【実施例1】
【0023】
図1から
図5を用いて、実施例1のロールについて説明する。
【0024】
図1、及び
図2において、ロール1は、台座3、止め金具5、プレート6、及び複数のロール片4からなるロール部2より構成されている。台座3は、鉄、SUS、アルミニウム等の金属材料からなり、外周にロール部2が形成されてあると共に、開口部10を有する本体部7、及び本体部7の一方の端部に連接され中空部11を有する継ぎ手部A8、及び本体部7の他方の端部に連接される中実状の継ぎ手部B9から形成されている。ロール部2は、複数のロール片4が台座3を構成する本体部7の外周に積層されると共に、重ね合わされて形成されてあり、両側から止め金具5、及びプレート6にて挟み付けられて形成されてある。止め金具5は、ネジ止めのロックナットが使用されている。なお、本実施例では、継ぎ手部A8が中空状、継ぎ手部B9が中実状としたが、継ぎ手部A8、継ぎ手部B9が共に中空状であっても構わない。
【0025】
図2、
図3(b)、
図4(a)、及び
図5において、台座3を構成する本体部7の外周には、等分2箇所に溝部21が形成されてあると共に、複数の円形の孔部14が千鳥状に開設されている。孔部14は、本体部7の有する開口部10に連通すると共に、ロール片4側の端部には流体導入部20が漏斗状に形成されてある。また、継ぎ手部A8は、中空部11が設けられてあると共に、一方の端部には、ロータリージョイント(図示せず)が接続されるネジ部A12が形成されてあり、他方は本体部7の端部に、溶接による接合部15を介して連接されている。継ぎ手部B9は中実状で、一方の端部が本体部7の端部に、溶接による接合部15を介して連接されている。
【0026】
また、本体部7と継ぎ手部A8の接合部15の近傍には、傾斜面を有して徐変部13が形成されている。従って、本体部7と継ぎ手部A8の接合部15の近傍は、開口部10の開口面積が、本体部7の略中央部の開口面積より小さくなる。徐変部13が形成されていることから、ロール1を液体の吸引装置と接続すると、ロール部2に吸収された液体は、吸引力により、2点鎖線矢印の如く孔部14を介して開口部10に流れ込み、接合部15の近傍で滞留することなく中空部11を通過してロール1の外部に排出される。
【0027】
ロール部2の両端部に固定されるプレート6、及び止め金具5は鉄、SUS、アルミニウム等の金属材料からなり、
図4(b)、及び
図4(c)の如く概円環状に形成されてあり、止め金具5の内周に形成されたネジ部C23は、継ぎ手部A8、継ぎ手部B9の外周に形成されたネジ部B22に嵌合され、固定される。
【0028】
図3(a)において、ロール片4は、中心部に穴部17、外周に側縁部18が形成された概円環状の不織布16からなる。ロール片4の内周等分2箇所には、凸部19が設けられてあり、凸部19は本体部7の外周等分2箇所に形成された溝部21に、
図5の如く嵌合挿入され、ロール1が回転する際の回り止めとなる。なお、ロール部2は、ロール1に使用する総数のロール片4より形成される。また、特に図示しないが、台座3にたいするロール片4の回転ズレを防止する他の方法として、ロール片4の内周に凹状の溝を形成すると共に、台座3を構成する本体部7の長手方向の外周に凸状のキーを装着して、前記凹状の溝を凸状のキーに嵌合挿入することにより、ロール片4を、本体部7の外周に積層してもよい。
【0029】
また、
図3(a)、及び
図3(b)に示すように、ロール片4の内径D
1は、本体部7の外径D
2より小さく設定されている。ロール片4は、不織布16にて形成されていることから、不織布16を構成する繊維間に隙間があり、伸縮性を有している為、内径D
1を本体部7の外径D
2より小さくしても、本体部7の外周に積層することができるのである。なお、D
1はD
2の99.9〜95.0%程度に設定されるのが望ましい。99.9%より大きいと、ロール片4の内周と本体部7の外周に隙間が生じやすくなり、95.0%より小さいと、ロール片4を本体部7の外周に積層し難くなり、ロール1製作の際の作業性が悪くなる。なお、ロール片4の内周と本体部7の外周に隙間が生じ難く、且つロール1製作の際の作業性を考慮した場合、より好ましくはD
1をD
2の99.5〜97.0%程度に設定するのがよい。
【0030】
次に、ロール1の製作方法について説明する。
【0031】
最初に、外周に孔部14、溝部21が形成され、開口部10を有する略円筒形状の本体部7を用意する。次いで、徐変部13が形成された中空部11を有する中空状の継ぎ手部A8、及び中実状の継ぎ手部B9を、本体部7の両方の端部に挿入し、圧入、あるいは焼きバメすると共に、溶接による接合部15を介して本体部7と継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9を一体化し、台座3を形成する。本体部7と継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9の連接方法は、台座3の強度が保持されるのであれば、ネジ止め、ボルト締め等の方法であっても構わない。
