(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態にかかる気体軸受スピンドル1の正面断面図である。
図2は、本発明の実施形態にかかる気体軸受スピンドル1の駆動用の給排気および軸受用の給排気の流れを示す図である。
図3は、
図1のIII−III断面図である。
【0014】
気体軸受スピンドル1は、回転体10、ハウンジング20、第一ラジアル軸受30、第二ラジアル/スラスト軸受40、スラスト軸受50、羽根車カバー60を備える。気体軸受スピンドル1は、例えば、静電塗装装置に用いられる。ただし、この用途は単なる一例であり、気体軸受スピンドル1の用途を静電塗装装置に限定するものではない。以後、気体軸受スピンドル1を静電塗装装置に用いた例について説明する。
【0015】
回転体10は、回転軸11、羽根車12、空洞14、工具取付部16を有する。
【0016】
回転軸11は、その内部に空洞14を有し、回転軸11の長手方向に延伸する直線A−Aを回転中心として回転する回転軸である。
【0017】
羽根車12は、回転軸11の一端側(
図1においては左端側)に固定された羽根車である。羽根車12は、羽根12a、対向面12bを有する。羽根12aには、図示省略したエアコンプレッサから駆動用給気路62を介して流入した気体があたる(
図2参照)。羽根12aに気体があたることにより、羽根車12が回転する。対向面12bは、羽根車12の面であり、第二ラジアル/スラスト軸受40と向かい合う面である。なお、気体は、例えば空気である。
【0018】
空洞14は、回転軸11の内部に設けられた、回転軸11を貫通する空洞である。電極(図示省略)により帯電された静電塗装用の塗料が、空洞14の内部を経由して、回転軸11の後方(
図1においては左端側)から先端(
図1においては右端側)に至る。
【0019】
工具取付部16は、図示省略した工具(例えば、塗料を霧状にするための回転霧化頭)を回転軸11に取り付けるための部分である。なお、工具が、回転軸11の他端側(
図1においては右端側)に固定された被回転体、すなわち回転軸11の回転にともなって回転する物体である。
【0020】
ハウンジング20は、第一ラジアル軸受30および第二ラジアル/スラスト軸受40を保持する。ハウンジング20は、外周側給気路21、第一ラジアル軸受用給気路21a、遠方給気路21b、羽根車排気路22、ラジアル軸受間排気路23、排気導出路24を有する。
【0021】
なお、外周側給気路21、遠方給気路21b、ラジアル軸受内給気路(延伸給気路)42aおよび環状給気路28が、対向面12bに向かって気体を供給する対向面給気路を構成する。なお、気体は、例えば空気である。
【0022】
外周側給気路21は、ハウジング20において、羽根車排気路22よりも外周側に設けられている。外周側給気路21は、回転軸11の長手方向(A−A方向)と平行に設けられている。
【0023】
第一ラジアル軸受用給気路21aは、第一ラジアル軸受30に気体を供給する給気路であり、遠方給気路21bから分岐している。
【0024】
遠方給気路21bは、外周側給気路21および第二ラジアル/スラスト軸受40に接続する給気路である。遠方給気路21bは、ハウジング20に設けられ、羽根車12から見て羽根車排気路22よりも遠方に設けられている。
【0025】
羽根車排気路22は、羽根車12が有する羽根12aにあたって、羽根車12から排出された排気を直接受ける排気路である。羽根車12が有する羽根12aには、上述のように、気体があたるが、この気体が羽根車12から排出されたものを排気という。
【0026】
なお、羽根車排気路22および排気導出路24が、羽根車12が有する羽根12aにあてた気体を排出する駆動気体用排気路を構成する。
【0027】
