒
32 外筒
34a 前方リング(弾性部材)
34b 後方リング(弾性部材)
34c リング(弾性部材)
38a 前方絞り
38b 後方絞り

40 第二ラジアル/スラスト軸受
41 筒状部
42a ラジアル軸受内給気路(延伸給気路)
44a 前方絞り
44b 後方絞り
44c 羽根車側絞り
46 対向面排気路

50 スラスト軸受
54a、54b 絞り

60 羽根車カバー
61 軸受用給気路
61a ラジアル軸受に向かう給気路
61b スラスト軸受に向かう給気路
62 駆動用給気路
64 駆動用排気路

70 塗装機ボディ
71 軸受用給気路
72 駆動用給気路
74 駆動用排気路
図1
図2
図3
図4
図5
図6