【0032】
次に、複数本の繊維を有する平板状の不織布16を用意し、不織布16をトムソン型、あるいはレーザーカッター等を用いて、2箇所の凸部19が形成されると共に、穴部17、及び側縁部18を有する概円環状のロール片4に打ち抜く。次いで、ロール片4を複数枚重ね合わせて、穴部17を台座3にたいして貫通させ、凸部19を、本体部7の外周等分2箇所に形成された溝部21に嵌合挿入して積層する。そして、台座3の長手方向からプレス機にて所定長さだけ圧縮させた後、止め金具5、及びプレート6にて複数のロール片4を挟み付けて固定する。その際、止め金具5の内周に形成されたネジ部C23を、継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9の外周に形成されたネジ部B22に嵌合し、固定する。次に、所定時間放置することにより、重ね合わせた複数のロール片4の内部応力を均一化させ、側縁部18を切削加工及び研磨加工し、台座3を構成する本体部7の外周にロール部2を形成してロール1が製作される。
【0033】
ロール部2の表面部の硬度は、40°〜95°程度に設定されるのが望ましい。硬度が40°未満の場合、硬度が低すぎて、被洗浄面の端面が繰り返しロール部2に当接すると、早期にロール部2が摩耗する。また、硬度が95°を超えると、硬度が高すぎて、ロール1の弾力性が劣り、効果的にダム機能、及び吸排機能を発揮することが難しくなる。なお、硬度とは物質の硬さを表わし、JISK6253加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法に記載のデュロメータ硬さ試験により測定した硬度である。
【0034】
孔部14の直径については、特に限定されるものではないが、例えば、孔部14の直径は1〜8mm程度に設定されるのが望ましい。孔部14の直径が1mm未満の場合、径が小さすぎて効率よく液体を開口部10に流出することができず、8mmを超える場合、径が大きすぎて一孔あたりの液体を吸引する力が弱くなる。また、流体導入部20は、孔部14にたいして30°〜60°の角度をなして漏斗状に形成されるのが望ましい。30°未満の場合、直孔に近くなり、ロール部2から効率よく確実に液体を吸引するのが難しくなり、60°を超える場合、本体部7の外周と略平行に近くなり、やはりロール部2から効率よく確実に液体を吸引するのが難しくなる。
【0035】
次に、ロール片4を構成する不織布16の製造方法について、いくつか述べる。
【0036】
第1の方法は、複数本の繊維を、平板状に集積させて布状体を形成し、前記布状体を複数枚、重ね合わせた後、特殊な針を突き刺して、3次元に絡合された不織布16を得る。前記の製造方法は、一般的には、ニードルパンチングと呼ばれている。また、布状体はウエッブと呼ばれている。得られた不織布16は、ポリウレタン溶液中に含浸され、不織布16にポリウレタンを充填させる。次いで、ポリウレタンを充填させた不織布16を、水中に浸漬させると共に、水中に二酸化炭素を注入し、炭酸発泡させることにより、不織布16、及び極微細な気泡を有する多孔質化されたポリウレタンよりなる平板状の二重構造体を形成する。なお、不織布16を形成する繊維には、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、別名ウレタン弾性糸とも呼ばれるスパンデックス繊維等が単独使用、あるいは併用される。
【0037】
第2の方法は、複数本の繊維を、平板状に集積させて布状体となるウエッブを形成し、ニードルパンチングにより3次元に絡合された不織布16を得る。得られた不織布16にたいして、架橋剤を配合した高分子弾性体をスプレー、浸漬、含浸等の方法を用いて付着させ、加熱することにより不織布16を形成する繊維の間を結合させるもので、前記の製造方法により得られた不織布16は、一般的にケミカルボンド法不織布と呼ばれている。なお、不織布16を形成する繊維には、綿、レーヨン、セルロース等の天然繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成繊維が単独使用、あるいは併用される。また、高分子弾性体には、ニトリルゴム、アクリルゴム、スチレンゴム、ウレタンゴム、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が単独使用、あるいは併用される。また、架橋剤は、前記高分子弾性体の分子間に橋架け構造を形成し、一段と優れた弾力性を高分子弾性体に付与する目的で配合されるものであり、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等のメラミン樹脂、ブロックイソシアネート等のイソシアネート樹脂、脂肪族エポキシ等のエポキシ樹脂を単独、あるいは併用して用いることができる。