ラジアル軸受間排気路23は、駆動気体用排気路に接続されている排気路である。ラジアル軸受間排気路23は、第一ラジアル軸受30および第二ラジアル/スラスト軸受40と回転軸11との間の気体(すなわち、第一ラジアル軸受30および回転軸11の間の気体と、第二ラジアル/スラスト軸受40および回転軸11の間の気体)を、第一ラジアル軸受30および第二ラジアル/スラスト軸受40の間から排気する。ラジアル軸受間排気路23は、羽根車排気路22に接続されている。
【0028】
排気導出路24は、羽根車排気路22からの排気をハウジング20の外部に導く排気路である。
【0029】
環状給気路28は、ハウジング20に設けられている。
【0030】
第一ラジアル軸受30は、内筒31、外筒32、前方リング(弾性部材)34a、後方リング(弾性部材)34b、リング(弾性部材)34c、前方絞り38a、後方絞り38bを有する。第一ラジアル軸受30は、回転軸11を支持する。
【0031】
内筒31は、例えば焼結材(黒鉛など)からなり、回転軸11を包囲する筒状部材である。なお、回転軸11は、内筒31の内部において、回転することができる。
【0032】
外筒32は、例えば金属からなり、内筒31を包囲する筒状部材である。内筒31が、外筒32に焼きばめなどにより固定されている。
【0033】
第一ラジアル軸受30は、前方リング34a、後方リング34bおよびリング34cを介して、ハウジング20により保持されている。前方リング34a、後方リング34bおよびリング34cは、外筒32とハウンジグ20との間に配置されている。なお、前方リング34a、後方リング34bおよびリング34cは、弾性部材かつ環状部材である。
【0034】
前方リング34aは、第一ラジアル軸受30の前方(
図1においては右側)に配置され、外筒32を包囲している。後方リング34bは、第一ラジアル軸受30の後方(
図1においては左側)に配置され、外筒32を包囲している。リング34cは、第一ラジアル軸受30の前方端面に接している。
【0035】
前方絞り38aは、第一ラジアル軸受30の前方(
図1においては右側)に設けられ、第一ラジアル軸受用給気路21aから供給された気体を、内筒31と回転軸11との間に導入する。
【0036】
後方絞り38bは、第一ラジアル軸受30の後方(
図1においては左側)に設けられ、第一ラジアル軸受用給気路21aから供給された気体を、内筒31と回転軸11との間に導入する。
【0037】
前方絞り38aおよび後方絞り38bによって内筒31と回転軸11との間に導入された気体により、内筒31と回転軸11との間に気体潤滑が実現する。
【0038】
第二ラジアル/スラスト軸受40は、筒状部41、ラジアル軸受内給気路42a、前方絞り44a、後方絞り44b、羽根車側絞り44c、対向面排気路46を有する。第二ラジアル/スラスト軸受40は、回転軸11を支持する。第二ラジアル/スラスト軸受40は、第一ラジアル軸受30とは回転軸11の長手方向(A−A方向)の位置が異なる。
【0039】
本実施形態においては、回転軸11の羽根車12から遠い側(
図1においては右側)に、第一ラジアル軸受30が配置され、回転軸11の羽根車12から近い側(
図1においては左側)に、第二ラジアル/スラスト軸受40が配置されている。すなわち、第一ラジアル軸受30は、第二ラジアル/スラスト軸受40よりも、羽根車12から遠い側に配置されている。
【0040】
第二ラジアル/スラスト軸受40は、羽根車12から見て、羽根車排気路22よりも遠方に延在している。例えば、本実施形態においては、第二ラジアル/スラスト軸受40は、羽根車排気路22よりも、羽根車12から見て、Xだけ突き出ている(遠方に延在している)。
【0041】
筒状部41は、回転軸11を包囲する筒状部材である。なお、回転軸11は、筒状部41の内部において、回転することができる。筒状部41は、ハウジング20により包囲されている。第二ラジアル/スラスト軸受40は、ハウジング20に固定されている。例えば、第二ラジアル/スラスト軸受40の筒状部41をハウジング20に焼ばめすることで、第二ラジアル/スラスト軸受40をハウジング20に固定することができる。
【0042】
ただし、焼ばめに限らず、例えば、第二ラジアル/スラスト軸受40の筒状部41をハウジング20に圧入または接着しても、第二ラジアル/スラスト軸受40をハウジング20に固定することができる。
【0043】
なお、回転軸11の長手方向(A−A方向)における、第二ラジアル/スラスト軸受40(の筒状部41)の長さX1(ただし、ラジアル軸受として機能しないほど回転軸11から離れている部分を除く)と、第一ラジアル軸受30(の内筒31)の長さとの比は、例えば、50:50とすることが好ましい。
【0044】
回転軸11の長手方向(A−A方向)における、第二ラジアル/スラスト軸受40の長さに対する第一ラジアル軸受30の長さの比(すなわち、回転軸11の長手方向(A−A方向)における、(第一ラジアル軸受30の長さ)/(第二ラジアル/スラスト軸受40の長さ))を大きくした場合(例えば、70/30)、回転体10の1次共振速度が低下する。このため、1次共振速度の約2倍の回転速度で生じる自励振動(ホワール現象)が、気体軸受スピンドル1を使用する際の回転軸11の回転速度(例えば、90krpm以下)において発生してしまうおそれがある。
【0045】
そこで、気体軸受スピンドル1を使用する際(例えば、回転霧化頭により塗料を霧状にする際)の回転軸11の回転速度においてホワール現象が発生しない程度に、回転軸11の長手方向(A−A方向)における、第二ラジアル/スラスト軸受40の長さに対する第一ラジアル軸受30の長さの比を、小さくすることが好ましい(例えば、上記のように、50/50とする)。
【0046】
ラジアル軸受内給気路(延伸給気路)42aは、第二ラジアル/スラスト軸受40の内部に設けられた給気路である。ラジアル軸受内給気路42aは、(環状給気路28を介して)遠方給気路21bと、対向面12bに向かい合う羽根車側絞り44cとに接続している。
【0047】
ラジアル軸受内給気路は、延伸給気路42aを有する。延伸給気路42aは、遠方給気路21bに(環状給気路28を介して)接続し、第二ラジアル/スラスト軸受40内を回転軸11の長手方向(A−A方向)に延伸している(
図1参照)。環状給気路28は、延伸給気路42aおよび遠方給気路21bに接続し、回転軸11を取り巻いている(
図3参照)。なお、
図3において、延伸給気路42aは、環状給気路28よりも回転軸11に近い部分に配置されていることになる(図示省略)。
【0048】
前方絞り44aは、第二ラジアル/スラスト軸受40の前方(
図1においては右側)に設けられ、ラジアル軸受内給気路42aおよび環状給気路28から供給された気体を、筒状部41と回転軸11との間に導入する。
【0049】
後方絞り44bは、第二ラジアル/スラスト軸受40の後方(
図1においては左側)に設けられ、ラジアル軸受内給気路42aおよび環状給気路28から供給された気体を、筒状部41と回転軸11との間に導入する。
【0050】
前方絞り44aおよび後方絞り44bにより、筒状部41と回転軸11との間に導入された気体により、筒状部41と回転軸11との間に気体潤滑が実現する。これにより、第二ラジアル/スラスト軸受40は、回転軸11を支える軸受として機能する。
【0051】
羽根車側絞り44cは、対向面12bと向かい合う第二ラジアル/スラスト軸受40の面に開口し、ラジアル軸受内給気路42aおよび環状給気路28から供給された気体を、対向面12bと第二ラジアル/スラスト軸受40との間に導入する。
【0052】
羽根車側絞り44cによって筒状部41と対向面12bとの間に導入された気体により、筒状部41と対向面12bとの間に気体潤滑が実現する。これにより、第二ラジアル/スラスト軸受40は、羽根車12の回転軸方向(A−A方向)の力を受ける軸受としても機能する。
【0053】
対向面排気路46は、筒状部41に設けられ、対向面12bと第二ラジアル/スラスト軸受40との間の気体を、羽根車排気路22に排気する排気路である。
【0054】
スラスト軸受50は、羽根車12の後方(
図1においては左側)に配置され、羽根車12の回転軸方向(A−A方向)の力を受ける軸受である。スラスト軸受50は、絞り54a、54bを有する。