【0038】
第3の方法は、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の合成樹脂を溶融紡糸すると共に、得られた合成繊維にたいして100〜150kgf程度の高圧水流を噴射することにより、繊維を絡合させる。次いで、架橋剤を配合した高分子弾性体をスプレー、浸漬、含浸等の方法を用いて繊維に付着させ、加熱することにより不織布16を形成するもので、前記の製造方法により得られた不織布16は、一般的に水流絡合法不織布と呼ばれている。
【0039】
上記に示した不織布16の製造方法は代表的な例であり、上記以外にも、例えば、熱溶融した合成樹脂を連続的に紡糸して繊維を形成し、繊維を延伸しながら捕集ネット上に集積して熱ロールで加圧することにより繊維を結合して不織布16を形成するスパンボンド法、熱溶融した合成樹脂を紡糸口から吐出する際、高温エアーで紡出し、捕集ネット上で加熱された繊維を結合させて不織布16を形成するメルトブロー法、塩化メチレン、フロン等の低沸点溶剤中に合成樹脂を溶解し、紡糸口から加熱、加圧状態で繊維を紡糸すると同時に、前記低沸点溶剤を揮発させ、繊維を捕集ネット上に集積し、熱ロールで加圧して繊維を結合して不織布16を形成するフラッシュ紡糸法、融点の異なる複数の合成樹脂を溶融して融点の高い方の合成樹脂を紡糸して繊維を形成し、溶融された融点の低い方の合成樹脂をバインダーとして繊維を接着させて不織布16を形成するファイバーボンド法やサーマルボンド法等により製造された不織布16を用いても構わない。なお、不織布16は、ロール1に形成された場合、被洗浄面の繰り返しの当接に強く、繊維がほつれ難く、織布、編物等の他の布帛をロール1に用いた場合に比べて、ロール1の耐久性の向上につながる。
【0040】
ロール片4に用いられる不織布16の選択については、ロール1が使用される雰囲気温度、除去対象となる液体の性状等の使用条件、コスト等を考慮して、適宜、決定されるものである。
【0041】
上記の如く構成されたロール1の動作、作用は下記の通りである。
【0042】
ロール1はロール部2、台座3、止め金具5、及びプレート6を有し、台座3は開口部10が形成された本体部7、及び本体部7の両端に連接される継ぎ手部A8及び継ぎ手部B9を有し、継ぎ手部A8は中空部11が形成され、中空部11は開口部10と連通されてあり、本体部7の外周には開口部10に連通する孔部14が開設されてあると共に、ロール部2が形成され、ロール部2は不織布16からなる概円環状の複数のロール片4が積層されると共に、両端部は止め金具5、及びプレート6にて固定され、ロール片4の内径D
1は本体部7の外径D
2より小さく形成されてあることから、ロール片4の内周と本体部7の外周との密着性が増し、ロール1の気密性が向上する。ロール1を液体の吸引装置と接続すると、吸引漏れを防ぐことができ、ロール部2に吸収された液体は、吸引力により、
図2の2点鎖線矢印の如く、孔部14を介して開口部10、中空部11の順に通過してロール1の外部に排出される。その為、ロール部2から確実に液体が吸引されると共に、低い負圧で液体を吸引することができる。
【0043】
止め金具5はネジ止めのロックナットにて台座3に締結されてあり、ロール部2の端部とプレート6、及び止め金具5との密着性が増し、ロール1の気密性が一層向上する。その為、ロール1を液体の吸引装置と接続すると、吸引漏れを防ぐことができ、より低い負圧で効率よく確実に液体を吸引することができる。
【0044】
孔部14の先端に漏斗状の流体導入部20が形成されてあることから、ロール1を液体の吸引装置と接続すると、流体導入部20が形成されていない直孔に比べて、吸引力をロール部2の外周において、
図5に示す2点鎖線の如く、略円錐状にて均一に作用させることができる。その為、直孔に比べて、本体部7の外周に形成される孔部14の数、あるいは開設面積を減らすことができるので、低い負圧で確実に液体をロール部2から吸引することができる。
【0045】
また、孔部14に流体導入部20が形成されていることから、ロール1にたいする外部からの応力を分散させることできるので、ロール1の強度が向上する。
【実施例2】
【0046】
図6、及び