【0055】
絞り54a、54bは、スラスト軸受50と羽根車12との間に気体を導入する。絞り54a、54bによってスラスト軸受50と羽根車12との間に導入された気体により、スラスト軸受50と羽根車12との間に気体潤滑が実現する。
【0056】
羽根車カバー60は、軸受用給気路61、ラジアル軸受に向かう給気路61a、スラスト軸受に向かう給気路61b、駆動用給気路62、駆動用排気路64を有する。
【0057】
軸受用給気路61は、図示省略したエアコンプレッサから気体を受け、第一ラジアル軸受30、第二ラジアル/スラスト軸受40およびスラスト軸受50に向けて、気体を供給する給気路である。軸受用給気路61は、回転軸11の長手方向(A−A方向)と平行に設けられている。軸受用給気路61は、ラジアル軸受に向かう給気路61aとスラスト軸受に向かう給気路61bとに分岐する。なお、気体は、例えば空気である。
【0058】
ラジアル軸受に向かう給気路61aは、外周側給気路21に接続し、外周側給気路21に気体を供給する給気路である。
【0059】
スラスト軸受に向かう給気路61bは、絞り54aおよび絞り54bに接続し、スラスト軸受50と羽根車12との間に気体を供給する給気路である。
【0060】
駆動用給気路62は、図示省略したエアコンプレッサから気体を受け、羽根車12の羽根12aに導く給気路である。
【0061】
駆動用排気路64は、排気導出路24からの排気を受け、外部に排出する排気路である。
【0062】
次に、本発明の実施形態の動作を説明する。
【0063】
まず、気体が、図示省略したエアコンプレッサから、駆動用給気路62に与えられる。気体は、駆動用給気路62により、羽根車12の羽根12aにあたる。羽根12aに気体があたることにより、羽根車12が回転する。羽根車12の回転にともない、回転軸11が回転する。回転軸11の回転にともない、回転軸11の工具取付部16に取り付けられた工具(例えば、回転霧化頭)が回転する。
【0064】
一方、静電塗装用の塗料が、空洞14の内部を経由して、回転軸11の後方(
図1においては左端側)から先端(
図1においては右端側)に至る。
【0065】
これにより、回転軸11の先端に至った塗料が、回転霧化頭により微粒化し霧状となる。
【0066】
なお、羽根車12が有する羽根12aにあたった気体は、羽根車12から排出され、排気となる。この排気は、羽根車排気路22に導かれる。羽根車排気路22からの排気は、排気導出路24により、ハウジング20の外部(ここでは、駆動用排気路64)に導かれる。駆動用排気路64は、排気導出路24からの排気を受け、外部に排出する。
【0067】
また、気体が、図示省略したエアコンプレッサから、軸受用給気路61に与えられる。軸受用給気路61に与えられた気体は、ラジアル軸受に向かう給気路61aおよびスラスト軸受に向かう給気路61bに分岐する。
【0068】
気体は、スラスト軸受に向かう給気路61bを経由して、絞り54aおよび絞り54bから、スラスト軸受50と羽根車12との間に導入される。この気体により、スラスト軸受50と羽根車12との間に気体潤滑が実現し、しかもスラスト軸受50が、羽根車12の回転軸方向(A−A方向)の力を受ける軸受として機能する。
【0069】
気体は、ラジアル軸受に向かう給気路61aを経由して、さらに、外周側給気路21に与えられる。外周側給気路21に与えられた気体は、第一ラジアル軸受用給気路21aおよび遠方給気路21bに分岐する。
【0070】
第一ラジアル軸受用給気路21aに与えられた気体は、絞り38a、38bから、内筒31と回転軸11との間に導入される。この気体により、内筒31と回転軸11との間に気体潤滑が実現し、しかも第一ラジアル軸受30が、回転軸11を支持する軸受として機能する。
【0071】
さらに、第一ラジアル軸受30は、いずれも弾性部材である前方リング34a、後方リング34bおよびリング34cを介して、ハウジング20により保持されている。このような弾性部材による支持により、回転軸11が振れ回りを生じた場合にも、それに応じて内筒31の姿勢(A−A方向に対する傾き)が変化する。これにより、第一ラジアル軸受30と回転軸11との接触による焼き付きを回避し得る。
【0072】
一方、遠方給気路21bに与えられた気体は、ラジアル軸受内給気路42aを経由して、前方絞り44aおよび後方絞り44bから、筒状部41と回転軸11との間に導入される。この気体により、筒状部41と回転軸11との間に気体潤滑が実現し、しかも第二ラジアル/スラスト軸受40が、回転軸11を支持する軸受として機能する。
【0073】
また、遠方給気路21bに与えられた気体は、ラジアル軸受内給気路42aおよび環状給気路28を経由して、羽根車側絞り44cから、対向面12bと第二ラジアル/スラスト軸受40との間に導入される。この気体により、対向面12bと第二ラジアル/スラスト軸受40との間に気体潤滑が実現し、しかも第二ラジアル/スラスト軸受40が、羽根車12の回転軸方向(A−A方向)の力を受ける軸受としても機能する。
【0074】
さらに、第二ラジアル/スラスト軸受40は、ハウジング20に焼ばめ等により固定されている。これにより、第二ラジアル/スラスト軸受40の支持剛性が大きくなる。
【0075】
対向面12bと第二ラジアル/スラスト軸受40との間の気体は、筒状部41に設けられた対向面排気路46により、羽根車排気路22へと排気される(羽根車排気路22へ直接排気される気体もある)。
【0076】
第一ラジアル軸受30(の内筒31)および回転軸11の間の気体と、第二ラジアル/スラスト軸受40(の筒状部41)および回転軸11の間の気体とは、第一ラジアル軸受30および第二ラジアル/スラスト軸受40の間から、ラジアル軸受間排気路23を経由して、羽根車排気路22へと排気される。
【0077】
本発明の実施形態によれば、遠方給気路21bが羽根車12から見て羽根車排気路22よりも遠方に設けられている。このため、羽根車排気路22のスペースを削減することなく、遠方給気路21b(ひいては対向面給気路)のスペースを確保することができる。
図3を参照して、羽根車排気路22は分断されていない連続した環状であり、羽根車排気路22のスペースは充分に確保できている。
【0078】
しかも、環状給気路28(
図3参照)をハウンジング20に設けたことで、環状給気路28に接続するラジアル軸受内給気路(延伸給気路)42aおよび羽根車側絞り44cを多数設けることができる(例えば、
図3を参照して、8個)。羽根車側絞り44cを多数設けても、特に羽根車排気路22のスペースを削減する必要は無い。よって、羽根車側絞り44cを多数設けることで、羽根車12の回転軸11方向(A−A方向)の力を受ける軸受(第二ラジアル/スラスト軸受40)の支持剛性を充分に大きくすることができる。
【0079】
さらに、対向面12bと第二ラジアル/スラスト軸受40との間の気体を、筒状部41に対向面排気路46を設けることにより、羽根車排気路22に排気できる。
【0080】
しかも、回転軸11を支持する軸受が、第二ラジアル/スラスト軸受40と第一ラジアル軸受30との二つある場合に、第二ラジアル/スラスト軸受40が、羽根車排気路22よりも、羽根車12から見て、Xだけ突き出ている(遠方に延在している)。このため、遠方給気路21bを羽根車12から見て羽根車排気路22よりも遠方に設けるためには、第二ラジアル/スラスト軸受40のXだけ突き出した部分から、単に回転軸11の長手方向(A−A方向)に垂直な方向に遠方給気路21bを設ければよいので、遠方給気路21bを容易に設けることができる。
【0081】
また、本発明の実施形態によれば、弾性部材(前方リング34a、後方リング34bおよびリング34c)を介してハウジング20により保持された第一ラジアル軸受30により、第一ラジアル軸受30と回転軸11との焼き付きを回避しながら、ハウジング20に焼ばめ等により固定された第二ラジアル/スラスト軸受40により、支持剛性を大きくすることができる。
【0082】