図7を用いて、実施例2の洗浄装置について説明する。なお、構成の説明を容易にする為に、各部品の軸受け部や、支持部品の図示、説明は省略することとする。また、ロールは、鋼板に付着した油分除去用として用いられるものとする。
【0047】
図6において、ロール31a、31bは、洗浄装置30に上下一対で設置され、上部に位置するロール31aの台座33の両端部、すなわち継ぎ手部A38、及び継ぎ手部B39に一定の圧力が加えられ、駆動手段34により矢印の方向に回転駆動し、上部のロール31aと下部のロール31bの間を、両面に油分(図示せず)が付着したピース状の鋼板43が白抜き矢印の方向に送出されている。また、継ぎ手部A38の端部にはロータリージョイント37が挿入されると共に、配管A35、及びT字状の配管継ぎ手A44を介して吸引装置40に連接されている。上部に位置するロール31aは鋼板43の表面から油分を除去し、下部に位置するロール31bは鋼板43の裏面から油分を除去する。油分が付着した鋼板43は、ロール部32と接触し、ロール部32を構成する不織布の有する繊維の毛細管現象により、油分がロール部32に吸い上げられると共に、ロール部32の空隙に放出される。なお、ロール31a、31bは、上記に示した実施例1のロール1と同一である。
【0048】
上記の如くのロール31a、31bの状態において、吸引装置40の流通管41に連接される配管継ぎ手B45に向かって配管B36から圧縮流体を流入させ、吸引装置40に吸引力を作用させると、ロール部32に負圧が付加され、ロール部32に吸収された油分は、孔部を通り、開口部に流れ込み、継ぎ手部A38に形成された中空部から配管A35を通り、配管継ぎ手A44から流通管41に流れ、液体容器42に吸引される。従って、ロール部32の吸液飽和状態が解消され、吸排機能が持続する為、ロール31a、31bは長期間に亘って、鋼板43に付着した油分を、確実に除去することができる。
【0049】
次に、
図7を用いて、本発明の洗浄装置30が有する吸引装置40の吸引の仕組みについて説明する。
【0050】
吸引装置40は、圧縮流体Bが配管継ぎ手B45を介して流入する流通管41の管路47がテーパー状に形成されている。テーパー状に形成された管路47に流入した圧縮流体Bの位置エネルギー、運動エネルギー、及び圧力エネルギーの総和は、管路47の任意のどの位置においても常に一定であるというエネルギー保存の法則が成り立つ。前記の如くの管路47におけるエネルギー保存の法則は、一般的にはベルヌーイの定理と呼ばれている。圧縮流体Bの位置エネルギーは、管路47を横同一方向に通過するのみであることから、管路47のどの位置においても同一である。また、圧縮流体Bの運動エネルギーは、管路の断面積が最も小さい絞り部48で流速が最も速くなることから最大となり、管路47の断面積が最も大きくなる開放部49で流速が最も遅くなることから最小となる。その為、圧力エネルギーは、運動エネルギーが最大となる絞り部48で最小となり、運動エネルギーが最小となる開放部49で最大となる。テーパー状に形成された管路47の絞り部48で圧力エネルギーは最小となることから、絞り部48の近傍は大気に比べて圧力が小さくなり、すなわち負圧が発生することになる。従って、吸引装置40に圧縮流体Bを流入させると、負圧が発生し、ロール31a、31bから油分Cが配管継ぎ手A44から管路47に吸引されるのである。
【0051】
管路47に吸引された油分Cは、圧縮流体Bと共に、2点鎖線矢印の如く、壁体50に当たり、液体容器42の内部に排出され、液体容器42の内部に溜まり、圧縮流体Bは液体容器42の中で油分Cと分離し、管路47を通り、流通管41の他方の端部に形成された排気口46から外部に放出される。液体容器42に溜まった油分Cは、液体容器42の内部が満杯になると、洗浄装置に設けられた図示しない液体タンクに戻される。
【0052】
上記の如く構成された洗浄装置30の動作、作用は下記の通りである。
【0053】
洗浄装置30は、ロール31a、31bと、ロール31a、31bを回転駆動する駆動手段34と、外部から圧縮流体Bを流入させることにより負圧を発生させ、負圧によりロール31a、31bから油分Cを吸引する吸引装置40を有する洗浄装置30で、圧縮流体Bを流入することにより負圧が発生する吸引装置40は、電気を用いて機械的に負圧を発生させる真空ポンプに比べて安価である。その為、コストを抑えて、洗浄装置30を提供することができる。
【0054】
また、本発明の洗浄装置30が有する油分Cの吸引装置40は、真空ポンプに比べて、吸引力は弱いものの、本発明のロール31a、31bは、吸引漏れを防ぎ、低い負圧でも油分Cを吸引することができる構造となっている。その為、洗浄装置30は、確実にロール31a、31bから油分Cを吸引することができる。