しかも、ラジアル軸受と回転軸11との焼き付きは、回転軸11の振れ回りが発生した場合に起こり得る。ここで、回転軸11の振れ回りは、回転軸11の先端(
図1においては右端)に取り付けられた工具(図示省略)により生じる。そこで、回転軸11の振れ回りによる、回転中心A−Aからの変位は、工具に近い程(すなわち、羽根車12から遠い程)大きくなる。
【0083】
ここで、本発明の実施形態によれば、回転軸11の羽根車12から遠い側に、第一ラジアル軸受30(弾性支持)を配置して、比較的大きな回転軸11の回転中心A−Aからの変位に対応できるようにしている。さらに、回転軸11の羽根車12から近い側に、第二ラジアル/スラスト軸受40(固定支持)を配置して、支持剛性を大きくするようにしている(回転軸11の回転中心A−Aからの変位は小さいので、比較的対応の必要性が薄い)。
【0084】
さらに、本発明の実施形態によれば、気体軸受である第一ラジアル軸受30および第二ラジアル/スラスト軸受40と、回転軸11との間のすき間に供給された気体が、第一ラジアル軸受30および第二ラジアル/スラスト軸受40の間から、ラジアル軸受間排気路23を経由して、羽根車排気路22へと排気される。このため、第一ラジアル軸受30および第二ラジアル/スラスト軸受40と、回転軸11との間のすき間に供給された気体が、回転軸11の先端へ排気されることを抑制できる。
【0085】
なお、本発明の実施形態にかかる気体軸受スピンドル1には、色々な変形例が考えられる。例えば、変形例として、気体軸受スピンドル1が、羽根車カバー60を備えないで、ハウンジング20が羽根車12をカバーするようにし、さらに、塗装機ボディ70を備えるようにすることが考えられる。
【0086】
図4は、本発明の実施形態の変形例にかかる気体軸受スピンドル1の正面断面図である。
図5は、本発明の実施形態の変形例にかかる気体軸受スピンドル1の駆動用の給排気および軸受用の給排気の流れを示す図である。
図6は、
図4のVI−VI断面図である。
【0087】
本発明の実施形態の変形例にかかる気体軸受スピンドル1は、回転体10、ハウンジング20、第一ラジアル軸受30、第二ラジアル/スラスト軸受40、スラスト軸受50、塗装機ボディ70を備える。回転体10、第一ラジアル軸受30、第二ラジアル/スラスト軸受40およびスラスト軸受50は、本発明の実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0088】
ハウンジング20は、羽根車12およびスラスト軸受50をカバーする。ハウンジング20の外周側給気路21からは、スラスト軸受に向かう給気路21cが分岐している。スラスト軸受に向かう給気路21cは、絞り54aおよび絞り54bに接続し、スラスト軸受50と羽根車12との間に気体を供給する給気路である。また、ハウンジング20は、駆動用給気路26を有する。駆動用給気路26は、駆動用給気路72から気体を受け、羽根車12の羽根12aに導く給気路である。
【0089】
塗装機ボディ70は、軸受用給気路71、駆動用給気路72、駆動用排気路74を有する。
【0090】
軸受用給気路71は、図示省略したエアコンプレッサから気体を受け、第一ラジアル軸受30、第二ラジアル/スラスト軸受40およびスラスト軸受50に向けて、気体を供給する給気路である。軸受用給気路71は、回転軸11の長手方向(A−A方向)と平行に設けられている。軸受用給気路71には、外周側給気路21が接続する。なお、気体は、例えば空気である。
【0091】
駆動用給気路72は、図示省略したエアコンプレッサから気体を受け、駆動用給気路26を介して、羽根車12の羽根12aに導く給気路である。
【0092】
駆動用排気路74は、排気導出路24からの排気を受け、外部に排出する排気路である。
【0093】
本発明の実施形態の変形例にかかる気体軸受スピンドル1の動作は、本発明の実施形態と同様であり説明を省略する。本発明の実施形態の変形例にかかる気体軸受スピンドル1によっても、本発明の実施形態と同様な効果を奏する。